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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】試験装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/66 20060101AFI20230801BHJP
   G01R 33/02 20060101ALI20230801BHJP
   G01R 33/07 20060101ALI20230801BHJP
   G01R 35/00 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
H01L21/66 B
G01R33/02 X
G01R33/07
G01R35/00 M
G01R33/02 Z
H01L21/66 W
H01L21/66 Y
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020020831
(22)【出願日】2020-02-10
(65)【公開番号】P2021128954
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】390005175
【氏名又は名称】株式会社アドバンテスト
(73)【特許権者】
【識別番号】302042379
【氏名又は名称】株式会社東栄科学産業
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 直良
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 茂行
(72)【発明者】
【氏名】内海 良一
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-24518(JP,A)
【文献】特開2004-151056(JP,A)
【文献】特開2012-198102(JP,A)
【文献】特開2007-147568(JP,A)
【文献】特開2007-243068(JP,A)
【文献】特開平4-334077(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/66
G01R 33/02
G01R 33/07
G01R 35/00
H10N 50/00
G01R 1/06
G01R 1/073
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気抵抗メモリもしくは磁気センサを含む被試験デバイスが形成された被試験ウェハを試験する試験装置であって、
テストヘッドと、
試験工程において前記被試験ウェハが載置されるステージと、
前記試験工程において前記被試験ウェハに磁場を印加する磁場印加装置と、
前記試験工程において、前記被試験ウェハに対してプローブコンタクト可能に構成される試験用プローブカードと、
複数の磁気検出ユニットが形成されており、前記試験装置の診断工程において、前記被試験ウェハに替えて前記ステージに載置され、各磁気検出ユニットにより前記磁場印加装置が発生する磁場を測定可能な診断用ウェハと、
前記診断工程において前記試験用プローブカードに替えて使用され、前記診断用ウェハに対してプローブコンタクト可能に構成される診断用プローブカードと、
を備えることを特徴とする試験装置。
【請求項2】
前記試験用プローブカードまたは前記診断用プローブカードと前記テストヘッドの間に設けられる接続ユニットをさらに備え、
前記磁場印加装置は、前記接続ユニットに設けられることを特徴とする請求項1に記載の試験装置。
【請求項3】
前記複数の磁気検出ユニットはそれぞれ、
磁気センサと、
前記磁気センサが出力する電気信号を増幅するアンプと、
を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の試験装置。
【請求項4】
前記複数の磁気検出ユニットはそれぞれ、磁気センサを含み、
前記診断用プローブカードは、前記複数の磁気検出ユニットに対応する複数のアンプを含み、各アンプは、対応する磁気センサが出力する電気信号を増幅することを特徴とする請求項1または2に記載の試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
次世代のメモリとして、磁気抵抗メモリ(MRAM:Magnetoresistive Random Access Memory)が開発されている。磁気抵抗メモリは、磁気トンネル接合(MTJ:Magnetic Tunnel Junction)の磁化状態を利用して情報を記録するため、SRAM(Static RAM)やDRAM(Dynamic RAM)などの電荷を利用したメモリと異なり、不揮発性を有する。
【0003】
MRAMは、データの書き込みに際して、MTJに磁場を印加することにより、MTJの磁化の状態を変化させる必要がある。言い換えると、外部の磁場によってMTJの磁化の状態が変化すると、データが破壊される。そのため、MRAMは、電気的特性に加えて、外部印加磁場などの磁気的特性も含めて今後、仕様が定められ、MRAMは、組み立て工程前に磁気的特性を試験する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-024518号公報
【文献】特開2008-139305号公報
【文献】特開2004-151056号公報
【文献】特開2012-198102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
MRAMデバイスは、DRAM等と同じようにチップにダイシングされる前のウェハの状態で試験される。試験装置は、広範囲にわたり外部磁場を印加した状態で、複数のチップを同時に試験する。ここで、試験装置は、広範囲に分布する複数のチップに対して、仕様を満たす外部磁場が印加されていることを保証する必要がある。
【0006】
従来では、試験装置とは別に、市販の磁気センサを用意し、磁気センサを、外部磁場が印加すべき領域の近傍に配置して外部磁場を測定する必要があった。この手法では、磁気センサと、実際のウェハの高さ方向の位置を完全に一致させることが難しい。磁場の強度は、距離の2乗に反比例するため、わずかな位置のズレは、大きな測定誤差となって現れるところ、従来の市販の磁気センサにより測定した磁場は、ウェハ上のMRAMデバイスに印加されるであろう実際の磁場と異なる値を示す。
【0007】
また、市販の磁気センサを用いる場合、そのサイズ的、コスト的な観点から、使用できる磁気センサの個数は限られる。したがって、数点の磁場は測定できるが、空間的な磁場の分布を測定することは難しい。
【0008】
ここではMRAMデバイスを例として説明したが、磁気センサが集積化されたチップの試験装置においても、同様の問題が生ずる。
【0009】
本発明は係る課題に鑑みてされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、ウェハ上のデバイスに印加される磁場を測定可能な試験装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のある態様は、磁気抵抗メモリまたは磁気センサを含む被試験デバイスが形成された被試験ウェハを試験する試験装置に関する。試験装置は、テストヘッドと、試験工程において被試験ウェハが載置されるステージと、試験工程において被試験ウェハに磁場を印加する磁場印加装置と、試験工程において使用され、被試験ウェハに対してプローブコンタクト可能に構成される試験用プローブカードと、複数の磁気検出ユニットが形成されており、試験装置の診断工程において、被試験ウェハに替えてステージに載置され、各磁気検出ユニットにより磁場印加装置が発生する磁場を測定可能な診断用ウェハと、診断工程において試験用プローブカードに替えて使用され、診断用ウェハに対してプローブコンタクト可能に構成される診断用プローブカードと、を備える。
【0011】
診断用ウェハに形成した磁気検出ユニットは、被試験ウェハに形成される被試験デバイスと同じ高さに存在することとなる。したがって、診断用ウェハ上の磁気検出ユニットによって、被試験ウェハに形成される被試験デバイスに印加されるであろう外部磁場を正確に測定することが可能となる。磁気検出ユニットの出力は、診断用プローブカードを介してテストヘッドに入力され、テストヘッドあるいはテスタ本体のハードウェアを有効利用して処理することができる。
【0012】
試験装置は、試験用プローブカードまたは診断用プローブカードとテストヘッドの間に設けられる接続ユニットをさらに備え、磁場印加装置は、接続ユニットに設けられてもよい。電磁石は与える電流量に依って磁場強度が変化するため、それ自体が発熱体となるが、この構成では、発熱体である磁場印加装置を、ウェハによって、温度制御すべきステージと分離することができる。また、磁場印加装置を、ステージの下側や側方に設ける場合、磁場印加装置に対する制御信号を伝送するための配線やインタフェースを、新たに追加する必要がある。これに対して本態様では、テストヘッドと接続ユニットの間の既存のインタフェースを利用して、磁場印加装置に対する制御信号を伝送できるため、システムを簡素化できる。
【0013】
磁場印加装置は、ステージの下側に設けられてもよし、ステージの側方に設けられてもよい。
【0014】
複数の磁気検出ユニットはそれぞれ、磁気センサと、磁気センサが出力する電気信号を増幅するアンプと、を含んでもよい。磁気センサは、磁場に応じて電気的な状態が変化する素子であり、その限りでないが、MR(磁気抵抗)素子や、MI(磁気インピーダンス)素子、ホール素子などが例示される。アンプを診断用ウェハに集積化し、増幅後の信号を、プローブカードによって読み出すことにより、ノイズ耐性を高めることができる。
【0015】
複数の磁気検出ユニットはそれぞれ、磁気センサを含んでもよい。診断用プローブカードは、複数の磁気検出ユニットに対応する複数のアンプを含んでもよい。各アンプは、対応する磁気センサが出力する電気信号を増幅する。この場合、アンプとしてディスクリート部品を利用できるため、診断用ウェハに集積化されるアンプよりも性能が安定した、および/または高性能なものを用いることができる。
【0016】
なお、以上の構成要素を任意に組み合わせたもの、あるいは本発明の表現を、方法、装置などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0017】
本発明のある態様によれば、ウェハ上のデバイスに印加される磁場を測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】被試験ウェハを示す図である。
図2】実施の形態1に係る試験装置のブロック図である。
図3】診断用ウェハを示す図である。
図4】診断工程における試験装置の構成を示す図である。
図5】磁場印加装置の断面図である。
図6】変形例1に係る試験装置を示す図である。
図7】変形例2に係る試験装置を示す図である。
図8】変形例3に係る試験装置を示す図である。
図9】変形例1に係る磁場印加装置の断面図である。
図10図10(a)~(c)は、変形例5に係る磁気検出ユニットおよびテストヘッドの回路図である。
図11】実施の形態2に係る試験装置のブロック図である。
図12】実施の形態3に係る試験装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0020】
(実施の形態1)
図1は、被試験ウェハ10を示す図である。被試験ウェハ10には、複数の被試験デバイス12が形成されており、ダイシングすることにより、被試験デバイス12のチップが得られる。本実施の形態において被試験デバイス12はMRAMであり、MRAMのセルを構成するMTJや、その周辺回路、コンタクト用の複数のピン(電極)を有する。破線14は、後述の試験装置100によって同時測定される範囲(同測領域という)を示しており、通常、試験装置100は、複数の(たとえば256個、128個など)被試験デバイス12を同時に測定する。
【0021】
図2は、実施の形態1に係る試験装置のブロック図である。試験装置100は、図1の被試験ウェハ10を試験するウェハ検査装置である。試験装置100は、テスタ本体110、テストヘッド120、ステージ130、磁場印加装置140、ウェハ接続HiFix150、試験用プローブカード160、診断用ウェハ170、診断用プローブカード180を備える。
【0022】
テスタ本体110は、テストプログラムを実行する演算処理装置を備え、試験装置100を統合的に制御する。
【0023】
テストヘッド120には、被試験デバイス12に電力を供給するデバイス電源122や、電圧電流測定器(DVM)124、パターン発生器126、インタフェース回路128などのハードウェアが内蔵される。これらのハードウェアは、テスタ本体110によって制御される。これらのハードウェアの一部は、テスタ本体110に設けられてもよい。インタフェース回路(トランシーバ)128は、ウェハ接続HiFix150に設けられるインタフェース回路152との間で、データを送受信可能に構成される。インタフェース回路128の種類は特に限定されないが、たとえばイーサネット(登録商標)やUSB(Universal Serial Bus)などのプロトコルを採用してもよい。
【0024】
ステージ130はチャックとも称され、試験工程においてその上に、被試験ウェハ10が載置される。ステージ130は、X,Y、Z方向に移動可能であり、さらにZ軸周りのθ方向に回動可能であってもよい。
【0025】
磁場印加装置140は、試験工程において被試験ウェハ10に外部磁場BEXを印加する。具体的には磁場印加装置140は、被試験ウェハ10の同測領域14に、言い換えると、同測領域14に含まれる複数の被試験デバイス12に対して、実質的に均一な外部磁場BEXを印加するように構成されている。磁場印加装置140の構成は特に限定されないが、外部磁場BEXの大きさや波形を電気的に制御可能な電磁石で構成するとよい。
【0026】
MRAMには、垂直磁場を印加するタイプと、水平磁場を印加するタイプが存在する。磁場印加装置140が発生する外部磁場BEXの向きは、MRAMの種類に応じて定められ、本実施の形態では、外部磁場BEXは被試験ウェハ10に対して垂直方向を向くものとする。
【0027】
試験用プローブカード160は、試験工程において、被試験ウェハ10に対してプローブコンタクト可能に構成される。具体的には試験用プローブカード160の底面には、被試験ウェハ10の複数のピンと接触可能な複数のプローブ針162が設けられる。
【0028】
テストヘッド120と試験用プローブカード160の間には、ウェハ接続HiFix(High Fidelity Tester Access Fixture)150と呼ばれる接続ユニット(インタフェース)が設けられ、ウェハ接続HiFix150を経由して、テストヘッド120と試験用プローブカード160の間の信号が伝送される。本実施の形態において、磁場印加装置140は、ウェハ接続HiFix150に設けられている。磁場印加装置140に対する制御信号は、テストヘッド120のインタフェース回路128と、ウェハ接続HiFix150のインタフェース回路152の間の通信によって伝送することができる。
【0029】
以上が試験装置100の基本構成である。通常の試験工程では、同測領域14に含まれる複数の被試験デバイス12に対して、磁場印加装置140によって外部磁場BEXを印加しながら、被試験デバイス12であるMRAMに対するデータの書き込みや読み出しを行い、被試験デバイス12が正常に動作するか否かが検査される。ステージ130によって被試験ウェハ10の位置を移動させ、同じ処理を繰り返すことにより、被試験ウェハ10の全チップが検査される。
【0030】
試験装置100は、診断工程において、磁場印加装置140が発生する外部磁場BEXを測定可能となっている。磁場印加装置140の診断、校正のために、試験装置100は、診断用ウェハ170および診断用プローブカード180とともに使用される。
【0031】
図3は、診断用ウェハ170を示す図である。診断用ウェハ170は、試験装置100の診断工程において、被試験ウェハ10に替えてステージ130に載置される。診断用ウェハ170には、磁場印加装置140が発生する磁場BEXを測定可能な複数の磁気検出ユニット172が形成されている。図3には、同測領域14が破線で示される。同測領域14は、均一な外部磁場BEXの印加を保証すべき範囲といえる。診断用ウェハ170の材料は特に限定されないが、シリコンやSiC、GaNなどの半導体基板であってもよいし、半導体以外の基板であってもよい。
【0032】
複数の磁気検出ユニット172は、被試験ウェハ10に対して磁場印加装置からの外部磁場BEXの強度分布が均一を保証される同測領域14あるいはそれより広い範囲にわたって配置され、外部磁場BEXの強度分布を取得可能となっている。ここでは9個の磁気検出ユニット172が示されるが、磁気検出ユニット172の個数は限定されず、高い空間分解能が必要であれば、その個数を多くし、そうで無い場合はその個数を減らすことができる。
【0033】
図2に戻る。診断用プローブカード180は診断用ウェハ170とセットで使用され、診断工程において試験用プローブカード160に替えてウェハ接続HiFix150に装着される。診断用プローブカード180は、診断用ウェハ170と対向して設けられ、診断用ウェハ170に対してプローブコンタクト可能に構成される。具体的には診断用プローブカード180の底面には、診断用ウェハ170の複数のピンと接触可能な複数のプローブ針182が設けられる。
【0034】
図4は、診断工程における試験装置100の構成を示す図である。診断用ウェハ170には、複数の磁気検出ユニット172が形成されている。磁気検出ユニット172は、磁気センサ174と、磁気センサ174の出力である電気信号H+,H-を差動増幅するアンプ176を含み、三端子構造(VDD,GND,OUT)を有する。この例では、磁気センサ174はホール素子である。磁気検出ユニット172の電源ピンVDDには、ウェハ接続HiFix150および診断用プローブカード180を介して、デバイス電源122が発生する電源電圧が供給される。また磁気検出ユニット172の接地ピンVDDには、ウェハ接続HiFix150および診断用プローブカード180を介して、デバイス電源122の接地電圧が供給される。また磁気検出ユニット172の出力ピンOUTには、磁気センサ174が受けた外部磁場BEXに応じた検出信号が発生する。出力ピンOUTは、ウェハ接続HiFix150および診断用プローブカード180を介して、DVM124と接続されており、検出信号がデジタル信号として取り込まれる。
【0035】
ウェハ接続HiFix150には、磁場印加装置140が設けられる。なお、スペースの関係で磁場印加装置140を縮小して示すが、実際には、複数の磁気検出ユニット172をカバーする面積を有する。磁場印加装置140は、ひとつまたは複数のコア142と、各コア142に巻装されるコイル144と、駆動回路146を備える。駆動回路146は、テストヘッド120から供給される制御信号を受け、制御信号に応じて、コイル144に流れる電流を制御し、外部磁場BEXを発生させる。
【0036】
診断工程においては、診断用ウェハ170に形成される複数N個の磁気検出ユニット172の全部に対して、一斉にコンタクトを取り、N個すべての磁気検出ユニット172を利用して、N点の外部磁場BEXを一斉に測定するようにしてもよい。あるいはN点の外部磁場BEXを一斉に測定するのではなく、何回かに分けて測定してもよい。
【0037】
図5は、磁場印加装置140の断面図である。磁場印加装置140は、コア142と、コア142に巻装されるコイル144を備える。この構成によれば、被試験ウェハ10に対して垂直な外部磁場BEXを印加できる。磁場印加装置140は上述のようにウェハ接続HiFix150に内蔵されている。図5では、試験用プローブカード160は省略している。
【0038】
以上が試験装置100の構成である。続いて、試験装置100の利点を説明する。
【0039】
診断用ウェハ170に形成した磁気検出ユニット172は、被試験ウェハ10に形成される被試験デバイス12と同じ高さに存在することとなる。したがって、診断用ウェハ170上の磁気検出ユニット172によって、被試験ウェハ10に形成される被試験デバイス12に印加されるであろう外部磁場BEXを正確に測定することが可能となる。
【0040】
磁気検出ユニット172は診断用ウェハ170に半導体プロセスで集積化して作製することができるため、従来の市販の磁気プローブよりも高密度に配置することができる。したがって、N個の磁気検出ユニット172によって、磁場印加装置140が発生する外部磁場BEXを多点で測定でき、その強度分布を得ることができる。
【0041】
従来の市販磁気プローブを用いる手法では、磁気プローブに専用の計測器を用いる必要があり、計測器の出力をテスタ本体110に取り込みたい場合、ユーザは、複雑な試験システムを構築する必要がある。これに対して、本実施の形態では、磁気検出ユニット172から得られる電気信号を、テストヘッド120に内蔵されるハードウェア、すなわち試験装置100が標準的に備えるハードウェアを利用して処理することができ、さらに、得られた磁気分布に関するデータをテスタ本体110が直接的に処理することが可能である。
【0042】
さらに、本実施の形態では、磁場印加装置140をウェハ接続HiFix150に内蔵することとした。多くの試験装置において、被試験ウェハ10の温度特性が検査され、ステージ130の温度は動的に制御される。磁場印加装置140を構成する電磁石は、与える電流量に依って磁場強度が変化するとともに、それ自体が発熱体となるため、磁場印加装置140を、温度制御可能なステージ130と近接して配置させると、ステージ130の温度制御に悪影響を及ぼすおそれがある。本実施の形態によれば、磁場印加装置140を、試験用プローブカード160および被試験ウェハ10(あるいは診断用ウェハ170および診断用プローブカード180)によって、熱源であるステージ130と分離することができ、熱の影響を受けにくくできる。
【0043】
第2、第3の実施の形態で説明するように、磁場印加装置140をステージ130の下側あるいは側方に配置することも可能であるが、その場合、テストヘッド120から磁場印加装置140を制御するための制御ラインを、別途設ける必要がある。これに対して実施の形態1によれば、磁場印加装置140をウェハ接続HiFix150に内蔵しているため、テストヘッド120とウェハ接続HiFix150の間の既存のインタフェース回路128,152を利用して、磁場印加装置140に対する制御信号を伝送できるため、システムを簡素化できる。さらに磁場印加装置140を、テストヘッド120に内蔵されるハードウェアと同列に扱うことが可能となるため、磁場印加装置140に対する制御命令を、テスタ本体110が実行するテストプログラムに記述することが可能となる。
【0044】
続いて実施の形態1に関連する変形例を説明する。
【0045】
(変形例1)
図6は、変形例1に係る試験装置100Aを示す図である。この変形例1では、診断用プローブカード180において、複数の磁気検出ユニット172のGNDピンは共通に接続され、接地されている。診断用プローブカード180においてGNDピン同士をショートすることにより、インピーダンスを下げることができ、ノイズに対する耐性を高めることができる。
【0046】
(変形例2)
図7は、変形例2に係る試験装置100Bを示す図である。磁気検出ユニット172は、磁気センサ174と、電源ピンVDD、接地ピンGND、一対の出力ピンOUTP,OUTNを有する。磁気センサ174が発生する正極と負極の電気信号H+,H-は、出力ピンOUTP,OUTNを経由して、診断用プローブカード180に供給される。診断用プローブカード180は、電気信号H+,H-を差動増幅するアンプ184を備える。アンプ184の出力は、ウェハ接続HiFix150を経由してDVM124に供給され、取り込まれる。
【0047】
上述の変形例1は、変形例2に比べてプローブ針182の本数を減らすことができるという利点がある。一方、変形例2は、アンプ184としてディスクリート部品を利用できるため、診断用ウェハ170に集積化されるアンプ176よりも性能が安定した、および/または高性能なものを用いることができる。
【0048】
(変形例3)
図8は、変形例3に係る試験装置100Cを示す図である。磁気検出ユニット172の構成は変形例2と同様である。変形例3では、磁気センサ174が発生する正極と負極の電気信号H+,H-は、出力ピンOUTP,OUTN、診断用プローブカード180、ウェハ接続HiFix150を介して、DVM124に供給され、取り込まれる。変形例3は、電気信号H+,H-の信号レベルが十分に大きく、S/N比が高いプラットフォームにおいて有効である。
【0049】
(変形例4)
実施の形態1では、被試験ウェハ10に対して垂直方向の外部磁場BEXを発生したがその限りでなく、磁場印加装置140は、被試験ウェハ10の面内方向の外部磁場BEXを印加するよう構成されてもよい。図9は、変形例1に係る磁場印加装置140Dの断面図である。磁場印加装置140は上述のようにウェハ接続HiFix150に内蔵される。図9では、試験用プローブカード160は省略している。
【0050】
(変形例5)
磁気検出ユニット172は、磁気センサ174としてホール素子に替えて、磁場に応じて抵抗が変化するMR(磁気抵抗)センサを備えてもよい。図10(a)~(c)は、変形例5に係る磁気検出ユニット172およびテストヘッド120の回路図である。図10(a)、(b)の磁気検出ユニット172E、172FはMR素子178を含む。図10(a)のテストヘッド120Eは、電流印加/電圧測定によって、MR素子178の抵抗値の変化を検出する。図10(b)のテストヘッド120Fは、電圧印加/電流測定によって、MR素子178の抵抗値の変化を検出する。図10(c)の磁気検出ユニット172Gは、MR素子178に加えて、抵抗179を含む。テストヘッド120Gは、FORCEピンとGNDピンの間に定電圧を印加し、SENSEピンに発生する電圧を測定する。抵抗179を、診断用プローブカード180に設けてもよい。
【0051】
(変形例6)
実施の形態では、被試験ウェハ10を分割して検査する場合を説明したが、ウェハ一括方式(Full Wafer Contact)にも本発明は適用可能である。この場合、磁場印加装置140は、被試験ウェハ10の全面にわたり、均一な磁場を印加可能に構成される。
【0052】
(実施の形態2)
実施の形態1では、磁場印加装置140をウェハ接続HiFix150に内蔵する場合を説明したが、その限りでない。図11は、実施の形態2に係る試験装置100Hのブロック図である。実施の形態2では、磁場印加装置140は、ステージ130の下側に配置される。上述のようにステージ130は熱源であり、磁場印加装置140は熱の影響を受けやすいため、磁場印加装置140とステージ130の間を断熱するとよい。
【0053】
磁場印加装置140が発生する外部磁場BEXは、被試験ウェハ10の垂直方向でもよいし、面内方向でもよい。
【0054】
(実施の形態3)
図12は、実施の形態3に係る試験装置100Iのブロック図である。実施の形態3では、磁場印加装置140は、ステージ130の横に配置され、被試験ウェハ10の面内方向の外部磁場BEXを発生する。この構成によれば、広範囲にわたり均一な磁場を形成できる。
【0055】
実施の形態1~3では、被試験デバイス12が、MRAMである場合を説明したがその限りでなく、被試験デバイス12は、ホールセンサやMRセンサなどを含む磁気センサであってもよい。この場合、磁場印加装置140が発生する外部磁場BEXを変化させ、それに対する磁気センサの応答性が測定される。
【0056】
実施の形態にもとづき本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0057】
100 試験装置
110 テスタ本体
120 テストヘッド
122 デバイス電源
124 DVM
126 パターン発生器
128 インタフェース回路
130 ステージ
140 磁場印加装置
142 コア
144 コイル
146 駆動回路
150 ウェハ接続HiFix
152 インタフェース回路
160 試験用プローブカード
162 プローブ針
170 診断用ウェハ
172 磁気検出ユニット
174 磁気センサ
176 アンプ
178 MR素子
179 抵抗
180 診断用プローブカード
182 プローブ針
184 アンプ
10 被試験ウェハ
12 被試験デバイス
14 同測領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12