(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】術具
(51)【国際特許分類】
A61B 34/30 20160101AFI20230801BHJP
【FI】
A61B34/30
(21)【出願番号】P 2023513261
(86)(22)【出願日】2022-01-18
(86)【国際出願番号】 JP2022001630
【審査請求日】2023-02-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515075692
【氏名又は名称】リバーフィールド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】新藤 広樹
【審査官】木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-505001(JP,A)
【文献】特表2015-525614(JP,A)
【文献】特開2012-65975(JP,A)
【文献】特許第6747745(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/12 ― 18/16
A61B 34/00 ― 34/37
B25J 1/00 ― 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
術具であって、
筺体に対して相対的に移動可能に配置された少なくとも1つの伝達体と、
少なくとも1つの部分が前記伝達体に保持され、前記伝達体の移動を可動部に伝達する少なくとも1本のワイヤと、
前記筺体に配置され、外部から供給された電力を前記可動部に導く導通部と、
前記ワイヤにおける前記伝達体から前記可動部以外に向かって延びる端部を覆う絶縁性を有する絶縁部であって、内部に前記ワイヤが配置された被覆領域、および、内部に前記ワイヤが配置されていない非被覆領域を有する絶縁部と、
が設けられた術具。
【請求項2】
前記伝達体は、前記筺体に対して相対的に直線方向へ移動可能に配置される請求項1記載の術具。
【請求項3】
前記絶縁部における前記非被覆領域は、前記導通部に供給される電力
の電圧に基づいて定められる空間距離以上である所定の長さを有している請求項1または2に記載の術具。
【請求項4】
前記絶縁部は、複数本の前記ワイヤの端部の周囲を覆う請求項1から3のいずれか1項に記載の術具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、術具に関する。
【背景技術】
【0002】
マスタースレーブ型の手術ロボットにおいて、手術ロボットに装着された術具を駆動する方法として、種々の方法が提案されている。例えば特許文献1に開示されているように、アクチュエータ等の駆動源で発生させた駆動力を伝達体およびワイヤを用いて伝達し、伝達した駆動力によって術具を駆動する方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
手術ロボットに装着される術具としては、高周波電流を用いる電気メスや鉗子等がある。この高周波電流を用いる術具の場合には、高周波電流を鉗子等に給電する導通部が術具の内部に設けられる。その一方で、駆動力の伝達に用いられるワイヤは、強度や柔軟性などの要求条件を満たすためにステンレス鋼などの金属材料を用いて形成される場合がある。
【0005】
ワイヤが導電性を有する金属材料を用いて形成された場合、高周波電流が意図された対象の部分以外に通電することを防ぐために、ワイヤを絶縁することが求められる。例えば、ワイヤと導通部との間に絶縁を確保するために必要な距離を設けることが求められる。以降において、このワイヤと導通部との間の絶縁を確保するために必要な距離を「空間距離」とも記載する。
【0006】
ワイヤは収納されるカートリッジ部に相対移動可能に収納される場合がある。この場合、ワイヤの移動範囲のうちの最も導通部と接近した位置と、導通部の位置との間隔を空間距離よりも大きくする必要がある。
【0007】
このようにすると、術具におけるワイヤおよび導通部が収納されるカートリッジ部が大きくなる。手術ロボットに複数の術具が装着される場合、カートリッジ部が大きくなると、術具の配置間隔が広くなる。
【0008】
このような術具が装着された手術ロボットを用いて、例えばロボット内視鏡手術のような手術を行うと複数のポートの間隔を広くする必要がある。ポートは、手術部位に配置される部材であって、内部に術具のシャフトが挿通される筒状の部材である。
【0009】
複数のポートの間隔が広くなると、手術ロボットに装着された術具によって手術の対象である対象組織へアプローチしようとする際に、様々な制限を受けやすくなる。そのため、手術ロボットによる対応が難しい症例が多くなるという問題があった。
【0010】
本開示は、手術ロボットに装着した際の配置間隔が広くなることを抑制しやすい術具の一例を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の一局面である術具は、筺体に対して相対的に移動可能に配置された少なくとも1つの伝達体と、少なくとも1つの部分が前記伝達体に保持され、前記伝達体の移動を可動部に伝達する少なくとも1本のワイヤと、前記筺体に配置され、外部から供給された電力を前記可動部に導く導通部と、前記ワイヤにおける前記伝達体から前記可動部以外に向かって延びる端部を覆う絶縁性を有する絶縁部であって、内部に前記ワイヤが配置された被覆領域、および、内部に前記ワイヤが配置されていない非被覆領域を有する絶縁部と、が設けられる。
【0012】
本開示の一局面である術具の記伝達体は、前記筺体に対して相対的に直線方向へ移動可能に配置される。
【0013】
このように構成された術具によれば、ワイヤの可動部以外に向かって延びる端部が絶縁部に覆われる。絶縁部には、内部にワイヤが配置されていない非被覆領域が設けられているため、ワイヤの端部と導通部との間隔を広くしなくても絶縁を保ち易くなる。つまり、ワイヤや導通部などを内部に収納する筺体を小さくしやすい。
【0014】
本開示の一局面である術具の前記絶縁部における前記非被覆領域は、前記導通部に供給される電力に基づいて定められる空間距離以上である所定の長さを有している。
【0015】
このように構成された術具によれば、非被覆領域が所定の長さを有している。所定の長さは、導通部に供給される電力に基づいて定められる空間距離以上であるため、ワイヤの端部と導通部と絶縁を保ち易くなる。
【0016】
本開示の一局面である術具の前記絶縁部は、複数本の前記ワイヤの端部の周囲を覆う。
【0017】
このように構成された術具によれば、複数本のワイヤの端部がまとめられて絶縁部に覆われる。複数本のワイヤの端部をまとめて絶縁部で覆うことにより、これら端部と導通部との絶縁を保ち易くなる。
【発明の効果】
【0018】
本開示の術具によれば、ワイヤの端部と導通部との間隔を広くしなくても絶縁を保ち易く、ワイヤや導通部などを内部に収納する筺体を小さくしやすいため、手術ロボットに装着した際の配置間隔が広くなることを抑制しやすいという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本開示による術具の外観を説明する斜視図である。
【
図2】本開示による術具の外観を説明する斜視図である。
【
図4】第2筺体とワイヤおよびスライダとの位置関係を説明する斜視図である。
【
図5】第2筺体とワイヤとの位置関係を説明する斜視図である。
【
図7】ワイヤおよびスライダの構成を説明する斜視図である。
【符号の説明】
【0020】
1…術具、 20…筺体、 26…ワイヤ、 27…端部、 21A…導通部、
40…スライダ(伝達体)、 60…絶縁部、 61…被覆領域、 62…非被覆領域
【発明を実施するための形態】
【0021】
本開示の一実施形態に係る術具について、
図1から
図7を参照しながら説明する。本実施形態の術具1は、遠隔操作可能な手術ロボットにおける多自由度マニピュレータに設けられる術具である。術具1は、例えば内視鏡手術において患者の処置を行う際に用いる鉗子などの構成を有していてもよい。
【0022】
術具1には、
図1および
図2に示すように、シャフト10と、筺体20とが設けられている。
【0023】
なお、本実施形態では説明を容易にするために、シャフト10が延びる方向をZ軸とし、シャフト10の根本から先端に向かう方向をZ軸の正方向として説明する。また、Z軸と直交する方向であって、後述する複数のスライダ(伝達体に相当する。)40が並ぶ方向をX軸とし、Z軸の正方向に向かって左方向をX軸の正方向として説明する。さらに、Z軸およびX軸に直交する方向をY軸とし、筺体20におけるスライダ40が並ぶ面から反対の面に向かう方向をY軸の正方向として説明する。
【0024】
シャフト10は、患者の体内に挿入される棒状に構成された部材である。シャフト10は、筺体20からZ軸の正方向に向かって延びて配置されている。シャフト10は円柱状または円筒状の構成を有する。
【0025】
例えば、シャフト10におけるZ軸の正方向の端部には、図示しない関節部および鉗子が設けられている。この関節部および鉗子は、可動部に相当する。
【0026】
関節部は、後述するスライダ40から伝達される駆動力により、鉗子の向きを変更可能とする構成を有している。関節部の具体的な構成は、伝達される駆動力により、鉗子の向きを変更することが可能な一般的な構成でよく、特に限定されない。
【0027】
鉗子は、患者の処置を行う一般的な鉗子と同様の構成を有している。本実施形態ではシャフト10の先端に鉗子が配置されている場合を例に説明するが、患者の処置に用いられる他の器具が配置されていてもよい。
【0028】
筺体20には、第1筺体20Aと、第2筺体20Bと、が設けられている。第1筺体20Aおよび第2筺体20Bは、筺体20の外形を構成する部材である。
【0029】
筺体20の第1筺体20Aは、
図1および
図3に示すように、筺体20のうちY軸の正方向側の部分である側面および天面を構成する部材である。第1筺体20Aには、導通部21Aが設けられている。導通部21Aは、第1筺体20Aの天面に配置され、外部から供給された高周波電流を鉗子に導く部材である。
【0030】
導通部21Aは、導電性を有する材料、例えば、金属材料を用いて形成されている。本実施形態の導通部21Aは、銅または銅を成分に含む合金を用いて形成されている。導通部21Aは第1筺体20Aを貫通して配置され、筺体20の内部において高周波電流を鉗子に導く導電線22Aと導通可能に接続されている。
【0031】
第2筺体20Bは、
図1および
図2に示すように、筺体20のうちY軸の負方向側の底面を構成する板状に形成された部材である。第2筺体20Bには、
図2に示すように、3つの従動溝21Bと、3つのスライダ40とが設けられている。また、
図4に示すように、3つのワイヤ26が設けられ、
図5に示すように、カバー25Bが設けられている。
【0032】
従動溝21Bは、
図2に示すように、第2筺体20BにおけるY軸の負方向側の端面に設けられた長孔である。言い換えると、従動溝21Bは、第2筺体20Bにおける多自由度マニピュレータとの着脱面に設けられた長孔である。また、従動溝21Bは、Z軸に沿って延びる構成を有している。
【0033】
3つの従動溝21BはX軸方向に等間隔に並んで配置されている。従動溝21Bの数は、関節部及び/又は鉗子などの動きなどに基づいて定めることができる。言い換えると、多自由度マニピュレータに求められる仕様に基づく動きに基づいて定めることができる。従動溝21Bの数は、求められる仕様に応じて3つよりも多い場合もあり得、少ない場合もあり得る。
【0034】
スライダ40は、多自由度マニピュレータから駆動力が伝達され、関節部や鉗子に駆動力を伝達する構成を有している。また、スライダ40は、多自由度マニピュレータと着脱が可能な構成を有している。
【0035】
スライダ40は、筺体20に対して相対移動可能に配置されている。本実施形態では、スライダ40が筺体20に対して相対的に直線方向へ移動可能に配置された例に適用して説明する。なお、スライダ40は、筺体20に対して相対的に回転可能に配置されてもよい。
【0036】
3つの従動溝21Bのそれぞれに、1つのスライダ40が配置され、スライダ40は、従動溝21Bの内部をZ軸方向に移動可能に配置されている。言い換えるとスライダ40は、筺体20に対して相対的に直線方向に移動可能に配置されている。スライダ40は、全ての従動溝21Bのそれぞれに配置されてもよいし、一部の従動溝21Bにのみ配置されてもよい。
【0037】
3つのスライダ40の一部は、鉗子に駆動力を伝達する構成を有している。残りのスライダ40は、関節部に駆動力を伝達する構成を有している。例えば、3つのスライダ40のうち、2つのスライダ40は鉗子に駆動力を伝達する構成を有している。3つのスライダ40のうち、鉗子に駆動力を伝達するスライダ40を除く1つのスライダ40は関節部に駆動力を伝達する構成を有している。
【0038】
図4に示すワイヤ26は、スライダ40に伝達された駆動力を鉗子や関節部に伝達する構成を有している。1つのスライダ40には、1本または2本のワイヤ26が配置されている。
【0039】
ワイヤ26は、導電性を有する材料を用いて長尺状に形成されたワイヤである。本実施形態ではワイヤ26が、例えば、ステンレス鋼や、タングステン、タングステンを成分に含む合金、ピアノ線(例えば、JIS G 3522に規定されるもの。)などの手術用ロボットシステムのマニピュレータで使用される金属材料を用いて形成されている場合を例に説明する。
【0040】
図5に示すカバー25Bは、第2筺体20Bに取り付けられる板状の部材であって、スライダ40よりもY軸正方向の位置に配置される部材である。カバー25Bには、ワイヤ26が挿通されるワイヤ孔26Bが設けられている。
【0041】
ワイヤ26におけるスライダ40から鉗子や関節部以外に向かって延びる端部27には、
図6に示すように、絶縁部60が設けられている。言い換えると、後述するスライダ40の挿通孔46に挿通されたワイヤ26の端部27には、絶縁部60が設けられている。
【0042】
ワイヤ26は、
図5に示すように、スライダ40からカバー25Bのワイヤ孔26Bに通される。ワイヤ孔26BからY軸正方向側に導かれたワイヤ26の端部27に絶縁部60が配置される。
【0043】
絶縁部60は、複数のワイヤ26の端部27の周囲を覆う部材である。本実施形態では、1つの絶縁部60が全てのワイヤ26の端部27を覆う場合を例に説明する。なお、1つの絶縁部60が1本のワイヤ26の端部27を覆ってもよい。
【0044】
絶縁部60は、絶縁性を有する材料を用いて形成された筒状の部材である。例えば、絶縁部60は、絶縁性を有する樹脂材料を用いて形成される。さらに、絶縁部60は、熱を加えることにより縮小する樹脂材料を用いて形成されると好ましい。
【0045】
絶縁部60には、
図6に示すように、被覆領域61と、非被覆領域62と、が長手方向に並んで設けられている。被覆領域61は、絶縁部60における長手方向と交わる横断面における内部、具体的には筒状の内部にワイヤ26が配置された領域である。非被覆領域62は、絶縁部60における内部にワイヤ26が配置されていない領域である。
【0046】
非被覆領域62は所定の長さL1を有している。所定の長さL1は、導通部21Aに供給される高周波電流の電圧等に基づいて定められる電気的絶縁を確保するために必要な距離以上の長さを有している。必要な距離としては、空間距離を例示することができる。
【0047】
所定の長さL1の数値としては、3mm以上80mm以下であることが好ましく、3mm以上40mm以下であることがより好ましい。所定の長さL1の数値は、導通部21Aに供給される高周波電流の電圧等に基づいて、上記の範囲から選択される。
【0048】
導通部21Aに供給される高周波電流は、例えば、外科的手術における電気焼灼に用いられる。所定の長さL1の数値を3mm以上とすることにより、最低限必要な空間距離を確保できる。所定の長さL1の数値を80mm以下とすることにより、作業性の悪化を防ぎやすくなり、40mm以下とすることにより、更に作業性の悪化を防ぎやすくなる。
【0049】
作業性の悪化には、第1筺体20Aと第2筺体20Bとを組合せる作業の悪化が含まれる。所定の長さL1が長くなると、配置部25Aにワイヤ26および絶縁部60が配置されにくくなり、第1筺体20Aと第2筺体20Bとの間にワイヤ26などが挟まれやすくなる。そのため、挟み込み等に注意しながら作業をする必要があり、作業性の悪化につながりやすい。
【0050】
端部27が絶縁部60で覆われたワイヤ26は、
図3に示すように、第1筺体20Aの内面に設けられた溝状の配置部25Aに、Z軸正方向側から負方向に向かって差し込まれる。なお、
図3では、図を見やすくするために6本のワイヤ26のうち3本のみを図示している。配置部25Aは、Z軸方向に延びて形成された部分である。第1筺体20Aにおける配置部25Aに対してZ軸負方向に隣接した位置には導通部21Aが配置されている。
【0051】
筺体20の第2筺体20Bには、
図4に示すように、ワイヤ26をシャフト10へ導く2つの第1ガイドプーリ22B、2つの第2ガイドプーリ23B、および、3つの第3ガイドプーリ24Bが設けられている。
【0052】
第1ガイドプーリ22Bは、スライダ40よりもシャフト10に近い位置に配置されている。2つの第1ガイドプーリ22Bは、それぞれX軸の正方向側および負方向側に並んで配置されている。
【0053】
2つの第1ガイドプーリ22Bは、X軸の正方向側のスライダ40から延びるワイヤ26および負方向側のスライダ40から延びるワイヤ26のそれぞれを、2つの第2ガイドプーリ23Bへ導いている。
【0054】
第2ガイドプーリ23Bは、第1ガイドプーリ22Bと同様にスライダ40よりもシャフト10に近い位置に配置されている。2つの第2ガイドプーリ23Bは、それぞれX軸の正方向側および負方向側に並んで配置されている。
【0055】
2つの第2ガイドプーリ23Bは、X軸の正方向側の第1ガイドプーリ22Bから延びるワイヤ26およびX軸の負方向側の第1ガイドプーリ22Bから延びるワイヤ26のそれぞれを、シャフト10の内部へ導いている。
【0056】
第3ガイドプーリ24Bは、スライダ40よりもシャフト10から遠い位置に配置されている。3つの第3ガイドプーリ24Bは、X軸方向に並んで配置されている。第3ガイドプーリ24Bのそれぞれは円筒状に形成され、その円筒面にはワイヤ26がガイドされる複数の溝が設けられている。
【0057】
本実施形態では、3つの溝が、各第3ガイドプーリ24Bの円筒面のY軸方向に異なる位置にそれぞれ設けられている例について説明する。3つの第3ガイドプーリ24Bのそれぞれは、ワイヤ26がガイドされている溝から隣接する溝へ移動可能な構成を有している。
【0058】
3つの第3ガイドプーリ24Bのうち、X軸の負方向側の第3ガイドプーリ24Bは、X軸の負方向側のスライダ40から延びるワイヤ26を、はじめに当該ワイヤ26がガイドされた溝から隣接する溝へ移動させてY軸方向の位置を異ならせた上でX軸の負方向側の第2ガイドプーリ23Bへ導いている。X軸の負方向側の第2ガイドプーリ23Bは、当該ワイヤ26をシャフト10の内部へ導いている。
【0059】
中央の第3ガイドプーリ24Bは、中央のスライダ40から延びるワイヤ26を、はじめに当該ワイヤ26がガイドされた溝から隣接する溝へ移動させてY軸方向の位置を異ならせた上でX軸の正方向側の第2ガイドプーリ23Bへ導いている。X軸の正方向側の第2ガイドプーリ23Bは、当該ワイヤ26をシャフト10の内部へ導いている。
【0060】
X軸の正方向側の第3ガイドプーリ24Bは、X軸の正方向側のスライダ40から延びるワイヤ26を、はじめに当該ワイヤ26がガイドされた溝から隣接する溝へ移動させてY軸方向の位置を異ならせた上でX軸の正方向側の第2ガイドプーリ23Bへ導いている。X軸の正方向側の第2ガイドプーリ23Bは、当該ワイヤ26をシャフト10の内部へ導いている。
【0061】
スライダ40には、
図7に示すように、スライダ本体41と、1つの第1保持部45と、1つの第2保持部51と、2つの固定部55と、4つの転動部61と、が設けられている。スライダ40には、更に別の部材が設けられてもよい。
【0062】
スライダ本体41はZ軸方向に延びる柱状に形成された部材である。より具体的には四角柱状に形成された部材である。スライダ本体41には、2つの雌ネジ孔42と、2つの位置決め凸部43と、4つの転動軸部44と、が設けられている。
【0063】
雌ネジ孔42は、後述する固定部55の雄ネジに対応し、第1保持部45および第2保持部51の保持に用いられるネジ孔である。2つの雌ネジ孔42は、それぞれスライダ本体41におけるZ軸正方向および負方向の端部に、Y軸方向に延びて形成されたネジ孔である。
【0064】
位置決め凸部43は、スライダ本体41に対する第1保持部45および第2保持部51の相対位置を定める凸部である。位置決め凸部43は、スライダ本体41からY軸正方向に突出する円柱形状の部材である。2つの位置決め凸部43は、それぞれ2つの雌ネジ孔42に隣接する位置であって、2つの雌ネジ孔42に対してスライダ本体41の中央側の位置に設けられている。
【0065】
転動軸部44は、転動部61を回転軸線Lまわりに回転可能に支持する部材である。転動軸部44は、スライダ本体41からX軸方向に突出する円柱形状の部材である。当該円柱形状の中心軸線はX軸と平行な軸線であって、上述の回転軸線Lに相当する。
【0066】
4つの転動軸部44は、スライダ本体41のZ軸正方向の端部におけるX軸正方向の側面および負方向の側面と、Z軸負方向の端部におけるX軸正方向の側面および負方向の側面と、にそれぞれ設けられている。
【0067】
第1保持部45および第2保持部51は、ワイヤ26を間に挟んで保持する部材である。第1保持部45および第2保持部51は、スライダ本体41のY軸正方向側の面に重ねて配置される。第1保持部45は第2保持部51のY軸正方向側に配置される、つまり、第2保持部51は第1保持部45のY軸負方向側に配置される。
【0068】
第1保持部45はZ軸方向に長い矩形板状の構成を有している。第1保持部45には、1つの挿通孔46と、2つの第1位置決め孔47と、2つの第1固定孔48と、が設けられている。
【0069】
挿通孔46は、ワイヤ26の端部が挿通される貫通孔であり、第1位置決め孔47および第1固定孔48と比較して孔の内径が小さな貫通孔である。本実施形態では、挿通孔46が第1保持部45におけるZ軸方向の中央領域に設けられている。
【0070】
第1位置決め孔47は、孔の内径が位置決め凸部43の外径よりも大きく形成され、位置決め凸部43が挿通される貫通孔である。2つの第1位置決め孔47は、取り付け状態において、第1保持部45における位置決め凸部43と対向する位置にそれぞれ形成されている。本実施形態では、2つの第1位置決め孔47が、挿通孔46に隣接する位置、言い換えると、Z軸正方向に隣接する位置、および、Z軸負方向に隣接する位置にそれぞれ設けられている。
【0071】
第1固定孔48は、孔の内径が固定部55の雄ネジ外径よりも大きく形成され、固定部55が挿通される貫通孔である。第1固定孔48は、取り付け状態において、雌ネジ孔42と対向する位置に形成されている。
【0072】
2つの第1固定孔48は、第1保持部45における2つの第1位置決め孔47を挟む位置にそれぞれ形成されている。本実施形態では、2つの第1固定孔48が、Z軸正方向側の第1位置決め孔47に対してZ軸正方向に隣接する位置、および、Z軸負方向側の第1位置決め孔47に対してZ軸負方向に隣接する位置にそれぞれ設けられている。
【0073】
第2保持部51はZ軸方向に長い矩形板状の構成を有している。第2保持部51は、第1保持部45と比較して、Z軸方向の寸法が長い構成を有している。第2保持部51には、2つの第2位置決め孔52と、2つの第2固定孔53と、2つのガイド孔54と、が設けられている。
【0074】
第2位置決め孔52は、孔の内径が位置決め凸部43の外径よりも大きく形成され、位置決め凸部43が挿通される貫通孔である。第2位置決め孔52における孔の内径は、第1位置決め孔47の内径と同じであってもよいし、異なっていてもよい。2つの第2位置決め孔52は、取り付け状態において、第2保持部51における位置決め凸部43と対向する位置にそれぞれ形成されている。
【0075】
第2固定孔53は、孔の内径が固定部55の雄ネジ外径よりも大きく形成され、固定部55が挿通される貫通孔である。第2固定孔53における孔の内径は、第1固定孔48の内径と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0076】
2つの第2固定孔53は、取り付け状態において、雌ネジ孔42と対向する位置にそれぞれ形成されている。2つの第2固定孔53は、第2保持部51における2つの第2位置決め孔52を挟む位置にそれぞれ形成されている。
【0077】
本実施形態では、2つの第2固定孔53が、Z軸正方向側の第2位置決め孔52に対してZ軸正方向に隣接する位置、および、Z軸負方向側の第2位置決め孔52に対してZ軸負方向に隣接する位置にそれぞれ設けられている。
【0078】
ガイド孔54は、ワイヤ26が挿通される貫通孔であり、Z軸方向に延びた長孔である。2つのガイド孔54は、第2保持部51における2つの第2固定孔53を挟む位置にそれぞれ形成されている。
【0079】
本実施形態では、2つのガイド孔54が、Z軸正方向側の第2固定孔53に対してZ軸正方向に隣接する位置、および、Z軸負方向側の第2固定孔53に対してZ軸負方向に隣接する位置にそれぞれ設けられている。
【0080】
2つのガイド孔54が設けられる位置は、第1保持部45および第2保持部51がスライダ本体41に取り付けられた状態において、第2保持部51が第1保持部45よりもZ軸正方向に突出した領域、および、Z軸負方向に突出した領域に含まれる。
【0081】
固定部55は、第1保持部45および第2保持部51をスライダ本体41に配置された状態に固定する構成を有する。さらに、第1保持部45および第2保持部51の間にワイヤ26が挟まれた状態で固定する構成を有している。本実施形態では固定部55が雄ネジを有する構成である例について説明する。
【0082】
転動部61は、転動軸部44によって回転軸線Lまわりに回転可能に支持される部材である。転動部61は、転動軸部44が挿通される孔が中心に設けられた円筒形状、または、円柱形状に形成された構成を有する。
【0083】
4つの転動部61は、スライダ本体41のZ軸正方向の端部におけるX軸正方向の側面および負方向の側面と、Z軸負方向の端部におけるX軸正方向の側面および負方向の側面と、にそれぞれ配置されている。
【0084】
次に、上記の構成からなる術具1におけるワイヤ26の端部27と導通部21Aとの間の絶縁について説明する。
【0085】
図4に示すように、スライダ40が従動溝21Bに沿って相対移動すると、スライダ40に固定されたワイヤ26もスライダ40の移動に従って引っ張られたり、押し出されたりする。ワイヤ26が引っ張られたり、押し出されたりすると、ワイヤ26の端部27の位置も変動する。
【0086】
具体的には、
図3に示すように、ワイヤ26の端部27が配置部25Aに沿って移動して、導通部21Aに接近したり、離間したりする。ワイヤ26の端部27が導通部21Aに接近しても、絶縁部60が設けられているため、導通部21Aとの間に所定の長さL1が確保される。ワイヤ26の端部27と導通部21Aの間に必ず非被覆領域62が存在・干渉して、端部27と導通部21Aとが距離L1よりも接近できない。その結果、ワイヤ26の端部27と導通部21Aとの間の絶縁を保つことができる。
【0087】
上記の構成の術具1によれば、ワイヤ26の端部27が絶縁部60に覆われる。絶縁部60には、内部にワイヤ26が配置されていない非被覆領域62が設けられているため、ワイヤ26の端部27と導通部21Aとの間隔を広くしなくても絶縁を保ち易くなる。
【0088】
つまり、ワイヤ26や導通部21Aなどを内部に収納する筺体20を小さくすることができ、ロボット内視鏡手術においてポート間距離を小さく設定することができる。その結果、様々な手技にロボット手術を適用することができる。
【0089】
絶縁部60の非被覆領域62は、空間距離以上の所定の長さL1を有しているため、ワイヤ26の端部27と導通部21Aと絶縁を保ち易くなる。
【0090】
複数本のワイヤ26の端部27がまとめられて絶縁部60に覆われる。複数本のワイヤ26の端部27をまとめて絶縁部60で覆うことにより、これら端部27と導通部21Aとの絶縁を保ち易くなる。
【要約】
術具であって、筺体に対して相対的に直線方向へ移動可能に配置された少なくとも1つの伝達体と、少なくとも1つの部分が伝達体に保持され、伝達体の移動を可動部に伝達する少なくとも1本のワイヤと、筺体に配置され、外部から供給された電力を可動部に導く導通部と、ワイヤにおける伝達体から可動部以外に向かって延びる端部を覆う絶縁性を有する絶縁部であって、内部にワイヤが配置された被覆領域、および、内部に前記ワイヤが配置されていない非被覆領域を有する絶縁部と、が設けられる。