(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】固相ペプチド合成プロセスおよび関連システム
(51)【国際特許分類】
C07K 1/06 20060101AFI20230801BHJP
C07K 1/04 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
C07K1/06 ZNA
C07K1/04
(21)【出願番号】P 2018197185
(22)【出願日】2018-10-19
(62)【分割の表示】P 2016500356の分割
【原出願日】2014-02-24
【審査請求日】2018-10-19
【審判番号】
【審判請求日】2021-05-17
(32)【優先日】2013-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】596060697
【氏名又は名称】マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】マーク デイビッド サイモン
(72)【発明者】
【氏名】ブラッドリー エル. ペンテルート
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア アダモ
(72)【発明者】
【氏名】パトリック ルイス ハイダー
(72)【発明者】
【氏名】クラブス エフ. ジェンセン
【合議体】
【審判長】長井 啓子
【審判官】福井 悟
【審判官】松本 淳
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-237097(JP,A)
【文献】特表2000-511934(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K1/00-19/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ酸残基をペプチドに付加するためのプロセスであって、
第1のチャネルを通してアミノ酸を含む第1の流れを流すステップと、
第2のチャネルを通してアミノ酸活性化剤を含む第2の流れを流すステップと、
前記第1のチャネルおよび前記第2のチャネルの接合部で前記第1および第2の流れを統合して、活性化されたアミノ酸を含む混合された流体を形成するステップと、
前記第1および第2の流れを統合して前記混合された流体を形成するステップの後約30秒以内に、
前記第1のチャネルおよび前記第2のチャネルの前記接合部の下流の第3のチャネルを通して前記混合された流体を輸送することによって、前記混合された流体を、固体支持体に固定化された複数のペプチドに曝露するステップと
を含むプロセスであって、前記アミノ酸残基が、約1分以内に前記固定化されたペプチドの少なくとも約99%に付加される、プロセス。
【請求項2】
前記アミノ酸活性化剤が、アルカリ性液体、カルボジイミドおよび/またはウロニウム活性化剤を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記固体支持体が、ポリスチレンおよび/またはポリエチレングリコールを含む、請求項1~
2のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項4】
前記固体支持体が、樹脂を含む、請求項1~
3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記固体支持体が、細孔性ポリスチレン樹脂を含む、請求項
4に記載のプロセス。
【請求項6】
前記固体支持体が、充填カラムおよび/または流動床内に含有される、請求項1~
5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記混合された流体を前記固定化されたペプチドに曝露した後に、アミノ酸残基が、前記固定化されたペプチドの少なくとも約99%に付加される、請求項1~
6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記混合された流体を前記固定化されたペプチドに曝露した後に、複数コピーの前記アミノ酸残基が、前記固定化されたペプチドの約1%未満に結合する、請求項1~
7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
アミノ酸残基を前記固定化されたペプチドに付加することが、単一のアミノ酸残基を前記固定化されたペプチドに付加することを含む、請求項
7~
8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
アミノ酸残基を前記固定化されたペプチドに付加することが、2個またはそれを超えるアミノ酸残基を含むペプチドを、前記固定化されたペプチドに付加することを含む、請求項
7~
9のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
この出願は、2013年3月15日に出願され、「固相ペプチド合成プロセスおよび関連システム」との表題の米国特許出願第13/833,745号(これは、全ての目的のためにその全体が参考として本明細書に援用される)の一部継続である。
【0002】
固相ペプチド合成を行うためのシステムおよびプロセスについて全般的に記載されている。
【背景技術】
【0003】
固相ペプチド合成は、固体支持体におけるペプチドの化学合成に使用されるプロセスである。固相ペプチド合成において、アミノ酸またはペプチドは、通常C末端を介して固体支持体に結合する。カップリング反応により、新たなアミノ酸が、結合したアミノ酸またはペプチドに付加される。企図されない反応の可能性があるため、保護基が典型的に使用される。今日までに、固相ペプチド合成は、化学的ペプチド合成の慣例となった。固相ペプチド合成の広範な有用性は、自動固相ペプチド合成機の商業的成功によって実証された。固相ペプチド合成は、30年間を超えて使用されてきたが、迅速な合成技法は、未だに開発されていない。したがって、改善されたプロセスおよびシステムが必要とされる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
固相ペプチド合成プロセスおよび関連するシステムについて全般的に記載されている。ある特定の実施形態は、高収率を維持しつつ速く固相ペプチド合成を行うために使用することができるシステムおよび方法に関する。一部の実施形態において、試薬は、固相ペプチド合成を行うために必要とされる時間の量を低減させる仕方で加熱、輸送および/または混合することができる。本発明の主題は、一部の事例において、相互関係する生成物、特定の問題の代替的解決策および/または、1種または複数のシステムおよび/または物品の複数の異なる使用に関与する。
【0005】
一部の実施形態において、アミノ酸残基をペプチドに付加するためのプロセスが提供される。本プロセスは、ある特定の実施形態において、アミノ酸の温度が少なくとも約1℃上昇するように、アミノ酸を含む流れを加熱するステップと、加熱されたアミノ酸を、固体支持体に固定化された複数のペプチドに曝露するステップとを含み、加熱ステップは、加熱されたアミノ酸をペプチドに曝露するステップに先立ちその約30秒以内に行われる。
【0006】
ある特定の実施形態において、本プロセスは、各ペプチドが固体支持体に固定化された、保護基を含む複数のペプチドを提供するステップと、アミノ酸残基が、固定化されたペプチドの少なくとも約99%に付加されるように、アミノ酸を固定化されたペプチドに曝露するステップを含む第1のアミノ酸付加サイクルを行うステップと、アミノ酸残基が、固定化されたペプチドの少なくとも約99%に付加されるように、アミノ酸を固定化されたペプチドに曝露するステップを含む第2のアミノ酸付加サイクルを行うステップとを含む。一部の実施形態において、第1および第2のアミノ酸付加サイクルの終わりの間の時間の総量は、約10分間またはそれ未満であり、保護基は、フルオレニルメチルオキシカルボニル保護基を含み、かつ/または第1および第2のアミノ酸付加サイクルの終わりの間の時間の総量は、約5分間またはそれ未満である。
【0007】
ある特定の実施形態において、本プロセスは、固体支持体に固定化された複数のペプチドを提供するステップと、活性化されたアミノ酸の少なくとも一部が、固定化されたペプチドに結合するように、活性化されたアミノ酸を固定化されたペプチドに曝露して、新たに結合したアミノ酸残基を形成するステップとを含み、アミノ酸残基は、約1分間またはそれ未満以内に、固定化されたペプチドの少なくとも約99%に付加される。
【0008】
ある特定の実施形態において、本プロセスは、アミノ酸を含む第1の流れを流すステップと、アミノ酸活性化剤を含む第2の流れを流すステップと、第1および第2の流れを統合して、活性化されたアミノ酸を含む混合された流体を形成するステップと、第1および第2の流れを統合して混合された流体を形成するステップの後の約30秒以内に、混合された流体を、固体支持体に固定化された複数のペプチドに曝露するステップとを含む。
【0009】
ある特定の実施形態において、本プロセスは、各ペプチドが固体支持体に固定化された、保護基を含む複数のペプチドを提供するステップと、脱保護試薬を固定化されたペプチドに曝露して、固定化されたペプチドの少なくとも一部から保護基を除去するステップと、脱保護試薬の少なくとも一部を除去するステップと、活性化されたアミノ酸の少なくとも一部が、固定化されたペプチドに結合するように、活性化されたアミノ酸を固定化されたペプチドに曝露して、新たに結合したアミノ酸残基を形成するステップと、固定化されたペプチドに結合しない活性化されたアミノ酸の少なくとも一部を除去するステップとを含む。一部の実施形態において、アミノ酸残基は、アミノ酸曝露ステップの間において、固定化されたペプチドの少なくとも約99%に付加される。ある特定の実施形態において、脱保護試薬曝露ステップ、脱保護試薬除去ステップ、活性化されたアミノ酸の曝露ステップおよび活性化されたアミノ酸の除去ステップの全ての組合せを行うのにかかる時間の総量は、約10分間またはそれ未満であり、保護基は、フルオレニルメチルオキシカルボニル保護基を含み、かつ/または脱保護試薬曝露ステップ、脱保護試薬除去ステップ、活性化されたアミノ酸の曝露ステップおよび活性化されたアミノ酸の除去ステップの全ての組合せを行うのにかかる時間の総量は、約5分間またはそれ未満である。
【0010】
本発明の他の利点および新規特色は、添付の図面と併せて考慮すると、本発明の様々な非限定的な実施形態の次の詳細な説明から明らかとなる。本明細書および参照により援用されている文書が、矛盾するおよび/または一致しない開示を含む場合、本明細書を優先するべきである。
【0011】
例えば、本発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
アミノ酸残基をペプチドに付加するためのプロセスであって、
アミノ酸の温度が少なくとも約1℃上昇するように、前記アミノ酸を含む流れを加熱するステップと、
前記加熱されたアミノ酸を、固体支持体に固定化された複数のペプチドに曝露するステップと
を含み、前記加熱ステップが、前記加熱されたアミノ酸を前記ペプチドに曝露するステップに先立ちその約30秒以内に行われる、プロセス。
(項目2)
前記固体支持体が、ポリスチレンおよび/またはポリエチレングリコールを含む、項目1に記載のプロセス。
(項目3)
前記固体支持体が、樹脂を含む、項目1~2のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目4)
前記固体支持体が、細孔性ポリスチレン樹脂を含む、項目3に記載のプロセス。
(項目5)
前記固体支持体が、充填カラムおよび/または流動床内に含有される、項目1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目6)
前記加熱されたアミノ酸を前記固定化されたペプチドに曝露した後に、アミノ酸残基が、前記固定化されたペプチドの少なくとも約99%に付加される、項目1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目7)
前記加熱されたアミノ酸を前記固定化されたペプチドに曝露した後に、複数コピーの前記アミノ酸残基が、前記固定化されたペプチドの約1%未満に結合する、項目1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目8)
アミノ酸残基を前記固定化されたペプチドに付加することが、単一のアミノ酸残基を前記固定化されたペプチドに付加することを含む、項目1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目9)
アミノ酸残基を前記固定化されたペプチドに付加することが、2個またはそれを超えるアミノ酸残基を含むペプチドを、前記固定化されたペプチドに付加することを含む、項目6~8のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目10)
前記アミノ酸の温度が、少なくとも約10℃上昇する、項目1~9のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目11)
前記アミノ酸の温度が、少なくとも約25℃上昇する、項目1~10のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目12)
アミノ酸残基をペプチドに付加するためのプロセスであって、
各ペプチドが固体支持体に固定化された、保護基を含む複数のペプチドを提供するステップと、
アミノ酸残基が、前記固定化されたペプチドの少なくとも約99%に付加されるように、アミノ酸を前記固定化されたペプチドに曝露するステップを含む第1のアミノ酸付加サイクルを行うステップと、
アミノ酸残基が、前記固定化されたペプチドの少なくとも約99%に付加されるように、アミノ酸を前記固定化されたペプチドに曝露するステップを含む第2のアミノ酸付加サイクルを行うステップと
を含み、前記第1および第2のアミノ酸付加サイクルの終わりの間の時間の総量が、約10分間またはそれ未満であり、前記保護基が、フルオレニルメチルオキシカルボニル保護基を含み、かつ/または
前記第1および第2のアミノ酸付加サイクルの終わりの間の時間の総量が約5分間またはそれ未満である、プロセス。
(項目13)
前記保護基が、フルオレニルメチルオキシカルボニル保護基を含む、項目12に記載のプロセス。
(項目14)
前記保護基が、tert-ブチルオキシカルボニル保護基を含む、項目12に記載のプロセス。
(項目15)
前記第1および第2のアミノ酸付加サイクルの終わりの間の時間の総量が、約5分間またはそれ未満である、項目12~14のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目16)
前記第1および第2のアミノ酸付加サイクルの終わりの間の時間の総量が、約10秒間~約10分間であり、前記保護基が、フルオレニルメチルオキシカルボニル保護基を含む、項目12~15のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目17)
前記第1および第2のアミノ酸付加サイクルの終わりの間の時間の総量が、約10秒間~約5分間である、項目12~16のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目18)
前記第1および第2のアミノ酸付加サイクルの間において、前記固体支持体を横切る圧力降下が、前記サイクルが行われる期間の約5%超において約700psiを超えない、項目12~16のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目19)
前記固体支持体が、充填カラムおよび/または流動床内に含有される、項目12~18のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目20)
前記固体支持体が、ポリスチレンおよび/またはポリエチレングリコールを含む、項目12~19のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目21)
前記固体支持体が、樹脂を含む、項目12~20のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目22)
前記固体支持体が、細孔性ポリスチレン樹脂を含む、項目21に記載のプロセス。
(項目23)
前記固体支持体への前記アミノ酸の曝露に先立つ約30秒以内に、アミノ酸を含む第1の流体の流れおよびアミノ酸活性化剤を含む第2の流れを統合して、活性化されたアミノ酸を含む混合された流体を形成するステップを含む、項目12~22のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目24)
前記アミノ酸活性化剤が、アルカリ性液体、カルボジイミドおよび/またはウロニウム活性化剤を含む、項目23に記載のプロセス。
(項目25)
複数コピーの前記アミノ酸残基が、前記第1のアミノ酸付加サイクルの間において、前記固定化されたペプチドの約1%未満に結合する、項目12~24のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目26)
複数コピーの前記アミノ酸残基が、前記第2のアミノ酸付加サイクルの間において、前記固定化されたペプチドの約1%未満に結合する、項目12~25のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目27)
アミノ酸残基を前記固定化されたペプチドに付加することが、単一のアミノ酸残基を前記固定化されたペプチドに付加することを含む、項目12~26のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目28)
アミノ酸残基を前記固定化されたペプチドに付加することが、2個またはそれを超えるアミノ酸残基を含むペプチドを、前記固定化されたペプチドに付加することを含む、項目12~27のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目29)
前記アミノ酸の温度が少なくとも約1℃上昇するように、前記アミノ酸を含む流れを加熱するステップを含み、前記加熱ステップが、前記固定化されたペプチドへの前記加熱されたアミノ酸の曝露に先立ちその約30秒以内に行われる、項目12~28のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目30)
アミノ酸残基をペプチドに付加するためのプロセスであって、
固体支持体に固定化された複数のペプチドを提供するステップと、
活性化されたアミノ酸の少なくとも一部が、前記固定化されたペプチドに結合するように、前記活性化されたアミノ酸を前記固定化されたペプチドに曝露して、新たに結合したアミノ酸残基を形成するステップと
を含み、アミノ酸残基が、約1分間またはそれ未満以内に前記固定化されたペプチドの少なくとも約99%に付加される、プロセス。
(項目31)
前記曝露ステップの間において、前記固体支持体を横切る圧力降下が、前記曝露ステップが行われる期間の約5%超において約700psiを超えない、項目30に記載のプロセス。
(項目32)
前記固体支持体が、充填カラムおよび/または流動床内に含有される、項目30~31のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目33)
前記アミノ酸の温度が少なくとも約1℃上昇するように、前記アミノ酸を加熱するステップを含み、前記加熱ステップが、前記固定化されたペプチドへの前記アミノ酸の曝露に先立ちその30秒以内に行われる、項目30~32のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目34)
前記固体支持体が、ポリスチレンおよび/またはポリエチレングリコールを含む、項目30~33のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目35)
前記固体支持体が、樹脂を含む、項目30~34のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目36)
前記固体支持体が、細孔性ポリスチレン樹脂を含む、項目35に記載のプロセス。
(項目37)
前記固体支持体への前記アミノ酸の曝露に先立つ約30秒以内に、アミノ酸を含む第1の流体の流れおよびアミノ酸活性化剤を含む第2の流れを統合して、前記活性化されたアミノ酸を含む混合された流体を形成するステップを含む、項目30~36のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目38)
前記アミノ酸活性化剤が、アルカリ性液体、カルボジイミドおよび/またはウロニウム活性化剤を含む、項目37に記載のプロセス。
(項目39)
複数コピーの前記アミノ酸残基が、前記曝露ステップの間において、前記固定化されたペプチドの約1%未満に結合する、項目30~38のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目40)
アミノ酸残基を前記固定化されたペプチドに付加することが、単一のアミノ酸残基を前記固定化されたペプチドに付加することを含む、項目30~39のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目41)
アミノ酸残基を前記固定化されたペプチドに付加することが、2個またはそれを超えるアミノ酸残基を含むペプチドを、前記固定化されたペプチドに付加することを含む、項目30~40のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目42)
アミノ酸残基が、約1分間またはそれ未満以内に、前記固定化されたペプチドの少なくとも約99.9%に付加される、項目30~41のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目43)
アミノ酸残基が、約30秒間またはそれ未満以内に、前記固定化されたペプチドの少なくとも約99%に付加される、項目30~42のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目44)
前記アミノ酸の温度が少なくとも約1℃上昇するように、前記アミノ酸を含む流れを加熱するステップを含み、前記加熱ステップが、前記固定化されたペプチドへの前記加熱されたアミノ酸の曝露に先立ちその約30秒以内に行われる、項目30~43のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目45)
アミノ酸残基をペプチドに付加するためのプロセスであって、
アミノ酸を含む第1の流れを流すステップと、
アミノ酸活性化剤を含む第2の流れを流すステップと、
前記第1および第2の流れを統合して、活性化されたアミノ酸を含む混合された流体を形成するステップと、
前記第1および第2の流れを統合して前記混合された流体を形成するステップの後約30秒以内に、前記混合された流体を、固体支持体に固定化された複数のペプチドに曝露するステップと
を含むプロセス。
(項目46)
前記アミノ酸活性化剤が、アルカリ性液体、カルボジイミドおよび/またはウロニウム活性化剤を含む、項目45に記載のプロセス。
(項目47)
前記アミノ酸の温度が少なくとも約1℃上昇するように、前記アミノ酸を加熱するステップを含み、前記加熱ステップが、前記固定化されたペプチドへの前記アミノ酸の曝露に先立ちその30秒以内に行われる、項目45~46のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目48)
前記加熱ステップが、前記統合ステップに先立ち行われる、項目47に記載のプロセス。
(項目49)
前記加熱ステップが、前記統合ステップの間において行われる、項目47~48のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目50)
前記加熱ステップが、前記統合ステップの後に行われる、項目47~49のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目51)
前記固体支持体が、ポリスチレンおよび/またはポリエチレングリコールを含む、項目45~50のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目52)
前記固体支持体が、樹脂を含む、項目45~51のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目53)
前記固体支持体が、細孔性ポリスチレン樹脂を含む、項目52に記載のプロセス。
(項目54)
前記固体支持体が、充填カラムおよび/または流動床内に含有される、項目45~53のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目55)
前記混合された流体を前記固定化されたペプチドに曝露した後に、アミノ酸残基が、前記固定化されたペプチドの少なくとも約99%に付加される、項目45~54のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目56)
前記混合された流体を前記固定化されたペプチドに曝露した後に、複数コピーの前記アミノ酸残基が、前記固定化されたペプチドの約1%未満に結合する、項目45~55のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目57)
アミノ酸残基を前記固定化されたペプチドに付加することが、単一のアミノ酸残基を前記固定化されたペプチドに付加することを含む、項目55~56のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目58)
アミノ酸残基を前記固定化されたペプチドに付加することが、2個またはそれを超えるアミノ酸残基を含むペプチドを、前記固定化されたペプチドに付加することを含む、項目55~57のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目59)
前記アミノ酸の温度が少なくとも約1℃上昇するように、前記アミノ酸を含む前記第1の流れを加熱するステップを含み、前記加熱ステップが、複数の前記固定化されたペプチドへの前記加熱されたアミノ酸の曝露に先立ちその約30秒以内に行われる、項目45~58のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目60)
アミノ酸残基をペプチドに付加するためのプロセスであって、
各ペプチドが固体支持体に固定化された、保護基を含む複数のペプチドを提供するステップと、
脱保護試薬を前記固定化されたペプチドに曝露して、前記固定化されたペプチドの少なくとも一部から保護基を除去するステップと、
前記脱保護試薬の少なくとも一部を除去するステップと、
活性化されたアミノ酸の少なくとも一部が、前記固定化されたペプチドに結合するように、前記活性化されたアミノ酸を前記固定化されたペプチドに曝露して、新たに結合したアミノ酸残基を形成するステップと、
前記固定化されたペプチドに結合しない活性化されたアミノ酸の少なくとも一部を除去するステップと
を含み、アミノ酸残基が、アミノ酸曝露ステップの間において、前記固定化されたペプチドの少なくとも約99%に付加され、
脱保護試薬曝露ステップ、脱保護試薬除去ステップ、活性化されたアミノ酸の曝露ステップおよび活性化されたアミノ酸の除去ステップの全ての組合せを行うのにかかる時間の総量が、約10分間またはそれ未満であり、前記保護基が、フルオレニルメチルオキシカルボニル保護基を含み、かつ/または
前記脱保護試薬曝露ステップ、前記脱保護試薬除去ステップ、前記活性化されたアミノ酸の曝露ステップおよび前記活性化されたアミノ酸の除去ステップの全ての組合せを行うのにかかる時間の総量が、約5分間またはそれ未満である、プロセス。
(項目61)
前記保護基が、フルオレニルメチルオキシカルボニル保護基を含む、項目60に記載のプロセス。
(項目62)
前記保護基が、tert-ブチルオキシカルボニル保護基を含む、項目60に記載のプロセス。
(項目63)
前記脱保護試薬曝露ステップ、前記脱保護試薬除去ステップ、前記活性化されたアミノ酸の曝露ステップおよび前記活性化されたアミノ酸の除去ステップの全ての組合せを行うのにかかる時間の総量が、約10秒間~約10分間であり、前記保護基が、フルオレニルメチルオキシカルボニル保護基を含む、項目60~62のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目64)
前記脱保護試薬曝露ステップ、前記脱保護試薬除去ステップ、前記活性化されたアミノ酸の曝露ステップおよび前記活性化されたアミノ酸の除去ステップの全ての組合せを行うのにかかる時間の総量が、約5分間またはそれ未満である、項目60~63のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目65)
前記脱保護試薬曝露ステップ、前記脱保護試薬除去ステップ、前記活性化されたアミノ酸の曝露ステップおよび前記活性化されたアミノ酸の除去ステップの全ての組合せを行うのにかかる時間の総量が、約10秒間~約5分間である、項目60~64のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目66)
前記脱保護試薬曝露ステップ、前記脱保護試薬除去ステップ、前記活性化されたアミノ酸の曝露ステップおよび前記活性化されたアミノ酸の除去ステップのそれぞれの間において、前記固体支持体を横切る圧力降下が、前記ステップが行われる期間の約5%超において約700psiを超えない、項目60~65のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目67)
前記固体支持体が、充填カラムおよび/または流動床内に含有される、項目60~66のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目68)
前記アミノ酸の温度が少なくとも約1℃上昇するように、前記アミノ酸を加熱するステップを含み、前記加熱ステップが、前記固定化されたペプチドへの前記アミノ酸の曝露に先立ちその30秒以内に行われる、項目60~67のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目69)
前記固体支持体が、ポリスチレンおよび/またはポリエチレングリコールを含む、項目60~68のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目70)
前記固体支持体が、樹脂を含む、項目60~69のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目71)
前記固体支持体が、細孔性ポリスチレン樹脂、細孔性ポリエチレングリコール樹脂および/または細孔性コポリマー樹脂を含む、項目70に記載のプロセス。
(項目72)
前記固体支持体への前記アミノ酸の曝露に先立つ約30秒以内に、前記アミノ酸を含む第1の流体の流れおよびアミノ酸活性化剤を含む第2の流れを統合して、前記活性化されたアミノ酸を含む混合された流体を形成するステップを含む、項目60~71のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目73)
前記アミノ酸活性化剤が、アルカリ性液体、カルボジイミドおよび/またはウロニウム活性化剤を含む、項目72に記載のプロセス。
(項目74)
複数コピーの前記アミノ酸残基が、前記アミノ酸曝露ステップの間において、前記固定化されたペプチドの約1%未満に結合する、項目60~73のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目75)
アミノ酸残基を前記固定化されたペプチドに付加することが、単一のアミノ酸残基を前記固定化されたペプチドに付加することを含む、項目60~74のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目76)
アミノ酸残基を前記固定化されたペプチドに付加することが、2個またはそれを超えるアミノ酸残基を含むペプチドを、前記固定化されたペプチドに付加することを含む、項目60~75のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目77)
前記アミノ酸の温度が少なくとも約1℃上昇するように、前記アミノ酸を含む前記第1の流れを加熱するステップを含み、前記加熱ステップが、複数の前記固定化されたペプチドへの前記加熱されたアミノ酸の曝露に先立ちその約30秒以内に行われる、項目60~76のいずれか一項に記載のプロセス。
添付の図面を参照しつつ、本発明の非限定的な実施形態を例として記載するが、これは模式的なものであり、縮尺を合わせて描くことを企図しない。図面において、図解されている同一またはほとんど同一の構成要素のそれぞれは、典型的に、単一の数字によって表される。明確となることを目的として、あらゆる図面においてあらゆる構成要素が標識されているとは限らず、当業者が本発明を理解するために図解が必要でない場合、本発明の各実施形態のあらゆる構成要素が示されているとは限らない。図面には次の事柄が示されている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、1セットの実施形態に係る、ペプチド合成を行うためのシステムの略図である。
【
図2-1】
図2A~
図2Dは、ある特定の実施形態に係る、(A)ペプチド合成システムの例示的な模式図、(B)例示的なペプチド合成システムの写真、(C)合成ペプチドFmoc-ALFALFA-CONH
2のクロマトグラムおよび(D)リアクタの例示的な模式図である。
【
図2-2】
図2A~
図2Dは、ある特定の実施形態に係る、(A)ペプチド合成システムの例示的な模式図、(B)例示的なペプチド合成システムの写真、(C)合成ペプチドFmoc-ALFALFA-CONH
2のクロマトグラムおよび(D)リアクタの例示的な模式図である。
【
図3】
図3A~
図3Cは、1セットの実施形態に係る、(A)異なる活性化アミノ酸曝露時間により合成されたLYRAG-CONH
2ペプチドのクロマトグラム、(B)異なる活性化アミノ酸曝露時間により合成されたFmoc-ALF-CONH
2ペプチドのクロマトグラムおよび(C)例示的な合成タイムラインである。
【
図4-1】
図4A~
図4Dは、ある特定の実施形態に係る、(A)60℃においてHATUを使用して合成された、(B)60℃においてHBTUを使用して合成された、(C)RTにおいてHBTUを使用して合成された、(D)同じ合成タイムラインを使用したバッチ条件下でHBTUを使用して合成された、ACP(65-74)ペプチドのクロマトグラムおよび質量スペクトルである。
【
図4-2】
図4A~
図4Dは、ある特定の実施形態に係る、(A)60℃においてHATUを使用して合成された、(B)60℃においてHBTUを使用して合成された、(C)RTにおいてHBTUを使用して合成された、(D)同じ合成タイムラインを使用したバッチ条件下でHBTUを使用して合成された、ACP(65-74)ペプチドのクロマトグラムおよび質量スペクトルである。
【
図5】
図5A~
図5Bは、1セットの実施形態に係る、(A)合成PnIA(A10L)ペプチドのクロマトグラムおよび質量スペクトルならびに(B)合成HIV-1 PR(81-99)ペプチドのクロマトグラムおよび質量スペクトルである。
【
図6-1】
図6A~
図6Eは、ある特定の実施形態に係る、表1に示す様々な条件下(A)5、(B)7、(C)8および(D)4で合成されたGCFペプチドの全イオン電流クロマトグラフであり、(E)は、確証済みのGly-D-Cys-L-Phe試料の例示的な全イオン電流クロマトグラフである。
【
図6-2】
図6A~
図6Eは、ある特定の実施形態に係る、表1に示す様々な条件下(A)5、(B)7、(C)8および(D)4で合成されたGCFペプチドの全イオン電流クロマトグラフであり、(E)は、確証済みのGly-D-Cys-L-Phe試料の例示的な全イオン電流クロマトグラフである。
【
図7-1】
図7A~
図7Eは、ある特定の実施形態に係る、(A)3個のペプチド断片からのアフィボディ(affibody)タンパク質の化学的ライゲーションのための例示的なスキーム、(B)第1のアフィボディ断片のクロマトグラムおよび質量スペクトル、(C)第2のアフィボディ断片のクロマトグラムおよび質量スペクトル、(D)第3のアフィボディペプチド断片のクロマトグラムおよび質量スペクトルならびに(E)精製アフィボディのクロマトグラムおよび質量スペクトルである。
【
図7-2】
図7A~
図7Eは、ある特定の実施形態に係る、(A)3個のペプチド断片からのアフィボディ(affibody)タンパク質の化学的ライゲーションのための例示的なスキーム、(B)第1のアフィボディ断片のクロマトグラムおよび質量スペクトル、(C)第2のアフィボディ断片のクロマトグラムおよび質量スペクトル、(D)第3のアフィボディペプチド断片のクロマトグラムおよび質量スペクトルならびに(E)精製アフィボディのクロマトグラムおよび質量スペクトルである。
【
図7-3】
図7A~
図7Eは、ある特定の実施形態に係る、(A)3個のペプチド断片からのアフィボディ(affibody)タンパク質の化学的ライゲーションのための例示的なスキーム、(B)第1のアフィボディ断片のクロマトグラムおよび質量スペクトル、(C)第2のアフィボディ断片のクロマトグラムおよび質量スペクトル、(D)第3のアフィボディペプチド断片のクロマトグラムおよび質量スペクトルならびに(E)精製アフィボディのクロマトグラムおよび質量スペクトルである。
【
図8-1】
図8A~
図8Fは、ある特定の実施形態に係る、(A~B)それぞれFmoc N末端保護基、およびBoc N末端保護基を使用した伝統的な手動配置を使用したN末端アフィボディ断片の全イオンクロマトグラム、(C~D)それぞれFmoc N末端保護基、およびBoc N末端保護基を使用した伝統的な手動配置を使用した中央アフィボディ断片の全イオンクロマトグラムならびに(E~F)それぞれFmoc N末端保護基、およびBoc N末端保護基を使用した伝統的な手動配置を使用したC末端アフィボディ断片の全イオンクロマトグラムである。
【
図8-2】
図8A~
図8Fは、ある特定の実施形態に係る、(A~B)それぞれFmoc N末端保護基、およびBoc N末端保護基を使用した伝統的な手動配置を使用したN末端アフィボディ断片の全イオンクロマトグラム、(C~D)それぞれFmoc N末端保護基、およびBoc N末端保護基を使用した伝統的な手動配置を使用した中央アフィボディ断片の全イオンクロマトグラムならびに(E~F)それぞれFmoc N末端保護基、およびBoc N末端保護基を使用した伝統的な手動配置を使用したC末端アフィボディ断片の全イオンクロマトグラムである。
【
図8-3】
図8A~
図8Fは、ある特定の実施形態に係る、(A~B)それぞれFmoc N末端保護基、およびBoc N末端保護基を使用した伝統的な手動配置を使用したN末端アフィボディ断片の全イオンクロマトグラム、(C~D)それぞれFmoc N末端保護基、およびBoc N末端保護基を使用した伝統的な手動配置を使用した中央アフィボディ断片の全イオンクロマトグラムならびに(E~F)それぞれFmoc N末端保護基、およびBoc N末端保護基を使用した伝統的な手動配置を使用したC末端アフィボディ断片の全イオンクロマトグラムである。
【
図9-1】
図9A~
図9Eは、ある特定の実施形態に係る、(A)精製された第1のアフィボディ断片の全イオンクロマトグラム、(B)精製された第2のアフィボディ断片の全イオンクロマトグラム、(C)精製された第3のアフィボディ断片の全イオンクロマトグラム、(D)第1および第2の断片のライゲーションから得られる精製されたアフィボディ断片の全イオンクロマトグラムならびに(E)精製されたアフィボディのクロマトグラムおよび質量スペクトルである。
【
図9-2】
図9A~
図9Eは、ある特定の実施形態に係る、(A)精製された第1のアフィボディ断片の全イオンクロマトグラム、(B)精製された第2のアフィボディ断片の全イオンクロマトグラム、(C)精製された第3のアフィボディ断片の全イオンクロマトグラム、(D)第1および第2の断片のライゲーションから得られる精製されたアフィボディ断片の全イオンクロマトグラムならびに(E)精製されたアフィボディのクロマトグラムおよび質量スペクトルである。
【
図9-3】
図9A~
図9Eは、ある特定の実施形態に係る、(A)精製された第1のアフィボディ断片の全イオンクロマトグラム、(B)精製された第2のアフィボディ断片の全イオンクロマトグラム、(C)精製された第3のアフィボディ断片の全イオンクロマトグラム、(D)第1および第2の断片のライゲーションから得られる精製されたアフィボディ断片の全イオンクロマトグラムならびに(E)精製されたアフィボディのクロマトグラムおよび質量スペクトルである。
【
図10】
図10は、1セットの実施形態に係る、ペプチドの合成の際に記録された時間の関数としての紫外線吸光度のプロットである。
【
図11】
図11は、1セットの実施形態に係る、流量対洗浄時間のグラフである。
【
図12】
図12A~
図12Gは、1セットの実施形態に係る、(A)入口(左)および出口(右)の写真、(B)スペーサーの写真、(C)リアクタ本体ユニットの写真、(D)組み立てたリアクタの写真ならびに(E)リアクタ本体、フリット(frit)およびスペーサーを示すリアクタの模式図、(F)リアクタの切り取り断面図ならびに(G)リアクタにより使用した合成タイムラインである。
【
図13】
図13は、1セットの実施形態に係る、ペプチド合成を行うための例示的なシステムの略図である。
【
図14】
図14は、ある特定の実施形態に係る、合成ペプチドALFALFA-CONHNH
2の例示的な全イオンクロマトグラムである。
【
図15】
図15は、本明細書に記載されているある特定のペプチド合成システムを使用して作製したペプチドの2種の例示的なクロマトグラムを示す。
【
図16】
図16A~
図16Hは、1セットの実施形態に係る、(A)HATUを使用した60℃、(B)HBTUを使用した60℃、(C)HBTUを使用した室温および(D)匹敵する手動バッチ方法を使用した室温における第二世代プロトコールにより合成されたACP(65-74)、ならびに(E)HATUを使用した60℃、(F)HBTUを使用した60℃、(G)HBTUを使用した室温および(H)匹敵する手動バッチ方法を使用した室温における第一世代プロトコールにより合成されたACP(65-74)の粗LCMSクロマトグラムである。
【
図17】
図17は、一部の実施形態に係る合成ビオチン化ペプチドのクロマトグラムを含む。
【
図18】
図18A~
図18Dは、1セットの実施形態に係る、(A)第二世代プロトコールにより合成されたPnIA(A10L)コノトキシン、(B)第二世代プロトコールにより合成されたHIV-1 PR(81-99)、(C)第一世代プロトコールにより合成されたPnIA(A10L)コノトキシンおよび(D)第一世代プロトコールにより合成されたHIV-1 PR(81-99)のクロマトグラムである。
【
図19】
図19A~
図19Fは、ある特定の実施形態に係る、(A~C)第二世代プロトコールによりクロロトリチル(chlorotrytyl)ヒドラジド官能化ポリスチレンにおいて合成されたアフィボディ断片および(D~F)第一世代プロトコールによる修飾Wang樹脂において合成されたアフィボディ断片のクロマトグラムである。
【
図20】
図20は、1セットの実施形態に係る、合成されたグルタチオン類似体のライブラリのクロマトグラムを含む。
【
図21】
図21A~
図21Cは、ある特定の実施形態に係る、合成されたシステインリッチペプチドのクロマトグラムである。
【
図22】
図22A~
図22Bは、ある特定の実施形態に係る、(A)自動プロセスを使用して合成された(ALF)7および(B)手動プロセスを使用して合成された(ALF)7のクロマトグラムである。
【
図23】
図23A~
図23Dは、1セットの実施形態に係る、(A)自動フロープラットフォームの模式図、(B)アミノ酸残基を取り込むために自動フロープラットフォームにより使用される合成タイムライン、(C)ALFALFAを示すクロマトグラム、(D)ACP(65-74)を示すクロマトグラムおよび(E)(ALF)7を示すクロマトグラムである。
【
図24】
図24A~
図24Bは、(A)除去ステップを含む付加サイクルを使用して合成されたペプチドのクロマトグラムおよび(B)1回または複数の除去ステップを欠く付加サイクルを使用して合成されたペプチドのクロマトグラムを示す。
【
図25】
図25A~
図25Fは、1セットの実施形態に係る、(A)DARPin合成のための合成スキーム、(B~E)断片DARPinのクロマトグラムおよび(F)DARPinのクロマトグラムを示す。
【
図26】
図26A~
図26Fは、ある特定の実施形態に係る、(A)バルナーゼ合成のための合成スキーム、(B~E)断片バルナーゼのクロマトグラムおよび(F)バルナーゼのクロマトグラムを示す。
【
図27】
図27A~
図27Cは、ある特定の実施形態に係る、(A)ヒトインスリンA鎖のクロマトグラム、(B)ヒトインスリンB鎖のクロマトグラムおよび(C)進化したEETI-IIインテグリン結合ペプチドのクロマトグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
固相ペプチド合成を行うためのシステムおよびプロセスについて全般的に記載されている。固相ペプチド合成は、固体支持体に固定化されているペプチドにアミノ酸残基が付加される公知のプロセスである。ある特定の実施形態において、本発明のシステムおよび方法は、高収率を維持しつつ速く固相ペプチド合成を行うために使用することができる。ある特定の実施形態は、固相ペプチド合成を行うために必要とされる時間の量を低減させる仕方で試薬を加熱、輸送および/または混合するために使用することができるプロセスおよびシステムに関する。
【0014】
ある特定の実施形態は、固定化されたペプチドにアミノ酸(複数可)を付加するためのプロセスに関する。
図1は、本明細書に記載されているある特定の本発明のプロセスを行うために使用することができる、例示的なシステム5の略図である。本明細書に記載されているシステムおよび方法(例えば、
図1におけるシステム5)は、ある特定の実施形態において、流動に基づく合成(多くの伝統的な固相ペプチド合成システムにおいて用いられるバッチに基づく合成とは対照的な)に関与し得る。一部のこのような実施形態において、固定化されたペプチドの上を流体(ある形態または別の形態の)が実質的に連続的に輸送される、連続的ペプチド合成を行うことができる。例えば、ある特定の実施形態において、固定化されたペプチドの上を試薬およびリンス用流体が交互に(alternatively)および連続的に輸送されてよい。
【0015】
一部の実施形態において、ペプチド20は、固体支持体15に固定化され得る。固体支持体15は、リアクタ10等、容器内に含有され得る。一部の実施形態において、
図1に示す通り、複数の試薬リザーバを、リアクタ10の上流にこれに流体的に接続して置くことができる。一部の実施形態において、試薬リザーバ25は、アミノ酸(例えば、予備活性化されたアミノ酸および/または十分に活性化されていないアミノ酸)を含有する。場合によっては、試薬リザーバ26は、アミノ酸の活性化を完了することができるアミノ酸活性化剤(例えば、アルカリ性液体、カルボジイミドおよび/またはウロニウム活性化剤)を含有する。ある特定の実施形態において、試薬リザーバ27は、ピペリジンまたはトリフルオロ酢酸等、脱保護試薬を含有する。試薬リザーバ28は、例えば、試薬除去ステップにおいて使用することができる、ジメチルホルムアミド(DMF)等の溶媒を含有することができる。単純にするために単一のリザーバが
図1に図解されているが、単一のリザーバが図解されている
図1において、単一のリザーバの代わりに複数のリザーバ(例えば、それぞれ異なる種類のアミノ酸、異なる種類の脱保護剤等を含有する)を使用することができることを理解されたい。
【0016】
ある特定の実施形態において、ペプチド20は、例えば、ペプチドのN末端に保護基を含む。本明細書において、用語「保護基」は、本技術分野におけるその通常の意義が与えられる。保護基は、保護基が、保護された基が反応するのを防止さもなければ阻害するように、分子(例えば、ペプチド)内の反応基(即ち、保護された基)に付着したまたは付着するよう構成された化学的部分を含む。保護は、分子に保護基を付着することにより生じ得る。脱保護は、例えば、保護基を除去する化学転換により保護基が分子から除去されたときに生じ得る。
【0017】
一部の実施形態において、保護基を含む複数のペプチドは、各ペプチドが固体支持体に固定化されるように、固体支持体に結合され得る。例えば、ペプチドは、それらのC末端を介して固体支持体に結合されて、これにより、ペプチドを固定化することができる。
【0018】
一部の実施形態において、固定化されたペプチドにアミノ酸残基を付加するプロセスは、固定化されたペプチドに脱保護試薬を曝露して、固定化されたペプチドの少なくとも一部から保護基の少なくとも一部を除去するステップを含む。脱保護試薬曝露ステップは、ある特定の実施形態において、N末端保護基が除去されながら側鎖保護基が保存されるように構成され得る。例えば、ある特定の実施形態において、ペプチドの保護に使用される保護基は、フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)を含む。一部のこのような実施形態において、ピペリジン(例えば、ピペリジン溶液)を含む脱保護試薬は、固定化されたペプチドの少なくとも一部からFmoc保護基が除去されるように、固定化されたペプチドに曝露され得る。一部の実施形態において、ペプチドの保護に使用される保護基は、tert-ブチルオキシカルボニル(Boc)を含む。一部のこのような実施形態において、トリフルオロ酢酸を含む脱保護試薬は、固定化されたペプチドの少なくとも一部からBoc保護基が除去されるように、固定化されたペプチドに曝露され得る。場合によっては、保護基(例えば、tert-ブトキシカルボニル、即ち、Boc)は、ペプチドのN末端に結合され得る。
【0019】
一部の実施形態において、固定化されたペプチドにアミノ酸残基を付加するプロセスは、脱保護試薬の少なくとも一部を除去するステップを含む。一部の実施形態において、脱保護ステップの間において形成されることができたいずれかの反応副産物(例えば、除去された保護基)の少なくとも一部を除去することができる。場合によっては、脱保護試薬(および、ある特定の実施形態において副産物)は、例えば、任意選択のリザーバ28に貯蔵されている流体(例えば、水性もしくは非水性溶媒等の液体、超臨界流体および/またはその他)でペプチド、固体支持体および/または周囲の区域を洗浄することにより除去することができる。場合によっては、脱保護試薬および反応副産物の除去は、その後のステップの性能を改善することができる(例えば、副反応を防止することにより)。ある特定の実施形態において、その後のステップの性能は、脱保護試薬および/または反応副産物の少なくとも一部(例えば、実質的に全て)の除去に依存しない。一部のこのような事例において、除去ステップは任意選択である。除去ステップが任意選択である実施形態において、除去ステップは、低減(例えば、除去ステップの時間の低減、除去ステップにおいて使用される溶媒の量の低減)および/または排除されてよい。1回または複数の除去ステップの低減または排除は、全体的なサイクル時間を低減することができる。任意選択の除去ステップが低減または排除される場合、付加サイクルにおけるその後のステップが、例えば、システムにおける流体流動により、脱保護試薬および/または反応副産物の少なくとも一部の除去に役立ち得ることを理解されたい。
【0020】
固定化されたペプチドにアミノ酸残基を付加するプロセスは、ある特定の実施形態において、活性化されたアミノ酸の少なくとも一部が、固定化されたペプチドに結合するように、活性化されたアミノ酸を固定化されたペプチドに曝露して、新たに結合したアミノ酸残基を形成するステップを含む。例えば、ペプチドは、ペプチドの脱保護されたN末端と反応する活性化されたアミノ酸に曝露され得る。ある特定の実施形態において、アミノ酸は、より詳細に後述する通り、アミノ酸を含有する流れを活性化剤の流れと混合することにより、脱保護されたペプチドとの反応のために活性化され得る。場合によっては、アミノ酸の付加が、保護されたN末端を有する固定化されたペプチドをもたらすように、活性化されたアミノ酸のアミン基は保護され得る。
【0021】
一部の実施形態において、固定化されたペプチドにアミノ酸残基を付加するプロセスは、固定化されたペプチドに結合しない活性化されたアミノ酸の少なくとも一部を除去するステップを含む。一部の実施形態において、活性化されたアミノ酸の曝露ステップの間に形成することができた反応副産物の少なくとも一部を除去することができる。場合によっては、活性化されたアミノ酸および副産物は、例えば、任意選択のリザーバ28に貯蔵された流体(例えば、水性もしくは非水性溶媒等の液体、超臨界流体および/またはその他)でペプチド、固体支持体および/または周囲の区域を洗浄することにより除去することができる。場合によっては、活性化されたアミノ酸および反応副産物の少なくとも一部の除去は、その後のステップの性能を改善することができる(例えば、副反応を防止することにより)。ある特定の実施形態において、その後のステップの性能は、活性化されたアミノ酸および/または反応副産物の少なくとも一部(例えば、実質的に全て)の除去に依存しない。一部のこのような事例において、除去ステップは、任意選択である。除去ステップが任意選択である実施形態において、除去ステップは、低減(例えば、除去ステップの時間の低減、除去ステップにおいて使用される溶媒の量の低減)および/または排除されてよい。1回または複数の除去ステップの低減または排除は、全体的なサイクル時間を低減することができる。任意選択の除去ステップが低減または排除される場合、付加サイクルにおけるその後のステップが、例えば、システムにおける流体流動により、活性化されたアミノ酸および/または反応副産物の少なくとも一部の除去に役立ち得ることを理解されたい。
【0022】
上に参照したステップが例示的なものであり、アミノ酸付加サイクルが、必ずしも上に参照したステップの全てを含む必要がないことを理解されたい。例えば、アミノ酸付加サイクルは、脱保護試薬除去ステップおよび/または活性化されたアミノ酸の除去ステップを含まなくてもよい。一般に、アミノ酸付加サイクルは、ペプチドへのアミノ酸残基の付加をもたらすいずれか一連のステップを含む。
【0023】
ある特定の実施形態において、アミノ酸付加ステップにおいて、アミノ酸の付加は、ペプチドによる単一の追加的なアミノ酸残基の取り込みをもたらすことができる(即ち、付加ステップの後に所定のペプチドが単一の追加的なアミノ酸残基を含むように、単一のアミノ酸残基を固定化されたペプチドに付加することができる)。一部のこのような実施形態において、その後のアミノ酸付加ステップを使用して、所望のペプチドが合成されるまでアミノ酸残基を個々に付加することにより、ペプチドを築くことができる。一部の実施形態において、2個以上のアミノ酸残基(例えば、ペプチドの形態の)を、固体支持体に固定化されたペプチドに付加することができる(即ち、複数のアミノ酸残基を含むペプチドを、所定の固定化されたペプチドに付加することができる)。固定化されたペプチドへのペプチドの付加は、当業者に公知のプロセス(例えば、断片縮合、化学的ライゲーション)により達成することができる。換言すると、アミノ酸付加ステップにおいて、固定化されたペプチドへのアミノ酸の付加は、固定化されたペプチドへの単一のアミノ酸残基の付加または固定化されたペプチドへの複数のアミノ酸残基(例えば、ペプチドとして)の付加を含むことができる。
【0024】
一部の実施形態において、アミノ酸は、従来の方法よりも有意に迅速にペプチドに付加することができる。ある特定の実施形態において、ステップの組合せを行うのにかかる時間の総量は、保護基に影響され得る。例えば、保護基がフルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)を含むある特定の実施形態において、脱保護試薬曝露ステップ、脱保護試薬除去ステップ、活性化されたアミノ酸の曝露ステップおよび活性化されたアミノ酸の除去ステップの全ての組合せを行うのにかかる時間の総量は、約10分間もしくはそれ未満、約9分間もしくはそれ未満、約8分間もしくはそれ未満、約7分間もしくはそれ未満、約6分間もしくはそれ未満、約5分間もしくはそれ未満、約4分間もしくはそれ未満、約3分間もしくはそれ未満、約2分間もしくはそれ未満、約1分間もしくはそれ未満、約10秒間~約10分間、約10秒間~約9分間、約10秒間~約8分間、約10秒間~約7分間、約10秒間~約6分間、約10秒間~約5分間、約10秒間~約4分間、約10秒間~約3分間、約10秒間~約2分間または約10秒間~約1分間である。ある特定の実施形態において(保護基がtert-ブチルオキシカルボニル(Boc)、フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)および/または他の種類の保護基を含む実施形態を含む)、脱保護試薬曝露ステップ、脱保護試薬除去ステップ、活性化されたアミノ酸の曝露ステップおよび活性化されたアミノ酸の除去ステップの全ての組合せを行うのにかかる時間の総量は、約5分間もしくはそれ未満、約4分間もしくはそれ未満、約3分間もしくはそれ未満、約2分間もしくはそれ未満、約1分間もしくはそれ未満、約10秒間~約5分間、約10秒間~約4分間、約10秒間~約3分間、約10秒間~約2分間または約10秒間~約1分間である。
【0025】
一般に、脱保護試薬曝露ステップ、脱保護試薬除去ステップ、活性化されたアミノ酸の曝露ステップおよび活性化されたアミノ酸の除去ステップの全ての組合せを行うのにかかる時間の総量は、脱保護試薬曝露ステップを行うのにかかる時間の量を、脱保護試薬除去ステップを行うのにかかる時間の量および活性化されたアミノ酸の曝露ステップを行うのにかかる時間の量および活性化されたアミノ酸の除去ステップを行うのにかかる時間の量に加えることにより計算される。
【0026】
本明細書に記載されている通り、付加サイクルが1回または複数の除去ステップを欠き、保護基がフルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)を含む実施形態において、付加サイクルのステップの全ての組合せ(例えば、脱保護試薬曝露ステップ、活性化されたアミノ酸の曝露ステップおよび活性化されたアミノ酸の除去ステップ;脱保護試薬曝露ステップ、脱保護試薬除去ステップおよび活性化されたアミノ酸の曝露ステップ;脱保護試薬曝露ステップおよび活性化されたアミノ酸の曝露ステップ)を行うのにかかる時間の総量は、約10分間もしくはそれ未満、約9分間もしくはそれ未満、約8分間もしくはそれ未満、約7分間もしくはそれ未満、約6分間もしくはそれ未満、約5分間もしくはそれ未満、約4分間もしくはそれ未満、約3分間もしくはそれ未満、約2分間もしくはそれ未満、約1分間もしくはそれ未満、約0.75分間もしくはそれ未満、約10秒間~約10分間、約10秒間~約9分間、約10秒間~約8分間、約10秒間~約7分間、約10秒間~約6分間、約10秒間~約5分間、約10秒間~約4分間、約10秒間~約3分間、約10秒間~約2分間または約10秒間~約1分間である。ある特定の実施形態において(保護基がtert-ブチルオキシカルボニル(Boc)、フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)および/または他の種類の保護基を含む実施形態を含む)、1回または複数の除去ステップを欠く付加サイクルにおけるステップの全ての組合せを行うのにかかる時間の総量は、約5分間もしくはそれ未満、約4分間もしくはそれ未満、約3分間もしくはそれ未満、約2分間もしくはそれ未満、約1分間もしくはそれ未満、約10秒間~約5分間、約10秒間~約4分間、約10秒間~約3分間、約10秒間~約2分間または約10秒間~約1分間である。
【0027】
一般に、1回または複数の除去ステップを欠く付加サイクルにおけるステップの全ての組合せを行うのにかかる時間の総量は、脱保護試薬曝露ステップを行うのにかかる時間の量を、存在するのであれば脱保護試薬除去ステップを行うのにかかる時間の量、および存在するのであれば活性化されたアミノ酸の曝露ステップを行うのにかかる時間の量および活性化されたアミノ酸の除去ステップを行うのにかかる時間の量に加えることにより計算される。
【0028】
ある特定の実施形態において、第1のアミノ酸付加ステップ(および/またはその後のアミノ酸付加ステップ)は、比較的高収率でアミノ酸を付加することができる。例えば、ある特定の実施形態は、アミノ酸残基が、固定化されたペプチドの少なくとも約99%、少なくとも約99.9%、少なくとも約99.99%または実質的に100%に付加されるように、固定化されたペプチドにアミノ酸を曝露するステップを含む。ある特定の実施形態において、アミノ酸残基が、固定化されたペプチドの少なくとも約99%、少なくとも約99.9%、少なくとも約99.99%または実質的に100%に付加されるように、固定化されたペプチドにアミノ酸を曝露するステップを含むことができる、第2の(および一部の実施形態において、第3の、第4の、第5のおよび/またはその後の)アミノ酸付加サイクルを行うことができる。ある特定の実施形態において、本発明のプロセスおよびシステムの使用は、高い反応収率を維持しつつ、固定化されたペプチドへの2個以上のアミノ酸の付加を、比較的速く(上述または本明細書の他の箇所に開示されている時間範囲のいずれか以内を含む)生じさせることができる。
【0029】
ある特定の実施形態において、1回または複数のアミノ酸付加ステップは、二重取り込み(即ち、単一の付加ステップにおける所望のアミノ酸の複数コピー(例えば、単一のアミノ酸残基またはペプチド)の付加)が殆どないまたは全くないように行うことができる。例えば、ある特定の実施形態において、第1の(および/または第2の、第3の、第4の、第5のおよび/またはその後の)アミノ酸付加ステップにおいて、所望のアミノ酸の複数コピーは、固定化されたペプチドの約1%未満(または約0.1%未満、約0.01%未満、約0.001%未満、約0.0001%未満、約0.00001%未満もしくは実質的に結合なし)に結合する。
【0030】
一部の実施形態において、複数のアミノ酸付加サイクルを行うことができる。複数のアミノ酸付加サイクルの実行は、ペプチドに付加される2個以上の単一のアミノ酸残基(または2個以上のペプチドおよび/または少なくとも1個の単一のアミノ酸残基および少なくとも1個のペプチド)をもたらし得る。ある特定の実施形態において、固定化されたペプチドに2個以上のアミノ酸を付加するためのプロセスは、第1のアミノ酸付加サイクルを行って第1のアミノ酸を付加するステップと、第2のアミノ酸付加サイクルを行って第2のアミノ酸を付加するステップを含むことができる。ある特定の実施形態において、第3の、第4の、第5のおよびその後のアミノ酸付加サイクルを行って、いずれか所望の長さの固定化されたペプチドを産生することができる。一部の実施形態において、少なくとも約10回のアミノ酸付加サイクル、少なくとも約50回のアミノ酸付加サイクルまたは少なくとも約100回のアミノ酸付加サイクルを行い、固定化されたペプチドへの少なくとも約10アミノ酸残基、少なくとも約50アミノ酸残基または少なくとも約100アミノ酸残基の付加をもたらす。ある特定のこのような実施形態において、アミノ酸付加サイクルの比較的高いパーセンテージ(例えば、このようなアミノ酸付加サイクルの少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約90%、少なくとも約95%または少なくとも約99%)は、高収率(例えば、少なくとも約99%、少なくとも約99.9%、少なくとも約99.99%または実質的に100%)で行うことができる。一部のこのような実施形態において、アミノ酸付加サイクルの比較的高いパーセンテージ(例えば、このようなアミノ酸付加サイクルの少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約90%、少なくとも約95%または少なくとも約99%)は、速く、例えば、上述または本明細書の他の箇所に指定されている時間範囲のいずれか以内で行うことができる。一部のこのような実施形態において、アミノ酸付加サイクルの比較的高いパーセンテージ(例えば、このようなアミノ酸付加サイクルの少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約90%、少なくとも約95%または少なくとも約99%)は、二重取り込みが限定的なまたは全くないように、例えば、上述または本明細書の他の箇所に指定されている二重取り込み範囲のいずれか以内で行うことができる。
【0031】
2回以上の付加サイクルが存在する実施形態において、あるアミノ酸付加サイクルおよびその後のアミノ酸付加サイクルの終わりの間で経過する時間の総量は、比較的短くなり得る。例えば、フルオレニルメチルオキシカルボニル保護基が用いられるある特定の実施形態において、第1および第2のアミノ酸付加サイクルの終わりの間の時間の総量は、約10分間もしくはそれ未満、約9分間もしくはそれ未満、約8分間もしくはそれ未満、約7分間もしくはそれ未満、約6分間もしくはそれ未満、約5分間もしくはそれ未満、約4分間もしくはそれ未満、約3分間もしくはそれ未満、約2分間もしくはそれ未満、約1分間もしくはそれ未満、約10秒間~約10分間、約10秒間~約9分間、約10秒間~約8分間、約10秒間~約7分間、約10秒間~約6分間、約10秒間~約5分間、約10秒間~約4分間、約10秒間~約3分間、約10秒間~約2分間、約10秒間~約1分間である。フルオレニルメチルオキシカルボニル、tert-ブチルオキシカルボニルおよび/またはいずれか他の適した保護基を含む保護基が用いられるある特定の実施形態において、あるアミノ酸付加サイクルおよびその後のアミノ酸付加サイクルの終わりの間の時間の総量は、約5分間もしくはそれ未満、約4分間もしくはそれ未満、約3分間もしくはそれ未満、約2分間もしくはそれ未満、約1分間もしくはそれ未満、約10秒間~約5分間、約10秒間~約4分間、約10秒間~約3分間、約10秒間~約2分間または約10秒間~約1分間となり得る。
【0032】
上述されている通り、ある特定の態様は、以前の固相ペプチド合成方法と比較して、1回または複数の付加サイクルに必要とされる合計時間を有意に低減させることができるプロセスおよびシステムに関する。30年よりも前の連続的固相ペプチド合成の出現から、たゆまぬ努力がその有用性および適用性の改善に集中されてきた。これらの改善は、自動固相ペプチド合成機の商業的成功に寄与してきたが、合成時間の低減は、依然として顕著な障壁であり続けている。当該分野における30年間を超える研究および開発は、迅速合成技法を生み出すことができなかった。FmocまたはBoc保護基を使用した典型的な連続的固相ペプチド合成は、単一のアミノ酸の付加に30~90分間を必要とする。本発明の文脈により、合成時間を減少させるための長年にわたる切実な必要に取り組む、ある特定のプロセスおよび技法が発見された。例えば、迅速な合成時間は、混合、加熱および/または圧力降下制御のために特殊化された技法を用いることにより達成することができる。
【0033】
アミノ酸付加サイクルにおけるある特定のステップは、試薬の混合を必要とし得る。一部の従来システムにおいて、試薬は、固定化されたペプチドへの曝露前に長時間混合され、これにより、固定化されたペプチドへの曝露に先立つ望ましくない副反応および/または試薬分解を生じ得る。場合によっては、副反応および/または分解は、アミノ酸付加サイクルにおける1または複数のステップ(例えば、アミノ酸曝露ステップ)の収率および速度論に有害な影響を与える。一部の従来システムにおいて、試薬は、固定化されたペプチドの存在下で混合され、これにより、例えば、より遅い反応速度論を生じ得る。急速ペプチド合成を達成するための一技法は、
図1に示す通り、固定化されたペプチドへの到着に先立つ、但し、それに至るまで短い時間量内での試薬の流れの統合に関与し得る。
【0034】
一部の実施形態において、アミノ酸残基をペプチドに付加するためのプロセスは、アミノ酸を含む第1の流れを流すステップと、アミノ酸活性化剤(例えば、アルカリ性液体、カルボジイミドおよび/またはウロニウム活性化剤)を含む第2の流れを流すステップとを含む。例えば、振り返って
図1を参照すると、試薬リザーバ25は、アミノ酸を含むことができる。試薬リザーバ26は、一部のこのような実施形態において、アミノ酸活性化剤を含むことができる。第1および第2の流れが統合されて、活性化されたアミノ酸を含む混合された流体を形成することができる。例えば、
図1を参照すると、リザーバ25由来のアミノ酸を第1の流れ30において流し、アミノ酸活性化剤を第2の流れ32において流すことができる。第1の流れ30および第2の流れ32は、例えば、流れ40のポイント34において混合することができる。混合された流体は、アミノ酸活性化剤によるアミノ酸の活性化による、活性化されたアミノ酸を含むことができる。
【0035】
ある特定の実施形態において、アミノ酸が活性化された後に、固定化されたペプチドは、比較的短い期間内で、混合された流体に曝露され得る。例えば、ある特定の実施形態において、固体支持体に固定化された複数のペプチドは、第1および第2の流れを統合して混合された流体を形成するステップの後の約30秒以内(または約15秒以内、約10秒以内、約5秒以内、約3秒以内、約2秒以内、約1秒以内、約0.1秒以内または約0.01秒以内)に、混合された流体に曝露され得る。
【0036】
ある特定の実施形態において、試薬の流れの統合は、本明細書に記載されているアミノ酸付加サイクルにおいて使用することができる。例えば、固体支持体に固定化されたペプチドへの活性化されたアミノ酸の曝露に先立つ約30秒以内に、アミノ酸を含む第1の流体の流れおよびアミノ酸活性化剤を含む第2の流れが統合されて、活性化されたアミノ酸を含む混合された流体を形成することができる。2回以上のアミノ酸付加サイクルが行われる一部の実施形態において、1回または複数のアミノ酸付加サイクル(例えば、第1および第2のアミノ酸付加サイクル)は、固体支持体へのアミノ酸の曝露に先立つ約30秒以内に、アミノ酸を含む第1の流体の流れおよびアミノ酸活性化剤を含む第2の流れを統合して、活性化されたアミノ酸を含む混合された流体を形成するステップを含むことができる。試薬の流れの統合は、付加サイクルにおけるいずれか適したステップに関連して使用することができ、アミノ酸付加サイクルにおける1または複数のステップに関連して使用することができることを理解されたい。
【0037】
一般に、流れは、当業者に公知のいずれか適した技法を使用して統合することができる。一部の実施形態において、流れは、第1の流れおよび第2の流れを、単一の流れへと実質的に同時に流すことにより(例えば、流れを流す統合チャネルにより)統合することができる。他の統合方法を使用することもできる。
【0038】
迅速な合成時間を達成するための別の技法は、リアクタへの到着に先立つ、但し、それに至るまでの短い期間内における流れの加熱に関与し得る。リアクタに加熱された流れを供給することは、リアクタにおいて生じるプロセスの速度論を変更することができる。例えば、加熱された流れへと固定化されたペプチド、固体支持体または他の合成構成要素を曝露することは、アミノ酸付加プロセスの反応速度論および/または拡散速度論を変更することができる。例えば、活性化されたアミノ酸を含む加熱された流れへのペプチドの曝露は、アミノ酸がペプチドに付加される速度を増加させることができる。一部の実施形態において、リアクタへの到着に先立つ、但し、それに至るまで短い期間内における流れの加熱は、リアクタに補助的な熱(即ち、1種または複数の予熱された流れに由来しない熱)を供給する必要を実質的に低減または排除することができる。場合によっては、リアクタへと供給される熱の大部分または実質的に全ては、予熱された流れに起源を有する。例えば、一部の実施形態において、予熱された流れ(複数可)に起源を有する、リアクタの加熱に使用される熱エネルギーのパーセンテージは、約50%を超えるもしくはこれに等しい、約60%を超えるもしくはこれに等しい、約70%を超えるもしくはこれに等しい、約80%を超えるもしくはこれに等しい、約90%を超えるもしくはこれに等しい、約95%を超えるもしくはこれに等しいまたは約99%を超えるもしくはこれに等しくなることができる。一部のこのような実施形態において、この仕方におけるシステムの加熱は、望ましい反応温度へとリアクタ、固定化されたペプチド、固体支持体、活性化されたアミノ酸、脱保護試薬、洗浄流体および/または他の合成構成要素を加熱するために必要とされる時間を低減することができる。
【0039】
よって、一部の実施形態において、アミノ酸残基をペプチドに付加するためのプロセスは、加熱されたアミノ酸が固定化されたペプチドへと曝露される前に、活性化されたアミノ酸の温度が、少なくとも約1℃(または少なくとも約2℃、少なくとも約5℃、少なくとも約10℃、少なくとも約25℃、少なくとも約50℃および/または約450℃未満もしくはこれに等しい、約300℃未満もしくはこれに等しい、約200℃未満もしくはこれに等しい、約100℃未満もしくはこれに等しい、および/または約75℃未満もしくはこれに等しい)増加されるように、活性化されたアミノ酸を含む流れを加熱するステップを含むことができる。ある特定の実施形態において、流れの内容物が固定化されたペプチドに曝露される前に、流れの内容物の温度が、少なくとも約1℃(または少なくとも約2℃、少なくとも約5℃、少なくとも約10℃、少なくとも約25℃、少なくとも約50℃および/または約450℃未満もしくはこれに等しい、約300℃未満もしくはこれに等しい、約200℃未満もしくはこれに等しい、約100℃未満もしくはこれに等しい、および/または約75℃未満もしくはこれに等しい)増加されるように、他のいずれかの構成要素(例えば、洗浄剤、脱保護剤または他のいずれかの構成要素)を含む流れを加熱することができる。場合によっては、加熱ステップ(例えば、活性化されたアミノ酸の加熱および/または固定化されたペプチドへと輸送される流れ内の他のいずれかの構成要素の加熱)は、固定化されたペプチドへの流れの内容物(例えば、加熱された活性化されたアミノ酸)の曝露の約30秒以内(または約15秒以内、約10秒以内、約5秒以内、約3秒以内、約2秒以内、約1秒以内、約0.1秒以内または約0.01秒以内)に行うことができる。一部のこのような実施形態において、また、
図1の例示的な実施形態に図解されている通り、このような加熱は、固定化されたペプチドの上流の場所を加熱することにより達成することができる。一部のこのような実施形態において、アミノ酸の加熱は、固定化されたペプチドへのアミノ酸の曝露の少なくとも約0.01秒、少なくとも約0.05秒、少なくとも約0.1秒、少なくとも約0.5秒、少なくとも約1秒、少なくとも約5秒または少なくとも約10秒前に始まる。ある特定の実施形態において、アミノ酸は、固定化されたペプチドにアミノ酸が曝露される少なくとも約0.1秒、少なくとも約1秒、少なくとも約5秒または少なくとも約10秒前に、少なくとも約1℃(または少なくとも約2℃、少なくとも約5℃、少なくとも約10℃、少なくとも約25℃、少なくとも約50℃および/または約450℃未満もしくはこれに等しい、約300℃未満もしくはこれに等しい、約200℃未満もしくはこれに等しい、約100℃未満もしくはこれに等しい、および/または約75℃未満もしくはこれに等しい)加熱される。
【0040】
振り返って
図1を参照すると、例えば、システム5は、その中で流れ40の内容物を加熱することができる加熱帯42を含むことができる。加熱帯42は、ヒーターを含むことができる。一般に、いずれか適した加熱方法を使用して、流れの温度を増加させることができる。本明細書に記載されているある特定のシステムおよび方法の利点の1つは、単純および/または安価な加熱方法および/または装置を使用する能力である。例えば、加熱帯42は、液体槽(例えば、ウォーターバス)、抵抗性ヒーター、ガス対流に基づく加熱要素または他のいずれかの適したヒーターを含むことができる。一部の実施形態において、入口の流れ(および/またはリアクタ)の加熱に使用される熱エネルギーの比較的低いパーセンテージは、電磁放射(例えば、マイクロ波放射)に起源を有することができる。例えば、一部の実施形態において、電磁放射に起源を有する、入口の流れ(複数可)および/またはリアクタの加熱に使用される熱エネルギーのパーセンテージは、約20%未満もしくはこれに等しい、約15%未満もしくはこれに等しい、約10%未満もしくはこれに等しい、約5%未満もしくはこれに等しい、約1%未満もしくはこれに等しいまたは約0.5%未満もしくはこれに等しくなることができる。一部の実施形態において、入口の流れ(複数可)および/またはリアクタは、電磁放射を使用せずに加熱することができる。ある特定の実施形態において、マイクロ波放射に起源を有する、入口の流れ(複数可)および/またはリアクタの加熱に使用される熱エネルギーのパーセンテージは、約20%未満もしくはこれに等しい、約15%未満もしくはこれに等しい、約10%未満もしくはこれに等しい、約5%未満もしくはこれに等しい、約1%未満もしくはこれに等しいまたは約0.5%未満もしくはこれに等しくなることができる。一部の実施形態において、入口の流れ(複数可)および/またはリアクタは、マイクロ波放射を使用せずに加熱することができる。場合によっては、加熱機構は、固定化されたペプチドの短い距離内、例えば、約5メートル以内、約1メートル以内、約50cm以内または約10cm以内となり得る。
【0041】
図1に図解されている実施形態を含む一部の実施形態において、アミノ酸の加熱およびアミノ酸活性化剤(例えば、アルカリ性液体、カルボジイミドおよび/またはウロニウム活性化剤)とアミノ酸との統合の両方は、固定化されたペプチドへのアミノ酸の接触の前およびそれに至るまで比較的短い時間内で行うことができる。アミノ酸の加熱は、アミノ酸活性化剤を含む流れとアミノ酸を含む流れとの統合の前、最中および/または後に行うことができる。
【0042】
ある特定の実施形態において、固定化されたペプチドに曝露される直前での流れの加熱は(固定化されたペプチドへと流れの内容物を輸送するかなり前での流れの加熱とは対照的に)、流れにおける1種または複数の試薬(例えば、ペプチドに付加しようとするアミノ酸および/または脱保護試薬等)の熱分解を最小化することができる。当然ながら、上に記述されている通り、流れ構成要素の到着に先立つ流れの加熱は、反応または洗浄ステップを行うことができるスピードを増強することができる。
【0043】
一部の実施形態において、加熱ステップは、本明細書に記載されているアミノ酸付加サイクルにおいて使用することができる。例えば、活性化されたアミノ酸の温度が少なくとも約1℃上昇されるような、活性化されたアミノ酸の加熱は、固定化されたペプチドへの活性化されたアミノ酸の曝露に先立ちその約30秒以内に(または他の箇所で言及されている他の時間範囲のいずれか以内に)行うことができる。アミノ酸付加サイクルのいずれかのステップ(例えば、脱保護試薬曝露ステップ、脱保護試薬除去ステップ、活性化されたアミノ酸の曝露ステップ、活性化されたアミノ酸の除去ステップ)に先立ちその30秒以内に加熱ステップを使用することができることを理解されたい。一部の実施形態において、アミノ酸付加サイクルは、2回以上の加熱ステップを含むことができる。例えば、加熱ステップは、脱保護試薬曝露ステップおよび活性化されたアミノ酸の曝露ステップの前に行うことができる。
【0044】
2回以上のアミノ酸付加サイクルが行われるある特定の実施形態において、1回または複数のアミノ酸付加サイクル(例えば、第1および第2のアミノ酸付加サイクル)は、ステップ(例えば、脱保護試薬曝露ステップ、脱保護試薬除去ステップ、活性化されたアミノ酸の曝露ステップ、活性化されたアミノ酸の除去ステップ)の実行に先立ちその約30秒以内に(または他の箇所で言及されている他の時間範囲のいずれか以内に)1回または複数の加熱ステップを含むことができる。例えば、1回または複数のアミノ酸付加サイクル(例えば、第1および第2のアミノ酸付加サイクル)は、固定化されたペプチドへの活性化されたアミノ酸の曝露に先立ちその約30秒以内に(または他の箇所で言及されている他の時間範囲のいずれか以内に)、活性化されたアミノ酸の加熱を含むことができる。一般に、加熱ステップは、付加サイクルにおけるいずれかの適したステップに関連して使用することができ、いずれかの個々の付加サイクルの1種もしくは複数のステップまたは一連の付加サイクルの全ステップに関連して使用することができる。
【0045】
上に記す通り、一部の実施形態において、流れの加熱は、流れの内容物の温度を少なくとも約1℃、少なくとも約2℃、少なくとも約5℃、少なくとも約10℃、少なくとも約25℃または少なくとも約50℃上昇させることができる(例えば、流れ内のアミノ酸の温度を増加させることができる)。加熱後の流れの温度が、異なる付加サイクルステップおよび/または付加サイクルで同じまたは異なり得ることを理解されたい。場合によっては、加熱後の流れの温度は、1または複数の付加サイクルステップおよび/または付加サイクルで同じとなり得る。場合によっては、流れの加熱は、流れの内容物の温度を約450℃未満もしくはこれに等しく、約300℃未満もしくはこれに等しく、約200℃未満もしくはこれに等しく、約100℃未満もしくはこれに等しくまたは約75℃未満もしくはこれに等しく増加させることができる(例えば、流れ内のアミノ酸の温度を増加させることができる)。上に参照した範囲の組合せも可能である(例えば、少なくとも約1℃かつ約100℃未満またはこれに等しい、少なくとも約1℃かつ約450℃未満またはこれに等しい等)。
【0046】
ある特定の実施形態において、固定化されたペプチドにわたる圧力降下を低減させるためのシステムおよび方法を使用して、ペプチド合成のスピードを改善することができる。一部の実施形態において、固定化されたペプチドにわたる試薬の流量は、ペプチド合成のスピードに影響を与え得る。例えば、アミノ酸付加サイクルにおける1種または複数のステップ(例えば、脱保護試薬曝露ステップ、脱保護試薬除去ステップ、活性化されたアミノ酸の曝露ステップ、活性化されたアミノ酸の除去ステップ)に必要とされる時間は、流量増加と共に減少し得る。一般に、高い流量の使用は、固定化されたペプチド付近の試薬の濃度が、低い流量が用いられる場合に観察される濃度ほど酷くは枯渇しないことを確実にする。多くの伝統的な連続的固相ペプチド合成システムにおいて、流量は、リアクタにわたる圧力降下によって限定される。圧力降下は、合成における固体支持体の拡大によりおよび/またはプロセス機器の不適切なサイジングにより生じ得る。ある特定の実施形態において、アミノ酸付加サイクルにおける固体支持体を横切る圧力降下は、サイクルが行われる期間の約5%超(または約1%超)において約700psiを超え得ない。例えば、ある特定の実施形態において、アミノ酸付加サイクルの各ステップ(例えば、脱保護試薬曝露ステップ、脱保護試薬除去ステップ、活性化されたアミノ酸の曝露ステップおよび活性化されたアミノ酸の除去ステップ)の間において、固体支持体を横切る圧力降下は、ステップが行われる期間の約5%超(または約1%超)において約700psiを超え得ない。2回以上の付加サイクルが行われる実施形態において、1回または複数の付加サイクル(例えば、第1および第2のアミノ酸付加サイクル)における圧力降下は、サイクルが行われる期間の約5%超(または約1%超)において約700psiを超え得ない。
【0047】
一部の実施形態において、アミノ酸付加サイクルの各ステップおよび/または1回もしくは複数の付加サイクルの間において、リアクタにわたる圧力降下は、ステップが行われる期間の約5%超(または約1%超)において約700psi、約600psi、約500psi、約400psi、約250psi、約100psiまたは約50psiを超え得ない。
【0048】
ある特定の実施形態において、リアクタにわたる圧力降下は、望ましいアスペクト比を有するプロセス容器(例えば、充填カラムのカラム)を使用することにより低減させることができる。一般に、プロセス容器のアスペクト比は、容器の長さ(容器を通る流動の方向に実質的に平行)の容器の最短の幅(容器の長さに垂直に測定される)に対する比である。例として、円柱状容器の場合、アスペクト比は、円柱の高さの円柱の横断面直径に対する比となる。振り返って
図1を参照すると、例えば、リアクタ10のアスペクト比は、寸法Aの長さの寸法Bの長さに対する比(即ち、A:B)となる。一部の実施形態において、リアクタのアスペクト比は、約20:1未満もしくはこれに等しく、約10:1未満もしくはこれに等しく、約5:1未満もしくはこれに等しく、約3:1未満もしくはこれに等しく、約2:1未満もしくはこれに等しく、約1:1未満もしくはこれに等しく、約0.5:1未満もしくはこれに等しく、約0.2:1未満もしくはこれに等しくまたは約0.1:1未満もしくはこれに等しく(および/または、ある特定の実施形態において、僅か0.01:1またはそれより低く)なることができる。
【0049】
一部の実施形態において、高収率を有する、ならびに/または二重取り込みが限定されたおよび/もしくは全くない比較的短い付加サイクルは、本明細書に記載されている技法のうち1種または複数を用いることにより達成することができる。例えば、本明細書に記載されているある特定のシステムおよび方法は、アミノ酸曝露ステップ(即ち、固定化されたペプチドに活性化されたアミノ酸を曝露するステップ)が、約1分間もしくはそれ未満(例えば、約30秒間もしくはそれ未満、約15秒間もしくはそれ未満、約10秒間もしくはそれ未満、約7秒間もしくはそれ未満または約5秒間もしくはそれ未満、および/または、ある特定の実施形態において、僅か1秒間またはそれ未満)で行われる(例えば、高収率を達成しつつおよび/または本明細書に記載されている程度のいずれかまで二重取り込みを回避しつつ)ことを可能にする。場合によっては、本明細書に記載されているある特定のシステムおよび方法は、脱保護試薬除去ステップおよび/または活性化されたアミノ酸の除去ステップが、約2分間またはそれ未満(例えば、約1.5分間もしくはそれ未満、約1分間もしくはそれ未満、約45秒間もしくはそれ未満、約30秒間もしくはそれ未満、約15秒間もしくはそれ未満、約10秒間もしくはそれ未満、約5秒間もしくはそれ未満および/または、ある特定の実施形態において、僅か1秒間もしくはそれ未満)で行われることを可能にする。ある特定の実施形態において、本明細書に記載されているある特定のシステムおよび方法は、脱保護試薬曝露ステップ(即ち、脱保護試薬に固定化されたペプチドを曝露するステップ)が、約20秒間またはそれ未満(例えば、約15秒間もしくはそれ未満、約10秒間もしくはそれ未満、約8秒間もしくはそれ未満、約5秒間もしくはそれ未満、約1秒間もしくはそれ未満および/または、ある特定の実施形態において、僅か0.5秒間もしくはそれ未満)で行われることを可能にする。
【0050】
ある特定の事例において、ペプチド合成に必要とされる時間は、保護基の選択に影響され得る。例えば、Fmoc保護基の使用は、より長い合成サイクル時間を必要とすることが一般に理解されている。しかし、Fmoc保護基化学が用いられている場合であっても、本明細書に記載されているシステムおよび方法は、迅速なアミノ酸付加の実行に使用することができる。一部の実施形態において、使用されている保護基の種類にかかわらず、アミノ酸付加サイクルのための合計時間は少なくなることができる。
【0051】
一般に、当業者に公知のいずれかの保護基を使用することができる。保護基(例えば、N末端保護基)の非限定例として、フルオレニルメチルオキシカルボニル、tert-ブチルオキシカルボニル、アリルオキシカルボニル(alloc)、カルボキシベンジルおよび感光性保護基が挙げられる。ある特定の実施形態において、固定化されたペプチドは、フルオレニルメチルオキシカルボニル保護基を含む。一部の実施形態において、固定化されたペプチドは、tert-ブチルオキシカルボニル保護基を含む。
【0052】
他の箇所に記載されている通り、固定化されたペプチドにアミノ酸を曝露する前に、アミノ酸活性化剤を使用して、アミノ酸を活性化または活性化を完了することができる。いずれかの適したアミノ酸活性化剤を使用することができる。ある特定の実施形態において、アミノ酸活性化剤は、アルカリ性液体を含む。アミノ酸活性化剤は、一部の実施形態において、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)その他等、カルボジイミドを含む。ある特定の実施形態において、アミノ酸活性化剤は、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩(HBTU);2-(7-アザ-1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩(HATU);1-[(1-(シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデンアミノオキシ)ジメチルアミノモルフォリノ)]ウロニウムヘキサフルオロリン酸塩(COMU);その他等、ウロニウム活性化剤を含む。
【0053】
他の箇所に記載されている通り、ペプチドは、固体支持体に固定化することができる。一般に、本明細書に記載されている付加サイクルのいずれかにより、いかなる固体支持体が使用されてもよい。固体支持体材料の非限定例として、ポリスチレン(例えば、細孔性ポリスチレン樹脂、メソ多孔性ポリスチレン樹脂、マクロ多孔性ポリスチレン樹脂等、樹脂形態の)、ガラス、多糖(例えば、セルロース、アガロース)、ポリアクリルアミド樹脂、ポリエチレングリコールまたはコポリマー樹脂(例えば、ポリエチレングリコール、ポリスチレン等を含む)が挙げられる。
【0054】
固体支持体は、いずれかの適した形態の因子を有することができる。例えば、固体支持体は、ビーズ、粒子、繊維の形態または他のいずれかの適した形態の因子となり得る。
【0055】
一部の実施形態において、固体支持体は、多孔性となり得る。例えば、一部の実施形態において、マクロ多孔性材料(例えば、マクロ多孔性ポリスチレン樹脂)、メソ多孔性材料および/または細孔性材料(例えば、細孔性ポリスチレン樹脂)を固体支持体として用いることができる。用語「マクロ多孔性」、「メソ多孔性」および「細孔性」は、ペプチド合成のための固体支持体に関して使用される場合、当業者に公知のものであり、国際純正および応用化学連合(International Union of Pure and Applied Chemistry)(IUPAC)Compendium of Chemical Terminology、バージョン2.3.2、2012年8月19日(非公式には、「Gold Book」として公知)におけるそれらの記載と一貫した様式で本明細書において使用される。一般に、細孔性材料は、約2ナノメートル未満の横断面直径を有する孔を有する材料を含む。メソ多孔性材料は、約2ナノメートル~約50ナノメートルの横断面直径を有する孔を有する材料を含む。マクロ多孔性材料は、約50ナノメートルを超えるおよび1マイクロメートルもの大きさの横断面直径を有する孔を有する材料を含む。
【0056】
本明細書に記載されている本発明のシステムおよび方法の利点の1つは、性能を劣化させず標準固体支持体材料と共に使用できることである。例えば、ある特定の実施形態において、標準市販ポリスチレン樹脂支持体を使用することができる。多くの以前のシステムにおいて、このような支持体は、流動に基づく固相ペプチド合成システムにおいて使用されると、圧力降下の増加を引き起こし、崩壊した。合成において樹脂が膨張するにつれ、ますます崩壊の可能性が高くなり、これは、樹脂にわたる圧力降下の増加を引き起こし、一定の流量を維持するために加えられる圧力の増加を必要とする。加えられる圧力の増加は、樹脂のより酷い崩壊をもたらし、流体に加えられた圧力が繰り返し増加されることになる正のフィードバック効果をもたらし得る。十分な高圧において、樹脂は、その画定に使用されるフリットまたは他のシステムから押し出ることができる。本明細書に記載されているシステムおよび方法を使用して、樹脂(標準ポリスチレン樹脂および他の標準樹脂を含む)が、合成において崩壊しないように、あるいは上述の正のフィードバック効果を生じない程度までしか崩壊しないように、圧力降下を管理して、より安定的かつ制御可能なシステムをもたらすことができる。ある特定の実施形態において、固体支持体は、充填カラム内に含有される。
【0057】
一般に、本明細書に記載されている方法およびシステムを使用して、任意のペプチドおよび/またはタンパク質を合成することができる。本明細書に記載されている方法および/またはシステムを使用して合成することのできるペプチドおよび/またはタンパク質の非限定例として、グルカゴン様ペプチド(例えば、GLP-1)、エキセナチド、リラグルチド、GLP-1類似体(例えば、ZP10)、プラムリンチド(Pramlinitide)、ペプチドYY、グルカゴン、テデュグルチド、デルミチド、カルシトニン(例えば、サケカルシトニン)、副甲状腺ホルモン、ボルテゾミブ、シレンジタイド、リュープロレリン、ヒストレリン、ゴセレリン、スティミュバックス、プリモバックス、ネシリチド、エプチフィバチド、ビバリルジン、イカチバント、ロチガプチド、シクロスポリン、MPB8298、オクトレオチド、ランレオチド、デスモプレシン、リプレシン、テルリプレシン、オキシトシン、アトシバン、エンフビルチド、サイマルファシン、ダプトマイシン(Daptamycin)、デントニン、バシトラシン、グラミシジン(Gramidicin)、コリスチン、ペキシガナン、オミガナン、カスポファンギン、ミカファンギン、アニデュラファンギン、ヒスタチン、ラクトフェリン、コノトキシン、ネミフィチド、ナトリウム利尿ペプチド、バソプレシン、バソプレシン類似体(例えば、Argバソプレシン、Lysバソプレシン)、ジコノチド、エキノキャンディン、サイマルファシンおよびソマトスタチン類似体(例えば、オクトレオチド、ランレオチド)が挙げられる。糖尿病、胃腸病学的障害、整形外科的障害(例えば、骨粗鬆症)、がん、心血管疾患、免疫学的障害(即ち、自己免疫障害)、先端巨大症、遺尿症、感染症(例えば、細菌感染症、真菌感染症、ウイルス感染症)および中枢神経系障害等が挙げられるがこれらに限定されない疾患の治療のためのペプチドおよび/またはタンパク質は、本明細書に記載されている方法およびシステムを使用して合成することができる。
【0058】
本明細書において、用語「ペプチド」は、本技術分野におけるその通常の意義を有し、水の形式的損失による一方のカルボニル炭素からもう一方の窒素原子への共有結合の形成による、2個またはそれを超えるアミノカルボン酸分子(同じまたは異なる)に由来するアミドを指すことができる。「アミノ酸残基」も、本技術分野におけるその通常の意義を有し、ペプチド、別のアミノ酸またはアミノ酸残基と組み合わされた後のアミノ酸(単一のアミノ酸として、あるいはペプチドの一部として)の組成を指す。一般に、アミノ酸を別のアミノ酸またはアミノ酸残基と組み合わせるときに、水が除去され、アミノ酸の残りをアミノ酸残基と呼ぶ。用語「アミノ酸」も、本技術分野におけるその通常の意義を有し、タンパク質生成および非タンパク質生成アミノ酸を含むことができる。
【0059】
次の実施例は、本発明のある特定の実施形態を図解するよう企図されているが、本発明の全範囲を例証するものではない。
【実施例】
【0060】
例えば、保護基としてFmocを利用する標準固相ペプチド合成方法は、各アミノ酸残基を取り込むために約60~100分間を必要とする場合があり、一部の特殊化された手順は、複雑なマイクロ波システムを使用して、これを1残基当たり約20分間に低減させる。本実施例は、マイクロ波照射なしで、手動制御下において10分間未満で(例えば、5分毎に、3分毎に、2分毎に)または自動制御下において1.8分間でアミノ酸残基を取り込む、フロープラットフォームの開発について記載する。
【0061】
本明細書に記載されている流動に基づくプラットフォームは、流動に基づくアプローチを活用することにより、マイクロ波支援または他の急速ペプチド合成機により現在可能であると考えられる速度をはるかに超えてSPPS化学をさらに加速する。高濃度試薬を絶えず供給することに加えて、流動に基づくプラットフォームは、標準およびマイクロ波支援アプローチを妨げ得る多数の顕著な障害物を克服する。第一に、完全に密封されたリアクタおよび熱交換器を温度制御された槽に浸漬することができ、これにより、樹脂床に達する直前に、一貫したおよび制御された様式で溶媒および試薬が加熱されることが可能となる。急速予熱は、ある特定の実施形態において、所望の温度に速く達しながら、試薬の熱分解を回避するために重要である。しかし、これは、バッチシステムにおいて極めて困難である。第二に、フロープラットフォームは、サイクル時間を増加させることなく縮尺することができる。第一から第二世代リアクタへの移行において実証される通り、直径および流量の増加は、合成を遅くすることなく最大スケールを効果的に増加させる。第三に、適切な質量移動をもたらすために撹拌が必要とされず、失敗を導きがちな可動部を排除し、スケールアップを容易にする。第四に、二重カップリング、二重脱保護またはカップリング効率の比色検査を行うことなく、高品質ペプチドを速く得ることができる。最後に、バッチ合成の多くの場合遅い自動化とは対照的に、本システムの自動化は、より迅速なサイクル時間を可能にし得る。
【0062】
(実施例1)
本実施例は、各アミノ酸付加サイクルが5分間未満で完了した、急速Fmoc固相ペプチド合成のための流動に基づくプラットフォームについて記載する。本実施例において、小型のフリットプラスチックチューブ内に画定されている樹脂を通過する流体の一定の流れの下で、アミノ酸付加のための各ステップ(例えば、アミド結合形成、洗浄およびN末端脱保護)を行った。流動方法は、一般的に使用されているバッチ方法とは対照的に、溶媒および試薬の一貫した急速予熱、添加および除去を可能にした。溶媒および試薬の一貫した急速予熱、添加および除去は、30秒間のアミド結合形成ステップを含む5分間のサイクル時間を可能にした。二重カップリングまたは二重脱保護を為すことなく、多数のモデルペプチドを調製した。加えて、液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)によって示される優れた収率および高純度が達成された。このアプローチは、3個のポリペプチドセグメントからの58残基のタンパク質の合成にも適用した。従来のFmoc方法よりも10倍迅速な、2.3時間で27残基のペプチドの最長断片を調製した。様々なプロセシングステップの自動化、流量の増加、不必要に長い洗浄時間の低減およびより小さいアスペクト比のリアクタの使用が、本明細書に報告される合成時間を実質的に低減させると考えられる。
【0063】
図2Aに示す通り、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)ポンプを使用して、ピペリジン脱保護溶液またはジメチルホルムアミド(DMF)洗浄溶媒のいずれかをリアクタに送達した。手動で発動される三方弁を使用して、いずれの試薬をリアクタに送達するか選択した。HPLCポンプ出口を、ルアーロック急速継ぎ手(quick connect)を介してリアクタに取り付けた。ルアーロック急速継ぎ手およびリアクタの間に、熱交換器または「予熱ループ」として機能する8フィートの1/16”OD×0.03”IDチューブを設置した。カップリングステップのために、急速継ぎ手をシリンジポンプへと手動で動かし、活性化されたアミノ酸の溶液を送達した。このステップを自動化することにより、本明細書に報告されているものよりもさらに迅速な実行を達成することができることが考えられる。リアクタ流出液をUV検出器に通過させて、Fmocアミノ酸が強く吸収する領域である304nmにおける吸光度を連続的にモニターした。構築が単純および容易となるようリアクタを設計した。入口および出口としてSwagelok異型ユニオン(reducing union)を備える3.5”長ペルフルオロアルコキシチューブによる1/4”内径を使用した。外径の1/4を有する短いチューブ片を使用して、出口にフリットを配置した。
図2Bから分かる通り、出口フィッティングの設置ならびにフェルールおよびチューブの同時発生的圧縮は、フリットを適所に密封した。リアクタの総容積は、約2.5mlであった。この設計は、最大100mgの樹脂を保持し、最大27残基の長さのペプチドの調製に使用された。
【0064】
この流動に基づくSPPSシステムによるFmoc SPPSの実行可能性を検証するために、100mgの樹脂を使用して、モデルペプチドFmoc-ALFALFA-CONH2を0.1mmolスケールで合成した。初期見積に基づき、アミノ酸付加サイクルのための出発点として、10mL/分における2分間のDMF洗浄、6mL/分における2分間のFmoc脱保護ステップおよびさらにもう一度のDMF洗浄および1mL/分で送達される活性化されたアミノ酸との6分間の室温カップリングを選択した。この一連の流れは、1残基当たり12分間での効率的ペプチド合成を可能にした。粗ペプチドの逆相(RP)-HPLCトレースを
図2Cに示す。
【0065】
このアプローチを検証した後に、改善された洗浄ステップ、Fmoc除去およびカップリング時間を決定した。その後の試験は全て、副生物の形成を有意に増加させることなくサイクル時間を低減させるために60℃で行った。より高い温度が、合成成果を改善し得る、および/または各アミノ酸付加サイクルに必要とされる合計時間を低減し得ることが考えられる。本実施例におけるあらゆるその後の実験において使用した最終合成タイムラインを
図3Cに示す。最終合成タイムラインは、10mL/分における2分間のDMF洗浄、10mL/分における20秒間のFmoc脱保護ステップ、さらにもう一度の2分間DMF洗浄および12mL/分で送達される活性化されたアミノ酸との30秒間のカップリングステップを有する。ペプチドACP(65-74)を合成することによりこのアプローチを試験した。ACP(65-74)は、調製が困難であると考慮されたため、このペプチドは、流動に基づくSPPSプラットフォームを検証するためのモデルとして機能した。調製がより容易なペプチドを合成する場合、合成時間の実質的低減が達成され得ることが考えられる。
【0066】
従来のシステムにおいて、ACP(65-74)の合成における主要な合成不純物は、クロマトグラフィーによる分解能を有するVal欠失である。流動に基づくSPPSプラットフォーム方法論によるACP(65-74)の合成のためのLCMSデータを、2種の対照と共に
図4A~
図4Dに示す。上述のプロトコールおよびHATUカップリング剤の使用により、僅かなVal欠失生成物が観察された。HBTUを使用する場合、より多くのVal欠失が観察され、以前の報告と一貫する。流動に基づくSPPSプラットフォームにより、但し室温で合成されたACP(65-74)は、大きなValおよびGln欠失を示し、温度が重要であることを確認した。室温合成および類似のバッチ合成由来の生成物組成の間に大きな差は観察されなかった。2種の追加的な「困難な」ペプチドである、コノトキシンバリアントおよびHIV-1プロテアーゼ断片も合成した。LCMSデータを
図5A~
図5Bに示す。これらのペプチドは両者共に、活性化においてラセミ化するために観察されたシステイン残基を含有した。したがって、ペプチドGCFを使用したモデル試験を行った。モデル試験において、
図6A~
図6Eに示す通り、1%未満のジアステレオマーを産生したいくつかの条件が見出された。このレベルのラセミ化は、Fmocプロトコールの文献と一貫する。
【0067】
システインのための修飾されたカップリング条件を使用して、コノトキシンバリアントおよびHIV-1プロテアーゼ断片を0.1mmolスケールで調製した。89ミリグラム(53%)の粗コノトキシンおよび90mg(43%)の粗HIV-Iプロテアーゼ断片を単離した。合成タンパク質の調製におけるフロープラットフォームの有用性を探索するために、プロテインAのZドメインに基づく58残基のトリヘリックスタンパク質(アフィボディと称される)を調製した。
図7Aに示す合成戦略は、天然の化学的ライゲーションにおける使用のためのチオエステル前駆体としてペプチド-ヒドラジドを使用した。ペプチドヒドラジドをNaNO
2により酸化して、C末端ペプチド-アジドを形成することができ、これはチオールと反応して、ペプチドチオエステルを形成することができる。粗合成ペプチドのためのLCMSデータを
図7B~
図7Dに示す。Boc in-situ中和方法を使用してこれらのペプチドのバリアントも調製したところ、これらのペプチドが、同様の粗品質であることが判明した(
図8A~
図8F)。保持時間シフトは、異なるクロマトグラフィー条件ならびにBocおよびFmoc戦略による天然の化学的ライゲーションのために調製されたペプチドにおける僅かな変動によるものである。アフィボディのための各ペプチドを精製し(
図9)、次に、アフィボディを合成し、精製後に高度に純粋な全長アフィボディを単離した(
図7E)。
【0068】
バッチモードにおいてこのプロトコールを実行することが可能であったが、流動に基づくプラットフォームは、多数の顕著な障害物を克服した。第一に、完全に密封されたリアクタおよび予熱ループを温度制御された槽に浸漬し、これにより、樹脂床に達する直前に一貫した制御された様式で試薬が加熱されることが可能となった。これは、一部のバッチシステムでは困難であると思われる。第二に、溶媒および試薬の送達のための低容積リアクタ(約2.5mL)および細いチューブの使用は、僅か20mLの溶媒による効率的な洗浄を可能にした。対照的に、バッチモード自動および手動合成は、典型的に、大容積の溶媒(洗浄につき約70mL)を使用する。第三に、低コストで、機械またはガラスショップ支持体を用いることなく、一般実験機器からフロープラットフォームを組み立てた。第四に、二重カップリング、二重脱保護、比色検査または樹脂混合を為すことなく、高品質ペプチドを速く得た。ACP(65-74)による試験において、Valの二重カップリングおよび先行するGlnの二重脱保護の後に、Val欠失ペプチドの減少は観察されなかった。これらの追加的なステップは、多くの場合、バッチモード合成において用いられる。最後に、流動に基づくSPPSシステムは、リアクタの直径を増加させることにより、より大規模な合成スケールに適応させることができた。例えば、リアクタ直径を倍加させ、得られたリアクタを使用して、正確に同じプロトコールを使用して0.2mmolスケールでACP(65-74)を合成した。合成スケールを増加させるための別の選択肢は、リアクタの長さを単純に増加させることである。しかし、この戦略は、背圧を有意に増加させ、これにより合成の際に困難が生じ得る。本実施例における流動に基づくSPPSプラットフォームは、ポリペプチドの急速Fmoc合成を可能にした。60℃における流動下で、アミド結合形成およびFmoc除去は、迅速(数秒以内)であり、反応時間増加により改善しなかったことが判明した。本実施例における流動に基づくFmocシステムを使用して、1営業日で3個のアフィボディセグメントを合成および開裂することができた。対照的に、15分間のサイクル時間による最適化されたBoc in-situ中和方法を使用した同様のペプチドの産生は、3日間超を必要とした。加えて、精製ペプチドをライゲーションして、合成タンパク質を作製した。このアプローチは、容易にライゲーションされてより大型の断片を生じる、高度に純粋な中程度の大きさのペプチドの急速産生を可能にした。
【0069】
(実施例2)
本実施例は、脱保護ステップ時間の決定について記載する。インラインUV-Vis検出器による流出液のリアルタイムモニタリングは、脱保護ステップの長さが低減されることを可能にした。304nmにおけるリアクタ流出液のUV吸光度をモニターすることにより、Fmoc除去の速度を調査した。頑強なFmoc除去のための最小処理時間を決定するために、脱保護溶液を10mL/分で60秒間、30秒間、15秒間または6秒間流した。10mL/分における20秒間は、完全Fmoc除去に十分であることが判明した。効果的なFmoc除去は、6秒間ステップにおいても達成された。
【0070】
Nα脱保護プロトコールの開発において、DMFに溶解したピペリジンを標準ブロッキング解除試薬として選択した。カラムに進入する際に脱保護溶液が希釈されるため、より一般的なDMFにおける20%(v/v)を上回る、DMFにおける50%(v/v)の濃度を選択した。したがって、より高濃度が望ましかった。最小時間で有効濃度に達するよう、流量を10mL/分(最大)に設定した。脱保護ステップの長さを決定するために、全残基の二重脱保護によりALFペプチドを合成し、304nmにおける流出液のUV吸光度をモニターした。ピペリジンおよびDMFは、この波長において十分に吸収しなかったが、脱保護生成物であるピペリジン-DBFは吸収した。したがって、第2の脱保護後の第2のピークの存在は、初期脱保護が不適切であったことを示した。60秒間、30秒間および15秒間の脱保護の後に第2のピークは観察されず、6秒間の初期脱保護の後に非常に小さいピークのみが観察された。あらゆる事例において、第1の脱保護は10mL/分であり、第2は10mL/分を1分間であった。Fmoc除去は、配列依存性であることが報告されたため、20秒間の最終脱保護時間を選択した。しかし、6秒間の脱保護ステップ(およびさらにより迅速な脱保護ステップ)が、多くのペプチド合成プロセスに適すると考えられる。その上、脱保護剤の流量および/または脱保護剤を含む流れの温度を増加させることにより、頑強なFmoc除去を1秒間またはそれ未満で達成することができることが考えられる。
【0071】
樹脂からピペリジン-DBF付加物を洗い流すために、Nα Fmoc基の除去よりも有意に長い時間を要するため、二重脱保護プロトコールを使用して、脱保護時間を決定する必要があった。吸光度がベースライン付近に戻るまで流出液を単純にモニターした場合、「脱保護」時間の大部分は、脱保護が完了した後に脱保護試薬による樹脂の洗浄に費やされた。
【0072】
図10は、コノトキシン合成における最後の8残基の取り込みのUV記録を示す。マイナスのマークは、手動動作を表す。スキャンされたトレースの色を増強し、タイムラインを加え、ゼロをトレースの初めにした。1サイクルのマークは、以前の洗浄の終わりを示す1、カップリングの初めを示す2、カップリングの終わりを示す3、第1の洗浄の初めを示す4、第1の洗浄の終わりおよび脱保護の初めを示す5、ならびに脱保護の終わりおよび第2の洗浄の初めを示す6でアノテートした。1および2の間ならびに3および4の間で急速継ぎ手を動かした。サイクル時間における矛盾および見逃したマークは、ヒューマンエラーによるものであった。
【0073】
(実施例3)
本実施例は、洗浄ステップ時間の決定について記載する。インラインUV-Vis検出器による流出液のリアルタイムモニタリングは、洗浄ステップの時間が低減することを可能にした。304nmにおけるリアクタ流出液のUV吸光度をモニターすることにより、洗浄ステップの効率を体系的に調査した。次に、流量の関数として、リアクタからアミノ酸を洗い流すために必要とされる時間を調査した。使用される溶媒の総容積により洗浄効率が主に決定され、約16mLのDMFが、アミノ酸前駆体の99%の除去に必要とされることが決定された。しかし、約6mL/分を超える流量において、僅かに少ない溶媒が必要とされた。10mL/分における2分間のDMF洗浄が十分であることが結論付けられた。DMF洗浄がアミノ酸または脱保護溶液を完全に除去しなかった場合に理論上生じ得るアミノ酸の二重取り込みは、2分間の洗浄時間には観察されなかった。洗浄容積の増加は、粗ペプチド品質を改善しなかった。例えば、流量を増加させる、入口の幾何学を変化させて再循環を低減させる、および/またはリアクタのアスペクト比を低減させることにより、さらにより迅速な洗浄時間が観察され得ることが考えられる。理論に制約されることは望まないが、一部の事例において、洗浄が低減または排除される場合、粗ペプチド品質に容認できない減少が存在しないことがさらに考えられる。一部のこのような事例において、脱保護ステップに先立ち実質的にあらゆる活性化されたアミノ酸を除去しない、および/またはアミノ酸カップリングステップに先立ち実質的にあらゆる脱保護試薬を除去しない、アミノ酸付加サイクルを用いることができる。
【0074】
洗浄サイクルにおけるリアクタの目視観察は、DMF洗浄溶媒およびカップリング溶液の再循環および混合を示した。他の溶媒交換は、同じ挙動を示した。色および屈折率の差は、あらゆる交換の直接的観察を可能にした。これらの観察に基づき、連続的希釈モデルによって予測される通り、洗浄効率が、使用した溶媒の容積に主に依存したことが予想された。この理論を検査するために、ACP(65-74)の3連の合成において、リアクタ流出液のUV吸光度を304nmでモニターした。各合成において、2個の連続した残基を10mL/分で、2個を7mL/分で、2個を4mL/分で、2個を2mL/分で、最後の2個をlmL/分で洗浄した。洗浄速度をアミノ酸のブロックにランダムに割り当て、ブロックが同じ速度で2回洗浄されなかったことを確実にした。検出器が不飽和化するために必要とされる時間を残基毎に測定した。不飽和化は、アミノ酸濃度のおよそ99%低減を表す。洗浄が基本的に完全であるが、検出器における空気および粒子状混入の有意性が、より低いシグナルレベルのものよりも低いため、この洗浄効率を選択した。データを
図11に示す。指数部(パラメータb)は、有意にマイナス1を下回った。指数部の値は、より高い流量における検出器の不飽和化により少ない溶媒が必要とされることを意味した。不飽和化および流量の間の関係性は、提案される連続的希釈モデルと一貫しなかった。
【0075】
これらの結果に基づき、洗浄のために最大流量(10mL/分)を選択した。洗浄時間を2分間に設定し、これは、カップリング溶液の最終濃度を初期濃度の0.2%に確実に低減させた。この傾向は、10秒間で観察される効果的洗浄をもたらす、最大少なくとも100ml/分の洗浄速度により妥当である。例えば、洗浄液体流量を増加させることにより、さらにより迅速な洗浄時間を達成することができることが考えられる。不適切洗浄の可能な成果である二重取り込みは観察されなかった。使用した装置は、ピペリジン(UV吸光度は、利用できる波長がDMFと同様)の除去をモニターする直接的な仕方を提供しなかったため、同じ洗浄サイクルを第2の洗浄に使用した。ピペリジン-DVBと同じ速度でピペリジンが除去されることが想定された場合、
図10におけるUVトレースによって示される通り、2分間洗浄は、必要な洗浄時間の過大評価であった。アミノ酸付加サイクルの合計時間は、洗浄ステップを実質的に低減させることにより低減され得る。
【0076】
(実施例4)
本実施例は、最小カップリング時間の決定について記載する。2種のモデルペプチド:LYRAG-CONH2およびFmoc-ALF-CONH2を合成することにより、カップリング時間の効果を調査した。5種のアミノ酸付加サイクルのそれぞれのため、
図3に示す通り、60℃において90秒間、45秒間、30秒間、15秒間または7秒間の名目上の時間で全アミノ酸をカップリングした。LYRAG-CONH2のため、全残基が7秒間でカップリングされた場合、Arg欠失ペプチドの有意な増加を観察した。Fmoc-ALF-CONH2のため、カップリング時間の関数としての粗生成物の品質における有意な差は見出されなかった。これらの結果に基づき、30秒間のカップリング時間が十分であると結論付けられた。
【0077】
文献から、室温において、カップリング剤としてHBTUを使用して、100秒間未満でアミド結合形成が99%完全であることが一般に公知である。温度10℃上昇毎にこのプロセスの反応速度が倍加することが想定された場合、60℃におけるアミド結合形成は約6秒間で完了し、これは、アミノ酸付加サイクル時間を有意に減少させた。よって、あらゆるその後のカップリング試験を60℃で行って、副生物の形成を有意に増加させることなくサイクル時間を最小化した。このプラットフォームの重要な特色は、温度制御されたウォーターバスにリアクタおよび予熱ループを単純に配置する能力であった。予熱ループは、試薬が室温で貯蔵され、次にリアクタに進入する前に直ちに加熱されることを可能にし、試薬の熱分解が最小化されることを可能にした。
【0078】
アルギニン欠失をモニターすることができるため、モデルペプチドとしてLYRAGを選択して、最小カップリング時間を決定した。90秒間、45秒間および30秒間の名目上のカップリング時間で、それぞれ4、8および12mL/分においてカップリング溶液を送達した。この流量は、2mmolのアミノ酸の送達を可能にした。このシステム(より高い流量を含むよう他のシステムを設計することができるが)において12mL/分を上回る流量を確実に得ることはできなかったため、15秒間の試行のために、カップリング溶液の半分を使用した(0.5mL N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)を含有するDMFに溶解した2.5mLの0.4M HBTUにおけるlmmolアミノ酸)。7秒間のカップリング時間において、急速継ぎ手を手動で動かすために費やされた時間(5~6秒間)は非常に顕著であるため、1.2mLのカップリング溶液を送達した。この容積は、予熱ループの容積であったため、カップリング溶液は、DMF洗浄によってこのラインから排除されるまでリアクタに達しなかった。10mL/分における洗浄は、1.2mLを排除するために7.2秒間を要し、7秒間のカップリング時間が得られた。他の実行において、カップリング溶液の名目上の容積を上回る約10%増加の送達に必要とされる時間と同様に、急速継ぎ手を動かすための5秒間を名目上のカップリング時間に加えた。入口ラインからDMF洗浄溶媒およびカップリング溶液が排除されるのに要する時間における差を減算した。より的確なカップリング時間は、93秒間、53秒間、39秒間、23秒間および7秒間であった。これは、リアクタからカップリング溶液を洗い流すのに必要とされる時間を含まない。7秒間のカップリングは、アルギニン欠失増加を示したため、保存的見積として30秒間のプロトコールを選択した。Fmoc-ALFを同じ手順で産生し、カップリング時間における低減によるペプチド品質の変化を示さなかった。データを
図3に示す。
【0079】
自動システムの使用、より高い流量の使用およびより高い温度の使用が、カップリング時間を実質的に低減させると考えられる。
【0080】
(実施例5)
本実施例は、システインラセミ化の最小化(minization)について記載する。ペプチドPnlA(A10L)コノトキシン、HIV-l PR(81-99)およびGCFを使用して、システインラセミ化を最小化するための技法を探索した。
【0081】
PnlA(A10L)コノトキシンおよびHIV-l PR(81-99)の初期合成において、他のあらゆるアミノ酸と同様にシステインを活性化させ(1当量のHBTU、2.9当量のDIEA)、有意なジアステレオトピック不純物が生成物に観察された。これらは、システインラセミ化の結果であると決定された。ラセミ化により形成されたジアステレオマー(diasteromer)は、RP-HPLCによる分解能を有したため、ラセミ化を低減させる条件を調査するために、モデルシステム、GCFを選択した。60℃の実行は1分間に、室温(RT)の実行は6分間にカップリング時間を増加させたことを除いて、標準合成手順を使用した。1当量のHBTU(5mL、0.4M)および2.9当量のDIEA(lmL)により、標準手順に従ってRink、GlyおよびPheを全て活性化させた。システインのために、下に要約される通りに様々な活性化手順を使用した。1mL未満のDIEAを使用した手順のために、DMFを使用して、この容積を置き換えた。後述する活性化方法に加えて、5のFmoc-D-Cys(Trt)-OHおよび活性化手順を使用して確証済みのジアステレオマーを産生した。4、5、6、7および確証済みのジアステレオマーのTICトレースを
図6に示す。図示されていない実行は、4から視覚的に識別不能であった。あらゆる事例において、活性化因子、添加物および2mmolのアミノ酸を5mLのDMFに溶解し、必要に応じて追加のDMFを添加した。使用直前に塩基を添加した。反応8は、追加の活性化因子、添加物または塩基なしで、単離されたC末端ペンタフルオロフェニル(Pfp)エステル(Fmoc-Cys(Trt)-OPfp)を用いた。表1は、抽出されたイオン電流の統合により定量化されたラセミ化による結果を要約する。これは、TICベースラインを下回るラセミ化の定量化を可能にする。得られた結果は、以前の報告と一貫した。
【0082】
【0083】
図6A~
図6Eは、様々なシステイン活性化スキームにより産生されたGCFを示す。AおよびBにおける所望の生成物およびジアステレオマーの間で溶出するピークは、C末端カルボキサミドの加水分解であった。ジアステレオマーは、かろうじて目に見えた。条件を表1に収載する。
図6A~
図6Dにおける条件は、反応(a)5、(b)7、(c)8、(d)4および(e)確証済みのGly-D-Cys-L-Pheのクロマトグラムを示す。全イオン電流を各クロマトグラムに表示する。
【0084】
(実施例6)
本実施例は、アフィボディの合成について記載する。本セクションを通して、ライゲーションバッファーは、指定のpHの6M GnHCl、0.2Mリン酸ナトリウムバッファーを指す;バッファーPは、20mM Tris、150mM NaCl溶液、pH=7.5である。
【0085】
酸化化学を使用して、3個の断片をライゲーションして、合成58残基のタンパク質にした。チアゾリジン(Thiozolidine)は、使用した条件において不安定であることが判明したため、5mLのライゲーションバッファー、pH=4に溶解した83mgのメトキシアミン塩酸塩で一晩処理することにより、9.6mgの断片Thz-[28-39]-CONHNH
2を遊離N末端システインへと変換した。定量的変換が観察された。チオエステルが直接的にアクセスされる場合に使用されるCからNへの合成の代わりに、
図5Aに示すNからCへの組み立てを用いた。1mLライゲーションバッファー、pH=3に溶解した11mgの精製断片[1-27]CONHNH
2の溶液に0.1mLの200mM水性NaNO
2を0℃で滴下添加することにより、断片[1-27]-CONHNH
2を酸化させてC末端アジドとした。反応は20分間0℃で進行させ、続いて4.4mLのライゲーションバッファー(pH=7、室温(RT))に溶解した172mgの4-メルカプトフェニル酢酸(MPAA)および34mgのtris(2-カルボキシエチル)ホスフィン・HCl(TCEP・HCl)の添加によりクエンチした。得られたチオエステルに、3.4mLの粗メトキシアミン処理した断片Thz-[28-39]-CONHNH
2を添加した。2時間RTライゲーションの後に、粗反応混合物の半分をRP-HPLCにより精製し、2mgの高純粋の材料を回収した。このうち0.6mgを、0.1mLのライゲーションバッファーに溶解し、0.0lmLの200mM水性NaNO
2を0℃で滴下添加ことにより酸化させた。反応を26分間進行させ、続いて0.1mLのライゲーションバッファー(pH=7、RT)に溶解した3.1mgのMPAAおよび0.78mgのTCEP・HClの添加によりクエンチした。pHを7に調整し、0.3mgの断片Cys-[40-58]-CONH
2を反応混合物に添加した。2時間のRTのライゲーションの後に、混合物を0.21mLのバッファーPで希釈し、次にさらに0.63mLのバッファーPを加えて、得られたアフィボディをフォールディングさせた。3kDa膜上で粗混合物を濃縮して、最終容積0.075mLとした。粗製のフォールディングしたタンパク質を3mLのバッファーPに溶解した36mgのTCEP・HClで希釈し、均一になるよう精製した(
図9)。
【0086】
図9A~
図9Eは、精製アフィボディ合成中間体および最終生成物のLC-MSクロマトグラムを示す。
図9A~
図9Eは、(a)断片[1-27]CONHNH
2、(b)断片Thz-[28-39]-CONHNH
2、(c)断片Cys-[40-58]-CONH
2、(d)ライゲーション断片[1-39]-CONHNH
2および(e)最終アフィボディのクロマトグラムである。
【0087】
(比較実施例6)
本実施例は、従来の手動Boc in-situ中和方法を使用したアフィボディの合成について記載する。
【0088】
手動Boc in-situ中和方法を使用して、匹敵するアフィボディ断片を合成した。流動に基づくSPPSプラットフォームにおいて合成された粗ペプチドの隣に、これらの粗ペプチドのLC-MSデータを
図8A~
図8Fに示す。あらゆる事例において、品質は匹敵した。保持時間シフトは、クロマトグラフィー条件の変化ならびにBocおよびFmoc戦略によるライゲーションのために調製された僅かに異なるペプチドによるものである。
【0089】
(実施例7)
本実施例は、流動に基づくSPPSのために使用されたシステムの設計について記載する。本実施例を通じて、システムは合成機と称される。合成機の模式図を
図2Aに示す。HPLCポンプを使用して、使用後にポンプヘッド、リアクタおよびUV検出器を洗浄するためのメタノールパージ溶媒;合成において試薬および副産物を除去するためのDMF洗浄溶媒;またはN末端を脱保護するためのDMFに溶解した50%(v/v)ピペリジンのいずれかを送達した。バルブ1および2の位置は、いずれの流体が送達されるか決定した。シリンジポンプを使用して、カップリング溶液を送達した。シリンジポンプおよびHPLCポンプ間を切り換えるため、HPLCポンプの出口からシリンジポンプにおけるシリンジへと急速継ぎ手を手動で動かした。シリンジポンプおよびバルブ間のラインが、カップリング溶液を保持するため、バルブは、一般に無効であり、次のサイクルにおける不正確な取り込みをもたらす。カラムおよび1.2mL予熱ループ(図示せず)をウォーターバスに浸して、一定の60℃を維持した。バルブ3および4は、システインラセミ化試験において遭遇されるDCC活性化の尿素副産物等、沈殿物で詰まった場合に、UV検出器からの排除に使用される高圧バイパスループを選択した。ループは、ラインにおけるカラムなしでの検出器のパージにも使用された。
【0090】
Varian Prostar 210 HPLCポンプ、KD Scientific KDS200シリンジポンプ、304nmに設定されたVarian Prostar 320 UV検出器、Amersham Pharmacia Biotechチャート記録計およびVWR 39032-214ウォーターバスを合成機において使用した。HPLCポンプは、名目上の流量の約95%を送達した。使い捨て10mLシリンジ(BD309604)を使用して、カップリング溶液を送達した。バルブ1は、Swagelok 1/8”三方弁(S5-41GXS2)であった。システムにおける他のバルブは、Swagelok 1/16”三方弁(SS-41GXS1)であった。バルブ1からバルブ2までのメタノール、DMFおよび50%(v/v)ピペリジンラインは、1/8”OD、1/16”ID FEP(Idex 1521)であった。バルブ3および4の間のラインは、1/16”OD、0.010”ID peek(Idex 1531)であった。他のあらゆるラインは、1/16”OD、0.030”ID PFA(Idex 1514L)であった。バルブ2の1/16”入口へと1/8”洗浄および脱保護ラインを取り付けるため、Swagelok 1/8”から1/16”への(SS-200-6-1)異型ユニオンを使用し、続いて1/16”チューブの短いセクションを使用した。急速継ぎ手およびリアクタ間のチューブを除いて、全ての長さは最小であった。これは、リアクタと共に浸された、リアクタに達する前に反応物が60℃であることを確実にするための予熱ループとして機能する、2.6m(1.2mL)のコイルを含んだ。チューブが連結される必要がある場合は常に、Swagelok 1/16”ユニオンを使用した(SS-100-6)。これらを使用して、予熱ループを取り付け、バルブ4からラインへとカラムの出口を連結し、切断されたバイパスループを修復した。手動で交換した急速継ぎ手は、10-32メスHPLCフィッティング(Idex P-659)へのメスルアーであった。これは、シリンジポンプにおけるシリンジ、またはバルブ3(Idex P-656)からのラインにおける10-32メスフィッティングへと嵌合するオスルアーへと直接的に接続した。UV検出器およびチャート記録計間の接続はデータリンクである(3本の18ga絶縁銅線)。
【0091】
図2Bは、リアクタ組み立てを示す。リアクタは、各末端に標準圧縮フィッティング(3/8”から1/16”への異型ユニオン)を備えるチューブからなった。下流末端において、フリットも存在した。これは、リアクタの内部に適合するよう設計された支持体により配置され、該末端におけるフィッティングの底に対して据え付ける。様々なフリット多孔度を使用した。後述する品番は、最も一般的に使用される20ミクロンフリットのためのものであった。本体は、外径3/8”および内径1/4”を有するPFAチューブの3.5インチセグメントであった。フリットは、1/4”焼結ステンレス鋼ディスク1/16”厚であった。フリット支持体は、1/4”OD PTFEチューブの0.5”長さであった。フィッティングが締められると、ナットは、フィッティング本体に対しフェルールを圧縮し、リアクタ本体をフィッティング本体へと密封した。これは、フリットに対しリアクタ本体も圧縮し、フリットに対する内部密封を形成した。それぞれ品番S1805K73および94461314として、McMaster-Carrからリアクタ本体およびフリットを購入した。ナット、フェルールおよびフィッティング本体は、セットとして入手することができ、1/16”ナットおよびフェルールは、品番SS-600-6-1としてSwagelokから得られる。置き換えフェルールは、SS-600-SETとして入手することができる。長さに本体およびフリット支持体を先ずカットし、末端が四角となることを確実にすることにより、リアクタを組み立てた。これらの操作のために鋭いかみそりの刃および震えない手を使用した。次に、出口(下流)末端を組み立てた。固体の清潔な表面上にフリットを置き、これにリアクタ本体を押圧した。フリットが四角であり、リアクタの終わりで洗い流したことを検証した後に、フリット支持体を僅かに押し、その最終位置までフリットを押す。フィッティング本体にリアクタ本体をしっかりと据え付けることにより、フリットをその最終位置に押した。フリットが四角であり、フェルール下に適宜配置されたことが検証されると、メーカーの説明書に従ってフィッティングを設置した。ひとたび密封すると、フリットを除去して再度据え付けることができない。最後に、メーカーの説明書に従って入口フィッティングを設置した。ステンレス鋼本体を備える高圧リアクタも構築した。この場合、フリットによる密封に影響を与えるために、下流フィッティングは、規格を越えて堅く締める必要がある。リアクタは典型的に、3~8合成毎に交換した。リアクタを交換する際に、フェルール、フリットおよびリアクタ本体を再利用しない。他のあらゆる部品は再利用する。リアクタ本体を半分にカットすることにより、ナットを回収した。
【0092】
リアクタを充填するために、上流フィッティング本体を除去し、メタノール中の樹脂のスラリーをピペットで入れた。リアクタを完全にメタノールで満たし、フィッティング本体を再度設置した。急速継ぎ手に取り付け、リアクタに取り付ける前にHPLCポンプを実行することにより、入口ラインおよび予熱ループを溶媒で満たした。次に、あらゆる小泡が上に移動し、樹脂湿潤に干渉しないように、リアクタをウォーターバスにおいて正立に維持した。第1のカップリングの前に、10ml/分におけるDMFで樹脂を2分間洗浄した。
【0093】
(実施例8)
本実施例は、より迅速なサイクル時間および合成スケール増加を可能にする、実施例10~11および13~17における流動に基づくSPPSのために使用される大規模リアクタの設計について記載する。実施例7に記載されている「第一世代」リアクタとは対照的に、実施例を通して、このリアクタは、「第二世代」リアクタと称される。
【0094】
図12は、より大型のリアクタを示す。実施例1~7における全合成に使用される小規模リアクタ(即ち、第一世代リアクタ)の設計原理を、より大規模なものに直接的に置き換えた。しかし、匹敵するサイクルを保存するために、リアクタの容積は一定となる必要があった。5/8”OD、1/2”IDチューブへとスケールアップする際に、2つの問題に遭遇した。第一に、標準5/8”から1/16”への圧縮フィッティングが存在しないことであった。第二に、5/8”フィッティング間の最小距離が極めて大きく、大きい最小容積が存在することを意味する。第1の問題を克服するために、5/8”から3/8”へのフィッティングと、続く3/8”から1/16”へのフィッティングを使用したが、これは、既に大容積であるリアクタを大幅に増加させる3/8”チューブの連結長さを必要とした。
【0095】
リアクタ容積を低減させるために、名目上の1/2”ODセグメントと、続く1/4”貫通穴を有する3/8”ODセグメントからなる316SSインサートを機械加工した。5/8”から3/8”への異型ユニオンに穴を開けて、3/8”貫通穴を得て、インサートを据え付ける、3/8”フェルールをスエージ加工した。その後、インサートをフィッティングから分離することはできない。設置されると、このインサート-フィッティングの1/2”部分がリアクタの上部に置かれ、容積を限定した。
【0096】
これは効果的であったが、依然として、1/4”貫通穴由来の大容積が存在する。この容積は、1/4”OD、1/8”ID PFAチューブを挿入し、これをカットして洗い流すことにより低減された。容積をさらに低減させるために、加熱して、チューブのセクションを引っ張ってより細い直径にし、これに通し、インサートにおける全チューブが適切な直径のものとなるまで引くことにより、1/8”OD、1/16”ID PFAチューブを挿入した。チューブの両側をカットして洗い流し、引っ張られたセクションを廃棄した。3/8”から1/16”への異型ユニオンを3/8”セグメントの開口端に設置して、システムの残りと連動させた。このインサート-フィッティングは、
図12A(左)に写真撮影されている。上流インサートフィッティングが、フリットの様にチューブ内に永続的に密封されるようになることを防止するために、名目上の1/2”セグメントを機械加工して0.496”とし、磨いた。
【0097】
出口側のために同様の小片を機械加工し、適切な長さの1/2”セクションをフェルール下のフリットに据え付けた。全溶媒がフリットの小さい中央セクションを通されることを防止するために、3/8”直径ステップ0.05”の深さをカットした。このステップの底は、水平から31度で1/8”貫通穴へと先細になった(標準ドリルビットで先細にする)。1/8”OD、1/16”ID PFAチューブを挿入して、容積をさらに限定した。出口インサートの1/2”セクションは、フリットを配置し、フェルールの下に大部分は置いたため、標準完了は適切であった。
図12Aに写真撮影されているものは、PTFEであり、上流インサートと正確に同じ仕方で、穴を開けた5/8”から3/8”への異型ユニオンに設置した。
図12Fに写真撮影された切り取り断面図におけるリアクタを含むその後のリアクタは、ステンレス鋼出口インサートを使用した。3/8”から1/16”への異型ユニオンを3/8”セグメントの開口端に設置して、システムの残りと連動させた。
【0098】
製作を単純化するために、小穴を有するインサートを直接的に作製するのではなく、チューブを使用して、インサートの内部容積を限定した。
【0099】
リアクタを組み立てるために、フリットを押圧し、下流インサート-フィッティングを規則的なフィッティングとして設置した。次に、上流インサート-フィッティングを規則的なフィッティングとして設置した。これを普通より小さくカットし磨いたにもかかわらず、上流インサート(inset)-フィッティングは非常に密着し、除去が困難であった。その後のリアクタのため、
図12Bに示すアルミニウムスペーサーを使用して、リアクタが一貫した容積を有することを可能にした。スペーサーは、内部容積を2mLに設定し、リアクタの再現性のある組み立てを可能にした。さらに、スペーサーは、合成後の入口インサート-フィッティングの除去に役立った。スペーサーは、ナットが下に移動することを防止し、代わりに、ナットが回転した場合にインサート-フィッティングを駆出した。垂直ウィンドウをスペーサーに加えて、適切な光学的アクセスを維持した。組み立てた大型のリアクタの写真を
図12Dに示す。
【0100】
リアクタを充填するために、入口インサート-フィッティングを除去し、樹脂を添加して乾かし、リアクタをメタノールで満たした。次に、入口インサート-フィッティングを熱交換器に取り付け、メタノールでパージした。熱交換器からこれを除去することなく、パージした入口インサート-フィッティングを設置し、出口インサート-フィッティングを通してリアクタから過剰なメタノールを出した。大きな泡がある場合、リアクタを逆さまに回転し(入口を出口より下にする)、パージした。これにより泡を追い出せなかった場合、リアクタを解体し、充填手順を反復した。合成後に樹脂を除去するために、10mLの空気で満たしたシリンジを、熱交換器入口(試薬シリンジが取り付けられている)におけるルアーロック急速継ぎ手に取り付け、空気の送達に使用した。これは、熱交換器、リアクタおよび廃棄物ラインから溶媒を除去した。次に、熱交換器および廃棄物ラインをリアクタから接続切断し、入口インサート-フィッティングを除去した。樹脂をDCMに懸濁し、フリット付きシリンジ(Toviq)へとデカントし、DCMで4回洗浄し、直ちに開裂させた、あるいは貯蔵のために減圧下で乾燥させた。
【0101】
(実施例9)
本実施例は、第一世代リアクタにおける圧力の低減に使用される技法について記載する。圧力降下は、本質的に、樹脂が原因で生じた。高圧流動後に静止期間を用いることにより、あるいは大型のリアクタを使用することにより、圧力降下を克服した。
【0102】
低圧ポリマーリアクタを使用したため、HPLCポンプにおける過圧アラームを、240psiでポンプを止めるよう設定し、これは時折始動した。アラームが始動すると、システムは30秒間静止し、さらなる出来事なしでポンプを再始動させた。この静止期において、樹脂は目に見えて拡大した。HPLCポンプ圧力を観察することにより、ビーズに高すぎる圧力が加えられる場合、圧縮し始めることが結論付けられた。これは、床にわたる圧力降下および圧縮の速度を増加させ、これは過圧アラームを速く始動させる。Bio-Rad製のゲル浸透クロマトグラフィーに利用できる同様の1%ジビニルベンゼン架橋ポリスチレン樹脂は、ひとたび膨張すると非常に柔らかいため、重力駆動分離のみのために推奨された。
【0103】
このような事象の直後にリアクタを解体すると、樹脂は、固体ブロックのように見え、ピペットチップで探ると、硬い塊のように感じた。これを直ちにピペットで除去することは困難であった。数十秒後に、樹脂は弛緩し、ピペットで除去することができた。高圧ステンレス鋼リアクタを構築し、検査したが、圧縮された床を通る速い流れの維持に必要な非常な高圧(>1000psi)は、フリットからの樹脂の押し出しに奮闘した以前の連続的流動SPPSを連想させた。
【0104】
相対的に殆ど変形させることなくコースフリットの孔を樹脂が機械的に塞ぐことができるように、フリットおよび樹脂の境界で初期圧縮が行われたことが考えられた。この理論を検査するために、本来の40ミクロンフリットを、20ミクロンフリットに、また、より限定された試行においては、10ミクロンフリットおよび2ミクロンフリットに置き換えた。より小さい孔は、この問題を排除しないが、その重大性を定性的に低減するように思われた。このことから、この問題が樹脂に固有であり、より低い流量で実行すること、または床の高さを低減させること(より小さいスケールおよび/またはより大きいリアクタを使用)によってのみ排除することができると結論付けられた。
【0105】
より硬い、より高度に架橋された樹脂の使用が報告されたが、得られたペプチドは劣った品質のものであった。ここで使用した解法は、高圧事象後に30秒間待機することであった。これは効果的かつ好都合であり、リアクタの寸法をさらに最適化させることなく、合理的スケールでの進行を可能にした。1/2”IDリアクタ(実施例8に記載)による試行は、同じサイクルで操作する、最大200mgの樹脂による過圧を示さなかった。
【0106】
これらの問題を克服し、合成を加速させ、合成スケールを増加させるために、実施例8に記載されている大規模リアクタを構築した。
【0107】
(実施例10)
本実施例は、6分間におけるALFALFA-CONHNH2の調製について記載する。以前の実施例において使用したHPLCポンプのための大容量ポンプヘッドを使用して、洗浄ステップにおいて100ml/分のDMF、脱保護ステップにおいて100ml/分のDMFに溶解した50%ピペリジンおよびカップリングステップにおいて12ml/分の活性化されたアミノ酸を送達した。ウォーターバスに浸漬することにより、リアクタおよび予熱ループを60℃に維持した。
【0108】
図13に示す装置を構築した。リザーバ1は、活性化されたアラニンを含有し、リザーバ2は、活性化されたロイシンを含有し、リザーバ3は、活性化されたフェニルアラニンを含有し、リザーバ4は、DMFに溶解した50%ピペリジンを含有し、リザーバ5は、DMFを含有した。各活性化されたアミノ酸は、50mlのDMFに溶解した0.4M HBTUを20mmolのFmoc保護アミノ酸と組み合わせることにより調製した。実行を始める直前に、10mLのDIEAをアミノ酸リザーバのそれぞれに添加した。所望の流量を得るために、1.5バールの窒素上部圧力を各リザーバに加えた。ポンプ上流の全チューブは、1/8”OD、1/16”ID PFAであった。三方弁は、Swagelok 1/8”三方弁であった。三方弁の共通ラインは、試薬間で選択される切り換えバルブ(Valco C25-6180)を通った。全バルブを手動で制御した。ポンプは、100ml/分ポンプヘッドを備えるVarian Prostar 210であった。予熱ループは、1.8mの1/16”OD、0.030”ID PFAチューブであった。使用したリアクタは、
図12に示す、実施例8に記載されている、より大型のリアクタであった。リアクタは、当業者に公知の標準方法を使用して市販のクロロトリチルクロライド樹脂から調製した、120mgのクロロトリチルヒドラジド官能化ポリスチレン樹脂を含有した。より大型のリアクタの使用は、100ml/分における管理し易い圧力降下の維持に役立った。
【0109】
1回の合成サイクルは、次の通りに行った。先ず、20秒間カップリングを12ml/分で行った。マルチポートバルブを所望のアミノ酸に設定し、三方弁をアミノ酸に設定した。他の全三方弁をDMFに設定した。20秒後に、選択された三方弁をアミノ酸からDMFに切り換え、ポンプ流量を100ml/分に設定した。5秒後に、マルチポートバルブをピペリジンに切り換えた。さらに5秒後に、選択された三方弁をDMFからピペリジンに切り換えた。10秒後に、選択された三方弁をDMFに戻すよう切り換えた。5秒後に、マルチポートバルブを次の所望のアミノ酸に動かした。さらに5秒後に、流量を12ml/分に低減させ、選択された三方弁をDMFから次の所望のアミノ酸に切り換え、次のサイクルを開始した。ステップ毎の合計時間を次に示す:20秒間のカップリング、10秒間の洗浄、10秒間の脱保護および10秒間の洗浄。サイクル毎の合計時間は50秒間であった。粗材料のLC-MS分析から得た全イオンクロマトグラムを
図14に示す。
【0110】
上に挙げた時間は全て、99%+収率の達成に必要とされる時間の保存的見積であると考えられる。現在、20ml/分の流量において、脱保護が5秒間で完了することが公知であり、100ml/分において、脱保護が実質的に5秒間未満を必要とすることが予想される。例えば、追加の三方弁を統合することにより、共通モデルペプチドACP(65-74)等、より長いペプチドを調製することができる。本実施例に記載されている総合戦略は、実施例1に記載されているサイクルを使用して産生されるものを含むいずれかのペプチドの産生のために実行可能であると予想される。
【0111】
(実施例11)
本実施例は、合成時間が(実施例1と比べて)実質的に低減される、改善された合成スキームについて記載する。本実施例における合成のためのサイクル時間は、3分間未満であった。実施例1と比べてサイクル時間を低減させるために、洗浄ステップを調整した。ポンプ上流の全チューブを、1/8”OD 1/16”ID PFAに置き換え、ポンプ上流の2個のバルブを、1/8”Swagelok三方弁に置き換えた。予熱ループを除くチューブの長さは全て最小であり、実施例8に記載されているリアクタを使用した。他の全システム構成要素は、実施例1と比べて実質的に変化させなかった。明確に後述されていなければ、あらゆる手順は、実施例1と比べて同じままであった。
【0112】
より大型のチューブおよび大容量ポンプヘッド(最大50ml/分)を使用して、20ml/分でDMFおよび脱保護試薬を送達した。
図11に基づき予想される通り、あらゆる事例において、20ml/分における1分間の洗浄が適切であると証明した。さらに、5秒間の脱保護ステップが、これらの流量において適切であると判明した。カップリングステップは変化させなかった。これは、手動ステップが行われるスピードに応じて、2分間35秒間から約2分間50秒間の総サイクル時間を生じた。大部分の使用者は、より高い流量におけるシステムを手動で操作することが困難であるため、最大50ml/分の代わりに20ml/分に洗浄を設定した。自動化を使用して、このような人力の限界を克服し、十分に大型のポンプにより、1残基当たり約10秒間のサイクルの実行を可能にすることができることが予想される。
【0113】
このサイクルを使用して作製したペプチドの2種のクロマトグラムを
図15に示す。各事例において、主ピークが所望の生成物である。これらは、この長さのペプチドの典型的な結果である。
【0114】
(実施例12)
本実施例は、実施例1~11および13~18において使用した材料ならびに実施例1~11において使用した方法について、より詳細に記載する。
【0115】
2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩(HBTU)、2-(7-アザ-1Hベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩(HATU)、ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)およびNα-Fmoc保護されたアミノ酸は、Chem-Impex International、IL、NovaBioChem、Darmstadt、ドイツおよびPeptide Institute、日本から得た。4-メチルベンズヒドリルアミン官能化架橋ポリスチレン(MBHA樹脂)およびp-ベンジルオキシベンジルアルコール官能化架橋ポリスチレン(Wang樹脂)は、Anaspec、CAから得た。N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジクロロメタン(DCM)、ジエチルエーテル、メタノール(MeOH)およびHPLC等級アセトニトリルは、VWR、PAから得た。トリイソプロピルシラン(TIPS)および1,2エタンジチオールは、Alfa Aeser、MAから得た。トリフルオロ酢酸(TFA)は、NuGenTec、CA、Halocarbon、NJおよびSigma-Aldrich、MOから購入した。LC-MSのための溶媒は、TJ BakerおよびFlukaから購入した。他の全試薬は、Sigma-Aldrich、MOから購入した。
【0116】
これらの実験を通して使用した共通溶媒混合物を次に示す:水に溶解した0.1%(v/v)TFA(A)、水に溶解した0.1%(v/v)ギ酸(A’)、アセトニトリルに溶解した0.1%(v/v)TFA(B)およびアセトニトリルに溶解した0.1%(v/v)ギ酸(B’)。
【0117】
図4DにおけるACP(65-74)バッチを除く全ペプチドを、流動に基づくSPPSシステムにおいて合成した。
図4Dおよび4CにおけるACP(65-74)バッチおよびACP(65-74)流動RTを除く全ペプチドを、予熱ループ(合成機設計を参照)による使用直前に予熱した試薬により60℃で合成した。1回の合成サイクルは、アミノ酸曝露ステップ(例えば、アミド結合形成、実施例においてカップリングとも称される)、アミノ酸除去ステップ(例えば、カップリング試薬の除去、実施例において洗浄ステップとも称される)、脱保護剤曝露ステップ(例えば、Nα Fmoc除去、実施例において脱保護とも称される)および脱保護剤除去ステップ(例えば、脱保護試薬および反応生成物、ピペリジン-ジベンゾフルベン(ピペリジン-DBF)の除去、実施例において洗浄とも称される)からなった。
【0118】
注記されていなければ、カップリングは、実施例1~7において12ml/分で(およそ30秒間)次のカップリング溶液を送達することにより行った。活性化されたカップリング溶液は、5mlのDMFにおける0.4M HBTUおよび1mLのDIEAに溶解した2mmolのNα-Fmocおよび側鎖保護されたアミノ酸からなった。DMFにおける5mLの0.4M HBTU、0.687mLの純DMFおよび0.313mLのDIEAにシステインを溶解した。両方の事例において、使用前に最大数時間HBTU溶液にアミノ酸を溶解し、使用の2分以内にDIEAを添加した。容積測定をRT(20℃)で行った。
図4Aに示すACP(65-74)は、上述の溶液においてHATUをHBTUの代わりにして合成した。
【0119】
次に、10mL/分で2分間にわたり送達した20mLのDMFによりカップリング溶液を除去し、次に、l0mL/分で20秒間にわたり送達したDMFに溶解した3.3mLの50%(v/v)ピペリジンによりNα-Fmoc保護基を除去した。10ml/分で2分間にわたり送達した20mLのDMFにより、過剰なピペリジンおよびピペリジン-DBFを除去して、1サイクルを完了した。
【0120】
100mgの1%ジビニルベンゼン架橋したポリスチレン樹脂において全ペプチドを合成した。C末端カルボキサミドペプチドを産生するために、1グラム当たり1mmolの充填によるMBHA官能化樹脂を使用し、カップリングした第1の残基は、TFAに不安定なRinkリンカーであった。ライゲーションのためのC末端ヒドラジドペプチドを産生するために、後述の通りに官能化したWang樹脂を使用した。充填は0.6mmol/g(0.06mmolスケール)であった。
【0121】
TFAにおける2.5%(v/v)水および2.5%(v/v)TIPSで2時間処理することにより、非システイン含有カルボキサミドペプチドを樹脂から開裂させ、側鎖を脱保護した。TFAにおける2.5%(v/v)EDT、2.5%(v/v)TIPSおよび1%(v/v)水で2時間処理することにより、システイン含有カルボキサミドペプチドを樹脂から開裂させ、側鎖を脱保護した。TFAにおける5%(v/v)EDT、5%(v/v)TIPSおよび2.5%(v/v)水で2時間処理することにより、ヒドラジドペプチドを開裂させた。あらゆる事例において、樹脂を除去し、圧縮空気を使用して、RTで開裂溶液を蒸発乾固させた。得られた固体を冷ジエチルエーテルで3回洗浄し、50%A/50%B(v/v)に溶解し、凍結乾燥した。側鎖保護を次に示す:Arg(Pbf)、Tyr(tBu)、Lys(Boc)、Asp(OtBu)、Gln(Trt)、Ser(tBu)、His(Trt)、Asn(Trt)、Trp(Boc)、Glu(OtBu)、Thr(tBu)、Cys(Trt)。
【0122】
Wang樹脂を次の通りに官能化した:500ml丸底フラスコに5.47gのWang樹脂を添加し、98mLのDCMおよび1.12mLのN-メチルモルホリンに懸濁した。これを氷浴中で5分間撹拌し、2.03gのp-クロロギ酸ニトロフェノールを粉末として添加した。この混合物を8.5時間撹拌した。槽における氷は補充せず、これにより、反応物はゆっくりとRTに達した。混合物を濾過し、DCM、DMF、MeOHおよびDCMで固体を洗浄して、白色の樹脂を得た。得られた樹脂を氷浴中の清潔な500ml丸底フラスコ内に置き、0℃に予冷した210mLのDMF、54mLのDCMおよび1.1mLのヒドラジン一水和物の調製した混合物に懸濁した。これにより、鮮黄色の溶液が得られた。融解している氷浴において18時間反応を進行させた。次に、混合物を濾過し、前述通りに固体を洗浄して、ヒドラジン官能化Wang樹脂を得た。
【0123】
下に示す4条件のうち1条件下で、Agilent 6520 Accurate Mass Q-TOF LC-MSにおいて全ペプチドを分析した。条件1:Agilent C3 Zorbax SBカラム(2.1mm×150mm、5μm充填)を使用した(条件1)。流量は、次の勾配で流量0.4mL/分であった:1%B’を有するA’で3分間、15分間にわたる直線的に傾斜をつけた1~61%B’および61%B’で4分間。条件2:GCFおよびLYRAGならびに他のペプチドのため、Agilent C18 Zorbax SBカラム(2.1mm×250mm、5μm充填)を使用した。流量は、次の勾配で流量0.4mL/分であった:1%B’を有するA’で5分間、15分間にわたる直線的に傾斜をつけた1~61%B’および61%B’で4分間。条件3:Agilent C3 Zorbax SBカラム(2.1mm×150mm、5μm充填)を、次の勾配で流量0.8mL/分と共に使用した:5%B’を有するA’で3分間、9分間にわたる直線的に傾斜をつけた5~65%B’および65%B’で1分間。条件4:Agilent C3 Zorbax SBカラム(2.1×150mm、5μm充填)を、次の勾配で流量0.4mL/分と共に使用した:5%B’を有するA’で3分間、15分間にわたる直線的に傾斜をつけた5~95%B’および95%B’で4分間。注記されていなければ、ペプチドは条件1で分析した。カップリング時間試験において使用したLYRAGおよびシステイン活性化試験において使用したGCFは、条件2で分析した。
図23C、
図21A~
図21B、
図20および
図17におけるペプチドは、条件3で分析した。
図23E、
図22および
図21Cにおけるペプチドは、条件4で分析した。全イオン電流を全クロマトグラムに表示する。
【0124】
ペプチドを次の通りに精製した。粗ペプチドを95%A/5%B(v/v)に溶解し、Agilent Zorbax SB C18カラム(21.2mm×250mm、7μm充填)を備えるWaters調製用HPLCにおいて、Aにおける5%~45%Bの直線的勾配で80分間にわたり、流量10mL/分で精製した。Zorbax C18カラム(9.4mm×250mm、5μm充填)を備えるBeckman System Gold半調製用HPLCにおいて、Aにおける10%~55%Bの直線的勾配で90分間にわたり、流量5mL/分で粗アフィボディ断片1-39ライゲーション生成物を精製した。同じシステムにおいて同じ勾配で、Jupiter C18カラム(4.6mm×250mm、5μm充填)および流量2.3mL/分を使用して、最終アフィボディを精製した。
【0125】
全精製のため、PerSpective Biosystems Voyager-DE MALDI-TOFにおいて、アルファ-シアノ-4-ヒドロキシ桂皮酸マトリックスで飽和させた2μLの50%A’/50%B’(v/v)と共結晶化させた2μLの画分を使用して、1分間の画分を収集し、正確な質量をスクリーニングした。プールした画分の純度を、上述通りLC-MSにより確認した。
【0126】
UV検出器応答を次の通りに定量化した。作成されたUVトレースおよびこれが表す洗浄効率を理解するために、UV検出器の応答を定量化した。UVトレースにおけるアミノ酸の近似濃度を決定するために、Fmoc-Ala-OHカップリング溶液の系列希釈を調製した。アミノ酸の初期濃度は約0.3M(6.5mL総容積における2mmol)であり、l0×、100×、1000×、10,000および100,000×希釈標準を調製し、UV検出器へと直接的に注入した。100×希釈(3×10
-3M)は、飽和の直前であった。10,000×希釈(3×10
-5M)標準は、ベースラインのすぐ上、予想される通りスケールの約1%であった。100,000×希釈は、検出限界を下回った。高度に再現性のある洗い流しトレース(
図10)は、これが全アミノ酸を表すことを示す(吸光度が大いに異なる場合、サイクル間で定性的に異なるトレースが予想された)。
【0127】
(実施例13)
本実施例は、第二世代リアクタによるペプチド合成のための一般条件について記載する。この方法は、十分に頑強であったため、これらのペプチドは全て、リアクタ流出液のUVモニタリングなしで合成された。
【0128】
リアクタの直径の増加は、背圧を低減させ、匹敵する容積の維持は、第一世代リアクタと同じ容積の溶媒および試薬の使用を可能にした。第二世代リアクタは、最大200mgの樹脂を収容し、最大100mL/分の流量を可能にした。ペプチドが長くなるにつれて選択された樹脂が膨張し、容積限定インサートが樹脂の膨張容積を2mLに制限したため、より多くの樹脂は使用しなかった。より高い流量は検査しなかったが、観察される背圧は、より高い流量を達成し得ることを示した。
【0129】
第二世代リアクタにより、より高い流量で洗浄することにより、サイクル時間が低減された。予想される通り、必要とされる洗浄時間は、流量増加と共に減少し続け、アミノ酸の99%が、20mL/分における36秒間および40mL/分における20秒間で除去された。しかし、手動操作を適応させ、操作者がその後のアミノ酸のそれぞれを調製する適切な時間を可能にするため、20mL/分における1分間の洗浄または40mL/分における30秒間の洗浄を使用した。
【0130】
図16A~
図16B、
図17、
図18A~
図18B、
図19A~
図19C、
図20、
図21、
図22Aおよび
図24Aにおけるペプチドは、実施例8に記載されている第二世代リアクタおよび実施例1に記載されている合成機を使用して、60℃で、本実施例に記載されている条件下、ウォーターバスにおけるチューブのコイルにより使用直前に加熱した試薬により合成した。
図16Cに示すACP(65-74)は、後述の通り、但し室温で合成し、
図16Dに示すACP(65-74)は、標準ガラスリアクタにおいて合成した。あらゆる事例において、1回の合成サイクルは、アミド結合形成(カップリング)、カップリング試薬の除去(洗浄)、Nα Fmoc除去(脱保護)ならびに脱保護試薬および反応生成物、ピペリジン-ジベンゾフルベン(ピペリジン-DBF)の除去(洗浄)からなった。
【0131】
注記されていなければ、カップリングは、次のカップリング溶液を6mL/分で(およそ30秒間)送達することにより行われた。カップリング溶液は、2.5mLのDMFにおける0.4M HBTUおよび0.5mLのDIEAに溶解した1mmolのNα-Fmocおよび側鎖保護されたアミノ酸からなった。システインは、2.5mLのDMFにおける0.4M HBTUおよび0.157mLのDIEAに溶解した。両方の事例において、アミノ酸は、使用前に最大数時間HBTU溶液に溶解し、使用2分以内にDIEAを添加した。容積測定をRT(18~20℃)で行った。上述の溶液におけるHATUをHBTUの代わりにして、
図16Aに示すACP(65-74)および
図17におけるプロテアーゼ部位を合成した。次に、20mL/分で1分間にわたり送達した20mLのDMFにより、カップリング溶液を除去し、次に、20mL/分で20秒間にわたり送達した6.6mLのDMFに溶解した50%(v/v)ピペリジンにより、Nα-Fmoc保護基を除去した。20mL/分で1分間にわたり送達した20mLのDMFにより、過剰なピペリジンおよびピペリジン-DBFを除去して、1サイクルを完了した。1%ジビニルベンゼン架橋ポリスチレン樹脂においてペプチドを合成した。C末端カルボキサミドペプチドを産生するために、1グラム当たり1mmolの所定の充填による175mgのMBHA官能化樹脂を使用し、TFAに不安定なRinkリンカーを第1のアミノ酸としてカップリングした。C末端ヒドラジドペプチドを産生するために、後述の通りに調製した200mgのクロロトリチルヒドラジド(ヒドラジド)樹脂を使用した。
【0132】
TFAにおける2.5%(v/v)水および2.5%(v/v)TIPSで2時間RTにて処理することにより、非システイン含有ペプチドを樹脂から開裂させ、側鎖を脱保護した。TFAにおける2.5%(v/v)EDT、2.5%(v/v)水および1%(v/v)TIPSで2時間RTにて処理することにより、システイン含有ペプチドを樹脂から開裂させ、側鎖を脱保護した。あらゆる事例において、樹脂を除去し、窒素を使用して、開裂溶液をRTで蒸発乾固させた。得られた固体を冷ジエチルエーテルで3回洗浄し、50%A/50%B(v/v)に溶解し、凍結乾燥した。側鎖保護を次に示す:Arg(Pbf)、Tyr(tBu)、Lys(Boc)、Asp(OtBu)、Gln(Trt)、Ser(tBu)、His(Trt)、Asn(Trt)、Trp(Boc)、Glu(OtBu)、Thr(tBu)、Cys(Trt)。
【0133】
上で使用したWang樹脂は、グリシンの有意な二重取り込みを促進することが判明したため、第二世代リアクタにより行われる試験のために、異なる樹脂を使用してC末端ヒドラジドを作製した。本発明者らは、この問題を解決することができなかったため、樹脂を変えた。ヒドラジド樹脂を次の通りに産生した:1.2mmol/グラムの所定の充填による16グラムのクロロトリチルクロライド樹脂を、150mLの乾燥アミンフリーDMFに懸濁し、15分間撹拌した。これに、25mLのDIEA、50mLのDMFおよび10mLの無水ヒドラジンの懸濁液を滴下添加した。添加の際に2層が形成され、底の方を先ず添加した。添加が完了した後に、混合物を1時間撹拌させ、続いて50mLのメタノールでクエンチした。樹脂を除去し、それぞれ5回の100mL分量のDMF、水、DMF、メタノールおよびジエチルエーテル(総洗浄容積2.5L)で洗浄した。次に、3時間減圧下で(ほぼ5トール)樹脂を乾燥させ、自由に流動する粉末を塊と共に得た。リアクタのフリットを詰まらせ得る微粒子を生じないよう注意しつつ、使用前にこの塊を穏やかに破砕した。
【0134】
図16A~
図16Dは、(A)活性化因子としてHATUを使用した60℃における、(B)活性化因子としてHBTUを使用した60℃における、(C)活性化因子としてHBTUを使用した室温におけるおよびD)匹敵する手動バッチ方法を使用した室温合成における、第二世代プロトコールにより合成したACP(65-74)の粗LCMSクロマトグラムを示す。比較のため、
図16E~
図16Hは、第一世代リアクタおよびプロトコールによる匹敵する条件下で合成したACP(65-74)を示す:(E)活性化因子としてHATUを使用した60℃、(F)活性化因子としてHBTUを使用した60℃、(G)活性化因子としてHBTUを使用した室温および(H)匹敵する手動バッチ方法を使用した室温。全イオン電流を各クロマトグラムに表示する。
【0135】
(実施例14)
本実施例は、
図12Gにおける合成タイムラインを使用した第二世代リアクタにおけるACP(65-74)、コノトキシン、HIV-1プロテアーゼ断片およびアフィボディ断片の合成を、実施例1、5および6に記載されている第一世代リアクタにおけるACP(65-74)、コノトキシン、HIV-1プロテアーゼ断片およびアフィボディ断片の合成と比較する。第二世代リアクタにおいて形成されたペプチドは、第一世代リアクタにおいて合成されたペプチドに匹敵する品質であった。
【0136】
第一および第二世代合成プロトコールおよびリアクタの性能を比較するために、第二世代リアクタならびにHATU活性化、HBTU活性化および室温におけるHBTU活性化によるサイクルを用いてACP(65-74)を合成した。比較のため、
図4におけるデータを再現し、加速された室温バッチ実験を反復した。HBTUおよびHATUによる標準第二世代合成は、第一世代合成よりも僅かに悪いが、第二世代RT対照は、共溶出するGln欠失生成物を有意に低減させた。2種のプロトコールの性能は異なるが匹敵する。全体的に見て、第二世代システムは、そのサイクル時間の低減および機械的信頼性の大幅な改善のため好まれる。本文章執筆の時点で、本発明者らの研究室は、ペプチド合成のために第二世代プロトコールおよびリアクタを専ら使用している。
【0137】
第一および第二世代合成プロトコールおよびリアクタの性能をさらに比較するために、HIV-1プロテアーゼ断片およびPnI(A10L)コノトキシンの合成を反復した。比較のための
図5由来のデータと共に、
図18にデータを示す。2種のプロトコールの性能は匹敵する。
【0138】
クロロトリチルヒドラジド樹脂の性能を検証し、第二世代リアクタおよびサイクルによる合成をさらに探索するために、アフィボディ断片の合成を反復した。比較のための
図7由来のデータと共に、
図19にデータを示す。グリシンなしの断片を合成する場合、2種のリンカーの性能は匹敵する。修飾Wang樹脂は、グリシンの有意な二重取り込みを促進し、このことは、本発明者らによるヒドラジド樹脂への移行を動機づけた。両方の事例において、調製用クロマトグラフィー後にライゲーションに適した純粋材料を得た。
【0139】
第二世代合成機の有用性をさらに強調するために、10種のグルタチオン類似体(
図20を参照)、数種のシステインリッチペプチド(
図21を参照)および2種のビオチン化プロテアーゼ認識部位(
図17を参照)のライブラリを合成した。1日間でグルタチオン類似体を全て産生した。
図21において、全システインがアセトアミドメチル(Acm)保護されて、開裂および側鎖脱保護における副反応を防止した。これらのペプチドにおけるシステインを0.157mLではなく0.190mLのDIEAで活性化させた。あらゆる事例において、ペプチドは0.2mmolスケールで産生され、主要ピークは所望の生成物であり、1回の調製用RP-HPLCステップにおいて粗材料の精製が成功した(精製された材料は図示せず)。
【0140】
図17は、合成されたビオチン化プロテアーゼ認識部位のクロマトグラムを示す。Bはβ-アラニン、K
*はビオチン化リシン、K’はalloc保護されたリシンである。alloc保護されたペプチドをバッチにおける樹脂上で水素化して、遊離リシンを得て、ビオチンをバッチにおいてカップリングした。8分後に溶出する材料は非ペプチド性である。
【0141】
図18は、HIV-1プロテアーゼ断片およびPnI(A10L)コノトキシンの再合成のクロマトグラムを示す。具体的には、
図18A~
図18Dは、(A)第二世代リアクタおよび条件により合成されたコノトキシン、(B)第二世代リアクタおよび条件により合成されたHIV-1 PR(81-99)、(C)第一世代リアクタおよび条件により合成されたコノトキシンならびに(D)第一世代リアクタおよび条件により合成されたHIV-1 PR(81-99)を示す。遅く溶出する材料は、側鎖保護された生成物であった。第一および第二世代リアクタ試験の間でLC/MSカラムを置き換えたため、保持時間は僅かに異なる。15分後に溶出する材料は非ペプチド性であった。
【0142】
図19は、アフィボディ断片のクロマトグラムを示す。
図19A~
図19Cは、第二世代プロトコールによるクロロトリチルヒドラジド官能化ポリスチレンにおいて合成された断片を示し、
図19D~
図19Fは、第一世代プロトコールによる修飾Wang樹脂において合成された断片を示す。
【0143】
図20は、それぞれ18分間で合成されたグルタチオン類似体のライブラリのクロマトグラムを示す。E
*は、側鎖カルボン酸塩を介してポリペプチドにカップリングしたグルタミン酸表す。全ペプチドを条件3により分析し、主ピークは、所望の質量を有する。
【0144】
図21は、数種のシステインリッチペプチドのクロマトグラムを示す。全システインをAcm保護した。
図21Aおよび
図21Bにおける材料を条件3により分析し、
図21Cにおける材料を条件4により分析した。
【0145】
(実施例15)
本実施例は、自動フロープラットフォームの設計および構築について記載する。
【0146】
自動プラットフォームを設計して、人間である操作者によって課されるサイクル時間に制限なく、手動システムと同じ標準を行った。これらの目標を達成するために、本発明者らは、
図23Aに示すシステムを組み立てた。自動の流動に基づくプラットフォームは、他の構成要素の中でもとりわけ、2個のHPLCポンプ、静的ミキサー、マイクロコントローラ(図示せず)、熱交換器、第二世代リアクタおよびUV検出器を含有した。2個のHPLCポンプは、試薬を送達した。一方のHPLCポンプは、DMFに溶解したアミノ酸およびHBTUの溶液を送達し、他方のポンプは、DIEAを送達して、活性化を完了した。0.4M溶液としてアミノ酸を等モルのHBTUと共にDMFにおいて貯蔵し、密封されたリアクタ内で貯蔵される場合は活性化塩基なしで、数週間安定であった。
【0147】
静的ミキサーを使用して、DIEAおよびアミノ酸溶液の効果的な混合を確実にし、バルブの位置およびポンプ流量をArduinoマイクロコントローラにより制御した。静的ミキサーは、これら2種の流体をブレンドし、修正することなく上述の熱交換器、第二世代リアクタおよびUV検出器を使用した。静的ミキサーおよびリアクタの間の滞留時間を増加させるために、追加の6フィートの0.030”IDチューブを使用した。滞留時間の増加は、完全な活性化を促進することができ、システムにおいてこの余分な長さのチューブにより産生されたペプチドは、これなしで産生されたペプチドよりも僅かに高い粗純度であると観察された。
【0148】
図23Aに示す全バルブは、2個のマニフォールドに含有され、24Vソレノイドにより始動された。マニフォールドは、最小内部容積を有し、試薬間にゼロクロストークを生じるよう設計された。1個のマニフォールドは、5種の試薬のうち1種を選択するための複数のバルブと、マニフォールドをオンまたはオフにするための1個のバルブからなった。電源を切ると、試薬バルブは、DMFを選択し、オン/オフバルブは、マニフォールドをオフにした。これらの特色は、アミノ酸のいかなる不正確な取り込みも防止し、マニフォールドの洗浄に必要とされる溶媒の容積を最小化し、溶媒吸い上げを防止した。全体的な流路はPTFEであった。2ミクロン入口フィルタにより入口ラインを保護した。
【0149】
ポンプは両者共に50mL/分ポンプヘッドを備えるKnauer Smartlineモデル100であった。直ぐに利用でき、アナログ電圧により容易に制御されるため、これらのポンプを選択した。しかし、ポンプは、比較的低いポンピング能力を有し、ポンプヘッドを洗浄するために約10mLの溶媒を必要とした。より高いポンピング能力を有し、ポンプヘッドを洗浄するためにより少ない溶媒容積を必要とするポンプを選択することにより、サイクル時間をさらに減少させることができる。
【0150】
静的ミキサーは、StaMixCoにより供給され、その最小要素(6mm)のうち6種からなる。先に記載された熱交換器をミキサーおよび第二世代リアクタの間に置いた。これらの要素のうち全3種および余分な長さのチューブを60℃ウォーターバス内に置いた。先に記載されたUV検出器を使用して、廃棄物の流れの吸光度をモニターした。その単純さおよび安定性のため選択されたArduino Mega2560マイクロコントローラにより、この装置を制御した。0~10Vアナログシグナルを供給してポンプを制御するために、Arduinoの0~5Vパルス幅変調出力を使用した。シグナルにフィルタをかけ、増幅して、0~10Vアナログ制御電圧を得た。バルブを制御するために、Arduinoのデジタル出力を使用して、電力トランジスタを発動させ、続いて外部供給から24V DC電力を供給した。全接地は接地構築で共通であった。
【0151】
図23は、自動ペプチド合成プラットフォームおよびこれにより合成された数種のモデルペプチドを示す。
図23A~
図23Eは、(A)装置の模式図、(B)107秒毎にアミノ酸残基を取り込むためにこの装置により使用された合成タイムライン、(C)12分間で組み立てたALFALFAを示すクロマトグラム、(D)18分間で組み立てたACP(65-74)を示すクロマトグラム(1、2=Ile欠失、3=C末端の加水分解)および(E)37分間で組み立てた(ALF)7を示すクロマトグラムである。全イオンクロマトグラムを示す。
【0152】
(実施例16)
本実施例は、自動システムを使用したペプチドの合成について記載する。自動サイクル時間は、使用者が手動タスクを完了することができるまたはシリンジポンプが注ぐことができる速度によって限定されなかったため、タイムラインを実質的に加速させた(
図23Bを参照)。50mL/分(利用できる最大)における2回の45秒間洗浄、7秒間カップリングおよび10秒間脱保護は、107秒間(1.8分間)毎にアミノ酸残基の取り込みをもたらした。カップリング時間および脱保護時間は、時間が最適化されないほどに僅かな合計時間を表す。しかし、カップリング時間および脱保護時間を最適化することにより、さらにより迅速な時間を達成することができる。1回または複数の洗浄ステップを排除することにより、より迅速な付加サイクルを達成することもできる。これらのサイクルを使用して、ALFALFAを12.5分間で産生し、ACP(65-74)を17.8分間で産生し、システムが機械的に頑強であることを実証するために合成されたモデル21-merである(ALF)7を37.5分間で産生した。(ALF)7の粗品質は、手動第二世代合成プロトコールを使用した合成とほとんど同一であった(
図24を参照)。
【0153】
次の対照サイクルを使用して、自動システムによりペプチドを合成した。アミノ酸および活性化因子の所望の溶液を選択し、第1のHPLCポンプにより50mL/分で送達した。4秒後に、第2のHPLCポンプは、9mL/分でDIEAを送達し始めた。さらに3秒後(7秒間の合計カップリングのため)、マニフォールドは、DMF洗浄溶媒を選択した。16秒後に、マニフォールドおよびポンプからアミノ酸をほぼ完全に洗い流したら、第2のHPLCポンプを停止させた。さらに31秒後(50mL/分における合計洗浄時間の45秒間のため)、DMFに溶解した50%ピペリジンを10秒間50mL/分で送達した。最後に、DMFをさらに45秒間50mL/分で送達して、最終洗浄およびサイクルを完了した。100mLのDMFにおける0.4M HBTUに40mmolのNα-Fmoc保護されたアミノ酸を溶解させることにより、アミノ酸および活性化因子の溶液を調製した。側鎖保護を次に示す:Arg(Pbf)、Tyr(tBu)、Asp(OtBu)、Gln(Trt)、Asn(Trt)。アミノ酸の溶解による容積の変化に対する補正は為されなかった。
【0154】
完全に自動化されたシステムにより3種のペプチド、ALFALFA、ACP(65-74)および(ALF)7を産生した。ALFALFAは、極めて高い粗純度のものであり、ACP(65-74)は、手動システムにより多くの条件下で何度も合成された。(ALF)7の自動合成を手動システムと比較するために、第二世代リアクタおよびプロトコールにより(ALF)7を産生した。クロマトグラムを
図24に示す。2種の粗生成物の品質は非常に同様のものである。
図22は、(A)自動1.8分間サイクルおよび(B)手動3分間サイクルにより合成された(ALF)7のクロマトグラムを示す。
【0155】
(実施例17)
本実施例は、1回または複数の試薬除去ステップを欠く付加サイクルを使用したペプチドの合成について記載する。一部の事例において、この
図24に図解されている通り、1回または複数の試薬除去ステップは任意選択であり、除去ステップの非存在は、その後のステップおよび/または付加サイクルの性能にマイナスの影響を与えない。
【0156】
付加サイクルに含まれるステップのみが異なる2種のペプチドを合成した。ペプチドの配列を次に示す。
【0157】
H
2N-CDINYTSGFRNSDRILYSSDWLIYKTTDHYQTFTKIR-CONH
2。実施例13に記載されている通りに一方のペプチドを合成し、対照として用いた。付加サイクルは、アミド結合形成(カップリング)、カップリング試薬の除去(洗浄)、Nα Fmoc除去(脱保護)ならびに脱保護試薬および反応生成物、ピペリジン-ジベンゾフルベン(ピペリジン-DBF)の除去(洗浄)からなった。合成されたペプチドのクロマトグラムを
図24Aに示す。追加のサイクルがカップリング剤除去ステップ(即ち、カップリング剤洗浄ステップ)を含まないことを除いて、実施例13に記載されている通りに別のペプチドを合成した。その後のステップ(例えば、脱保護ステップ)から流入する溶媒は、カップリング試薬および/または反応副産物の少なくとも一部の洗い流しに役立ち、過剰に流入する脱保護試薬により残りのカップリング試薬を破壊した。カップリング試薬洗浄ステップを欠く付加サイクルを使用して合成したペプチドのクロマトグラムを
図24Bに示す。任意選択の洗浄ステップを欠くペプチドおよび任意選択の洗浄ステップを含むペプチドの間に有意差は観察されなかった。
【0158】
(実施例18)
本実施例は、130残基のDARPin pE59および113残基のバルナーゼの合成について記載する。当業者に公知で、アフィボディのために実施例6に記載されているものと実質的に同様のライゲーション化学を使用して、4個のペプチド断片からこれらのタンパク質のそれぞれを合成した。
【0159】
図25B~
図25Eに示す全イオンクロマトグラムにより、4断片からDARPinを合成した:
D[1](H2N-[1Gly-31Gly]-CONHNH2)、
D[2](H2N-[32Cys-64Gly]-CONHNH2)、
D[3](H2N-[65Cys-97Gly]-CONHNH2)および
D[4](H2N-[98Cys-130Asn]-CONH2)。
【0160】
実施例8に記載されている第二世代リアクタ、実施例13に記載されている方法および次の例外を有するHBTUカップリング剤を使用してこれらを合成した。全システインをAcm保護した。
【0161】
D[1]を1残基当たり2分間で合成し、40ml/分における2回の30秒間洗浄を行った。さらに、ポンプ流量を手動で変える際の困難のため、40ml/分において20秒間、脱保護を行った。より短い脱保護および/またはより低い流量の脱保護および/またはより希釈された脱保護試薬(例えば、DMFにおける20%ピペリジン)による脱保護が、この加速されたサイクルに効果的となり、脱保護試薬を保存することが考えられる。
【0162】
実施例8および13に記載されている通りに、D[2]およびD[3]を合成した。
【0163】
MBHA-ポリスチレン樹脂ではなくアミノメチル-ポリスチレン(polysyrene)樹脂においてD[4]を合成した。実施例20に記載されている通りに樹脂を調製した。2,2ジメチルシュードプロリンジペプチドとして114Serおよび113Ileを取り込み、カップリング試薬の完全送達後に付加サイクルを休止することにより10分間カップリングした。この休止が不要であることが考えられる。標準t-ブチルエステル側鎖保護ではなく、3-メチルペンチルエステル側鎖保護を有する116Aspを取り込んだ。最後に、20ml/分において20秒間、20%ピペリジンおよびDMFにおける0.1M HOBtにより脱保護を行った。
【0164】
図26B~
図26Eに示す全イオンクロマトグラムにより、4断片からバルナーゼを合成した:
B[1](H2N-[1Gly-13Val]-CONHNH2)
B[2](H2N-[14Cys-39Val]-CONHNH2)
B[3](H2N-[40Cys-76Glu]-CONHNH2)および
B[4](H2N-[74Cys-113Arg]-CONH2)。
【0165】
実施例8に記載されているリアクタ、実施例13に記載されている方法および次の例外を有するHATUカップリング剤を使用して、これらを合成した。脱保護試薬としてDMFにおける20%ピペリジンを使用して、全ペプチドを合成した。全システインをAcm保護し、シクロヘキシルエステルとして76Gluを取り込んだ。
【0166】
B[1]の合成のため、バリンカップリング試薬の送達後に付加サイクルを休止することにより、c末端バリンを樹脂に10分間カップリングした。より短いカップリングおよび/またはより高温でのカップリングを使用することができることが考えられるが、実施例13に記載されている60℃における30秒間カップリングが、立体的に妨げられたバリンを立体的に妨げられたトリチルヒドラジド樹脂に定量的に結合させるために適切でないことが判明した。
【0167】
B[2]の合成のため、B[1]と同様に、c末端バリンを樹脂に10分間カップリングし、ヒドロキシメトキシベンジル(HMB)骨格保護を有する33Alaを取り込んだ。HATUではなくDCC/HOBtによりこの残基を活性化させ、カップリング試薬の完全送達後にアミノ酸付加サイクルを25分間休止することにより、25分間カップリングした。カップリング試薬の完全送達後にアミノ酸付加サイクルを30分間休止することにより、その後のグルタミン酸を30分間カップリングした。より高温で操作することにより、HMB保護されたアミノ酸の取り込みを加速させることができることが考えられる。
【0168】
上述ならびに実施例8および13に記載されている通り、B3を合成した。
【0169】
ChemMatrixにより供給されたRink-PEG樹脂においてB4を合成し、HATUではなくDCC/HOBtにより90Argを活性化した。
【0170】
粗タンパク質断片の調製後に、当業者に公知であり、実施例12に記載されている方法と実質的に同様の方法を使用したRP-HPLCによりこれらを精製した。次に、
図25Aおよび
図26Aにおけるスキームに従って、精製された断片をライゲーションして、それぞれ
図25Fおよび
図26Fに示す全長タンパク質を得た。若干の修正を入れたLiuと共同研究者の手順に従って、当業者に公知の方法によりライゲーションを行った。
【0171】
(実施例19)
本実施例は、ヒトインスリンのAおよびB鎖ならびにEETI-IIトリプシン阻害剤に基づく進化したインテグリン結合足場の合成について記載する。粗合成生成物の全イオンクロマトグラムをそれぞれ
図27A~
図27Cに示す。これらのペプチドは全て、MBHA官能化ポリスチレンの代わりにアミノメチル官能化ポリスチレンを使用して合成した。当業者に公知の方法を使用して、下の実施例20に記載される通りに、アミノメチル官能化ポリスチレンを調製した。
【0172】
合成が85℃で行われ、全システインがAcm保護されたことを除いて、実施例8に記載されている第二世代リアクタおよび実施例13に記載されている方法を使用して、ヒトインスリンのA鎖を合成した。合成が85℃で行われることを除いて、実施例8に記載されているリアクタおよび実施例13に記載されている方法を使用して、ヒトインスリンのB鎖を合成した。全キラルアミノ酸が、反転したキラリティー(即ち、右旋性(dextrorototory))のものであることを除いて、実施例8に記載されているリアクタおよび実施例13に記載されている方法を使用して、インテグリン結合足場を合成した。
【0173】
本発明のいくつかの実施形態を本明細書において記載および図解してきたが、当業者であれば、機能を行うため、ならびに/または結果および/もしくは本明細書に記載されている利点のうち1種もしくは複数を得るための種々の他の手段ならびに/または構造物を容易に想定することができ、このような変更および/または修正のそれぞれは、本発明の範囲内であると考慮される。より一般には、当業者であれば、本明細書に記載されているあらゆるパラメータ、寸法、材料および構成が、例示的なものとして企図され、実際のパラメータ、寸法、材料および/または構成が、本発明の教示するところが使用される特定の適用(単数または複数)に依存することを容易に認めることができる。
【0174】
(実施例20)
本実施例は、実施例18および19において使用されるアミノメチル樹脂の調製のための手順について記載する。
【0175】
アミノメチル樹脂を調製するために、25gのBio-Rad、Bio-ビーズS-X1(スチレン-ジビニルベンゼンコポリマー、1%架橋)および4.9g(27.6mmol)のN-ヒドロキシメチルフタルイミドを、1L丸底フラスコ内の450mLのDCMに添加した。これに、50mLのメタンスルホン酸を添加し、この反応物を5時間室温で穏やかに撹拌した。5時間の撹拌後に、粗いフリット付きガラス漏斗にスラリーを移し、DCM(1500~2000mL)およびエタノール(1500mL)で洗浄した。次に、樹脂を真空下で1時間乾燥させた。乾燥後に、フタルイミドメチル樹脂を500mL丸底フラスコに移し、無水エタノール中のヒドラジン一水和物(20%v/v)の200mL溶液に懸濁した。還流冷却器を取り付け、溶液を少なくとも8時間穏やかに還流させた。得られたゼラチン状材料を熱い状態でガラスフリット付き漏斗に移し、白色のフタル(pthal)ヒドラジド沈殿物を完全に洗い流すために、沸騰エタノール(1000~2000mL)および続いて熱いメタノール(1000mL)で洗浄した。次に、DMF(800mL)、DCM(800mL)、DMFにおける10%(v/v)DIEA(500mL)、DMF(600mL)およびDCM(1000mL)で樹脂を洗浄した。次に、樹脂を真空下で乾燥させ、1.2mmol/gの充填を有すると決定した。
【0176】
当業者であれば、ルーチン実験に過ぎないものを使用して、本明細書に記載されている本発明の特異的な実施形態の多くの均等物を認識する、あるいは確認することができる。したがって、前述の実施形態が単なる例として示されており、添付の特許請求の範囲およびその均等物の範囲内において、特に記載および請求されている以外の仕方で本発明を実施することができることを理解されたい。本発明は、本明細書に記載されているそれぞれ個々の特色、システム、物品、材料および/または方法を対象とする。加えて、2個またはそれを超えるこのような特色、システム、物品、材料および/または方法のいずれかの組合せは、このような特色、システム、物品、材料および/または方法が相互に一致する場合、本発明の範囲内に含まれる。
【0177】
本明細書および特許請求の範囲において使用される単数を表す不定冠詞「a」および「an」は、それとは反対のことが明示されていない限り、「少なくとも1個」を意味するものと理解されたい。
【0178】
本明細書および特許請求の範囲において使用される語句「および/または」は、このように等位結合した要素、即ち、一部の事例において接続的に存在し、他の事例において離接的に存在する要素の「いずれか一方または両方」を意味するものと理解されたい。それとは反対のことが明示されていない限り、特に同定されている要素に関係するのであれ関係しないのであれ、「および/または」節によって特に同定されている要素以外の他の要素は、任意選択で存在してよい。よって、非限定例として、「Aおよび/またはB」の参照は、「含む(comprising)」等、オープンエンドな言語と併せて使用される場合、一実施形態において、BなしのA(B以外の要素を任意選択で含む);別の実施形態において、AなしのB(A以外の要素を任意選択で含む);さらに別の実施形態において、AおよびBの両方(他の要素を任意選択で含む);等を指すことができる。
【0179】
本明細書および特許請求の範囲において使用される通り、「または」は、上に定義されている「および/または」と同じ意義を有するものと理解されたい。例えば、リストにおける項目を分離する場合、「または」または「および/または」は、包括的である、即ち、要素の数またはリストのうち少なくとも1個(但し1個超も含む)と、任意選択で追加的な収載されていない項目の包括として解釈される。「のうち1個のみ」または「のうち正確に1個」、あるいは特許請求の範囲において使用される場合は「からなる」等、それとは反対のことが明らかに示される用語のみが、要素の数またはリストの正確に1個の要素の包括を指す。一般に、用語「または」は、「いずれか」、「のうち1個」、「のうち1個のみ」または「のうち正確に1個」等、排他性の用語が先行する場合、本明細書において、排他的二者択一(即ち、「一方または他方、但し、両方ではない」)を示すものとしてのみ解釈される。「から本質的になる」は、特許請求の範囲において使用される場合、特許法の分野において使用されるその通常の意義を有する。
【0180】
本明細書および特許請求の範囲において使用される通り、1個または複数の要素のリストに関する語句「少なくとも1個」は、要素のリストにおけるいずれか1個または複数の要素から選択される少なくとも1個の要素を意味するが、要素のリスト内に特に収載されているありとあらゆる要素のうち少なくとも1個を必ずしも含む必要はなく、要素のリストにおける要素のいかなる組合せも排除しないと理解されたい。この定義は、特に同定されている要素に関係するのであれ関係しないのであれ、語句「少なくとも1個」が指す要素のリスト内に特に同定されている要素以外の要素が任意選択で存在してよいことも可能にする。よって、非限定例として、「AおよびBのうち少なくとも1個」(または等しく「AまたはBのうち少なくとも1個」または等しく「Aおよび/またはBのうち少なくとも1個」)は、一実施形態において、1個超を任意選択で含む少なくとも1個、A、但しBは存在しない(B以外の要素を任意選択で含む);別の実施形態において、1個超を任意選択で含む少なくとも1個、B、但しAは存在しない(A以外の要素を任意選択で含む);さらに別の実施形態において、1個超を任意選択で含む少なくとも1個、Aおよび1個超を任意選択で含む少なくとも1個、B(他の要素を任意選択で含む);等を指すことができる。
【0181】
特許請求の範囲および上述の本明細書において、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「保有する」、「有する」、「含有する」、「関与する」、「保持する」その他等、あらゆる移行句は、オープンエンドである、即ち、「等が挙げられるがこれらに限定されない」を意味すると理解されたい。米国特許庁特許審査便覧(United States Patent Office Manual of Patent Examining Procedures)、2111.03条に記されている通り、移行句「からなる」および「から本質的になる」のみが、それぞれクローズド(closed)またはセミクローズドな移行句である。
【配列表】