(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】トリガー装置、及び、それを備えた動物捕獲用箱罠
(51)【国際特許分類】
A01M 23/20 20060101AFI20230801BHJP
【FI】
A01M23/20
(21)【出願番号】P 2021121253
(22)【出願日】2021-07-26
【審査請求日】2022-05-27
(73)【特許権者】
【識別番号】507277136
【氏名又は名称】松尾 要一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100177220
【氏名又は名称】小木 智彦
(72)【発明者】
【氏名】松尾 要一郎
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3178982(JP,U)
【文献】登録実用新案第3203801(JP,U)
【文献】特開2015-73496(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物捕獲用箱罠本体の落とし扉を閉じ動作させるために用いられるトリガー装置であって、
上面及び前後面が開口した、前後に延びる支持枠体と、
前記支持枠体の前端上部に前後回動自在に支持された作動棒と、
前記支持枠体の後端下部に前後回動自在に支持され、略水平状態の前記作動棒の後端部に係止可能な係止部材と、を備え、
前記作動棒が略水平状態のときに、その前部が前記支持枠体の前端から前方に突出した状態になることを特徴とするトリガー装置。
【請求項2】
前記支持枠体の底面前端に切欠きが形成された、請求項1に記載のトリガー装置。
【請求項3】
前後の少なくともいずれか一方の端面に開口部を有し、地上に設置される箱罠本体と、
前記箱罠本体の前記開口部の上に鉛直に係止され、自重で鉛直に落下して前記開口部を塞ぐ落とし扉と、を備えた動物捕獲用箱罠であって、
前記箱罠本体の上面の前記落とし扉が存する端部に請求項1又は2に記載のトリガー装置をさらに備えたことを特徴とする動物捕獲用箱罠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリガー装置、及び、それを備えた動物捕獲用箱罠に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、動物捕獲用箱罠としては、例えば、特許文献1等で提案されているものが知られている。
特許文献1に開示された動物捕獲用箱罠は、端面に開口部を有し、地上に設置される箱罠本体と、前記箱罠本体の前記開口部の上に鉛直に係止され、自重で鉛直に落下して前記開口部を塞ぐ落とし扉と、前記落とし扉を前記開口部の上に鉛直に係止できると共に、前記箱罠本体内に侵入した動物を感知して、前記落とし扉を自重で鉛直に落下させることができる落とし扉開閉手段と、を備えている。
しかし、このような構成の動物捕獲用箱罠では、箱罠本体内に侵入した動物が逃げようとして落とし扉を跳ね上げてしまう虞があった。
【0003】
そこで、かかる不都合を解消するために、箱罠本体内に侵入した動物が逃げようとして落とし扉を跳ね上げ、その下に潜ろうとしても、落とし扉の反転上昇を阻止して脱出させないようにした動物捕獲用箱罠が種々提案されている(例えば、特許文献2等を参照)。
特許文献2に開示された動物捕獲用箱罠は、落とし扉を有する箱罠本体と、前記箱罠本体に動物が侵入したことを感知して、前記落とし扉を閉じ動作させるトリガー機構と、前記落とし扉に設けられた戻り止め部と、前記箱罠本体に設けられ、前記落とし扉が閉じ動作するときに前記戻り止め部と協働して、前記落とし扉の反転上昇を阻止し、かつ、継続落下は許容する戻り止めピンと、を備えている。
ここで、戻り止め部は、個々が上部を残して縦コの字状に一辺を残して打ち抜かれ、等間隔で上下方向へ設けられた多数の誘導片を、同じ角度で外面側へやや曲げて形成されている。この構造により、各誘導片を打ち抜いて形成された窓部の下側の縁部は、戻り止めピンを係止させる止め縁となる。そして、戻り止めピンは、戻り止め部と協働し、落とし扉の落下途中又は落下後の反転上昇を阻止するように作用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-268699号公報
【文献】特開2017-000092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献2に開示された動物捕獲用箱罠では、箱罠本体に動物が侵入したことを感知して、落とし扉を閉じ動作させるトリガー機構と、落とし扉の反転上昇を阻止する機構とが別々に構成されているため、動物捕獲用箱罠自体の構造が複雑となって、製造コストの高騰を招いてしまうという課題がある。
また、特許文献2に開示された動物捕獲用箱罠では、「落とし扉の反転上昇を阻止する機構」が、落とし扉の形状にも特徴を有するものであるため、既存の動物捕獲用箱罠を用いる場合に、かなりの加工が必要になるという課題もある。
【0006】
本発明は、従来技術における前記課題を解決するためになされたものであり、落とし扉を閉じ動作させるトリガー機構と、落とし扉の反転上昇を阻止する機構とを同一装置内に組み込んで簡略化・低コスト化を図ることができると共に、既存の動物捕獲用箱罠にそのまま後付けして使用することもできるトリガー装置、及び、それを備えた動物捕獲用箱罠を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明に係るトリガー装置の構成は、
(1)動物捕獲用箱罠本体の落とし扉を閉じ動作させるために用いられるトリガー装置であって、
上面及び前後面が開口した、前後に延びる支持枠体と、
前記支持枠体の前端上部に前後回動自在に支持された作動棒と、
前記支持枠体の後端下部に前後回動自在に支持され、略水平状態の前記作動棒の後端部に係止可能な係止部材と、を備え、
前記作動棒が略水平状態のときに、その前部が前記支持枠体の前端から前方に突出した状態になることを特徴とする。
【0008】
本発明のトリガー装置の上記(1)の構成によれば、当該トリガー装置を箱罠本体の上面の落とし扉が存する端部に取り付け、かつ、箱罠本体内で餌が先端に取り付けられたワイヤの基端を係止部材に固定することにより、以下のような作用効果を奏することができる。 すなわち、係止部材を略水平状態の作動棒の後端部に係止させた状態で、作動棒の前部によって落とし扉の下端縁を支持することにより、箱罠本体の開口部を開けた状態にしておくことができる。猪等の動物が開口部から箱罠本体内に侵入し、餌が取り付けられたワイヤを引っ張ると、係止部材が後方向に回動して(倒れて)、作動棒の後端部と係止部材との係止状態が解除される。そして、作動棒の前部が落とし扉によって下向きに押され、当該作動棒が前方向に回動する。これにより、落とし扉が自重で鉛直に落下して、箱罠本体の開口部が塞がれる(閉じられる)。落とし扉が落下し終えると、作動棒が後方向に回動し、当該作動棒の前部によって落とし扉の反転上昇が阻止された状態となる。 このように、本発明のトリガー装置の上記(1)の構成は、落とし扉を閉じ動作させるトリガー機構と、落とし扉の反転上昇を阻止する機構とを同一装置内に組み込んでユニット化したものである。したがって、本発明のトリガー装置の上記(1)の構成によれば、簡略化・低コスト化を図ることができる。また、動物捕獲用箱罠自体(特に、落とし扉)には、特別な工夫を凝らす必要がないため、既存の動物捕獲用箱罠にそのまま後付けして使用することもできる。
【0009】
本発明のトリガー装置の上記(1)の構成においては、以下の(2)のような構成にすることが好ましい。
【0010】
(2)前記支持枠体の底面前端に切欠きが形成されている。
【0011】
上記(2)の好ましい構成によれば、作動棒が前方向に回動するときに、作動棒の前部を当該切欠き内に入れ込んで、落とし扉の落下の邪魔にならないようにすることが可能となる。その結果、落とし扉の閉じ動作を確実に行わせることができる。
【0012】
また、本発明に係る動物捕獲用箱罠の構成は、
(3)前後の少なくともいずれか一方の端面に開口部を有し、地上に設置される箱罠本体と、
前記箱罠本体の前記開口部の上に鉛直に係止され、自重で鉛直に落下して前記開口部を塞ぐ落とし扉と、を備えた動物捕獲用箱罠であって、
前記箱罠本体の上面の前記落とし扉が存する端部に本発明のトリガー装置の上記(1)又は(2)の構成をさらに備えたことを特徴とする。
【0013】
本発明の動物捕獲用箱罠の上記(3)の構成によれば、落とし扉を閉じ動作させるトリガー機構と、落とし扉の反転上昇を阻止する機構とを同一装置内に組み込んでユニット化したトリガー装置を備えたものとなっている。したがって、本発明の動物捕獲用箱罠の上記(3)の構成によれば、簡略化・低コスト化を図ることができる。また、動物捕獲用箱罠自体(特に、落とし扉)には特別な工夫を凝らす必要がないため、トリガー装置を除いた動物捕獲用箱罠自体として、既存の動物捕獲用箱罠をそのまま使用することもできる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、落とし扉を閉じ動作させるトリガー機構と、落とし扉の反転上昇を阻止する機構とを同一装置内に組み込んで簡略化・低コスト化を図ることができると共に、既存の動物捕獲用箱罠にそのまま後付けして使用することもできるトリガー装置、及び、それを備えた動物捕獲用箱罠を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態におけるトリガー装置の構成を示す図(捕獲前の状態を示しており、(a)は平面図(上面図)、(b)は右側面図、(c)は斜視図、(d)は背面図(後面図))である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態におけるトリガー装置の構成を示す図(捕獲途中の状態を示しており、(a)は平面図(上面図)、(b)は右側面図、(c)は斜視図、(d)は背面図(後面図))である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態におけるトリガー装置の構成を示す図(捕獲後の状態を示しており、(a)は平面図(上面図)、(b)は右側面図、(c)は斜視図、(d)は背面図(後面図))である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態における動物捕獲用箱罠の構成を示す斜視図(捕獲前の状態)である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態における動物捕獲用箱罠の構成を示す図(捕獲前の状態を示しており、(a)は平面図(上面図)、(b)は右側面図、(c)は背面図(後面図))である。
【
図6】
図6は、本発明の一実施形態における動物捕獲用箱罠の動作を説明するための部分斜視図((a)は捕獲前の状態、(b)は捕獲途中の状態、(c)は捕獲後の状態)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、好適な実施形態を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、下記の実施形態は本発明を具現化した例に過ぎず、本発明はこれに限定されるものではない。
【0017】
[トリガー装置の構成]
まず、本発明の一実施形態におけるトリガー装置の構成について、
図1~
図3を参照しながら説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態におけるトリガー装置の構成を示す図(捕獲前の状態を示しており、(a)は平面図(上面図)、(b)は右側面図、(c)は斜視図、(d)は背面図(後面図))、
図2,
図3において同じ)、
図2は、同じく当該トリガー装置の構成を示す図(捕獲途中の状態)、
図3は、同じく当該トリガー装置の構成を示す図(捕獲後の状態)である。
【0019】
図1ないし
図3に示すように、本実施形態のトリガー装置1は、上面及び前後面が開口した、断面略コの字状の前後に延びる支持枠体2と、支持枠体2の前端上部に支軸3によって前後回動自在に支持された断面円形の作動棒4と、支持枠体2の後端下部に支軸5によって前後回動自在に支持され、略水平状態の作動棒4の後端部に係止可能な係止部材6と、を備えている。そして、作動棒4が略水平状態のときに、その前部が支持枠体2の前端から前方に突出した状態になる。
【0020】
ここで、係止部材6は、作動棒4の後端部が挿通可能な円孔6aが穿設された矩形板状に形成されており、この係止部材6の上端縁中央には、箱罠本体11内で餌7が先端に取り付けられたワイヤ8の基端が固定される(
図4を参照)平板リング状のワイヤ固定部材9が溶接固定されている。
また、支軸3は、支持枠体2の前端上部に水平状態で回動自在に軸支されており、当該支軸3に作動棒4の前部付近が上から溶接固定されている。また、支軸5は、支持枠体2の後端下部に水平状態で回動自在に軸支されており、当該支軸5に係止部材6の下端縁が溶接固定されている。
【0021】
以上説明した、本実施形態のトリガー装置1の構成によれば、当該トリガー装置1を箱罠本体11の天井面(上面)11aの落とし扉12が存する前端部に取り付け、かつ、箱罠本体11内で餌7が先端に取り付けられたワイヤ8の基端をワイヤ固定部材9に固定することにより、以下のような作用効果を奏することができる。
すなわち、作動棒4の後端部を係止部材6の円孔6aに挿通させた状態(係止部材6を略水平状態の作動棒4の後端部に係止させた状態)で、作動棒4の前部によって落とし扉12の下端縁を支持することにより、箱罠本体11の開口部11fを開けた状態にしておくことができる(
図1,
図4,
図6(a)を参照)。猪等の動物15が開口部11fから箱罠本体11内に侵入し、餌7が取り付けられたワイヤ8を引っ張ると(
図6(a)の矢印Aを参照)、係止部材6が後方向に倒れて、作動棒4の後端部と係止部材6との係止状態が解除される。そして、作動棒4の前部が落とし扉12によって下向きに押され、当該作動棒4が前方向に回動する(
図2,
図6(b)の矢印Bを参照)。これにより、落とし扉12が自重で鉛直に落下して(
図6(b)の矢印Cを参照)、箱罠本体11の開口部11fが塞がれる(閉じられる)(
図6(c)を参照)。落とし扉12が落下し終えると、作動棒4が後方向に回動し(
図6(b)の矢印Dを参照)、当該作動棒4の前部によって落とし扉12の反転上昇が阻止された状態となる(
図3,
図6(c)を参照)。
このように、本実施形態のトリガー装置1は、落とし扉12を閉じ動作させるトリガー機構と、落とし扉12の反転上昇を阻止する機構とを同一装置内に組み込んでユニット化したものとなっている。したがって、本実施形態のトリガー装置1の構成によれば、簡略化・低コスト化を図ることができる。また、動物捕獲用箱罠10自体(特に、落とし扉12)には特別な工夫を凝らす必要がないため、本実施形態のトリガー装置1は、既存の動物捕獲用箱罠にそのまま後付けして使用することもできる。
【0022】
以下、さらに詳細に説明する。
トリガー装置1の各部材は、鋼鉄で形成されている。支持枠体2は、厚みが約3.5mm、前後の長さが約195mm、高さが約50mm、左右の幅が約48mmである。作動棒4は、半径が約6mm、長さが約220mmである。また、作動棒4は、前部付近が略「へ」の字状に屈曲されており、残りの部分は真っ直ぐに延びている。そして、作動棒4の屈曲部分が支軸3に溶接固定されている。係止部材6は、厚みが約3.5mm、高さが約53mm、左右の幅が約38mmであり、円孔6aの半径は、約10mmである。ワイヤ固定部材9は、厚みが約2mm、半径が約12.5mm、孔の半径が約6mmである。
【0023】
支持枠体2の底面前端には、37mm×18mmの矩形状の切欠き2aが形成されている。そして、これにより、作動棒4が前方向に回動するときに、作動棒4の前部を当該切欠き2a内に入れ込んで、落とし扉12の落下の邪魔にならないようにすることが可能となる(
図2,
図6(b)を参照)。その結果、落とし扉12の閉じ動作を確実に行わせることができる。
また、作動棒4の真っ直ぐに延びた後部の裏側には、当該作動棒4と同じ材質で形成された、半径約6mm、長さ約75mmの円柱状の錘4aが溶接固定されている。そして、これにより、落とし扉12が落下すると直ぐに、錘4aの重みによって作動棒4が確実に後方向に回動し、当該作動棒4の前部によって落とし扉12の反転上昇が阻止された状態となるようにされている。
【0024】
[動物捕獲用箱罠の構成]
次に、本実施形態における、トリガー装置を備えた動物捕獲用箱罠の構成について、
図4,
図5をも参照しながら説明する。
【0025】
図4は、本発明の一実施形態における動物捕獲用箱罠の構成を示す斜視図(捕獲前の状態)、
図5は、当該動物捕獲用箱罠の構成を示す図(捕獲前の状態を示しており、(a)は平面図(上面図)、(b)は右側面図、(c)は背面図(後面図))である。
【0026】
図4,
図5に示すように、本実施形態の動物捕獲用箱罠10は、天井面(上面)11aと、左右の側面11b,11cと、底面11dと、背面(後端面)11eとで形成され、地上に設置される直方体箱状の罠本体(箱罠本体)11を備えている。この箱罠本体11は、正面(前端面)に開口部11fを有している。また、動物捕獲用箱罠10は、箱罠本体11の開口部11fの上に鉛直に係止され、自重で鉛直に落下して開口部11fを塞ぐ落とし扉12を備えている。そして、開口部11fが塞がれた状態で猪等の動物15の捕獲空間が形成される。
【0027】
箱罠本体11は、例えば、アングル材やL字鋼、U字鋼等の金属製杆状部材13を用いて直方体状の枠体として形成されている。天井面11a、左右の側面11b,11c、底面11d、背面11eを形成する矩形状の各枠体の内部は、鉄筋14が格子状に組み付けられている。落とし扉12の左右のガイドレール13a,13bを兼ねる正面(前端面)左右の金属製杆状部材13は、それぞれ、箱罠本体11の高さの略2倍の長さに設定されている。
落とし扉12は、例えば、丸鋼からなる矩形状の枠体12aの内部に鉄筋12bを格子状に組み付けて構成されている。
箱罠本体11及び落とし扉12を形成する材料は、錆の発生しやすい鉄製の材料であることが好ましい。錆が発生している箱罠であれば、猪等の動物15が警戒心を抱くことがないため、捕獲率が向上する。
開口部11fの大きさは、特に猪等の動物15が侵入できる大きさであればよく、例えば、縦及び横の長さは約1~2mであることが好ましい。また、箱罠本体11の前後の長さも約1~2mであることが好ましい。
【0028】
箱罠本体11の天井面(上面)11aの、落とし扉12が存する前端部には、トリガー装置1が溶接固定されている。より具体的には、トリガー装置1は、支持枠体2の前端が箱罠本体11の天井面11aの前端から若干突き出た状態で取り付けられている。これにより、作動棒4が略水平状態のときに、当該作動棒4の前部を、落とし扉12と同じ鉛直面内に位置させることができる。
【0029】
[動物捕獲用箱罠の動作]
次に、本実施形態における動物捕獲用箱罠の動作について、
図6をも参照しながら説明する。
【0030】
図6は、本発明の一実施形態における動物捕獲用箱罠の動作を説明するための部分斜視図((a)は捕獲前の状態、(b)は捕獲途中の状態、(c)は捕獲後の状態)である。
【0031】
まず、
図1,
図4ないし
図6(a)に示すように、動物捕獲用箱罠10を設置した後、箱罠本体11の開口部11fに設けられた落とし扉12を左右のガイドレール13a,13bに沿って鉛直上方に持ち上げると共に、作動棒4の後端部を係止部材6の円孔6aに挿通させる。これにより、作動棒4を略水平状態で保持し、当該作動棒4の前部によって落とし扉12の下端縁を支持して、箱罠本体11の開口部11fを開けた状態にしておくことができる。
このとき、作動棒4の前部が落とし扉12の重みによって下向きに強く押し下げられ、作動棒4の後端部は上方に強く押し上げられる。このため、係止部材6が簡単に後方向に倒れてしまうことはない。
この状態で、ワイヤ固定部材9にワイヤ8の基端を固定し、当該ワイヤ8を、箱罠本体11の天井面11aの後部の鉄筋14の隙間から箱罠本体11内に入れ込み、その先端に餌7を取り付ける。
【0032】
猪等の動物15が開口部11fから箱罠本体11内に侵入し、餌7が取り付けられたワイヤ8を引っ張ると(
図6(a)の矢印Aを参照)、係止部材6が後方向に倒れて、作動棒4の後端部と係止部材6との係止状態が解除される。そして、作動棒4の前部が落とし扉12によって下向きに押され、当該作動棒4が前方向に回動する(
図2,
図6(b)の矢印Bを参照)。これにより、落とし扉12が自重で鉛直に落下して(
図6(b)の矢印Cを参照)、箱罠本体11の開口部11fが塞がれ(閉じられ)(
図6(c)を参照)、猪等の動物15が捕獲される。
【0033】
落とし扉12が落下し終えると、作動棒4が後方向に回動し(
図6(b)の矢印Dを参照)、当該作動棒4の前部によって落とし扉12の反転上昇が阻止された状態となる(
図3,
図6(c)を参照)。このため、箱罠本体11内に侵入した猪等の動物15が逃げようとして落とし扉12を跳ね上げ、その下に潜ろうとしても、脱出することは不可能である。
【0034】
以上のように、本実施形態の動物捕獲用箱罠10は、落とし扉12を閉じ動作させるトリガー機構と、落とし扉12の反転上昇を阻止する機構とを同一装置内に組み込んでユニット化したトリガー装置1を備えたものとなっている。したがって、動物捕獲用箱罠10のかかる構成によれば、簡略化・低コスト化を図ることができる。また、動物捕獲用箱罠10自体(特に、落とし扉12)には特別な工夫を凝らす必要がないため、トリガー装置1を除いた動物捕獲用箱罠10自体として、既存の動物捕獲用箱罠をそのまま使用することもできる。
【0035】
なお、上記実施形態においては、トリガー装置1が、上面及び前後面が開口した、断面略コの字状の前後に延びる支持枠体2を備える場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明は必ずしもこのような構成に限定されるものではない。支持枠体は、上面及び前後面が開口した、前後に延びるものであれば十分であり、その断面形状は、例えば、略U字状、略逆台形状等であってもよい。
【0036】
また、上記実施形態においては、トリガー装置1が、前部付近が略「へ」の字状に屈曲され、残りの部分が真っ直ぐに延びた断面円形の作動棒4を備える場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明は必ずしもこのような構成に限定されるものではない。作動棒の形状は任意であり、例えば、全体が真っ直ぐに延びたものであってもよく、断面六角形のものであってもよい。
【0037】
また、上記実施形態においては、作動棒4が、支持枠体2の前端上部に回動自在に軸支された支軸3に溶接固定されている場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明は必ずしもこのような構成に限定されるものではない。作動棒は、支持枠体の前端上部に前後回動自在に支持されていればよく、例えば、支持枠体に固定された支軸に回動自在に取り付けられていてもよい。
【0038】
また、上記実施形態においては、係止部材6が、支持枠体2の後端下部に回動自在に軸支された支軸5に溶接固定されている場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明は必ずしもこのような構成に限定されるものではない。係止部材は、支持枠体の後端下部に前後回動自在に支持されていればよく、例えば、支持枠体に固定された支軸に回動自在に取り付けられていてもよい。
【0039】
また、上記実施形態においては、係止部材6が、作動棒4の後端部が挿通可能な円孔6aが穿設された矩形板状に形成されている場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明は必ずしもこのような構成に限定されるものではない。係止部材は、略水平状態の作動棒の後端部に係止可能であればよく、例えば、矩形枠状のものであってもよい。
【0040】
また、上記実施形態においては、係止部材6の上端に、箱罠本体11内で餌7が先端に取り付けられたワイヤ8の基端が固定される平板リング状のワイヤ固定部材9を備える場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明は必ずしもこのような構成に限定されるものではない。ワイヤ固定部材9を備えるか否かは任意であり、ワイヤ8の基端は係止部材6に固定するようにしてもよい。
【0041】
また、上記実施形態においては、動物捕獲用箱罠10が、正面(前端面)に開口部11fを有する箱罠本体11を備える場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明は必ずしもこのような構成に限定されるものではない。箱罠本体は、前後の少なくともいずれか一方の端面に開口部を有し、地上に設置されるものであればよい。すなわち、箱罠本体は、後端面に開口部を有し、当該開口部の上に鉛直に係止され、自重で鉛直に落下して当該開口部を塞ぐ落とし扉を備えるものであってもよい。また、箱罠本体は、前後端面にそれぞれ開口部を有し、それぞれの開口部の上に鉛直に係止され、自重で鉛直に落下して当該開口部を塞ぐ落とし扉を備えるものであってもよい。この場合、トリガー装置1は、箱罠本体の上面の落とし扉が存する前後両端部にそれぞれ取り付けられ、両方のトリガー装置1は同時に作動するように設定される。
【0042】
また、上記実施形態においては、箱罠本体11の天井面(上面)11aの、落とし扉12が存する端部に、トリガー装置1が溶接固定されている場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明は必ずしもこのような構成に限定されるものではない。トリガー装置1は、例えば、箱罠本体11の天井面(上面)11aにネジ止め固定されていてもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 トリガー装置
2 支持枠体
2a 切欠き
3,5 支軸
4 作動棒
4a 錘
6 係止部材
6a 円孔
7 餌
8 ワイヤ
9 ワイヤ固定部材
10 動物捕獲用箱罠
11 箱罠本体
11a 天井面(上面)
11b,11c 左右の側面
11d 底面
11e 背面(後端面)
11f 開口部
12 落とし扉
12a 枠体
12b,14 鉄筋
13 金属製杆状部材
13a,13b ガイドレール
15 猪等の動物