(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】床断熱材の固定構造及び床断熱材の固定方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/76 20060101AFI20230801BHJP
E04B 5/43 20060101ALI20230801BHJP
E04G 23/02 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
E04B1/76 500G
E04B5/43 G
E04B1/76 400F
E04B1/76 500K
E04B1/76 500Z
E04G23/02 H
(21)【出願番号】P 2019181327
(22)【出願日】2019-10-01
【審査請求日】2022-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】堀 勝
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-159019(JP,A)
【文献】特開2009-030406(JP,A)
【文献】特開2017-036618(JP,A)
【文献】特開2018-076668(JP,A)
【文献】実開昭61-124547(JP,U)
【文献】米国特許第9038327(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/76
E04B 5/43
E04G 23/02
E04F 15/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床下に所定の間隔を空けて配置され、少なくとも建物高さ方向に延在するウエブ部と、前記ウエブ部の上端から略水平方向に延在する上フランジ部と、を含む開断面状に形成されて、床板を建物下方側から支持する複数の床梁と、
前記床板と前記上フランジ部に挟持された第1固定部と、前記第1固定部から前記ウエブ部と離間する方向へ延在する第1支持部と、を含み、前記床板の下面側かつ前記床梁の間に敷設された第1断熱材を前記第1支持部で建物下方側から支持する第1受部材と、
前記第1受部材に固定される第2固定部と、前記第2固定部から前記ウエブ部と離間する方向へ延在する第2支持部と、を含み、前記第1断熱材の建物下方側で前記床梁の間に敷設された第2断熱材を前記第2支持部で建物下方側から支持する第2受部材と、
前記第2受部材に固定される第3固定部と、前記第3固定部から前記ウエブ部に接近する方向へ延在する第3支持部と、を含み、前記床梁の開断面の内部に配置された第3断熱材を前記第3支持部で建物下方側から支持する第3受部材と、
を備える床断熱材の固定構造。
【請求項2】
前記第2受部材及び前記第3受部材は、
前記第2固定部と前記第3固定部が設けられた第1壁部と、第1壁部と異なる方向に延在した第2壁部と、を備える同一形状をなす共通受部材によってそれぞれ構成され、
前記第2受部材は、前記第1壁部が前記第2固定部を介して前記第1受部材に固定され、前記第2壁部が前記ウエブ部と離間する方向に延在して前記第2支持部を構成する一方の共通受部材とされ、
前記第3受部材は、前記第1壁部が前記第3固定部を介して前記一方の共通受部材に固定され、前記第1壁部の一端がウエブ部に近接する方向に延在して前記第3支持部を構成する他方の共通受部材とされている、
請求項1に記載の床断熱材の固定構造。
【請求項3】
前記他方の共通受部材は、前記他方の共通受部材における第1壁部を前記一方の共通受部材における前記第1壁部と略直交する姿勢で配置させることにより、前記他方の共通受部材における前記第3固定部を前記一方の共通受部材に固定可能とされている、
請求項2に記載の床断熱材の固定構造。
【請求項4】
前記第3受部材は一枚の板材により構成され、
前記板材の一端側に、該一端を折り返してクリップ状に形成された前記第3固定部が設けられ、前記板材の他端側に、前記第3固定部から前記ウエブ部に接近する方向へ延在する前記第3支持部が設けられ、
前記第3固定部に前記第2支持部が挟持されることにより前記第3固定部を前記第2受部材に固定可能とされている、
請求項1に記載の床断熱材の固定構造。
【請求項5】
前記第2受部材は前記床梁の両側に一対設けられ、
前記床梁の建物下方側を覆う第4断熱材と、
前記第4断熱材を前記第2受部材に固定させる固定手段と、
を備える請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の床断熱材の固定構造。
【請求項6】
前記請求項1~請求項5のいずれか1項に記載された床断熱材の固定構造に適用される断熱材の施工方法であって、
前記床板を支持する複数の前記床梁間に敷設された前記第1断熱材と前記第1断熱材を支持する前記第1受部材を備える既設の建物の床下で前記第2受部材を前記第1受部材に固定させる第1工程と、
前記第2断熱材を前記第2受部材に支持させる第2工程と、
前記床梁の開断面の内部に前記第3断熱材を配置する第3工程と、
前記第2受部材に前記第3受部材を固定させ、前記第3断熱材を前記第3受部材に支持させる第4工程と、
を含む床断熱材の固定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床断熱材の固定構造及び床断熱材の固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の床板が、金属製の床梁に支持される構造では、横架材が熱橋(ヒートブリッジ)となり、建物が外気の影響を受けやすくなる場合がある。このため、床梁の外表面を断熱材で覆い、床梁が熱橋(ヒートブリッジ)となる現象を抑制することが望ましい。
【0003】
下記特許文献1には、床梁の下部がブロック状の断熱材に埋設されており、ブロック状の断熱材の上面に床梁の側面を覆う板状の断熱材の一端が載置された床断熱材の固定構造が開示されている。この固定構造では、ブロック状の断熱材が紐状の粘着テープに拘束されており、粘着テープの両端が床梁の側面に貼りつけられている。これにより、ブロック状の断熱材が床梁に固定され、板状の断熱材を建物下方側から支持可能とされている。
【0004】
また、下記特許文献1には、床梁のフランジ部を利用して床梁の側面を覆う板状の断熱材を支持する床断熱材の固定構造が開示されている。具体的には、床梁の下端に略水平に延在するフランジ部が設けられ、このフランジ部の上に床梁の間に敷設された断熱材の一端が載置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【0006】
しかしながら、上記先行技術では、粘着テープを用いて断熱材を固定する場合、床下の作業環境によっては粘着面に埃や油分が付着する可能性がある。このため、粘着テープの耐久性が作業環境の影響を受けて変化し、品質にバラつきが生じる虞がある。
【0007】
また、上記先行技術において、床梁の下端に設けられたフランジ部を利用して断熱材を支持する場合、フランジ部を有しない開断面等を有する床梁には適用できないため、汎用性が低い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記事実を考慮し、施工時の品質の均一化を図り、汎用性の高い床断熱材の固定構造及び床断熱材の固定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の態様に係る床断熱材の固定構造は、床下に所定の間隔を空けて配置され、少なくとも建物高さ方向に延在するウエブ部と、前記ウエブ部の上端から略水平方向に延在する上フランジ部と、を含む開断面状に形成されて、床板を建物下方側から支持する複数の床梁と、前記床板と前記上フランジ部に挟持された第1固定部と、前記第1固定部から前記ウエブ部と離間する方向へ延在する第1支持部と、を含み、前記床板の下面側かつ前記床梁の間に敷設された第1断熱材を前記第1支持部で建物下方側から支持する第1受部材と、前記第1受部材に固定される第2固定部と、前記第2固定部から前記ウエブ部と離間する方向へ延在する第2支持部と、を含み、前記第1断熱材の建物下方側で前記床梁の間に敷設された第2断熱材を前記第2支持部で建物下方側から支持する第2受部材と、前記第2受部材に固定される第3固定部と、前記第3固定部から前記ウエブ部に接近する方向へ延在する第3支持部と、を含み、前記床梁の開断面の内部に配置された第3断熱材を前記第3支持部で建物下方側から支持する第3受部材と、を備えている。
【0010】
第1の態様に係る床断熱材の固定構造では、床板が、開断面状に形成された複数の床梁を用いて建物下方側から支持されており、床梁の間に第1断熱材が敷設されている。また、第1断熱材の建物下方側に第2断熱材が配置されている。このように、床板の下方側で第1断熱材と第2断熱材とを上下に並べて敷設することにより、床梁の外表面を側方から覆うように断熱材が配置される。また、床梁の開断面の内部には、第3断熱材が配置されている。これにより、床梁の側面を隙間なく断熱材で覆うことが可能となり、床梁の断熱性能が高められている。
【0011】
ここで、床板の下方側に配置された上記断熱材は、第1受部材、第2受部材、第3受部材を介して床梁に支持されている。具体的には、第1受部材が、床梁の上フランジ部と床板に挟持されている。この第1受部材は、床梁のウエブ部と離間する方向に延在する第1支持部で第1断熱材を建物下方側から支持している。そして、第1受部材には第2受部材が固定されている。この第2受部材は、床梁のウエブ部と離間する方向に延在する第2支持部で第2断熱材を建物下方側から支持している。更に、第2受部材には第3受部材が固定されている。この第3受部材は、床梁のウエブ部に近接する方向に延在する第3支持部で床梁の開断面の内部に配置された第3断熱材を建物下方側から支持している。
【0012】
このように、床梁と床板で挟持するようにして第1受部材を固定し、互いに連結された第2受部材と第3受部材を介して各断熱材が支持されている。これにより、粘着テープ等を用いて床梁の側面に直接固定する固定構造と比較して、床梁と断熱材との固定強度及び構造的な耐久性の面で作業環境の影響を受けにくい構造とされている。その結果、品質の均一化を図ることができる。
【0013】
また、第1受部材は、床板と、床板を支持する上フランジ部を利用して設置することができるため、上記床梁の固定構造は多種多様な形状の床梁に適用することができ、汎用性に優れる。
【0014】
第2の態様に係る床断熱材の固定構造は、第1の態様に記載の構成において、前記第2受部材及び前記第3受部材は、前記第2固定部と前記第3固定部が設けられた第1壁部と、第1壁部と異なる方向に延在した第2壁部と、を備える同一形状をなす共通受部材によってそれぞれ構成され、前記第2受部材は、前記第1壁部が前記第2固定部を介して前記第1受部材に固定され、前記第2壁部が前記ウエブ部と離間する方向に延在して前記第2支持部を構成する一方の共通受部材とされ、前記第3受部材は、前記第1壁部が前記第3固定部を介して前記一方の共通受部材に固定され、前記第1壁部の一端がウエブ部に近接する方向に延在して前記第3支持部を構成する他方の共通受部材とされている。
【0015】
第2の態様に係る床断熱材の固定構造では、第2受部材と第3受部材が同一形状をなす共通受部材でそれぞれ構成されている。共通受部材は、第1壁部と、第1壁部と異なる方向に延在する第2壁部とを備えており、第1壁部側に第1受部材と固定される第2固定部と、第2受部材に第3受部材を固定する、第3固定部が設けられている。そして、第2固定部を介して第1受部材に固定された一方の共通受部材では、第2壁部がウエブ部と離間する方向に延在し、第2支持部を構成する。これにより、一方の共通受部材が第2受部材となり、第2断熱材を支持可能とされる。一方、他方の共通受部材は、第3固定部を介して一方の共通受部材に固定されると、第1壁部の一端がウエブ部と近接する方向に延在して第3支持部を構成する。これにより、他方の共通受部材が第3受部材となり、第3断熱材を支持可能とされている。
【0016】
このようにして、第2受部材と第3受部材とが同一の共通受部材を用いて共用化されるため、第2受部材と第3受部材とを形状の異なる部材で構成する場合と比較して、部材の種類を少なくすることができる。これにより、部材の生産コストを抑えることができる。
【0017】
第3の態様に係る床断熱材の固定構造は、第2の態様に記載の構成において、前記他方の共通受部材は、前記他方の共通受部材における第1壁部を前記一方の共通受部材における前記第1壁部と略直交する姿勢で配置させることにより、前記他方の共通受部材における前記第3固定部を前記一方の共通受部材に固定可能とされている。
【0018】
第3の態様に係る床断熱材の固定構造では、一対の共通受部材の第1壁部を互いに直交する姿勢に配置させることにより、他方の共通受部材の第3固定部を一方の共通受部材に固定させることができる。このため、共通受部材の姿勢を変更するという簡単な方法で一対の共通受部材同士を固定させることができるため、施工が容易となる。
【0019】
第4の態様に係る床断熱材の固定構造は、第1の態様に記載の構成において、前記第3受部材は一枚の板材により構成され、前記板材の一端側に、該一端を折り返してクリップ状に形成された前記第3固定部が設けられ、前記板材の他端側に、前記第3固定部から前記ウエブ部に接近する方向へ延在する前記第3支持部が設けられ、前記3固定部に前記第2支持部が挟持されることにより前記第3固定部を前記第2受部材に固定可能とされている。
【0020】
第4の態様に係る床断熱材の固定構造では、第3受部材は一枚の板材で構成されており、板材の一端側がクリップ状に形成された第3固定部とされ、第2支持部を挟持可能とされている。一方、板材の他端側がウエブ部に近接する方向に延在する第3支持部とされている。このように、第3受部材が、一枚の板材の一端が折り返された簡単な構造とされており、クリップ状に形成された第3固定部に第2支持部を差し込むことで容易に固定することができる。
【0021】
第5の態様に係る床断熱材の固定構造は、第1の態様~第4の態様の何れか1態様に記載の構成において、前記第2受部材は前記床梁の両側に一対設けられ、前記床梁の建物下方側を覆う第4断熱材と、前記第4断熱材を前記第2受部材に固定させる固定手段と、を備えている。
【0022】
第5の態様に係る床断熱材の固定構造では、床梁の両側に第2受部材がそれぞれ配置されており、この第2受部材には、固定手段を用いて床梁の建物下方側を覆う第4断熱材が固定されている。このため、例えば、床梁のウエブ部の寸法が、第1断熱材と第2断熱材を積層させた断熱層の厚み寸歩よりも長い場合であっても、第4断熱材で床梁の下部を覆うことが可能である。これにより、断熱材による床梁の断熱効果が高められる。
【0023】
また、上記構成によれば、第2受部材に第4断熱材を固定することができるため、第4断熱材を支持させる追加の受部材が不要となり、断熱材の固定構造の大型化を抑制することができる。これにより、床下空間の小さな建物においても、容易に施工することができる。
【0024】
第6の態様に係る床断熱材の固定方法は、第1の態様~第5の態様の何れか1態様に記載の構成において、前記請求項1~請求項4のいずれか1項に記載された床断熱材の固定構造に適用される断熱材の施工方法であって、前記床板を支持する複数の前記床梁間に敷設された前記第1断熱材と前記第1断熱材を支持する前記第1受部材を備える既設の建物の床下で前記第2受部材を前記第1受部材に固定させる第1工程と、前記第2断熱材を前記第2受部材に支持させる第2工程と、前記床梁の開断面の内部に前記第3断熱材を配置する第3工程と、前記第2受部材に前記第3受部材を固定させ、前記第3断熱材を前記第3受部材に支持させる第4工程と、を含んでいる。
【0025】
第6の態様に係る床断熱材の固定方法では、まず、既設の建物の床下に予め配設された第1受部材に第2受部材を固定させる。次いで、第2断熱材を第2受部材に支持させることにより第1断熱材と第2断熱材が積層された断熱層が形成され、床梁の側方側が断熱材で覆われる。その後、床梁の開断面の内部に第3断熱材を配置して、第2受部材に第3受部材を固定させる。これにより、第3断熱材が第3受部材によって建物下方側から支持される。このように、第1受部材と第1断熱材を備えた既存の床下構造に部材を追加する方法で、断熱材による床梁の断熱効果を高めることができる。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、第1の態様に係る床断熱材の固定構造は、施工時の品質の均一化を図り、汎用性の高めることができるという優れた効果を有する。
【0027】
第2の態様に係る床断熱材の固定構造は、部材の生産コストを抑えることができるという優れた効果を有する。
【0028】
第3の態様に係る床断熱材の固定構造は、部材同士を簡単な方法で組み付けられる構造とすることで、施行を容易にすることができるという優れた効果を有する。
【0029】
第4の態様に係る床断熱材の固定構造は、部材の構造を簡単にすることで、施行を容易にすることができるという優れた効果を有する。
【0030】
第5の態様に係る床断熱材の固定構造は、断熱材による床梁の断熱効果が高めると共に、断熱材の固定構造の大型化を抑制することができるという優れた効果を有する。
【0031】
第6の態様に係る床断熱材の固定方法は、床下改修工事において、既存の床下構造を損なうことなく床下に断熱材を補充し、床梁の断熱効果を高めることができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】第1実施形態に係る床断熱材の固定構造が適用された建物の斜視図である。
【
図2】
図1の2-2線に沿って切断した状態を一部拡大して示す拡大断面図である。
【
図3】
図2に示される床梁を示す部分拡大斜視図である。
【
図4】(A)は、
図2に示される共通受部材の組み付け前の状態を床梁の延在方向と直交する方向から見た側面図であり、(B)は、
図2に示される共通受部材の組み付け前の状態を床梁の延在方向から見た正面図である。
【
図5】
図3の5-5線に沿って切断した状態を概略的に示す概略断面図である。
【
図6】
図3の6-6線に沿って切断した状態を概略的に示す概略断面図である。
【
図7】(A)~(E)は、第1実施形態に係る床断熱材の固定方法を説明するための模式図である。
【
図8】第2実施形態に係る床断熱材の固定構造を示す、
図6に対応する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
〔第1実施形態〕
以下、
図1~
図7を用いて、第1実施形態に係る床断熱材の固定構造が適用された建物10について説明する。
【0034】
(建物10の全体構成)
図1に示されるように、建物10は、ユニット建物とされている。建物10は、基礎14上に複数個の下階側の建物ユニット16を据え付けた後に、当該下階側の建物ユニット16上に複数個の上階側の建物ユニット18を据え付けることにより構成されている。また、基礎14は、建物10の全周に沿って連続して設けられており、この基礎14により囲まれた内側空間が床下空間20(
図2参照)とされている。
【0035】
それぞれの建物ユニット16、18は、4本の柱22と、それぞれの柱22の上端部に接合され、平面視で略矩形状とされた天井大梁24と、それぞれの柱22の下端部に接合され、平面視で略矩形状とされた床大梁26とを備えている。これにより、建物ユニット16、18は、躯体フレームとされている。
【0036】
また、長手方向の一対の床大梁26の間には、短手方向の床大梁26に対して略平行に配置された複数の床小梁28が架け渡されている。そして、床大梁26及び床小梁28を床下地として床板30が固定されている。本実施形態の床板30は、パーチクルボードを用いており、その上に床下地材(符号省略)を貼り合わせた構成とされている。なお、床小梁28が本発明における「床梁」に相当する。
【0037】
(床断熱材の固定構造)
図2及び
図3に示されるように、床大梁26は、溝形鋼とされており、縦断面視で略コ字状に形成されている。構造的には、建物高さ方向に沿って配置されるウエブ部26Aと、ウエブ部26Aの上端から略水平に張り出す上フランジ部26Bと、ウエブ部26Aの下端から略水平に張り出して上フランジ部26Bと対向して配置された下フランジ部26Cと、によって床大梁26が構成されている。そして、床大梁26の上フランジ部26Bの上に床板30の一端が載置されている。
【0038】
一方、床小梁28は、鋼製とされている。この床小梁28は、異形の溝形鋼とされており、縦断面視で開断面状に形成されている。構造的には、建物高さ方向に延在するウエブ部28Aと、前記ウエブ部の上端から略水平方向に延在する上フランジ部28Bと、上フランジ部28Bよりもフランジ幅が狭く形成され、前記ウエブ部の下端から略水平方向に延在する下フランジ部28Cと、上フランジ部28Bの先端から垂下され、ウエブ部28Aと対向して配置された折返し部28Dと、によって床小梁28が構成されている。そして、上フランジ部28Bの上に床板30が載置されている。
【0039】
床板30の下面30A側には、ポリスチレンフォームにより形成された第1断熱材34が配置されている。この第1断熱材34は、隣り合う床大梁26と床小梁28の間、及び、隣り合う一対の床小梁28の間にそれぞれ敷設されており、床小梁28に装着された第1受部材36によって建物下方側から支持されている。
【0040】
図3及び
図5に示されるように、第1受部材36は、長尺に形成された鋼板製の板材を折り曲げ加工することにより形成されている。この第1受部材36は、建物下方側に開放され、略コ字状に折り曲げられた第1固定部36Aと、第1固定部36Aの両端(下端)から互いに離間する方向に延在された一対の第1支持部36Bと、を備えている。
【0041】
コ字状に折り曲げられた第1固定部36Aは、開放端の内側に床小梁28の上部を挿入させるようにして、床小梁28に被せられている。この状態では、第1固定部36Aが床板30と床小梁28の上フランジ部28Bに挟持されている。これにより、第1受部材36が床小梁28に固定されている。また、一対の第1支持部36Bは、床小梁28の両側でウエブ部28Aと離間する方向にそれぞれ延在しており、第1断熱材34の一端を建物下方側から支持している。この第1支持部36Bの先端には、第1断熱材34を係止する爪部(符号省略)が形成されている。この爪部が、第1断熱材34の下面に食い込むようにして第1断熱材34を係止し、断熱材の位置ずれを防止している。
【0042】
図3に示されるように、第1断熱材34の建物下方側には、グラスウールにより形成された第2断熱材40が配置されている。この第2断熱材40は、隣り合う床大梁26と床小梁28の間、及び、隣り合う一対の床小梁28の間にそれぞれ敷設されている。さらに、床小梁28の開断面の内部には、グラスウールにより形成された第3断熱材42が充填されている。これら第2断熱材40及び第3断熱材42は、床小梁28の開断面の開放端側において、同一形状をなす一対の共通受部材44を用いて支持されている。一対の共通受部材は、一方が第1受部材36に固定されており、他方が、第1受部材36に固定された一方の共通受部材44に固定されている。以下、説明の便宜上、第1受部材に固定された一方を第2受部材46とし、他方を第3受部材48と称することがある。また、第2受部材46と第3受部材48を区別しない場合には、共通受部材44として説明する。
【0043】
図4に示されるように、共通受部材44は、矩形状に形成された鋼板製の板材をL字状に折り曲げ加工することにより形成されている。構造的には、L字の長辺側を構成する第1壁部44Aと、第1壁部44Aの一端から異なる方向に延在され、L字の短辺側を構成する第2壁部44Bと、によって共通受部材44が構成されている。また、共通受部材44の組み付け前の状態において、第1壁部44Aと第2壁部44Bとでなす角θ1が、鋭角とされている。本実施形態では、一例として、θ1=85°とされている。
【0044】
さらに、共通受部材44には、第1壁部44Aの板幅方向の両側に、第2固定部50及び第3固定部54がそれぞれ設けられている。第2固定部50は、第1壁部44Aの一側から板幅方向に沿って中央側に延びるスリット状の切欠きとされている。この第2固定部50は、切欠きの上縁部50Aに段差部52が形成されており、切欠きの開放端側のスリット幅が反対側の端部と比較して小さくなる構成とされている。また、切欠きの開放端側は面取り加工がされている。これにより、後述する工程で、第1支持部36Bが第2固定部50にスムーズに挿入可能とされている。また、組み付け後の状態では、第1支持部36Bが第2固定部50の切欠きの奥まで挿入され、段差部52がストッパとなり第1支持部36Bの移動を規制する。これにより、第2受部材が、第1受部材36から脱落することを抑制している。
【0045】
一方、第3固定部54は、第2固定部50よりも下方側の部位において、第1壁部44Aの他側から板幅方向に沿って中央側へ延びるスリット状の切欠きとして形成されている。
【0046】
また、共通受部材44の第2壁部44Bには、延在方向の先端側に板厚方向に貫通する貫通孔53が形成されている。この貫通孔53には、後述する固定部材58の一端が係止可能とされている。
【0047】
図3及び
図5に示されるように、第2受部材46は、第2固定部50を介して第1受部材36に固定されている。具体的に説明すると、第2受部材46は、第2固定部50の切欠きに第1支持部36Bの基端部が差し込まれることにより、第1受部材36に固定されている。この状態では、第1壁部44Aが床小梁28のウエブ部28Aの延在方向に沿って配置されている。また、第1壁部44Aにおける第2固定部50よりも上方側の部位は、第1受部材36の第1固定部36Aと第1断熱材34によって挟持されている。一方、第2壁部44Bは、ウエブ部28Aと離間する方向に延在する姿勢で配置されている。そして、第1断熱材34の下方側に敷設された第2断熱材40の一端が、第2壁部44Bによって建物下方側から支持される。なお、第2受部材46における第2壁部44Bが、本発明における「第2支持部」に相当する。
【0048】
また、
図3及び
図6に示されるように、第3受部材48は、第3固定部54を介して第2受部材46に固定されている。具体的に説明すると、先ず、第3受部材48の第1壁部44Aを第2受部材46の第1壁部44Aと直交する姿勢に配置し、第3固定部54の開放端側を第2受部材46の第1壁部44Aと対向させる。次いで、第3受部材48の第3固定部54の切欠きに第2受部材46の第1壁部44Aを差し込むと、第3受部材48の第1壁部44Aの基端部が第2受部材46の第2壁部44Bの上に載置される。これにより、第3受部材48が第2受部材46に固定される。
【0049】
この状態では、第3受部材48における第1壁部44Aの基端部は、第2受部材46の第2壁部44Bと第2断熱材40によって挟持されている。また、第1壁部44Aの先端(一端)がウエブ部28Aに近接する方向に延在し、床小梁28の内部に配置された第3断熱材42の下方側に配置されている。これにより、第3断熱材42が、第3受部材48によって建物下方側から支持されている。なお、この第3受部材48における第1壁部44Aの先端側の部位が、本発明における「第3支持部」に相当する。
【0050】
図2及び
図3に示されるように、第2受部材46には、床小梁28の建物下方側を覆う第4断熱材が配置されている。第4断熱材56は、グラスウールにより形成されており、ポリエチレン(PE)製のフィルムで形成された袋体に収容されている。この第4断熱材56は、細長い柱状に形成され、床小梁28の延在方向に沿って配置されている。本実施形態では、第2断熱材40の建物下方側に床小梁28の下端部が突出している。第4断熱材は、この床小梁28の下端部を被覆しており、床小梁28の下端部が直接外気に触れることを抑制している。このようにして、床小梁28は、第1断熱材34、第2断熱材40、第3断熱材42、第4断熱材56を用いて、外表面全体が覆われるように構成されている。
【0051】
第4断熱材56は、固定手段としての固定部材58を用いて第2受部材46に固定されている。具体的に説明すると、固定部材58は、紐部材60と、紐部材60の両端に取り付けられたフック62を備えている。紐部材60は、第4断熱材56の下方側から、床小梁28の両側にそれぞれ配置された第2受部材の間に架け渡されている。また、紐部材60の両端に取り付けられたフック62は、第2受部材46の貫通孔53にそれぞれ係止されている。
【0052】
本実施形態では、第4断熱材56を組み付けた際に、固定部材58の張力によって第2壁部44Bが若干弾性変形されるように第4断熱材56の大きさ、紐部材60の長さ等が調整されている。一例として、組み付け後の状態で、第1壁部44Aと第2壁部44Bとのなす角θ1が、θ1=90°となるように第2壁部44Bを弾性変形させることが好ましい。これにより、第2壁部44Bの復元力によって第4断熱材56が持ち上げられ、床小梁28への組み付け強度が向上される。
【0053】
次に、
図7を用いて建物10に本実施形態の床断熱材の固定構造を適用するための床断熱材の固定方法を説明する。
【0054】
以下に説明する床断熱材の固定方法は、一例として、建物10の床下空間20に第2断熱材40と第3断熱材42、第4断熱材56を補充する床下改修工事に適用されている。この建物10の床下空間20には、床小梁28に第1受部材36が固定されており、この第1受部材36に支持されて隣り合う床小梁28の間に第1断熱材34が敷設されている。
【0055】
(1)
図7(A)に示されるように、先ず、作業員は、建物10の床下空間20に潜り込み、第2受部材46を第1受部材36に固定する。具体的には、第2固定部50の切欠きに第1支持部36Bを差し込むことにより固定する(
図3参照)。これにより、第1受部材36に第2受部材46が吊り下げられた状態となる。
(2)次に、
図7(B)に示されるように、第1断熱材34と第2受部材46の第2壁部44Bとの間に第2断熱材40の一端を挿入し、第2断熱材40を第2受部材46に支持させる。
(3)次に、
図7(C)に示されるように、床小梁28の開断面の内部に第3断熱材42を充填する。その後、
図7(D)に示されるように、第2受部材46に第3受部材48を固定する。具体的には、第3受部材48の第1壁部44Aが第2受部材46の第1壁部44Aと直交する姿勢となるように傾けて、第3受部材48の第3固定部54に第2受部材46の第1壁部44Aを差し込む。これにより、第3受部材48が第2受部材46に固定されると同時に、第3受部材48を用いて第3断熱材42が建物下方側から支持される。
(4)最後に、
図7(E)に示されるように、固定部材58を用いて第4断熱材56を第2受部材46に固定させる。具体的には、第4断熱材56を床小梁28の下方側に添え当てて、第4断熱材56の下方側から固定部材58の紐部材60を掛け渡す。そして、紐部材60の両端に取り付けられたフック62を床小梁28の両側に配置された第2受部材46に係止させる。これにより、施行が完了する。
【0056】
(作用・効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0057】
本実施形態では、床板30の下方側で第1断熱材34と第2断熱材40とを上下に並べて敷設することにより、床小梁28の外表面を側方から覆うように断熱材が配置される。また、床小梁28の開断面の内部には、第3断熱材42が配置されている。これにより、床小梁28の側面を隙間なく断熱材で覆うことが可能となり、床小梁28の断熱性能が高められている。
【0058】
また、本実施形態では、第2受部材46と第3受部材48が同一形状をなす共通受部材44でそれぞれ構成されている。共通受部材44は、第1壁部44Aと、第1壁部44Aと異なる方向に延在する第2壁部44Bとを備えており、第1壁部44A側に第1受部材36と固定される第2固定部50と、第2受部材46に第3受部材48を固定する第3固定部54が設けられている。そして、第2受部材46の構成する一方の共通受部材44では、第1壁部44Aが第2固定部50を介して第1受部材36に固定され、第2壁部44Bがウエブ部28Aと離間する方向に延在し、第2断熱材40の一端を建物下方側から支持している。一方、第3受部材48を構成する他方の共通受部材44では、第1壁部44Aが第3固定部54を介して第2受部材46側に固定されると、第1壁部44Aの先端がウエブ部28Aと近接する方向に延在して第3断熱材42を建物下方側から支持している。
【0059】
このようにして、第2受部材46と第3受部材48とが同一の共通受部材44を用いて共用化されるため、第2受部材と第3受部材とを形状の異なる部材で構成する場合と比較して、部材の種類を少なくすることができる。これにより、部材の生産コストを抑えることができる
【0060】
また、本実施形態では、一対の共通受部材44の第1壁部44Aを互いに直交する姿勢に配置させることにより、他方の共通受部材44の第3固定部54を一方の共通受部材44に固定させることができる。このため、共通受部材44の姿勢を変更するという簡単な方法で一対の共通受部材44同士を固定させることができるため、容易に施行することができる。
【0061】
また、本実施形態では、床小梁28の両側に第2受部材46がそれぞれ配置されており、この第2受部材46には、固定部材58を用いて床小梁28の建物下方側を覆う第4断熱材56が固定されている。このため、床小梁28のウエブ部28Aの寸法が、第1断熱材34と第2断熱材40を積層させた断熱層の厚み寸歩よりも長い場合であっても、第4断熱材56で床小梁28の下部を覆うことができる。これにより、断熱材による床小梁28の断熱効果が高められる。
【0062】
また、上述した床断熱材の固定方法によれば、第1受部材36と第1断熱材34を備えた建物10に新たに第2断熱材40と第3断熱材42、第4断熱材56を追加することができる。このように、既存の床下構造を損なうことなく床下に断熱材を補充し、断熱材による床小梁28の断熱効果を高めることができる。また、施工時にハンマー等の工具が不要であるため、床下空間の小さな建物でも施工が容易である。
【0063】
〔第2実施形態〕
以下、
図8を用いて、第2実施形態に係る床断熱材の固定構造について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0064】
この図に示されるように、この第2実施形態では、第3受部材70の形状が第1実施形態と異なる点に特徴がある。この第3受部材70は、長尺に形成された鋼板製の板材を折り曲げ加工することにより形成されている。この第3受部材70は、長手方向の一端側に、この一端を折り返してクリップ状に形成された第3固定部70Aが設けられている。また、第3受部材70は、長手方向の他端側が第3支持部70Bとされ、第3断熱材42を支持可能とされている。
【0065】
この第3受部材70は、第3固定部70Aを介して第2受部材46に固定可能とされている。具体的には、第3固定部70Aに第2壁部44Bが差し込まれることにより、固定される。この状態では、第3支持部70Bがウエブ部28Aに近接する方向へ延在し、第3断熱材42の下方側に配置される。これにより、第3断熱材42が、第3支持部70Bによって建物下方側から支持される。
【0066】
上記構成によれば、第3受部材70は一枚の板材で構成されており、長手方向の一端側がクリップ状に形成された第3固定部70Aとされ、第2受部材46の第2壁部44Bを挟持可能とされている。一方、長手方向の他端側がウエブ部28Aに近接する方向に延在する第3支持部70Bとされている。このように、第3受部材70が、一枚の板材の一端が折り返された簡単な構造とされており、クリップ状に形成された第3固定部70Aに第2壁部44Bを差し込むことで容易に固定することができる。このため、容易に施工することができる。
【0067】
[補足説明]
上記各実施形態では、本発明に係る床断熱材の固定構造が床小梁28に適用される構成としたが、本発明はこれに限らない。例えば、床大梁や、根太に適用されるように構成してもよい。
【0068】
また、上記各実施形態では、床小梁28を異形の溝形鋼として構成したが、これに限らない。床小梁をアングル鋼や、I型鋼等の開断面を有する他の形鋼で構成してもよい。
【0069】
また、上記各実施形態では、床断熱材を固定する工程において、第2断熱材40を設置した後に第3断熱材42を設置し、第3受部材48を取り付けた後に第4断熱材56を設置する工程としたが、本発明はこれに限らない。第3断熱材42と第3受部材48を設置した後に第2断熱材40を設置し、最後に第4断熱材56を設置してもよい。又は、第3断熱材42と第3受部材48を設置した後に第4断熱材56を設置し、最後に第2断熱材40を設置する工程でもよい。
【符号の説明】
【0070】
10 建物
28 床小梁(床梁)
28A ウエブ部
28B 上フランジ部
30 床板
34 第1断熱材
36 第1受部材
36A 第1固定部
36B 第1支持部
40 第2断熱材
46 第2受部材(一方の共通受部材)
42 第3断熱材
44 共通受部材
44A 第1壁部
44B 第2壁部
48 第3受部材(他方の共通受部材)
50 第2固定部
54 第3固定部
56 第4断熱材
58 固定部材(固定手段)
70 第3受部材
70A 第3固定部
70B 第3支持部