(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】空気調和システム
(51)【国際特許分類】
F24F 11/52 20180101AFI20230801BHJP
F24F 11/56 20180101ALI20230801BHJP
F24F 1/0043 20190101ALI20230801BHJP
【FI】
F24F11/52
F24F11/56
F24F1/0043
(21)【出願番号】P 2018178809
(22)【出願日】2018-09-25
【審査請求日】2021-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】東芝キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】野田 浩二
【審査官】嶋田 研司
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-020651(JP,A)
【文献】国際公開第2017/142026(WO,A1)
【文献】特開平05-099443(JP,A)
【文献】実開平04-050328(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/52
F24F 11/56
F24F 1/0043
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の室内機の運転を集中制御する制御装置を備えた空気調和システムであって、
前記室内機は、空調対象となるスペースに設けられている複数の柱の1面または複数の面に、1つまたは複数設けられており、
前記制御装置は、1つの柱における各面ごと、1つの柱における複数の面ごと、上下方向における室内機の設置位置ごと、あるいは冷媒系統に前記室内機をグループ分けし、グループごとに前記室内機の運転を制御するとともに、前記室内機が設けられている複数の柱または壁面を有する空調対象となるスペースを摸式化した二次元イメージ、当該スペースに設けられている柱および前記
室内機を模式的に示す複数のアイコン、各柱において前記
室内機が設けられている面と当該面に設けられている前記
室内機の数とを示すアイコン、ならびに、複数の前記室内機によって空調を制御する単位であって複数の柱によって囲まれた領域として設定される複数のゾーンを表示し、各ゾーンを空調対象とする複数の前記室内機を一括して設定可能にしたことを特徴とする空気調和システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、空気調和器、空気調和システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、比較的広い生産工場等では、建屋内に分散している作業エリアを局所的に冷暖房可能な空気調和器が設置されることがある。この種の空気調和器の中には、予め温度や湿度が調整された空気を吹き出すものもあるが、室内機側に熱交換器を設け、局所的に冷房あるいは暖房を選択できるようにしたものもある。そして、このような室内機は、生産工場等では一般的に柱をベースにして設置され、その正面側に向けて冷気あるいは暖気を供給するようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、各作業エリアでは作業内容が異なることがあり、その場合には、室内機に対する位置関係、つまりは、室内機が設置されている柱と作業者が作業する作業場所との位置関係が異なることが想定される。また、作業が進むにつれて当初の作業場所とは異なる位置で作業するようになること等も想定される。
そこで、室内機の正面からずれているスペースに対して局所的に冷暖房を行うことができる空気調和システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の空気調和システムは、複数の室内機の運転を集中制御する制御装置を備えており、室内機は、空調対象となるスペースに設けられている複数の柱の1面または複数の面に、1つまたは複数設けられており、制御装置は、1つの柱における各面ごと、1つの柱における複数の面ごと、上下方向における室内機の設置位置ごと、あるいは冷媒系統に室内機をグループ分けし、グループごとに室内機の運転を制御するとともに、室内機が設けられている複数の柱または壁面を有する空調対象となるスペースを摸式化した二次元イメージ、当該スペースに設けられている柱および室内機を模式的に示す複数のアイコン、各柱において室内機が設けられている面と当該面に設けられている室内機の数とを示すアイコン、ならびに、複数の室内機によって空調を制御する単位であって複数の柱によって囲まれた領域として設定される複数のゾーンを表示し、各ゾーンを空調対象とする複数の室内機を一括して設定可能にしたことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態による空気調和器の概略構成を模式的に示す図
【
図6】室内機と作業スペースとの位置関係を模式的に示す図その1
【
図8】室内機の他の設置態様を模式的に示す図その1
【
図10】室内機の他の設置態様を模式的に示す図その2
【
図11】室内機の他の設置態様を模式的に示す図その3
【
図12】室内機と作業スペースとの位置関係を模式的に示す図その2
【
図13】第2実施形態による室内機の他の設置態様を模式的に示す図
【
図16】第3実施形態による作業スペースの一例を模式的に示す図
【
図17】空気調和システムの概略構成を模式的に示す図
【
図18】空気調和システムの制御装置の設定画面の一例を模式的に示す図
【
図20】ゾーン毎に運転管理するための設定画面の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、複数の実施形態について説明する。なお、各実施形態において実質的に共通する部位には同一の符号を付して説明する。
【0009】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態について
図1から
図12を参照しながら説明する。
図1に示すように、本実施形態の空気調和器1は、室外機2、柱3にフレーム4を介して取り付けられている室内機5、および、室外機2と室内機5との間で冷媒が循環する経路を形成する冷媒配管6等を備えている。
【0010】
室外機2は、例えば建屋の外に設置されており、室内機5の運転目標に合わせて必要な冷媒量を必要な状態で供給する圧縮機2a、冷媒の熱交換を行う室外側熱交換器2b、およびそれらを冷却するファン2c等、冷凍サイクルを構成する各種の機器を備えている。この室外機2は、一般的な構成であるため詳細な説明は省略するが、冷房運転時には室内機5側で蒸発した冷媒を圧縮および凝縮し、暖房運転時には室内機5側で凝縮した冷媒を蒸発および圧縮することにより、冷房運転および暖房運転を可能としている。以下、冷房や暖房を行うことを、便宜的に空調を行う等とも称する。
【0011】
室内機5は、柱3の長手方向に沿った縦長の形状で形成されている。より具体的には、室内機5は、
図2に示すように、正面視において縦長のケース5aを有し、そのケース5aの正面側の概ね中央に、縦長の風向ガイド5bが設けられている。以下、柱3の長手方向を上下方向とも称し、正面視における図示左右方向をケース5aの左右方向とも称し、ケース5aの正面側を前方、ケース5aの背面側つまりはフレーム4に取り付けられる側を後方とも称して説明する。
【0012】
ケース5aは、A-A線での断面を示す平面視にて示すように、背面側に吸気口5cが形成されており、その吸気口5cにはフィルタ5dが取り付けられている。このケース5a内には、室内側熱交換器5e、横流式の送風ファン5f等が配置されている。室内側熱交換器5eは、断面が概ね半円弧状に形成されているとともに、側面視にて示すように上下方向に延びる縦長に形成されている。
送風ファン5fは、縦方向の回転軸を有して配置されており、室内熱交換器5eは、送風ファン5fよりも背面側(風上側)に配置され、送風ファン5fを回転軸周方向の半円周状に覆っている。
【0013】
この室内側熱交換器5eは、本実施形態ではいわゆるフィンチューブ型のものを採用している。ただし、室内側熱交換器5eの構成は、フィンチューブ型のものに限定されない。また、ケース5a内には、図示は省略するが、冷凍サイクルを構成するために一般的に必要とされる他の機器も配置されている。また、送風ファン5fは、室内側熱交換器5eの内周側に配置されているとともに、室内側熱交換器5eの長さと概ね同等となる縦長に形成されている。
【0014】
そして、室内機5は、吸気口5cから空気を導入し、室内側熱交換器5eにて熱交換した後、上下方向に延びている風向ガイド5bの全体から外部に冷風あるいは温風を供給する。また、室内機5に設けられている風向ガイド5bは、可動式、つまりは、送風する際の向きを変更可能となっている。
【0015】
具体的には、風向ガイド5bは、ケース5aの中央を背面側から正面側に向かって通る仮想線(CL)に対して、ケース5aの左右方向に所定の角度範囲(α)で向きを変更可能に形成されている。なお、本実施形態では風向ガイド5bの向きを例えばモータ等により自動的に変更する構成を採用しているが、手動で向きを変更可能な構成のものを採用することもできる。
【0016】
このため、室内機5は、ケース5aの正面からある程度の範囲で風向きを調整することが可能となり、例えば風向ガイド5bの向きが仮想線(CL)に対して左向きになった場合には、供給される空気も仮想線(CL)よりも左向きに送風でき、風向ガイド5bの向きが仮想線(CL)に対して右向きになった場合には、供給される空気も仮想線(CL)に対して右向きに送風することができる。つまり、室内機5は、ケース5aの正面に対して傾斜した方向、つまりは、表面が対向する向きに隣り合う柱3同士を結ぶ仮想線上からずれている位置への送風が可能となっている。
【0017】
さて、この室内機5は、
図3にも示すように、フレーム4を介して柱3に取り付けられている。このフレーム4は、幾つかの骨組み4aと室内機5が直接的に取り付けられる本実施形態では4つのパネル4bとを有しており、骨組み4aによってパネル4bを柱3の表面から所定の間隔を存した位置に固定している。このとき、パネル4bは、柱3の表面と概ね平行となるように配置されている。このとき、柱3の断面が4角矩形状であれば、パネル4bは、柱3の4面のそれぞれに配置される。
【0018】
また、フレーム4は、
図1に示すように、室内機5よりも下方側の位置に開口4cが形成されており、その開口4cには吸気フィルタ4dが設けられている。そのため、空気調和器1が運転されると、各フレーム4の開口4cから空気が吸気され、室内機5の背面の吸気口5cから室内機5内に導入されて熱交換された後、風向ガイド5bの向きに沿って外部に冷風あるいは温風が供給される。また、フレーム4の下部には、ドレン水を貯留するドレンタンク7を出し入れするための、また、ドレン水の貯留状況を視認可能とするための開口4cが設けられている。
【0019】
そして、室内機5は、その正面が柱3の表面に対して概ね垂直となる状態でパネル4bに取り付けられる。具体的には、室内機5は、
図4に4面各1台として示すように、柱3の各面に対応して1台ずつ取り付けることができる。このとき、各室内機5は、その近傍に設置される操作装置8によって個別に、あるいは、後述する第2実施形態で説明するようにグループ分けした状態で運転の開始/停止あるいは風向き等を設定することができる。ただし、後述する第3実施形態で説明する制御装置20(
図17参照)から一括して複数の室内機5の運転の開始/停止を制御することもできる。
【0020】
また、室内機5は、3面各1台として示すように柱3の3面に対応して1台ずつ取り付けることができるし、2面各1台として示すように柱3の2面に対応して1台ずつ取り付けることができるし、1面各1台として示すように柱3の1面に対応して1台ずつ取り付けることができる。ただし、柱3の1面に取り付ける室内機5の数はこれに限定されず、3台あるいは4台以上の室内機5を柱3の各面に取り付けることもできる。
【0021】
また、室内機5は、
図5に4面各2台として示すように、柱3の各面に対応して上下方向に並んで2台ずつ取り付けることができるし、3面各2台として示すように柱3の3面に対応して2台ずつ取り付けることができるし、2面各2台として示すように柱3の2面に対応して2台ずつ取り付けることができるし、1面各2台として示すように柱3の1面に対応して2台ずつ取り付けることができる。
次に、上記した構成の作用について説明する。
【0022】
本実施形態の空気調和器1は、比較的広い生産工場やオフィスのフロア等において、一部を局所的に冷暖房可能にすることを想定している。ただし、前述のように、作業エリアによっては室内機5に対する位置関係が異なることが想定され、また、作業が進むにつれて当初の作業場所とは異なる位置で作業するようになること等も想定される。
【0023】
また、大規模な生産工場の場合には柱3の間隔が広いことが想定されるため、例えば
図6に示すように、各柱3に取り付けられている室内機5の正面からずれた位置に比較的大きなスペース(S)が存在し、そのスペース(S)が作業スペースとして利用されること等が想定される。そして、各柱3は、基本的には向きが揃った状態、つまり、柱3の表面が対向あるいは平行になった状態で設置されていると考えられる。なお、
図6では、説明の簡略化のためにフレーム4の図示を省略している。
【0024】
そこで、本実施形態では、局所的に冷暖房を行うことができるとともに、室内機5に対する位置関係が異なるスペースに対しても効率的に冷暖房を行うことができるように、室内機5に設けている風向ガイド5bを可動式のものにしている。これにより、柱3の各面に設置さている室内機5の正面以外の位置、つまりは、柱3の表面に対して傾斜する方向に向けて冷気や暖気を直接的に供給することが可能となる。その結果、スペース(S)は、局所的、且つ、室内機5の正面からずれた位置であっても効率的に冷暖房が行われるようになる。
【0025】
以上説明した空気調和器1によれば、次のような効果を得ることができる。
空気調和器1は、室内の柱3にフレーム4を介して取り付けられる室内機5と、室内機5の運転目標に合わせて必要な冷媒量を必要な状態で供給するための圧縮機2a、熱交換器およびファン2cを有する室外機2と、室外機2と室内機5との間で冷媒が循環する冷媒配管6と、を備えている。そして、室内機5は、縦長の室内側熱交換器5eと縦長の送風ファン5fとを収容した縦長のケース5aを有し、ケース5aの長手方向が天地方向に沿うように設置されるとともに、柱3の表面に対して傾斜する方向への送風が可能になっている。
【0026】
これにより、例えばスペース(S)を作業スペースとして利用する場合において、作業位置が室内機5の正面以外の場所であっても、また、作業スペースごとに室内機5との位置関係が異なる場合であっても、任意且つ所望の向きに冷気や暖気を直接的に供給することが可能となる。したがって、室内機5の正面からずれているスペースに対しても局所的に冷暖房を行うことができる。
【0027】
また、室内機5は、送風の向きを変更するための風向ガイド5bを有し、風向ガイド5bの向きを調整することによって柱3の表面に対して傾斜する方向への送風が可能になっている。これにより、風向ガイド5bを自動または手動で向きを変更すればそれに応じて冷気や暖気の向きを調整することができる。また、可動式の風向ガイド5bは、工場のように室内機5の設置場所や設置向きを安易に変更することが難しい状況において特に有意となる。
【0028】
この場合、風向ガイド5bには、一般家庭に設けられる壁掛け式のいわゆるルームエアコンで実績のあるルーバー技術を採用あるいは転用することで、信頼性の確保と生産性の向上とを両立させることができる。
【0029】
ところで、室内機5の構成は、上記した実施形態で例示したもの以外にすることができる。例えば、室内機5は、
図7に示すように、ケース5aの側面側に吸気口5cを設け、ケース5a内に縦長の室内側熱交換器5e、可動式の風向ガイド5bおよび送風ファン5f等を備える構成とすることができる。
【0030】
このような構成の室内機5によっても、
図8に示すように例えば柱3の各面にそれぞれ設けることにより、柱3の表面に対して傾斜する方向への送風が可能となり、作業位置が室内機5の正面以外の場所であっても、また、作業スペースごとに室内機5との位置関係が異なる場合であっても、任意且つ所望の向きに冷気や暖気を直接的に供給することが可能となり、室内機5の正面からずれているスペースに対して局所的に冷暖房を行うことができる。また、このような側面から吸気するタイプの室内機5の場合、フレーム4には吸気用の開口4cを設ける必要は無い。また、実施形態のように背面から吸気するタイプの室内機5と混在して設置することもできる。
【0031】
また、室内機5は、
図9に示すように、ケース5aの側面側に吸気口5cを設け、ケース5a内に縦長の室内側熱交換器5e、風向ガイド5bおよび送風ファン5f等を備え、風向ガイド5bをケース5aの角部において予め正面からずれた向きに設けた構成とすることができる。つまり、室内機5は、ケース5aに対して送風口が予め傾斜した向きに設けられていることによって、柱3の表面に対して傾斜する方向への送風が可能な構成のものを採用することができる。
【0032】
このような構成の室内機5によっても、
図10に示すように例えば柱3の各面にそれぞれ設けることにより、柱3の表面に対して傾斜する方向への送風が可能となり、作業位置が室内機5の正面以外の場所であっても、また、作業スペースごとに室内機5との位置関係が異なる場合であっても、任意且つ所望の向きに冷気や暖気を直接的に供給することが可能となり、室内機5の正面からずれているスペースに対して局所的に冷暖房を行うことができる。
【0033】
この場合、風向ガイド5bを可動式とすることにより、柱3の表面に対して傾斜した向きを中心とする所定の角度範囲(α)に対して風向きを調整することができ、より的確且つ効率的に所望のスペースに対して冷暖房を行うことができる。
【0034】
ところで、ここまでは室内機5を柱3の表面に概ね平行に設置する構成を例示したが、
図11に示すように、室内機5そのものを柱3の表面に対して傾斜させて設置する構成とすることができる。この場合、フレーム4によってパネル4bが柱3の表面に対して傾斜した状態で配置することにより、つまりは、平面視において柱3の角部にパネル4bが対向するような状態とすることにより、室内機5を強固に固定することができる。
【0035】
このように室内機5そのものの向きを予め柱3の表面に対して傾斜した状態で設置することによっても、
図12に示すように、各柱3の正面からずれた位置、つまりは、柱3の対角線上に存在するスペース(S)に対して局所的に冷暖房を行うことができる。また、可動式の風向ガイド5bを設ければ、任意且つ所望の向きに冷気や暖気を直接的に供給することも可能となる。
【0036】
ただし、実施形態では断面が四角形の柱3を例示したが、断面が円形の柱3であっても、フレーム4の骨組み4aを変更することにより柱3の周囲に例えば4面のパネル4bを設置し、そのパネル4bに室内機5を取り付けることで、実施形態と同様にパネル4bに対して傾斜した向きへの冷気や暖気の供給あるいはゾーン分けやグループ分けを行うことができる。
【0037】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について
図13から
図15を参照しながら説明する。第2実施形態では、第1実施形態で説明した空気調和器1の制御条件や運転条件等について説明することから
図1から
図12も参照しながら説明する。
【0038】
さて、例えば
図13に示すように、1つの柱3において、各面にそれぞれ4つの室内機5が上下方向に並んで設置されたとする。ただし、室内機5の台数は一例であり、2台や3台等であってもよい。このように室内機5を設置した場合、下段側の室内機5は、作業者に近い場所に設置されており、上段側になるほど作業者から離れた場所に設置されていると考えることができる。
【0039】
換言すると、下段側の室内機5から供給される冷気や暖気は、直接的に作業者に当たる可能性が高い一方、上段側になるほど作業者に直接的に当たる可能性が下がると考えられる。この場合、上下方向の位置によって異なる設定でそれぞれの室内機5を運転すれば、作業者に冷気や暖気が当たるドラフト感を低減できると考えられる。
そこで、本実施形態では、上下方向の設置位置によって室内機5をグループ分けし、グループごとに運転状態を制御することにより、ドラフト感の低減を図っている。
【0040】
具体的には、例えば
図14にグループ分けその1として示すように、上下方向に4段に設置されている室内機5の場合、1つの柱3の各面または複数の柱3において、最上段に位置する室内機5を1つのグループ(G1)とし、その下段に位置する室内機5を1つのグループ(G2)とし、その下段に位置する室内機5を1つのグループ(G3)とし、最下段に位置する室内機5を1つのグループ(G4)として設定する。なお、これらの設定は、制御装置20によって行われる。
【0041】
そして、上段側のグループに含まれる室内機5の風量を、下段側のグループに含まれる室内機5の風量よりも大きくする。例えば、室内機5に対して風量が大きい順に急風>強風>弱風>微風の4段階で設定が可能な場合、グループ(G1)に急風を設定し、グループ(G2)に強風を設定し、グループ(G3)に弱風を設定し、グループ(G4)に微風を設定する。
【0042】
これにより、作業者に直接的に風が当たる可能性が高い最下段のグループ(G4)の室内機5からは相対的に弱い風が供給されることになり、作業者のドラフト感を低減することができ、より快適な空調を実現することができる。また、上段側からは相対的に大きな風量で冷気や暖気が供給されるため、必要とされる冷房性能や暖房性能が過度に低下してしまうことを抑制できる。
【0043】
ただし、室内機5に対して設定可能な風量が大きい順に大風量>標準風量の2段階の設定が可能な場合、
図14にグループ分けその2として示すように、上段側の2段の室内機5を1つのグループ(G11)として大風量を設定し、下段側の2段の室内機5をグループ(G12)として標準風量を設定する等、設定可能な風量の段数に応じて同じ風量を設定することができる。
【0044】
つまり、最下段のグループよりも最上段のグループのほうが相対的に風量が大きくなる構成とすることができる。このような構成によっても、作業者のドラフト感を低減することができ、より快適な空調を実現することができる。また、上段側からは相対的に大きな風量で冷気や暖気が供給されるため、必要とされる冷房性能や暖房性能が過度に低下してしまうことを抑制できる。
【0045】
また、上段側の室内機5は相対的に風量が大きいことから、より遠方まで空調された空気を供給することができ、より快適な空調を行うことができ、大規模な生産工場の空調において特に有意となる。
【0046】
ただし、室内機5の設置位置にもよるが、最下段の室内機5を1つのグループとしてそれ以外の室内機5を別グループに設定したり、床面から所定の高さ以下に設置されている室内機5を1つのグループに設定したりすることもできる。このような構成によっても作業者のドラフト感を低減することができ、より快適な空調を実現することができる。この場合、床面からの高さは、例えば一般的な人の身長等を参考にして設定すればよい。
【0047】
ところで、グループ分けすることにより多数の室内機5の運転状態を効率よく制御することが可能になるものの、局所的な空調を行う場合には、現場にて空調のオン/オフができることが望ましい。その場合、全ての室内機5に操作装置8を設けることもできるが、個数が多くなりコスト面や管理上の手間が増えたり、どれを操作すればよいのか混乱してしまったりするおそれがある。
【0048】
そこで、各グループのうち1台の室内機5を親機として操作装置8を接続し、同一グループの他の室内機5を子機として、親機に対して行われた操作を伝達する構成とすることができる。これにより、操作装置8の数を減らすことができ、コスト面や管理上の手間を削減することができるとともに、作業者が混乱するおそれを低減することができる。
【0049】
この場合、上記した制御単位となるグループを便宜的に制御グループと称し、運転のオン/オフを行うグループを便宜的に運転グループと称すると、上記したように制御グループと運転グループとを同一に設定することもできるが、制御グループと運転グループとを個別に設定することもできる。
【0050】
例えば、
図15に示すように、制御グループ(G11、G12)が設定されている場合において、例えば柱3の第1面(H1)、第2面(H2)、第3面(H3)および第4面(H4)をそれぞれ運転グループ(G21~G24)として設定し、運転グループごとに操作装置8を設けてオン/オフ可能な構成とすることができる。
【0051】
このような構成とすれば、空調が不要なスペースに向いている室内機5だけをオフにしたり、作業中に風が当たって欲しくない場合にその向きの室内機5を一括してオフにしたりすることが可能となり、現場での使い勝手を向上させることができる。勿論、1つの柱3の各面をそれぞれ別の制御グループや運転グループに設定したり、1つの柱3の複数の面を制御グループや運転グループに設定したりすることもできる。
【0052】
以上説明したように、複数の室内機5を上下方向の位置やオン/オフを切り替えたい場所等に基づいてグループ分けすることにより、局所的な空調を効率的且つ作業者の要望に添った形で行うことができる。
【0053】
(第3実施形態)
以下、第3実施形態について
図16から
図21を参照しながら説明する。第3実施形態では、第1実施形態や第2実施形態で説明した複数の室内機5が設けられている状態を制御および管理するシステムについて説明する。
【0054】
図16に示すように、例えば工場の建屋内には、作業内容等に応じて例えば製造部Aや製造部Bのような複数の作業スペースが設定されていることがある。このとき、図示は省略するが、各スペースに存在する柱3には上記した室内機5が設置されているものとする。この場合、製造部Aと製造部Bとでは必ずしも同じ作業が行われる訳ではないことから、便宜的にハッチングにて示すように、局所的な空調を必要とするスペース(S)がそれぞれ異なることが想定されるとともに、柱3の数が配置あるいは空調が必要となる時間帯も異なること等が想定される。
【0055】
また、比較的大規模な生産工場では柱3が多数存在しており、それぞれの柱3に複数の室内機5を設けた場合には必要な冷媒量も多くなることから、必要な冷媒量を確保するために室外機2も複数設けられることになる。その場合、多くの機器を管理する必要があることから、
図17に示すように、複数の室内機5及び室外機2を集中して管理するための制御装置20を設け、その制御装置20によって空気調和器1を全体的に制御する空気調和システム21を採用することがある。なお、
図17に示す構成は一例であり、室内機5や室外機2の数あるいは冷媒配管6の経路等はこれに限定されない。
【0056】
この制御装置20は、いわゆるパソコン等で構成され、マウスやキーボードあるいは例えば静電容量方式のタッチパネル等の入力装置と、設定画面や管理画面等を表示する表示部20a(
図18参照)等を備えている。また、制御装置20は、各室外機2とデータ通信可能に通信用バス22にて接続されている。
【0057】
さて、制御装置20から制御指令を与えることにより、各室外機2および各室内機5の運転を制御することはできるものの、作業スペースを局所的且つ効率的に空調できる設定を行う場合には、各室内機5が空調対象の作業スペースにおいてどのように配置されているかを把握する必要がある。そして、設定等の作業を簡素化するためには、空調対象となる作業スペースに対応して設けられている複数の室内機5を一括して設定できることが望ましい。
【0058】
そこで、空気調和システム21は、
図18に示すように、対象となる作業スペースを模式化して二次元イメージ(M1)として表示するとともに、その作業スペースに設けられている柱3と室内機5とを模式的に示す複数のアイコン(M2)、ならびに、複数の室内機5によって空調を制御する単位となる複数のゾーン(Z1~Z9)を表示する。本実施形態の場合、ゾーンは、各柱3で囲まれた領域として設定されている。なお、
図18に示すアイコン等の形状は一例であり、視覚的に提示できるものであれば他の形状とすることができる、また、
図18に示すゾーンは一例であり、その数や形状等は適宜設定することができる。
【0059】
このとき、
図18では図示を省略しているが、
図18の領域(X)を拡大して示す
図19に示すように、アイコン(M2)は、柱3を模式的に示す四角形のアイコン(M2a)と、室内機5を模式的に示す四角形のアイコン(M2b)との組み合わせとなっている。そして、空気調和システム21では、各柱3のアイコンの各面に設置されている室内機5の数を、各アイコン(M2a、M2b)および数字アイコン(M2c)により示している。
【0060】
例えば、
図19の場合、柱3Aには4面にそれぞれ4台の室内機5が上下方向に並んで配置されていることが示されており、柱3Bには3面に4台の室内機5が上下方向に並んで配置されており、1面に2台の室内機5が上下方向に並んで配置されていることが示されている。
【0061】
このような画面を表示することにより、例えば柱3A、柱3B、柱3C、柱3Dで囲まれているゾーン(Z1)に送風可能な室内機5の位置と数とを容易に把握することができるとともに、それらの室内機5をゾーン(Z1)に予め対応付けておくことにより、ゾーン(Z1)を空調可能な室内機5に対して一括して制御指令を与えることができる。
【0062】
これにより、例えば
図20に示すようにゾーンごとに運転を管理するための運転管理画面を表示し、ゾーン単位で空気調和器1の運転の開始時刻や停止時刻を設定することが可能となり、多くの室内機5が配置されている場合であっても、目的の作業スペースを容易且つ効率的に制御することができる。また、アイコンにより容易にゾーンの位置や
室内機5の設置位置を把握することができ、ゾーンの変更や室内機5の増設時や廃止時における設定の変更等を容易に行うことができる。
【0063】
このとき、例えば生産工場の操業時間に合わせて1週間単位で空気調和器1の運転の開始時刻や停止時刻を設定しておき、その中で各ゾーンについて1日の運転の開始時刻や停止時刻を個別に設定可能とすることにより、生産工場内における作業スペースの位置やいわゆるタイムシフト勤務等、各作業スペースでの実際の作業に応じた適切な空調を行うことができる。また、時間をずらして空調を開始することが可能となるため、起動時のピーク電力の最大値を減らすことができ、空調負荷が最大になる冬期等において特に有意となる。
【0064】
これにより、各ゾーンの作業開始時刻や作業終了時刻に合わせて各ゾーンに対する空調を個別に制御することが可能となり、現場に応じた空調を行うことができる。また、ゾーン単位で一括して運転を制御できるため、ゾーン単位での最適制御や省エネ運転を行うことができるとともに、異常の確認、消し忘れ、運転時間の把握、エネルギー使用量の把握等、ゾーン単位やグループ単位で管理することができる。
【0065】
この場合、ゾーンの設定と第2実施形態で例示グループ分けとを両立できる構成とすることもできる。具体的には、ゾーン(Z1)の柱3Aにおいて上下方向に4台の室内機5が配置されている場合、上段側に設置されている室内機5の風量を下段側に設置されている室内機5の風量よりも大きくすることにより、より快適な空調を行うことができる。
【0066】
また、グループ分けを行うことにより、以下のように快適性が低下することを抑制することが可能となる。空気調和器1の室外機2は、センサによって室外側熱交換器2bの温度を定期的に検出している。そして、検出した温度が着霜温度よりも低下したときの運転時間を積算し、予め定められている判定時間以上となった場合に着霜したと判定している。そして、着霜したと判定すると、除霜運転を行うことで霜を除去する。
【0067】
この除霜運転は、冷凍サイクルを逆に制御するいわゆるリバース除霜方式であり、室外側熱交換器2bの温度が指定値以上となる除霜終了条件が成立するか、一定時間が経過するまで継続される。そのため、除霜運転中には対象となる冷媒系統では空調が停止することから、快適性が低下するおそれがある。
【0068】
そのため、空気調和システム21は、例えば柱3の面や室内機5の設置位置によりグループ分けし、冷媒系統ごとに除霜運転の実施を判定することにより、ある柱3において空調が行われないという状況を回避することができる。
【0069】
具体的には、空気調和システム21は、
図21に示す判定処理を実行しており、管理下にある室外機2のいずれかを選択し(S1)、着霜を判定して(S2)、除霜が必要であるかを判定する(S3)。続いて、除霜が必要であると判定した場合には(S3:YES)、同じ柱3の別の冷媒系統での除霜運転が行われているかを判定する(S4)。そして、他の冷媒系統での除霜運転が行われている場合には(S4:YES)、選択した室外機2に対する除霜運転を一時的にキャンセルする。
【0070】
なお、他の冷媒系統での除霜運転が行われていない場合には(S4:NO)、選択した室外機2に対して除霜運転を指示する(S5)。また、除霜をキャンセルあるいは実施した後には、全ての室外機2について除霜の要否の確認が完了したかを判定し(S6)、未判定の室外機2があれば(S6:NO)ステップS1に移行して判定を行う一方、全ての室外機2の確認済みであれば(S6:YES)処理を終了する。
【0071】
これにより、同じ柱3に設置されている室外機2の運転が同時に停止して環境が悪化することを抑制できる。なお、
図21では同じ柱3の他の冷媒系統について除霜中であるか否かを判定する例を示しているが、同じゾーンの他の冷媒系統の除霜を判定する構成とすることもできるし、柱3の1面において他の冷媒系統の除霜を判定する構成とすることもできる。勿論、冷媒系統ごとグループ分けし、冷媒系統ごとに室内機5の運転を制御したり除霜運転の実施を判定したりする構成とすることもできる。
【0072】
以上のように、複数の室内機5の運転を集中制御する制御装置20を備えた空気調和システム21は、室内機5が柱3の1面または複数の面に1つまたは複数設けられており、制御装置20は、1つの柱3における各面ごと、1つの柱3における複数の面ごと、上下方向における室内機5の設置位置ごと、あるいは冷媒系統に室内機5をグループ分けし、グループごとに室内機5の運転を制御する。これにより、室内機5の正面からずれているスペースに対して局所的に冷暖房を行うことができる。
【0073】
実施形態では室内機5を柱3に設ける構成を例示したが、室内機5は、室内の壁面に設けることもできる。この場合、壁面としては、建屋の壁面、作業スペース内に設置されている作業部屋の壁面、あるいはパーティション等も含まれる。
【0074】
以上、本発明の幾つかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0075】
図面中、1は空気調和器、2は室外機、2aは圧縮機、2bは室外側熱交換器、2cはファン、3は柱、4はフレーム、5は室内機、5aはケース、5bは風向ガイド、5eは室内側熱交換器、5fは送風ファン、6冷媒配管、20は制御装置、21は空気調和システムを示す。