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特許7323312内袋容器用プリフォーム及び二重構造容器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】内袋容器用プリフォーム及び二重構造容器
(51)【国際特許分類】
   B29C 49/22 20060101AFI20230801BHJP
   B29C 49/06 20060101ALI20230801BHJP
   B29B 11/14 20060101ALI20230801BHJP
   B65D 1/02 20060101ALI20230801BHJP
   B65D 1/40 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
B29C49/22
B29C49/06
B29B11/14
B65D1/02 221
B65D1/40 100
B65D1/02 111
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019054867
(22)【出願日】2019-03-22
(65)【公開番号】P2020152056
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2022-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000003768
【氏名又は名称】東洋製罐グループホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】518172978
【氏名又は名称】メビウスパッケージング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】石川 将
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 剛志
(72)【発明者】
【氏名】中谷 豊彦
(72)【発明者】
【氏名】葛西 知宏
(72)【発明者】
【氏名】成川 美子
(72)【発明者】
【氏名】阿久沢 典男
(72)【発明者】
【氏名】市川 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】飯野 裕喜
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-511292(JP,A)
【文献】特開平06-039906(JP,A)
【文献】特開2019-142186(JP,A)
【文献】特開2017-197268(JP,A)
【文献】特表2002-529337(JP,A)
【文献】特開2005-047593(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 49/00 - 49/80
B29B 11/00 - 11/16
B65D 1/00 - 1/48
B65D 6/00 - 13/02
B65D 67/00 - 79/02
B65D 81/18 - 81/30
B65D 81/38 - 81/38
B65D 85/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スタックプリフォーム法による同時延伸ブロー成形により、外筒容器と外筒容器内に収容された内袋容器とからなるエアレスボトルを製造する際に使用される内袋容器用プリフォームにおいて、
該内袋容器用プリフォームは、全体として試験管形状を有しており、非延伸成形部である内袋首部と、該内袋首部に連なり且つ延伸成形に供される管状胴部とを有しており、
前記管状胴部の内面には、軸方向に線状に延びている収縮規制用溝が、周方向に間隔をおいて複数箇所に形成されており、且つ該管状胴部の平断面でみて、隣接する収縮規制用溝の間隔dは、該胴部平断面での周長の13~20%となるように、該収縮規制用溝の数が設定されていることを特徴とする内袋容器用プリフォーム。
【請求項2】
前記複数の収縮規制用溝は、胴部平断面でみて、点対称的に配置されている請求項1に記載の内袋容器用プリフォーム。
【請求項3】
胴部平断面でみて、前記収縮規制用溝の幅wは、0.2~8.0mmの範囲にある請求項2に記載の内袋容器用プリフォーム。
【請求項4】
胴部平断面でみて、前記収縮規制用溝の深さtは、該溝以外の部分の管状胴部の厚みTの15~80%の範囲にある請求項2に記載の内袋容器用プリフォーム。
【請求項5】
前記複数の収縮規制用溝の幅w及び深さtは、全て同一に設計されている請求項1~4の何れかに記載の内袋容器用プリフォーム。
【請求項6】
前記複数の収縮規制用溝の数が偶数に設定されている請求項2~4の何れかに記載の内袋容器用プリフォーム。
【請求項7】
前記収縮規制用溝は、前記胴部のハイトHに対して30%以上の軸方向長さLを有している請求項1~6の何れかに記載の内袋容器用プリフォーム。
【請求項8】
前記収縮規制用溝は、前記胴部の内面に形成されている請求項1~7の何れかに記載の内袋容器用プリフォーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外筒容器と、該外筒容器内に挿入されて保持された内袋容器とからなる二重構造容器に関するものであり、より詳細には、スタックプリフォーム法による同時延伸ブロー成形により該二重構造容器を製造するために使用される内袋容器用プリフォーム及び該内袋用プリフォームを用いて得られる二重構造容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内袋容器と外筒容器とからなる二重構造を有している二重構造容器は、例えばエアレスボトルとして、醤油等の調味液が収容される容器として実用されている。かかるエアレスボトルは、逆止弁付のキャップと組み合わせで使用されるものであり、外筒容器であるボトルの胴部壁を外部からスクイズして凹ませることにより、内袋容器に充填されている内容液がキャップに形成されている注出路から排出される。また、ボトルの胴部壁の押圧を停止することにより内容液の排出を終了させると、逆止弁の作用により、空気は内袋容器には導入されず、キャップの注出路とは異なる流路を通って、内袋容器と外筒容器との間の空間に導入されることとなる。これにより、内袋容器は、内容液が排出された分だけ収縮することとなり、内容液を排出する毎に、内袋容器が収縮していく。このような方法により内容液が排出されるエアレスボトルでは、内容液を小出しできると共に、内容液が充填されている内袋容器への空気の侵入が有効に防止されるため、内容液の酸化劣化を有効に回避でき、内容液の鮮度を長期間にわたって保持できるという利点がある。
【0003】
上記のような二重構造容器の製法としては、外筒容器成形用の樹脂と内袋容器成形用の樹脂として、互いに接着性を有していない樹脂を選択し、これらの樹脂を用いてのダイレクトブロー成形により容器の形態に賦形するというダイレクトブロー法が主流であった。即ち、この方法は、上記の樹脂を用いての溶融押出により、二重構造のパイプを成形し、このパイプの下端部をピンチオフした後、ブロー流体を吹き込むことによりボトルの形態に賦形するという手法である。しかしながら、かかる方法では、溶融押出成形からボトル成形までの行程が一挙に行われることから多数個取りが難しく、生産性が低いという問題があった。また、外筒容器に関して、強度が低いという問題もあった。
【0004】
このため、最近では、延伸ブロー成形により、二重構造容器を製造する方法が検討されている。
この方法としては、大きく分けて、プリフォーム-イン-ボトル法とスタックプリフォーム法が知られている。
【0005】
プリフォーム-イン-ボトル法は、予め、公知の延伸ブロー成形により外筒容器を成形し、この外筒容器内に、試験管形状の内袋用プリフォームを挿入し、この状態で内袋用プリフォーム内にブロー流体を供給してブロー成形を行うという手法である。この方法では、外筒容器がブロー型として機能し、内袋用プリフォームが袋状の容器形状に賦形されることとなる。つまり、この方法では、外筒容器についての延伸ブロー成形と内袋容器の延伸ブロー成形とが逐次行われる。
【0006】
スタックプリフォーム法は、外筒容器成形用プリフォームと内袋用プリフォームとを射出成形により成形し、内袋用プリフォームを外筒容器成形用プリフォーム内に挿入して、外筒容器成形用プリフォームと内袋用プリフォームとが重なったスタックプリフォームを形成し、このスタックプリフォームをブロー型内に保持し、スタックプリフォーム内部の内袋用プリフォーム内にブロー流体を供給して延伸ブロー成形を行うという手法である。つまり、この方法は、外筒容器成形用プリフォームは、内袋用プリフォームの膨張によって容器の形態に賦形されるものであり、外筒容器についての延伸ブロー成形と内袋容器の延伸ブロー成形とが同時に行われる。
【0007】
しかしながら、内袋容器と外筒容器とからなる二重構造容器では、内袋容器内に収容されている容器内容液を排出していくにしたがい、内袋容器が不規則に変形し、例えばある程度内容液を排出すると、内袋容器の底部が外筒容器の底部から浮き上がってしまい、クシャクシャになってしまい、内容液の排出流路がつぶれてしまい、内容液の排出が困難になるという問題がある。このような問題は、ダイレクトブロー法、プリフォーム-イン-ボトル法及びスタックプリフォーム法の何れの方法により二重構造容器を製造した場合にも生じている。
【0008】
例えば、特許文献1には、プリフォーム-イン-ボトル法に使用される内袋容器用プリフォームについて、胴部外面に空隙形成用リブを設けることが開示されている。このような内袋容器用プリフォームを用いての二重構造容器では、外筒容器の内面と内袋の外面との間に空隙が形成されているため、内容液を最初に排出する際、内袋プリフォームが外筒容器の内面から速やかに離れて収縮するため(初期デラミ性に優れている)、内容液を速やかに排出することができるというものである。しかしながら、かかる二重構造容器では、内容液の排出に伴う内袋容器の収縮が不規則であるため、内容液を排出していくうちに、内容液の排出が困難になるという問題は解決されていない。
また、この特許文献1には、外筒容器用プリフォームの内面に空隙形成用リブを設けることも提案されているが、この場合にも、上記の問題は解決されていない。
【0009】
また、特許文献2には、スタックプリフォーム法に使用される内袋容器用プリフォームについて、胴部外面に多数の突条を設けることが開示されている。このような内袋容器用プリフォームを用いて得られる二重構造容器も、外筒容器の内面と内袋の外面との間に空隙が形成されるものの、内容液の排出に伴う内袋容器の収縮が不規則であるため、内容液を排出していくうちに、内容液の排出が困難になるという問題は解決されていない。
【0010】
さらに、特許文献3には、スタックプリフォーム法により二重構造容器を製造するに際し、内袋容器用プリフォーム底部に突部及び係合用の爪を設け、この爪を外筒容器用プリフォーム底部の空孔に挿入しての係合により2つのプリフォームを連結しておき、この形態で同時延伸ブロー成形を行うという手段が提案されている。
かかる手段では、内袋容器の底部が外筒容器の底部に連結されているため、内容液の排出に伴う内袋容器の収縮が規制されており、内容液を排出していくうちに、内容液の排出が困難になるという問題は有効に解決されている。しかしながら、かかる手段では、内袋用プリフォームの底部に爪を形成し、さらに、外筒容器用プリフォームには、該爪と係合する孔を設けることが必要であるため、これらのプリフォームを製造するための金型が複雑なものとなってしまい、さらには、内袋用プリフォームに形成されている爪を、外筒容器用プリフォームに形成されている孔に挿入し、係合させるという面倒な操作が必要となってしまい、生産性が低いという大きな問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2005-53513号公報
【文献】特許第4281454号
【文献】特開2014-69875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明の目的は、内容液を排出していくうちに、内容液の排出が困難になるという問題が有効に解決されたエアレスボトルにおける内袋容器を成形することができる内袋容器用プリフォームを提供することにある。
また、本発明の他の目的は、複雑な形態の金型を使用せず、また爪と孔との係合等の面倒な手段を用いることなく、スタックプリフォーム法によるエアレスボトルの成形に適用される内袋容器用プリフォームを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者等は、先に、特願2018-030820号により、全体として試験管形状を有しており、非延伸成形部である首部(内袋首部)に連なり且つ延伸成形に供される管状部に、軸方向に線状に延びている収縮規制用溝が、周方向に間隔をおいて複数箇所に形成されている内袋容器用プリフォームを提案した。かかる内袋容器用プリフォームを使用してのスタックプリフォーム法により二重構造容器を成形したとき、得られる内袋容器の袋状部は内容液の排出に伴い、規則的に収縮し、この結果、内容液を排出していくうちに、内容液の排出が困難になるという問題が有効に解決されている。
上記の技術では、確かに、収縮規制用溝を設けていない場合に比して、内容液の排出に伴う内袋容器の収縮が規制され、内容液の排出性が向上するのであるが、本発明者等は、さらに実験を行い、かかる技術を推し進めた結果、収縮規制用溝の数をある程度増やすことにより、内容液の排出性がより向上するという知見を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0014】
即ち、本発明によれば、スタックプリフォーム法による同時延伸ブロー成形により、外筒容器と外筒容器内に収容された内袋容器とからなるエアレスボトルを製造する際に使用される内袋容器用プリフォームにおいて、
該内袋容器用プリフォームは、全体として試験管形状を有しており、非延伸成形部である内袋首部と、該内袋首部に連なり且つ延伸成形に供される管状胴部とを有しており、
前記管状胴部の内面には、軸方向に線状に延びている収縮規制用溝が、周方向に間隔をおいて複数箇所に形成されており、且つ該管状胴部の平断面でみて、隣接する収縮規制用溝の間隔dは、該胴部平断面での周長の13~20%となるように、該収縮規制用溝の数が設定されていることを特徴とする内袋容器用プリフォームが提供される。
【0015】
本発明の内袋容器用プリフォームにおいては、次の態様が好適に採用される。
(1)前記複数の収縮規制用溝は、胴部平断面でみて、点対称的に配置されていること。
(2)胴部平断面でみて、前記収縮規制用溝の幅wは、0.2~8mmの範囲にあること。
(3)胴部平断面でみて、前記収縮規制用溝の深さtは、該溝以外の部分の管状胴部の厚みTの15~80%の範囲にあること。
(4)前記複数の収縮規制用溝の幅w及び深さtは、全て同一に設計されていること。
(5)前記複数の収縮規制用溝の数が偶数に設定されていること。
(6)前記収縮規制用溝は、前記胴部のハイトHに対して30%以上の軸方向長さLを有していること。
(7)前記収縮規制用溝は、前記胴部の内面に形成されていること。
【発明の効果】
【0017】
本発明の内袋容器用プリフォームは、スタックプリフォーム法により二重構造容器を製造するために使用されるものである。即ち、この内袋容器用プリフォームが外筒容器用プリフォームの内部に挿入されて保持されているスタックプリフォームを組み立て、このスタックプリフォームをブロー金型内に配置し、この状態で、適宜ストレッチロッドを内袋容器用プリフォームの内部に挿入して一軸方向に延伸し、さらに、内袋容器用プリフォーム内にブロー流体(例えば圧縮エア)を供給して周方向に膨張させること(即ち、同時延伸ブロー延伸)により二重構造容器が製造される。かかる延伸ブロー成形において、内袋容器用プリフォームは、外筒容器用プリフォームの内面に密着しながらの膨張により薄肉化されて内袋容器の形態に賦形され、外筒容器用プリフォームは、その内面に密着している内袋容器用プリフォームの膨張に伴って膨張薄肉化され、ブロー金型により外筒容器の形態に賦形され、これにより、外筒容器と外筒容器内に収容保持された内袋容器とからなる二重構造容器が得られるわけである。
【0018】
このような内袋容器用プリフォーム及び外筒容器用プリフォームは、何れも全体として試験管形状を有しており、内袋容器用プリフォームは、外筒容器用プリフォーム内に挿入保持されたとき、該外筒容器用プリフォームの非延伸成形部ある口部内に位置する首部と、該首部に連なる胴部及び胴部を閉じている底部を有している。即ち、外筒容器用プリフォームとの同時延伸ブロー成形に際して、胴部及び底部が延伸成形される部分となっている。このような基本形状を有する内袋容器用プリフォームにおいて、本発明では、延伸成形される部分である胴部に、周方向に間隔をおいて複数箇所に、軸方向に線状に延びている収縮規制用溝を設けるのであるが、特に、隣接する収縮規制用溝の間隔dが、該胴部平断面での周長の13~20%となるように、その数が設定されている点に重要な特徴を有している。
【0019】
このような収縮規制用溝が複数形成されている内袋容器用プリフォームを用いて前述した同時延伸ブロー成形を行うと、この溝の部分は、薄肉であるため、他の部分に比してより薄肉化され、得られる内袋容器の袋状部には、上記の収縮規制用溝に対応するように薄肉化された収縮規制用薄肉部が複数形成されることとなる。
即ち、内袋容器に形成された収縮規制用薄肉化部は、周方向に間隔をおいて複数形成されているが、何れも容器の軸方向に延びており、このような薄肉部でない部分に比してかなりの薄肉となっている。このため、内袋容器内に収容された内容液が排出するに伴って生じる内袋容器の収縮は、軸方向に延びている収縮規制用薄肉部を起点としての変形となり、この結果、内容液の排出に伴う収縮によって、内袋容器の底部が大きく浮き上がってシワクチャになるような不規則な収縮変形が抑制され、内容液の流路が遮断されてしまうことがなく、安定して内容液の排出を行うことができる。
【0020】
しかも、本発明では、上記のような数で内袋容器用プリフォームに収縮規制用溝が形成されている結果、内容液の排出性がより高められている。即ち、このような数の収縮規制用溝により収縮規制用薄肉部が形成されたとき、内容液の排出に伴う内袋容器の袋状部の収縮形態が中心部分に大きな空隙を有するようなものとなり、このような空隙が内容液の排出通路となるため、内容液の排出性が著しく向上しているものと思われる。
【0021】
また、重要なことは、上記のような内袋容器の袋状部に形成される収縮規制用の薄肉部は、スタックプリフォーム法を採用することによってのみ実現でき、プリフォーム-イン-ボトル法では形成することができないということである。
即ち、収縮を規制するための薄肉部は、収縮の際の変形の起点となるものであるため、他の部分との厚み差がかなり大きいものであることが必要である。この厚み差が小さいと、内容液の排出に伴って内袋容器が収縮変形する際、他の部分もほぼ同時に変形することとなり、収縮を規制する機能が発揮されないからである。従って、このような厚み差を有する薄肉部を形成するためには、この内袋容器を成形するために使用される内袋容器用プリフォームの延伸成形部(胴部)に、薄肉の部分、具体的には溝を形成しておかなければならず、この溝も、他の部分との厚み差を大きく設定しておく必要がある。このような大きな厚み差のある溝を有する内袋容器用プリフォームを、プリフォーム-イン-ボトル法のように、独立して延伸ブロー成形すると、著しく厚みの薄い溝が大きく引き伸ばされるため、破断等の成形不良を生じてしまう。即ち、溝の厚みが制限されるため、収縮規制するための薄肉部を形成することができない。
一方、スタックプリフォーム法では、同時延伸ブロー成形により二重構造容器を製造する場合には、内袋容器用プリフォームの延伸成形部(胴部)は、外筒容器用プリフォームの内面に密着し且つ外筒容器用プリフォームと一体化した膨張により引き延ばされる。従って、内袋容器用プリフォームに、他の部分との厚み差が大きな溝が形成されていたとしても、外筒容器用プリフォームの胴部内面が、溝部分単独での延伸を緩和し、溝部分が、溝以外の部分と同等に膨張薄肉化していき、この結果、破断等の成形不良が有効に抑制される。換言すると、収縮規制薄肉部を形成し得るような大きな厚み差のある溝を形成することが、内袋容器用プリフォームの胴部(延伸成形部)に形成することができるわけである。
【0022】
尚、上記の軸方向に延びている線状の溝の代わりに、内袋容器用プリフォームの胴部、特に外面に突条を設けることも考えられる。この場合、ブロー成形により得られる内袋容器には、該突条に対応するように厚肉部が形成されることとなるが、このような厚肉部は、外筒容器と内袋容器との間に空隙を形成するには役立つが、収縮を規制する機能は示さない。即ち、この部分は、変形しにくい部分であり、内容液の排出に伴う収縮変形は、大面積で存在する厚肉部以外の部分から生じるため、どうしても収縮変形が不規則に生じてしまうこととなる。
【0023】
このように、本発明の内袋容器用プリフォームを用いてのスタックプリフォーム法により得られる二重構造容器は、内容液の排出に伴う内袋容器の収縮変形が有効に規制され、不規則な変形が防止されており、内容液の排出流路が塞がれるという不都合が防止されるばかりか、その収縮形態が中心部分に大きな空隙を有するものとなっているため、内容液の排出性が著しく高められている。
【0024】
また、本発明では、延伸成形部(胴部)に溝が形成されている内袋容器用プリフォームを用いることを除けば、従来から知られているスタックプリフォーム法により二重構造容器を成形することができ、爪や孔などを有する格別の形態のプリフォームを使用するものではなく、しかも、スタックプリフォームを組み立てる際に、爪と孔との係合等の面倒な操作を行う必要もなく、従って、本発明は、生産性や製造コスト等の点でも極めて有利である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の二重構造容器の製造に使用される内袋容器用プリフォーム、外筒容器用プリフォーム及びこれらのプリフォームから組み立てられたスタックプリフォームの概略側断面を示す図であり、図1(a)は、内袋容器用プリフォーム、図1(b)は外筒容器用プリフォーム、図1(c)は、スタックプリフォームを示す図である。
図2図1の内袋容器用プリフォームのA-A平断面図(a)及びその部分拡大図(b)である。
図3】スタックプリフォーム法による同時延伸ブロー成形により得られる本発明の二重構造容器の概略側断面を示す図。
図4図4中の内袋容器のB-B平断面を示す図。
図5】二重構造容器について、内容液の排出に伴う内袋容器の収縮変形の形態を示す図であり、図5(a)は、本発明に従い、収縮規制用薄肉部が内袋容器に形成されている時の収縮変形の形態を示す概略側面図であり、図5(b)は、その概略平断面図である。
図6】収縮規制用薄肉部が内袋容器に形成されていない時の収縮変形の形態を示す概略側面図である。
図7】複数の収縮規制用溝の間隔dが所定範囲より大き過ぎる場合において、該溝から形成される薄肉部に由来する内袋容器の変形形態の例を示す概略平断面図。
図8】形状が異なる2種の収縮規制用溝の配置パターン(a)及びこの配置パターンから形成される収縮規制用薄肉部に由来する内袋容器の変形形態の例を示す概略平断面図(b)。
図9】形状が異なる2種の収縮規制用溝の配置パターン(a)及びこの配置パターンから形成される収縮規制用薄肉部に由来する内袋容器の変形形態の例を示す概略平断面図(b)。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1を参照して、本発明の二重構造容器は、内袋容器用プリフォーム1(図1(a)参照)と、外筒容器用プリフォーム3(図1(b)参照)とを用いてのスタックプリフォーム法により得られるものである。即ち、内袋容器用プリフォーム1(以下、単に内プリフォームと呼ぶことがある)を、外筒容器用プリフォーム3(以下、単に外プリフォームと呼ぶことがある)内に挿入してスタックプリフォーム20(図1(c)参照)を形成し、このスタックプリフォームを用いて延伸ブロー成形することにより、内プリフォーム1と外プリフォーム3とが同時に延伸ブロー成形され、後述する図3に示されている二重構造容器が製造される。
【0027】
図1から理解されるように、内プリフォーム1及び外プリフォーム3は、何れも、全体として試験管形状を有しており、射出成形により成形されるものである。
【0028】
本発明において、内プリフォーム1は、首部(内袋首部)5と、内袋首部5に連なる胴部7及び胴部7の下端を閉じている底部9を有している。一方、内プリフォーム1が収容される外プリフォーム3は、首部(外筒首部)11と、外筒首部11に連なる胴部13及び胴部13の下端を閉じている底部15とからなっている。上記の外プリフォーム3において、外筒首部11が延伸成形されない固定部(非延伸成形部)であり、胴部13及び底部15が延伸成形される部分である。
【0029】
上記のような内プリフォーム1において、内袋首部5は、スタックプリフォーム20としたとき、外プリフォーム3の外筒首部11(即ち、延伸ブロー成形されない部分)内に位置する。従って、この内プリフォーム1では、内袋首部5に連なる胴部7及び底部9が延伸成形される領域となる。即ち、内袋首部5及び外筒首部11の形態は、ブロー成形後においても、そのまま維持されている。
尚、図1において、内袋首部5及び外筒首部11は、何れもハッチングで示されている。
【0030】
また、図1において、内プリフォーム1の内袋首部5の上方部分は、スタックプリフォーム20としたとき、外プリフォーム3の外筒首部11内にしっかりと嵌合固定されており、その上端には、外方に広がった周状フランジ5aが形成されており、この周状フランジ5aが口部11の上端と係合することにより、内プリフォーム1が必要以上に深く挿入されないように位置決めされることとなる。
尚、図1のスタックプリフォーム20では、上記のように内袋首部5の上方部分は、外筒首部11内にしっかりと嵌合固定されて密着しているが、このような態様に限定されるものではなく、外筒首部11の上端以外の部分で内袋首部5を嵌合固定することもできる。例えば、内袋首部5の上方部分と外筒首部11との間に空隙を形成しておき、所定のホルダを用いて、内プリフォーム1を外プリフォーム3内に保持しておき、この状態でブロー成形を行った後、内袋首部5を押し込んで、外筒首部11の内面の下方部分で内袋首部5を嵌合固定することもできる。このような手法は、内袋首部5の外面と外筒首部11の内面に空気路を形成し、これらの首部5,11の上端の間隙を通して、後述する二重構造容器の胴部間(作用空間)に空気を導入する構造を形成する際に好適である。
【0031】
また、非延伸成形部である外プリフォーム1の外筒首部11の外面には、逆止弁付のキャップを装着するための螺条11aが設けられており、この螺条11aの上側には、空気導入口11bが形成されており、かかる空気導入口11bを通して、最終的に成形される二重構造容器の内袋容器と外筒容器との間に空気を導入し、内袋容器に充填された内容液の排出作業を速やかに行い得るようになっている。
さらに、上記の螺条11aの下側には、サポートリング11cが設けられており、外プリフォーム3やスタックプリフォーム20の搬送などの際の把持部材として使用される。また、逆止弁付のキャップが装着されたとき、該キャップがサポートリング11cの上面に当接することにより、空気が漏れることなく、空気導入口11bを通して、最終的に成形される二重構造容器の内袋容器と外筒容器との間に空気を導入することができる。
【0032】
尚、上記のような内プリフォーム1及び外プリフォーム3において、内プリフォーム1の首部5が、外プリフォーム3の口部11から突出するような形態とすることもでき、突出した部分の首部5の外面に逆弁付キャップとの係合用の螺条11aを設けることもでき、さらに、逆止弁付キャップが、螺子係合によらず、嵌合固定によって固定されるタイプのものである場合には、上記のような螺条11bを省略し、代わりに嵌合固定用のアンダーカットを設けることもできる。
さらに、先に述べたように、内袋首部5の外面と外筒首部11の内面に空気路を形成し、これらの首部5,11の上端の間隙を通して、空気を導入する構造とするときには、上記の空気導入口11bを省略することもできる。
【0033】
また、上記の内プリフォーム1の胴部7の外面は、その上端部(内袋首部5に連なる部分)から下方にいくにしたがい縮径されたテーパー部7aを有しており、このテーパー部7aは、下方に直胴部7bに連なっている。このような形態により、内プリフォーム1を、速やかに外プリフォーム3内に挿入することができる。
【0034】
上述した内プリフォーム1を外プリフォーム3内に挿入して形成されるスタックプリフォーム20を、ブロー金型内に保持し、ブロー成形可能な温度(プリフォームを形成している樹脂のガラス転移点温度以上、融点未満)に加熱し、内プリフォーム1内に、適宜、ストレッチロッドを挿入し、一軸方向に延伸した後、圧縮空気等のブロー流体を内プリフォーム1に供給して、周方向に膨張させて延伸させることにより、目的とする二重構造容器が得られる。
即ち、内プリフォーム1の延伸成形部(胴部7及び底部9)は、外プリフォーム3の延伸成形部(胴部13及び底部15)の内面に密着しながら延伸成形され、外プリフォーム3は、内プリフォーム1により押し広げられて延伸され、ブロー金型によって容器の形態に賦形され、このとき、内プリフォーム1は、外プリフォーム3の内面を型として、変形自在な袋状部の形態に賦形されることとなる。
【0035】
このような内プリフォーム1において、本発明では、延伸成形部である胴部7の内面に、収縮規制用溝10が複数形成されている。即ち、図2の平断面図を併せて参照して、この胴部7、特に直胴部7bの内面には、軸方向に延びている収縮規制用溝10が複数(図2の例では6本)形成されている。尚、図1においては、作図上、この溝10が形成されている部分は、一転鎖線で囲まれた領域で示されている。
【0036】
先ず、上記の収縮規制用溝10の基本的な特性について説明する。
この収縮規制用溝10は、溝以外の部分との厚み差が大きく、これにより、この内プリフォーム1を延伸ブロー成形して得られる内袋容器の胴部には、該内袋容器に充填されている内容液の排出に伴う収縮変形を規則的に規制する薄肉部を形成することができる。このような薄肉部及び収縮変形の形態については、追って詳述する。
【0037】
例えば、本発明において、上記の収縮規制用溝10の深さtは、該溝10以外の部分の厚みTの15~80%の範囲にあり、このように他の部分との厚み差が大きく薄肉となっている。この溝10の深さtが、浅い場合には、収縮変形を規則的に規制する収縮規制用薄肉部を内袋容器に形成することが困難となってしまう。
ここで重要なことは、先にも述べたように、他の部分との厚み差が大きい収縮規制溝10は、スタックプリフォーム法によって内プリフォーム1と外プリフォーム3とを同時延伸ブロー成形する場合にのみ、収縮規制用薄肉部を内袋容器に形成することができるということであり、他の方法では、このような収縮規制用薄肉部を内袋容器に形成することはできない。内プリフォーム1の延伸ブロー成形時に溝10の部分で破断を生じてしまうからである。スタックプリフォーム法では、内プリフォーム1が延伸ブロー成形によって膨張変形する際、常に、内プリフォーム1の胴部7の外面には外プリフォーム3の胴部13の内面が密着した状態にあるため、溝10の部分での破断が有効に防止され、この結果、収縮規制用薄肉部を内袋容器に形成することができるわけである。
【0038】
尚、この溝10の深さtが過度に深いと、延伸ブロー成形時に破断を生じ易くなるため、この深さt部分において、200μm以上、特に500μm以上の厚みを有していることが望ましい。
【0039】
また、本発明において、胴部平断面でみて、上記の収縮規制用溝10の幅wは、0.2~8.0mmの範囲にあることが好適である。即ち、この幅wが必要以上に大き過ぎる場合及び必要以上に小さ過ぎる場合の何れにおいても、溝10に由来して内袋容器に形成される収縮規制用薄肉部の幅が大きく或いは小さくなり、内容液の排出に伴う収縮変形を規則的に規制することが困難となる傾向がある。
【0040】
上記収縮規制用溝10の軸方向長さLは、特に制限されないが、一般的には、延伸成形部である胴部7のハイトH、即ち、スタックプリフォーム20としたとき、外プリフォーム3の首部(外筒首部)11の下端よりも下方に位置する部分の長さに対して、30%以上、特に50%以上の長さを有していることが、内容液の排出に伴う収縮を全体的に規則正しく規制するために好適である。
また、このような収縮規制用溝10は、特に底部9に近い側に位置していることが好ましく、例えば、図1に示されているように、直胴部7bの部分に形成されていることが望ましい。これにより、内容液の排出に伴う収縮変形に際して、内袋容器の底部が上方に浮いてしまうなどの不規則変形をより確実に防止することができる。
【0041】
さらに、図1の例では、上記の収縮規制用溝10は、胴部7の内面に形成されているが、勿論、胴部7の外面にも形成することができる。ただし、この溝10の深さをより深くし、他の部分との間に大きな厚み差を形成する場合には、この内プリフォーム1の射出成形性等の観点から、胴部7の内面に溝10を設けることが好ましい。また、延伸ブロー成形に際して、溝10の部分での破断を効果的に防止するという観点からも、内面に溝10を設けることがより好適である。
【0042】
図3及び図4を参照して、全体として30で示されている本発明の二重構造容器は、上述した内プリフォーム1と外プリフォーム3とからなるスタックプリフォーム20を延伸ブロー成形することにより得られるものであり、内プリフォーム1から得られる内袋容器31と、外プリフォーム3から得られる外筒容器41とからなる。
【0043】
これらの容器31及び41では、内プリフォーム1の内袋首部5や外プリフォーム3の外筒首部11が実質的に延伸成形されない部分であるため、これらの部分をそのままの形態で有している。
例えば、内袋容器31は、内袋首部5と、変形自在の胴部33及び底部35を有しており、胴部33及び底部35が延伸ブロー成形により賦形された部分であり、変形自在の袋状部Qとなっている。
また、外筒容器41は、外筒首部11と、胴部43及び底部45を有しており、胴部43及び底部45が延伸ブロー成形により賦形された部分である。また、この容器の自立性等の観点から、一般に、底部45の中央部には、上げ底部45aが形成されており、底部45の周縁部分が接地部となるような形態を有している。ブロー成形直後の初期状態では、内袋容器31の袋状部Q(胴部33及び底部35)は、外筒容器41の内面に密着した状態に保持されている。
【0044】
このような二重構造容器30において、本発明では、内袋容器31の袋状部Q(胴部33)には、図2に対応して、6本の収縮規制用薄肉部50が形成されている。尚、図3においては、作図上、この薄肉部50が形成されている部分は、一転鎖線で囲まれた領域で示されている。
即ち、この収縮規制用薄肉部50は、図1の内プリフォーム1に設けられている収縮規制用溝10が延伸されることにより形成されたものであり、従って、これらの薄肉部50は、軸方向に帯状に延びている。
尚、この薄肉部50の最少厚みt’の他の部分の厚みT’に対する割合は、通常、20~85%程度である。この薄肉部50は、収縮規制用溝10の部分が、延伸ブローにより他の部分に比してより薄肉化されている。また、薄肉部50の幅w’は、周方向の延伸倍率に応じて薄肉化されている分、収縮規制用溝10の幅wよりも広がっている。従って、この幅w’が必要以上に大きくならないように、延伸ブローの条件(周方向延伸倍率)が設定され、例えば、この幅w’は、3~30mm程度の範囲となるように、収縮規制用溝10の幅wに応じて、周方向延伸倍率が設定される。
【0045】
本発明では、上記の収縮規制用薄肉部50は、他の部分との厚み差が大きい部分であり、非常に薄肉となっている。このため、既に述べたように、厚み差のある収縮規制用溝10を有する内袋容器用プリフォーム1を用い、スタックプリフォーム法による同時延伸ブロー成形を行うことによってしか、このような収縮規制用薄肉部50を形成することができない。
【0046】
即ち、本発明の二重構造容器30では、内袋容器31内に内容液が充填され、外筒容器41の胴部43を押圧することにより、内袋容器31の胴部33も押圧され、これにより、内容液が排出される。次いで、この押圧を停止すると、外筒容器41の胴部43は、原形に復帰するが、この際、内袋容器31の袋状部Q(胴部33)と外筒容器41の胴部43との間の空間(作用空間)の圧力が負圧となるため、両者の間に、逆止弁付キャップに設けられている空気弁を通して空気が流れ込むこととなるが(図の例では、この空気は空気導入口11bから流れ込む)、内袋容器31内には空気は流れ込まず、従って、内容液の酸化劣化が有効に防止され、内容液の品質を有効に維持することができる。このように、内容液の排出に伴い、内袋容器31の袋状部Qは収縮し、次に外筒容器41の胴部43を押圧することにより、再び、内容液が排出されることとなる。
【0047】
上記のように内容液を排出していくと、これに伴い、内袋容器31の袋状部Q(胴部33及び底部Q)は収縮していくが、本発明では、上記の収縮規制用薄肉部50が複数形成されているため、この収縮による変形が規則的となるように規制され、この収縮変形による内容液の流路が潰されてしまう等の不都合を有効に回避することができる。
例えば、胴部33の収縮変形の形態を示す図5を参照して、本発明では、複数の収縮規制用薄肉部50を稜線として収縮変形するため(図5では、図4に対応して、6本の収縮規制用薄肉部50が形成されている)、丁度、ボトル中から見て、山谷が連続した形態に変形し、この結果、変形した胴部33の中心部分には、内容液の排出流路となる空間Zが確保されることとなる(図5(b)参照)。
一方、図6に示されているように、収縮規制用薄肉部50が形成されていない場合には、この胴部33の全体が一気に変形するため、例えば、胴部33が外筒容器41の底部45から大きく浮き上がってしまい、著しく不規則な形態に収縮してしまい、この結果、内容液の流路が潰されてしまい、内容液の排出が困難となってしまう。
【0048】
上記のように、内プリフォーム1の管状胴部7に複数の収縮規制用溝10を形成しておくことにより、内袋容器31の袋状部Qの収縮を規制する収縮規制用薄肉部50が形成され、内容液の排出に起因する袋状部Qの収縮形状を規制することができる。これが、この収縮規制用溝10の基本的な特性である。
【0049】
本発明では、上記のような収縮規制用溝10の特性を最大限に発揮させるため、周方向に隣り合っている収縮規制用溝10の間隔d(図2(a)参照)が、この内プリフォーム1の周長の13~20%の範囲に設定されている。(この周長は、溝10が存在している側の周長であり、溝10が内面に形成されている場合には、内周長であり、溝10が外面に形成されている場合には、外周長となる。)
即ち、管状胴部7に、複数の溝10を形成する場合、このような溝10は、ブロー成形時の偏肉を防止するために、通常、点対称的に設けられるが(即ち、等間隔で形成される)、隣り合う溝10の間隔dが、上記範囲内であるとき、内袋容器31の袋状部Qの収縮形態が、内容液の排出に最も適したものとなる。
【0050】
例えば、間隔dが上記範囲内に設定されるとき、収縮規制用溝10及びこの溝10から形成される収縮規制用薄肉部50の数は、5本以上となるが、間隔dが上記範囲よりも大きく、収縮規制用溝10及び収縮規制用薄肉部50の数が、5本よりも少ない時には、袋状部Q(胴部33)の収縮形態が規制できたとしても、中央部の空間Zが小さなものとなってしまい、内容液の排出流路が小さく且つ潰れやすいものとなる。図7(a)には、3本の収縮規制用薄肉部50が形成されたときの袋状部Q(胴部33)の収縮形態が示されているが、6本の収縮規制用薄肉部50が形成されている図6(b)と比較すると、何れも、中央部の空間Zが小さくなっていることが理解されよう。
【0051】
また、間隔dが上記範囲よりも小さい時、例えば収縮規制用溝10及び収縮規制用薄肉部50の数が9本以上となっているとき、内容液が排出されて袋状部Q(胴部33)が収縮したとき、平断面でみて、該薄肉部50により形成される山の数が多くなってしまい(9以上)、この結果、隣り合う山と山の間隔が小さくなってしまい、内容液の排出に際して、山部の変形などにより、内容液の排出流路が容易に閉塞してしまい、内容液の排出が困難となってしまう。
【0052】
このように、隣り合う収縮規制用溝10の間隔dが一定の範囲内となるように、該収縮規制用溝10の数を設定することにより、収縮規制用溝10の特性を最大限に発揮し、これらの溝10から形成される収縮規制用薄肉部50によって、内容液の排出流路となる中央の空間Zを大きなものとし、さらに、内容液の配収流路が閉塞され難い形態に袋状部Qを収縮させることができる。
【0053】
また、本発明において、上記のような複数の収縮規制用溝10は、その数が奇数(例えば5本、7本)の場合には、その深さt及び幅wの何れもが、成形誤差範囲内(通常、10%以下)において、同一に設定されていることが好ましい。深さtや幅wがばらついていると、収縮形態が不安定となり、内容液の排出性が不安定となるおそれがある。
【0054】
さらに、収縮規制用溝10の数が偶数(例えば6本、8本)のときには、その深さtや幅wを全て同一に設定でなくともよく、深さt或いは幅wが異なる収縮規制用溝10を混在させることもできる。例えば、深さt或いは幅wが大きな基準溝αと、基準溝αよりも深さt或いは幅wが小さな補助溝βの少なくとも1種とを、収縮規制用溝10として配置することができる。
【0055】
図8は、6本の収縮規制用溝10が内プリフォーム1の管状胴部7の内面に形成されている場合の基準溝α、補助溝βの配置形態と(図8(a)参照)、これらの溝α及びβにより内袋容器31の胴部33に形成される収縮規制用薄肉部50及び収縮形態を示す(図8(b)参照)。
即ち、この例では、基準溝αが径方向に対向するように配置され、その間に小さな補助溝βが配置されており、基準溝αに由来して、内袋容器31の胴部33には、収縮規制用薄肉部50αが形成され、補助溝βに由来して、内袋容器31の胴部33には、収縮規制用薄肉部50βが形成される。
【0056】
一方、図9も、6本の収縮規制用溝10が内プリフォーム1の管状胴部7の内面に形成されている例であるが、この場合には、基準溝αと補助溝βとが交互に配置され(図9(a)参照)、このような基準溝αと補助溝βに由来して、内袋容器31の胴部33には、収縮規制用薄肉部50αと50βとが交互に形成されている(図9(b)参照)。
【0057】
図8(b)及び図9(b)から理解されるように、内容液の排出に伴って内袋容器3の胴部33が収縮したとき、その収縮形態では、基準溝αに由来する収縮規制用薄肉部50αを折り畳み線としてシャープで且つ高さの高い大きな山が形成され、このような大きな山の間に、補助溝βに由来する収縮規制用薄肉部50βを折り畳み線として、比較的ブローで高さの低い小さな山が形成される。即ち、大きな山の間に小さな山が形成されているため、大きな山同士が変形して互いに接触してしまうことが、小さな山によって抑制されており、これによって、内容液の排出流路となる中央部の空間Zを有効に確保でき、安定した内容液排出性が得られる。例えば、複数の収縮規制用溝10の全てが基準溝αのように、深さtまたは幅wの大きなものである場合、内袋容器31の胴部の収縮形態は、全てシャープで且つ高さの高い大きな山となるため、内容液の排出等により、その山が変形した時、隣の山と接触してしまい、排出流路となる中央部分の空間Zが閉じられてしまうなどの不都合を生じ易くなってしまう。上記の態様のように、基準溝αと共に、小さな補助溝βを形成しておくことにより、このような不都合を有効に回避することができる。
【0058】
上記の説明から理解されるように、基準溝αと補助溝βとは、ある程度以上、その深さt或いは幅wが異なっていることが好ましく、例えば、その深さt及びwが前述した範囲内であることを条件として、基準溝αの深さt或いは幅wに対して、補助溝βでは、その80%以下となっていることが好ましい。両者の差が小さい時には、大きな山の間に形成される小さな山の緩衝性が小さくなってしまい、所望の効果を発現させることができなくなってしまうからである。
【0059】
また、上述した例では、複数の基準溝αは、全て同じ大きさであり、これに対して形成されている複数の補助溝βは、全て同じ大きさとなっている場合を示しているが、径方向に対向している補助溝β同士が同じ大きさを有していることを条件として、大きさの異なる補助溝βを存在させることもできる。
また、補助溝βが設けられており且つ径方向に対向している限り、基準溝αが4本存在していてもよい。
【0060】
上述した本発明の二重構造容器は、内袋容器31内に内容液を充填した後、それ自体公知の逆止弁付キャップを装着し使用に供される。
【0061】
本発明において、内袋容器31を形成するための内袋容器用プリフォーム1や外筒容器41を形成するための外筒容器用3は、ブロー成形が可能であるかぎり、種々の熱可塑性樹脂で形成することができる。
このような熱可塑性樹脂としては、例えば、以下のものを例示することができる。
オレフィン系樹脂、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1-ブテン、ポリ4-メチル-1-ペンテンあるいはエチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン等のα-オレフィン同士のランダムあるいはブロック共重合体、環状オレフィン共重合体など;
エチレン・ビニル系共重合体、例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・塩化ビニル共重合体等;
スチレン系樹脂、例えば、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体、ABS、α-メチルスチレン・スチレン共重合体等;
ビニル系樹脂、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル・塩化ビニリデン共重合体、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等;
ポリアミド樹脂、例えば、ナイロン6、ナイロン6-6、ナイロン6-10、ナイロン11、ナイロン12等;
ポリエステル樹脂、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、及びこれらの共重合ポリエステル等;
ポリカーボネート樹脂;
ポリフエニレンオキサイド樹脂;
生分解性樹脂、例えば、ポリ乳酸など;
勿論、成形性が損なわれない限り、これらの熱可塑性樹脂のブレンド物を、下地樹脂として使用することもできる。
本発明において、特に好適に使用される熱可塑性樹脂は、ポリエステル系樹脂及びオレフィン系樹脂であり、さらに、用途上、内袋容器31と外筒容器41との間には空気が流入するため、外筒容器3を形成するための外プリフォーム3には水分及びガスバリア性は必ずしも必要ではなく、水分及びガスバリア性の低いポリ乳酸も好適に使用することができる。
【0062】
また、成形される内袋容器31や外筒容器41にガスバリア性を付与するために、これらを形成するための内プリフォーム1や外プリフォーム3を多層構造とすることもできる。
例えば、前述したポリエステル系樹脂やオレフィン系樹脂(或いはポリ乳酸)等から形成された内外層の間に中間層として、エチレンビニルアルコール共重合体(エチレン酢酸ビニル共重合体ケン化物)や芳香族ポリアミドなどのガスバリア性樹脂を用いて形成されるガスバリア層を設けることが好ましく、特にエチレンビニルアルコール共重合体によるガスバリア層を設けることが最も好適である。即ち、中間層としてガスバリア層を設けることにより酸素バリア性を付与することができ、特にエチレンビニルアルコール共重合体は、特に優れた酸素バリア性を示すため、酸素透過による内容物の酸化劣化をも有効に抑制することができ、優れた内容物保存性を確保することができる。
【0063】
また、上記のようなガスバリア層を設ける場合には、内外層との接着性を高め、デラミネーションを防止するために、接着剤樹脂層を設けることもでき、これにより、中間層のガスバリア層をしっかりと内外層に接着固定することができる。このような接着樹脂層の形成に用いる接着剤樹脂はそれ自体公知であり、例えば、カルボニル基(>C=O)を主鎖若しくは側鎖に1乃至100meq/100g樹脂、特に10乃至100meq/100g樹脂の量で含有する樹脂、具体的には、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などのカルボン酸もしくはその無水物、アミド、エステルなどでグラフト変性されたオレフィン樹脂;エチレン-アクリル酸共重合体;イオン架橋オレフィン系共重合体;エチレン-酢酸ビニル共重合体;などが接着性樹脂として使用される。
【0064】
上述した本発明の二重構造容器は、複雑な構造の金型を使用することがなく且つスタックプリフォームも容易に組み立てることができるため、生産性に優れている。また、継続して内容液の排出をスムーズに行うことができ、内容液の内袋容器内への残存を有効に抑制できるばかりか、長期間にわたって高い鮮度を保持することができ、しかも、内容液を小出しできることから、醤油等の調味液用の容器として極めて有用である。
【符号の説明】
【0065】
1:内袋容器用プリフォーム(内プリフォーム)
3:外筒容器用プリフォーム(外プリフォーム)
5:内プリフォーム及び内袋容器の首部
7:内プリフォームの胴部
9:内プリフォームの底部
10:収縮規制用溝
α:基準溝
β:補助溝
11:外プリフォーム及び外筒容器の口部
11b:空気導入口
20:スタックプリフォーム
30:二重構造容器
31:内袋容器
33:内袋容器の胴部
35:内袋容器の底部
41:外筒容器
43:外筒容器の胴部
45:外筒容器の底部
50:収縮規制用薄肉部
50α:基準溝αに由来する薄肉部
50β:補助溝βに由来する薄肉部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9