(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】ラインモニタリングシステムにおけるループバックデータの自動校正
(51)【国際特許分類】
H04B 10/073 20130101AFI20230801BHJP
【FI】
H04B10/073
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019006499
(22)【出願日】2019-01-18
【審査請求日】2021-12-20
(32)【優先日】2018-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502101180
【氏名又は名称】サブコム,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100114915
【氏名又は名称】三村 治彦
(74)【代理人】
【識別番号】100125139
【氏名又は名称】岡部 洋
(72)【発明者】
【氏名】ユンル シェイ
(72)【発明者】
【氏名】リチャード クラム
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン エム.リス
【審査官】鴨川 学
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-526138(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0202237(US,A1)
【文献】特開2007-060665(JP,A)
【文献】特開2016-012826(JP,A)
【文献】特表2012-518340(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/073
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光通信システムであって、
光伝送経路と、
前記
光伝送経路に結合された複数のリピータであって、各々が高損失ループバック(HLLB)経路を備えるリピータと、
前記
光伝送経路の第1端に結合された第1のラインモニタリング機器(LME)であって、前記第1のLMEは第1のLMEテスト信号を前記
光伝送経路上に送信するとともに前記
第1のLMEテスト信号に応じて第1のLMEループバックデータを前記
光伝送経路から受信するように構成され、前記第1のLMEループバックデータは前記
光伝送経路上の前記HLLB経路の各々の位置に関連するピークを備える、第1のLMEと、
前記
光伝送経路の第2端に結合された第2のLMEであって、前記第2のLMEは第2のLMEテスト信号を前記
光伝送経路に送信するとともに前記第2のLMEテスト信号に応じて第2のLMEループバックデータを前記
光伝送経路から受信するように構成され、前記第2のLMEループバックデータは前記
光伝送経路上の前記HLLB経路の各々の位置に関連するピークを備える、第2のLMEと、
前記第1のLMEループバックデータ及び前記第2のLMEループバックデータにおけるピークの対を特定して校正済みの第1のLMEループバックデータ及び校正済みの第2のLMEループバックデータを提供するように構成された校正プロセッサであって、ピークの各対が、前記HLLB経路の1つに関連する前記第1のLMEループバックデータのピーク及び前記HLLB経路の前記1つに関連する前記第2のLMEループバックデータのピークを含む、校正プロセッサと
を備える光通信システム。
【請求項2】
前記校正プロセッサは、前記第2のLMEループバックデータにおいて対を有さない前記校正済みの第1のLMEループバックデータから前記第1のLMEループバックデータにおけるいずれかのピークを除外するように構成された、請求項1に記載の光通信システム。
【請求項3】
前記校正プロセッサは、前記第1のLMEループバックデータにおいて対を有さない前記校正済みの第2のLMEループバックデータから前記第2のLMEループバックデータにおけるいずれかのピークを除外するように構成された、請求項1に記載の光通信システム。
【請求項4】
前記校正プロセッサは、前記第1のLMEループバックデータにおける複数のピークを比較して、前記第1のLMEループバックデータにおける前記複数のピークのいずれのピークが前記HLLB経路のうちの関連する1つを通過する前記第1のLMEテスト信号に関連付けられるかを特定するように構成された、請求項1に記載の光通信システム。
【請求項5】
前記校正プロセッサは、
P
nが前記複数のピークのうちのn番目のピークのパワーであり、
【数1】
が前記複数のピークのパワーの平均であり、Nが前記複数のピークの総数である場合に、前記複数のピークの各々について:
【数2】
によって与えられる精度Aを計算するように構成され、
前記校正プロセッサは、前記複数のピークのうちの最も高い関連する精度Aを有するものを、前記HLLB経路のうちの前記関連する1つを通過する前記第1のLMEテスト信号に関連する前記第1のLMEループバックデータの前記ピークとして特定するように構成された、請求項4に記載の光通信システム。
【請求項6】
光伝送経路及び
前記光伝送経路に結合された複数のリピータを含む光通信システムにおいてループバックデータを校正する方法であって、前記リピータの各々が高損失ループバック(HLLB)経路を備え、前記方法が、
第1のラインモニタリング機器(LME)テスト信号を前記
光伝送経路上に送信するステップと、
前記第1のLMEテスト信号に応じて第1のLMEループバックデータを前記
光伝送経路から受信するステップであって、前記第1のLMEループバックデータは前記
光伝送経路上の前記HLLB経路の各々の位置に関連するピークを備える、ステップと、
第2のLMEテスト信号を前記
光伝送経路上に送信するステップと、
前記第2のLMEテスト信号に応じて第2のLMEループバックデータを前記
光伝送経路から受信するステップであって、前記第2のLMEループバックデータは前記
光伝送経路上の前記HLLB経路の各々の位置に関連するピークを備える、ステップと、
校正済みの第1のLMEループバックデータ及び校正済みの第2のLMEループバックデータを提供するように前記第1のLMEループバックデータ及び前記第2のLMEループバックデータにおけるピークの対を特定するステップであって、ピークの各対が、前記HLLB経路の1つに関連する前記第1のLMEループバックデータのピーク及び前記HLLB経路の前記1つに関連する前記第2のLMEループバックデータのピークを含む、ステップと
を備える方法。
【請求項7】
前記第2のLMEループバックデータにおいて対を有さない前記校正済みの第1のLMEループバックデータから前記第1のLMEループバックデータにおけるいずれかのピークを除外するステップをさらに備える請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1のLMEループバックデータにおいて対を有さない前記校正済みの第2のLMEループバックデータから前記第2のLMEループバックデータにおけるいずれかのピークを除外するステップをさらに備える請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記第1のLMEループバックデータ及び前記第2のLMEループバックデータにおけるピークの対を特定する前記ステップの前に、前記第1のLMEループバックデータにおける複数のピークのいずれのピークが前記HLLB経路のうちの関連する1つを通過する前記第1のLMEテスト信号に関連付けられるかを特定するように前記第1のLMEループバックデータにおける前記複数のピークを比較するステップをさらに備える請求項6に記載の方法。
【請求項10】
比較するステップは、
P
nが前記複数のピークのうちのn番目のピークのパワーであり、
【数3】
が前記複数のピークのパワーの平均であり、Nが前記複数のピークの総数である場合に、前記複数のピークの各々について:
【数4】
によって与えられる精度Aを計算するステップと、
前記複数のピークのうちの最も高い関連する精度Aを有するものを、前記HLLB経路のうちの前記関連する1つを通過する前記第1のLMEテスト信号に関連する前記第1のLMEループバックデータの前記ピークとして特定するステップと
を備える、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、通信システムに関し、より詳細には、ラインモニタリングシステムにおけるループバックデータの自動校正のためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
海中の光ファイバ通信システムは、湿潤状態のプラントの障害及びおそらくは侵略的な脅威を早期に検出及び解決することにより、それらの性能を保証してサービスの潜在的な損失を最小限に抑えるように日常的なモニタリングを必要とする。現在、確立されているモニタリング技術は、高損失ループバック(HLLB)技術によって各海底リピータ及び終端からループバックされた信号ピークを検出するラインモニタリングシステム(LMS)の使用を含む。信号ピークは、海底リピータ間の光ファイバが固定長であることに起因して予想時間範囲内にループバックすることが予想される。例えば、リピータが送信端末から200km離れており、外向き光ファイバ内での光の群速度が2×108m/sである場合、信号はシステムにおいて使用される種々のファイバタイプの群屈折率に基づく小さな誤差内で2ms後に送信端末に戻って受信されることが予想される。誤差は、通常、遅延の誤差の閾値の範囲内となるのに充分小さい。
【0003】
システムにおけるファイバ長が変化すると、ループバック信号ピークを検出するための予想時間範囲は、海底ネットワーク要素の正確な検出及び障害の報告における誤差を回避するように変更されるべきである。例えば、リピータが200km離れてループバック信号が2ms後に受信されることが予想される前述の例では、一時的な終端構成の変化がその終端から最初のリピータまでのシステム長を4kmだけ増加させることが可能となる。この一時的な終端構成の変化によって当初のピークが2msにおいて未検出としてマークされ、その後の全てのピークは欠落しているものとして解釈され得る(例えば、ピークは、もはや200km、400km及び600kmではなく、204km、404km及び604kmにあるように見える)。実際には、システムが4kmのファイバを終端において単に追加した場合、一時的なファイバ長の変化によってLMSが終端と最初のリピータの間の破断を報告することに起因して、LMSは全てのリピータが欠落しているものと解釈し得る。同様であるが関連するファイバ長の変化が、修理現場において通常は海洋水深の2倍のファイバを永久的に追加するリピータの修理又は交換中に起こり得る。
【0004】
システム長の変化に加えて、反射によって誘引される異常が、LMSの誤差をもたらし得る。例えば、分岐ユニット及び再構成可能な光分岐挿入マルチプレクサ(ROADM)などの非ループバックベースの海中ネットワーク要素は、対応するループバック遅延とともにLMSデータに予想外のHLLBデータ点を戻し得ることがある。障害のある海底ファイバスプライスはまた、海底地震及び他の地理的事象によってもたらされるファイバの曲げのために、同様のループバック反射を生成し得る。これらの余分なピークは、LMSによって無視されるべきである。しかし、予想外のピークが予想されるリピータのピークの非常に近くに検出された場合、誤ったデータ点が解釈されていまい、誤った障害が報告されてしまう。
【0005】
以下の図面との関連で読まれるべき以下の詳細な説明が参照されるべきであり、ここで、同一の数字は同じ部分を表す。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、本開示によるシステムの例示の一実施形態の簡略化したブロック図である。
【
図2】
図2は、本開示によるシステムの例示の他の実施形態の簡略化したブロック図である。
【
図3】
図3は、本開示によるシステムの第1端における送信端末からの距離に対するループゲインの未校正プロットである。
【
図4】
図4は、
図3に示すプロットに関連するシステムの第2端における送信端末からの距離に対するループゲインの未校正プロットである。
【
図5】
図5は、
図3及び4に示すプロットに関連するシステムの第1端における送信端末からの距離に対するループゲインの校正済みプロットである。
【
図6】
図6は、
図3及び4に示すプロットに関連するシステムの第2端における送信端末からの距離に対するループゲインの校正済みプロットである。
【
図7】
図7は、本開示による方法による動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
概略として、本開示によるシステム及び方法は、システム長の変化及び/又は反射によって誘引される異常の存在下で、正確な海底ネットワーク要素の検出及び障害の報告を可能とするLMSループバックデータの自動校正を提供する。LMS信号は伝送経路の各端部から供給され、システムにおけるネットワーク要素及び障害を特定するのに使用される校正済みループバックデータを提供するように、システムの対向端から同じHLLB経路を介したループバックデータのピークが対とされる。
【0008】
図1は、本開示によるWDM伝送システム100の例示の一実施形態の簡略化したブロック図である。概略として、システム100は、双方向伝送経路102の両端から送信されるLMS信号を使用する各リピータ/増幅器に関連するループゲイン値を計算するように構成され得る。当業者は、説明の便宜上、非常に単純化されたポイント・ツー・ポイントシステム方式としてシステム100が図示されていることを認識するはずである。本開示によるシステム及び方法は広範なネットワーク構成要素及び構成に組みこまれ得るということが理解されるはずである。ここに示す例示の実施形態は限定としてではなく説明としてのみ提供される。
【0009】
図示するように、システム100は2本の一方向の光経路110、120によって結合された第1の終端T1及び第2の終端T2を含み、これはともに双方向光伝送経路102を構成する。第1の終端T1は伝送経路102の第1の終端と結合され、第2の終端T2は伝送経路102の第2の終端と結合される。ここで使用される用語「結合される」は、それによって1つのシステム要素によって搬送される信号が「結合される」要素に与えられる任意の接続、結合、リンク等のことをいう。これらの「結合される」デバイスは必ずしも相互に直接接続されていなくてもよく、このような信号を操作又は修正し得る中間構成要素又はデバイスによって分離され得る。
【0010】
光経路110は、終端T1における送信器112から終端T2における受信器114への一方向の複数のチャネル(又は波長)で光データを搬送することができる。光経路120は、終端T2における送信器124から終端T1における受信器122への経路110に関連する方向と逆方向に複数のチャネル(又は波長)で光データを搬送することができる。終端T1については、光経路110は外向きの経路であり、光経路120は内向きの経路である。終端T2については、光経路120は外向きの経路であり、光経路110は内向きの経路である。光経路110は光ファイバ116-1~116-n及び光増幅器118-1~118-nの交互の連結を含んでいてもよく、光経路120は光ファイバ126-1~126-n及び光増幅器128-1~128-nの交互の連結を含んでいてもよい。
【0011】
光経路対(例えば、光経路110、120)は、関連するリピータR1・・・Rnのハウジング131-1~131-nの中に配置され光ファイバ116-1~116-n及び126-1~126-nの対によって接続される増幅器対118-1~118n及び128-1~128-nのセットを含み得る。光ファイバ116-1~116-n及び126-1~126-nの対は、追加の経路対を支持するファイバとともに光ファイバケーブルに含まれ得る。各リピータR1・・・Rnは、各支持された経路対について増幅器118-1・・・118-n及び128-1・・・128-nの対を含み得る。光増幅器118-1・・・118-n及び128-1・・・128-nは簡略化した形式で示され、1以上のエビウムドープファイバ増幅器(EDFA)若しくは他のレアアースドープファイバ増幅器、ラマン増幅器又は半導体光増幅器を含み得る。HLLB経路132-1~132-nは、さらに詳細を後述するように、例えば、光経路110、120の間、リピータR1・・・Rnのハウジング131-1~131-nの1以上に結合されてもよく、例えば、1以上の受動的な光結合コンポーネントを含んでいてもよい。
【0012】
ラインモニタリング機器(LME)140、142は、経路対110、120のHLLBモニタリングを提供するように終端T1、T2の両方に配置され得る。LME140は、1以上のLMEテスト信号を、例えば、異なる波長及び/又は異なる周波数において、1つの光経路110(例えば、LME140に関して外向きの光経路)へ出射することができる。HLLB経路132-1~132-nの各々は、光経路110において伝搬するLMEテスト信号のサンプルを前方伝搬方向の他の光経路120の(例えば、LME140に関して内向きの光経路)に結合し得る。そして、LME140は、サンプルを受信及び測定してシステムにおける障害の表示としてのループゲインの変化を検出することができる。LMEテスト信号に応じてHLLB経路132-1~132-nを介して受信されたLMEテスト信号の受信サンプルをここではループバックデータという。
【0013】
LME142は、1以上のLMEテスト信号を、例えば、異なる波長及び/又は異なる周波数において、1つの光経路120(例えば、LME142に関して外向きの光経路)へ出射することができる。HLLB経路132-1~132-nは、光経路120において伝搬するLMEテスト信号のサンプルを前方伝搬方向の他の光経路光経路110(例えば、LME142に関して内向きの光経路)に結合し得る。そして、LME142は、サンプル(ループバックデータ)を受信及び測定してシステムにおける障害の表示としてのループゲインの変化を検出することができる。LMEテスト信号を送信し、ループバックデータを受信及び測定するためのLME140、142について種々の送信器及び受信器の構成が知られている。
【0014】
本開示によるシステムに有用な種々のHLLB経路構成が知られている。また、リピータR1・・・Rnの各々は関連するHLLB経路132-1~132-nを有するものとして示されているが、HLLB経路は終端T1及びT2内などの他の場所に配置されてもよく、並びに/又は全てのリピータR1・・・Rnに配置されなくてよい。いくつかの実施形態において、HLLB経路132-1~132-nは動作において対称であってもよく、すなわち、HLLB経路132-1による経路110から経路120に伝達される各波長の光パワーの割合を表示する関数は、HLLB経路132-1によって経路120から経路110に伝達される各波長の光パワーの割合を表示する関数と同じである。代替的に、1以上のHLLB経路は対称でなくてもよく、異なるHLLB経路が異なる伝達関数を有していてもよい。
【0015】
有利なことに、本開示によるシステムでは、LME140及びLME142によるネットワーク要素及びシステム障害の検出のための正確な校正済みループバックデータを提供するように、伝送経路長のあらゆる増加が自動的に検出され、反射によって誘引される異常に関連するループバックデータのいずれの余分なピークもループバックデータから自動的に除外して校正され得る。一般に、スパン長の変化及び余分なLMSテスト信号のピークは、LME140及びLME142の双方から、すなわち、伝送経路102の対向端からLMSテスト信号を送信することによって、及びループバックデータのピークの対を生成することによって検出され得る。ここでループバックデータの「ピーク」とは、測定ループバックデータのピーク振幅値、電力又は電圧をいう。ループバックデータのピークの各対は、HLLB経路を介した第1のLME140からのLMSテスト信号に応じて受信されるループバックデータの信号ピーク及び同じHLLB経路を介した第2のLME142からのLMEテスト信号に応じて受信されるループバックデータのピークを含む。ループバックデータのピークの各対について、第1のLME140からのLMEテスト信号が伝搬する総距離に第2のLME142からのLMEテスト信号が伝搬する総距離を加えた総距離は、伝送経路102の全長の2倍に等しくなるべきである。
【0016】
n個のHLLB経路を有するシステムでは、合計n対のループバックデータのピークが存在すべきであり、ループバックデータのピークに関連するLMEテスト信号の対が伝搬する総距離は伝送経路102の全長の2倍である。ループバックデータにおける(例えば、伝送経路における反射によって誘引される)余分なピークは通常は一方向のものであるため、ループバックデータのピークの対を構成する伝送経路の対向端からのループバックデータのピークと一致することがない伝送経路の一端からのループバックデータのピークは、余分なピークとみなされ得る。これらの余分なピークは、システム障害を検出する際に使用される校正済みループバックデータを提供するためにループバックデータにおいて無視され得る。また、伝送経路の両端におけるLME140及び142からのテスト信号に関連する距離データは、総システム長及びシステムにおける各スパンの全長(すなわち、リピータ間又はそれに隣接する第1のリピータの終端間の長さ)を確認する校正済みループバックデータから計算され得る。
【0017】
図2は、例えば、伝送経路102aの対向端に結合された第1のLME140及び第2のLME142を含む、本開示によるシステム100aの一部分を模式的に示す。システム100aは、簡略化及び説明の容易さのために光信号送信機が省略されてLME140及び142のみが伝送経路102aの対向端に示されることを除いて、
図1との関連で概略説明したように構成され得る。図示する例示の実施形態は、各々が各リピータR1・・・R6の増幅器対間に延在する二方向矢印によって示す関連の対称HLLB経路を含む6個のリピータR1・・・R6を含む。
【0018】
LME140は、伝送経路102a上にLMEテスト信号を送信するLMEテスト信号送信機LME1-TX、及びLME140からのLMEテスト信号に応じてループバックデータを受信するLMEテスト信号受信機LME1-RXを含む。LME142は、伝送経路102a上にLMEテスト信号を送信するLMEテスト信号送信機LME2-TX、及びLME142からのLMEテスト信号に応じてループバックデータを受信するLMEテスト信号受信機LME2-RXを含む。
【0019】
各LME140及び142からのループバックデータは、校正プロセッサに供給され得る。校正プロセッサ202は、一方又は両方のLMEにおけるローカルプロセッサ、ネットワーク管理システムにおけるプロセッサ又はシステムにおける他の任意のプロセッサであればよい。校正プロセッサ202は、LME140及びLME142からのループバックデータにおけるピークの対を特定して、例えば反射によって誘引される異常からもたらされる余分なピークを特定し、伝送経路の全長及び伝送経路内のスパンを確認する。
図2において、例えば、リピータR3のHLLB経路131-3を通過するLME140からのLMEテスト信号t1からもたらされるループバックデータのピークは、リピータR3のHLLB経路131-3を通過するLME142からのLMEテスト信号t2によってもたらされるループバックデータのピークと対付けられ得る。このLMSテスト信号の対が伝搬する総距離は、伝送経路102aの全長の2倍である。
【0020】
ループバックデータのピークの合計8個の対、すなわち、各リピータに1つずつ及び各送信終端(例えば、
図1におけるT1及びT2)に1つずつの対は、
図2に示すシステムにおける校正プロセッサ202によって特定され得る。1つのLME140、142からのループバックデータにおける各ピークは同じHLLB経路についての反対のLME140、142からのループバックデータにおけるピークと対付けられるべきであり、同じHLLB経路を介した各対のピークによって表されるLMEテスト信号が伝搬する総距離は、伝送経路の全長の2倍となるべきである。反対のLME140、142からのLMEループバックデータのピークとの対を構成しないLME140又は142からのいずれのループバックデータのピークも、校正プロセッサ202によってシステムにおいて使用されるループバックデータから除外して校正され得る。
【0021】
例えば、以下の表1~4は、
図2に示すシステム100aによる例示のシステム及び方法の性能を示すループバックデータから計算される校正済み及び未校正のループバック距離データを示す。表における各数値の距離データ入力は、ループバックデータのピークから計算されたものであり、説明を容易にするために各入力をピークという。以下の表において、「ピーク#」は、記載のように、伝送経路の一端において接続されたLME140で受信されたループバックデータにおけるピークの順序及び伝送経路の対向端において接続されたLME142で受信されたループバックデータにおけるピークの順序の表示である。符号「T1」はLME140が位置する終端のループバック経路であり(
図1において終端T1)、符号「T2」はLME142が位置する終端のループバック経路である(
図1において終端T2)。
【0022】
例えば、以下の表1は、伝送経路長の増加前のシステムに対するループバックデータを示す。
【表1】
表1において、LME140に対するピーク1はLME140を含む送信終端におけるループバック経路に関連するピークであり、ピーク2はリピータR1に関連するピークであり、ピーク3はリピータR2に関連するピークであり、以下これが続く。LME142に対するピーク1はLME142を含む送信終端におけるループバック経路に関連するピークであり、ピーク2はリピータR6に関連するピークであり、ピーク3はリピータR5に関連するピークであり、以下これが続く。
【0023】
表1に示すデータから、8個の対のピークが生成可能であり、各対はLME140及び142の異なる一方からのテスト信号に関連するピークを含むが同じHLLB経路を伝搬し、各対は伝送経路102aの全長の2倍に等しい、テスト信号が伝搬する距離を反映する。例えば、
図2も参照すると、表1におけるLME140に対する「ピーク4」は、リピータR3のHLLB経路131-3を介したLME140からのLMEテスト信号t1が伝搬する距離を反映し、表1におけるLME142に対する「ピーク5」は、リピータR3のHLLB経路131-3を介したLME142からのLMEテスト信号t2が伝搬する距離を反映する。したがって、LME140に対する「ピーク4」及びLME142に対する「ピーク5」は、表1における「ピーク4」(本例では152.8km)として関連するテスト信号が伝搬する総距離に表1における「ピーク5」(本例では212.0km)に関連付けられるテスト信号が伝搬する総距離を加えたものが伝送経路の総距離の2倍となり、すなわち、伝送経路長は364.8/2=182.4kmとなる。また、表1におけるLME140及びLME142に対するループバックデータは双方とも、全長182.4kmの伝送スパンに対して34.4km/2、59.2km/2、59.2km/2、29.2km/2、59.2km/2、59.2km/2及び64.4km/2のスパン長を確認する。
【0024】
以下の表2は、伝送経路長の増加後のシステムに対するループバックデータを示す。
【表2】
表2は、(伝送経路長の増加前のシステムに対するデータである)表1と比べて、LME140に対する3個の追加のピーク及びLME142に対する1個の追加のピークを示す。
図3は304、306及び308で示すループバックデータにおける追加のピークとともにLME140に対する表2に示す距離データに関連するループバックデータのプロット302を含み、
図4は404で示す追加のピークとともにLME142に対する表2に示す距離データに関連するループバックデータのプロット402を含む。
図3及び4のプロット302及び402は、LME140及びLME142からの高周波LMEテスト信号に関連するループバックデータを示す。
図3及び4はまた、LME140及びLME142からの低周波LMEテスト信号に関連するループバックデータのプロット310及び410をそれぞれ含む。プロット310はLME140からの低周波テスト信号に対する312における追加のピークを示し、プロット410はLME142からの低周波テスト信号に対する412における追加のピークを示す。
【0025】
表3は、
図2に示す(そして
図3及び4のプロット302及び402に示す)データから構成され得るループバックデータ対を示す。
【表3】
表に示すように、LME140が設けられる終端(T1)、リピータR1~R6、及びLME142が設けられる終端(T2)に1対ずつの8個のループバックデータ対が表2に示すデータから構成され得る。対は、表2におけるLME140に対するピーク4、ピーク7若しくはピーク10又は表2におけるLME142に対するピーク9については生成されない。本開示のシステム及び方法では、対はこれらのピークについては構成されないため、それらは余分なピークとみなされることになり、システムにおける使用のための校正済みループバックデータを与えるようにループバックデータから除去され得る。
【0026】
以下の表4は、校正済みループバックデータから余分なピークが除外された伝送経路長の増加後のシステムについての校正済みループバックデータを示す。
【表4】
【0027】
表4は、余分なピーク、すなわち、表2におけるLME140に対するピーク4、ピーク7及びピーク10並びに表2におけるLME142に対するピーク9に関連するデータ以外の、表2からのデータを含む。
図5はLME140についての表4に示すデータに関連する校正済みループバックデータのプロット502を含み、
図6はLME142についての表4に示すデータに関連するループバックデータのプロット602を含む。
図5及び6はまた、LME140及びLME142からの低周波LMEテスト信号に関連する校正済みループバックデータのプロット504及び604をそれぞれ含む。プロット502は
図3におけるLME140からの低周波テスト信号についての304、306及び308における追加のピークが校正済みデータから除去されたことを示し、プロット602はLME142からの低周波テスト信号についての404における追加のピークが校正済みループバックデータから除去されていることを示す。この例では、表4についてのデータは、ネットワーク要素及びシステム障害の特定についてシステムにおけるシステムループバックデータとして使用され得る校正済みループバックデータである。また、表4におけるLME140及びLME142の双方についてのループバックデータは、全長365.6kmの伝送スパンに対して34.4km、59.2km、59.2km、29.2km、60km、59.2km及び64.4kmのスパン長を確認する。
【0028】
図7は、本開示による方法700の一例を示すフローチャートである。説明する実施形態において、方法は、伝送経路上に第1のラインモニタリング機器(LME)テスト信号を送信するステップ702、第1のLMEテスト信号に応じて伝送経路上のHLLB経路の各々の位置に関連するピークを有する第1のLMEループバックデータを伝送経路から受信するステップ704、伝送経路上に第2のLMEテスト信号を送信するステップ706、及び第2のLMEテスト信号に応じて伝送経路上のHLLB経路の各々の位置に関連するピークを有する第2のLMEループバックデータを伝送経路から受信するステップ708を含む。方法は、校正済みの第1のLMEループバックデータ及び校正済みの第2のLMEループバックデータを提供するために第1のLMEループバックデータ及び第2のLMEループバックデータにおけるピークの対を特定するステップ710をさらに含み、ピークの各対がHLLB経路の一方に関連する第1のLMEループバックデータのピーク及びHLLB経路の当該一方に関連する第2のLMEループバックデータのピークを含む。
【0029】
ある実施形態では、LME140又はLME142についてのループバック信号データは、検出誤差の範囲内となる相互に非常に近いピークを含み得る。この場合、ピークは、どのピークがリピータループバック経路に関連する有効なピークであるのかを特定するように相互に対して比較され得る。ある実施形態では、例えば、ピークは、精度Aを推定するようにLME受信機によって平均され得る。
【数1】
ここで、P
nはn番目のピークのパワーであり、
【数2】
はピークのパワーの平均であり、Nは相互に非常に近いものとして特定されたピークの総数である。最も高い精度Aを有するピークはループバックデータに保持され、他のピークはループバックデータにおいてピークを対付ける前にループバックデータから除外され得る。
【0030】
図7は実施形態による種々の動作を示すが、
図7に示す動作の全てが他の実施形態に必要なわけではないことが理解されるべきである。もちろん、本開示の他の実施形態において、
図7に図示する動作及び/又はここに記載する他の動作は、いずれの図面にも具体的に示さないがそれでも本開示に充分に従う態様で組み合わされてもよいことが充分に理解される。したがって、1つの図面に明示的に図示されない構成及び/又は動作に向けられる請求項は、本開示の範囲及び内容の範疇にあるものとみなされる。
【0031】
したがって、光通信システムのラインモニタリングシステムにおけるループバックデータを自動的に校正するためのシステム及び方法が提供される。ループバックデータにおける余分なピークが、光伝送経路の対向端からのテスト信号送信に関連するループバックデータにおけるピークの対を特定することによって、システムによって使用されるループバックデータから除外して校正される。
【0032】
開示の一態様によると、光伝送経路と、前記伝送経路に結合された複数のリピータであって、各々が高損失ループバック(HLLB)経路を備えるリピータと、前記伝送経路の第1端に結合された第1のラインモニタリング機器(LME)であって、前記第1のLMEは第1のLMEテスト信号を前記伝送経路上に送信するとともに前記LMEテスト信号に応じて第1のLMEループバックデータを前記伝送経路から受信するように構成され、前記第1のLMEループバックデータは前記伝送経路上の前記HLLB経路の各々の位置に関連するピークを備える、第1のLMEと、前記伝送経路の第2端に結合された第2のラインモニタリング機器(LME)であって、前記第2のLMEは第2のLMEテスト信号を前記伝送経路に送信するとともに前記第2のLMEテスト信号に応じて第2のLMEループバックデータを前記伝送経路から受信するように構成され、前記第2のLMEループバックデータは前記伝送経路上の前記HLLB経路の各々の位置に関連するピークを備える、第2のLMEと、校正プロセッサを含む光通信システムが提供される。校正プロセッサは、前記第1のLMEループバックデータ及び前記第2のLMEループバックデータにおけるピークの対を特定して校正済みの第1のLMEループバックデータ及び校正済みの第2のLMEループバックデータを提供するように構成された校正プロセッサであって、ピークの各対が、前記HLLB経路の1つに関連する前記第1のLMEループバックデータのピーク及び前記HLLB経路の前記1つに関連する前記第2のLMEループバックデータのピークを含む。
【0033】
開示のさらに他の態様によると、光伝送経路及び該伝送経路に結合された複数のリピータを含む光通信システムにおいてループバックデータを校正する方法が提供され、前記リピータの各々が高損失ループバック(HLLB)経路を備える。方法は、第1のLMEテスト信号を前記伝送経路上に送信するステップと、前記第1のLMEテスト信号に応じて第1のLMEループバックデータを前記伝送経路から受信するステップであって、前記第1のLMEループバックデータは前記伝送経路上の前記HLLB経路の各々の位置に関連するピークを備える、ステップと、第2のLMEテスト信号を前記伝送経路上に送信するステップと、前記第2のLMEテスト信号に応じて第2のLMEループバックデータを前記伝送経路から受信するステップであって、前記第2のLMEループバックデータは前記伝送経路上の前記HLLB経路の各々の位置に関連するピークを備える、ステップと、校正済みの第1のLMEループバックデータ及び校正済みの第2のLMEループバックデータを提供するように前記第1のLMEループバックデータ及び前記第2のLMEループバックデータにおけるピークの対を特定するステップであって、ピークの各対が、前記HLLB経路の1つに関連する前記第1のLMEループバックデータのピーク及び前記HLLB経路の前記1つに関連する前記第2のLMEループバックデータのピークを含む、ステップとを含む。
【0034】
例示の実施形態の上記説明は、例示及び説明の目的で提示されたものである。それは網羅的であること又は本開示を開示された厳密な形態に限定することは意図されていない。本開示に照らして多数の変形例及びバリエーションが可能である。本開示の範囲は、この詳細な説明によって限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって限定されるものである。
【0035】
ここに記載する方法の実施形態は、コントローラ、プロセッサ及び/又は他のプログラム可能なデバイスを用いて実施され得る。その目的のため、ここに記載する方法は、1以上のプロセッサによって実行されるとその方法を実行する命令をそこに記憶させた有形の非一時的なコンピュータ可読媒体において実施され得る。したがって、例えば、校正プロセッサ202は、ここに記載される動作を実行する命令を(例えば、ファームウェア又はソフトウェアにおいて)記憶する記憶媒体を含み得る。記憶媒体は、任意のタイプの有形媒体、例えば、フロッピーディスク、光ディスク、コンパクトディスク読み出し専用メモリ(CD-ROM)、書き込み可能コンパクトディスク(CD-RW)及び磁気光ディスクを含む任意のタイプのディスク、読み出し専用メモリ(ROM)、ダイナミック及びスタティックRAMなどのランダムアクセスメモリ(RAM)、消去可能プログラム可能読み出し専用メモリ(EPROM)、電気的に消去可能プログラム可能読み出し専用メモリ(EEPROM)、フラッシュメモリなどの半導体デバイス、磁気若しくは光学式カード、又は電子的命令を記憶するのに適した任意のタイプの媒体を含み得る。
【0036】
当業者であれば、ここでのいずれのブロック図も本開示の原理を具現化する例示的回路の概念図を表すことが分かるはずである。同様に、いずれのブロック図、フローチャート、フロー図、状態遷移図、疑似コードなども、そのようなコンピュータ又はプロセッサが明示されているか否かを問わず、コンピュータ可読媒体において実質的に表されてコンピュータ又はプロセッサによって実行され得る種々の処理を表すことが分かるはずである。ソフトウェアモジュール又は単にソフトウェアであることが示唆されるモジュールは、フローチャート要素又は処理ステップ及び/若しくはテキスト記述の実行を示す他の要素の任意の組合せとしてここに表され得る。そのようなモジュールは、明示又は暗示されるハードウェアによって実行され得る。
【0037】
「プロセッサ」と付されたいずれの機能ブロックを含む、図示する種々の要素の機能は、専用ハードウェア、その他適切なソフトウェアとの関連でソフトウェアを実行することができるハードウェアの使用を介して提供され得る。機能は、単一の専用プロセッサ、単一の共有プロセッサ、又はその一部が共有され得る複数の個々のプロセッサによって提供され得る。さらに、用語「プロセッサ」の明示的使用は、ソフトウェアを実行することができるハードウェアを排他的にいうものとして解釈されるべきではなく、限定することなく、デジタル信号プロセッサ(DSP)ハードウェア、ネットワークプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、ソフトウェアを記憶する読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び不揮発性ストレージを暗示的に含み得る。他のハードウェア、通常の及び/又はカスタムのものも含まれ得る。
【0038】
特に断りがない限り、文言「実質的に」の使用は、厳密な関係、状態、配置、向き及び/又は他の特性、並びにそのような派生語が開示の方法及びシステムに実質的な影響を与えない程度に当業者に理解されるような派生語を含むものと解釈され得る。本開示の全体を通じて、名詞を修飾する冠詞「a」及び/若しくは「an」並びに/又は「the」の使用は、便宜上使用されるものであり、特に断りがない限り、修飾される名詞の1つ又は2以上を含むものと理解され得る。用語「備える」、「含む」及び「有する」は包含的なものであり、列挙された要素以外の追加の要素があり得ることを意味する。
【0039】
方法及びシステムをその具体的な実施形態に対して説明したが、それらはそのように限定されない。明らかに、多数の変形例及びバリエーションが、上記の教示に照らして明らかとなる。ここに開示及び説明した部分の詳細、材料及び配置における多数の追加の変更が、当業者によってなされ得る。