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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】両面露光装置
(51)【国際特許分類】
   G03F 9/00 20060101AFI20230801BHJP
   H05K 3/00 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
G03F9/00 A
H05K3/00 E
H05K3/00 G
H05K3/00 H
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2017231298
(22)【出願日】2017-11-30
(65)【公開番号】P2019101198
(43)【公開日】2019-06-24
【審査請求日】2020-07-31
【審判番号】
【審判請求日】2022-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】300091670
【氏名又は名称】株式会社アドテックエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100097548
【弁理士】
【氏名又は名称】保立 浩一
(72)【発明者】
【氏名】名古屋 淳
【合議体】
【審判長】山村 浩
【審判官】松川 直樹
【審判官】吉野 三寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-326550(JP,A)
【文献】特開2006-084783(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F7/20
G03F9/00
H01L21/027
G03F1/42
H05K3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロールに巻かれたフレキシブルな基板を引き出して間欠的に送る搬送系と、
送られた基板を挟む位置に互いに平行に配置された第一第二のマスクから成るマスク対と、
搬送系が基板を停止させてアライメントが行われた後に基板に前記第一第二のマスクを通して光を照射して基板の両面を露光する露光ユニットと
を備えており、
基板は、露光すべき領域に対して所定の位置関係で設けられた二つのアライメントマークを有しており、
第一のマスクは、基板に対するアライメントのために設けられた二つの第一マスクマークと、第二のマスクに対するアライメント用に設けられた二つの第一補助マスクマークとを有しており、
第二のマスクは、基板に対するアライメントのために設けられた二つの第二マスクマークと、第一のマスクに対するアライメント用に設けられた二つの第二補助マスクマークとを有しており、
二つの第一マスクマークの基板の幅方向での離間距離は基板の幅以下であるとともに、二つの第二マスクマークの基板の幅方向での離間距離は基板の幅以下であり、
二つの第一補助マスクマークの基板の幅方向での離間距離は基板の幅を超えているとともに、二つの第二補助マスクマークの基板の幅方向での離間距離は基板の幅を超えており、
二つの第一補助マスクマークは二つの第一マスクマークと同一直線上に並んでいて、当該同一直線の方向は基板の幅方向に一致する方向であり、
二つの第二補助マスクマークは二つの第二マスクマークと同一直線上に並んでいて、当該同一直線の方向は基板の幅方向に一致する方向であり、
二つの第一マスクマークと二つの第一補助マスクマークとが並ぶ同一直線と、二つの第二マスクマークと二つの第二補助マスクマークとが並ぶ同一直線とは、各マスクに垂直な方向で見た際には重なっており、
前記各第一マスクマーク、前記各第二マスクマーク、前記各第一補助マスクマーク、前記各第二補助マスクマーク及び基板の各アライメントマークを撮影することが可能なカメラと、
カメラを移動させるカメラ移動機構と、
前記各第一マスクマーク、前記各第二マスクマーク及び基板の各アライメントマークを撮影したカメラからの撮影データにより前記第一第二のマスクを基板の露光すべき領域に対して位置合わせするアライメント手段とが設けられており、
カメラ移動機構は、前記第一第二のマスクを基板に対してアライメントするために前記各第一マスクマーク及び前記各第二マスクマークを撮影する基板アライメント位置と、前記第一第二のマスク同士をアライメントするために前記各第一補助マスクマーク及び前記各第二補助マスクマークを撮影するマスクアライメント位置との間でカメラを移動させることができる機構であり、前記各マスクに垂直な方向で見た際に重なっている同一直線に沿ってカメラを直線移動させる機構であることを特徴とする両面露光装置。
【請求項2】
前記カメラとして、第一第二の二台のカメラが設けられており、
第一のカメラは、前記第一第二のマスクを基板に対してアライメントするために一方の前記第一マスクマーク及び一方の前記第二マスクマークを撮影する基板アライメント位置に前記カメラ移動機構により位置するとともに、前記第一第二のマスク同士をアライメントするために一方の前記第一補助マスクマーク及び一方の前記第二補助マスクマークを撮影するマスクアライメント位置に前記カメラ移動機構により位置するカメラであり、
第二のカメラは、前記第一第二のマスクを基板に対してアライメントするために他方の前記第一マスクマーク及び他方の前記第二マスクマークを撮影する基板アライメント位置に前記カメラ移動機構により位置するとともに、前記第一第二のマスク同士をアライメントするために他方の前記第一補助マスクマーク及び他方の前記第二補助マスクマークを撮影するマスクアライメント位置に前記カメラ移動機構により位置するカメラであることを特徴とする請求項1記載の両面露光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の発明は、フレキシブルプリント基板等の製造に使用されるロールツーロール方式のような両面露光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
所定のパターンの光を対象物に照射して露光する露光装置は、フォトリソグラフィの中核的な要素技術として各種の用途に使用されている。露光装置には種々のタイプのものがあるが、その一つに、帯状の長尺な基板の両面に露光する両面露光装置が知られている。
【0003】
例えば、フレキシブルプリント基板のような柔らかな基板を露光する装置の場合、ロールツーロールで基板を搬送しながら露光を行う構成が採用されている。基板の搬送ラインの両側(通常は上下)には、一対の露光ユニットが配置されている。搬送ラインの両側にはマスクが設けられており、露光ユニットは両側から各マスクを通して所定のパターンの光を照射し、露光を行う。
ロールから引き出しての基板の搬送は間欠的であり、搬送後に停止した基板のうち、一対の露光ユニットの間に位置する部位の両面に所定のパターンの光が照射され、両面が同時に露光される。
【0004】
このような両面露光装置も、露光装置の一種であるから、アライメント(位置合わせ)精度が問題となる。ロールツーロール方式の装置のような帯状の長尺な基板に対して露光する装置の場合、フォトリソグラフィ終了後に長さ方向の適宜の位置で切断し、最終的な製品を得る。切断位置を適宜選定することができるため、露光装置における長さ方向のアライメントは、従来はそれほど問題となっていなかった。その一方、一対のマスクは、互いの位置関係が高い精度で保たれている必要がある。即ち、一対のマスクの位置関係の精度が悪いと、最終的な製品において基板の一方の側のパターンと他方の側のパターンとがずれていることになり、製品欠陥につながり易いからである。このため、特許文献1や特許文献2のように、一対のマスクについて互いにアライメントを行い、形成されるパターンのずれがないようにしている。
【0005】
従来の状況は上記のようなものであるものの、最近では、一対のマスクを互いにアライメントしただけでは不十分で、基板に対する位置合わせも十分に高い精度で行うことが要求されてきている。この一つの背景に、製品の高機能化に伴い、多層配線のような複雑な構造を有する場合が多くなってきていることが挙げられる。
【0006】
一例を示すと、フレキシブルプリント基板において多層配線のような複雑な構造を造り込む場合、帯状の基板上に既にパターンが形成されており、その上にさらにレジストを塗布して露光を行う場合が多い。既存のパターンは、帯状の基板の長さ方向に沿って間をおいて多数形成されており、個々のパターンが形成されている部分が最終的に個々の製品となる。この場合、更なる露光においては、既に形成されているパターンに対して必要な位置精度で露光を行う必要があり、基板に対するアライメントが必要となる。
【0007】
また、製品によっては、既にパターンが形成されている部分の上に別のフレキシブルな方形の基板をラミネートし、その別の基板(以下、上層基板という。)に対してパターンを形成するべく露光を行う場合がある。この場合も、上層基板は帯状の基板の長さ方向に沿って間をおいて多数ラミネートされているから、個々の上層基板に対してアライメントがされた状態で露光を行う必要がある。
【0008】
このように基板に対するアライメントも要求される場合、一対のマスクを互いにアライメントした上で、その状態を保持しながら当該一対のマスクを基板に対してアライメントする必要がある。このため、特許文献2では、基板に設けられたアライメントマークとしての開口(以下、アライメント用開口という。)を通して両側のマスクのアライメントマークをカメラで撮影する構成が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2000-155430号公報
【文献】特開2006-278648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のような帯状の長尺な基板の両面に露光する両面露光装置において、一対のマスクは、形成しようとするパターンが異なれば、異なるものが使用される。したがって、製品に応じてマスクを交換する必要が生じる。この場合、ロールツーロール搬送方式のようなロールから基板を引き出して露光するタイプの装置では、ロールの途中で製品の品種が変わり、一対のマスクを交換する必要が生じる場合がある。
【0011】
この場合、いったん基板を巻き取って、露光作業位置に基板がない状態にして一対のマスクを交換した方がマスクの交換作業としてはやり易い。しかしながら、長さ方向の途中まで処理した基板をいったん巻き取り、交換後に再び引き出して元の状態にするのは大変面倒であり、装置の運転が長時間停止してしまう問題がある。したがって、できれば、基板はそのままにして一対のマスクのみを交換できるようにした方が好ましい。
【0012】
しかしながら、発明者の検討によると、従来のマスクの場合、アライメントとの関係で上記のような交換方法は非常に手間がかかる方法であることが判明した。この点について、以下、具体的に説明する。
【0013】
基板に対して一対のマスクを高い精度でアライメントするには、特許文献2に開示されたように、各マスクのアライメントマーク(以下、マスクマークという。)と基板のアライメント用開口とが基板に垂直な光軸上に並ぶようにし、この状態をカメラで確認する構成が好ましい。この際、各マスクには複数のマスクマークが設けられており、同様の位置関係にて基板にも複数のアライメント開口が設けられる。各マスクマーク及びアライメント用開口が各々光軸上に並ぶように各マスクの位置が調整され、これによりアライメントが行われる。
上記のようなアライメント構造において、当然ながら、一つのマスクにおいて各マスクマークは基板の大きさの範囲内に入っている。即ち、基板の板面に平行で長尺方向に垂直な方向を基板幅方向とすると、一つのマスクにおける各マスクマークの基板幅方向の離間距離は、基板の幅より短い。
【0014】
上記のように一対のマスクを交換した際、マスク同士のアライメントをまずする必要があるが、各マスクを装着しただけの状態では、各マスクマークは基板のアライメント用開口とは一直線上に並んでいないので、カメラから見て反対側(基板の裏側)のマスクのマスクマークは、基板によって隠れてしまっている。基板は遮光性である場合が多く、レジストが塗布された状態はその典型である。マスクマークが基板によって隠れた状態では、マスク同士のアライメントができないので、まず、基板のアライメント用開口を探し、その位置に反対側のマスクのマスクマークを位置させ、それから手前側のマスクのマスクマークを一直線上に位置させるという非常に面倒な作業となる。特に、反対側のマスクのマスクマークを基板のアライメント用開口内に位置させる作業は、マスクマークが隠れた状態で行わなければならないため、非常に面倒な作業となる。
【0015】
別の方法としては、反対側のマスクのマスクマークが基板によって隠れない位置までマスクを引き出し、その位置でマスク同士のアライメントをする方法もあり得る。しかしながら、マスク同士のアライメントの際にはカメラも移動させる必要があり、アライメントをした後には、再び元の位置に戻す必要がある。そして、アライメントした一対のマスクも、露光作業位置に戻す必要があるが、戻す際に一対のマスクがずれてしまっていないか、カメラで確認する必要がある。しかしながら、戻した位置では基板があるから、反対側のマスクのアライメントマークはカメラで捉えられず、アライメントされた状態が保持されているか確認することができない。確認するには、基板のアライメント用開口を探し、その位置に各マスクマークが位置するよう各マスクを一体に移動させる必要が生じてしまう。このようなことから、従来の構成では、基板を露光作業位置に残したままのマスクの交換は、アライメントとの関係で非常に手間のかかる面倒な作業であることが判明した。
【0016】
この出願の発明は、このような課題を解決するために為されたものであり、露光作業位置に基板を残した状態でも交換後のマスク同士のアライメントが容易に行えるマスク対の構成を提供し、このようなマスク対を使用することで交換作業全体が短時間に完了するようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するため、本願の請求項1記載の発明は、ロールに巻かれたフレキシブルな基板を引き出して間欠的に送る搬送系と、
送られた基板を挟む位置に互いに平行に配置された第一第二のマスクから成るマスク対と、
搬送系が基板を停止させてアライメントが行われた後に基板に前記第一第二のマスクを通して光を照射して基板の両面を露光する露光ユニットと
を備えており、
基板は、露光すべき領域に対して所定の位置関係で設けられた二つのアライメントマークを有しており、
第一のマスクは、基板に対するアライメントのために設けられた二つの第一マスクマークと、第二のマスクに対するアライメント用に設けられた二つの第一補助マスクマークとを有しており、
第二のマスクは、基板に対するアライメントのために設けられた二つの第二マスクマークと、第一のマスクに対するアライメント用に設けられた二つの第二補助マスクマークとを有しており、
二つの第一マスクマークの基板の幅方向での離間距離は基板の幅以下であるとともに、二つの第二マスクマークの基板の幅方向での離間距離は基板の幅以下であり、
二つの第一補助マスクマークの基板の幅方向での離間距離は基板の幅を超えているとともに、二つの第二補助マスクマークの基板の幅方向での離間距離は基板の幅を超えており、
二つの第一補助マスクマークは二つの第一マスクマークと同一直線上に並んでいて、当該同一直線の方向は基板の幅方向に一致する方向であり、
二つの第二補助マスクマークは二つの第二マスクマークと同一直線上に並んでいて、当該同一直線の方向は基板の幅方向に一致する方向であり、
二つの第一マスクマークと二つの第一補助マスクマークとが並ぶ同一直線と、二つの第二マスクマークと二つの第二補助マスクマークとが並ぶ同一直線とは、各マスクに垂直な方向で見た際には重なっており、
前記各第一マスクマーク、前記各第二マスクマーク、前記各第一補助マスクマーク、前記各第二補助マスクマーク及び基板の各アライメントマークを撮影することが可能なカメラと、
カメラを移動させるカメラ移動機構と、
前記各第一マスクマーク、前記各第二マスクマーク及び基板の各アライメントマークを撮影したカメラからの撮影データにより前記第一第二のマスクを基板の露光すべき領域に対して位置合わせするアライメント手段とが設けられており、
カメラ移動機構は、前記第一第二のマスクを基板に対してアライメントするために前記各第一マスクマーク及び前記各第二マスクマークを撮影する基板アライメント位置と、前記第一第二のマスク同士をアライメントするために前記各第一補助マスクマーク及び前記各第二補助マスクマークを撮影するマスクアライメント位置との間でカメラを移動させることができる機構であり、前記各マスクに垂直な方向で見た際に重なっている同一直線に沿ってカメラを直線移動させる機構であるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成において、前記カメラとして、第一第二の二台のカメラが設けられており、第一のカメラは、前記第一第二のマスクを基板に対してアライメントするために一方の前記第一マスクマーク及び一方の前記第二マスクマークを撮影する基板アライメント位置に前記カメラ移動機構により位置するとともに、前記第一第二のマスク同士をアライメントするために一方の前記第一補助マスクマーク及び一方の前記第二補助マスクマークを撮影するマスクアライメント位置に前記カメラ移動機構により位置するカメラであり、第二のカメラは、前記第一第二のマスクを基板に対してアライメントするために他方の前記第一マスクマーク及び他方の前記第二マスクマークを撮影する基板アライメント位置に前記カメラ移動機構により位置するとともに、前記第一第二のマスク同士をアライメントするために他方の前記第一補助マスクマーク及び他方の前記第二補助マスクマークを撮影するマスクアライメント位置に前記カメラ移動機構により位置するカメラであるという構成を有する。
【発明の効果】
【0018】
以下に説明する通り、本願の請求項1記載の発明によれば、基板を露光作業位置に配置したままマスクを交換し、基板を露光作業位置に配置したまま交換後のマスク同士のアライメントを行うことができるので、装置の運転が長時間停止してしまう問題がない。この際、マスク対は補助マスクマークを有しており、第一補助マスクマークと第二補助マスクマークの基板幅方向での離間距離が基板の幅を超えているので、基板を外れた位置で両側の補助マスクマークを捉えてマスク同士のアライメントができる。このため、マスク同士のアライメント完了後にマスクを元の位置に戻すような移動動作は不要であり、極めて簡便に短時間にマスク同士のアライメントが行える。
その上、マスク同士のアライメントとマスク対の基板に対するアライメントとでカメラが兼用できるので、カメラの台数が少なくて済み、その点でコストが低減する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態のマスク対の斜視概略図である。
図2】実施形態の両面露光装置の正面断面概略図である。
図3】実施形態の両面露光装置におけるアライメントについて示した斜視概略図である。
図4】本アライメントプログラムについて示した平面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本願発明を実施するための形態(実施形態)について説明する。
まず、マスク対の発明の実施形態について説明する。図1は、実施形態のマスク対の斜視概略図である。
「マスク対」とは、一対のマスクのセットという意味である。マスク対は、基板の両面を露光する両面露光装置に搭載される第一のマスク1と第二のマスク2とから成っている。各マスク1,2は板状であり、この実施形態では方形である。
露光に使用されるものであるため、各マスク1,2には、転写しようとするパターンが描かれている。各マスク1,2において、パターンが描かれた領域をパターン領域と呼び、図1にPで示す。
【0021】
図1に示すように、装置に搭載された状態では、第一のマスク1と第二のマスク2は水平な姿勢であり、従って互いに平行である。第一のマスク1と第二のマスク2は、垂直な軸の回りの回転方向の姿勢も同一であり、方形の向かい合う辺は第一のマスク1と第二のマスク2とで同一の方向を向いている。
図1に示すように、露光作業位置において基板Sも水平な姿勢である。コンタクト露光が行われる場合、図1に示す状態から各マスク1,2が基板Sに向けて移動し、基板Sに密着する。密着状態で各マスク1,2を通して光が照射されて露光が行われる。
【0022】
前述したように、両面露光装置において、マスク対の基板Sに対するアライメントが行われる。したがって、各マスク1,2には、このアライメントのためのマーク11,21が設けられている。以下、第一のマスク1に設けられたアライメントマーク11を第一マスクマークと呼び、第二のマスク2に設けられたアライメントマーク21を第二マスクマークと呼ぶ。図1に示すように、この実施形態では、第一マスクマーク11は円周状、第二マスクマーク21は第一マスクマーク11より小さな円形の点である。
【0023】
図1に示すように、アライメントのため基板Sにもアライメントマークとしてアライメント用開口Smが形成されている。この実施形態では、アライメント用開口Smは円形となっている。この実施形態では、アライメント用開口Smよりも第一マスクマーク11及び第二マスクマーク21は小さい。後述するように、基板Sに対するアライメントの際、アライメント用開口Sm内に第一第二のマスクマーク11,21が位置する。
【0024】
さて、このような構成である実施形態のマスク対において、上記基板Sに対するアライメント用のマスクマーク11,12に加えて、別のアライメントマーク12,22が設けられている。以下、これらの別のアライメントマーク12,22のうち、第一のマスク1に設けられたものを第一補助マスクマークと呼び、第二のマスクに設けられたものを第二補助マスクマークと呼ぶ。
これら補助マスクマーク12,22は、マスク1,2同士をアライメントするために特別に設けられたものとなっている。この例では、補助マスクマーク12,22は各マスク1,2に二つずつ設けられている。
【0025】
そして、各補助マスクマーク12,22は、基板Sの幅方向において第一第二マスクマーク11,21よりも外側に設けられている。より具体的に説明すると、実施形態において、基板Sは帯状の長尺なものであることが想定されている。基板Sの幅方向は、基板Sの板面に沿った方向であって長さ方向に対して垂直な方向である。以下、この方向を基板幅方向という。
【0026】
図1に示すように、第一マスクマーク11は、基板幅方向においてパターン領域Pの外側に形成されている。但し、四つの第一マスクマーク11の基板幅方向の離間距離は、基板Sの幅(図1にSwで示す)よりも短い。したがって、第一のマスク1が基板Sに密着した際、四つの第一マスクマーク11は基板1の板面内に位置する。
四つの第二マスクマーク21も同様であり、基板幅方向においてパターンPの外側に、基板Sの幅Swよりも短い離間距離で形成されている。したがって、第二のマスク2が基板Sに密着した際、四つの第二マスクマーク21は基板1の板面内に位置する。
【0027】
一方、二つの第一補助マスクマーク12は、図1に示すように基板幅方向の離間距離が基板Sの幅Swよりも長くなっている。二つの第二補助マスクマーク22も、基板幅方向の離間距離が基板Sの幅Swよりも長くなっている。
尚、この実施形態では、二つの第一補助マスクマーク12を結んだ方向は基板幅方向に等しく、二つの第二補助マスクマーク22を結んだ方向は基板幅方向に等しい。また、二つの第一補助マスクマーク12の離間距離は、二つの第二補助マスクマーク22の離間距離に等しい。
このような第一第二補助マスクマーク12,22は、後述するように、マスク1,2同士のアライメントの際に利用される。
【0028】
尚、各マスク1,2は、パターン領域P以外は基本的に透明である。透明な部分に、例えば黒色のパターンとして各マスクマーク11,12,21,22が形成されている。したがって、カメラ2により十分なコントラストで各マスクマーク11,12,21,22が視認される。
【0029】
次に、このようなマスク対が搭載される実施形態の両面露光装置について説明する。
図2は、実施形態の両面露光装置の正面概略図である。図2に示すように、両面露光装置は、搬送系3と、露光ユニット4とを備えている。
実施形態の両面露光装置は、前述したように帯状の基板を露光する装置である。このような基板は、例えばポリイミド製で、フレキシブルプリント基板用の基板が例として挙げられる。
【0030】
搬送系3は、ロールに巻かれたフレキシブルな基板Sを引き出して間欠的に送り出す機構である。搬送系3は、基板Sを水平に引き出して水平な姿勢で搬送する機構となっている。具体的には、搬送系3は、未露光の基板Sが巻かれた送り出し側芯ローラ31と、送り出し側芯ローラ31から基板Sを引き出す送り出し側ピンチローラ32と、露光後の基板Sが巻かれる巻き取り側芯ローラ33と、露光後の基板Sを引き出して巻き取り側芯ローラ33に巻き取らせる巻き取り側ピンチローラ34とを備えている。尚、搬送系3による基板Sの送り方向をX方向とし、これに垂直な水平方向をY方向とする。Y方向は基板幅方向である。XY平面に垂直な方向をZ方向とする。
送り出し側ピンチローラ32と巻き取り側ピンチローラ34との間に、露光作業位置が設定されている。露光作業位置は、露光ユニット4により基板Sの両面に同時に露光を行う位置である。
【0031】
そして、この露光作業位置にマスク対が搭載される。図2に示すように、マスク対のうち、第一のマスク1は基板Sの上側に配置され、第二のマスク2は基板Sの下側に配置される。即ち、マスク対で基板Sを挟んだ状態となる。
第一のマスク1は第一のマスクステージ10に搭載され、第二のマスク2は第二のマスクステージ20に搭載される。各マスクステージ10,20は、方形の枠状であり、各マスク1,2を通した光照射に支障のない形状である。
【0032】
そして、マスク対には、マスク1,2を移動させるマスク移動機構5が付設されている。この実施形態では、マスク移動機構5は、第一のマスク1、第二のマスク2をそれぞれ独立して移動させることができるとともに、二つのマスク1,2を一体に移動させることができる機構である。この種の機構は容易に製作できるが、例えば第一のマスクステージをXY方向に移動させる機構を第一のベース板に固定し、第二のマスクステージをXY方向に移動させる機構を第二のベース板に固定し、さらに第一第二のベース板を一体にXY方向に移動させる機構を設けることで実現される。
【0033】
尚、マスク移動機構5は、メインコントローラ6によって自動制御される機構であるが、メインコントローラ6は、不図示のマニュアル操作部を備えており、マニュアル操作も可能な機構となっている。
また、各マスク1,2には、不図示のZ方向移動機構が設けられている。Z方向移動機構は、コンタクト露光のため、各マスク1,2を基板Sに向けて移動させ、基板Sに密着させるための機構である。
【0034】
このような一対のマスク1,2を通して光照射することで基板Sの両面を露光することができるよう、露光ユニット4も一対のものが採用されている。第一のマスク1を通して露光する露光ユニット4は、第一のマスク1の上側に設けられ、下方に光を照射して露光する。第二のマスク2を通して露光する露光ユニット4は、第二のマスク2の下側に設けられ、上方に光を照射して露光する。
【0035】
二つの露光ユニット4は上下に対称な配置であり、構造的には同様である。即ち、各露光ユニット4は、光源41と、光源41からの光をマスク1,2に照射する光学系42等を備えている。後述するように、この実施形態の装置はコンタクト露光を行う装置となっており、各露光ユニット4は、各マスク1,2に平行光を照射するユニットとなっている。したがって、光学系42は、コリメータレンズを含む。
【0036】
搬送系3は、露光作業位置の上流側と下流側においてバッファエリア301,302を含んでいる。搬送系3は、露光作業位置の上流側に配置された第一駆動ローラ35と、露光作業位置の下流側に配置された第二駆動ローラ36とを含んでいる。各駆動ローラ35,16は、ピンチローラである。
図2に示すように、送り出し側ピンチローラ32と、第一駆動ローラ35との間が送り出し側バッファエリア301となっている。また、第二駆動ローラ36と巻き取り側ピンチローラ34との間が巻き取り側バッファエリア302となっている。
【0037】
第一駆動ローラ35と第二駆動ローラ36は、露光作業位置を通した基板Sの間欠送りを行う要素である。即ち、第一駆動ローラ35と第二駆動ローラ36とは同期して動作するローラであり、設定された所定のストロークで基板Sを送るよう構成されている。このストロークは、一回の間欠送りの際に基板Sが送られる距離であり、以下、送りストロークといい、図1にLfで示す。
【0038】
一方、送り出し側芯ローラ31と送り出し側ピンチローラ32は、送り出し側バッファエリア301での基板Sの弛み量に応じて同期して駆動される。送り出し側バッファエリア301には不図示のセンサが配置されており、弛み量が少なくなると送り出し側芯ローラ31と送り出し側ピンチローラ32が同期して動作し、設定された最大値の弛み量になるまで基板Sを送り出す。
巻き取り側バッファエリア302も同様であり、不図示のセンサが配置されている。センサからの信号に従い、弛み量が限度まで多くなると、巻き取り側ピンチローラ34と巻き取り側芯ローラ33が同期して動作し、設定された最小値まで弛み量が減るように基板Sを巻き取る。
【0039】
上述した搬送系3の間欠送りにおいて、送りストロークLfでの送りの後の基板Sの停止中に各露光ユニット4により基板Sの両面が露光されるが、これに先立ち、アライメント手段によりアライメントが行われるようになっている。アライメント手段は、第一第二のマスク1,2を移動させて基板Sの露光すべき領域に対して位置合わせする手段である。したがって、前述したマスク移動機構5がアライメント手段に含まれる。
【0040】
図2に示すように、装置は、搬送系3や上記マスク移動機構5等を含む各部を制御するメインコントローラ6を備えている。メインコントローラ6には、装置の各部が所定の手順で動作するように制御するメインシーケンスプログラム7が実装されている。即ち、メインコントローラ6の記憶部60にはメインシーケンスプログラム7が記憶されており、メインコントローラ6のプロセッサ(不図示)により実行可能となっている。メインシーケンスプログラム7は、前述したようなアライメントを行うアライメント手段を構成している。この他、メインコントローラ6はエラー表示等を行うディスプレイ61を備えている。
【0041】
アライメント手段によるアライメントについて、図2及び図3を参照してさらに詳しく説明する。図3は、実施形態の両面露光装置におけるアライメントについて示した斜視概略図である。
図2及び図3に示すように、装置は、アライメントのためのカメラ8を備えている。この実施形態では、前述したように、第一マスクマーク11、第二マスクマーク21がそれぞれ四つ設けられているので、これらに合わせて、四台のカメラ8が設けられている。図3に示すように、四台のカメラは、方形の角に相当する位置に設けられている。
【0042】
前述したように、アライメントは二種類あり、一つは、マスク1,2同士のアライメントであり、もう一つは、マスク対の基板Sに対するアライメントである。このうち、図3(1)にはマスク1,2同士のアライメントが示されており、図3(2)にはマスク対の基板Sに対するアライメントが示されている。
【0043】
図2及び図3に示すように、各カメラ8は、光軸(内蔵したレンズの光軸)Aが垂直になるように配置されており、下方を撮影する姿勢で取り付けられている。各カメラ8を据え付けた台座には、カメラ8のXY方向の位置を変更するためのカメラ移動機構81が設けられている。尚、図2に示すように、各カメラ8はメインコントローラ6に接続されており、カメラ8の撮影データはメインコントローラ6に送られるようになっている。カメラ移動機構81も、メインコントローラ6によって制御される。
【0044】
まず、マスク1,2同士のアライメントについて説明する。
マスク1,2同士のアライメントは、装置に初めて各マスク1,2を搭載した際、又は後述するようにマスク1,2を交換した際に行われる。マスク1,2同士のアライメントについては、四つのカメラ8のうちの両側の二つのカメラが使用される。例えば、図3に示す四つのカメラ8のうち、左側の二つのカメラがマスク1,2同士のアライメントに使用される。以下、この二つのカメラ8を、兼用カメラと呼ぶ。
【0045】
マスク1,2同士のアライメントを行う場合、マスク1,2同士のアライメントを行う位置(以下、マスクアライメント位置という。)にカメラ移動機構8により兼用カメラ8を予め移動させる。マスクアライメント位置は、マスク1,2の各第一第二補助マスクマーク12,22が視野に入る位置である。言い換えれば、マスクアライメント位置に配置された兼用カメラ8の視野に各第一第二補助マスクマーク12,22が入るように各マスク1,2が配置される。この配置作業は、手作業の場合が多い。尚、マスクアライメント位置への移動の向きは、Y方向に一致している。
【0046】
兼用カメラ8により撮影された各補助マスクマーク12,22の像は、メインコントローラ6を介してディスプレイ61に表示される。したがって、作業者は、各第一補助マスクマーク12と各第二補助マスクマーク22とが同一直線上に重なるように、ディスプレイ61の画像を見ながらマスク移動機構5をマニュアル操作する。これにより、図3(1)に示すように、一対のマスク1,2が互いにアライメントされた状態となる。例えば、第一のマスク1の位置を固定しておき、第二のマスク2を移動させて各第二補助マスクマーク22が各第一補助マスクマーク12と同一直線上になるようにする。
この実施形態では、各第一補助マスクマーク12は円周状であり、各第二補助マスクマーク22は、第一補助マスクマーク12より小さい円形であるので、各第二補助マスクマーク22は、各第一補助マスクマーク12内に位置する。そして、各第二補助マスクマーク22の中心が各第一補助マスクマーク12の中心と必要な精度の範囲内で一致すれば、二つのマスク1,2は互いにアライメントされたことになる。
【0047】
次に、基板Sに対するマスク対のアライメントについて説明する。
上記マスク1,2同士のアライメントを行った場合、兼用カメラ8は元の位置に戻していく。元の位置とは、基板Sに対するアライメントを行う際のカメラ8の配置位置として設定された位置である。以下、この位置を、基板アライメント位置という。
【0048】
基板アライメント位置は、XY方向に辺が延びる方形の角に相当する位置である。四つのカメラ8についての基板アライメント位置の関係は、基板Sの各アライメント用開口Smの設計上の位置関係(設計上の位置関係)に一致している。したがって、各アライメント用開口Smが設計通りに正しく形成され、搬送系3が送りストロークLfの誤差無く間欠送りを行った場合、各アライメント用開口Smは各カメラ8の光軸A上に位置する。実際には、各アライメント用開口Smの形成位置のずれや搬送系3の間欠送りの精度の限界から、間欠送り完了の際、各アライメント用開口Smは光軸Aからずれる。それでも、各アライメント用開口Smは各カメラ8の視野に入るよう、各カメラ8は十分な大きさの視野を持つものが採用されている。
【0049】
基板Sに対するアライメントは、メインコントローラ6による自動制御により行われる。具体的には、メインコントローラ6に実装されたメインシーケンスプログラム7及びメインシーケンスプログラム7から呼び出されて実行される幾つかのサブプログラムによって実行される。
メインコントローラ6には、メインシーケンスプログラム7から呼び出されて実行されるサブプログラムとして、開口有無判定プログラム71、開口検索プログラム72、開口欠け判定プログラム73、開口欠け解消プログラム74、マーク隠れ判定プログラム75、仮アライメントプログラム76、マーク欠け判定プログラム77、マーク欠け解消プログラム78、本アライメントプログラム79が実装されている。
【0050】
最終的にアライメントを行うのが本アライメントプログラム79であるが、メインシーケンスプログラム7は、本アライメントに先立ち、開口有無判定プログラム71を実行して各アライメント用開口Smがカメラ8によって撮影されているかどうか判定させ、撮影されていなければ、開口検索プログラム72を実行する。開口検索プログラム72は、搬送系3に制御信号を送り、基板Sを少し戻したり送ったりして各アライメント用開口Smが各カメラ8の視野に入るようにする。
【0051】
また、メインシーケンスプログラム7は、開口欠け判定プログラム73を実行し、いずれかのアライメント用開口Smが欠けているかどうか判定させる。欠けて撮影されていれば、開口欠け解消プロプログラム74を実行する。開口欠け解消プログラムは、カメラ移動機構81によりカメラ8を移動させて欠けを解消する。
【0052】
また、メインシーケンスプログラム7は、マーク隠れ判定プログラム75を実行し、各第一第二マスクマーク11,21が基板Sに隠れていないか判定させ、隠れていれば、仮アライメントプログラム76を実行する。仮アライメントプログラム76は、前回の露光の際のアライメント完了時の各マスクマーク11,21の位置を基準にして隠れを解消させる移動量を算出し、それをマスク駆動機構5に送って各マスク1,2を移動させることで隠れを解消する。
【0053】
また、メインシーケンスプログラム7は、マーク欠け判定プログラム77を実行して各マスクマーク11,21が欠けて撮影されていないか判定させる。欠けて撮影されていれば、マーク欠け解消プログラム78を実行する。マーク欠け解消プログラム78は、欠けを解消させるための移動量を算出し、それをマスク移動機構5に送って各マスク1,2を移動させることで欠けを解消させる。
【0054】
このようにして、各アライメント用開口Smが欠けのない状態で撮影され、各マスクマーク11,21が欠けのない状態で各アライメント用開口Sm内に位置したら、アライメント可能な状態となるので、メインシーケンスプログラム7は、本アライメントプログラム79を実行する。図4は、本アライメントプログラム79について示した平面概略図である。
【0055】
本アライメントプログラム79は、まず、光軸A上の点を原点とする座標系において、第一マスクマーク11の中心と第二マスクマーク21の中心を求める。そして、第一マスクマーク11の中心と第二マスクマーク21の中心が必要な精度で一致しているかどうか判断し、一致していなければ、マスク1,2のいずれか又は双方を移動させて一致させるようマスク移動機構5に信号を送る。通常は、前回以前の露光の際に両者を必要な精度で一致させており、その状態が保持されている。
第一マスクマーク11の中心と第二マスクマーク21の中心が必要な精度で一致しているのを確認した上で、本アライメントプログラム79は、それら中心の中間点を求める。そして、本アライメントプログラム79は、基板Sのアライメント用開口Smの中心を求め、一対のマスクマーク11,21の中心の中間点とのずれを求め、そのずれを解消させるための各マスク1,2の移動の向きと距離を算出する。
【0056】
アライメントプログラムは、上記のようなデータ処理を各カメラ8からの撮影データに対して行い、ずれを解消するための各マスク1,2の移動の向きと距離を算出する。その上で、各撮影データから得た移動の向きと距離について平均を求め、最終的な本アライメント用の各マスク1,2の移動指令とし、それをメインシーケンスプログラム7に返す。移動の向きと距離は、各々のベクトル(図4中に矢印で示す)として把握されるので、各ベクトルの向きについては合成し、長さは平均を取る。
【0057】
メインシーケンスプログラム7は、戻り値である移動指令をマスク移動機構5に送り、一対のマスク1,2を一体に移動させ、各マスクマーク11,21の中心が必要な精度で一直線上に並ぶようにする。これで、本アライメントは終了である。その後、メインシーケンスプログラム7は、次の目標露光領域Rの露光の際のアライメントのために、本アライメント完了時点での各マスクマーク11,21の中心の座標を記憶部61に記憶する。メインシーケンスプログラム7及び各サブプログラム71~79は、上記のような動作が行われるようプログラミングされている。
【0058】
次に、上記構成に係る実施形態の両面露光装置の全体の動作について概略的に説明する。
一対のマスク1,2は、Z方向において、基板Sから離れた待機位置に位置している。この位置は、マスク対の基板Sに対するアライメントが行われるXY平面が存在する位置である。
メインシーケンスプログラム7が実行されているメインコントローラ6からは、送りストロークLfの分だけ基板Sを送るよう搬送系3に制御信号が送られる。これにより、第一駆動ローラ35及び第二駆動ローラ36が同期して動作し、基板Sが送りストロークLfだけX方向前側(巻き取り側)に送られる。
【0059】
送り完了の信号が搬送系3からメインコントローラ6に戻されると、メインシーケンスプログラム7は、上述した一連のアライメントの動作を行う。即ち、各カメラ8の視野内にアライメント用開口Smがなければ開口検索プログラム72を実行し、いずれかのアライメント用開口Smが欠けていれば開口欠け解消プログラム74を実行する。また、マーク隠れがあれば仮アライメントプログラム76を実行し、いずれかの第一第二マスクマーク11,21に欠けがあれば、マーク欠け解消プログラム78を実行する。その上で、メインシーケンスプログラム7は、本アライメントプログラム79を実行する。これにより、アライメントが完了する。
【0060】
その後、メインシーケンスプログラム7は、不図示のZ方向移動機構に制御信号を送って一対のマスク1,2をZ方向に移動させて各マスク1,2を基板Sに密着させる。この状態で、メインシーケンスプログラム7は各カメラ8からの撮影データを取得し、アライメントされた状態が維持されているか(各マーク11,21,Smの中心が必要な精度で一致しているか)を判断する。維持されていれば、メインシーケンスプログラム7は、各露光ユニット4に制御信号を送り、露光を行わせる。
【0061】
必要な露光量のための所定時間の露光の後、各露光ユニット4は光照射を停止する。その後、メインシーケンスプログラム7は、不図示のZ方向移動機構に制御信号を送り、一対のマスク1,2を基板Sから離間させ、当初の待機位置に戻す。
各マスク1,2が待機位置に戻ったのが確認されると、メインシーケンスプログラム7は、搬送系3に制御信号を送り、送りストロークLfの分だけ基板SをX方向前側に送らせる。その後は、上記と同じ動作であり、送りストロークLfの基板Sの間欠送りの合間にアライメントをした上で露光を行う動作を繰り返す。
【0062】
動作が繰り返される際、送り出し側バッファエリア301の基板Sの弛み量が少なくなると送り出し側芯ローラ31及び送り出し側ピンチローラ32が同期して動作し、基板Sを送り出し側バッファエリア301に送り出す。また、巻き取り側バッファエリア302の基板Sの弛み量が多くなると、巻き取り側芯ローラ33及び巻き取り側ピンチローラ34が同期して動作し、巻き取り側芯ローラ33に基板Sを巻き取る。
【0063】
このような動作を繰り返した後、異なる品種の製品用の露光を行う場合、マスク1,2の交換が必要になる。この交換作業にも大きな特徴点があるので、以下に詳説する。
前述したように、マスク1,2の交換の際、長さ方向の途中まで処理した基板Sをいったん巻き取り、交換後に再び引き出して元の状態にするのは大変面倒であるので、実施形態の装置では、基板Sはそのままにしてマスク1,2を交換する。即ち、第一のマスク1を第一のマスクステージ10から取り外し、別の第一のマスク1を第一のマスクステージ10に装着する。また、第二のマスク2を第二のマスクステージ20から取り外し、別の第二のマスク2を第二のマスクステージ20に装着する。
【0064】
その後、改めてマスク1,2同士のアライメントを行う。これは、マスク1,2の交換の際にマスクステージ10,20が微妙にずれたり、マスク1,2の装着位置が微妙にずれたりする場合があるからである。また、品種が異なるためにマスク1,2のサイズや補助マスクマーク12,22の形成が異なっている場合もあり、改めてアライメントすることが必要になる。
【0065】
この際、実施形態のマスク対は、第一第二マスクマーク11,21とは別に補助アライメントマーク12,22を有しているので、これを利用する。即ち、図3(1)に示すように、兼用カメラ8をカメラ移動機構81によりマスクアライメント位置に位置させる。そして、各補助アライメントマーク12,22を各兼用カメラ8で撮影しながら、その画像をディスプレイ61に表示し、ディスプレイ61を見ながら作業者がマスク移動機構5を操作してマスク1,2同士のアライメントを行う。
マスク1,2のアライメントが完了すると、これらマスク1,2での露光の準備が完了するので、以後、上述した動作を繰り返す。
【0066】
このように、実施形態のマスク交換方法によれば、基板Sを露光作業位置に配置したままマスク1,2を交換し、基板Sを露光作業位置に配置したまま交換後のマスク1,2同士のアライメントを行う。このため、装置の運転が長時間停止してしまう問題がない。
また、実施形態のマスク対は、補助マスクマーク12,22を有しており、第一補助マスクマーク12と第二補助マスクマーク22の基板幅方向での離間距離が基板Sの幅Swを超えているので、基板Sを外れた位置で両側の各補助マスクマーク12,22をカメラ8で撮影することができ、それによりマスク1,2同士のアライメントができる。このため、マスク1,2同士のアライメント完了後にマスク1,2を元の位置に戻すような移動動作は不要であり、極めて簡便に短時間にマスク1,2同士のアライメントが行える。
【0067】
上記実施形態の両面露光装置は、マスク1,2同士のアライメントの際、兼用カメラ8をカメラ移動機構81でマスクアライメント位置に移動させる構成であったが、マスクアライメント位置に専用のカメラを配置しても良い。カメラの台数が増えるのでその点でコストは増すが、カメラ移動機構81の構成が簡略化されるメリットと、兼用カメラ8を移動させる時間が省かれるメリットがある。
尚、上記実施形態において、マスク1,2の交換時のマスク1,2同士のアライメントはマニュアル作業であったが、間欠送りのたびに繰り返される露光に先立ってのアライメント動作においてもマスク1,2同士のアライメントは行われる場合があり、これは、メインコントローラ6による自動制御となっている。また、マスク交換時のマスク1,2同士のアライメントはマニュアル作業であるように説明したが、メインコントローラ6による自動制御でこれを行うことも可能である。
【0068】
尚、上述した実施形態において、搬送系3はロールツーロールで基板Sを搬送するものであったが、送り出し側のみがロール式である構成が採用されることもあり得る。即ち、露光後の基板Sを所定の位置で切断してその後の処理を行うプロセスに本願発明の両面露光装置が採用されることもあり得る。
尚、搬送系3としては、基板Sの送り方向が上下方向の場合もある。この場合は、垂直な姿勢の基板Sの両面にマスクを通して露光を行うことになり、左右に露光ユニット4が配置される。
【0069】
また、上記実施形態において、基板Sのアライメントマークはアライメント用開口Smであったが、必ずしも開口である必要はない。基板Sにおいて目標露光領域Rの外側に透明な領域があり、その領域に例えば円周状のマークを形成してアライメントマークとしても良い。また、基板Sの縁から切り欠いた形状をアライメントマークとして形成しても良い。尚、基板Sのアライメントマークの形状としては、方形や三角形等の他の形状であっても良い。
【0070】
第一マスクマーク11、第二マスクマーク21についても、円周状や円形以外の形状が採用されることがある。例えば、一方が円形で他方が十字状でも良い。尚、第一マスクマーク11が第二マスクマーク21の内側に入り込んだ状態でアライメントがされる場合もある。この点は、第一補助マスクマーク12、第二補助マスクマーク22についても同様である。
尚、二つの第一マスクマーク11の基板幅方向の離間距離や二つの第二マスクマーク21の離間距離が、基板Sの幅Swに一致している場合もある。例えば、基板Sのアライメントマークが基板Sの両側縁に設けられていたり、両側縁に設けた切り欠きであったりした場合、二つの第一マスクマーク11の基板幅方向の離間距離が基板Sの幅に一致し、二つの第二マスクマーク21の基板幅方向の離間距離が基板Sの幅に一致する場合がある。
【0071】
さらに、カメラ8に対して基板Sよりも近い側のマスクマーク(上記の例では第一マスクマーク11)は基板Sに遮られることはないので、アライメント用開口Smより大きくても良い。但し、基板Sとマスクとのコントラストが小さい場合には画像データの処理が難しくなる問題がある。アライメント用開口Sm内に一対のマスクマーク11,21が位置した状態でアライメントがされる構成では、基板Sとマスクマーク11,21とのコントラストが問題となることはなく、この点で好適である。
【0072】
尚、上記実施形態では、一つのマスク1,2における補助マスクマーク12,22の数が2個であったが、3個又はそれ以上であっても良く、1個の場合もあり得る。例えば、マスクステージ10,20がマスク1,2をZ方向の軸周りのずれのない状態で保持できる構造であれば、各マスク1,2で1個ずつのアライメントマークで位置合わせすれば足り、そのような構成が採用されることもある。
また、マスク交換方法の実施形態の説明において、両方のマスク1,2を交換するとして説明したが、一方のマスク1,2のみを交換する場合もある。この場合でも、交換後のマスク1,2同士のアライメントは必要になり、上記補助マスクマーク12,22を有する構成は、アライメントの簡便化に貢献する。
【0073】
上記実施形態の装置は、コンタクト方式で露光を行うものであったが、上記アライメントの構成は、プロキシミティ方式や投影方式の露光であっても同様に効果を発揮するので、それらの方式が採用されることもあり得る。
尚、プロキシミティ方式や投影露光方式の場合、一対のマスクを基板に密着させることは不要であるので、マスクをZ方向に移動させる機構が設けられない場合もある。
【符号の説明】
【0074】
1 第一のマスク
11 第一マスクマーク
12 第一補助マスクマーク
2 第二のマスク
21 第二マスクマーク
22 第二補助マスクマーク
3 搬送系
4 露光ユニット
41 光源
42 光学系
5 マスク移動機構
6 メインコントローラ
61 記憶部
7 メインシーケンスプログラム
71 開口有無判定プログラム
72 開口検索プログラム
73 開口欠け判定プログラム
74 開口欠け解消プログラム
75 マーク隠れ判定プログラム
76 仮アライメントプログラム
77 マーク欠け判定プログラム
78 マーク欠け解消プログラム
79 本アライメントプログラム
8 カメラ
81 カメラ移動機構
S 基板
Sm アライメント用開口
図1
図2
図3
図4