(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】洗濯機の注水ケース、及び洗濯機
(51)【国際特許分類】
D06F 39/02 20060101AFI20230801BHJP
D06F 39/08 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
D06F39/02 Z
D06F39/08 301A
(21)【出願番号】P 2018082244
(22)【出願日】2018-04-23
【審査請求日】2020-12-10
【審判番号】
【審判請求日】2022-04-01
(73)【特許権者】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】長井 智
(72)【発明者】
【氏名】根岸 昭博
【合議体】
【審判長】窪田 治彦
【審判官】佐々木 芳枝
【審判官】長馬 望
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-43033(JP,A)
【文献】特開2017-32001(JP,A)
【文献】特開平5-137888(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 1/00 - 58/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗濯剤を収容する洗濯剤収容部と、
前記洗濯剤収容部を収容する収容空間を内部に有する注水ケース本体と、
前記注水ケース本体の内部にあって前記収容空間の上流側に設けられ、前記注水ケース本体の外部から供給された水を通してその水を前記収容空間内の前記洗濯剤収容部へ流す流路と、
前記流路の断面における中心方向へ向かって突出した棒状の衝突部を有して前記注水ケース本体と一体に設けられ、水の通過可能な面積を局所的に縮小することにより前記流路から流出する水に微細気泡を含ませて微細気泡水を生成する微細気泡発生部と、
前記微細気泡発生部の直後に、前記微細気泡発生部から吐出された微細気泡水を受けてその微細気泡水を一時的に滞留させた後に
前記洗濯剤収容部へ流す受け部と、
を備え、
前記受け部の容積は、前記微細気泡発生部から吐出された微細気泡水が常時満たされる程度に小さい容積に設定されている、
洗濯機の注水ケース。
【請求項2】
前記微細気泡発生部は、前記流路の入口部に設けられている、
請求項1に記載の洗濯機の注水ケース。
【請求項3】
前記微細気泡発生部は、前記流路の出口部に設けられている、
請求項1に記載の洗濯機の注水ケース。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の洗濯機の注水ケースを備える洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、洗濯機の注水ケース、及び洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マイクロバブルやナノバブルと称される直径が数十nm~数μmサイズの微細気泡が注目されてきており、多数の微細気泡を含んだ微細気泡水を洗濯機に用いることが考えられている。しかしながら従来構成では、微細気泡を発生させるために、大掛かりな装置を用いたり複雑な形状の部品を用いたりしていた。そして従来、これらの装置や部品は、洗濯機が本来備える構成とは別部品で構成されていた。そのため、例えば洗濯機の組立工程では、微細気泡を発生させるため装置や部品を取り付ける作業が新たに発生し、これにより洗濯機の組立等に手間がかかり作業性が低下していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、微細気泡を発生させる機能を備えたものにおいて組立作業性を向上させることができる洗濯機の注水ケース及びその注水ケースを備えた洗濯機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の洗濯機の注水ケースは、洗濯剤を収容する洗濯剤収容部と、前記洗濯剤収容部を収容する収容空間を内部に有する注水ケース本体と、前記注水ケース本体の内部にあって前記収容空間の上流側に設けられ、前記注水ケース本体の外部から供給された水を通してその水を前記収容空間内の前記洗濯剤収容部へ流す流路と、前記流路の断面における中心方向へ向かって突出した棒状の衝突部を有して前記注水ケース本体と一体に設けられ、水の通過可能な面積を局所的に縮小することにより前記流路から流出する水に微細気泡を含ませて微細気泡水を生成する微細気泡発生部と、前記微細気泡発生部の直後に、前記微細気泡発生部から吐出された微細気泡水を受けてその微細気泡水を一時的に滞留させた後に前記洗濯剤収容部へ流す受け部と、を備えている。前記受け部の容積は、前記微細気泡発生部から吐出された微細気泡水が常時満たされる程度に小さい容積に設定されている。
【0006】
また、実施形態の洗濯機は、上記の注水ケースを備えている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態による注水ケースを備えた洗濯機の概略構成の一例を示す断面図
【
図2】第1実施形態による注水ケースの概略構成の一例を示す断面図
【
図3】第1実施形態について、微細気泡発生部の概略構成の一例を示す断面図
【
図4】第1実施形態について、
図3の矢印X3方向から見た衝突部を示す図
【
図5】第2実施形態による注水ケースの概略構成の一例を示す断面図
【
図6】他の実施形態について、微細気泡発生部の概略構成の一例を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、複数の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各実施形態で実質的に同一の要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0009】
(第1実施形態)
以下では、第1実施形態について
図1~
図4を参照して説明する。
図1に示す洗濯機10は、外箱11、トップカバー12、水槽13、回転槽14、パルセータ15、及びモータ16を備えている。なお、洗濯機10の設置面側つまり鉛直下側を洗濯機10の下側とし、設置面とは反対側つまり鉛直上側を洗濯機10の上側とする。また、
図1の紙面左右方向を、洗濯機10の左右方向とする。洗濯機10は、回転槽14の回転軸が鉛直方向を向いたいわゆる縦軸型の洗濯機である。なお、洗濯機は、縦軸型に限られず、回転槽の回転軸が水平又は後方へ向かって下降傾斜した横軸型いわゆるドラム式洗濯機であっても良い。
【0010】
外箱11は、例えば鋼板によって全体として矩形箱状に構成されている。トップカバー12は、例えば合成樹脂製であって、外箱11の上部に設けられている。水槽13及び回転槽14は、洗濯対象となる衣類を収容する洗濯槽及び脱水槽として機能する。水槽13は、外箱11内に設けられている。水槽13及び回転槽14は、上面が開口した容器状に構成されている。回転槽14は、複数の小孔141を有しており、この小孔141を通して、回転槽14と水槽13との間で水が行き来する。また、水槽13の底部には、排水口131が形成されている。水槽13内の水は、排水口131から流出し、排水弁132を介して外部に排水される。
【0011】
モータ16は、図示しないクラッチ機構を介して回転槽14及びパルセータ15に接続されている。図示しないクラッチ機構は、モータ16の回転を回転槽14及びパルセータ15に選択的に伝達する。モータ16及び図示しないクラッチ機構は、洗い時及びすすぎ時には、回転槽14の回転を停止させた状態でモータ16の駆動力をパルセータ15に伝達してパルセータ15を低速で直接正逆回転駆動する。一方、モータ16及び図示しないクラッチ機構は、脱水時等にはモータ16の駆動力を回転槽14に伝達して、回転槽14及びパルセータ15を一方向に高速で回転駆動させる。
【0012】
洗濯機10は、注水装置20を備えている。注水装置20は、外箱11の上部にあってトップカバー12の内部に設けられている。注水装置20は、洗濯剤を内部に収容可能に構成されており、水道水や風呂水等、外部から供給された水を受けて洗濯剤を水槽13内に流し落とす機能を有する。なお、本実施形態において、洗濯剤とは、例えば粉末洗剤や液体洗剤等の洗剤や、柔軟剤や香り付け剤等の仕上げ剤を含む概念である。
【0013】
注水装置20は、給水ホース接続口21、給水弁22、23、及び注水ケース30を有している。給水ホース接続口21は、図示しないホースを介して水道の蛇口等の給水源に接続される。給水ホース接続口21の下流側は、給水弁22、23を介して注水ケース30に接続されている。本実施形態の場合、
図2にも示すように、給水ホース接続口21の下流側は2つに分岐している。そして、給水ホース接続口21から分岐した一方は給水弁22を介して注水ケース30に接続されており、他方は給水弁23を介して注水ケース30に接続されている。
【0014】
給水弁22、23は、電磁的に開閉動作可能な液体用の開閉弁である。給水弁22、23の流入側は給水ホース接続口21に接続され、吐出側は注水ケース30に接続されている。本実施形態では、給水弁22を洗剤用給水弁22と称し、給水弁23を仕上げ剤用給水弁23と称する。
【0015】
注水ケース30は、
図1に示すように、トップカバー12の内部にあって水槽13及び回転槽14の上方に設けられている。注水ケース30は、
図2に示すように、カバー部材31と、複数この場合3つの洗濯剤収容部32、33、34と、注水ケース本体40と、を有している。カバー部材31は、板状に形成されており、注水ケース本体40の上面側に設けられて、注水ケース本体40の上部を覆っている。
【0016】
各洗濯剤収容部32、33、34は、
図2に示すように、例えば上面側が開口した容器状に形成されており、注水ケース本体40に対して出し入れ可能に構成されている。3つの洗濯剤収容部32、33、34は、それぞれ粉末洗剤と、液体洗剤と、柔軟仕上げ剤と、を収容するものである。
【0017】
本実施形態の場合、洗濯剤収容部32は、洗濯剤として粉末洗剤を収容するものである。また、洗濯剤収容部33は、洗濯剤として液体洗剤を収容するものである。そして、洗濯剤収容部33は、洗濯剤として液状の柔軟仕上げ剤を収容するものである。以下の説明において、各洗濯剤収容部32、33、34を区別する場合は、粉末洗剤を収容する洗濯剤収容部32を粉末洗剤収容部32と称し、液体洗剤を収容する洗濯剤収容部32を液体洗剤収容部33と称し、仕上げ剤を収容する洗濯剤収容部33を仕上げ剤収容部34と称する。
【0018】
粉末洗剤収容部32は、粉末洗剤流出部321を有している。粉末洗剤流出部321は、粉末洗剤収容部32の底部を貫いた穴状に形成されており、粉末洗剤収容部32の内部と外部とを連通している。液体洗剤収容部33は、液体洗剤流出部331を有している。液体洗剤流出部331は、液体洗剤収容部33の底部に設けられたサイフォン構造であり、液体洗剤収容部33の内部と外部とを連通している。仕上げ剤収容部34は、仕上げ剤流出部341を有している。仕上げ剤流出部341は、液体洗剤流出部331と同様に、仕上げ剤収容部34の底部に設けられたサイフォン構造であり、仕上げ剤収容部34の内部と外部とを連通している。
【0019】
注水ケース本体40は、注水口41、仕切り部42、収容空間43、流路44、45、流路出口46、47、及び流路入口48、49を有している。注水口41は、注水ケース本体40の内部と外部とを連通している。この場合、注水口41は、収容空間43と、注水ケース本体40の外部とを連通している。注水ケース本体40内に流入した水は、注水口41から流出して水槽13及び回転槽14内へ注水される。
【0020】
仕切り部42は、板状に形成されており、注水ケース本体40内を下部側の収容空間43と上部側の流路44とに仕切っている。収容空間43は、注水ケース本体40内における仕切り部42の下方側の空間である。各洗濯剤収容部32、33、34は、収容空間43内に出し入れ可能に収容されている。
【0021】
流路44、45は、注水ケース本体40の内部であって収容空間43の上流側、この場合、収容空間43の上方に設けられている。流路44、45は、注水ケース30の外部から供給された水を通してその水を収容空間43内に収容されている各洗濯剤収容部32、33、34へ流すための経路である。本実施形態の場合、注水ケース本体40は、2つの流路44、45を有している。
【0022】
2つの流路44、45のうち一方の流路44は、粉末洗剤収容部32及び液体洗剤収容部33へ水を供給するための経路であり、本実施形態では洗剤用流路44と称する。また、2つの流路44、45のうち他方の流路45は、仕上げ剤収容部34へ水を供給するための経路であり、本実施形態では仕上げ剤用流路45と称する。
【0023】
各流路44、45は、いずれも注水ケース本体40にあって、上方が開放された溝状に形成されている。各流路44、45の溝状の開放側すなわち上側は、カバー部材31によって覆われている。これにより、各流路44、45において、それぞれ流路出口46、47及び流路入口48、49以外の部分は水密に密閉された空間となっている。
【0024】
流路出口46、47は、それぞれ各流路44、45の出口部を構成するもので、各流路44、45についてそれぞれ1つ以上設けられている。流路出口46は、洗剤用流路44に対応して設けられており、洗剤用流路44の出口部を構成する。また、流路出口47は、仕上げ剤用流路45に対応して設けられており、仕上げ剤用流路45の出口部を構成する。本実施形態では、洗剤用流路44に設けられた流路出口46を洗剤用流路出口46と称し、仕上げ剤用流路45に設けられた流路出口47を仕上げ剤用流路出口47と称する。
【0025】
各流路出口46、47は、仕切り部42を貫いて穴状に形成されている。本実施形態の場合、注水ケース本体40は、洗剤用流路出口46として、2つの洗剤用流路出口461、462を有している。この場合、2つの洗剤用流路出口461、462のうち一方の洗剤用流路出口461は、粉末洗剤収容部32に対応しており、粉末洗剤収容部32の上部に位置している。また、2つの洗剤用流路出口461、462のうち他方の洗剤用流路出口462は、液体洗剤収容部33に対応しており、液体洗剤収容部33の上部に位置している。
【0026】
本実施形態では、2つの洗剤用流路出口461、462のうち、粉末洗剤収容部32に対応したものを粉末洗剤用流路出口461と称し、液体洗剤収容部33に対応したものを液体洗剤用流路出口462と称する。洗剤用流路44を通った水の一部は、粉末洗剤用流路出口461から収容空間43内に流出し、粉末洗剤用流路出口461の下方に位置する粉末洗剤収容部32内に注がれる。このとき、粉末洗剤収容部32内に粉末洗剤が収容されていれば、その粉末洗剤は、粉末洗剤収容部32内に注がれた水に押し流されて、粉末洗剤流出部321から粉末洗剤収容部32の外部へ流出する。そして、粉末洗剤流出部321から流出した粉末洗剤は、水とともに注水口41から水槽13及び回転槽14内へ流し落とされる。
【0027】
また、洗剤用流路44を通った水の一部は、液体洗剤用流路出口462から収容空間43内に流出し、液体洗剤用流路出口462の下方に位置する液体洗剤収容部33内に注がれる。そして、液体洗剤収容部33に一定量の水が溜まると、その水は、液体洗剤流出部331のサイフォン構造によって液体洗剤流出部331から液体洗剤収容部33外に流れ落ち、その後、注水口41から水槽13及び回転槽14内へ注水される。このとき、液体洗剤収容部33内に液体洗剤が収容されていれば、その液体洗剤は、液体洗剤流出部331から流れ出る水に溶かされて、注水口41から水槽13及び回転槽14内へ流し落とされる。
【0028】
仕上げ剤流路出口47は、仕上げ剤収容部34に対応しており、仕上げ剤収容部34の上部に位置している。仕上げ剤用流路45を通った水は、仕上げ剤流路出口47から収容空間43内に流出し、仕上げ剤流路出口47の下方に位置する仕上げ剤収容部34内に注がれる。そして、仕上げ剤収容部34に一定量の水が溜まると、その水は、仕上げ剤流出部341のサイフォン構造によって仕上げ剤流出部341から仕上げ剤収容部34外に流れ落ち、その後、注水口41から水槽13及び回転槽14内へ注水される。このとき、仕上げ剤収容部34内に液状の仕上げ剤が収容されていれば、その仕上げ剤は、仕上げ剤流出部341から流れ出る水に溶かされて、注水口41から水槽13及び回転槽14内へ流し落とされる。
【0029】
流路入口48、49は、それぞれ各流路44、45の入口部を構成するもので、各流路44、45についてそれぞれ1つずつ設けられている。すなわち、流路入口48は、洗剤用流路44に対応して洗剤用流路44の上流側端部に設けられており、洗剤用流路44の入口部を構成する。流路入口49は、仕上げ剤用流路45に対応して仕上げ剤用流路45の上流側端部に設けられており、仕上げ剤用流路45の入口部を構成する。この場合、洗剤用流路44に対応する流路入口48を洗剤用流路入口48と称し、仕上げ剤用流路45に対応する流路入口49を仕上げ剤用流路入口49と称する。
【0030】
流路入口48、49は、
図3にも示すように、それぞれ接続部481、491及び微細気泡発生部50、50を有している。接続部481、491は、注水ケース本体40の外部から各流路44、45内へ連通するように円筒形状に形成されている。給水弁22、23の吐出側の先端部221、231は、接続部481、491に挿入可能となっている。これにより、給水弁22、23の吐出側の先端部221、231は、接続部481、491に着脱可能に接続される。
【0031】
この場合、給水弁22、23の吐出側の先端部221、231は、それぞれシール部材222、232を介して、接続部481、491と微細気泡発生部50の境界部分、つまり接続部481、491の底部に係止される。シール部材222、232は、例えばゴム等の弾性部材で構成されたOリングであり、吐出部221、231の先端部の外周面部分に設けられている。これにより、各吐出部221、231と接続部481、491とは、シール部材222、232によって水密状態で相互に接続されている。
【0032】
微細気泡発生部50は、注水ケース本体40と一体に設けられおり、水の通過可能な面積を局所的に縮小することにより流路44、45から流出する水に微細気泡を含ませて微細気泡水を生成するためのものである。微細気泡発生部50は、流路44、45の始点から終点に至るいずれかの箇所、すなわち流路44、45の流路入口48、49から流路出口46、47に至るいずれかの箇所に設けられている。本実施形態の場合、微細気泡発生部50は、各流路44、45の流路入口48、49に設けられている。
【0033】
なお、本実施形態において微細気泡水とは、微細気泡発生部50を通過することによって、微細気泡発生部50を通過する以前に比べてナノオーダーの微細気泡いわゆるウルトラファインバブルを多く含んだ水をいう。すなわち、本実施形態において、微細気泡水とは、何ら処理を行っていない通常の水道水や風呂水等に比べてナノオーダーの微細気泡を多く含んだ水をいう。本実施形態の洗濯機10は、回転槽14内の洗濯物を洗う洗濯運転や、回転槽14内の洗濯物をすすぐすすぎ運転、又は、水槽13及び回転槽14を洗浄する槽洗浄運転等を行う際に、微細気泡発生部50を通って生成された微細気泡水を利用する。
【0034】
ここで、一般に微細気泡は、その気泡の粒子径によって次のように分類されている。例えば、粒子径が数μmから50μm程度つまりマイクロオーダーの気泡は、マイクロバブル又はファインバブルと称されている。これに対し、粒子径が数百nm~数十nm以下つまりナノオーダーの気泡は、ナノバブル又はウルトラファインバブルと称されている。
【0035】
気泡の粒子径が数百nm~数十nm以下になると、光の波長よりも小さくなるため視認することができなくなり、液体は透明になる。そして、ナノオーダーの微細気泡は、マイクロオーダー以上の気泡に比べて、総界面面積が大きいこと、浮上速度が遅いこと、内部圧力が大きいこと等の特性を有している。例えば、粒子径がマイクロオーダーの気泡は、その浮力によって液体中を急速に上昇し、液体表面で破裂して消滅するため、液体中の滞在時間が比較的短い。一方、粒子径がナノオーダーの微細気泡は、浮力が小さいため液体中での滞在時間が長い。
【0036】
粒子径がナノオーダーの微細気泡を含む微細気泡水は、界面活性剤等を含む洗剤を用いずに、洗濯運転や、水槽13及び回転槽14の洗浄運転を行った場合でも、水道水に比べてある程度の洗浄性能の向上が見込まれる。しかしながら、粒子径がナノオーダーの微細気泡いわゆるウルトラファインバブルを、界面活性剤が溶けた洗浄液中に混ぜることで、微細気泡を含まない通常の洗浄液で洗浄を行った場合に比べて更に効率良く洗浄性能を向上させることができる。
【0037】
本実施形態において、微細気泡発生部50の直径及び全長は、数mm~数十mm程度、具体的には直径が最大約15mmで長さが約10mmに設定されている。微細気泡発生部50は、
図3に示すように、絞り部51、ストレート部52、及び衝突部53を有している。絞り部51及びストレート部52は、微細気泡発生部50の長手方向へ向かって貫いた穴であり、微細気泡発生部50の流路を構成する。
【0038】
絞り部51は、微細気泡発生部50の流入側つまり上流側に設けられている。絞り部51は、微細気泡発生部50の長手方向の上流側端部から途中部分にかけて流路の断面積つまり内径が連続的に徐々に減少するようないわゆる円錐形のテーパ管状に形成されている。ストレート部52は、絞り部51の下流側に設けられている。ストレート部52は、内径が変化しない、すなわち流路の断面積つまり液体の通過可能な面積が変化しない円筒形、いわゆるストレート管状に形成されている。
【0039】
衝突部53は、ストレート部52の上流端から下流端に至る部分のうち任意の箇所に設けられている。本実施形態の場合、衝突部53は、ストレート部52の下流側の端部に設けられている。衝突部53は、微細気泡発生部50における水の通過可能な断面積を局所的に縮小することで、微細気泡発生部50を通過する液体中に微細気泡を発生させることができる。すなわち、衝突部53は、ストレート部52の断面積を局所的に縮小することで、ストレート部52を通過する液体中に微細気泡を発生させることができる。
【0040】
本実施形態の場合、衝突部53は、
図4に示すように、例えば先端が尖った4本の棒状の部分で構成され、ストレート部52の内周面からこのストレート部52の断面における中心方向へ向かって突出している。4本の衝突部53は、ストレート部52の断面の周方向に向かって相互に等間隔に離間した状態で配置されている。この場合、各衝突部53の下流側の面は、平坦面に形成されている。すなわち、各衝突部53の下流側の面は、流路44、45を構成する面と同一面に形成されている。
【0041】
各給水弁22、23が開放されて、微細気泡発生部50の上流側に水が流入すると、円錐テーパ形状に縮小するように形成された絞り部51において流路断面積が絞られることによって、流体力学のいわゆるベンチュリ効果により流速が高められる。そして、その高速流がストレート部52を通過する際に衝突部53に衝突することで圧力が急激に低下される。これにより、水中に溶存している空気を微細な気泡として多量に析出させることができ、各流路44、45に微細気泡水を供給する。
【0042】
このように、微細気泡発生部50は、外部から気体の供給を能動的つまり積極的に得ることなく、微細気泡発生部50を通過する水に微細気泡を含ませて微細気泡水を生成することができる。そして、各微細気泡発生部50で生成された微細気泡水は、それぞれ流路44、45を通って、それぞれ洗濯剤収容部32、33、34に供給された後、洗濯剤収容部32、33、34に収容された洗濯剤と共に注水口41から水槽13及び回転槽14内へ注がれる。
【0043】
この場合、微細気泡発生部50は、通常の水圧つまり水道の圧力以外には、微細気泡を発生させるための専用のポンプ等の駆動源を必要としない。なお、例えば微細気泡発生部50は、絞り部51又はストレート部52の内部と外部とを連通する穴を有し、微細気泡発生部50内を流れる水に外部の空気を取り込むようにしても良い。これによれば、水中に溶存する空気の量を増大させることができ、その結果、析出される微細気泡の量も増大させることができる。
【0044】
また、
図2に示すように、流路44、45は、それぞれ受け部441、451を有している。受け部441、451は、微細気泡発生部50から吐出された微細気泡水を受けてその微細気泡水を一時的に滞留させた後に下流側へ流す部分である。本実施形態の場合、受け部441、451は、各流路44、45の上流側の空間の一部であって、微細気泡発生部50の直後に設けられている。すなわち、受け部441、451を構成する周囲の壁面は、微細気泡発生部50における衝突部53の下流側の面を含んでいる。この場合、受け部441の容積は、微細気泡発生部50から吐出された微細気泡水が常時満たされる程度に小さい容積に設定されている。これにより、微細気泡発生部50から吐出された微細気泡水に含まれる微細気泡の量を増大させることができる。
【0045】
この構成において、洗濯機10は、例えば洗濯物を洗う洗い工程や、複数回のすすぎ工程のうちの最後となる最終すすぎ工程以外のすすぎ工程時における注水、すなわち、仕上げ剤を用いない注水では、仕上げ剤用給水弁23を開かずに洗剤用給水弁22を開く。これにより、洗剤用流路44を通った微細気泡水が、洗濯剤収容部32、33を経て注水口41から水槽13及び回転槽14内に注水される。
【0046】
一方、洗濯機10は、例えば仕上げ剤を用いる最終すすぎ工程時における注水では、洗剤用給水弁22と共に仕上げ剤用給水弁23も開く。これにより、洗剤用流路44を通った微細気泡水が、洗濯剤収容部32、33を経て注水口41から水槽13及び回転槽14内に注水されると共に、仕上げ剤用流路45を通った微細気泡水が、仕上げ剤収容部34を経て注水口41から水槽13及び回転槽14内に注水される。
【0047】
以上説明した実施形態によれば、洗濯機10の注水ケース30は、洗濯剤を収容する洗濯剤収容部32、33、34と、注水ケース本体40と、流路44、45と、微細気泡発生部50、50と、を備える。注水ケース本体40は、洗濯剤収容部32、33、34を収容する収容空間43を内部に有している。流路44、45は、注水ケース本体40の内部にあって収容空間43の上流側に設けられている。流路44、45は、注水ケース本体40の外部から供給された水を通してその水を収容空間43内の洗濯剤収容部32、33、34へ流す。微細気泡発生部50は、注水ケース本体40と一体に設けられている。微細気泡発生部50は、水の通過可能な面積を局所的に縮小することにより流路44、45から流出する水に微細気泡を含ませて微細気泡水を生成することができる。
【0048】
これによれば、微細気泡を発生させるために、大掛かりな装置や複雑な形状で細かい部品等を用いる必要がなく、従来と同様の注水ケース30を組み立てる工程を行うことで、微細気泡水を発生させる機能を得ることができる。そのため、注水ケース30や洗濯機10の組立工程において、微細気泡を発生させるため装置や部品を取り付けるための新たな作業を発生させずに、洗濯機10に微細気泡水を用いることができる。したがって、微細気泡を発生させる機能を備えた注水ケース30及び洗濯機10において、組立作業性を向上させることができる。
【0049】
また、微細気泡発生部50は、流路44、45の入口部となる流路入口48、49に設けられている。すなわち、本実施形態によれば、微細気泡発生部50、50は、水圧が安定し易い箇所である、給水弁22、23から吐出された直後の流路入口48、49に設けられている。したがって、本実施形態によれば、微細気泡発生部50、50には、安定した水圧の水が供給されるため、微細気泡水を安定して生成することができる。
【0050】
また、注水ケース30は、受け部441、451を注水ケース本体40と一体に有している。受け部441、451は、微細気泡発生部50、50から吐出された微細気泡水を受けてその微細気泡水を一時的に滞留させた後に下流側へ流す機能を有する。これによれば、微細気泡発生部50、50から流路44、45内に供給する微細気泡水に含まれる微細気泡の数を増大させて、微細気泡水の洗浄効果等をより高いものとすることができる。
【0051】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について
図5を参照して説明する。本実施形態において、微細気泡発生部50、50は、流路入口48、49ではなく、流路44、45の出口部となる流路出口46、47に設けられている。この場合、洗剤用流路44に対応した微細気泡発生部50は、粉末洗剤用流路出口461と液体洗剤用流路出口462とのうち、少なくとも液体洗剤用流路出口462に設けられている。なお、微細気泡発生部50は、粉末洗剤用流路出口461に設けられていても良い。
【0052】
また、注水ケース本体40は、上記第1実施形態の受け部441、451に換えて、受け部442、452を有している。受け部442、452は、第1実施形態の受け部441、451と同様に、各微細気泡発生部50、50から吐出された微細気泡水を受けてその微細気泡水を一時的に滞留させた後に下流側へ流す部分である。
【0053】
本実施形態の場合、受け部442、452は、仕切り部42から下方に延び出て仕切り部42に一体に設けられた壁部443、453に囲まれて構成されている。流路44、45を通って各微細気泡発生部50、50から吐出された微細気泡水は、受け部442、452で受けられて一旦滞留した後、受け部442、452の出口444、454から液体の洗濯剤を収容する洗濯剤収容部33、34に注ぎ込まれる。そして、洗濯剤収容部33、34に注ぎ込まれた微細気泡水は、洗濯剤収容部33、34内に収容されている液体の洗濯剤とともに注水口41から水槽13及び回転槽14内へ注水される。
【0054】
以上説明した第2実施形態によれば、上記第1実施形態と同様の作用効果が得られる。ここで、各微細気泡発生部50、50から吐出された微細気泡水は、勢いが良いため、洗濯剤収容部33、34に各微細気泡発生部50、50から吐出された微細気泡水を直接注ぐと、その微細気泡水によって過剰な泡が生じてしまい、洗濯剤収容部33、34に収容されている洗濯剤を適切に水槽13内に流し落とすことが出来なくなる。
【0055】
これに対し、本実施形態において、受け部442、452は、それぞれ収容空間43内にあって微細気泡発生器50の直後に設けられている。すなわち、本実施形態の受け部442、452は、それぞれ微細気泡発生器50と液体の洗濯剤を収容する洗濯剤収容部33、34との間に設けられている。これによれば、流路44、45を通って各微細気泡発生部50、50から吐出された微細気泡水は、受け部442、452で受けられて一旦滞留した後に洗濯剤収容部33、34に注ぎ込まれる。したがって、本実施形態によれば、各微細気泡発生部50、50から勢い良く吐出された微細気泡水が勢いの良いまま洗濯剤収容部33、34に直接注ぎ込まれることがない。そのため、洗濯剤収容部33、34内で過剰な泡が発生することを抑制でき、その結果、洗濯剤収容部33、34内の洗剤を適切に水槽13内に流し落とすことができる。
【0056】
更に本実施形態によれば、微細気泡発生部50、50は、流路44、45の出口部となる流路出口462、47に設けられている。本実施形態の場合、洗剤用流路44に対応した微細気泡発生部50は、粉末洗剤用流路出口461と液体洗剤用流路出口462とのうち、少なくとも液体洗剤用流路出口462に設けられている。
【0057】
これによれば、微細気泡発生部50を通過して生成された微細気泡水を、その生成後の比較的短い期間で洗濯剤収容部33、34内の洗剤と接触させて混ぜることができる。すなわち、微細気泡水中の微細気泡の数は、その発生直後から時間経過とともに減少するが、本実施形態によれば、微細気泡の数の減少を極力抑えた状態で、微細気泡と洗濯剤とを接触させて混ぜることができる。その結果、微細気泡による洗濯剤性能の向上効果を十分に引き出すことができる。
【0058】
ここで、微細気泡発生部50は、水が通過する面積を局所的に縮小するものである。そのため、微細気泡発生部50を、全ての流路出口461、462、47に設けると、注水口41から吐出される水量が減少し、その結果、例えば洗濯運転時における注水時間が増大する可能性がある。
【0059】
この場合、液体の洗濯剤すなわち液体洗剤や柔軟仕上げ剤等は、液状であるため、微細気泡水に接触する前に通常の水道水によって水槽13及び回転槽14内に流し落とされてしまうと、微細気泡水と接触して混合する前に衣類に浸み込んでしまう。すると、液体の洗濯剤と微細気泡水とが接触し難くなり、微細気泡水の効果が得られ難い。したがって、液体の洗濯剤は、水槽13及び回転槽14に投入される前に、微細気泡水と混ぜ合わせることが望ましい。
【0060】
一方、粉末洗剤は、単に水と接触しただけでは溶け難く、水槽13内に投入された後、回転槽14及びパルセータ15が回転されて撹拌されることによって、水槽13内の水に溶け込む。そのため、粉末洗剤は、単に水槽13内に投入されただけでは衣類にしみ込み難い。したがって、粉末洗剤を水槽13及び回転槽14内に投入した後に、その粉末洗剤と微細気泡水とを接触させても、十分に微細気泡水の効果を得ることができる。
【0061】
そこで、本実施形態において、微細気泡発生部50は、各流路出口461、462、47のうち、液体の洗濯剤を収容する洗濯剤収容部331、341に対応した流路出口462、47に設けられており、粉末洗剤を収容する洗濯剤収容部332に対応した流路出口461には設けられていない。これによれば、注水口41から吐出される水量すなわち水槽13への単位時間当たりの注水量の低下を抑制しつつ、各種の洗濯剤と微細気泡水とを適切な時期に接触させて微細気泡水の効果を効果的に引き出すことができる。
【0062】
(他の実施形態)
なお、上記各実施形態において、微細気泡発生部50の衝突部53は、例えば
図6に示すように、微細気泡発生部50の絞り部51又はストレート部52の流れ方向の途中部分、この場合、ストレート部52の流れ方向の途中部分に設けられていても良い。これによっても、上記各実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0063】
以上、本発明の複数の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0064】
図面中、10は洗濯機、30は注水ケース、32は粉末洗剤収容部(洗濯剤収容部)、33は液体洗剤収容部(洗濯剤収容部)、34は仕上げ剤収容部(洗濯剤収容部)、40は注水ケース本体、43は収容空間、44は洗剤用流路(流路)、441は受け部、45は仕上げ剤用流路(流路)、451は受け部、46は洗剤用流路出口(流路の出口部)、461は粉末洗剤用流路出口(流路の出口部)、462は液体洗剤用流路出口(流路の出口部)、47は仕上げ剤用流路出口(流路の出口部)、48は洗剤用流路入口(流路の入口部)、49は仕上げ剤用流路入口(流路の入口部)、50は微細気泡発生部、を示す。