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  • 特許-比例電磁弁および油圧回路システム 図1
  • 特許-比例電磁弁および油圧回路システム 図2
  • 特許-比例電磁弁および油圧回路システム 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】比例電磁弁および油圧回路システム
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/06 20060101AFI20230801BHJP
   F15B 11/08 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
F16K31/06 305V
F16K31/06 305K
F16K31/06 305L
F15B11/08 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019097607
(22)【出願日】2019-05-24
(65)【公開番号】P2020180696
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2022-03-31
(31)【優先権主張番号】P 2019083880
(32)【優先日】2019-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】303025663
【氏名又は名称】株式会社日立ニコトランスミッション
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【弁理士】
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】金子 裕一郎
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-48675(JP,A)
【文献】特開2017-145865(JP,A)
【文献】特開平1-224579(JP,A)
【文献】特開昭51-59186(JP,A)
【文献】特開昭50-154830(JP,A)
【文献】特開平11-280931(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/06-31/11
F15B 11/00-11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソレノイド部と、マニホールド部とを有する比例電磁弁であって、
前記ソレノイド部には少なくとも、コイルと、前記コイルにより作動する可動子と、作動した前記可動子を押圧する第1付勢手段と、を備え、
前記マニホールド部には、前記可動子により押圧されるスプールと、前記スプールを前記可動子側へ押圧する第2付勢手段と、を備え、
前記第1付勢手段と前記第2付勢手段のばね定数を異なる値とすると共に、前記第1付勢手段の取付荷重を前記第2付勢手段の取付荷重より強くし、非通電状態で前記スプールを前記第2付勢手段側へ、予め定められた制御圧力流体の突出圧力より小さな力で押し付ける構成とすることにより、前記可動子をディザ制御した際における前記スプールの発振を抑制したことを特徴とする比例電磁弁。
【請求項2】
前記マニホールド部は、分解可能なブロック構造であることを特徴とする請求項1に記載の比例電磁弁。
【請求項3】
請求項1または2に記載の比例電磁弁を油圧機器の制御、並びにパイロット油圧制御のために用いたことを特徴とする油圧回路システム。
【請求項4】
前記比例電磁弁に対する元圧の導入経路を、油圧ポンプからの外部経路と、制御弁を介した内部経路との双方に接続し、両経路の切り替えが可能な構造にしていることを特徴とする請求項3に記載の油圧回路システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、比例電磁弁に係り、特に、低圧用の比例電磁弁と、この比例電磁弁を適用する油圧回路システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、比例電磁弁は、可動子の静摩擦による固着防止や磁気特性のヒステリシスを減らすため、可動子に微振動(ディザ)を与え、ヒステリシスを低減する事が行われてきた。このような制御(ディザ制御)を行う比例電磁弁としては、例えば特許文献1に開示されているようなものが知られている。特許文献1に開示されている比例電磁弁は、従来のPWM駆動方式によるディザ制御に替えて、ディザ信号の最大周波数とディザ信号の最大傾斜角度、および印加電圧に対する電流の傾斜角度を考慮、調整することで、可動鉄片(スプール)に、指示通りの振幅を与え、ヒステリシスの低減を図るというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4169780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献に開示されているような比例電磁弁によれば、静摩擦を抑制し、かつスプールの動作を支持通りのものとすることが可能であり、ヒステリシスの低減を図る事ができると考えられる。
【0005】
しかし、特許文献1に開示されている比例電磁弁のような低圧用の比例電磁弁は、剛性が低く、ゴミ詰まりなどが生じた場合には、分解清掃を行う事ができないものが多い。
【0006】
そこで本発明では上記問題を解決し、制御性能が高く、剛性の向上を図ることができ、分解洗浄も行う事のできる比例電磁弁と、この比例電磁弁を適用可能な油圧回路システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る比例電磁弁は、ソレノイド部と、マニホールド部とを有する比例電磁弁であって、前記ソレノイド部には少なくとも、コイルと、前記コイルにより作動する可動子と、作動した前記可動子を押圧する第1付勢手段と、を備え、前記マニホールド部には、前記可動子により押圧されるスプールと、前記スプールを前記可動子側へ押圧する第2付勢手段と、を備え、前記第1付勢手段と前記第2付勢手段のばね定数を異なる値にすることにより、前記可動子をディザ制御した際における前記スプールの発振を抑制したことを特徴とする。
【0008】
また、上記のような特徴を有する比例電磁弁では、前記第1付勢手段の取付荷重を前記第2付勢手段の取付荷重より強くし、非通電状態で前記スプールを前記第2付勢手段側へ、予め定められた制御圧力流体の突出圧力より小さな力で押し付ける構成とすることもできる。このような特徴を有することによれば、ソレノイド部への通電を行わない状態でも、スプールがドレンを塞ぐ方向に力がかけられることとなる。このため、このような構成の比例電磁弁を油圧回路に適用することで、突出側経路(例えばパイロット経路)の圧力がゼロとなる事がなく、予圧状態を維持することが可能となる。
【0009】
また、上記のような特徴を有する比例電磁弁において前記マニホールド部は、分解可能なブロック構造とすると良い。このような特徴を有する事によれば、マニホールド部の分解洗浄が容易となる。
【0010】
また、上記目的を達成するための本発明に係る油圧回路システムは、上記のような特徴を有する比例電磁弁を油圧機器の制御、並びにパイロット油圧制御のために用いることを特徴とする。
【0011】
さらに、上記のような特徴を有する油圧回路システムは、前記比例電磁弁に対する元圧の導入経路を、油圧ポンプからの外部経路と、制御弁を介した内部経路との双方に接続し、両経路の切り替えが可能な構造にしていることを特徴とする。このような特徴を有する事によれば、どのような用途に於いてもマニホールド部における制御圧力流体吐出経路内の作動油に予圧を生じさせることができる。
【発明の効果】
【0012】
上記のような特徴を有する比例電磁弁は、ヒステリシスを抑制し、制御性を高めることができる。また、マニホールド部をソレノイド部と分割可能な構成としたことで、マニホールド部に高い剛性を持たせるように構成することができる。また、マニホールド部をソレノイド部から取り外すことができるため、分解洗浄も可能となる。また、このような効果を奏する比例電磁弁を適用した油圧回路システムでは、パイロット油圧の応答性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態に係る比例電磁弁の部分断面構成図である。
図2】第1実施形態に係る比例電磁弁の分解断面図である。
図3】実施形態に係る油圧回路システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の比例電磁弁に係る実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、図面における図1は、実施形態に係る比例電磁弁の構成を示す概略図である。また、図2は、実施形態に係る比例電磁弁の分解図である。また、図3は、実施形態に係る比例電磁弁を適用する場合の油圧回路図の例である。
【0015】
[比例電磁弁]
本実施形態に係る比例電磁弁10は、ソレノイド部12とマニホールド部24とを基本として構成されている。
【0016】
[ソレノイド部]
ソレノイド部12は、比例電磁弁10の開閉制御を行う役割を担う要素である。ソレノイド部12には少なくとも、コイル14と、このコイル14により作動する可動子16、可動子16に付勢力を与えるスプリング18(第1付勢手段)、および固定磁極20とが、ケーシング22の内部に収容されている。可動子16は、プランジャ16aと、このプランジャ16aに固定された可動磁極16bとから構成されている。可動子16を構成するプランジャ16aは、軸受け20aを備える固定磁極20と、同じく軸受け21aを備えるスプリング受け21に挿通され、軸線方向への摺動を可能に構成されている。
【0017】
コイル14は、固定磁極20の外周に配置されている。なお、コイル14の配置形態は、固定磁極20の外周を覆うように構成されるソレノイド型としている。このような構成とした場合、コイル14への通電を行う事で固定磁極20が磁化し、プランジャ16aに固定されている可動磁極16bが固定磁極20に引き付けられ、ケーシング22からプランジャ16aを突出させることとなる。
【0018】
スプリング18は、可動子16を構成する可動磁極16bとスプリング受け21との間に配置されている。スプリング18をこのように配置することで可動子16には、ケーシング22に固定されたスプリング受け21を基点として、プランジャ16aを押圧する方向への付勢力が付与されることとなる。
【0019】
つまり、コイル14が無通電状態でも、可動子16はスプリング18により、駆動側へ加圧されることになる。このため、マニホールド部24の制御圧力流体吐出経路30(パイロット油圧吐出経路とも言う)の可変絞り60が開放されることが無く、当該経路の油圧が0(ゼロ)まで低下することがない。よって、応答性の向上や、ヒステリシスの低減を図る事が出来る。
【0020】
[マニホールド部]
マニホールド部24は、供給された流体(作動油)を制御動作に従って分配する役割を担う要素である。マニホールド部24は、分配ブロック26と、制御ブロック38とを有する。分配ブロック26には少なくとも、元圧流体を導入する導入経路28と、所定の圧力流体を吐出する制御圧力流体吐出経路30、および余剰圧力分の作動流体を排出する第1ドレン経路32、並びに第2ドレン経路34が備えられている。なお、第1ドレン経路32は、導入経路28に接続され、開口32a側に排出する経路であり、第2ドレン経路34は、制御ブロック38の接続側に第1開口34aを有し、制御圧力流体吐出経路30の開口側に第2開口34bを有する経路である。
【0021】
導入経路28には、供給経路における圧力維持、並びに比例電磁弁10への供給流体の安定化を図るための元絞り28a(固定絞り)が設けられている。また、制御圧力流体吐出経路30の開口側には、吐出された制御圧力流体をトリガとして作動可能な制御機器が配置され、第1ドレン経路32の開口32a側、並びに第2ドレン経路34の第1開口34a側には、制御ブロック38が配置される。また、第1ドレン経路32の開口32aには、スプリング受けが形成され、詳細を後述するスプール44に付勢力を与えるスプリング36(第2付勢手段)が配置されている。
【0022】
制御ブロック38には、ドレン経路40と、このドレン経路40に接続されるシリンダ42が設けられている。シリンダ42の一方の開口42a側には、分配ブロック26における第1ドレン経路32の開口32aが接続され、他方の開口42b側には、ソレノイド部12における可動子16のプランジャ16aの突出部位が接続されるように構成されている。
【0023】
シリンダ42には、スプール44が配置されている。スプール44には、ドレン導入経路46とドレン分配経路48が備えられている。このような構成では、シリンダ42内におけるスプール44の配置位置により、ドレン分配経路48がドレン経路40に接続される。ドレン分配経路48の開口部には、図1に該当箇所の部分拡大図を示すように、緩い傾斜を備えたテーパ面48aが形成されている。このため、ドレン分配経路48とドレン経路40との接続部位には、スプール44の位置により流路の開放度合いが変化する可変絞り60が構成されている。よって、ドレン導入経路46から流れ込んだ流体は、可変絞り60で絞られた(流量調整された)後、ドレン経路40に流れ込むこととなる。
【0024】
このような構成の制御ブロック38におけるスプール44は、分配ブロック26とソレノイド部12を組付けた際、分配ブロック26側からは、スプリング36によりソレノイド部12側へ押し出す方向の付勢力が与えられる。一方、ソレノイド部12側からは、プランジャ16aにより、スプール44を分配ブロック26側に押し戻す方向の付勢力が与えられる。ここで、第1付勢手段であるスプリング18と、第2付勢手段であるスプリング36とでは、ばね定数を異ならせている。このようにスプール44を長手方向両端部から、それぞれ異なるバネ定数のスプリング18,36で支え、それぞれの端部側へ負荷をかけた際の変形量(移動量)を異ならせることにより、ダンピング効果を生じさせ、スプール44の振動やバタツキを抑えることができる。
【0025】
可動子16をディザ制御した際の振動は、スプール44の動作に影響を与えるが、元絞り28aからの流体の供給量が少ないこと、及び、可変絞り60を構成するスプール44のドレン分配経路48の開口側にテーパ面48aを備えていること、並びにスプール44の長手方向両端部をそれぞれ異なるバネ定数のスプリング18,36で支えしていること等により、吐出流体の圧力変動に与える影響は小さい。また、用途により制御系への影響がないディザに設定することもできる。
【0026】
スプリングのばね定数(剛性)をk、荷重(力)をP、荷重を受けた際のスプリングの変形量(伸び又は縮み)をδとした場合、ばね定数の公式は、k=P/δと示すことができる。この公式によれば、ばね定数が異なる場合には、同じ力が加えられたとしても、変形量が異なることを理解できる。
【0027】
このため、ディザ制御に起因して可動子16により、スプリング18とスプリング36に同じ力が加えられたとしても、2つのスプリング18,36のバネ定数が異なることにより、両者の変形量が異なり、力の打ち消し合いが生じることでスプール44にダンピング効果が与えられ、その発振やバタツキが抑制される。
【0028】
このような構成によれば、既存のソレノイド部12に対して既存のディザ制御を実施させた場合に、ディザ制御による可動子16の振幅を抑えつつ、静摩擦の影響、及び磁気特性の影響を回避し、ヒステリシスの低減を図ることができる。また、可動子16の振幅を抑制することにより、制御圧力流体吐出経路30に供給される流体に対する脈動の発生を抑えることができる。
【0029】
本実施形態では、スプール44のドレン分配経路48の吐出口と制御ブロック38におけるドレン経路40の導入口との相対的な位置関係を調整し、両者間の隙間(可変絞り60)を制御することで、制御圧力流体吐出経路30からの吐出流体の圧力調整が成される。
【0030】
[作用・効果]
上記のような構成の比例電磁弁10によれば、ソレノイド部12が可動子16に対してディザ制御を行った際、マニホールド部24に配置されたスプール44の発振を抑制することができる。このため、ディザ制御時における制御圧力流体吐出経路30からの吐出流体の圧力(流体を作動油とした場合におけるパイロット油圧)の圧力変動(脈動)を抑制し、高い制御性を得ることができる。
【0031】
また、ディザ制御を実施しつつスプール44の発振を抑制することができるため、スプール44の位置制御における分解能を向上させることができる。よって、パイロット油圧の制御を高精度に行うことができる。また、ディザ制御時におけるスプール44の発振を抑制することができるため、ディザ制御における制御電圧を高めることができ、静摩擦や磁気特性に起因した電流制御時のヒステリシスの発生を低減することができる。
【0032】
また、スプール44はスプリング36により、常に可動子16を構成するプランジャ16aの先端に押し付けられた状態となる。このため、スプール44とプランジャ16aとの間で接触、離脱の繰り返しに伴う摩耗が生じ難く、高い耐久性を得ることができる。
【0033】
さらに、上記のような構成の比例電磁弁10では、マニホールド部24を分解可能な複数のブロックにより構成していることより、各流体経路に目詰まりが生じた際には、分解清掃が可能となる。また、マニホールド部24は、金属ブロックの削り出しにより構成することができる。このため、従来のカートリッジ式のマニホールド部に比べて高い剛性を得ることができ、過酷な環境下においても破損しにくい。
【0034】
[適用例]
次に、上記実施形態に係る比例電磁弁の適用例について、図3に示す油圧回路システム50を例に挙げて説明する。
【0035】
図3に示す油圧回路システム50において、上記実施形態に係る比例電磁弁10は、油圧クラッチ制御のための油圧回路の一部として、減圧弁52のパイロット油圧の制御用に適用されている。また、図3に示す例では、減圧弁52の一次側には、油圧クラッチ制御のためのクラッチ嵌脱弁54が設けられている。
【0036】
比例電磁弁10への作動油の導入経路は、クラッチ嵌脱弁54の一次側と、二次側の双方に設けられ、シャトルバルブ56を介して両導入経路を接続し、比例電磁弁10の導入経路28へと接続する構成としている。このような構成とすることで、クラッチ嵌脱弁54の一次側と、二次側、いずれの経路からでも比例電磁弁10に対して作動油の供給を行うことができるようになるからである。
【0037】
油圧回路システム50に対してこのように配置される比例電磁弁10では、第1付勢手段としてのスプリング18の取付荷重を第2付勢手段としてのスプリング36の取付荷重よりもやや強くし、コイル14への通電を行わない状態においても、スプール44をスプリング36側へ押し付け、ドレン経路40を閉塞させる力を作用させるように構成している。この時、スプリング18とスプリング36との取付荷重差は、スプリング18によるスプール44の押し付け力が、予め定めたパイロット油圧よりも小さな力となるようにする。なお、パイロット油圧とは、減圧弁52のパイロット油圧として設定される制御圧力流体吐出経路30の設定圧力である。
【0038】
比例電磁弁10をこのように設定することで、スプール44のドレン分配経路48に設けられたテーパ面48aが可変絞り60として作用することとなる。これにより、図3に示す油圧回路システム50では、減圧弁52のパイロット油圧に予圧を残すことが可能となる。このため、比例電磁弁10を制御した際の応答性の向上を図ることができる。また、比例電磁弁10には上述したように、ディザ制御を行いつつ、可動子16の振動を抑えることができるため、制御精度の向上を図りつつ、ヒステリシスの低減を図ることもできる。なお、予圧としては、一例として、パイロット定格油圧の10%から20%程度となるようにすると良い。
【0039】
ここで、クラッチ嵌脱弁54の一次側の導入経路とは、油圧ポンプから吐出された作動油を引き込む、いわゆる外部経路である。また、クラッチ嵌脱弁54の二次側の導入経路とは、クラッチ嵌脱弁54の制御動作により、クラッチ嵌脱弁54の後段側に供給された作動油を引き込む、いわゆる内部経路である。
【0040】
このように外部経路と内部経路を選択、あるいは切り替え可能にすることで、用途による使い分けができるようになる。例えば、シングルクラッチ式では外部経路にすることにより、前進/後進用等、多段クラッチ式の場合にクラッチ嵌脱弁54の後段側に必要となる切替弁(不図示)が不要となる。このため、油圧回路のシンプル化が可能となる。
【0041】
なお、クラッチ嵌脱弁54の後段側の油圧は別の機器の作動油圧、例えば、クラッチ脱時、クラッチのツレ廻りを抑えるための潤滑油カット弁やクラッチ嵌検出用圧力スイッチ等のパイロット油圧として使用することもできる。このパイロット油圧に、制御上、最低圧力が0(ゼロ)近くまで低下する減圧弁52の二次側圧力を使用した場合、制御対象とする油圧機器の誤作動の原因になるため好ましくない。
【0042】
また、シングルクラッチ式で減圧弁52をクラッチ嵌脱弁54の二次側に配置し、内部経路を採用した場合(クラッチ嵌脱弁54の二次側圧力をパイロット油圧とする場合)も、クラッチ嵌脱弁54の操作後、比例電磁弁10に油圧が供給されるため、応答遅れが発生する、といった問題が生ずる。これに対し、外部経路を採用した場合(クラッチ嵌脱弁54の一次側圧力をパイロット油圧とする場合)は、比例電磁弁10に常に油圧が導かれているため、クラッチ嵌脱弁54の嵌操作と同時に減圧弁52の制御が可能になり、応答遅れが発生しない。
【符号の説明】
【0043】
10………比例電磁弁、12………ソレノイド部、14………コイル、16………可動子、16a………プランジャ、16b………可動磁極、18………スプリング、20………固定磁極、20a………軸受け、21………スプリング受け、21a………軸受け、22………ケーシング、24………マニホールド部、26………分配ブロック、28………導入経路、28a………元絞り、30………制御圧力流体吐出経路、32………第1ドレン経路、32a………開口、34………第2ドレン経路、34a………第1開口、34b………第2開口、36………スプリング、38………制御ブロック、40………ドレン経路、42………シリンダ、42a………一方の開口、42b………他方の開口、44………スプール、46………ドレン導入経路、48………ドレン分配経路、48a………テーパ面、50………油圧回路システム、52………減圧弁、54………クラッチ嵌脱弁、56………シャットバルブ、60………可変絞り。
図1
図2
図3