(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】傾斜地の非開削工法を使用した擁壁構築工法
(51)【国際特許分類】
E02D 29/02 20060101AFI20230801BHJP
E21D 9/06 20060101ALI20230801BHJP
E02D 17/12 20060101ALI20230801BHJP
E02D 17/08 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
E02D29/02 305
E21D9/06 311A
E02D17/12
E02D17/08 Z
(21)【出願番号】P 2021182719
(22)【出願日】2021-11-09
【審査請求日】2022-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】599111965
【氏名又は名称】株式会社アルファシビルエンジニアリング
(73)【特許権者】
【識別番号】515330638
【氏名又は名称】清田エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081824
【氏名又は名称】戸島 省四郎
(72)【発明者】
【氏名】酒井 栄治
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-053411(JP,A)
【文献】特許第3940681(JP,B2)
【文献】特許第4584383(JP,B2)
【文献】実公平03-048314(JP,Y2)
【文献】特許第2875776(JP,B2)
【文献】特開2007-170151(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 29/02
E21D 9/06
E02D 17/00-17/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
法面・盛土敷地・丘陵地又は崖であって崩壊の危険性を有する傾斜地に対して、その崩壊防止又はその保護対策工として、前記傾斜地の法尻に非開削工法を用いてL型擁壁を構築する傾斜地の擁壁構築工法であって、下記イ、ロ、ハ、ニ、ホ、ヘの工程で構築されることを特徴とする傾斜地の擁壁構築工法。
(イ)前記傾斜地の法尻にL型擁壁を構築する範囲の危険区域・被災区域外に推進工法の元押装置を備えた発進立坑と到達立坑を設けるイ工程、
(ロ)地盤を装置外形の短形断面に掘削し且つ、その矩形断面内に雨水路となる中空部を有するように掘削する右側掘削装置と,同右側掘削装置の左側地盤を装置外形の矩形断面に掘削できる左側掘削装置と,同左側掘削装置の上方の地盤を装置外形の矩形断面に掘削できる左上掘削装置とをL形に配置して一体的に連結した構造のL型の掘進機と、同L型の掘進機の右側掘削装置と左側掘削装置と左上掘削装置とを同時作動させて掘削されるL形状空間の地盤削孔に同型の覆工体としてPC・RCブロックを挿入できて且つL型の掘進機に後続するように前記元押装置で押されて前進するL型擁壁の下部を形成する複数のL形推進ブロックとを用意するロ工程、
(ハ)前記発進立坑内に前記L型の掘進機と後続させる前記L形推進ブロックとを設置し、前記L型の掘進機の後面又はL型の掘進機に後続させた最尾のL形推進ブロックの後面を前記元押装置で地盤の到達立坑方向に押圧しながらL型の掘進機を掘進させることで、前記L型の掘進機でL形状に地盤を削孔してその削孔内に前記L形推進ブロックを推進させ、前記発進立坑内から前記L形推進ブロックを遂次追加して及び前後推進ブロックを連結するPC鋼棒を継ぎ、地盤削孔中に形成されたL形推進ブロック列を推進させる推進工法のハ工程、
(ニ)前記L型の掘進機によるL形状削孔に複数のL形推進ブロックを連続的に挿入して、地盤中に雨水路があるL形推進ブロックを列設させるニ工程、
(ホ)前記L型の掘進機で削孔させた空間に挿入されて到達立坑まで列設された後、L形推進ブロックの左側突出部上方の地盤の土を取り除いて前記左側突出部の上部を露出させ、露出した同左側突出部の上に構築するL型擁壁の長い垂直部を形成する上部ブロックの下端面を嵌合し、前記上部ブロックとL形推進ブロックの前記左側突出部とを上下に強く連結するとともに推進方向の前後の複数のL形推進ブロックをPC棒鋼等で前後方向に強く連結して連結されたL形推進ブロックと上部ブロックとで連結部材でL型擁壁を形成するホ工程、
(ヘ)到達した位置のL形推進ブロックの右側上方の地面の排水口と、地盤の推進ブロックの雨水路とを連通するヘ工程。
【請求項2】
法面・盛土敷地・丘陵地又は崖であって崩壊の危険性を有する傾斜地に対して、その崩壊防止又はその保護対策工として、前記傾斜地の法尻に非開削工法を用いて上下反転T型擁壁を構築する傾斜地の擁壁構築工法であって、下記イ´、ロ´、ハ´、ニ´、ホ´、ヘ´の工程で構築されることを特徴とする傾斜地の非開削工法を使用した擁壁構築工法。
(イ´)前記傾斜地の法尻に上下反転T型擁壁を構築する範囲の危険区域・被災区域外に推進工法の元押装置を備えた発進立坑と到達立坑を設けるイ´工程、
(ロ´)地盤を装置外形の矩形断面に掘削し且つその矩形断面内に雨水路となる中空部を有するように掘削する右側掘削装置と,同右側掘削装置の左側地盤を装置外形の矩形断面に掘削できる左側掘削装置と,同左側掘削装置と前記右側掘削装置の二つの上面の中間に配置されその装置外形の矩形状に掘削できる中央上掘削装置とを上下反転T形に配置して一体的に連結した構造の上下反転T型の掘進機と、同上下反転T型の掘進機の右側掘削装置と左側掘削装置と中央上掘削装置とを同時作動させて掘削される上下反転T形状空間の地盤削孔に挿入できて且つ前記上下反転T型の掘進機に後続するように前記元押装置で押されて前進する上下反転T型擁壁の下部を形成する複数の上下反転T形推進ブロックとを用意するロ´工程、
(ハ´)前記発進立坑内に前記上下反転T型の掘進機と後続させる前記上下反転T形推進ブロックとを降下し、前記掘進機の後面又は掘進機に後続させた最尾の上下反転T形推進ブロックの後面を前記元押装置で地盤の到達立坑方向に押圧しながら上下反転T型の掘進機を作動させることで、前記上下反転T型の掘進機で上下反転T形状に地盤を削孔してその削孔内に前記上下反転T形推進ブロックを推進させ、前記発進立坑内から前記上下反転T形推進ブロックを遂次追加して、地盤削孔中に形成された上下反転T形推進ブロック列を推進させる推進のハ´工程、
(ニ´)前記上下反転T型の掘進機による上下反転T字状地盤の削孔に複数の上下反転T形推進ブロックを連続的に挿入して、地盤中に雨水路がある上下反転T形推進ブロックを列設させるニ´工程、
(ホ´)前記上下反転T型の掘進機で削孔させた空間に挿入されて列設された上下反転T形推進ブロックの中央上突出部上方の地盤の土を取り除いて、前記中央上突出部の上部を露出させ、同中央上突出部の上に構築する上下反転T型擁壁の長い垂直部を形成する上部ブロックの下端面を前記中央上突出部上面の凹凸と嵌合し、前記上部ブロックと前記上下反転T形推進ブロックの中央上突出部とを連結部材で上下に強く連結するとともに推進方向の前後の複数のL形推進ブロックを連結部材で強く連結して上下反転T型擁壁を形成するホ´工程、
(ヘ´)到達した位置のL形推進ブロックの右側上方の地面の排水口と、地盤の推進ブロックの雨水路とを連通するヘ´工程。
【請求項3】
法面・盛土敷地・丘陵地又は崖であって崩壊の危険性を有する傾斜地に対して、その崩壊防止又はその保護対策工として、前記傾斜地の法尻に非開削工法を用いて左右反転L型擁壁を構築する傾斜地の擁壁構築工法であって、下記イ´´、ロ´´、ハ´´、ニ´´、ホ´´、ヘ´´の工程で構築されることを特徴とする傾斜地の非開削工法を使用した擁壁構築工法。
(イ´´)前記傾斜地の法尻に左右反転L型擁壁を構築する範囲の危険区域・被災区域外に推進工法の元押装置を備えた発進立坑と到達立坑を設けるイ´´工程、
(ロ´´)地盤を装置外形の矩形断面に掘削し且つその矩形断面内に雨水路となる中空部を有するように掘削する右側掘削装置と,同右側掘削装置の左側地盤を装置外形の矩形断面に掘削できる左側掘削装置と,前記右側掘削装置の上方の地盤を装置外形の矩形断面に掘削できる右上掘削装置とを左右反転L形状に配置させて一体的に連結した構造の左右反転L型の掘進機と、同左右反転L型の掘進機の右側掘削装置と左側掘削装置と右上掘削装置とを同時作動させて掘削される左右反転L形状空間の地盤削孔に同型の覆工体としてPC・RCブロックを挿入できて且つ左右反転L型の掘進機に後続するように前記元押装置で押されて前進する左右反転L型擁壁の下部と形成する複数の左右反転L形推進ブロックとを用意するロ´´工程、
(ハ´´)前記発進立坑内に前記左右反転L型の掘進機と後続させる前記左右反転L形推進ブロックとを設置し、前記掘進機の後面又は掘進機に後続させた最尾の左右反転L形推進ブロックの後面を前記元押装置で地盤の到達坑方向に押圧しながら左右反転L型の掘進機を掘進させることで、前記掘進機で左右反転L形状に地盤を削孔してその削孔内に前記左右反転L形推進ブロックを推進させ、前記発進立坑内から前記左右反転L形推進ブロックを遂次追加して、地盤削孔中に形成された左右反転L形推進ブロック列を推進させる推進工法のハ´´工程、
(ニ´´)前記左右反転L型の掘進機による左右反転L形状地盤の削孔に複数の左右反転L形推進ブロックを連続的に挿入して、地盤中に雨水路がある左右反転L形推進ブロックを列設させるニ´´工程、
(ホ´´)前記左右反転L型の掘進機で削孔させた空間に挿入されて到達立坑まで列設された後、列設された左右反転L形推進ブロックの右側突出部上方の地盤の土を取り除いて前記右側突出部の上部を露出させ、同右側突出部の上に構築する左右反転L型擁壁の長い垂直部を形成する右上部ブロックの下端面を嵌合し、前記右上部ブロックと前記右側突出部とを上下に連結材で強く連結するとともに推進方向の前後の複数の左右反転L形推進ブロックをPC棒鋼等の連結部材で前後方向に強く連結して連結された左右反転L形推進ブロックと右上部ブロックとで左右反転L型擁壁を形成するホ´´工程、
(ヘ´´)到達した位置のL形推進ブロックの右側上方の地面の排水口と、地盤の推進ブロックの雨水路とを連通するヘ´´工程。
【請求項4】
請求項1において、前記上部ブロックと下位の前記L形推進ブロックの左側突出部とを上部と左右に強く連結する手段として、上部ブロックとL形推進ブロックの左側突出部とに連通する上下方向のパイプ穴を設け、同パイプ穴に鋼製パイプを挿入して上下を連結し、又推進方向の前後に複数のL型擁壁に複数のPC鋼棒を貫通させて緊締させて、前後に強く連結する構造とした請求項1記載の傾斜地の擁壁構築工法。
【請求項5】
請求項2において、前記上部ブロックと上下反転T形推進ブロックの中央上突出部とに連通する上下方向のパイプ穴を設け、同パイプ穴に鋼製パイプを挿入して上下と左右に強く連結し、又前後方向の複数の上下反転T形推進ブロックに複数のPC鋼棒と貫通させて緊締させて前後左右に強く連結させる構造とした請求項2記載の傾斜地の擁壁構築工法。
【請求項6】
請求項3において、前記上部ブロックと下位の左右反転L形推進ブロックとを上下に強く連結する手段として、上部ブロックと左右反転L形推進ブロックの右側突出部との上下に連通するパイプ孔を設け、同パイプ穴に鋼製パイプを挿入して上下を連結し、又推進方向の前後に複数の左右反転L形推進ブロックに複数のPC鋼棒を貫通させて緊締させて前後左右に強く連結する構造とした請求項3記載の傾斜地の擁壁構築工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、法面・盛土敷地の崩壊の危険性を有する傾斜地において、その傾斜地の崩壊を防止するために傾斜地の法尻に設けられる図面5,11、8、に示すようにL型・左右反転L型又は上下反転T型の擁壁を密閉型掘進機を用いて構築する傾斜地の擁壁構築工法に関する。
【背景技術】
【0002】
盛土敷地や丘陵地、崖等、崩壊の危険性を有する箇所の法尻に位置する公共道路に、崩壊防止のための防護対策工をおこなう場合、一次崩壊箇所や二次災害の危険性のある個所から少し距離を置いて、安全施工が可能な領域から対策工や復旧工を実施する必要がある。
現状の施工法としては、重機による崩壊土砂の撤去後、仮復旧としてはトンパック土嚢積みや鋼材杭の打ち込みと横矢板土留めの設置、本格的にはアースアンカーやモルタル吹付け、最終的に現場打ち擁壁コンクリート築造工が考えられる。
【0003】
しかし、それらの施工法は緊急事態の対処法を除き、二次崩壊の危険性と背中合わせで、路面の床堀り作業では、滑りが発生した現状地盤不安定さを助長する危険性があり、長期に渡る工事のため施工日数を要し、完成までに二次災害を引き起こしかねない危険性を有している。
又、本出願人は特許文献1に示すように、掘進機の前面が回転盤となっていて、同回転盤の回転中心から偏心位置に自転軸を設け、同自転軸にカッター又はビットの刃物を軸着していて、カッター・ビットの刃物を掘進機の回転中心周りに回転盤を公転させながら自転軸周りに回転(自転)させることにより、矩形・非円形や馬蹄形等の外形状に掘削できる掘削技術は、本出願人が開発し、特許文献1で公知となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3940681号特許公報
【文献】特開2013-53411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、傾斜地の法尻に崩壊防止の保護工として設置される擁壁を二次崩壊を起こすことなく安全に且つ工期・工数を短縮して構築できる傾斜地の擁壁を非開削工法にて構築する施工法を提供することにある。そのためには、発進立坑や到達立坑を被災現場から少し離れた位置に構築する。特に傾斜地・法面の上面を滑って発生する大きな土石流を防止しうる法面終端の高さから、垂直長さが上方に長く突出した擁壁を構築できる工法を提供でき、上流からの崩壊土砂流を強く受け止めることができるL、上下反転T、左右反転L形の擁壁とすることができるようにする。及び、擁壁の構築とともに、傾斜地・擁壁に集まる雨水の排水路も同時に構築できるようにする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決した本発明の構成は、
<発明1>
法面・盛土敷地・丘陵地又は崖であって崩壊の危険性を有する傾斜地に対して、その崩壊防止又はその保護対策工として、前記傾斜地の法尻に非開削工法を用いてL型擁壁を構築する傾斜地の擁壁構築工法であって、下記イ、ロ、ハ、ニ、ホの工程で構築されることを特徴とする傾斜地の非開削工法を使用した擁壁構築工法。
(イ)前記傾斜地の法尻にL型擁壁を構築する範囲の危険区域・被災区域外に推進工法の元押装置を備えた発進立坑と到達立坑を設けるイ工程、
(ロ)地盤を装置外形の短形断面に掘削し且つ、その矩形断面内に雨水路となる中空部を有するように掘削する右側掘削装置と,同右側掘削装置の左側地盤を装置外形の矩形断面に掘削できる左側掘削装置と,同左側掘削装置の上方の地盤を装置外形の矩形断面に掘削できる左上掘削装置とをL形に配置して一体的に連結した構造のL型の掘進機と、同L型の掘進機の右側掘削装置と左側掘削装置と左上掘削装置とを同時作動させて掘削されるL形状空間の地盤削孔に同型の覆工体としてPC・RCブロックを挿入できて且つL型の掘進機に後続するように前記元押装置で押されて前進するL型擁壁の下部を形成する複数のL形推進ブロックとを用意するロ工程、
(ハ)前記発進立坑内に前記L型の掘進機と後続させる前記L形推進ブロックとを設置し、前記L型の掘進機の後面又はL型の掘進機に後続させた最尾のL形推進ブロックの後面を前記元押装置で地盤の到達立坑方向に押圧しながらL型の掘進機を掘進させることで、前記L型の掘進機でL形状に地盤を削孔してその削孔内に前記L形推進ブロックを推進させ、前記発進立坑内から前記L形推進ブロックを遂次追加して、地盤削孔中に形成されたL形推進ブロック列を推進させる推進工法のハ工程、
(ニ)前記L型の掘進機によるL形状削孔に複数のL形推進ブロックを連続的に挿入して、地盤中に雨水路があるL形推進ブロックを列設させるニ工程、
(ホ)前記L型の掘進機で削孔させた空間に挿入されて到達立坑まで列設された後、L形推進ブロックの左側突出部上方の地盤の土を取り除いて前記左側突出部の上部を露出させ、露出した同左側突出部の上に構築するL型擁壁の長い垂直部を形成する上部ブロックの下端面を嵌合し、前記上部ブロックとL形推進ブロックの前記左側突出部とを上下に強く連結するとともに推進方向の前後の複数のL形推進ブロックをPC棒鋼等の連結部材で前後方向に強く連結して連結されたL形推進ブロックと上部ブロックとで連結部材でL型擁壁を形成するホ工程、
<発明2>
法面・盛土敷地・丘陵地又は崖であって崩壊の危険性を有する傾斜地に対して、その崩壊防止又はその保護対策工として、前記傾斜地の法尻に非開削工法を用いて上下反転T型擁壁を構築する傾斜地の擁壁構築工法であって、下記イ´、ロ´、ハ´、ニ´、ホ´の工程で構築されることを特徴とする傾斜地の非開削工法を使用した擁壁構築工法。
(イ´)前記傾斜地の法尻に上下反転T型擁壁を構築する範囲の危険区域・被災区域外に推進工法の元押装置を備えた発進立坑と到達立坑を設けるイ´工程、
(ロ´)地盤を装置外形の矩形断面に掘削し且つその矩形断面内に雨水路となる中空部を有するように掘削する右側掘削装置と,同右側掘削装置の左側地盤を装置外形の矩形断面に掘削できる左側掘削装置と,同左側掘削装置と前記右側掘削装置の二つの上面の中間に配置されその装置外形の矩形状に掘削できる中央上掘削装置とを上下反転T形に配置して一体的に連結した構造の上下反転T型の掘進機と、同上下反転T型の掘進機の右側掘削装置と左側掘削装置と中央上掘削装置とを同時作動させて掘削される上下反転T形状空間の地盤削孔に同型の覆工体としてPC・RCブロックを挿入できて且つ前記上下反転T型の掘進機に後続するように前記元押装置で押されて前進する上下反転T型擁壁の下部を形成する複数の上下反転T形推進ブロックとを用意するロ´工程、
(ハ´)前記発進立坑内に前記上下反転T型の掘進機と後続させる前記上下反転T形推進ブロックとを設置し、前記掘進機の後面又は掘進機に後続させた最尾の上下反転T形推進ブロックの後面を前記元押装置で地盤の到達立坑方向に押圧しながら上下反転T型の掘進機を掘進させることで、前記上下反転T型の掘進機で上下反転T形状に地盤を削孔してその削孔内に前記上下反転T形推進ブロックを推進させ、前記発進立坑内から前記上下反転T形推進ブロックを遂次追加して、地盤削孔中に形成された上下反転T形推進ブロック列を推進させる推進工法のハ´工程、
(ニ´)前記上下反転T型の掘進機による上下反転T字状地盤の削孔に複数の上下反転T形推進ブロックを連続的に挿入して、地盤中に雨水路がある上下反転T形推進ブロックを列設させるニ´工程、
(ホ´)前記上下反転T型の掘進機で削孔させた空間に挿入されて列設された上下反転T形推進ブロックの中央上突出部上方の地盤の土を取り除いて、前記中央上突出部の上部を露出させ、同中央上突出部の上に構築する上下反転T型擁壁の長い垂直部を形成する上部ブロックの下端面を前記中央上突出部上面の凹凸と嵌合し、前記上部ブロックと前記上下反転T形推進ブロックの中央上突出部とを連結部材で上下に強く連結するとともに推進方向の前後の複数の上下反転T形推進ブロックをPC棒鋼等の連結部材で強く連結して上下反転T型擁壁を形成するホ´工程、
<発明3>
法面・盛土敷地・丘陵地又は崖であって崩壊の危険性を有する傾斜地に対して、その崩壊防止又はその保護対策工として、前記傾斜地の法尻に非開削工法を用いて左右反転L型擁壁を構築する傾斜地の擁壁構築工法であって、下記イ´´、ロ´´、ハ´´、ニ´´、ホ´´の工程で構築されることを特徴とする傾斜地の非開削工法を使用した擁壁構築工法。
(イ´´)前記傾斜地の法尻に左右反転L型擁壁を構築する範囲の危険区域・被災区域外に推進工法の元押装置を備えた発進立坑と到達立坑を設けるイ´´工程、
(ロ´´)地盤を装置外形の矩形断面に掘削し且つその矩形断面内に雨水路となる中空部を有するように掘削する右側掘削装置と,同右側掘削装置の左側地盤を装置外形の矩形断面に掘削できる左側掘削装置と,前記右側掘削装置の上方の地盤を装置外形の矩形断面に掘削できる右上掘削装置とを左右反転L形状に配置させて一体的に連結した構造の左右反転L型の掘進機と、同左右反転L型の掘進機の右側掘削装置と左側掘削装置と右上掘削装置とを同時作動させて掘削される左右反転L形状空間の地盤削孔に同型の覆工体としてPC・RCブロックを挿入できて且つ左右反転L型の掘進機に後続するように前記元押装置で押されて前進する左右反転L型擁壁の下部と形成する複数の左右反転L形推進ブロックとを用意するロ´´工程、
(ハ´´)前記発進立坑内に前記左右反転L型の掘進機と後続させる前記左右反転L形推進ブロックとを設置し、前記掘進機の後面又は掘進機に後続させた最尾の左右反転L形推進ブロックの後面を前記元押装置で地盤の到達坑方向に押圧しながら左右反転L型の掘進機を掘進させることで、前記掘進機で左右反転L形状に地盤を削孔してその削孔内に前記左右反転L形推進ブロックを推進させ、前記発進立坑内から前記左右反転L形推進ブロックを遂次追加して、地盤削孔中に形成された左右反転L形推進ブロック列を推進させる推進工法のハ´´工程、
(ニ´´)前記左右反転L型の掘進機による左右反転L形状地盤の削孔に複数の左右反転L形推進ブロックを連続的に挿入して、地盤中に雨水路がある左右反転L形推進ブロックを列設させるニ´´工程、
(ホ´´)前記左右反転L型の掘進機で削孔させた空間に挿入されて到達立坑まで列設された後、列設された左右反転L形推進ブロックの右側突出部上方の地盤の土を取り除いて前記右側突出部の上部を露出させ、同右側突出部の上に構築する左右反転L型擁壁の長い垂直部を形成する右上部ブロックの下端面を嵌合し、前記右上部ブロックと前記右側突出部とを上下に連結材で強く連結するとともに推進方向の前後の複数の左右反転L形推進ブロックをPC棒鋼等の連結部材で前後方向に強く連結して連結された左右反転L形推進ブロックと右上部ブロックとで左右反転L型擁壁を形成するホ´´工程、
<発明4>
前記<発明1>において、前記上部ブロックと下位の前記L形推進ブロックの左側突出部とを上部と左右に強く連結する手段として、上部ブロックとL形推進ブロックの左側突出部とに連通する上下方向のパイプ穴を設け、同パイプ穴に鋼製パイプを挿入して上下を連結し、又推進方向の前後に複数のL型擁壁に複数のPC鋼棒を貫通させて緊締させて、前後に強く連結する構造とした前記<発明1>記載の傾斜地の擁壁構築工法。
<発明5>
前記<発明2>において、前記上部ブロックと上下反転T形推進ブロックの中央上突出部とに連通する上下方向のパイプ穴を設け、同パイプ穴に鋼製パイプを挿入して上下と左右に強く連結し、又前後方向の複数の上下反転T形推進ブロックに複数のPC鋼棒と貫通させて緊締させて前後左右に強く連結させる構造とした前記<発明2>記載の傾斜地の擁壁構築工法。
<発明6>
前記<発明3>において、前記上部ブロックと下位の左右反転L形推進ブロックとを上下に強く連結する手段として、上部ブロックと左右反転L形推進ブロックの右側突出部との上下に連通するパイプ孔を設け、同パイプ穴に鋼製パイプを挿入して上下を連結し、又推進方向の前後に複数の左右反転L形推進ブロックに複数のPC鋼棒を貫通させて緊締させて前後左右に強く連結する構造とした前記<発明3>記載の傾斜地の擁壁構築工法。
にある。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、土砂災害の復旧工事として行われる従来の法面崩壊箇所への擁壁工設置や路面雨水排水処理の工事を、本発明の推進工法(非開削工法)を用いて行った場合は発進・到達基地の占有のみで施工が可能となり、路線上を開放することが可能な推進工法を提供する。しかも、地表近い推進ブロックの上に垂直高さが長い上部ブロックを嵌合して連結することで垂直部の長さが傾斜地終端より長い擁壁にできる。
【0008】
従来の開削工法との対比に限定すれば、従来技術では擁壁設置以外にも道路法面最下部には三面水路やL型側溝、雨水排水路の設置が必要となる。そのためには、路線上をバックフォー等重機で掘削し、土留め工を設置し、その後、擁壁工の構築となる。結果、道路占用が必須で、通行止め等の交通支障が発生する。後工程としては構造物の構築完了後、埋戻しを行い、土留め工撤去や表層工の復旧を行った後に土留め本体構造物と道路排水路が完成されることになる。又特許文献2の発明に比べ、土砂流の流落を強く抑えることができる。
【0009】
上記の従来の開削工法による施工では、供用中の道路の全面通行止めや片側通行を余儀なくされ、全線にわたり掘削~構造物構築~埋戻し~排水処理設備~表層工の手順で作業が進められるため、施行中の二次災害や交通支障等に課題は多い。
【0010】
又、完成までには多大な時間を要するため施工期間内は、供用中の道路は長期に渡り通行止めや片側通行、時間制限等、交通に支障をきたして地域住民への多大な負荷は計り知れない。これに対して本発明によれば、現場の地下地盤を推進機とその後続の推進ブロックを用いた地下工事で施工できるので、このような現場における施工期間の短縮、占用範囲の縮小、供用中の道路の常時開放を非開削の工事であるので可能とし、発進部と到達部のみの占用で施工が可能としている。
【0011】
更に安全施工の観点からも、災害発生箇所から少し離れた位置に発進立坑、到達立坑を設けることが可能とし、且つ路線上の地下を遠隔方式の密閉型短形掘進機で推進することができるため路上を開放しながら擁壁工の下部を埋設でき、同時に擁壁躯体内部に雨水路を構築できることが可能な施工技術のため、工期短縮のみならずコスト縮減と安全施工の双方が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は本発明の実施例1の傾斜地のL型擁壁構築工法を示す説明図である。
【
図3】実施例1に使用するL型の推進機の外形状を示す斜視図である。
【
図4】実施例1の推進ブロックと上部ブロックの形状とそれらの連結を示す説明図である。
【
図5】実施例1の傾斜地の法尻に構築されたL型擁壁の構造を示す説明図である。
【
図6】本説明の実施例2で使用する上下反転T型掘進機の正面形状を示す説明図である。
【
図7】本発明の実施例2で使用する推進ブロックと上部ブロックの形状とそれらの連結状態を示す説明図である。
【
図8】
図8は実施例2で構築された上下反転T型擁壁を示す説明図である。
【
図9】
図9は実施例3で使用する左右反転L型の掘進機の示す正面図である。
【
図10】
図10は実施例3で構築された左右反転L型擁壁と排水口と雨水路の排水の構造を示す説明図である。
【
図11】
図11は実施例3の構築された構造を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の掘進機を構成する矩形断面に削孔できる左・右又は左あるいは中央の上掘削装置の配置としては、実施例1の如く、左上掘削装置が下位の左右の掘削装置の左上方によってこれらが一体的に連結し、L型に削孔して後続させる推進ブロックは垂直部が短いL型の断面形状で、推進ブロックの左上方にL型擁壁の長い垂直部を形成する縦長の上部ブロックの下端をL形推進ブロックの左上方の突出部上面に嵌合して、縦の推進ブロックとその上方の上部ブロックを鋼管パイプ、強固な鋼材、又は太い鉄筋コンクリート柱で上下を一体的に連結して、擁壁の長い垂直部を一体化させる。前後の推進ブロックは複数の前後方向の推進ブロックを貫通する複数のPC鋼棒を緊締して前後方向を一体的に連結するのが好ましい。
【0014】
本発明の左・右・上方の掘削装置の配列としては、上方の掘削装置を左・右掘削装置の中間に上下反転T状に配置して、各装置を一体的に連結する実施例2の場合もある。この場合の掘進機2の削孔形状は、上下反転T形状となる。
【0015】
実施例2の推進ブロック14の断面形も上下反転T形状となる。推進ブロックと上部ブロックの連結は、実施例1同様に上部ブロックの下端と上下反転T形の推進ブロックの上面突出部とを嵌合した上に、鋼管パイプ・鉄筋コンクリート柱又は、鋼材で上下に連結させる。推進ブロックの前後は長いPC鋼棒を貫通させて緊締する方法を採用するのが好ましい。
【0016】
又本発明で、実施例3の如く右上掘削装置33を傾斜地の下位となる右側掘削装置31上に配置する左右反転L型配置も可能である。但し、道路の排水口HKと推進ブロック14内の雨水路140との連結が少し複雑となる。
【0017】
又、推進ブロック14内部の雨水路140の位置も傾斜下位の右側ばかりでなく、中間・左側に配置することも可能であるが、傾斜の下流の右側に配置することが実用的配置である。
【0018】
尚、掘進装置の地盤深さを浅くして、道路地面に近くして削孔・推進させる場合、垂直部の長さが長いL型の推進ブロックを採用して、一回の削孔・推進によって長いL型推進ブロックを使用して、後工程で地面から長く垂直の突出部を露出させて推進させることでL型擁壁・上下反転T型又は左右反転L型を一回の推進だけで構築できる工法となりえる。その場合地表面を開放させることが出来る。
【実施例】
【0019】
図1~5に示す本発明の実施例1のL型の掘進機1は、左右掘削装置の右側掘削装置4の上に左上掘削装置13をL形配置して一体的に配置し、推進ブロック14の形状も垂直部の長さが短いL型形状であり、このL形推進ブロック14を地盤の削孔SHに複数推進させ、推進が完了した後その後推進ブロック14の左上部の地盤の土砂を排除して、その左上部に垂直部が長い上部ブロックを嵌合し、鋼管パイプで推進ブロックと上部ブロックとを上下に強く連結し、推進方向の前後に対しては複数のPC鋼棒で一体化して、L型擁壁の(L形推進ブロック)内部に地表道路の排水口と連結させた雨水路を形成し、道路上の雨水の排水口と連通した例である。
図6~8に示す実施例2の上下反転T型の掘削機は、左右掘削装置とその左右の装置の上方で左右中間位置に配置した中央上掘削装置とを上下反転T形状に配置したものであり、同推進機に後続させる推進ブロックの外形状は垂直部が短い上下反転T形の推進ブロックであり、同推進ブロックを発進立坑から到達立坑までの地中に複数列列設し、推進機に上下反転T形の推進ブロックの上部突出部の上方の土砂を排除して地上に露出させ、その後L型擁壁の長い垂直部を形成する上部ブロックを推進ブロックの上部突出部に嵌合して、上部ブロックと下位の推進ブロックを上下・前後方向に連結させて一体化して上下反転T型擁壁を構築する。この構築された上下反転T型擁壁の右側の下位に雨水路の空間を形成させ、道路の排水口と雨水路を接続させたものである。工程及びブロック上下・前後連結方法は実施例1同様の工程・構造である。更に同9、10、11に示す実施例3は、実施例1の擁壁がL型に対し左右反転L型となっていて、上位の掘削装置の位置が右側掘削装置の上方に配置され、掘削装置を左右反転L型配置した掘削機であり、推進ブロックも左右反転L形外形で右側の下位に雨水路を有するものであり、その工程は実施例1と略同様であり、上部ブロックと推進ブロックの嵌合・連結も左右位置違いがあるが、略実施例1と同様の例である。
【0020】
実施例1、2、3及び
図1~11に使用されている用語とその符号について説明する。
G1、G2、G3は本発明の実施例1、2、3で使用する掘進機とその擁壁構築工法を示す。
1は実施例1のL型の掘進機である。
2は実施例2の上下反転T型の掘進機、
3は実施例3の左右反転L型の掘進機、
10、20、30は実施例1、2、3の掘進機の全体ケージングで、各例の装置ケージングの組み合わせである。
11は実施例1の右側掘削装置、
12は実施例1の左側掘削装置、
13は実施例1の左上掘削装置、
21は実施例2の右側掘削装置、
22は実施例2の左側掘削装置、
23は実施例2の中央上掘削装置、
31は実施例3の右側掘削装置、
32は実施例3の左側掘削装置、
33は実施例3の右上掘削装置、
40は掘削装置内の排土路、
41は回転盤に取付けた刃物、
111、121、131、211、221、231、311、321、331は各掘削装置の装置ケーシング、
112、122、132、212、222、232、312、322、332は各掘削装置の回転盤、
1120、1220、1320は回転盤の回転軸(公転軸)、
1121、1221、1321は回転盤上の自転軸、
1122、1222、1322は自転軸1121、1221、1321に軸着されたカッター・ビット等の刃物、
40は掘進機1内の排土路、41刃物である。尚、図中実施例2、3の回転盤の回転軸(公転軸)、自転軸に取付けた刃物41は実施例1の略同じであり、図面上の符号は複雑となるので省略している。
【0021】
14は実施例1のL形状の推進ブロックで厚みは m程である。
141は同推進ブロック14の下部に設けた滑り防止の突起、
24は実施例2の上下反転T形状のコンクリート製推進ブロック、
34は実施例3の左右反転L形状のコンクリート製推進ブロック、
140は推進ブロック14、24、34の内部の雨水路、
141は推進ブロック14、24、34の上部突出部の嵌合の凹凸部、
142はパイプ孔、
143、243、343は擁壁の垂直部を形成する上部ブロック、
144は同上部ブロックの前記凹凸部と嵌合する凹凸部、
150は上下連結用鋼製パイプ、
1511は前後連結用PC鋼棒、
1512は同PC鋼棒を貫入する鋼棒孔、
160はマンホールの排水口からの雨水を推進ブロック140の雨水路140に導入する連通口、
KMは傾斜地、
HGは傾斜地の法尻の崩落現場、
HHは発進立坑、
HH0は発進台、
HH1は受圧壁、
THは到達立坑、
YWは構築された擁壁、
TWVは擁壁の垂直部、
MPは元押し装置、
MPSは元押し装置MPに用いられた油圧シリンダー、
RFは道路面、
SGは崩壊流下土砂、
SGSは推進ブロック14の左上の嵌合の凹凸部の上方の土砂を排除して残された露出空間、
MHはマンホール、
HKはマンホールの排水口である。
【0022】
(実施例1)
(実施例1の具体的作業工程)
図1~5に示す実施例1は、推進機の全体ケージングの外形状はL型であり、地中削孔はL形状で後続させる推進ブロック14もL形状である。
この実施例1の具体例工事手順を以下説明する。
a:地形的に法面崩壊や地山のせり出しが発生する可能性が認められる崩壊現場HGの箇所の影響範囲外に発進立坑HHや到達立坑THを配置する(イ工程)。
b:発進立坑HH内に止水器(坑口金物)、背面側には推進用支圧壁(反力壁)を設置し、立坑底部の基礎コンクリート上には、推進機1やPC(RC)コンクリート製推進ブロックを設置・推進するために発進架台を設置して、元押装置MPを配置する(イ工程)。
c:発進架HH台に上にL型掘進機を吊りこみ設置する(ロ工程)。
d:発進立坑口HHの内部の土留め壁を切断し、止水パッキンを装着して掘進機1を推進する。
e:カッタ室内(切羽)に泥水や固結填材を注入して切羽土圧を立て、カッタを回転させながら、掘進機1の初期掘進を行う(ロ・ハ工程)。
f:掘進機1や後続胴管の初期掘進終了後、後続部にPC(RC)コンクリート製の推進ブロック1(1体=1.50m程度)を接続し、マシンと緊結した後に空洞の推進ブロック14の雨水路内に配管・配線・排土管を接続して、掘進を再開する。
g:次のコンクリート製の推進ブロック(No.2)を発進架台上に設置した段階で、No.1とNo.2の推進ブロックをPC棒鋼1511等で接続する(ハ・ニ工程)。
h:上記の作業を順次繰り返しながら、掘進を継続して到達立坑THまで推進ブロック14を埋設する。
i:掘進機1が到達立坑THの土留め壁まで到達した段階で、到達立坑TH内に止水器(坑口金物)を設置し、到達立坑TH側から坑口金物内の土留め材を撤去し、発進側から元押装置MPの元押しジャッキを加圧して、掘進機1を到達立坑内に押出す(ホ・ヘ工程)。
j:到達立坑THの下部に掘進機1受台工を設置する(ホ工程)。
k:受台上の掘進機4を所定の位置まで推進し、カッタ等部材を分解・撤去、吊上げを行って、その後、立坑内の定位置までPC(RC)コンクリート製の推進ブロックを誘導する(ホ工程)。
l:推進中に使用した管内設備(電線・配管・ホース等)の撤去を行う(ホ工程)。
m:PC(RC)コンクリート製推進ブロック14に事前に取付けたグラウトホールから、裏込注入材を地山側に注入充填し、掘進に伴って生じた躯体外周部の緩み部を改良して地盤沈下を防止する。
n:管目地仕上げや水路部の止水仕上げを行う(ホ工程)。
o:小規模掘削として、路面上から50cm程度掘削を行い、推進した推進ブロックL型PC(RC)コンクリート製推進ブロックの左側の突出部の頂部を露出させる(ホ工程)。
p:各推進ブロック14内に事前に設けた円径鋼管やH鋼材の差込用箱抜き孔を露出させる。
q:下部PC(RC)コンクリート製推進ブロック14上に上部ブロック143を設置する(ホ工程)。
r:上部ブロック143と下部の推進ブロック14を接続・緊結するために円形鋼管のパイプ150やH形鋼を差込み、その鋼管や鋼材を挿入した箱抜き孔にモルタル材を充填し、L型擁壁(水路内蔵型)を完成させる(ホ工程)。
s:この作業は、発進側から1基ずつ繰り返しながら行って、到達立坑THまで構造物を連結させる(ホ工程)。及び地表側の排水口と地盤中の推進ブロック14の雨水路140とを連結させる(ヘ工程)。
【0023】
(実施例1の工法の利点)
A:擁壁下部を非開削(推進工法)で掘進することで、用地としては発進立坑部分を占有するだけで路線上の道路が開放可能である。
B:擁壁下部工を推進工で施工すると同時に雨水路が埋没できる。
C:下部工推進完了後に路面を50cm程度掘削し、下部工の頂部を露出させ、上部工としてのPC(RC)コンクリートの推進ブロックと上部ブロックとを噛み合わせ接続し、上下のコンクリート構造物を一体組立方式とした擁壁推進である。
D:上部工(上部ブロック)と下部工(推進ブロック)を鋼製パイプ等(H型鋼材)で連接し、擁壁を一体型にすると同時に、ガイドパイプ等の土留め支柱にも兼用可能とする。
E:前後列と成るPC(RC)コンクリートの推進ブロックは、各ブロックを立坑にて設置した時にPC棒鋼で緊結できるように「ほぞ孔(パイプ孔)」を設けた推進ブロックとしている。
F:下部工底面(推進ブロック14)に突起141をつけ、土圧・水圧による擁壁の滑りを防止し、上部工と下部工の接続箇所においても凹凸の突起で滑りや転倒を防止した。
G:上部と下部を接続するために、鋼管パイプやH型鋼材を挿入し、内部のクリアランスをモルタル等で充填した強度の高い一体型構造物にできる。
H:擁壁下部を遠隔操作型の密閉型矩形掘進機1で掘進するため、排土は排土路40のパイプラインで流体輸送を行うことが可能となり坑内の無人化が図れる安全な施工となっている。
I:推進完了後、下部工(推進ブロック)の周辺に裏込め注入工を施して、空隙等を充填することで緩み部が地山と一化され、周辺摩擦力の向上が図れる擁壁下部工となっている。
J:発進立坑HHから、掘進機1とPC(RC)コンクリート下部工となる推進ブロック14を一体として路線に沿って埋設できるため、工事中の施工範囲や占用帯を大幅に削減できる。
K:擁壁の立壁となる上部ブロック143を下部工(長方形水路)の推進ブロック14に接続する場合は、掘削深を50cm程度の小規模掘削SGSとなり、工事の進捗率が非常に高くできる。
L:下部工の水路頂部のスラブ上に集水マンホールMHのブロックを数段積み重ね、地表面にはグレーチング桝を設置して地表の雨水排水を処理可能とした。
M:災害復旧の現場では、崩壊面から離れた位置に発進用の立坑HHを設置し、遠隔操作で掘進機を操作することで、法面崩壊の二次災害に遭遇することがない安全な施工となっている。
【0024】
(実施例2の工法について)
実施例2は上下反転T型擁壁を構築する例であり、掘進機は上下反転T型であり、推進ブロックも上下反転T形のもの
を使用して発進立坑HHから到達立坑THまで実施例1と略同様なイ´~ホ´、ヘ´の工程で地盤を推進工法で上下反転T型擁壁の下部工となる推進ブロックを推進させ、地盤中に列設させ、推進ブロックの中央にある上部突出部141を上方土砂を排除して露出させ、垂直部の上部ブロック143の下面の凹凸と嵌合させ、推進ブロック14と上部ブロック143を上下及び前後に連結させて、上下反転T型擁壁YMを構築するものであり、そのイ´~ヘ´の工程は実施例1のイ~ヘ工程と略同様であるので省略する。
【0025】
(実施例3の工法について)
実施例3はその擁壁YMが左右反転L型であり、実施例1のL型とは左右逆の形状であるが、そのイ´´~ヘ´´の工程は実施例1のイ~ヘの工程と略同様であるので、詳細は省略する。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の実施例は傾斜地の土砂流が発生した傾斜地の法尻の復旧作業に適用したが、都市の地表に使用停止できない建物、交通路面がある場所にも同様に活用できる。
【符号の説明】
【0027】
G1、G2、G3・・・実施例1、2、3の掘進機とその構築工法を示す。
1、実施例1のL型掘進機
2、実施例2の上下反転T型掘進機
3、実施例3の左右反転L型掘進機
10、20、30・・・実施例1、2、3の掘進機1、2、3の全体ケージング
11、21、31・・・実施例1、2、3の右側掘削装置
12、22、32・・・実施例1、2、3の左側掘削装置
13・・・左上掘削装置
23・・・中央上掘削装置
33・・・右上掘削装置
112、122、132・・・回転盤
14、24、34・・・実施例1、2、3の推進ブロック
143・・・上部ブロック
142・・・パイプ孔
150・・・鋼製パイプ
1511・・・PC鋼棒用孔
1512・・・PC鋼棒
111、121、131、211、221、231、311、321、331・・・掘削装置の装置ケージンング
112、122、132・・・回転盤
1120、1220、1320・・・公転軸(回転軸)
1121、1221、1321・・・自転軸
140・・・推進ブロックの雨水路
40・・・排土路
41・・・刃物
KM 傾斜地
HG 崩壊現場
HH 発進立坑
TH 到達立坑
MP 元押装置
SG 崩壊流下土砂
SGS 露出空間
YW 擁壁
RF 道路面
MH マンホール(集水マンホール)
HK 排水口
SH 削孔