(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】カバー
(51)【国際特許分類】
A47K 3/38 20060101AFI20230801BHJP
A47K 3/28 20060101ALI20230801BHJP
A47K 3/12 20060101ALI20230801BHJP
A61H 33/00 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
A47K3/38
A47K3/28
A47K3/12
A61H33/00 310P
(21)【出願番号】P 2019154115
(22)【出願日】2019-08-26
【審査請求日】2022-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】501362906
【氏名又は名称】積水ホームテクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100179213
【氏名又は名称】山下 未知子
(74)【代理人】
【識別番号】100170542
【氏名又は名称】桝田 剛
(72)【発明者】
【氏名】細田 良造
(72)【発明者】
【氏名】山嵜 亜衣
(72)【発明者】
【氏名】杉 茂人
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-242942(JP,A)
【文献】実開昭64-017625(JP,U)
【文献】実開平07-030917(JP,U)
【文献】特開2002-136566(JP,A)
【文献】特開2004-305263(JP,A)
【文献】特開平9-271508(JP,A)
【文献】特開平11-47222(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 3/02-4/00
A61H 33/00
A45D 44/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
椅子と、シャワー装置と、を備えたシャワーシステムで用いられ、前記椅子に座る使用者を覆うように設けられるカバーであって、
筒状に形成された、シート状のカバー本体と、
前記カバー本体に取り付けられる固定部材と、
を備え、
前記カバー本体の上部で開口する第1開口と、前記カバー本体の下部で開口する第2開口とが、形成され、
前記第1開口は、使用者の頭部が突出可能で、当該頭部よりも前後方向に延びるように形成され、
前記カバー本体は、前記椅子に座る使用者の背面側において、前記第1開口及び第2開口を結ぶように延びるスリットが形成され、当該スリットにより、前記カバー本体が水平方向に分断され、
前記固定部材は、前記分断された前記カバー本体の一方の端部と、他方の端部とが重なるように、着脱自在に固定するように構成され、
前記シャワー装置から噴射される水が外部に飛び散るのを抑制するように覆う、カバー。
【請求項2】
前記固定部材は、前記一方の端部の外側を向く面と、前記他方の端部の内側を向く面とを固定するように構成されている、請求項1に記載のカバー。
【請求項3】
前記カバー本体は、上部の水平方向の幅が、下部の水平方向の幅よりも狭く形成されている、請求項1または2に記載のカバー。
【請求項4】
前記カバー本体は、
前記椅子に座る使用者の前面側を覆う第1カバー部材と、
前記椅子に座る使用者の背面側を覆い、前記スリットが形成された第2カバー部材と、
を備え、
前記第1及び第2カバー部材の水平方向の両側辺同士が互いに固定されている、請求項1から3のいずれかに記載のカバー。
【請求項5】
前記第1カバー部材の上縁に第1切り欠き部が形成され、
前記第2カバー部材の上縁に第2切り欠き部が形成され、
前記第1切り欠き部及び第2切り欠き部が互いに対向することで、前記第1開口が形成される、請求項4に記載のカバー。
【請求項6】
椅子と、シャワー装置と、を備えたシャワーシステムで用いられ、前記椅子に座る使用者を覆うように設けられるカバーであって、
シート状のカバー本体と、
前記カバー本体の一方の端部の裏面と、他方の端部の表面とを着脱自在に固定するように構成された固定部材と、
を備え、
前記カバー本体は、使用者の頭部が突出可能で、当該頭部よりも前後方向に延びるように形成された第1開口を有し、
前記シャワー装置から噴射される水が外部に飛び散るのを抑制するように覆う、カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椅子と、シャワー装置と、を備えたシャワーシステムで用いられ、前記椅子に座る使用者を覆うように設けられるカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
入浴の目的は、洗体、洗髪を行い、身体の汚れを除去することと、身体を温めて血流を促進させる(温浴)ことである。一般的には、浴室の洗い場でシャワーを使いながら身体の汚れを除去し、浴槽の湯(温水)に浸かって身体を温める。一方、身体機能が低下し、浴槽に入るのが困難である場合には、洗い場でシャワーのみで身体を温めるシャワー浴で済ますことがある。しかしながら、シャワーホースの先端に設けられたシャワーヘッドによるシャワー浴では、十分に身体を温めることができない。そこで、特許文献1~3に開示されているように、着座姿勢でシャワーを浴びることができるシャワー装置が開発されている。
【0003】
特許文献1のシャワー装置には左右のアームに複数の角度調整可能な噴霧ノズルが取付られた本体が浴室壁に設置されており、これによって、併設された椅子に着座した使用者が、着座姿勢でシャワーを浴びることができる。
【0004】
特許文献2のシャワー装置には上下移動可能な環状のシャワー配管を備えており、併設された椅子に着座した使用者が、着座姿勢でシャワーを浴びることができる。また、熱の発散防止と周りへの湯の飛び散りに配慮し、環状のシャワー配管には、シャワーカーテンが取り付けられている。
【0005】
特許文献3のシャワー装置には折りたたみ自在のシャワー配管が取付けられており、シャワー専用の椅子もしくは車椅子を装置内に設置することで、着座した使用者が、着座姿勢でシャワーを浴びることができる。また、使用者を部分的又は全体的に覆うカバーが設けられており、このカバーによって、使用者を外部から遮蔽することで、他人の視界を遮るとともに、温熱効果を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第3804154号公報
【文献】特開2000-79152号公報
【文献】特開平9-271508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のシャワー装置は、左右のアームと噴霧ノズルの可動域の制約を受け、特に身体の末梢部である膝下や上腕等、お湯が直接届き難い部位を温めることが難しい。また、入浴中、湯水が当たらない部位は外気に触れているため、体感温度差が生じ、全体の温熱効果が十分でないという問題がある。
【0008】
特許文献2のシャワー装置は、環状のシャワー配管に遮熱用のシャワーカーテンが取付けられているものの、上部は開放されているため、熱が逃げるという問題がある。また、環状のシャワー配管のサイズにより、装置自体も大きく、家庭の狭い浴室で設置、使用することは困難である。
【0009】
特許文献3のシャワー装置は装置自体を覆うカバーを備えているが、そのカバーは正面、左右側面に分割されており、ファスナ等で閉じて組立て使用する必要があるため、取付に手間と時間を要するという問題がある。また家庭の狭い浴室では、このような大きなカバーを組立するスペースはないため、そもそも組み立てを行うことができないという問題もある。
【0010】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、コンパクトで、且つ取り付けが容易であるカバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1のカバーは、椅子と、シャワー装置と、を備えたシャワーシステムで用いられ、前記椅子に座る使用者を覆うように設けられるカバーであって、筒状に形成された、シート状のカバー本体と、前記カバー本体に取り付けられる固定部材と、を備え、前記カバー本体の上部で開口する第1開口と、前記カバー本体の下部で開口する第2開口とが、形成され、前記カバー本体は、前記椅子に座る使用者の背面側において、前記第1開口及び第2開口を結ぶように延びるスリットが形成され、当該スリットにより、前記カバー本体が水平方向に分断され、前記固定部材は、前記分断された前記カバー本体の一方の端部と、他方の端部とが重なるように、着脱自在に固定するように構成されている。
【0012】
この構成によれば、カバー本体が、スリットにより分断されているため、椅子に座る使用者をカバー本体で覆う際には、例えば、使用者の前側からカバー本体で覆い、使用者の背後において、スリットで分断されたカバー本体の端部同士を固定すればよい。したがって、カバー本体の取り付けが簡単である。
【0013】
上記カバーにおいては、前記第1開口を、前記椅子に座る前記使用者の頭を突出させるように形成し、前記第2開口を、前記第1開口よりも大きく、前記椅子の下部側で開口するように形成することができる。
【0014】
また、スリットで分断されたカバー本体の端部同士を重ねるように固定するため、重ねる部分の大きさを調整することで、カバー本体で覆われる空間を、椅子、シャワー装置、及び使用者に合わせてできるだけ小さくすることができる。したがって、カバー本体によって形成される空間をコンパクトにすることができる。
【0015】
さらに、カバー本体の上部に設けられた第1開口が、下部に設けられた第2開口よりも小さく、使用者の頭を突出させるように形成されているため、シャワー装置から噴射される水による熱が逃げるのを抑制することができる。
【0016】
上記カバーにおいては、前記固定部材が固定する態様は特には限定されないが、例えば、前記一方の端部の外側を向く面と、前記他方の端部の内側を向く面とを固定するように構成することができる。
【0017】
上記カバーにおいて、前記カバー本体は、上部の水平方向の幅が、下部の水平方向の幅よりも狭く形成することができる。
【0018】
上記カバーにおいて、前記カバー本体は、前記椅子に座る使用者の前面側を覆う第1カバー部材と、前記椅子に座る使用者の背面側を覆い、前記スリットが形成された第2カバー部材と、を備え、前記第1及び第2カバー部材の水平方向の両側辺同士が互いに固定することができる。
【0019】
上記カバーにおいては、前記第1カバー部材の上縁に第1切り欠き部が形成され、前記第2カバー部材の上縁に第2切り欠き部が形成され、前記第1切り欠き部及び第2切り欠き部が互いに対向することで、前記第1開口を形成することができる。
【0020】
本発明に係る第2のカバーは、椅子と、シャワー装置と、を備えたシャワーシステムで用いられ、前記椅子に座る使用者を覆うように設けられるカバーであって、シート状のカバー本体と、前記カバー本体の一方の端部の裏面と、他方の端部の表面とを着脱自在に固定するように構成された固定部材と、を備えている。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、コンパクトで、且つ取り付けを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に係る一実施形態のシャワーシステムを正面側から見た斜視図である。
【
図2】本発明に係る一実施形態のシャワーシステムを背面側から見た斜視図である。
【
図3】一部断面を含むシャワー装置の側面図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係るカバーを使用したシャワーシステムの使用態様を示す側面図である。
【
図10】第2カバー部材を分断した状態を示す正面図である。
【
図11】使用状態のシャワーシステムを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係るカバーの一実施形態を、図面を参照して説明する。本実施形態に係るカバーは、以下に示すシャワーシステムで用いられるものである。そこで、まず、シャワーシステムについて説明し、その後、カバーについて説明を行うこととする。
【0024】
<1.シャワーシステム>
図1及び
図2に示すように、本実施形態のシャワーシステム1は、椅子11と、シャワー装置41と、を備えている。本実施形態のシャワーシステム1は、後述するように、椅子11に腰掛けた使用者に対してシャワー装置41から水を吐出し、シャワーを浴びることができるシステムである。なお、本明細書における水は、温度が高い、低いによらない一般的な水のことを意味し、常温の水、及びシャワー等に用いられる温度の湯等を含む意味である。以下では、まず、椅子について説明し、その後、シャワー装置について説明を行う。
【0025】
<1-1.椅子>
椅子11には、公知の椅子を用いることができる。椅子11は、浴室等でも使用可能なように、耐水性を有することが好ましい。例えば、椅子11は、脚部12と、座部13と、背もたれ部14と、肘掛け15と、を備えている。以下では、椅子11に座る使用者にとっての左右方向(第1方向)X、前後方向(第2方向)Yを基準にして説明する。左右方向Xは、水平面に沿う方向である。前後方向Yは、水平面に沿い、かつ左右方向Xに直交する方向である。左右方向Xの一方側が右側X1であり、左右方向Xの他方側が左側X2である。前後方向Yの一方側が前方Y1であり、前後方向Yの他方側が後方Y2である。
【0026】
座部13は、一対の座板17と、一対の座板17を連結する連結部材18と、を備えている。座板17は、厚さ方向が上下方向Zとなる板状に形成されている。座板17は、上下方向Zから見た平面視で矩形状である。一対の座板17は、左右方向Xに互いに間隔を空けて並ぶ。連結部材18は、前後方向Yから見たときに、上方が開口するU字状である。連結部材18は、前後方向Yに延び、一対の座板17を下方から支持する。連結部材18は、一対の座板17の下面同士を連結する。連結部材18は、例えば樹脂により形成される。一対の座板17は、連結部材18よりも軟らかい材質であってもよい。
【0027】
脚部12は、座部13を支持するフレーム25の一部である。フレーム25は、前脚フレーム26と、前脚フレーム26にヒンジ29を介して連結される2本の後脚21とを備える。脚部12は、前脚フレーム26におけるヒンジ29よりも下方の部分と、一対の後脚21とからなる。
【0028】
前脚フレーム26は、アルミニウム、ステンレス等の硬質の管材がU字状に折り曲げられた部材である。前脚フレーム26は、左右方向Xに互いに間隔を空けて配置された一対の支持片27と、一対の支持片27の上部同士を接合する連結片28と、を有する。
【0029】
支持片27は、下方に向かうに従って前方Y1に向かうように傾斜している。各支持片27は、長手方向の中間部で、ヒンジ29(一方のヒンジ29は不図示)により後脚21の上端部に連結されている。各支持片27の下端部には、樹脂製のキャップ32が取付けられている。一対の支持片27は、ヒンジ29よりも下側の位置において、連結部材30により互いに連結されている。連結部材30は、棒状に形成され、左右方向Xに延びている。
【0030】
連結片28は、左右方向Xに延びる棒状である。なお、支持片27と連結片28を異なる材質の部品としてもよい。例えば、支持片27を金属管からなる構成とし、連結片28を硬質樹脂からなる構成としてもよい。
【0031】
後脚21は、アルミニウム、ステンレス等の管材で形成され、ほぼ真っ直ぐな棒状である。後脚21は、下方に向かうに従い漸次、後方Y2に向かうように傾斜している。一対の後脚21は、左右方向Xに互いに間隔を空けて配置されている。一対の後脚21は、左右方向Xに延びる棒状の連結部材23により互いに連結されている。各後脚21の下端部には、樹脂製のキャップ22が取付けられている。
【0032】
後脚21は、ヒンジ29を回転軸として支持片27に対して左右方向Xに沿う軸線周りに回転可能である。なお、後脚21と支持片27との角度は、所定の角度以上には開かないように、ヒンジ29または他の規制部材により規制される。
【0033】
図1及び
図2に示すように、椅子11の上端部に背板36が配置されている。背板36は、上下方向Zから見たときに、後方Y2に向かって凸となるように湾曲している。背板36は、前脚フレーム26の連結片28に、図示しないボルト等により固定されている。背もたれ部14は、背板36と、連結片28と、一対の支持片27におけるヒンジ29よりも上方の部分とにより構成される。座部13は、背もたれ部14よりも前方Y1に配置されている。
【0034】
肘掛け15は、本実施形態では椅子11に一対備えられている。肘掛け15は、前後方向Yに延びている。一対の肘掛け15は、左右方向Xに互いに間隔を空けて並ぶ。各々の肘掛け15の後端部は、支持片27におけるヒンジ29よりも上方の部分に、回転可能に連結されている。肘掛け15は、左右方向Xに沿う軸線周りに回転可能である。肘掛け15は、
図1に示す状態から上側へ回転可能である一方、
図1に示す状態から下方への回転は規制されている。
【0035】
椅子11は、
図1に示す展開状態から折り畳み可能である。具体的には、前脚フレーム26に対し、一対の後脚21を回転させてほぼ平行に配置する。一対の肘掛け15の前端部を上方に移動させ、一対の肘掛け15を一対の支持片27に対してほぼ平行に配置する。以上の操作により、椅子11を折り畳み状態とすることができる。なお、シャワーシステム1に用いる椅子11は、折り畳み機能を備えない椅子であっても、肘掛け15を備えない椅子であってもよい。
【0036】
<1-2.シャワー装置>
次に、シャワー装置について説明する。
図1及び
図2に示すように、シャワー装置41は、本体42と、第1アーム43Aと、第2アーム43Bと、取付部材45と、を備えている。
【0037】
本体42は、左右方向Xの両端部に位置する第1アーム接続部42A及び第2アーム接続部42Bと、本体42の背面に位置する接続部44と、下端部に位置する取付部材接続部42Cと、を備える。本体42は、
図3に示すように、内部に水の流路42aを有する。流路42aは、接続部44から第1アーム接続部42A及び第2アーム接続部42Bにそれぞれ延びる。
【0038】
第1アーム接続部42Aには、第1アーム43Aが、回転可能に連結される。第1アーム接続部42Aを介して、本体42の流路42aと、第1アーム43A内の水の流路とが接続される。第2アーム接続部42Bには、第2アーム43Bが回転可能に接続される。第2アーム接続部42Bを介して、本体42の流路42aと、第2アーム43B内の水の流路とが接続される。
【0039】
図2および
図3に示すように、接続部44は、図示しない給水ホースが着脱可能に接続されるコネクタである。接続部44は、本体42の背面中央部に設けられる。接続部44は、本体42の内部に設けられる流路42aと、図示しない給水ホースとを接続する。本体42には、接続部44を介して給水ホースから水が供給される。接続部44から供給された水は、流路42aを通じて第1アーム43A及び第2アーム43Bに供給される。
【0040】
第1アーム43Aと第2アーム43Bは、本体42を左右方向Xに挟む。第1アーム43Aは本体42の右側X1に配置され、第2アーム43Bは本体42の左側X2に配置されている。第1アーム43Aと第2アーム43Bは、それぞれの基端部同士の間隔が使用者の肩幅程度である。
【0041】
シャワー装置41において、第1アーム43Aの構成と第2アーム43Bの構成は、第1アーム43Aと第2アーム43Bとの間に左右方向Xに直交するように規定される基準面に対して面対称である。以下では、主に第1アーム43Aの構成について詳細に説明することとし、第2アーム43Bの構成についての説明を部分的に省略する場合がある。例えば、第1アーム43Aの第1前腕部46Aと、第2アーム43Bの第2前腕部46Bとは、互いに面対称となる構成である。
【0042】
図1から
図3に示すように、第1アーム43Aは、第1前腕部46Aと、第1エルボ部材47Aと、第1上腕部48Aとが長さ方向に順に連結された構成を有する。本実施形態では、第1アーム43Aは、第1エルボ部材47Aの位置で鈍角に折れたL字形状である。第1アーム43Aの屈曲角度は、特に限定されないが、例えば110°~150°の範囲である。
【0043】
第1上腕部48Aは、本体42から前方Y1へ延びる。第1上腕部48Aは、
図4に示すように、内部に水の流路48aを有する管状部材である。第1上腕部48Aは、本実施形態の場合、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂等の比較的硬質の材料の材料で形成される。
【0044】
第1上腕部48Aは、基端側に連結部65Aを有する。連結部65Aは、本体42に回転可能に連結される。この構成により、第1アーム43Aは、連結部65Aの回転軸J1を中心として回転可能である。すなわち、第1アーム43Aは、
図1及び
図2に示す使用状態の姿勢から、跳ね上げまたは押し下げによる姿勢の変更が可能である。
【0045】
第1上腕部48Aの流路48aは、連結部65Aを介して本体42の流路42aに繋がる。第1上腕部48Aは、第1上腕部48Aの壁部を貫通する複数のノズルを有する。より詳細には、第1上腕部48Aは、背中用ノズル51Aと肩用ノズル52Aと、を有する。背中用ノズル51A及び肩用ノズル52Aは、第1上腕部48Aの流路48aに接続される。背中用ノズル51A及び肩用ノズル52Aは、流路48aに供給された水を外部に吐出する。上記複数のノズルとしては、多孔ノズルのほか、空円錐ノズル、充円錐ノズルなどを用いることができる。
【0046】
背中用ノズル51A及び肩用ノズル52Aは、第1上腕部48Aが延びる方向に並んで配置される。背中用ノズル51Aは第1上腕部48Aの後端部側に位置する。肩用ノズル52Aは、第1上腕部48Aの前端部側に位置する。本実施形態の場合、背中用ノズル51A及び肩用ノズル52Aは、第1上腕部48Aの下面に、斜め下側へ水を吐出可能に配置される。すなわち、背中用ノズル51A及び肩用ノズル52Aは、第1上腕部48Aから椅子11側へ向かって水を吐出する。
【0047】
より詳細には、
図4に示すように、背中用ノズル51Aは、第1上腕部48Aの左側X2に対して角度αで交差する斜め下方向を向いて配置される。角度αは、左右方向Xの左側X2に対して上側を正の角度、下側を負の角度とした場合に、例えば-60°である。肩用ノズル52Aは、背中用ノズル51Aと同様に、左側X2に対して角度αで交差する斜め下方向を向いて配置される。
【0048】
背中用ノズル51A及び肩用ノズル52Aが水を吐出する角度は、第1アーム43Aと使用者との位置関係に応じて設定される。左右方向Xにおいて第1上腕部48Aと使用者の肩との距離が遠い場合には、背中用ノズル51A及び肩用ノズル52Aの右側X1に対する角度αは小さく設定され、距離が近い場合には角度αは大きく設定される。
【0049】
また、背中用ノズル51Aの吐出方向と、肩用ノズル52Aの吐出方向を互いに異ならせてもよい。例えば、背中用ノズル51Aの吐出方向をやや前側に傾けてもよく、肩用ノズル52Aの吐出方向をやや後ろ側に傾けてもよい。
【0050】
第1エルボ部材47Aは、内部に水の流路を有する円筒部材である。第1エルボ部材47Aは、側面視で湾曲した形状である。第1エルボ部材47Aは、
図1および
図2に示す設置状態において、前方Y1と上方との間の方向に向かって凸となるように配置されている。第1エルボ部材47Aの後端部は、第1上腕部48Aの前端部に連結される。第1エルボ部材47A内の水の流路は、第1上腕部48Aの水の流路48aに繋がる。
【0051】
第1エルボ部材47Aは、第1上腕部48Aに対して、第1上腕部48Aの長手方向(前後方向Y)に沿って延びる中心軸周りに回転可能である。すなわち、第1アーム43Aは、第1上腕部48Aに対して、第1エルボ部材47A及び第1前腕部46Aを左右方向Xに振って動かすことができる。
【0052】
第1エルボ部材47Aは、例えば、エラストマー、軟質ウレタン、ゴム等の比較的軟質の材料で形成される。第1エルボ部材47Aは、硬質の樹脂または金属により形成してもよい。第1エルボ部材47Aの内周面に、防水用のシート(フィルム)を配置してもよい。第1エルボ部材47Aを、軟質ウレタンフォーム等の発泡材により形成する場合には、第1エルボ部材47Aの外面に発泡倍率が低いスキン層が形成される。このスキン層により、水漏れを防止してもよい。
【0053】
第1前腕部46Aは、
図5Aおよび
図5Bに示すように、内部に水の流路46aを有する管状部材である。第1前腕部46Aは、第1エルボ部材47Aの前端部に連結される。第1前腕部46A内の水の流路46aは、第1エルボ部材47A内の水の流路に繋がる。
【0054】
第1前腕部46Aは、第1エルボ部材47Aの前端部から、前方Y1に向かうに従い漸次、下方に向かうように傾斜して延びる。第1前腕部46Aは、第1上腕部48Aと同様に、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂等の比較的硬質の材料からなる。したがって第1アーム43Aでは、第1前腕部46A及び第1上腕部48Aよりも、第1エルボ部材47Aが柔らかく、変形させやすい。
【0055】
第1前腕部46Aは、第1エルボ部材47Aに対して、第1前腕部46Aの長手方向に沿って延びる中心軸J3周りに回転可能である。すなわち、第1アーム43Aは、第1前腕部46Aを、第1上腕部48Aに対する相対位置を固定したまま、中心軸J3周りに回転させることができる。これにより、第1上腕部48Aの背中用ノズル51A及び肩用ノズル52Aの位置を固定した状態で、後述する第1前腕部46Aの腕部用ノズル53A、
胸部用ノズル54A、腹部用ノズル55A、及び大腿部用ノズル56Aの使用者に対する配置角度を調整できる。この構成によれば、体格の異なる使用者の身体に対してより確実に水を吐出できる。
【0056】
第1前腕部46Aは、第1前腕部46Aの壁部を貫通する複数のノズとルを有する。各ノズルは、第1前腕部46A内部の流路46aに繋がる。各ノズルは、流路46aに供給された水を外部に吐出する。
【0057】
第1前腕部46Aは、腕部用ノズル53Aと、胸部用ノズル54Aと、腹部用ノズル55Aと、大腿部用ノズル56Aと、を有する。腕部用ノズル53Aと、胸部用ノズル54Aと、腹部用ノズル55Aは、第1前腕部46Aの側面に、上側からこの順に並んで配置される。本実施形態の場合、腕部用ノズル53Aと、胸部用ノズル54Aと、腹部用ノズル55Aは、第1前腕部46Aの延びる方向に沿ってほぼ等間隔に配置される。腕部用ノズル53Aと、胸部用ノズル54Aと、腹部用ノズル55Aの相互の間隔は、適宜変更可能である。
【0058】
腕部用ノズル53A、胸部用ノズル54A、及び腹部用ノズル55Aは、それぞれ、椅子11に腰掛けた使用者の上腕部、胸部、及び腹部に対して水を吐出可能に配置される。本実施形態の場合、第1アーム43Aは、椅子11の右側X1に位置するため、腕部用ノズル53A、胸部用ノズル54A、及び腹部用ノズル55Aは、それぞれ、第1前腕部46Aの左下側へ向かって水を吐出する。
【0059】
より詳細には、
図5Aに示すように、腕部用ノズル53Aは、第1前腕部46Aの中心軸J3に直交する断面において、左側X2に対して角度βで交差する斜め下方向を向いて配置される。角度βは、左右方向Xの左側X2に対して上側を正の角度、下側を負の角度とした場合に、例えば-80°である。
【0060】
図5Bに示すように、腹部用ノズル55Aは、第1前腕部46Aの中心軸J3に直交する断面において、左側X2に対して角度γで交差する斜め下方向を向いて配置される。角度γは、左右方向Xの左側X2に対して上側を正の角度、下側を負の角度とした場合に、例えば-60°である。胸部用ノズル54Aは、腹部用ノズル55Aと同様に、左側X2に対して角度γだけ斜め下向きに配置される。
【0061】
大腿部用ノズル56Aは、第1前腕部46Aの先端に位置する。大腿部用ノズル56Aは、腕部用ノズル53A、胸部用ノズル54A、及び腹部用ノズル55Aと同様に、第1前腕部46Aの左側X2に位置する椅子11側へ水を吐出可能に配置される。また大腿部用ノズル56Aは、第1前腕部46Aの斜め前方へ水を吐出する。大腿部用ノズル56Aは、
図6Bに示すように、第1前腕部46Aの中心軸J3に対して、角度δで交差する斜め前方を向いて配置される。角度δは、中心軸J3に沿って前方側を0°とした場合に、例えば40°である。すなわち、第1前腕部46Aの先端に位置する大腿部用ノズル56Aと、第1前腕部46Aの側面に位置する胸部用ノズル54A及び腹部用ノズル55Aとは、第1前腕部46Aの延びる方向(中心軸J3の軸方向)に対する配置角度が互いに異なる。
【0062】
本実施形態では、大腿部用ノズル56Aは、
図7に示すように、第1前腕部46Aから遠い側に位置する使用者の左大腿部に向かって水を吐出する。そのため、大腿部用ノズル56Aは、胸部用ノズル54A及び腹部用ノズル55Aよりも内側(左側X2)を向いて配置される。すなわち、大腿部用ノズル56Aは、第1前腕部46Aの中心軸J3に直交
する断面において、左側X2に対して角度γよりも小さい角度で交差する方向を向いて配置される。なお、大腿部用ノズル56Aは、使用者の右大腿部に向かって水を吐出するように配置されていてもよい。
【0063】
第2アーム43Bは、
図1及び
図2に示すように、第2前腕部46Bと、第2エルボ部材47Bと、第2上腕部48Bとを備える。第2アーム43Bは、第2上腕部48Bの後端部に設けられる連結部65Bを介して本体42に連結される。第2アーム43Bは、本体42に対して、連結部65Bの回転軸J2を中心として回転可能である。また、第2エルボ部材47Bは、第2上腕部48Bに対して、第2上腕部48Bの中心軸周りに回転可能である。第2前腕部46Bは、第2エルボ部材47Bに対して、第2前腕部46Bの長手方向に沿って延びる中心軸J4周りに回転可能である。
【0064】
第2アーム43Bの第2前腕部46B、第2エルボ部材47B、及び第2上腕部48Bは、第1アーム43Aの第1前腕部46A、第1エルボ部材47A、及び第1上腕部48Aとそれぞれ面対称に構成される。第2アーム43Bの第2上腕部48Bは、背中用ノズル51Bと、肩用ノズル52Bとを有する。第2前腕部46Bは、腕部用ノズル53Bと、胸部用ノズル54Bと、腹部用ノズル55Bと、大腿部用ノズル56Bと、を有する。第2アーム43Bの各ノズルは、第1アーム43Aの各ノズルと面対称に構成される。
【0065】
取付部材45は、
図2に示すように、第1支持バー71A及び第2支持バー71Bと、基台部81と、第1ボルト82A及び第2ボルト82Bと、を有する。 第1支持バー71A及び第2支持バー71Bは、本実施形態の場合、アルミニウム、ステンレス等からなる金属パイプである。第1支持バー71A及び第2支持バー71Bは、それぞれ上下方向Zに延びる。第1支持バー71Aの上端部及び第2支持バー71Bの上端部は、本体42の取付部材接続部42Cに固定される。
【0066】
基台部81は、図示しないボルトにより椅子11の背もたれ部14に取り付けられる。基台部81は、第1支持バー71A及び第2支持バー71Bが挿入される第1受け部84A及び第2受け部84Bを有する。第1受け部84A及び第2受け部84Bは、基台部81を上下方向に貫通する2つの貫通孔である。
【0067】
第1受け部84Aに挿入される第1支持バー71Aは、基台部81のねじ孔に螺合する第1ボルト82Aにより基台部81に固定される。第2受け部84Bに挿入される第2支持バー71Bは、基台部81のねじ孔に螺合する第2ボルト82Bにより基台部81に固定される。
【0068】
基台部81は、第1支持バー71A及び第2支持バー71Bを位置決めする第1位置決め機構85A及び第2位置決め機構85Bを有する。第1支持バー71Aは、第1支持バー71Aが延びる方向に沿って並ぶ複数の位置決め孔72Aを有する。図示されていないが、第2支持バー71Bも、第1支持バー71Aと同様の複数の位置決め孔を有する。
【0069】
第1位置決め機構85Aは、第1支持バー71Aの位置決め孔72Aに抜き差し可能な位置決めピンと、上記位置決めピンを左右方向Xに移動させる操作部とを含む。取付部材45において、第1位置決め機構85Aの位置決めピンを、第1支持バー71Aのいずれかの位置決め孔72Aに挿入することで、第1支持バー71Aを上下方向Zにおいて位置決め可能である。第2位置決め機構85Bは、第1位置決め機構85Aと同様の構成を備え、第2支持バー71Bを、上下方向Zにおいて位置決め可能である。上記操作により、取付部材45に支持されるシャワー装置41の高さ位置を調整できる。
【0070】
第1支持バー71A及び第2支持バー71Bは、それぞれの上端部の近傍に、第1ストッパー75A及び第2ストッパー75Bを有する。第1ストッパー75A及び第2ストッパー75Bは、第1受け部84A及び第2受け部84Bの上端に引っ掛かる突起部である。第1ストッパー75A及び第2ストッパー75Bを備えることにより、シャワー装置41を最も低い位置に配置したときでも、本体42と背もたれ部14との接触を防止できる。
【0071】
<2.カバー>
次に、カバーについて
図7~
図10を参照しつつ説明する。
図7は、本実施形態に係るカバーを使用したシャワーシステムの使用態様を示す側面図である。
図7に示すように、本実施形態に係るカバー9は、シャワーシステム1の椅子11に座る使用者を覆うものであり、シート状に形成され、使用者の前側に配置される第1カバー部材91と、この第1カバー部材91と外形が同形状で、使用者の後側に配置される第2カバー部材92と、第2カバー部材92に取り付けられ、一対の留め具を有する固定部材(
図9参照)と、を備えている。そして、第1カバー部材91と第2カバー部材92は、それぞれの上辺の一部同士及び両側辺同士が接続されて一体化されており、これによって、筒状のカバー本体90が形成されている。以下、各部材について詳細に説明する。
【0072】
図8は、第1カバー部材の正面図である。
図8に示すように、第1カバー部材は、全体として矩形状に形成されたシート状の部材である。より詳細には、上辺911と、その両側それぞれから斜め下方に延びる上部側辺912と、各上部側辺912から下方に延びる下部側辺913と、両下部側辺913の下端同士を結ぶ下辺914と、を外形とするように形成されている。第1カバー部材91の両上部側辺912は、下方にいくにしたがって互いに広がるように形成されているため、第1カバー部材91の上部は上方にいくにしたがって幅が狭くなっている。また、両下部側辺913は、平行に延びているため、第1カバー部材91の下部の幅は一定となっている。
【0073】
また、第1カバー部材91の上辺911における水平方向の中央には、U字状の第1切り欠き部915が形成されており、後述するように、この第1切り欠き部915から使用者の頭が突出するようになっている。
【0074】
図9は、第2カバーの正面図である。
図8に示すように、第2カバー部材92は、第1カバー部材91と同形状に形成されており、上辺921には、第1切り欠き部915と同形状の第2切り欠き部925が形成されている。但し、第2カバー部材92は、第2切り欠き部925の下端から下辺924の中央に向かって延びるスリット926が形成されており、このスリット926によって第2カバー部材92は、水平方向に並ぶ2つのパーツに分断されている。以下では、分断されたパーツについて、背面側から見て右側を第1パーツ92a、左側を第2パーツ92bと称することとする。
【0075】
図10は、第2カバー部材を分断した状態を示す図である。
図10に示すように、第1パーツ92aは、スリット926によって左側に左辺部951が形成されている。また、スリット926によって第2切り欠き部925が2つに分断され、第2切り欠き部925の右半分が第1パーツ92aの外縁の一部を構成している。以下、この部分を右側切り欠き部953と称することとする。同様に、第2パーツ92bは、スリット926によって右側に右辺部952が形成されている。また、分断された第2切り欠き部925の左半分が第2パーツ92bの外縁の一部を構成している。以下、この部分を左側切り欠き部954と称することとする。
【0076】
また、第1パーツ92aの裏面、つまり、第1カバー部材91と対向する面において、右側切り欠き部953の下部の右側には、第1留め具931が設けられている。一方、第2パーツ92bの表面、つまり、外側を向く面において、左側切り欠き部954の下部の左側には、第2留め具932が設けられている。そして、これら第1留め具931と第2留め具932とは、着脱自在に固定されるようになっている。これら第1留め具931と第2留め具932が、固定部材を構成しており、後述するように、分断された2つのパーツ92a,92bを連結するようになっている。これらの留め具931,932は、種々の構成が可能であり、例えば、面ファスナー、マグネット、スナップボタンなど着脱可能なものであれば、特には限定されない。
【0077】
上記のように構成された第1及び第2カバー部材91,92は、それぞれ上辺911,921同士、上部側辺912,922同士、及び下部側辺913,923同士が熱融着などによって固定されており、これによって、第1及び第2カバー部材91,92は一体化され、筒状に形成されている。上述した第1切り欠き部915及び第2切り欠き部925は対向するように配置されることで、使用者の頭が突出する第1開口960を形成している。一方、両カバー部材91,92の下辺914,924同士は固定されていないため、これによってカバー本体90の下部には第2開口970が形成される。
【0078】
次に、カバー本体90の材料について説明する。カバー本体90は、後述するように水が吹き付けられるため、例えば、吸水する材料で形成すると、水を吸水したカバー本体90が使用者の体に接触したときに不快感が生じるおそれがある。また、このような材料のカバー本体90が使用者の体に接触すると、体の熱を奪い、冷えるおそれがあるため、吸水しがたい材料が好ましい。例えば、ナイロン、ポリエステル、PVC樹脂、EVA樹脂、PE樹脂等の樹脂材料で形成されたシート材を用いることができる。また、これらの樹脂材料によって形成されたシート材の2以上を積層することで、カバー本体90を形成することもできる。
【0079】
<3.シャワーシステム及びカバーの使用方法>
次に、以上のように構成されたシャワーシステム及びカバーの使用方法について、
図11~
図13を参照しつつ説明する。
【0080】
図11は、シャワーシステムにおいて使用者が椅子に座った状態を示す斜視図である。
図11に示すように、使用者Pは、背もたれ部14の前方Y1で椅子11に座る。シャワー装置41の第1アーム43Aは、使用者Pの背後から右肩の上側を通って前方へ延び、第1前腕部46Aが上側から下側へ回り込んで、使用者Pの右半身の前面と対向して配置される。第2アーム43Bは、使用者Pの背後から左肩の上側を通って前方へ延び、第2前腕部46Bが上側から下側へ回り込んで、使用者Pの左半身の前面と対向して配置される。
【0081】
次に、シャワー装置の接続部44に、給水ホース98を接続する。続いて、カバー9により、椅子11に座った使用者を覆う。より詳細に説明すると、
図12(a)に示すように、第1カバー部材91により、両アーム43A,43Bの上から、使用者Pの正面側を覆う。このとき、第1切り欠き部915から使用者Pの頭が突出するようにする。そして、
図12(b)に示すように、分断された第2カバー部材92の第1パーツ92a及び第2パーツ92bにより、シャワー装置41及び椅子11の背面側を覆う。このとき、第2パーツ92bの右辺部952を第1パーツ92aの左辺部951の上に重ね、両留め具931,932を固定する。これにより、
図13に示すように、両パーツ90a,90bは、後方に突出することなく、概ねシャワー装置41及び椅子11の背面側に沿うように、水平方向に延びて、これらを覆う。このとき、
図7に示すように、給水ホース98は、重ねられた第1パーツ92a及び第2パーツ92bの隙間からカバー9の外部へ延びるように配置される。また、
図12(b)に示すように、両パーツ92a,92bが重ねられることで、第2切り欠き部925が狭まり、カバー9を介して外部へ露出する部分が小さくなる。
【0082】
こうして、カバー9が取り付けられると、カバー9の下端部は、椅子11が設置されている設置面に接するように配置されるため、主として使用者Pの頭だけが、外部に露出し、その他の部分はカバー9によって覆われる。また、
図7に示すように、カバー9は、両アーム43A,43Bの上に載るため、特に、使用者Pの上半身にカバー9が直接接触するのが抑制される。
【0083】
続いて、
図11に示すように、第1アーム43A及び第2アーム43Bに設けられた複数のノズル51A~56A及びノズル51B~56Bから温水を吐出させ、使用者の体に吹き付ける。より詳細には、使用者Pは、第1上腕部48A及び第2上腕部48Bの背中用ノズル51A、51B及び肩用ノズル52A、52Bにより、主に背中と肩口にシャワーを浴びることができる。また、使用者Pは、第1前腕部46A及び第2前腕部46Bの腕部用ノズル53A、53B、胸部用ノズル54A、54B、並びに腹部用ノズル55A、55Bにより、両腕と上半身の前面側に全体的にシャワーを浴びることができる。
【0084】
さらに、使用者Pは、第1前腕部46A及び第2前腕部46Bの大腿部用ノズル56A、56Bにより、大腿部を含む下半身にシャワーを浴びることができる。より詳細に説明すると、
図11に示すように、使用者Pの右側に位置する大腿部用ノズル56Aから吐出される温水が使用者Pの左大腿部に供給され、使用者Pの左側に位置する大腿部用ノズル56Bから吐出される温水が使用者Pの右大腿部に供給される。したがって、大腿部の上面だけでなく、血管が集中する内腿に温水を当てることができ、脚部への温浴効果を高めることができる。
【0085】
このとき、使用者P、シャワー装置41、及び椅子11はカバー9によって覆われているため、ノズル51A~56A,ノズル51B~56Bから吐出された水が、カバー9によって外側に飛び散るのが抑制される。また、シャワーの噴霧が直接肌に当る温浴効果に、その蒸気を最小の空間に閉じ込め、外気から冷気を遮断する効果が加わるため、浴槽で入浴するのと同様の温浴効果が得られる。
【0086】
<4.特徴>
以上のように、本実施形態によれば、次の効果を得ることができる。
(1)カバー本体90を構成する第1カバー部材91は、上部の幅が狭く、下部の幅が広いため、使用時には、裾広がりのドーム状の空間を形成して使用者を覆う。その一方で、第2カバー部材92はスリット926によって分断され、分断された第1パーツ92aの左端部の表面と、第2パーツ92bの右端部の裏面を重ねるように固定される。そのため、第2カバー部材92は後側に突出せず、シャワー装置41及び椅子11の背面に沿って左右方向に延びるように配置される。そのため、全体をコンパクトにすることができ、一般家庭の狭い浴室でも使用が可能である。また、カバー9に干渉することなく、カバー9の背後にスペースを形成することができるため、このスペースを利用して介護者が作業を行うことができる。
【0087】
(2)カバー本体90の上部は、両アーム43A,43Bによって支えられることで空間を形成するため、
図13に示すように、カバー本体90において、アーム43A,43Bよりも外側に配置される部分は、空間を形成するためには余り貢献しない。そのため、本実施形態に係るカバー本体90では、上部側辺912,922を斜めに形成し、カバー本体90の上部の幅を狭めているため、空間の形成に貢献しない部分を少なくし、カバー本体90の無駄を少なくすることができる。
【0088】
(3)カバー本体90は、一体的に形成されているため、組立が不要で、且つ取付には留め具931,931を固定するだけであるため、取付も容易である。また、留め具931,932を外せば、同一形状の第1及び第2カバー部材91,92が重なったシートになるため、容易に折り畳みができ、さらにコンパクトにすることができる。そのため、収容スペースを小さくすることができる。
【0089】
<5.変形例>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。例えば、以下の変更が可能である。また、以下の変形例は、いずれか1つを採用したり、あるいは複数の態様を問題なく組み合わせることができる。
【0090】
(1)カバー本体90の形状は、特には限定されず、上部に使用者の頭が突出する開口(第1開口960)が設けられ、下部が上部の開口よりも大きく開口するように形成され(第2開口970)、且つ、上部の開口と下部の開口とを結ぶようなスリットが形成されていればよい。この限りにおいては、全体の形状は特には限定されない。また、切り欠き部915,925の形状も特には限定されず、少なくとも使用者の頭が突出されるように形成されていればよく、例えば、第1カバー部材91のみに切り欠き部を形成することもできる。また、カバー本体90の上部の開口(第1開口960)と下部の開口(第2開口970)の大きさは特は限定されず、同じであってもよい。この場合、上部の開口を使用時に絞って小さくすることもできる。
【0091】
(2)カバー本体90は、上記実施形態のように2つのカバー部材91,92を組み合わせることで形成するほか、1枚のシート材で形成することもできる。また、3以上のカバー部材を組み合わせることで形成することもできる。
【0092】
(3)留め具931,932の位置、及び数も特には限定されず、カバー本体90において、分断された端部同士が着脱自在に固定されればよい。
【0093】
(4)上記実施形態では、第1パーツ92aの表面と第2パーツ92bの裏面とが留め具931,932で固定されているが、例えば、第1パーツ92aの裏面と第2パーツ92bの裏面とを固定してもよく、両パーツ92a,92bがいずれかの部分で固定されていればよい。
【0094】
(5)シャワー装置41の構成は特には限定されず、使用者の体に温水や水を吹き付けることができるような複数のノズルが設けられていればよい。但し、カバー本体90を支えるようなアームが設けられていることが好ましい。
【0095】
(6)椅子11の構成は特には限定されず、使用者Pが座れるように構成されていればよい。また、シャワー装置41は、椅子11に取り付けられていなくてもよく、例えば、シャワー装置41の本体42を、浴室の壁面に設置される支柱等の支持部に取り付けてもよい。
【符号の説明】
【0096】
1…シャワーシステム
11…椅子
41…シャワー装置
9…カバー
90…カバー本体
91…第1カバー部材
92…第2カバー部材
92a…第1パーツ
92b…第2パーツ
931,932…留め具(固定部材)