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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】過熱蒸気を用いた温水ボイラ装置
(51)【国際特許分類】
   F24H 1/18 20220101AFI20230801BHJP
   F22G 1/16 20060101ALI20230801BHJP
   F22B 1/28 20060101ALI20230801BHJP
   F24H 15/37 20220101ALI20230801BHJP
   F24H 15/223 20220101ALI20230801BHJP
   F24H 15/25 20220101ALI20230801BHJP
【FI】
F24H1/18 R
F22G1/16
F22B1/28 Z
F24H15/37
F24H1/18 M
F24H15/223
F24H15/25
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022207006
(22)【出願日】2022-12-23
【審査請求日】2022-12-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】392032144
【氏名又は名称】有限会社ティエスエンジニアリング
(73)【特許権者】
【識別番号】314001933
【氏名又は名称】小野 真人
(73)【特許権者】
【識別番号】522500088
【氏名又は名称】阪東テクノス有限会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100011
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 省三
(72)【発明者】
【氏名】小野 達實
【審査官】大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】特公平04-059541(JP,B2)
【文献】中国実用新案第2603346(CN,Y)
【文献】特開2012-005627(JP,A)
【文献】特開2019-120421(JP,A)
【文献】国際公開第2004/005798(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/18
F22G 1/16
F22B 1/28
F24H 15/37
F24H 15/223
F24H 15/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から断熱された1つの断熱構造体を加熱プレートで上下に分割して下部を過熱蒸気発生ユニットとし、上部を水処理槽とした温水ボイラ装置であって、
前記過熱蒸気発生ユニットは水入口、過熱蒸気出口及び前記過熱蒸気発生ユニット内の水を過熱して過熱蒸気を発生させかつ前記加熱プレートを加熱させるためのヒータを具備し、
前記水処理槽は上部に第1の温水出口を有し、
前記過熱蒸気発生ユニットの前記過熱蒸気出口と前記水処理槽の下部とは連結パイプによって接続され、前記過熱蒸気が前記過熱蒸気発生ユニットの前記過熱蒸気出口から前記連結パイプを介して前記水処理槽の下部に抽入されるようにし、
前記水処理槽内の水は前記過熱蒸気の直接加熱及び前記加熱プレートからの輻射熱によって加熱されるようにし、
前記ヒータは前記加熱プレートに対向した導電中空管ヒータである温水ボイラ装置。
【請求項2】
前記加熱プレートは黒体セラミックを焼き付けた鉄板を具備する請求項1に記載の温水ボイラ装置。
【請求項3】
前記水処理槽は、前記連結パイプに接続され、複数の過熱蒸気吐出ノズルを有する過熱蒸気吐出パイプを具備する請求項1に記載の温水ボイラ装置。
【請求項4】
前記過熱蒸気吐出パイプはU字状をなしている請求項に記載の温水ボイラ装置。
【請求項5】
外部から断熱された1つの断熱構造体を加熱プレートで上下に分割して下部を過熱蒸気発生ユニットとし、上部を水処理槽とした温水ボイラ装置であって、
前記過熱蒸気発生ユニットは水入口、過熱蒸気出口及び前記過熱蒸気発生ユニット内の水を過熱して過熱蒸気を発生させかつ前記加熱プレートを加熱させるためのヒータを具備し、
前記水処理槽は上部に第1の温水出口を有し、
前記過熱蒸気発生ユニットの前記過熱蒸気出口と前記水処理槽の下部とは連結パイプによって接続され、前記過熱蒸気が前記過熱蒸気発生ユニットの前記過熱蒸気出口から前記連結パイプを介して前記水処理槽の下部に抽入されるようにし、
前記水処理槽内の水は前記過熱蒸気の直接加熱及び前記加熱プレートからの輻射熱によって加熱されるようにし、
さらに、
前記水処理槽の上部に設けられた第2の温水出口と前記過熱蒸気発生ユニットの前記水入口との間に設けられた飽和蒸気発生ユニットを具備し、前記水として飽和蒸気を前記過熱蒸気発生ユニットに供給するようにした温水ボイラ装置。
【請求項6】
前記連結パイプに前記過熱蒸気を前記過熱蒸気発生ユニットから前記水処理槽へ一方向に流れさせるための逆止弁を設けた請求項1に記載の温水ボイラ装置。
【請求項7】
外部から断熱された1つの断熱構造体を加熱プレートで上下に分割して下部を過熱蒸気発生ユニットとし、上部を水処理槽とした温水ボイラ装置であって、
前記過熱蒸気発生ユニットは水入口、過熱蒸気出口及び前記過熱蒸気発生ユニット内の水を過熱して過熱蒸気を発生させかつ前記加熱プレートを加熱させるためのヒータを具備し、
前記水処理槽は上部に第1の温水出口を有し、
前記過熱蒸気発生ユニットの前記過熱蒸気出口と前記水処理槽の下部とは連結パイプによって接続され、前記過熱蒸気が前記過熱蒸気発生ユニットの前記過熱蒸気出口から前記連結パイプを介して前記水処理槽の下部に抽入されるようにし、
前記水処理槽内の水は前記過熱蒸気の直接加熱及び前記加熱プレートからの輻射熱によって加熱されるようにし、
前記過熱蒸気発生ユニットの前記水入口と前記過熱蒸気出口との間に絶縁カプラを設けた温水ボイラ装置。
【請求項8】
外部から断熱された1つの断熱構造体を加熱プレートで上下に分割して下部を過熱蒸気発生ユニットとし、上部を水処理槽とした温水ボイラ装置であって、
前記過熱蒸気発生ユニットは水入口、過熱蒸気出口及び前記過熱蒸気発生ユニット内の水を過熱して過熱蒸気を発生させかつ前記加熱プレートを加熱させるためのヒータを具備し、
前記水処理槽は上部に第1の温水出口を有し、
前記過熱蒸気発生ユニットの前記過熱蒸気出口と前記水処理槽の下部とは連結パイプによって接続され、前記過熱蒸気が前記過熱蒸気発生ユニットの前記過熱蒸気出口から前記連結パイプを介して前記水処理槽の下部に抽入されるようにし、
前記水処理槽内の水は前記過熱蒸気の直接加熱及び前記加熱プレートからの輻射熱によって加熱されるようにし、
さらに、
前記過熱蒸気発生ユニットは前記ヒータの前記加熱プレートの反対側に設けられたリフレクタを具備する温水ボイラ装置。
【請求項9】
さらに、
前記過熱蒸気発生ユニット内に前記ヒータの温度を検出するための第1の温度センサと、
前記水処理槽の上部に設けられた第2の温度センサと、
前記第1の温度センサの検出温度値が第1の所定値以上となるように前記ヒータを制御し、前記第1の温度センサの検出温度値が第1の所定値となったときに、前記過熱蒸気を前記過熱蒸気発生ユニットから前記水処理槽の下部へ送り込み、次いで前記第2の温度センサの検出温度値が第2の所定値となるように前記ヒータを制御するための制御ユニットと
を具備する請求項1に記載の温水ボイラ装置。
【請求項10】
前記制御ユニットは、前記第2の温度センサの検出温度値が第3の所定値以上のときに温水要求があった場合に、前記水処理槽の温水を前記第1の温水出口から外部へ供給するようにする請求項に記載の温水ボイラ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は過熱蒸気を用いた温水ボイラ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
重油、灯油、ガス類の化石燃料由来のエネルギーを用いずに過熱蒸気を用いた過熱蒸気発生ユニットが知られている。尚、過熱蒸気は飽和蒸気をさらに加熱することにより得られ、飽和蒸気に比較して少酸素状態となるので、水等の処理物、乾留ガス等が酸化、燃焼することがない。
【0003】
従来、脱化石燃料による過熱蒸気発生ユニットとしては、外部から断熱された飽和蒸気入口及び過熱蒸気出口を有する密閉空間に電気的に駆動される螺旋状の赤外線パイプヒータを設けたものがある(参照:特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-75891号公報(特許第4227637号公報)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来、上述の過熱蒸気を用いた温水ボイラ装置は、存在しない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するために、本発明に係る温水ボイラ装置は、外部から断熱された1つの断熱構造体を加熱プレートで上下に分割して下部を過熱蒸気発生ユニットとし、上部を水処理槽とした温水ボイラ装置であって、過熱蒸気発生ユニットは、水入口、過熱蒸気出口及び過熱蒸気発生ユニット内の水を過熱して過熱蒸気を発生させかつ加熱プレートを加熱させるためのヒータを具備し、水処理槽は上部に第1の温水出口を有し、過熱蒸気発生ユニットと水処理槽の下部とは連結パイプによって接続され、過熱蒸気が過熱蒸気発生ユニットの過熱蒸気出口から連結パイプを介して水処理槽の下部に抽入されるようにし、水処理槽内の水は過熱蒸気の直接加熱及び加熱プレートからの輻射熱によって加熱されるようにし、ヒータは加熱プレートに対向した導電中空管ヒータである
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、過熱蒸気発生ユニットと水処理槽とは1つの断熱構造体内において上下2層構造となっているので、装置を小型化できる。また、水処理槽の下部の水は過熱蒸気発生ユニットの過熱蒸気による直接加熱に加えて加熱プレートからの輻射熱によっても加熱されるので、熱効率を高くでき、従って、ランニングコストを低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係る温水ボイラ装置の実施の形態を示す概略図である。
図2図1の温水ボイラ装置の詳細を示し、(A)は正面図、(B)は上面図である。
図3図1の過熱蒸気発生ユニットの詳細を示し、(A)は一部切り欠いた上面図、(B)は(A)のB-B線断面図、(C)は(A)の一部切り欠いた左側面図である。
図4図1の連結パイプ近傍の詳細を示し、(A)は拡大図、(B)は(A)の拡大右側面図である。
図5図1の加熱プレートの詳細を示し、(A)は上面図、(B)は(A)のB-B線断面図、(C)は(B)のLアングルバー拡大図である。
図6図1の過熱蒸気吐出パイプの詳細を示し、(A)は上面図、(B)は正面図である。
図7図1の制御ユニットの導電中空管ヒータの制御を説明するためのフローチャートである。
図8図1の制御ユニットの温水供給の制御を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は本発明に係る温水ボイラ装置の実施の形態を示す概略図である。
【0010】
図1において、温水ボイラ装置は、断熱材Dによって外部から断熱された1つの断熱構造体Sを有し、断熱構造体Sは加熱プレート1によって上下に分割され、下部は過熱蒸気発生ユニット2を構成し、上部は水処理槽3を構成する。尚、断熱構造体Sは上下に予め分割され、後述のパッキン37によって結合される。従って、水処理槽3は容量が異なる水処理槽に容易に変更できる可換型となる。
【0011】
過熱蒸気発生ユニット2は、飽和蒸気発生ユニット4から100℃程度の飽和蒸気Xを飽和蒸気入口21aに受け取り、600℃~800℃程度の過熱蒸気Yを過熱蒸気出口21bから水処理槽3の下部に送り込むために、赤外線を内部放射する導電中空管ヒータ21を有する。この場合、導電中空管ヒータ21の飽和蒸気入口21a(電極)と過熱蒸気出口21b(電極)との間には駆動交流電圧Vが印加される。また、飽和蒸気入口21a及び過熱蒸気出口21bを含む導電中空管ヒータ21はたとえば700℃程度の高温に設定する場合には、インコネル、ハステロイ又はステンレス等で構成され、700℃程度を超えて設定する場合には、炭化珪素、炭素又はグラファイト炭素等で構成される。また、導電中空管ヒータ21には、導電中空管ヒータ21の温度T1を検出するための温度センサ(熱電対)21cが設けられている。尚、導電中空管ヒータ21、飽和蒸気入口21a、過熱蒸気出口21b、温度センサ21cの詳細については、図3を用いて後述する。
【0012】
過熱蒸気発生ユニット2の過熱蒸気出口21bと水処理槽3の下部との間にはステンレス等の連結パイプ31が設けられ、さらに、連結パイプ31の途中に逆止弁31aが設けられている。これにより、過熱蒸気Yが確実に一方向で過熱蒸気発生ユニット2から水処理槽3の下部に送り込まれるようになる。
【0013】
水処理槽3には、連結パイプ31からの過熱蒸気Yが水処理槽3の下部に拡散するように、複数の吐出ノズル32aを有する過熱蒸気吐出パイプ32が設けられている。この結果、水処理槽3の下部の水は過熱蒸気Yによって効率的に加熱される。これに加えて、水処理槽3の下部の水は導電中空管ヒータ21の赤外線を受けた加熱プレート1からの遠赤外光による輻射熱Hによって加熱されることになる。このように、水処理槽3の下部の水は過熱蒸気Yによる直接加熱及び加熱プレート1からの輻射熱Hによる加熱で高熱効率で高温となる。
【0014】
水処理槽3においては、下部の水が過熱蒸気Y及び加熱プレート1からの輻射熱Hによって温められ、対流が発生する。この結果、過熱蒸気Yは水に戻り、水処理槽3の上部の水の温度は80℃程度となる。他方、水が水処理槽3のボールバルブが設けられた水入口33から常時流れ込み、水処理槽3の温水出口34a、34bから温水Za、Zbが流れ出る。この場合、温水Zaはたとえば電磁弁V1を介して施設たとえばホテルの各部屋に供給され、他方、温水Zbは飽和蒸気発生ユニット4に供給される。尚、電磁弁V1は施設たとえばホテルの各部屋の温水要求信号REQ1、REQ2、…に応じてオン/オフ制御される。
【0015】
飽和蒸気発生ユニット4はたとえば80℃程度の温水Zbを加熱して100℃~120℃程度の飽和蒸気Xを発生するものであって、比較的小型でかつ電気で駆動される。飽和蒸気発生ユニットとしてはたとえばナカモト社の型番商標NBC2101Rのライトボイラーがある。すなわち、飽和蒸気発生ユニット4は、温水ボイラ装置が立上げ後であれば、水ではなく高温の温水Zbを受けるので、省エネルギーを実現できる。そして、飽和蒸気発生ユニット4の飽和蒸気Xは電磁弁V2を介して過熱蒸気発生ユニット2の飽和蒸気入口21aに供給される。
【0016】
電源回路5は1次側コイル及び複数の2次側コイルを有し、3相電圧200Vを受けて種々の交流電圧を発生して制御ユニット6に供給する。この場合、制御ユニット6は種々の交流電圧を受けて1つだけを選択して送出するためのマルチプレクサを有する。制御ユニット6は温水ボイラ装置全体を制御する。制御ユニット6は、上述のマルチプレクサに加えて、中央処理装置(CPU)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、フラッシュメモリ、アナログ/ディジタル(A/D)変換器、D/A変換器、入出力インタフェース等を含むコンピュータで構成される。尚、飽和蒸気発生ユニット4は制御ユニット6を介さずに手動で動作させてもよい。
【0017】
図2図1の温水ボイラ装置の詳細を示し、(A)は正面図、(B)は上面図である。
【0018】
図2に示すように、加熱プレート1、過熱蒸気発生ユニット2及び水処理槽3を構成する断熱構造体Sの左後方に飽和蒸気発生ユニット4に設け、その前方に電源回路5を設ける。制御ユニット6は断熱構造体Sの上部に取付けられる。断熱構造体Sの上部つまり水処理槽3の上部に水処理槽3の内圧が一定値以上になったときに蒸気を排出するための蒸気弁36を設ける。また、断熱構造体Sの下部を支持する架台7を設けると共に、架台7にはキャスタ7aを設け、これにより、断熱構造体S全体が移動可能となっている。他方、飽和蒸気発生ユニット4及び電源回路5を支持する架台8を設けると共に、架台8にはキャスタ8aを設け、飽和蒸気発生ユニット4及び電源回路5全体が移動可能となっている。
【0019】
図3図1の過熱蒸気発生ユニットの詳細を示し、(A)は一部切り欠いた上面図、(B)は(A)のB-B線断面図、(C)は(A)の一部切り欠いた左側面図である。
【0020】
図3に示すように、導電中空管ヒータ21は、飽和蒸気入口21aからボックス23内で熱放散効率が大きいヘアピン形状となって過熱蒸気出口21bに戻るように構成されている。ボックス23内において、導電中空管ヒータ21の下部にはリフレクタ24が設けられ、リフレクタ24はリフレクタステー25によってボックス23に支持されている。導電中空管ヒータ21自身はセラミックホルダ26に支持され、セラミックホルダ26はセラミックステー27で支持され、セラミックステー27はホルダステー28によってボックス23内に固定される。導電中空管ヒータ21からの熱は上方の加熱プレート1に伝達され、加熱プレート1は輻射熱H(遠赤外光)を水処理槽3内に送出する。特に、リフレクタ24の存在により、導電中空管ヒータ21からの赤外光がリフレクタ24に反射されて加熱プレート1からの輻射熱H(遠赤外光)が増大するので、熱効率の上昇に役立つものである。
【0021】
図4図1の連結パイプ31近傍の詳細を示し、(A)は拡大図、(B)は(A)の拡大右側面図である。
【0022】
図4に示すように、飽和蒸気入口21aの飽和蒸気側電極21a-1と過熱蒸気出口21bの過熱蒸気側電極21b-1とは絶縁カプラ31bによって電気的に絶縁されている。尚、21a-2、21b-2は放熱板である。
【0023】
図5図1の加熱プレート1の詳細を示し、(A)は上面図、(B)は(A)のB-B線断面図、(C)は(B)のLアングルバー拡大図である。
【0024】
図5に示すように、加熱プレート1は、鉄板たとえばステンレス(SUS304)の表面を黒体セラミック焼結処理したものである。加熱プレート1上には、水処理槽3の過熱蒸気吐出パイプ32を支持するために、複数たとえば3本のLアングルバー11を設けてある。Lアングルバー11の高さはたとえば約2cmである。
【0025】
図6図1の過熱蒸気吐出パイプ32の詳細を示し、(A)は上面図、(B)は正面図である。
【0026】
図6に示すように、過熱蒸気吐出パイプ32はステンレス(SUS70A)よりなるU字型をなし、各片にはソケットを介して吐出ノズル32aが設けられている。過熱蒸気吐出パイプ32は図5の加熱プレート1のLアングルバー11に支持され、加熱プレート1と過熱蒸気吐出パイプ32との距離はLアングルバー11の高さつまり約2cm程度である。
【0027】
図7図1の制御ユニット6の導電中空管ヒータ21の制御を説明するためのフローチャートである。尚、飽和蒸気発生ユニット4は制御ユニット6を介さずに予め手動でオン操作しておくものとする。この場合、たとえば、10分程度で約100℃の飽和蒸気を発生するものとする。
【0028】
始めに、ステップ701では、導電中空管ヒータ21は冷温状態であるので、初期設定として電磁弁V2の制御信号C2を“0”とし、電磁弁V2をオフ状態とする。つまり、飽和蒸気Xは過熱蒸気発生ユニット2、つまり、導電中空管ヒータ21に供給されないようにする。
【0029】
次に、ステップ702では、マルチプレクサを動作させて導電中空管ヒータ21の駆動交流電圧Vを初期交流電圧V0たとえば10Vとする。
【0030】
ステップ703、704、705では、導電中空管ヒータ21の検出温度値T1が過熱蒸気Yを発生できる温度たとえば120℃以上となるまでマルチプレクサを動作させて導電中空管ヒータ21の駆動交流電圧Vを上昇させる。つまり、ステップ703にて温度センサ21cの検出温度値T1をA/D変換して取込み、ステップ704では、検出温度値T1が第1の所定値たとえば120℃以上か否かを判別する。この結果、T1<120℃であれば、ステップ705にて、マルチプレクサを動作させて駆動交流電圧VをΔV1(一定値)だけ増大させてステップ703に戻る。T1≧120℃であれば、ステップ706に進む。
【0031】
ステップ706では、電磁弁V2の制御信号C2を“1”とし、電磁弁V2をオン状態とする。つまり、飽和蒸気Xが過熱蒸気発生ユニット2、つまり、導電中空管ヒータ21に供給されることになる。
【0032】
ステップ707、708、709、710では、水処理槽3の温水の検出温度値T2が適正温度たとえば70℃~80℃を保持するように導電中空管ヒータ21の駆動交流電圧Vを変化させる。つまり、ステップ707にて温度センサ35の検出温度値T2をA/D変換して取込み、ステップ708では、検出温度値T2が第2の所定値たとえば70℃~80℃か否かを判別する。この結果、T1<70℃であれば、ステップ709にて、マルチプレクサを動作させて駆動交流電圧VをΔV2(一定値)だけ増大させてステップ707に戻る。T2>80℃であれば、ステップ710にて、駆動交流電圧VをΔV2だけ減少させてステップ707に戻る。他方、70℃≦T2≦80℃であれば直接ステップ707に戻る。
【0033】
このように、図7のルーチンによれば、過熱蒸気発生ユニット2の導電中空管ヒータ21の温度T1は過熱蒸気Yを確実に発生できる温度となると共に、水処理槽3の上部の温水温度T2は適正温度となる。
【0034】
尚、飽和蒸気発生ユニット4をも制御ユニット6によって制御する場合には、図7のステップ701、702の間で飽和蒸気発生ユニット4を起動させ、飽和蒸気発生ユニット4内の飽和蒸気Xの検出温度値T3を検出してT3≧70℃に到達するのを待つか、所定時間たとえば15分を待つ。T3≧70℃に到達したとき又は時間たとえば15分経過後に、ステップ702に進むようにすればよい。
【0035】
このように、図7のルーチンによれば、温度センサ21cの検出温度値T1が第1の所定値たとえば120℃以上となるように導電中空管ヒータ21を制御し、温度センサ21cの検出温度値T1が第1の所定値以上になったときに、過熱蒸気Yを過熱蒸気発生ユニット2(導電中空管ヒータ21)から水処理槽3の下部へ送り込み、次いで、温度センサ35の検出温度値T2が第2の所定値たとえば70℃~80℃となるように導電中空管ヒータ21を制御する。
【0036】
図8図1の制御ユニット6の温水供給の動作を説明するためのフローチャートである。図8のルーチンは所定時間たとえば0.1s毎に実行される割り込みルーチンである。
【0037】
始めに、ステップ801では、温度センサ35の検出温度値T2をA/D変換して取込み、ステップ802において、水処理槽3の上部が温水状態(T2≧70℃)か冷水状態(T2<70℃)かを判別する。この結果、温水状態(T2≧70℃)のときにステップ803に進み、他方、冷水状態(T2<70℃)のときにステップ805に進む。
【0038】
ステップ803では、施設たとえばホテルの各部屋から温水要求信号REQ1、REQ2、…があるか否かを判別する。つまり、
REQ←REQ1∪REQ2∪…
とし、温水要求信号REQ1、REQ2、…の少なくとも1つがあれば(REQ=“1”)、ステップ804に進み、他方、温水要求信号REQ1、REQ2、…のいずれもなければ(REQ=“0”)、ステップ805に進む。
【0039】
ステップ804では、電磁弁V1の制御信号C1を“1”とし、電磁弁V1をオン状態とする。これにより、温水Zaが温水出口34aから施設に供給されることになる。
【0040】
他方、ステップ805では、電磁弁V1の制御信号C1を“0”とし、電磁弁V1をオフ状態とする。これにより、施設への温水の供給は停止される。
【0041】
図8のルーチンはステップ806にて終了する。
【0042】
このように、図8のルーチンによれば、水処理槽3の上部が温水状態(T2≧70℃)かつ温水要求信号があった場合のみ(REQ=“1”)、温水が施設に供給されることになる。
【0043】
尚、上述の図7図8のフローチャートはプログラムとして制御ユニット6のROM又はフラッシュメモリに格納される。
【0044】
また、上述の実施の形態においては、飽和蒸気発生ユニット4を設けている。しかし、熱効率は低下するが、飽和蒸気発生ユニット4を設けずに、飽和蒸気入口21aに通常の水を入れてもよい。この場合、飽和蒸気入口21aは水入口として作用し、飽和蒸気側電極21a-1は水側電極として作用する。
【0045】
さらに、上述の実施の形態においては、電源回路5は種々の交流電圧を発生するように構成されているが、整流して種々の直流電圧を発生させるようにしてもよい。さらに、電源回路5は1つの直流電圧を発生し、制御ユニット6内において、マルチプレクサの代りにD/A変換器を用いて直流電圧から種々の駆動直流電圧を発生するようにしてもよい。
【0046】
さらにまた、本発明は上述の実施の形態の自明の範囲でいかなる変更にも適用できる。
【符号の説明】
【0047】
S:断熱構造体
D:断熱材
M:目地材
V1、V2:電磁弁
1:加熱プレート
11:Lアングルバー
2:飽和蒸気発生ユニット
21:導電中空管ヒータ
21a:飽和蒸気入口
21a-1:飽和蒸気側電極
21a-2:放熱板
21b:過熱蒸気出口
21b-1:過熱蒸気側電極
21b-2:放熱板
21c:温度センサ
23:ボックス
24:リフレクタ
25:リフレクタステー
26:セラミックホルダ
27:セラミックステー
28:ホルダステー
3:水処理槽
31:連結パイプ
31a:逆止弁
31b:絶縁カプラ
32:過熱蒸気吐出パイプ
32a:吐出ノズル
33:水入口
34a、34b:温水出口
35:温度センサ
36:蒸気弁
37:パッキン
4:飽和蒸気発生ユニット
5:電源回路
6:制御ユニット
7、8:架台
7a、8a:キャスタ
X:飽和蒸気
Y:過熱蒸気
Za、Zb:温水
H:輻射熱
REQ1、REQ2、…:温水要求信号
【要約】
【課題】装置を小型化し、熱効率を高くした過熱蒸気を用いた温水ボイラ装置を提供する。
【解決手段】温水ボイラ装置は、断熱材Dによって外部から断熱された1つの断熱構造体Sを有し、加熱プレート1によって上下に分割され、下部は過熱蒸気発生ユニット2を構成し、上部は水処理槽3を構成する。過熱蒸気発生ユニット2は、飽和蒸気発生ユニット4から飽和蒸気Xを飽和蒸気入口21aに受け取り、過熱蒸気Yを過熱蒸気出口21bから水処理槽3の下部に送り込むために、導電中空管ヒータ21を有する。過熱蒸気発生ユニット2の過熱蒸気出口21bと水処理槽3の下部との間には連結パイプ31が設けられ、水処理槽3は、複数の吐出ノズル32aを有する過熱蒸気吐出パイプ32が設けられている。水処理槽3の下部の水は過熱蒸気Yによって効率的に加熱されると共に、加熱プレート1からの遠赤外光による輻射熱Hによっても加熱されることになる。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8