(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】服薬指導情報提供システム
(51)【国際特許分類】
G16H 20/10 20180101AFI20230801BHJP
【FI】
G16H20/10
(21)【出願番号】P 2022568026
(86)(22)【出願日】2020-12-11
(86)【国際出願番号】 JP2020046403
(87)【国際公開番号】W WO2022123790
(87)【国際公開日】2022-06-16
【審査請求日】2023-05-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517017724
【氏名又は名称】株式会社TRホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100092864
【氏名又は名称】橋本 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100098154
【氏名又は名称】橋本 克彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 幹雄
【審査官】梅岡 信幸
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2020-0025756(KR,A)
【文献】特開2020-42758(JP,A)
【文献】特開2007-26254(JP,A)
【文献】特開2003-223510(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーバおよび端末からなる、患者に服薬指導情報を提供するための服薬指導情報提供システムであって、
前記サーバは、
服薬指導情報を格納した服薬指導情報格納部と、
前記患者に関する患者情報と前記患者が受け取った処方箋に関する処方箋情報とを組み合わせて入力することで前記服薬指導情報から前記患者に適するものを1つ以上選択する服薬指導情報選択モデルを有する服薬指導情報選択部と、
前記服薬指導情報を視聴した人物の反応に関する画像データまたは音声データを入力データ、数値化した前記人物の理解度を出力データとして機械学習させた理解度推定モデルを用いて前記患者の理解度を推定する理解度推定部と、を備え、
前記端末は、
前記サーバに前記患者情報および前記処方箋情報を送信するとともに前記服薬指導情報を受信するための通信部と、
選択された前記服薬指導情報を出力する出力部と、
画像情報取得手段および音声情報取得手段と、を備え、
前記服薬指導情報は、以下のaまたはbの群のうち少なくとも一方であ
り、
a.各薬剤の種類,用法,用量,飲み合わせ,相互作用または禁忌事項のうち少なくとも1つを説明する文書群であって、同一の薬剤について1種類以上の説明文を備える文書群。
b.各薬剤の種類,用法,用量,飲み合わせ,相互作用または禁忌事項のうち少なくとも1つを説明する動画群であって、同一の薬剤について1種類以上の説明動画を備える動画群。
前記服薬指導情報を視聴している間の前記患者の反応を前記画像情報取得手段および前記音声情報取得手段のうち少なくとも一方で観測し、得られた画像データまたは音声データを前記理解度推定部により処理することにより前記患者の理解度を推定する、
ことを特徴とする服薬指導情報提供システム。
【請求項2】
前記端末の出力部によって前記説明文および前記説明動画を同時に出力することを特徴とする請求項1記載の服薬指導情報提供システム。
【請求項3】
前記サーバが、不特定多数の人物の患者情報と前記人物の処方箋に関する処方箋情報を入力データ、服薬指導情報を出力データとして学習させることで前記服薬指導情報選択モデルを生成する機械学習部を備える、
ことを特徴とする請求項1または2記載の服薬指導情報提供システム。
【請求項4】
前記理解度推定部により推定した患者の理解度が表示され、
表示された前記患者の理解度に基づいて薬剤師が前記患者と対面して服薬指導を行う、
ことを特徴とする請求項1記載の服薬指導情報提供システム。
【請求項5】
前記理解度推定部により推定した患者の理解度に基づいて前記服薬指導情報を再度選択する、
ことを特徴とする請求項1記載の服薬指導情報提供システム。
【請求項6】
前記端末が画像情報取得手段を備え、
前記処方箋情報が、紙面上または画面上に表示された二次元コードを前記画像情報取得手段により読み取ることによって前記サーバへ送信される、
ことを特徴とする請求項1,2,3,4または5記載の服薬指導情報提供システム。
【請求項7】
前記処方箋情報に含まれる薬剤が複数であり、前記服薬指導情報として前記複数の薬剤に関係する飲み合わせ,相互作用または禁忌事項の説明文または前記複数の薬剤に関係する飲み合わせ,相互作用または禁忌事項の説明動画のうち少なくとも一方を選択する、
ことを特徴とする請求項1,2,3,4,5または6記載の服薬指導情報提供システム。
【請求項8】
前記サーバが前記服薬指導情報,前記患者情報および前記処方箋情報に関するデータを記録する台帳を有しており、
ブロックチェーン技術によって前記台帳は前記サーバおよび前記端末間で共有されている、
ことを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6または7記載の服薬指導情報提供システム。
【請求項9】
前記患者情報が、必須構成群として、氏名・性別・生年月日を含み、更に追加構成群として、患者ID,顔画像,保険情報,身長,体重,既往歴,服薬履歴,アレルギー情報,バイタル情報,疾病関連情報,妊娠の有無,生活習慣,食事情報,運動能力のうち1つ以上を選択して構成することができる、
ことを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6,7または8記載の服薬指導情報提供システム。
【請求項10】
前記患者情報が顔画像を含むとともに前記端末が画像情報取得手段を有しており、
前記画像情報取得手段によって前記患者の顔を撮影し、当該撮影した顔画像と前記患者情報内の顔画像を用いた顔認証を行った後に前記服薬指導情報の選択が行われる、
ことを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6,7,8または9記載の服薬指導情報提供システム。
【請求項11】
前記サーバが複数であり、前記服薬指導情報選択部を有し前記服薬指導情報の選択を行うメインサーバと、前記服薬指導情報格納部を有し前記服薬指導情報を送信する服薬指導情報サーバとからなる、
ことを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6,7,8,9または10記載の服薬指導情報提供システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者が自らに処方された薬剤の服薬に関する情報を得ることのできる服薬指導情報提供システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、患者が薬物療法を受ける際は、病院等の医療機関で診察を受け、必要と診断された薬剤が処方され、その処方箋に従って調剤された薬剤を病院や薬局で受け取ることによって薬剤の受け渡しがなされている。
【0003】
薬剤を患者に受け渡す際、調剤を担当する薬剤師等によって薬剤についての説明、および服薬時の用法・用量を中心とした服薬指導が行われており、口頭での服薬指導のみならず、持ち帰り用の印刷物を合わせて患者に受け渡すことも広く行われている。
【0004】
ただし、このような服薬指導の方法においては、一度の口頭説明で前記患者が十分に前記薬剤とその用法・用量について理解することは容易とは言い難く、患者が子供または高齢である場合などはなおさらである。何より、患者は薬剤の受け渡し準備が整うまでただ待機しているしかなく、効率的な業務であるとは言えなかった。
【0005】
これに対し、例えば特開2001-126002号公報(特許文献1)に記載された発明のように、患者の照会操作に応じて薬剤情報を患者に提供することを特徴とする薬剤情報処理システムが知られている。
【0006】
この薬剤情報処理システムは、薬剤情報を集中管理するホスト機と、患者が個々に携帯する携帯端末及び投薬情報のデータの授受をホスト機と行うと共に携帯端末との応答が可能な服薬情報端末とを用いることにより、服薬患者からの照会操作に応答して投薬情報を患者に提供するために、患者ごとの処方箋情報や処方した薬名、薬量等の投薬情報を入力する入力端末と、該入力端末から入力された患者ごとの投薬情報及び薬歴等の薬剤情報等を集中的に管理するシステムと、患者との間で薬剤情報の授受をすることのできる服薬情報端末とから構成され、服薬情報端末は、患者からの照会操作があったとき、その照会に応じて薬剤情報を適宜、患者及び/又は携帯端末に提供するようにしたものである。
【0007】
また、その他例えば特開2002-288343号公報(特許文献2)に記載された発明または特開2004-178265号公報(特許文献3)に記載された発明のように、患者が自らに処方された薬剤情報について、パソコンや携帯電話などの通信機能を備えた端末を用いて閲覧することを特徴とするシステムに関する発明が知られている。
【0008】
これら従来発明によれば、患者が病院や薬局で薬剤を受け取る際の待ち時間に、薬剤に関する情報を予め患者が入手することができるとともに、患者が薬剤を持ち帰った後に、通信機能を備えた端末を用いて自ら薬剤情報を入手することが可能であるため、待ち時間の有効活用と任意のタイミングでの薬剤情報の再確認の両方を実現することができる。
【0009】
しかしながら、前記従来発明はいずれも投薬情報等の登録作業が必要であるため、処方される薬剤が多種である場合など、入力するべき情報が多い場合は煩雑な作業が必要となるほか、提供される薬剤情報は薬剤ごとの画一的なものであって、患者の性別・年齢・身長・体重・既往歴・服薬履歴等の属性を考慮することはほぼなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2001-126002号公報
【文献】特開2002-288343号公報
【文献】特開2004-178265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、患者が自らに処方された薬剤の服薬に関する服薬指導情報を得ることのできる服薬指導情報提供システムにおいて、薬剤の受け渡しにかかる待ち時間の有効活用を図るとともに、患者の属性を考慮可能とする新しい服薬指導情報提供システムを実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するためになされた本願の第1の発明である服薬指導情報提供システムは、
サーバおよび端末からなる、患者に服薬指導情報を提供するための服薬指導情報提供システムであって、
前記サーバは、
服薬指導情報を格納した服薬指導情報格納部と、
前記患者に関する患者情報と前記患者が受け取った処方箋に関する処方箋情報とを組み合わせて入力することで前記服薬指導情報から前記患者に適するものを1つ以上選択する服薬指導情報選択モデルを有する服薬指導情報選択部と、を備え、
前記端末は、
前記サーバに前記患者情報および前記処方箋情報を送信するとともに前記服薬指導情報を受信するための通信部と、
選択された前記服薬指導情報を出力する出力部と、を備え、
前記服薬指導情報は、以下のaまたはbの群のうち少なくとも一方であることを特徴とする。
a.各薬剤の種類,用法,用量,飲み合わせ,相互作用または禁忌事項のうち少なくとも1つを説明する文書群であって、同一の薬剤について1種類以上の説明文を備える文書群。
b.各薬剤の種類,用法,用量,飲み合わせ,相互作用または禁忌事項のうち少なくとも1つを説明する動画群であって、同一の薬剤について1種類以上の説明動画を備える動画群。
【0013】
本願の第2の発明である服薬指導情報提供システムは、
前記端末の出力部によって前記説明文および前記説明動画を同時に出力することを特徴とする。
【0014】
本願の第3の発明である服薬指導情報提供システムは、
前記サーバが、不特定多数の人物の患者情報と前記人物の処方箋に関する処方箋情報を入力データ、服薬指導情報を出力データとして学習させることで前記服薬指導情報選択モデルを生成する機械学習部を備えることを特徴とする。
【0015】
本願の第4の発明である服薬指導情報提供システムは、
前記サーバが、前記服薬指導情報を視聴した人物の反応に関する画像データまたは音声データを入力データ、数値化した前記人物の理解度を出力データとして機械学習させた理解度推定モデルを用いて前記患者の理解度を推定する理解度推定部を備えているとともに、
前記端末が、画像情報取得手段および音声情報取得手段を備えており、
前記服薬指導情報を視聴している間の前記患者の反応を前記画像情報取得手段および前記音声情報取得手段のうち少なくとも一方で観測し、得られた画像データまたは音声データを前記理解度推定部により処理することにより前記患者の理解度を推定することを特徴とする。
【0016】
本願の第5の発明である服薬指導情報提供システムは、
前記理解度推定部により推定した患者の理解度が表示され、
表示された前記患者の理解度に基づいて薬剤師が前記患者と対面して服薬指導を行うことを特徴とする。
【0017】
本願の第6の発明である服薬指導情報提供システムは、
前記理解度推定部により推定した患者の理解度に基づいて前記服薬指導情報を再度選択することを特徴とする。
【0018】
本願の第7の発明である服薬指導情報提供システムは、
前記端末が画像情報取得手段を備え、
前記処方箋情報が、紙面上または画面上に表示された二次元コードを前記画像情報取得手段により読み取ることによって前記サーバへ送信されることを特徴とする。
【0019】
本願の第8の発明である服薬指導情報提供システムは、
前記処方箋情報に含まれる薬剤が複数であり、前記服薬指導情報として前記複数の薬剤に関係する飲み合わせ,相互作用または禁忌事項の説明文または前記複数の薬剤に関係する飲み合わせ,相互作用または禁忌事項の説明動画のうち少なくとも一方を選択することを特徴とする。
【0020】
本願の第9の発明である服薬指導情報提供システムは、
前記サーバが前記服薬指導情報,前記患者情報および前記処方箋情報に関するデータを記録する台帳を有しており、
ブロックチェーン技術によって前記台帳は前記サーバおよび前記端末間で共有されていることを特徴とする。
【0021】
本願の第10の発明である服薬指導情報提供システムは、
前記患者情報が、必須構成群として、氏名・性別・生年月日を含み、更に追加構成群として、患者ID,顔画像,保険情報,身長,体重,既往歴,服薬履歴,アレルギー情報,バイタル情報,疾病関連情報,妊娠の有無,生活習慣,食事情報,運動能力のうち1つ以上を選択して構成することができることを特徴とする。
【0022】
本願の第11の発明である服薬指導情報提供システムは、
前記患者情報が顔画像を含むとともに前記端末が画像情報取得手段を有しており、
前記画像情報取得手段によって前記患者の顔を撮影し、当該撮影した顔画像と前記患者情報内の顔画像を用いた顔認証を行った後に前記服薬指導情報の選択が行われることを特徴とする。
【0023】
本願の第12の発明である服薬指導情報提供システムは、
前記サーバが複数であり、前記服薬指導情報選択部を有し前記服薬指導情報の選択を行うメインサーバと、前記服薬指導情報格納部を有し前記服薬指導情報を送信する服薬指導情報サーバとからなることを特徴とする。
【0024】
本願の第13の発明である服薬指導情報提供プログラムは、
患者に服薬指導情報を提供するための服薬指導情報提供プログラムであって、
前記服薬指導情報は、薬剤の種類,用法,用量,飲み合わせ,相互作用または禁忌事項のうち少なくとも1つを説明する説明文または説明動画であり、
不特定多数の人物の患者情報と前記人物の処方箋に関する処方箋情報を入力、服薬指導情報を出力として学習させた学習済みモデルに、前記患者に関する患者情報および前記患者が受け取った処方箋に関する処方箋情報を入力し、適する前記服薬指導情報を1つ以上出力する処理をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、説明文書群または説明動画群のうち少なくとも一方の服薬指導情報を格納したサーバと、前記サーバと通信するとともに前記服薬指導情報を表示する端末からなる構成の服薬指導情報提供システムであって、患者に関する患者情報と前記患者が受け取った処方箋に関する処方箋情報とを組み合わせて学習済みモデルによる処理を行い、前記服薬指導情報から適するものを選択するものとしたことで、患者は前記端末を使用して、薬剤の受け渡しの待ち時間や、自宅での服薬前などの必要な時期に自らに最適化された服薬指導情報を確認することができる。
【0026】
また、生年月日(年齢)・身長・体重・既往歴・服薬履歴その他の患者の属性に関する患者情報を処方箋情報と組み合わせて服薬指導情報選択部により処理するものとしたことで、例えば前記患者が子供または高齢である場合には、通常よりも平易な表現に努めた服薬指導情報を提供したり、前記患者が特定の薬剤の服薬履歴がある場合には、飲み合わせ,相互作用または禁忌事項について注意する旨の追加の服薬指導情報を提供したりすることができる。
【0027】
更に、前記端末が画像情報取得手段および音声情報取得手段を有しており、前記服薬指導情報を表示している間の前記患者の反応を観測して機械学習済みの理解度推定モデルを用いて処理をするものとしたことで、推定された前記患者の理解度に応じて最適な服薬指導情報を提供することができ、薬剤師の服薬指導を補助するために利用することもできる。
【0028】
そして、本発明である服薬指導情報提供システムを同じ患者が複数回利用することによって、前記学習済みモデルの学習の最適化を図ることができるとともに、前記患者の自らに処方された薬剤に関する知識、服薬コンプライアンス、またはアドヒアランスの向上をも図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の第1の実施の形態である服薬指導情報提供システム1Aを示す構成図。
【
図2】本発明の第1の実施の形態におけるサーバ100の構成を示すブロック図。
【
図3】サーバが複数からなる場合の服薬指導情報提供システム1Aを示す構成図。
【
図4】本発明の第1の実施の形態における端末200の構成を示すブロック図。
【
図5】本発明の第1の実施の形態である服薬指導情報提供システム1Aの全体フロー図。
【
図6】本発明の第1の実施の形態における服薬指導情報選択プロセスのフロー図。
【
図7】服薬指導情報2を前記端末200の出力部230によって出力している状態を示す図。
【
図8】本発明の第2の実施の形態である服薬指導情報提供システム1Bの全体フロー図。
【
図9】本発明の第2の実施の形態におけるサーバ100Cの構成を示すブロック図。
【
図10】本発明の第2の実施の形態である服薬指導情報提供システム1Bの異なる全体フロー図。
【
図11】本発明の第3の実施の形態である服薬指導情報提供システム1Cの全体フロー図。
【
図12】本発明の第3の実施の形態におけるサーバ100Dの構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0031】
図1は本発明の第1の実施の形態である服薬指導情報提供システム1Aを示す構成図であり、前記服薬指導情報提供システム1Aは、サーバ100と端末200からなり、患者Pに関する患者情報3と前記患者Pが受け取った処方箋に関する処方箋情報4とを組み合わせて前記患者Pに適する服薬指導情報2を提供するためのシステムであり、機械学習したAIプログラムを用いて前記患者Pに適した服薬指導情報を提供することを特徴とするものである。
【0032】
本実施の形態である服薬指導情報提供システム1Aは、前記患者Pが病院等の医療機関によって診察を受けたのちに、前記患者Pが病院や薬局で薬剤を受け取る際に用いられるものであり、本実施の形態においては、調剤を行う調剤薬局において実施するものとして説明を行う。
【0033】
前記服薬指導情報2は、前記患者Pの服薬を支援するための情報であり、以下の群のうち少なくとも一方から構成される。
a.薬剤の種類,用法,用量,飲み合わせ,相互作用または禁忌事項のうち少なくとも1つを説明する文書群であって、同一の薬剤について1種類以上の説明文を備える文書群。
b.各薬剤の種類,用法,用量,飲み合わせ,相互作用または禁忌事項のうち少なくとも1つを説明する動画群であって、同一の薬剤について1種類以上の説明動画を備える動画群。
【0034】
前記患者情報3は、薬剤管理指導料の算定に関わる項目などを中心とした患者Pの属性に関する情報であり、以下の必須構成群と、必須ではない追加構成群とから構成される。
<必須構成群>
a.氏名
b.性別
c.生年月日(年齢)
<追加構成群>
d.患者ID
e.保険情報(保険種別、保険者番号、保険証の記号番号など)
f.身長
g.体重
h.既往歴
i.服薬履歴
j.アレルギー情報
k.バイタル情報
l.疾病関連情報
m.妊娠の有無
n.生活習慣(喫煙の有無、飲酒の有無、運転の有無、睡眠時間など)
o.食事情報(食事の回数、食事の内容など)
p.運動能力
【0035】
尚、前記患者IDは任意の文字列など患者毎にユニークなIDであればよく、保険証の記号番号などを使用することも可能である。
【0036】
前記患者情報3は、前記医療機関が前記患者Pに関する保険証等を参照すること、または前記患者P自身の自己申告あるいは自己入力により収集してデータ化され、そのデータは前記サーバ100または前記端末200の記憶部に格納するか、あるいはブロックチェーン技術によって前記サーバ100および前記端末200の間で共有される共有台帳に格納される。
【0037】
前記処方箋情報4は、前記患者Pが処方された処方箋に含まれる情報であり、以下の構成を含む。
a.氏名
b.性別
c.生年月日(年齢)
d.医療機関情報(医療機関名、所在地、診療科、担当医師など)
e.保険情報(保険者番号、保険証の記号番号など)
f.薬剤情報(薬品、剤形、用法・用量など)
【0038】
本実施の形態においては、病院などの医療機関が処方箋を発行する際に処方箋に表示した二次元コードをスキャンすることによって、データ化された前記処方箋情報4を取り込むことができるように構成されている。
【0039】
なお、二次元コードが表示される紙面は前記処方箋に限られるものではなく、例えば調剤明細書や、電子お薬手帳用のデータシートなどであってもよい。また、二次元コードは薬局に設置されたレセコンその他の電子機器の画面上に表示されたものをスキャンするものであってもよい。更に、二次元コードを介することなく、無線通信手段その他のデータ通信方法によって、データ化された処方箋情報4を直接取り込むことができるように構成されているものとしてもよい。
【0040】
図2は前記サーバ100の構成を示すブロック図である。
前記サーバ100は、前記服薬指導情報2を格納した服薬指導情報格納部110と、前記患者Pに関する患者情報3と前記患者Pが受け取った処方箋に関する処方箋情報4とを組み合わせて服薬指導情報選択モデル121に入力することにより、前記服薬指導情報2から適するものを1つ以上選択する服薬指導情報選択部120と、通信部130と、演算処理を行う演算部140と、機械学習部150と、台帳160と、を有し、インターネットであるネットワークNにアクセス可能に構成されている。尚、その構成はクラウド上に設置されたクラウドサーバであっても、実体を有する物理サーバであってもよい。
【0041】
本実施の形態において、前記サーバ100はクラウドサーバを使用するものとして説明を行う。
【0042】
服薬指導情報格納部110は、例えばハードディスクなどの記憶媒体が使用可能である。
【0043】
前記服薬情報選択モデル121は、不特定多数の人物の患者情報と前記人物の処方箋に関する処方箋情報を入力、服薬指導情報を出力として学習させた、取得した前記患者情報3と前記処方箋情報4を入力し、適する前記服薬指導情報2を1つ以上出力する処理をコンピュータに実行させるAIプログラムであって、本実施の形態では、前記演算部140が前記処理を実行するものである。
【0044】
前記通信部130は、インターネットであるネットワークNに接続するためのものである。
【0045】
前記演算部140は、情報を処理するCPU141と、情報の書き込み・読み出しをするメモリ142と、からなる。
【0046】
前記機械学習部150は、学習用データセットを用いて機械学習を行い、学習済みモデルを生成するものであって、本実施の形態では、不特定多数の人物の患者情報と前記人物の処方箋に関する処方箋情報を入力データ、服薬指導情報を出力データとして学習させることで前記服薬指導情報選択モデル121を生成するものである。
【0047】
尚、前記患者Pの患者情報3および前記患者Pが受け取った処方箋に関する処方箋情報4を入力データ、服薬指導情報を出力データとして学習させるものとしてもよい。
【0048】
前記台帳160は、前記患者情報3および前記処方箋情報4に関するデータと、過去に出力した服薬指導情報2に関するデータを記録するものであり、例えばデータベースにより構成するものとしてもよく、ブロックチェーン技術を用いた共有台帳により構成するものとしてもよい。本実施の形態においては、ブロックチェーン技術を用いた共有台帳であって、サーバ100と端末200間で共有されている。
【0049】
尚、前記サーバは複数からなるものとしてもよい。例えば、前記服薬情報選択部120を有し前記服薬指導情報2の選択を行うメインサーバ100Aと、服薬指導情報格納部110を有し前記メインサーバ100Aからの指令に応じて前記端末100への前記服薬指導情報2の送信を行う服薬指導情報サーバ100Bとからなるものとすることができる(
図3参照)。
【0050】
前記服薬指導情報サーバ100Bは、例えば製薬会社がそれぞれ独自に所有するサーバを用いるものとすることや、公的機関が所有するサーバを用いるものとすることができる。
【0051】
図4は前記端末200の構成を示すブロック図である。
前記端末200は、記憶部210と、演算部220と、出力部230と、通信部240と、入力部250と、電源部260と、画像情報取得手段270と、音声情報取得手段280と、台帳290とを有し、前記ネットワークNを介して前記サーバ100と通信して、前記サーバ100内に格納された前記服薬指導情報2を表示するためのものである。
【0052】
前記端末200としては、例えばタブレットまたはスマートフォンが使用可能である。本実施の形態においては、前記調剤薬局に備えられたタブレット端末を用いるものである。
【0053】
前記記憶部210は、不揮発性メモリである記憶媒体211からなり、その中に、インストールされた専用アプリケーション212を格納している。
【0054】
前記専用アプリケーション212は本発明の服薬指導情報提供システムを実施するためのものであり、前記サーバ100との通信、服薬指導情報2の出力、患者情報3の入力、前記画像情報取得手段270による処方箋に表示された二次元コードの読込、などの機能を有する。
【0055】
前記演算部220は、情報を処理するCPU221と、情報の書き込み・読み出しをするメモリ222と、からなり、前記専用アプリケーション212を実行するものである。
【0056】
前記出力部230は、ディスプレイである映像出力手段231と、スピーカーである音声出力手段232とからなり、前記患者Pは、視覚によって前記映像出力手段231により出力された映像を、聴覚によって前記音声出力手段232により出力された音声を認識することができる。
【0057】
前記通信部240は、Wi-Fi(登録商標)による無線通信が可能な無線通信手段241からなり、ネットワークNに接続可能に構成されている。
【0058】
前記入力部250は、キーボードまたはタッチパネルである入力手段251を有する。
【0059】
前記電源部260は、前記端末200を作動させるための電力を供給可能なバッテリー251からなる。
【0060】
前記画像情報取得手段270は、静止画や動画を撮影可能なカメラであって、前記端末200の前面201に配置されている。本発明において、前記画像情報取得手段270は、処方箋に表示された二次元コードを読み取るため、または前記患者Pの表情や動作を撮影して前記患者Pの反応を画像データとして観測し、当該画像データを用いた理解度推定部による理解度の推定を行うために使用される。
【0061】
前記音声情報取得手段280は、前記患者Pの声を電子信号に変換するためのマイクであって、前記端末200の前面201に配置されている。本発明において、前記音声情報取得手段280は、音声入力により前記端末200を操作するため、または前記患者Pの声を取得して前記患者Pの反応を音声データとして観測し、当該音声データを用いた理解度推定部による理解度の推定を行うために使用される。
【0062】
前記台帳290は、前記患者情報3および前記処方箋情報4に関するデータと、過去に出力した服薬指導情報2に関するデータを記録するものであり、例えばデータベースにより構成するものとしてもよく、ブロックチェーン技術を用いた共有台帳により構成するものとしてもよい。本実施の形態においては、ブロックチェーン技術を用いた共有台帳であって、サーバ100と端末200間で共有されている。
【0063】
図5は本実施の形態における服薬指導情報提供システム1Aの全体フロー図である。
以下に、順を追ってその工程を説明する。
【0064】
A.医療機関受診
まず、患者Pは病院等の医療機関を受診する。診察の結果、必要と診断された薬剤が処方され、処方箋が発行される。
【0065】
B.患者情報登録プロセス
前記処方箋を受け取った前記患者Pは、調剤薬局にて前記処方箋を引き渡す。その際、前記調剤薬局の職員は、患者情報3を前記処方箋、前記患者Pの保険証、または前記患者Pからのヒアリングによって収集し、前記端末200の専用アプリケーション212を用いて入力する。尚、このとき前記患者Pが自ら端末200を操作して患者情報3を入力してもよい。
【0066】
C.処方箋情報登録プロセス
続けて、前記調剤薬局の職員は、前記端末200の専用アプリケーション212を用い、画像情報取得手段270によって紙面である前記処方箋に表示された二次元コードをスキャンして処方箋情報4を入力する。尚、このとき前記患者Pが自ら端末200を操作して処方箋情報4を入力してもよい。また、前記紙面は前記処方箋に限られるものではなく、例えば調剤明細書や、電子お薬手帳用のデータシートなどであってもよい。また、二次元コードは薬局に設置されたレセコンその他の電子機器の画面上に表示されたものをスキャンするものであってもよい。更に、二次元コードを介することなく無線通信手段その他のデータ通信方法によって処方箋情報4が前記端末200に直接送信されるものであってもよい。
【0067】
D.服薬指導情報選択プロセス
前記患者情報3および前記処方箋情報4が前記端末200から入力されると、ネットワークNを介してサーバ100へ送信され、前記サーバ100内で服薬指導情報選択部120による服薬指導情報選択プロセスが行われる。この服薬指導情報選択プロセスの詳しい説明は後述する。
【0068】
E.服薬指導情報の表示
前記服薬指導情報選択プロセスの結果、前記患者Pに適する1つ以上の服薬指導情報2が選択される。当該服薬指導情報2は前記端末200の出力部230によって出力され、前記患者Pはそれを視聴する。
【0069】
このように、前記調剤薬局において薬剤師が調剤を行う間に、前記端末200を用いて前記患者Pは自らに適した服薬指導情報2を視聴することができる。
【0070】
図7は本実施の形態における服薬指導情報選択プロセスのフロー図である。
以下に、順を追ってその工程を説明する。
【0071】
S101.患者情報および処方箋情報の受信
前記B.患者情報登録プロセスおよびC.処方箋情報登録プロセスにおいて入力された前記患者情報3および前記処方箋情報4を前記サーバ100が受信する。
【0072】
S102.台帳の確認
前記患者情報3および前記処方箋情報4と、前記サーバ100の台帳160とを比較参照して、前記患者Pが過去に同じ薬剤を処方されたことがあるか否かを確認する。
【0073】
前記患者Pが過去に同じ薬剤を処方されていることが確認された場合、前記患者Pが処方された薬剤についての知識を予め有するものとして扱い、続く服薬指導情報の選択において、例えば説明を簡略化した服薬指導情報2を選択することができる。
【0074】
S103.服薬指導情報の選択
前記サーバ100が受信した前記患者情報3および前記処方箋情報4を入力データとして、前記サーバ100内の服薬指導情報選択モデル112に入力し、適切な服薬指導情報2を1つ以上選択する。
【0075】
このとき、前記処方箋情報4の薬剤情報に複数の薬剤が含まれる場合は、それぞれの薬剤に関する服薬指導情報2が選択される。更に、前記患者情報3の服薬履歴も含めて複数の薬剤を処方されている場合、飲み合わせ、相互作用または禁忌事項についての説明を行う服薬指導情報2も併せて選択することができる。
【0076】
S104.服薬指導情報の送信
前記ステップS103にて選択された服薬指導情報2は、前記端末200に送信され、前記端末200の映像出力手段231および音声出力手段232を使用して出力し、前記患者Pはこれを視聴する。
【0077】
図7は服薬指導情報を前記端末の出力部によって出力している状態を示す図である。この図に示すように、前記端末200の映像出力手段231を複数の領域に分割し、中央メインエリア231aに服薬説明動画を、下サブエリア231bに服薬説明文を、左サブエリア231cに薬剤情報を表示しているとともに、前記端末200の音声出力手段232から服薬説明動画の音声が再生されている。
【0078】
薬剤情報は、処方された薬剤の写真および名称を表示することで、視覚的に前記患者Pの手元にある薬剤と服薬指導情報2とを容易に結びつけることができる。
【0079】
このように、服薬する薬剤に関する服薬説明動画、服薬説明文および薬剤情報を一度に表示することで、視聴する前記患者Pは服薬説明動画の映像および音声による説明を受けつつも、服薬説明文によって文字による詳細な情報を複合的に得ることが可能であり、前記患者Pが薬剤師と対面して服薬指導を受ける場合に比べてなんら遜色のない分かりやすさの服薬指導情報を得ることができる。
【0080】
処方された薬剤が複数ある場合、服薬説明動画および服薬説明文はその薬剤ごとに選択されて出力されるが、左サブエリア231cに表示された薬剤情報のうち、該当する前記薬剤をハイライト表示(背景色の変更や点滅などで強調)することによって、現在どの薬剤についての服薬説明動画および服薬説明文が出力されているかが一目して把握できるため特に望ましい。
図7において、薬剤情報のうち2番目の薬剤がハイライト表示されているのはその様子を図示したものである。
【0081】
また、服薬説明文として表示される文書のうち、例えば用法・用量や食べ合わせ・飲み合わせ・禁忌事項などの特に注意を要する点については、下線を付す、太字にする、文字色を変えるなどの強調を行うことで、注意点が見落とされるリスクを軽減することができるため特に望ましい。
【0082】
尚、本実施の形態は服薬説明動画、服薬説明文および薬剤情報を併せて前記端末200の出力部230によって出力するものとしているが、服薬説明動画または服薬説明文のうち一方のみを出力するものとしてもよい。
【0083】
例えば、前記患者Pが子供または高齢であって、複雑な情報を受け取って処理することが難しい場合や、前記端末Pがスマートフォンなどの比較的小型の端末であって、表示領域の都合上、映像出力手段231を複数の領域に分割することが困難な場合には、提供する服薬指導情報2をシンプルにして、服薬説明動画のみを出力部によって出力するものとすることができる。
【0084】
図8は本発明の第2の実施の形態である服薬指導情報提供システム1Bの全体フロー図であり、本実施の形態は前記本発明の第1の実施の形態である服薬指導情報提供システム1Aに対し、AI(人工知能)プログラム112による前記患者Pの理解度推定プロセスを含む点において異なり、理解度推定モデル171を有する理解度推定部170を備えたサーバ100Cを用いる(
図9参照)。
以下に、順を追ってその工程を説明する。
【0085】
前記
図8のフロー図における工程A~Eについては、前記
図5に示した前記服薬指導情報提供システム1Aと同様であるため、説明を省略する。
【0086】
F.理解度推定プロセス
前記患者Pが前記服薬指導情報2を視聴している間の反応を、前記端末200に備えた画像情報取得手段270および前記音声情報取得手段280で観測し、得られた画像データおよび音声データを前記サーバ100Cの理解度推定部170に入力して、理解度推定モデル171により前記患者Pの反応を処理する。
【0087】
この理解度推定モデル171の学習にあたっては、例えば服薬指導情報2を視聴した人物の反応の画像データおよび音声データを取得して、眉をひそめる、首をひねるなどの所作、あるいは声の大小やトーンまたは抑揚、「わからない」等の発言をした際に理解度が低いものとして関連付けて学習させることが有効と考えられる。
【0088】
また、理解度の推定を行うにあたっては、患者の表情を認識することで、どのような感情を抱いているかを推測し、安心や喜びの感情を抱いている場合には理解度が高く、反対に不安や驚き、悲しみの感情を抱いている場合には理解度が低いことが推定されることから、従来周知の感情認識AI(エモーショナルAI)の分野における感情認識の技術を利用するものとすることができる。例えば、以下の様にニューラルネットワークによるモデル学習および感情認識を行うものとすることができる。
【0089】
<1.データ収集・分類>
人物の表情を撮影した画像データを、顔付近のみを切り抜き、喜び・悲しみ・怒り・驚きの4つの感情に分類してラベル付けして教師データを用意する。
【0090】
<2.分類トレーニング>
前記教師データを学習用モデルに渡して機械学習させる。学習用モデルを構成する特徴抽出レイヤーにおいて画像データから特徴が抽出され、前記特徴が分類レイヤーに渡されて分類される。分類レイヤーにより分類された結果の感情と、教師データにラベル付けされた感情との差異(損失)が小さくなるように、レイヤー間のウェイトが調整される。差異(損失)が十分に小さくなったら、学習が完了して学習済みモデルが生成されたと判断される。
【0091】
<3.感情認識>
前記学習済みモデルが得られたら、人物の表情を撮影した画像データを前記学習済みモデルにより処理することで、最もスコア(信頼度)の高い感情が選択され、当該人物の感情を識別することができる。
【0092】
<4.輪郭・眉・目・鼻・口の形状による感情認識>
また、上記分類トレーニングに加えて、人物の顔における輪郭・眉・目・鼻・口にそれぞれいくつかの点を打ち、その点同士の距離や位置によって人物の感情を認識させることも可能である。前記点を打つ処理は、上記特徴抽出レイヤー、あるいは別途用意したレイヤーにおいて行うことができる。例えば、笑顔の場合は怒り顔よりも目の上下の距離が近づいたり、笑顔の場合は怒り顔よりも口角の両端間の距離が離れることを利用することができる。更に、例えば同じ笑顔であってもより口角の両端間の距離が離れている方が喜びの度合いが高いなど、感情のレベルがどの程度であるかも、点同士の距離や位置によって推測することができる。
【0093】
前記理解度推定モデル171は、予め学習させたモデルを前記サーバ100Cの理解度推定部170に格納するものとしてもよく、前記機械学習部150によって学習するものとしてもよい。
【0094】
尚、服薬指導情報2を視聴した前記患者Pの反応の画像データおよび音声データを取得して、眉をひそめる、首をひねるなどの所作、あるいは声の大小やトーンまたは抑揚、「わからない」等の発言をした際に理解度が低いものとして関連付けて学習させるものとしてもよい。
【0095】
前記患者Pの反応を処理した結果、算出された理解度値が所定の値に満ちていない場合は、前記患者Pの理解度が不足していると判定し、反対に算出された理解度値が所定の値を超えている場合は、前記患者Pの理解度が十分であると判定する。
【0096】
すなわち、本実施の形態の服薬指導情報提供システム1Bにより、前記患者Pに適した服薬指導情報を予め前記患者Pに視聴させて前記患者Pの理解度を推定することによって、その理解度に基づいて薬剤師による対面での服薬指導をスムーズに行うことができ、薬剤師の業務を支援できるという利点を有する。
【0097】
より具体的に説明すると、薬剤師は前記患者Pが視聴した服薬指導情報を十分に理解していると推定された場合には、服薬指導を簡略化することが可能であり、薬剤師は前記患者Pが視聴した服薬指導情報を十分に理解していないと推定された場合には、特に理解不足と推定された箇所を重点的に服薬指導を行うことが可能である。
【0098】
この薬剤師による対面での服薬指導は、どのような患者に対しても行うことができるが、高齢者などに多い対面での服薬指導に安心感を覚える患者などに特に適する。
【0099】
また、前記患者Pの理解度が不足していると判定された場合、選択された服薬指導情報の再視聴をさせるか、あるいは選択された服薬指導情報よりも平易な服薬指導情報を再選択して視聴させることができる(
図10参照)。
【0100】
特に、前記患者Pの理解度が低いときの反応が特定の箇所において取得された場合、その箇所に関する疑問や不安を解消するための服薬指導情報を再選択して視聴させることができる。
【0101】
服薬指導情報の再視聴または再選択した服薬指導情報の視聴をさせる際には、例えば自動的に視聴をさせてもよく、音声や画面表示によって前記患者Pに確認を行い、承諾をとった後に視聴をさせるものとしてもよい。
【0102】
また、前記患者Pの理解度が十分であると判定された場合、前記患者Pに提供して視聴させる服薬指導情報を、説明を簡略化したり、専門用語を含む説明としたり、食事や運動についての改善などの疾患や薬剤に関する有益な情報としたりすることができる。
【0103】
更に、前記サーバ100Cの台帳160を参照して、前記患者Pにとって処方された薬剤が1回目の処方なのか、2回目以降の処方なのかを判別し、2回目以降の処方である場合は最初から前記患者Pの理解度が十分であると判定するものとしてもよい。
【0104】
このように、本実施の形態の服薬指導情報提供システム1Bによれば、理解度推定部170によって推定した前記患者Pの理解度に基づいて薬剤師との対面式または前記端末200を用いた非対面式の服薬指導を可能としたものである。
【0105】
図11は本発明の第3の実施の形態である服薬指導情報提供システム1Cの全体フロー図であり、本実施の形態は前記本発明の第2の実施の形態における服薬指導情報提供システム1Bに対し、顔認証プロセスを含む点において異なり、顔認証モデル181を有する顔認証部180を備えたサーバ100Dを用いる(
図12参照)。この服薬指導情報提供システム1Cは、前記患者Pが自ら端末を操作することを想定したものである。
以下に、順を追ってその工程を説明する。
【0106】
A.医療機関受診
まず、患者Pは病院等の医療機関を受診する。診察の結果、必要と診断された薬剤が処方され、処方箋が発行される。
【0107】
B1.顔認証プロセス
前記端末200の画像情報取得手段270によって前記患者Pの顔を撮影し、前記撮影した情報をサーバ100Dの顔認証部180によって処理し、予め登録された患者Pであるか否かを判定する。より詳細に説明すると、人物の顔を撮影した写真を入力データとして学習させた顔認証モデル(学習済みモデル113)を用い、前記撮影した情報のうち前記人物の目・鼻・口・顎がともに撮影された画像を前記顔認証モデル181に適合させ、一致度が所定の閾値を超えた場合に、前記人物が予め登録された前記患者Pであると判定する。
【0108】
この顔認証モデル181の学習にあたっては、不特定多数の人物の目・鼻・口・顎がともに撮影された画像を教師データとして学習させることが有効と考えられる。
【0109】
前記顔認証モデル181は、予め学習させたモデルを前記サーバ100の顔認証部180に格納するものとしてもよく、前記機械学習部150によって学習するものとしてもよい。
【0110】
このとき、前記一致度が所定の閾値を超えない場合は、前記人物が予め登録された前記患者Pではないと判定され、次の患者情報登録プロセスへ進む。
【0111】
B2.患者情報登録プロセス
未登録である前記患者Pは、前記端末200の専用アプリケーション212を用いて、必要な患者情報3を入力する。このとき、入力フォームを用いた任意の入力をさせてもよく、動画や自動音声などを用いた対話形式によって1項目毎に入力をさせてもよい。
【0112】
C.処方箋情報登録プロセス
続けて、前記患者Pは、前記端末200の専用アプリケーション212を用いて、紙面である前記処方箋に表示された2次元コードをスキャンして処方箋情報4を入力する。
【0113】
D.服薬指導情報選択プロセス
前記患者情報3および前記処方箋情報4が前記端末200から入力されると、ネットワークNを介してサーバ100Dへ送信され、前記サーバ100D内で服薬指導情報選択部120による服薬指導情報選択プロセスが行われる。この服薬指導情報選択プロセスの詳しい説明は前述した通りである。
【0114】
E.服薬指導情報の表示
前記服薬指導情報選択プロセスの結果、前記患者Pに適する1つ以上の服薬指導情報2が選択される。当該服薬指導情報2は前記端末200の出力部230によって出力され、前記患者Pはそれを視聴する。
【0115】
このように、本実施の形態の服薬指導情報提供システム1Cによれば、顔認証プロセスを導入することによって前記患者Pの顔を撮影するだけで自動的に認証が行われるため、入力の手間を省くことが出来るとともにセキュリティの向上も図ることができる。
【0116】
尚、本発明の各実施の形態に示した服薬指導情報提供システムは、前記端末200にインストールされている前記専用アプリケーション212を使用するものとして説明したが、例えばネットワークNを介してアクセスするクラウド上で稼働するソフトウェア(SaaS)等を使用するものや、ネットワークNを介してアクセスする前記サーバ上で稼働しているものとしてもよい。
【0117】
その場合、前記サーバのリソースを使用することができるため前記端末200の処理能力や記憶容量が乏しい場合であっても軽快に使用することができる利点を有する。
【0118】
尚、本発明の各実施の形態に示した服薬指導情報提供システムは、処方箋に基づき調剤を行う調剤薬局に備えた端末を用いるものであるが、患者自身が所有するスマートフォンやタブレットなどを端末として用いるものとしてもよい。
【0119】
その場合、前記患者Pは自らの自宅で服薬を行う際に、処方された薬剤に関する服薬指導情報を得ることができるため、時間と場所を問わずに使用することができる利点を有する。
【符号の説明】
【0120】
1A,1B,1C 服薬指導情報提供システム、2 服薬指導情報、3 患者情報、4 処方箋情報、100,100C,100D サーバ、100A メインサーバ、100B 服薬指導情報サーバ、110 服薬指導情報格納部、120 服薬指導情報選択部、121 服薬指導情報選択モデル、130 通信部、140 演算部、141 CPU、142 メモリ、150 機械学習部、160 台帳、170 理解度推定部、171 理解度推定モデル、180 顔認証部、181 顔認証モデル、200 端末、201 前面、210 記憶部、211 記憶媒体、212 専用アプリケーション、220 演算部、221 CPU、222 メモリ、230 出力部、231 映像出力手段、231a 中央メインエリア、231b 下サブエリア、231c 左サブエリア、232 音声出力手段、240 通信部、241 無線通信手段、250 入力部、251 入力手段、260 電源部、261 バッテリー、270 画像情報取得手段、280 音声情報取得手段、290 台帳、N ネットワーク、P 患者