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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】加工装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 11/02 20060101AFI20230801BHJP
【FI】
B41J11/02
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018238094
(22)【出願日】2018-12-20
(65)【公開番号】P2020100015
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100104329
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 卓治
(74)【代理人】
【識別番号】100134599
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 和之
(74)【代理人】
【識別番号】100177149
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 浩義
(72)【発明者】
【氏名】保科 貴彦
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-019121(JP,A)
【文献】特表2016-512475(JP,A)
【文献】実開平05-013606(JP,U)
【文献】特開2015-188970(JP,A)
【文献】特開2017-071029(JP,A)
【文献】特開2004-330578(JP,A)
【文献】特開2006-341396(JP,A)
【文献】特開2013-129142(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 11/00-11/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に被加工物が載置される天板と、前記天板の下方に配置される底板と、前記天板及び前記底板の外周縁部に沿って配設され、前記天板と前記底板とに固定された枠体とを備える載置部と、
前記載置部に載置された前記被加工物を加工する加工ヘッドと、
前記加工ヘッドの移動をガイドするガイド部材と、を備え、
前記載置部は、前記天板と前記底板との間に仕切壁を備え、前仕切壁により内部に複数の空間を有し、
前記仕切壁は、前記被加工物が載置される前記天板の前記上面と直交する方向に延びており、
前記ガイド部材は、前記加工ヘッドの移動に用いられるレール部材を備え、
前記レール部材は、前記枠体に取り付けられており、
前記枠体は、前記レール部材よりも高い剛性を備えている、
加工装置。
【請求項2】
前記複数の空間は、ハニカム構造体により形成されている、
請求項1に記載の加工装置。
【請求項3】
前記載置部は、平面視したときに前記複数の空間それぞれを区画する壁よりも肉厚の外周部を備え、
前記ガイド部材は、前記外周部と螺合する締め付け具により当該外周部に締め付け固定されている、
請求項1又は2に記載の加工装置。
【請求項4】
前記ガイド部材は、押し出し成形品である、
請求項1から3のいずれか1項に記載の加工装置。
【請求項5】
前記ガイド部材は、3以上の箇所で、締め付け具により前記載置部に固定されている、
請求項1から4のいずれか1項に記載の加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、載置部(例えばプラテン)上に被加工物(例えばメディア)を載置し、当該被加工物に対して加工用ヘッド(例えばインクジェットヘッド)を移動させて、被加工物に加工(例えば印刷)を施す加工装置(いわゆるフラットベッド型のインクジェットプリンタ)が開発されている。
【0003】
このような加工装置として、特許文献1には、中空の構造体を備えるプラテン10と、プラテン10の副走査方向における両側に配置された前後移動機構17と、前後移動機構17により前後方向(副走査方向)に移動可能で、インクジェットヘッド60を左右方向(主走査方向)に移動させることが可能な第2サブアセンブリ4と、を備えるインクジェットプリンタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-19121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記前後移動機構17は、第2サブアセンブリ4の前後方向への移動を案内するガイド部材を備える。ここで、当該ガイド部材を押し出し成形で形成した場合などでは、当該ガイド部材は歪みやすい(例えば、自重により、両端部、一端部、又は、中央部が重力により下方に下がり、弓状に反りやすい)が、特許文献1に記載のインクジェットプリンタでは、当該歪みに対する対策が行われておらず、このガイド部材の歪みを防止できていない。なお、このような課題は、インクジェットヘッド60に代えて又は加えて他の加工ヘッド(例えば、カッタヘッドなど)を採用した加工装置(例えば、カッティング機構の備えるインクジェットプリンタ、カッティングプロッタなど)でもいえる。
【0006】
本発明は、ガイド部材の歪みを効率良く防止した加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の観点に係る加工装置は、
被加工物が載置される載置部と、
前記載置部に載置された前記被加工物を加工する加工ヘッドと、
前記加工ヘッドの移動をガイドするガイド部材と、を備え、
前記載置部は、内部に複数の空間を有し、
前記ガイド部材は、前記載置部に固定されることによって歪みが矯正されている。
【0008】
上記構成によれば、ガイド部材が載置部に固定されることによって当該ガイド部材の歪みが矯正されているので、例えば、当該歪みの矯正に載置部以外の特殊な部材を使用する必要もないので、ガイド部材の歪みを効率良く防止できる。
【0009】
前記複数の空間それぞれは、前記被加工物が載置される前記載置部の載置面に直交する方向に延びている、
ようにしてもよい。
【0010】
上記構成によれば、載置部の剛性を保ちつつ、載置部を軽量化できる。
【0011】
前記複数の空間は、ハニカム構造体により形成されている、
ようにしてもよい。
【0012】
上記構成によれば、載置部の剛性を保ちつつ、載置部を軽量化できる。
【0013】
前記載置部は、平面視したときに前記複数の空間それぞれを区画する壁よりも肉厚の外周部を備え、
前記ガイド部材は、前記外周部と螺合する締め付け具により当該外周部に締め付け固定されている、
ようにしてもよい。
【0014】
上記構成によれば、ガイド部材が外周部に強固に固定されるので、ガイド部材の歪みを効果的に矯正できる。
【0015】
前記ガイド部材は、押し出し成形品である、
ようにしてもよい。
【0016】
ガイド部材が押し出し成形品である場合、当該ガイド部材は、特に自重により歪みやすいが、上記構成により、当該歪みが矯正されているので、ガイド部材の歪みを効率良く防止できる。
【0017】
前記ガイド部材は、3以上の箇所で、締め付け具により前記載置部に固定されている、
ようにしてもよい。
【0018】
上記構成によれば、ガイド部材の歪みを効果的に矯正できる。
【0019】
前記ガイド部材は、前記載置部の側面と底面とに固定されている、
ようにしてもよい。
【0020】
上記構成によれば、ガイド部材の歪みを効果的に矯正できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ガイド部材の歪みを効果的に防止した加工装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施の形態のインクジェットプリンタの概略全体図。
図2】インクジェットプリンタの内部を説明するための断面図。
図3】プラテンとレール部材との関係を説明するための平面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明をインクジェットプリンタ100に適用した実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0024】
(インクジェットプリンタ100の構成)
インクジェットプリンタ100は、図1図2に示すように、プラテン(ベッドなどともいう。)110と、脚部120と、第1レール部130と、第2レール部140と、Yバー部150と、インクジェットヘッド160と、キャリッジ170と、を備える。なお、以下の説明では、インクジェットプリンタ100が印刷動作を行う際の主走査方向(インクジェットヘッド160が移動する方向)を左右方向とし、副走査方向を前後方向とする。インクジェットヘッド160は、全体として、前後方向に長尺な形状になっている。
【0025】
プラテン110は、紙、布帛などのシート材からなるメディアM(図2)が載置される。メディアMは、所定の固定手段により固定される。プラテン110は、前後方向に長尺な厚板形状(平面視(上からみたとき)に四角形状)に形成されている。当該プラテン110の詳細構造については後述する。
【0026】
脚部120は、プラテン110を、地面(床等を含む)から距離をあけた上方位置で支持している。
【0027】
第1レール部130は、レール部材131と、後端部材132と、前端部材133と、を備え、Yバー部150の左部分を前後方向に移動可能に支持している。
【0028】
レール部材131は、合成樹脂、金属等を材料とし、押し出し成形により一体的に形成されることにより、前後方向に長尺かつ直線状に延びた形状に形成されている。レール部材131は、レール部材本体131Aと、第1レール131Bと、第2レール131Cと、フランジ131Dと、を備える。
【0029】
レール部材本体131Aは、左側が開放した四角形状(コの字形状)の断面を有する。第1レール131Bは、レール部材本体131Aの内側面から左方向に起立しており、前後方向に延びている。第2レール131Cは、レール部材本体131Aの底面から上方向に起立しており、前後方向に延びている。フランジ131Dは、レール部材本体131Aの側部の下部から右方向に張り出しており、前後方向に延びている。前記側部は、上下前後方向に延び、プラテン110の側面である左面(後述の枠体112の左面)に当接している板状部分である。フランジ131Dは、プラテン110の下面(後述の枠体112の下面)に接している。
【0030】
レール部材本体131Aは、ネジ(ボルトを含む。以下同じ)N1及びN2により、プラテン110(後述の枠体112)に固定されている。ここでは、レール部材本体131Aにおける、上下前後方向に延びている前記側部が、複数のネジN1により複数箇所でプラテン110の側面(後述の枠体112の左面)に固定されている(図3も参照。ここでは、3箇所で固定されているが、他の数の箇所で固定されてもよい)。複数のネジN1は、前後方向に沿って間隔を開けて配置されている。さらに、レール部材本体131Aのフランジ131Dが、複数のネジN2により複数箇所(ここでは、ネジN1と同数でもよいし、異なる数でもよい)で、プラテン110の下面(後述の枠体112の下面)に固定されている。複数のネジN2は、前後方向に沿って間隔を開けて配置されている。
【0031】
後端部材132及び前端部材133は、レール部材131の後端又は前端に、ネジ、嵌合等の適宜の手段により取り付けられている。後端部材132及び前端部材133は、Yバー部150を前後方向に移動させるための駆動機構Bを支持している。
【0032】
駆動機構Bは、ここでは、ボールネジを利用したものであり、モータB1と、ネジ軸B2と、ナットB3と、ボール(図示せず)と、を備える。モータB1は、ネジ軸B2の一端に接続されており、ネジ軸B2を、その中心軸(前後方向に延びた軸)を回転軸として回転させる。ナットB3は、ボールを介してネジ軸B2に取り付けられている。後端部材132は、ネジ軸Nの他端を回転可能に支持している。前端部材133には、モータB1が固定されている。ナットB3は、後述の第1移動部材151に固定されている。ネジ軸B2の回転により、ナットB3が前後に移動し、これによりナットB3が取り付けられた第1移動部材151が前後方向に移動する。
【0033】
第2レール部140は、レール部材141と、後端部材142と、前端部材143と、を備えており、Yバー部150の右部分を前後方向に移動可能に支持する。第2レール部140の構造は、駆動機構Bが設けられていない点、レール部材141が第2レール131Cに対応するレールを備えない点において、第1レール部130と異なるが、その他については第1レール部130と同様である(但し左右対称の構造となっている)。レール部材141は、レール部材本体141A(レール部材本体131Aに対応)と、レール141B(第1レール131Bに対応)と、フランジ141D(フランジ131Dに対応)と、を備える。レール部材141等の第2レール部140についての詳細な説明は、第1レール部130に準じる(左右対称に考える)。
【0034】
Yバー部150は、第1レール部130及び第2レール部140により、前後方向に移動可能に支持され、駆動機構Bにより、前後方向(副走査方向)に移動可能となっている。なお、駆動機構Bを第2レール部140にも設け、左右両側の駆動機構Bが同期して動作することで、Yバー部150を前後方向に移動させてもよい。Yバー部150は、第1移動部材151と、第2移動部材152と、Yバー153と、第1Yバー支持部154と、第2Yバー支持部155と、駆動ベルト156と、を備え、これらは一体に前後方向に移動する。
【0035】
第1移動部材151は、第1レール部130のレール部材131(より詳細には、第1レール131B及び第2レール131C)上を移動する。第1移動部材151は、移動部材本体151Aと、車輪151B~151Eと、を備える。
【0036】
移動部材本体151Aには、複数(例えば、2つ)の車輪151B~151Eが回転可能に固定されている。車輪151B~151Eそれぞれは、例えば、ボールベアリングなどからなる。さらに、移動部材本体151Aには、ナットB3が固定されている。
【0037】
複数の車輪151B及び複数の車輪151Cは、前後方向に並んで配置されている。複数の車輪151B及び複数の車輪151Cは、回転軸が左右方向に沿う方向で設けられている。複数の車輪151Bは、第1レール131Bの上面に設けられた凹部に入り込み、当該凹部の底面に載っており、当該第1レール131B(凹部の底面)を転がることが可能である。複数の車輪151Cは、第1レール131Bの下面に設けられた凹部に入り込んでいる。複数の車輪151Cは、主に、第1移動部材151の左方向への抜け止めの機能を有し、車輪151Cそれぞれと、第1レール131Bの下面に設けられた凹部の底面とには、若干の間隔(遊び)が設けられている。なお、遊びを設けないようにしてもよい。
【0038】
複数の車輪151D及び複数の車輪151Eは、前後方向に並んで配置されている。複数の車輪151D及び複数の車輪151Eは、回転軸が上下方向に沿う方向で設けられている。複数の車輪151Dは、第2レール131Cの左面に設けられた凹部に入り込んでいる。複数の車輪151Eは、第2レール131Cの右面に設けられた凹部に入り込んでいる。複数の車輪151D及び複数の車輪151Eは、各凹部の底面に接触し、第2レール131Cを挟むとともに、当該第2レール131C(各凹部の底面)を転がることが可能である。
【0039】
第2移動部材152は、第2レール部140のレール部材141(より詳細には、レール141B)上を移動する。第2移動部材152の構造は、複数の車輪151D及び複数の車輪151Eに対応する車輪を備えない点以外、第1移動部材151と同様である(但し、左右対称の構造となっている)。第2移動部材152は、移動部材本体152A(移動部材本体151Aに対応)と、車輪152B~152C(車輪151B~151Cに対応)と、を備える。第2移動部材152についての詳細な説明は、第1移動部材151に準じる(左右対称に考える)。
【0040】
第1移動部材151の複数の車輪151Bが第1レール部130の第1レール131Bの凹部の底面上を転がることで、第1移動部材151は前後方向に移動可能である。第2移動部材152の複数の車輪152Bが第2レール部140のレール141Bの凹部の底面上を転がることにより、第2移動部材152は前後方向に移動可能である。複数の車輪151B及び複数の車輪151Cが第1レール131Bを上下方向両側から挟むことで、第1移動部材151の上下方向への移動が制限されている。具体的に、第1移動部材151は、車輪151Cと第1レール131Bとの間の遊び分、上下方向に移動可能であるが、それ以上は上下方向に移動できない。複数の車輪152B及び複数の車輪152Cがレール141Bを上下方向両側から挟むことで、第1移動部材151の上下方向への移動が制限されている。具体的に、第2移動部材152は、車輪152Cとレール141Bとの間の遊び分、上下方向に若干移動可能であるが、それ以上は上下方向に移動できない。第1移動部材151及び第2移動部材152を備えるYバー部150は、重いので、自重により、上方向には通常移動しない。従って、第1移動部材151及び第2移動部材152の上下方向への移動は、実質的に規制(禁止)されている。さらに、複数の車輪151D及び複数の車輪151Eが第2レール131Cを挟むことにより、第1移動部材151の左右方向への移動が規制されている。以上のような構成により、Yバー部150の上下方向及び左右方向への移動は規制されている。換言すると、前記の各レールないしレール部材131及び141(一対のレール部材)により、Yバー部150の前後方向への移動がガイド(案内)されている。
【0041】
上記のように、第1移動部材151の移動部材本体151Aには駆動機構BのナットB3が固定されており、第1移動部材151を備えるYバー部150は前後方向に移動可能であるので、当該Yバー部150は、駆動機構Bにより前後方向に移動する。
【0042】
Yバー153は、棒状部材である。Yバー153には、インクジェットヘッド160を搭載したキャリッジ170が左右方向にスライド可能に取り付けられている。つまり、Yバー153は、キャリッジ170を左右に移動可能に支持し、かつ、キャリッジ170の左右方向への移動を案内している。Yバー153は、第1Yバー支持部154と、第2Yバー支持部155と、により支持されている。
【0043】
第1Yバー支持部154は、Yバー153の左端部を支持している。第1Yバー支持部154は、第1移動部材151に固定されている。第1Yバー支持部154は、駆動ベルト156が掛け回された従動プーリ(図示せず)を内部に備える。
【0044】
第2Yバー支持部155は、Yバー153の右端部を支持している。第2Yバー支持部155は、第2移動部材152に固定されている。第2Yバー支持部155は、その内部に、駆動ベルト156が掛け回された駆動プーリ(図示せず)と、当該駆動プーリを駆動するモータと、を内部に備える。
【0045】
駆動ベルト156は、前記従動プーリ及び駆動プーリに掛け回されている。駆動ベルト156には、インクジェットヘッド160を搭載したキャリッジ170が固定されている。前記のモータにより、前記の駆動プーリを回転させることで、駆動ベルト156が回転し、キャリッジ170がYバー153に案内されて左右方向に移動することができる。
【0046】
インクジェットヘッド160は、キャリッジ170に搭載される。インクジェットヘッド160は、インクジェット方式により各種インク(例えば、CMYKのカラーインク)を吐出する。上記のように、Yバー部150は、レール部材131及び141により、前後方向への移動がガイドかつ支持されているため、当該Yバー部150の構成部材であるインクジェットヘッド160も、レール部材131及び141により、前後方向への移動がガイド(案内)かつ支持されていることになる。
【0047】
インクジェットプリンタ100は、上記各部材の他、インクジェットヘッド160にインクを供給するインク供給機構(図示せず)を備える。さらに、インクジェットプリンタ100は、インクジェットプリンタ100の動作を制御するコントローラ(図示せず)も備える。コントローラ(コンピュータ等により構成される)は、モータB1を制御してYバー部150を前後方向に移動させ、かつ、上記駆動プーリを制御してキャリッジ170に搭載されたインクジェットヘッド160を左右方向に移動させる駆動制御を行う。つまり、コントローラは、インクジェットヘッド160をメディアMに対して前後左右に移動させることができる。また、コントローラは、インクジェットヘッド160からのインクの吐出も制御する。コントローラは、インクジェットヘッド160を、メディアMに対して前後左右に移動させながら、インクの吐出を制御することで、画像をメディアMに印刷する。
【0048】
(プラテン110の構造)
プラテン110は、図3などに示すように、ハニカム構造体111と、枠体112と、天板113と、底板114と、を備える。
【0049】
ハニカム構造体111は、上下方向に貫通した複数の六角柱の貫通孔111Aを備えている。なお、上下方向は、プラテン110の表面(メディアMが載置される載置面)に直交する方向でもある。ハニカム構造体111は、断面が正六角形で上下方向に沿って延びた複数の筒体を組み合わせた当該複数の筒体の集合(貫通孔111Aを区画する壁は、二つの筒体の壁を貼り合わせたものである集合)ともいえる。枠体112は、プラテン110の枠(フレーム)を構成する部材であり、ハニカム構造体111の周囲を囲む四角形状に形成されている。枠体112は、ハニカム構造体111に固定されている。例えば、枠体112は、金属、合成樹脂等の材料によりハニカム構造体111と一体的に形成されることによりハニカム構造体111に固定されてもよい。また、枠体112とハニカム構造体111とを別体(同じ材料でも異なる材料でもよい)に形成し、別体に形成した枠体112をハニカム構造体111の外周部に全面接着又は複数のネジ等により固定してもよい。
【0050】
枠体112は、平面視したときに、ハニカム構造体111を構成する筒体の厚みやハニカム構造体111における貫通孔111Aを区画する壁の厚みよりも肉厚に形成されている。さらに、枠体112の外周面及び底面(レール部材131及び141が固定される面)は、適宜の表面加工等により、寸法精度(特に平坦さ)が向上している。
【0051】
ハニカム構造体111は、構造上剛性が高く(特に、レール部材131及び141よりも剛性が高く)、歪み(例えば、自重により、前後両端部、前端部、後端部、又は、前後方向中央部が重力により下方に下がり、弓状に反ること)が生じにくい構造となっている。従って、当該ハニカム構造体111に固定された枠体112も、ハニカム構造体111により補強され、前記のような歪みが生じにくい(生じない場合を含む。以下、歪みについて同様)ようになっている。枠体112は、四角柱形状の部材を四角形状に組み合わせた形状である。
【0052】
枠体112には、前後方向に沿って配列された複数のネジN1及び複数のネジN2が螺合し(枠体112に設けられた螺合孔に螺合し)、当該螺合により第1レール部130のレール部材131が締め付け固定されている。ネジN1により、レール部材131は枠体112の側面(左面)に締め付け固定され、ネジN2により、レール部材131は枠体112の底面に締め付け固定されている。さらに、枠体112には、前後方向に沿って配列された複数のネジN3及び複数のネジN4が螺合し(枠体112に設けられた螺合孔に螺合し)、当該螺合により第2レール部140のレール部材141が締め付け固定されている。ネジN3により、レール部材141は枠体112の側面(右面)に締め付け固定され、ネジN4により、レール部材141は枠体112の底面に締め付け固定されている。なお、ネジN1~N4は、座金を介してレール部材131又は141を締め付け固定するものであってもよい。
【0053】
この実施の形態では、レール部材131及び141が、前後方向に長尺で全体として直線状に延びた形状なので歪んでしまう。例えば、自重により、レール部材131の前後両端部、前端部、後端部、又は、前後方向中央部が重力により下方に下がり、レール部材131が全体として弓状に反ってしまう、又は、レール部材131がねじれにより歪んでしまう(レール部材141も同様)。そこで、この実施の形態では、前後方向に配列された複数のネジN1~N4により、レール部材131及び141を剛性の高い枠体112(ハニカム構造体111により補強され、レール部材131及び141よりも歪みにくい枠体112)に固定し、これらの歪みを矯正している。
【0054】
天板113及び底板114は、平板であり、ハニカム構造体111の上又は下に配置され、ハニカム構造体111の貫通孔111Aを塞ぐ。天板113及び底板114の各外周縁部は、枠体112の上面又は下面に達し、図示しないネジ等の締め付け具により、枠体112に固定されている。平面視したとき、天板113の外形と枠体112外形とは同じとなっている。一方で、枠体112の下面には、下方から見たときの内側が下段となる段差が設けられており、この段差により、底板114は、位置決めされている。
【0055】
(本実施の形態による作用効果)
上記のように、インクジェットプリンタ100では、押し出し成形品であることにより歪みやすいレール部材131及び141を、ハニカム構造体111により補強された枠体112(ハニカム構造体111により補強されていることで、レール部材131及び141よりも歪みにくい枠体112)に固定して、当該レール部材131及び141の歪みを矯正しているので、当該歪みの矯正をプラテン110以外の部材を用意することなく実現できる。従って、当該歪みを効率的に防止できる。なお、ハニカム構造体111や枠体112に歪みが無ければ、前記矯正により当該レール部材131及び141の歪みが防止される。また、レール部材131及び141に歪みが発生すると、印刷精度等が低下するが、当該歪みの矯正により、当該印刷精度等の低下も防止できる。
【0056】
上記のように、枠体112は、平面視したときに、ハニカム構造体111を構成する筒体の厚みやハニカム構造体111における貫通孔111Aを区画する壁の厚みよりも厚く(肉厚に)形成されており、この枠体112にレール部材131及び141がネジN1、N3により締め付け固定されている。ハニカム構造体111にレール部材131及び141をネジN1及びN3により直接固定すると、ハニカム構造体111を構成している外周壁が薄いので(特にネジN1及びN3の長さよりも薄いので)、その固定強度が低いが、肉厚な枠体112にレール部材131及び141をネジN1、N3により固定することで、前記直接固定よりも、レール部材131及び141を強固に固定できる。また、枠体112が肉厚なため、ネジN2及びN4と螺合する螺合孔も枠体112の下面に設けることができる(換言すると、枠体112の下面においてレール部材131及び141を固定できる)。これらの構成により、レール部材131及び141を枠体112に強固に固定でき、レール部材131及び141の歪みを効果的に矯正できる。
【0057】
従来のインクジェットプリンタとして、レール部材やプラテンを所定の厚板形状の支持部材(ステージ等)の上に配置したものがあるが、このようなインクジェットプリンタでは、前記レール部材の歪み等を防止するため当該支持部材を強固な構造にしなければならず、当該支持部材のコストがかさみ、インクジェットプリンタの製造コストもかさむ。上記インクジェットプリンタ100では、前記支持部材が不要になり、製造コストが軽減されている。
【0058】
レール部材131及びレール部材141は、上記のように押し出し成形品であることにより、切削品に比較して歪みやすい。一方で、レール部材131及びレール部材141を固定する枠体112はハニカム構造体111により補強されているため、レール部材131及びレール部材141の歪みは、枠体112への固定により矯正される。さらに、枠体112の外周面及び底面は表面加工等により寸法精度(平坦さなど)が向上しており、そこにレール部材131及びレール部材141を沿わせる(例えば、密着させる)ことにより、レール部材131及びレール部材141の歪み(特にねじれ等)が矯正される。このように、レール部材131及びレール部材141の固定先が、ハニカム構造体111により補強され、固定される面の寸法精度が高いことにより、レール部材131及びレール部材141の歪みは効果的に矯正されている。
【0059】
さらに、ハニカム構造体111を採用することで、プラテン110について剛性を確保しながら軽量化されている。仮に、ハニカム構造体111を採用しない場合、プラテン110は厚板形状になるが、この場合、プラテン110を支える脚にプラテン110を支持する梁用の鉄骨等を掛け渡す必要が生じ、インクジェットプリンタ100全体の重量が重くなる、部品点数が増加するなどの問題が生じる。上記のようにプラテン110にハニカム構造体111を採用することで、剛性を確保しながらの軽量化が実現されるので、前記鉄骨等が不要となり、前記問題が生じなくなる。
【0060】
上記のように、レール部材131及びレール部材141は、それぞれ、3以上の箇所で、締め付け具(ネジN1~N4)により枠体112に固定されていることで、レール部材131及びレール部材141の歪みを効果的に矯正できる。特に、複数の締め付け具の間隔を広げることで、レール部材131及びレール部材141の歪みを効果的に防止できる。
【0061】
上記のように、レール部材131及びレール部材141が、枠体112の側面と底面とに固定されていることにより、レール部材131及びレール部材141を枠体112に強固に固定されるので、レール部材131及びレール部材141の歪みを効果的に矯正できる。
【0062】
(変形例)
本発明は、上記実施の形態に限定されない。上記実施の形態について種々の変形を適用してもよい。以下に、変形例を例示するが、各変形例の少なくとも一部同士を組み合わせてもよい。
【0063】
(変形例1)
本発明は、被加工物(上記では、メディアM)が載置される載置部(上記では、プラテン110)と、載置部に載置された被加工物を加工する加工ヘッド(上記では、インクジェットヘッド160)と、加工ヘッドの移動をガイドするガイド部材(上記では、レール部材131及びレール部材141)と、を備える加工装置一般に適用できる。例えば、被加工物としてのカット対象(シート状のメディア等)をカットする(例えば、ミシン目の形成、ハーフカット、裁断などを行う)ためのカッティング装置(カッティングプロッタなどを含む)に本発明を適用してもよい。この場合、載置部は、プラテン110の代わりに、カット対象を載置するステージとなり、加工ヘッドは、インクジェットヘッドの代わりに、カット対象をカットするカッタを有するカッタヘッドとなる。加工装置は、加工ヘッドとして、カッタヘッドと、インクジェットヘッドとの両者を備えてもよい。
【0064】
(変形例2)
枠体112は、それ単独で、上記のような歪みが発生しにくい剛性(特に、レール部材131及び141よりも歪みが発生しにくい剛性)を備えてもよい。このような枠体112により、レール部材131及び141の各歪みを効果的に矯正できる。
【0065】
(変形例3)
枠体112を設けず、ハニカム構造体111に直接レール部材131及びレール部材141を固定してもよい(ハニカム構造体111によりレール部材131及びレール部材141の歪みは矯正される)。また、枠体112のような肉厚な部分は、ハニカム構造体111と、レール部材131又はレール部材141との間にのみ設けてもよい。つまり、枠体112の左右方向に延びる部分を無くした一対の棒状部材を、ハニカム構造体111とレール部材131との間、ハニカム構造体111とレール部材141との間それぞれに配置するようにしてもよい。
【0066】
(変形例4)
ハニカム構造体111を他の構造体としてもよい。構造体は、内部に複数の空間(貫通孔111Aなど)を有するものであればよい。これにより、プラテン110が軽量化される。例えば、断面が四角形状、三角形状、五角形状、円形状等の筒体の集合により内部に複数の空間を有する構造体を形成してもよい。複数の貫通孔は、上下方向(プラテン110の表面に直交する方向)以外の方向、例えば、上下方向に直交する方向(例えば前後方向又は左右方向)に沿って延びたものであってもよい。例えば、前記他の構造体として、貫通孔ないし当該貫通孔を形成する筒体が上下方向以外の方向に延びた構造体(例えば、左右方向又は前後方向に貫通孔が延びたハニカム構造体等)を採用してもよい。また、他の構造体として、内部が空洞の複数の構造体を組みあわせたものを採用してもよい。当該複数の構造体としては、直方体、立方体、ダイヤモンド構造体、三角柱等の角柱、三角錐等の角錐などを採用してもよい。また、プラテン110を、メディアMを吸引可能な構造(例えば、天板113に吸引口を設けた構造)としてもよい。例えば、特許文献1に開示された中間構造体と上部パネルと下部パネルとの組み合わせなどあってもよい。前記空間は、前記構造体の外部に連通した空間を含む。
【0067】
(変形例5)
レール部材131及びレール部材141とのうちのいずれかのみを枠体112に固定してもよい。レール部材131及びレール部材141は、枠体112の上面、側面、下面のうちの少なくともいずれかに固定されればよい。枠体112は、軽量化等のため空洞を有してもよい。
【0068】
(変形例6)
第1移動部材151は、車輪ではなく、レール部材131のレール上を摺動するものであってもよい。第2移動部材152も同様である。
【0069】
(変形例7)
レール部材131、レール部材141などの各種部材は、複数の部材(部品)から構成されるものであってもよい。また、レール部材131、レール部材141は、歪みが矯正される形状であれば適宜の形状であればよい。他の部材の形状も適宜変更してもよい。
【符号の説明】
【0070】
100 インクジェットプリンタ
110 プラテン
111 ハニカム構造体
112 枠体
113 天板
114 底板
120 脚部
130 第1レール部
131 レール部材
131A レール部材本体
131B 第1レール
131C 第2レール
131D フランジ
140 第2レール部
141 レール部材
141A レール部材本体
141B レール
141D フランジ
150 Yバー部
151 第1移動部材
151A 移動部材本体
151B~151E 車輪
152 第2移動部材
152A 移動部材本体
152B~152E 車輪
153 Yバー
154 第1Yバー支持部
155 第2Yバー支持部
156 駆動ベルト
160 インクジェットヘッド
170 キャリッジ
N1~N4 ネジ
B 駆動機構
B1 モータ
B2 ネジ軸
B3 ナット
図1
図2
図3