IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱重工業株式会社の特許一覧

特許7323361積層造形用粉末、積層造形用スラリー、3次元積層造形体、焼結体、積層造形用スラリーの製造方法、積層造形方法及び焼結方法
<>
  • 特許-積層造形用粉末、積層造形用スラリー、3次元積層造形体、焼結体、積層造形用スラリーの製造方法、積層造形方法及び焼結方法 図1
  • 特許-積層造形用粉末、積層造形用スラリー、3次元積層造形体、焼結体、積層造形用スラリーの製造方法、積層造形方法及び焼結方法 図2
  • 特許-積層造形用粉末、積層造形用スラリー、3次元積層造形体、焼結体、積層造形用スラリーの製造方法、積層造形方法及び焼結方法 図3
  • 特許-積層造形用粉末、積層造形用スラリー、3次元積層造形体、焼結体、積層造形用スラリーの製造方法、積層造形方法及び焼結方法 図4
  • 特許-積層造形用粉末、積層造形用スラリー、3次元積層造形体、焼結体、積層造形用スラリーの製造方法、積層造形方法及び焼結方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】積層造形用粉末、積層造形用スラリー、3次元積層造形体、焼結体、積層造形用スラリーの製造方法、積層造形方法及び焼結方法
(51)【国際特許分類】
   B28B 1/30 20060101AFI20230801BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20230801BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20230801BHJP
   B33Y 40/00 20200101ALI20230801BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20230801BHJP
   B29C 64/314 20170101ALI20230801BHJP
   B29C 64/379 20170101ALI20230801BHJP
   B29C 64/106 20170101ALI20230801BHJP
   C04B 35/14 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
B28B1/30
B33Y70/00
B33Y80/00
B33Y40/00
B33Y10/00
B29C64/314
B29C64/379
B29C64/106
C04B35/14
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019125452
(22)【出願日】2019-07-04
(65)【公開番号】P2021011050
(43)【公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100210572
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 太一
(72)【発明者】
【氏名】坊野 匠
(72)【発明者】
【氏名】谷川 秀次
(72)【発明者】
【氏名】小熊 英隆
(72)【発明者】
【氏名】坪田 秀峰
【審査官】大西 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-066049(JP,A)
【文献】国際公開第2017/104234(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 1/30
B33Y 10/00-99/00
C04B 35/14
B29C 64/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粗粒無機粉末と、
粒径が前記粗粒無機粉末より小さい微細無機粉末と、
からなり、
前記粗粒無機粉末と前記微細無機粉末との粒径体積比率が28.0~53.0であり、
前記粗粒無機粉末のd10とd50との比d10/d50が、0.1~0.7であり、前記粗粒無機粉末のd90とd50との比d90/d50が、1.6~2.9であり、
前記粗粒無機粉末がシリカであり、
前記微細無機粉末がアルミナであり、
前記粗粒無機粉末の平均粒径が2.0~20.0μmであり、
前記微細無機粉末の平均粒径が0.10~0.64μmである、
積層造形用粉末。
【請求項2】
粗粒無機粉末と、
粒径が前記粗粒無機粉末より小さい微細無機粉末と、
からなり、
前記粗粒無機粉末と前記微細無機粉末との粒径体積比率が28.0~53.0であり、
前記微細無機粉末のd10とd50との比d10/d50が、0.1~0.6であり、前記微細無機粉末のd90とd50との比d90/d50が、2.0~5.0であり、
前記粗粒無機粉末がシリカであり、
前記微細無機粉末がアルミナであり、
前記粗粒無機粉末の平均粒径が2.0~20.0μmであり、
前記微細無機粉末の平均粒径が0.10~0.64μmである、
積層造形用粉末。
【請求項3】
前記粒径体積比率が28.0~49.6である請求項1又は2に記載の積層造形用粉末。
【請求項4】
前記粗粒無機粉末の形状が球状である請求項1乃至のいずれか1項に記載の積層造形用粉末。
【請求項5】
前記微細無機粉末の形状が球状である請求項1乃至のいずれか1項に記載の積層造形用粉末。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1項に記載の積層造形用粉末と液状樹脂とからなる積層造形用スラリーにおいて、積層造形用粉末の濃度が70.0~80.0vol.%である積層造形用スラリー。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1項に記載の積層造形用粉末を用いた3次元積層造形体。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項に記載の積層造形用粉末を用いた焼結体。
【請求項9】
請求項1~のいずれか1項に記載の積層造形用粉末と液状樹脂とを混合し、400~600rpmで攪拌する積層造形用スラリーの製造方法。
【請求項10】
請求項に記載の積層造形用スラリーを用いて3次元積層造形体を形成する積層造形方法。
【請求項11】
請求項10に記載の積層造形方法で形成された3次元積層造形体に、脱脂処理、焼結処理を行う焼結方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層造形用粉末、積層造形用スラリー、3次元積層造形体、焼結体、積層造形用スラリーの製造方法、積層造形方法及び焼結方法に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機用のタービン翼やガスタービンは、精密鋳造によって製造される。タービン等の内部構造の形成には、セラミックス中子が用いられる。ガスタービンやエンジンの高効率化のために、内部構造を決定するセラミックス中子には、より複雑な形状が求められるようになっている。
【0003】
セラミックス中子を製造する方法については、例えば、特許文献1に開示されている方法がある。当該方法では、ワックスを金型に射出してろう型を作製し、その後、無機粒子を含有するスラリー中に作製したろう型を浸漬させてコーティングし、乾燥することで乾燥鋳型を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-132021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示されたスラリーを用いた方法では、射出成型を用いているため、型抜き対策などの制約があり、複雑な形状の中子を製造しにくいという問題がある。
【0006】
一方、型抜きなどの制約を受けないで精密な成型体を形成する手法として、3次元の任意の形状を形成することができる3次元積層造形技術が知られている。3次元積層造形技術としては、シート積層法、光造形法、インクジェット法、選択的レーザー焼結法、レーザー直接積層法、溶融物堆積法などがある。中でも、光硬化樹脂にレーザー光を照射して硬化させることで立体物を形成する光造形法は、造形速度が速く、高精度という利点を有しているため、生産性の観点で好ましい。
【0007】
セラミックスの3次元積層造形体を形成する光造形法として、液状の光硬化樹脂とセラミックス粉末(無機粉末)とを混合したスラリーに光を照射し、セラミックスの3次元積層造形を形成する方法がある。このように形成した3次元積層造形体に対し、光硬化樹脂を燃焼させる脱脂処理、無機粉末を焼結する焼結処理を行うことで焼結体を得ることができる。
【0008】
積層造形用のスラリー中の無機粉末の濃度が高くなるほど、脱脂処理で焼失する光硬化樹脂の量が少なくなる。そのため、積層造形用のスラリー中の無機粉末の濃度が高くなるほど、焼結体の収縮率が低くなる。セラミックス焼結体の収縮率が低くなれば、焼結処理後の焼結体のひび割れ等が発生しなくなるため、無機粉末をできる限り高濃度にすることが求められている。
【0009】
しかし、無機粉末の濃度が高くなると、積層造形用スラリーの粘度が高くなり、良好な敷設性が得られなくなる。ここで、良好な敷設性とは、積層造形用スラリーを塗布した際に均一に薄く広がる事をいう。光造形法で積層造形体を作成する際に、積層造形用スラリーの塗布面が不均一であると、光硬化樹脂を硬化した後の形状がいびつになり、光造形法の高精度という利点が生かせなくなる。そのため、積層造形用スラリーには、無機粉末の濃度が高いことに加え、良好な敷設性が求められる。
【0010】
また、積層造形用スラリーは、塗布後厚さが変わらないことが求められる。光照射工程において、振動などの外的影響などでスラリーの厚さが変化すると、硬化した樹脂の厚さも変わることになる。そのため、積層造形用スラリーには、塗布時は流動し、塗布後は流動しなくなるチクソトロピー性を有することが求められる。ここで、チクソトロピー性とは、せん断応力が負荷されると粘度が低下し、せん断応力が除荷され静止状態となると次第に粘度が上昇し、ゲル状になる性質をいう。
【0011】
本発明は、上述の問題を解決するためになされたものであり、その課題は、積層造形用スラリー中の無機粉末の濃度が高い場合であっても、積層造形用スラリーが良好な敷設性、チクソトロピー性を有することができる積層造形用粉末を提供することにある。また、本発明のもう一つの課題は、射出で成型した場合よりも複雑な形状の3次元積層造形体及び焼結処理後の収縮率が低い焼結体を形成することができる、積層造形用スラリー、積層造形用スラリーの製造方法、積層造形方法、焼結方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
(1)本発明の一態様に係る積層造形用粉末は、粗粒無機粉末と、平均粒径が前記粗粒無機粉末より小さい微細無機粉末と、からなり、前記粗粒無機粉末と前記微細無機粉末との粒径体積比率が28.0~53.0である。前記粗粒無機粉末のd10とd50との比d10/d50が、0.1~0.7であり、前記粗粒無機粉末のd90とd50との比d90/d50が、1.6~2.9であり、前記粗粒無機粉末がシリカであり、前記微細無機粉末がアルミナであり、前記粗粒無機粉末の平均粒径が2.0~20.0μmであり、前記微細無機粉末の平均粒径が0.10~0.64μmである
(2)本発明の一態様に係る積層造形用粉末は、粗粒無機粉末と、平均粒径が前記粗粒無機粉末より小さい微細無機粉末と、からなり、前記粗粒無機粉末と前記微細無機粉末との粒径体積比率が28.0~53.0である。前記微細無機粉末のd10とd50との比d10/d50が、0.1~0.6であり、前記微細無機粉末のd90とd50との比d90/d50が、2.0~5.0であり、前記粗粒無機粉末がシリカであり、前記微細無機粉末がアルミナであり、前記粗粒無機粉末の平均粒径が2.0~20.0μmであり、前記微細無機粉末の平均粒径が0.10~0.64μmである
(3)(1)又は(2)の態様に記載の積層造形用粉末は、前記粒径体積比率が28.0~49.6であるであってもよい。
(4)(1)~()のいずれか一態様に記載の積層造形用粉末は、前記粗粒無機粉末の形状が球状であってもよい。
)(1)~()のいずれか一態様に記載の積層造形用粉末は、前記微細無機粉末の形状が球状であってもよい。
(6)本発明の一態様に係る積層造形用スラリーは、(1)~()いずれか一態様に記載の積層造形用粉末と液状樹脂とからなる積層造形用スラリーにおいて、積層造形用粉末の濃度が70.0~80.0vol.%である。
)本発明の一態様に係る3次元積層造形体は、(1)~()いずれか一態様に記載の積層造形用粉末を用いる。
)本発明の一態様に係る焼結体は、(1)~()いずれか一態様に記載の積層造形用粉末を用いる。
)本発明の一態様に係る積層造形用スラリーの製造方法は、(1)~()いずれか一態様に記載の積層造形用粉末と液状樹脂とを混合し、400~600rpmで攪拌する。
10)本発明の一態様に係る積層造形方法は、()に記載の積層造形用スラリーを用いて3次元積層造形体を形成する。
11)本発明の一態様に係る焼結方法は、(10)に記載の積層造形方法で形成された3次元積層造形体に、脱脂処理、焼結処理を行う。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様に係る積層造形用粉末によれば、積層造形用スラリー中の無機粉末の濃度が高い場合であっても、良好な敷設性、チクソトロピー性を有する積層造形用スラリーを得ることができる。また、本発明の積層造形用スラリー、積層造形用スラリーの製造方法、積層造形方法、焼結方法によれば、射出で成型した場合よりも複雑な形状の3次元積層造形体及び焼結処理後の収縮率が低い焼結体を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一態様に係る積層造形用粉末の模式図である。
図2】本発明の一態様に係る積層造形用スラリーの模式図である。
図3】粗粒無機粉末と微細無機粉末との比率と粉末の合計体積率(合計体積割合)と、スラリーのチクソトロピー性の関係の一例を示す図である。
図4】本発明の一態様に係るスラリーの製造方法、積層造形方法、焼結方法の手順を示すフローチャートである。
図5】粗粒無機粉末と微細無機粉末との粒径体積比率及び体積混合比と、スラリーの敷設性との関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[積層造形用粉末]
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係る積層造形用粉末を説明する。
本実施形態に係る積層造形用粉末10は、図1に示すように粗粒無機粉末1及び粗粒無機粉末1より粒径が小さい微細無機粉末2から構成される。なお、以下の説明で上限値と下限値を「~」で結んで範囲表示する場合、特に注釈しない限り、上限値と下限値を含む範囲を意味する。
【0016】
粗粒無機粉末1と微細無機粉末2との粒径体積比率(粒径体積比と称する場合がある)は、28.0~53.0である。粗粒無機粉末1と微細無機粉末2との粒径体積比率のより好ましい上限は、49.6以下である。粗粒無機粉末1と微細無機粉末2との粒径体積比率の好ましい下限は、28.0以上であり、より好ましい下限は、32.0以上である。粗粒無機粉末1と微細無機粉末2との粒径体積比率が28.0未満であると微細無機粉末2のベアリング効果が発揮されないため、積層造形用スラリー11中の積層造形用粉末10の濃度が高い場合、積層造形用スラリー11が固化し、チクソトロピー性が得られない。粗粒無機粉末1と微細無機粉末2との粒径体積比率が53.0超の場合、粗粒無機粉末1の摩擦が多く起こるため、積層造形用スラリー11中の積層造形用粉末10の濃度が高い場合、積層造形用スラリー11が固化し、チクソトロピー性が得られない。ここで、粒径体積比率とは、各粗粒無機粉末の体積割合に各粗粒無機粉末の平均粒径を乗じたものの合計値を各微細無機粉末の体積割合に各微細無機粉末の平均粒径を乗じたものの合計値で除した値をいう。例えば、粗粒無機粉末A及びBと微細無機粉末a及びbの場合の計算式は、(粗粒無機粉末Aの体積割合×粗粒無機粉末Aの平均粒径+粗粒無機粉末Bの体積割合×粗粒無機粉末Bの平均粒径)/(微細無機粉末aの体積割合×微細無機粉末aの平均粒径+微細無機粉末bの体積割合×微細無機粉末bの平均粒径)となる。
【0017】
積層造形用粉末10の粉末全体の平均粒径の上限は20.0μm以下である。積層造形用粉末10の平均粒径の好ましい上限は、16.0μm以下であり、より好ましくは4.1μm以下である。積層造形用粉末10の平均粒径の下限は2.0μm以上である。積層造形用粉末10の平均粒径の好ましい下限は3.0μm以上であり、より好ましくは3,7μm以上である。積層造形用粉末10の平均粒径が2.0~20.0μmの範囲であれば、積層造形用スラリー11中で積層造形用粉末10が沈降しないため、好ましい。なお、ここで粒径は、レーザー回折・散乱法で測定され、平均粒径はd50、すなわちメジアン径を言う。d50とは、レーザー回折・散乱法で測定された粒度分布において、累積分布50vol.%のときの粒径を言う。
【0018】
積層造形用粉末10の無機粉末全体のd10は0.2~2.0μmである。より好ましくは、0.70~0.90μmである。積層造形用粉末10のd10がこの範囲であると、微細無機粉末2が十分にあるため、粗粒無機粉末1の周辺に微細無機粉末2が均等に分布でき、また、この微細無機粉末2がベアリングとして機能するため(ベアリング効果)、積層造形用スラリー11中の積層造形用粉末10の濃度が高濃度でも粘度を下げることができる。ここで、d10とは、レーザー回折・散乱法で測定された粒度分布において、累積分布10vol.%のときの粒径を言う。
【0019】
積層造形用粉末10の無機粉末全体のd90は8~30μmである。より好ましくは、10~15μmである。積層造形用粉末10のd90がこの範囲内であると、積層造形用スラリー11中の粗粒無機粉末1が沈降せず、積層造形用スラリー11の安定性が向上するため、好ましい。ここで、d90とは、レーザー回折・散乱法で測定された粒度分布において、累積分布90vol.%のときの粒径を言う。
【0020】
積層造形用粉末10において、粗粒無機粉末1と微細無機粉末2との体積混合比は、7:1~1:1が好ましい。体積混合比はより好ましくは、6:1~3:1である。さらに好ましくは体積混合比は4:1~3:1である。即ち体積混合比(粗粒無機粉末/微細無機粉末)は、1~7が好ましい。体積混合比は、より好ましくは、3~6であり、さらに好ましくは3~4である。粗粒無機粉末1と微細無機粉末2との体積混合比がこの範囲であると、積層造形用スラリー11に対し、チクソトロピー性を付与しつつ、良好な敷設性を得ることができる。
【0021】
積層造形用粉末10に占める粒径2.0μm以上の無機粉末の体積割合の下限は75.0vol.%以上である。積層造形用粉末10に占める粒径2.0μm以上の無機粉末の体積割合の上限は85.0vol.%以下であり、より好ましくは83.0vol.%以下である。積層造形用粉末10に占める粒径2.0μm以上の無機粉末の体積割合が85.0%よりも大きい場合、液状樹脂3との関係で粗粒無機粉末1との摩擦が多く起こり、微細粉末によるベアリング効果があっても粘度を下げることができないため、好ましくない。積層造形用粉末10に占める粒径2.0μm以上の無機粉末の体積割合が75.0vol.%未満になると、積層造形用スラリー11に対し、無機粉末の濃度を高濃度にした場合にチクソトロピー性を付与しにくくなるため、好ましくない。
【0022】
積層造形用粉末10中のアルミナからなる粉末の体積割合は5~20vol.%である事が好ましい。アルミナからなる粉末の体積割合が、5~20vol.%の場合、アルミナと液状樹脂との相互作用の関係から、微細粉末のベアリング効果が向上するため、好ましい。積層造形用粉末10中のアルミナからなる粉末の体積割合のより好ましい上限は、15vol.%以下であり、さらに好ましい上限は14vol.%以下である。積層造形用粉末10中のアルミナからなる粉末の体積割合のより好ましい下限は7vol.%以上である。
【0023】
積層造形用粉末10の形状は、球状、立方体状、片状、粒状、板状、棒状、針状、繊維状、塊状、樹枝状、海綿状などであってもよい。微細無機粉末2のベアリング効果を向上するためには、積層造形用粉末10の形状は、球状が好ましい。積層造形用粉末10に占める球状の粉末の体積割合が86vol.%以上であれば、積層造形用スラリー11の粘度の上昇を抑制することができる。球状の粉末の体積割合の上限値は特に限定されないが、100vol.%であってもよい。
【0024】
粗粒無機粉末1と微細無機粉末2との混合方法は特に限定されない。混合方法としては、例えば、粗粒無機粉末1と微細無機粉末2とをドライブレンドする方法や液状樹脂中で混合する方法が挙げられる。ドライブレンドする方法としては、手動で混合する方法でもよいし、ヘンシェルミキサー、ハイスピードミキサーなどのブレンダーを使用する方法でもよい。
【0025】
[粗粒無機粉末]
本発明に使用する粗粒無機粉末1は、少なくともシリカ又はシリカとアルミナとの化合物のいずれか一方からなる。シリカの例としては、例えば、結晶シリカ、アモルファスシリカ、溶融シリカなどを挙げることができる。また、シリカとアルミナとの化合物としては、例えば、ムライトなどを挙げることができる。粗粒無機粉末1がアルミナである場合、粗粒無機粉末1同士の摩擦が多く、積層造形用スラリー11中の積層造形用粉末10の濃度が高くなると積層造形用スラリー11が固化してしまうため、好ましくない。
【0026】
粗粒無機粉末1の平均粒径の上限は20.0μm以下である。積層造形用粉末10の平均粒径の好ましい上限は、16.0μm以下であり、より好ましくは4.1μm以下である。積層造形用粉末10の平均粒径の下限は2.0μm以上である。積層造形用粉末10の平均粒径の好ましい下限は3μm以上であり、より好ましくは3,7μm以上である。積層造形用粉末10の平均粒径が2.0~20.0μmの範囲であれば、積層造形用スラリー11中で積層造形用粉末10が沈降しないため、好ましい。
【0027】
粗粒無機粉末1のd10とd50との比d10/d50が、0.1~0.7である事が好ましい。d10/d50のより好ましい上限は0.5以下である。d10/50のさらに好ましい上限は、0.2以上である。粗粒無機粉末1のd10とd50との比d10/d50がこの範囲であれば、積層造形用スラリー11中において粗粒無機粉末1同士の摩擦を抑制することができる。
【0028】
粗粒無機粉末1のd90とd50との比d90/d50が、1.6~2.9であることが好ましい。d90/d50のより好ましい上限は、2.0以下である。d90/d50のより好ましい下限は、1.7以上である。粗粒無機粉末1のd90とd50との比d90/d50がこの範囲であれば、積層造形用スラリー11中において、粗粒無機粉末1の沈降を抑制することができる。
【0029】
粗粒無機粉末1中の粉末の形状は、球状、立方体状、片状、粒状、板状、棒状、針状、繊維状、塊状、樹枝状、海綿状などであってもよい。微細無機粉末2のベアリング効果を向上するためには、粗粒無機粉末1の形状は球状が好ましい。
【0030】
[微細無機粉末]
本発明に使用する微細無機粉末2は、少なくともシリカ又はアルミナのいずれか一方を用いることができる。アルミナは、例えば、αーアルミナ、γ―アルミナを挙げることができる。特にα―アルミナが熱的に安定であるため、好ましい。また、アルミナは、液状樹脂との間に相互作用が働きやすく、粗粒無機粉末1のベアリング効果を向上することができるため、好ましい。
【0031】
微細無機粉末2の平均粒径は、0.10~0.64μmである。微細無機粉末2の平均粒径が0.10μm未満であると、微細無機粉末2同士の凝集が多くなり、ベアリング効果が抑制される。微細無機粉末2の平均粒径が0.64μm超では、粗粒無機粉末1に対し、粒径が大きいため、ベアリング効果が抑制される。
【0032】
微細無機粉末2のd10とd50との比d10/d50が、0.1~0.6である事が好ましい。d10/d50のより好ましい上限は、0.5以下である。微細無機粉末2のd10とd50との比d10/d50がこの範囲であれば、積層造形用スラリー11中において微細無機粉末2同士の凝集が抑制される。
【0033】
微細無機粉末2のd90とd50との比d90/d50が、2.0~5.0であることが好ましい。微細無機粉末2のd90とd50との比d90/d50がこの範囲であれば、積層造形用スラリー11中において微細無機粉末2のベアリング効果を向上することができる。
【0034】
微細無機粉末2中の粉末の形状は、球状、立方体状、片状、粒状、板状、棒状、針状、繊維状、塊状、樹枝状、海綿状などであってもよい。微細無機粉末2のベアリング効果を向上するためには、球状が好ましい。
【0035】
[積層造形用スラリー]
図2に示すように、積層造形用スラリー11は液状樹脂3と上述の積層造形用粉末10とから構成される。積層造形用スラリー11中の積層造形用粉末10の濃度は70.0~80.0vol.%である。積層造形用スラリー11中の積層造形用粉末の濃度が70vol.%未満の場合、焼結後の無機粉末の焼結体の収縮率が大きく、複雑な形状の焼結体においてひびが入ることがある。80vol.%超の場合、粘度が高くなりすぎて積層造形用スラリー11が固化してしまう。
【0036】
[液状樹脂]
積層造形用スラリー11に用いられる液状樹脂3としては、3次元の積層造形体を高精度で形成することができれば、特に限定されない。積層造形用スラリー11に用いられる液状樹脂としては、例えば、光硬化樹脂、熱硬化樹脂などを挙げることができる。生産性や3次元積層造形体の精度の観点からは、光硬化樹脂が好ましい。
【0037】
[光硬化樹脂]
積層造形用スラリー11に用いられる光硬化樹脂としては、例えば、ラジカル重合性の化合物やカチオン重合性の化合物が挙げられる。光硬化樹脂は、光重合開始剤の存在下で光を照射することで硬化する。
【0038】
ラジカル重合性化合物は、エチレン性不飽和結合を分子中に有する化合物である。エチレン性不飽和結合を有する化合物としては、例えば、メタクリルアミド、アクリルアミド、2-エチルヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ブトキシエチルメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリメタクリレートなどが挙げられる。これらの化合物は一例であり、積層造形に好適に用いられる化合物であれば特に限定されない。これらの樹脂は、単独又は2種以上を組み合わせてもよい。
【0039】
カチオン重合性化合物は、カチオン性光重合開始剤の存在下で光を照射することで重合を開始する化合物である。カチオン重合性化合物としては、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル―3‘、4‘-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテルなどが挙げられる。これらの化合物は一例であり、積層造形に好適に用いられる化合物であれば特に限定されない。これらの樹脂は、単独又は2種以上を組み合わせてもよい。
【0040】
光硬化樹脂としてラジカル重合性化合物を用いる場合は、光重合開始剤はラジカル性の光重合開始剤を用いる。光硬化樹脂としてカチオン重合性化合物を用いる場合は、光重合開始剤はカチオン性の光重合開始剤を用いる。ラジカル性の光重合開始剤は、例えば、アセトフェノン、アントラキノン、4,4‘-ジメトキシベンゾインなどが挙げられる。カチオン性の光重合開始剤は、例えば、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホン酸、2-[2-(フラン-2-イル)ビニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、4-ニトロベンゼンジアゾニウムテトラフルオロボラートなどが挙げられる。これらの化合物は一例であり、積層造形に好適に用いられる化合物であれば特に限定されない。
【0041】
光硬化樹脂と光重合開始剤との合計に対する光重合開始剤の割合は、0.01~8質量%であることが好ましい。光開始剤の割合が0.01質量%未満の場合は、硬化速度が遅くなるため、造形に時間が必要になる。光開始剤の含有割合が8質量%超の場合、3次元積層造形体の強度が低下する場合がある。その他、目的に応じ、光硬化樹脂に重合禁止剤、顔料、粘度調整剤などを添加してもよい。
【0042】
[積層造形用スラリーの製造方法]
積層造形用スラリー11を製造するための方法(図4、S1)は特に限定されない。積層造形用スラリーを製造するための方法としては、積層造形用粉末10と液状樹脂3とを混合後、高速撹拌機、ホモジナイザー、プラネタリ―ミキサーなどを用いて積層造形用粉末10を液状樹脂3中に分散する方法がある。例えば、高速撹拌機の回転数は、400~600rpmが好ましい。この攪拌速度の範囲で攪拌を行うことで、積層造形用粉末10と液状樹脂3とを均一に混合することができる。攪拌時間は、2分以上が好ましい。これらの条件であれば攪拌翼の形状によらず、積層造形用粉末10と液状樹脂3とを均一に混合することができる。
【0043】
[積層造形方法]
本発明の積層造形方法(図4、S2)の代表的な例を説明する。下記に説明する例は本発明の一例であり、特に限定はされない。
上記の積層造形用スラリー11を容器に収容する。容器の底は、上下に可動することができる。収容された積層造形用スラリー11に対し、ナイフエッジを用い積層造形用スラリー11の薄層を形成する。形成された薄層に、選択的に光を照射して積層造形用スラリー11を硬化させて、任意の2次元形状の硬化物を形成する。
次に、積層造形用スラリー11が収容された底を微小量降下させて、この任意の2次元形状の硬化物が形成された薄層の上に、積層造形用スラリー11を供給し、再度ナイフエッジで積層造形用スラリー11の薄層を形成する。この再度形成された薄層に対して選択的に光を照射し、再度任意の2次元形状の硬化物を形成する。これらの工程を繰り返すことで、複数層の硬化物が積層されて3次元の積層造形体が形成される。得られた3次元の積層造形体は、洗浄剤等を用いて未硬化の樹脂を除去する。
【0044】
光を選択的に照射する方法としては、高精度な3次元の積層造形体を得られれば特に限定されない。例えば、レーザー光をポリゴンミラーで反射させる方法や、任意のパターンの光透過部が形成されたマスクの上から光を照射する方法などがある。
【0045】
[焼結方法]
本発明の焼結方法(図4、S3)の代表的な例を説明する。本発明の積層造形方法で得られた3次元の積層造形体を焼結炉に入れ、1℃/時間以上で室温から脱脂処理温度まで炉内の温度を昇温する。脱脂処理温度は、例えば、500~700℃の範囲で適宜設定することができる。脱脂処理温度がこの温度範囲であれば、3次元積層造形中の樹脂を燃焼させることができるので、好ましい。脱脂処理温度まで焼結炉内の温度が到達した後は、0.5~4時間(脱脂時間)、その脱脂処理温度を保持して加熱し、樹脂成分を燃焼させる(脱脂工程)。脱脂時間は、樹脂の種類や積層造形体中の樹脂比率に応じて設定することができる。
次に、50℃/時間以上で焼結処理温度まで焼結炉の炉内の温度を昇温する。焼結処理温度は、例えば900~1300℃の範囲で適宜設定することができる。焼結処理温度がこの温度範囲であれば、積層造形用粉末10をひびなどが入らずに焼結させることができるので、好ましい。焼結処理温度まで炉内の温度が到達した後は、その焼結処理温度を保持して、1~7時間(焼結時間)加熱し、積層造形用粉末10を焼結させることで(焼結工程)、積層造形用粉末10を用いた焼結体が得られる。焼結時間は、無機粉末の種類などに応じて設定することができる。
【実施例
【0046】
以下、実施例にて、本発明の具体的態様を説明するが、本発明は以下の態様に限定されるものではない。
【0047】
[粗粒粉末と微細粉末との比率とチクソトロピー性との関係確認実験]
粗粒無機粉末として、表1の粗粒無機粉末1(SiO、球状、平均粒径5.0μm)を用い、微細無機粉末として、表1の微細無機粉末1(SiO、球状、平均粒径0.64μm)を用いた。粗粒無機粉末と微細無機粉末を4:0~0:4の混合比でドライブレンドした。その後、無機粉末の濃度が30~80vol.%になるようにドライブレンド後の無機粉末に液状樹脂を加え、高速撹拌機を用い400~600rpmで25分攪拌し、測定用スラリーを作製した。
【0048】
コーンプレート型動粘度計で、せん断速度を0/sから25/sと上昇させた場合の、10/sのせん断速度時のせん断応力A(Pa)と、せん断速度を25/sから0/sと減少させた場合の、10/sのせん断速度時のせん断応力B(Pa)とを比較して、両者の大小より作製した測定用スラリーのチクソトロピー性の性質評価を実施した。その比A/B>1のときをチクソトロピー流体、A/B=1のときを一般流体、A/B<1のときを固化又はダイラタント流体と判定した。ここで、ダイラタント流体とは、遅いせん断刺激には液体用にふるまい、速いせん断刺激には固体のように抵抗力を発揮する性質を有する流体をいう。一般流体は、ここではチクソトロピー流体、ダイラタント流体以外の流体とした。各測定用スラリーの結果を図3に示す。図3の横軸は、粗粒無機粉末と微細無機粉末の混合比を示し、縦軸は、測定用スラリー中の無機粉末の濃度(vol.%)を示す。図3中の〇は、チクソトロピー流体、△は、一般流体、×は、ダイラタント流体(固化)であったことを意味する。
【0049】
図3に示すように、無機粉末の濃度が低いときは、一般流体であるが、濃度が高くなるにつれて、チクソトロピー流体からダイラタント流体(固化)に変化することが分かった。また、微細無機粉末の混合比が高くなるにつれて、低濃度側でチクソトロピー流体となることが分かった。以上のことから、スラリー中の無機粉末の濃度が高い状態でチクソトロピー流体を得るためには、粗粒無機粉末の比率を微細無機粉末に対して高くする必要がある事が分かった。
【0050】
[積層造形用スラリーの作製]
上記知見を基に、表1に記載の粗粒無機粉末と微細無機粉末を表2A及び表2Bに記載の体積混合比(粗粒無機粉末/微細無機粉末)でドライブレンドした。なお、表2A中の各無機粉末の体積割合は、液状樹脂と無機粉末の合計体積に対する無機粉末の体積割合を示す。スラリー中の無機粉末の濃度が表2A及び表2Bに記載の濃度になるように液状樹脂である光硬化性アクリル樹脂をドライブレンド後の無機粉末に加え、回転攪拌機を用い400rpm以上で25分攪拌し、積層造形用スラリーを作製した。表中の記載「―」は、添加されていないことを示す。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2A】
【0053】
【表2B】
【0054】
[積層造形体の作製]
上記で作成した積層造形用スラリーに対して、汎用型の紫外線レーザー走査型の積層造形装置を用い、積層造形体を作製した。レーザの波長は355~405nm、出力は1W以下とした。レーザ照射時の環境温度は25度とした。形成された積層造形体は、エタノールを含有する洗浄剤で未硬化の樹脂を取り除いた。
【0055】
[焼結体の作製]
上記で得られた積層造形体を焼結炉に入れ、1℃/時間以上で室温から脱脂処理温度(400~700℃)まで焼結炉内の温度を昇温し、その脱脂処理温度で2時間保持した。その後、50℃/時間以上で脱脂処理温度から焼結処理温度(900~1300℃)まで焼結炉内の温度を昇温し、その焼結処理温度で2時間保持して、焼結体を得た。
【0056】
[積層造形用粉末の粒度分布測定]
表2に記載の割合で粗粒無機粉末と微細無機粉末とをドライブレンドして作製した積層造形用粉末約1gを容器に入れ、レーザ回折式計測装置:マスターサイザーを用いて、d10、d50、d90を測定した。測定の結果を表3に示す。なお、表2中の粒径2.0μm以上の無機粉末の体積割合は、測定して得られた各粉末の粒度分布から計算して求めた。
【0057】
[積層造形用スラリーの敷設性及びチクソトロピー性測定]
敷設性の評価は、ステンレス製スキージングブレードを用いて、敷設速度5mm/sの範囲の一定速度で、厚さ100μmの均一なスラリー層を敷設できるかどうかにて評価した。均一なスラリーができる場合を合格とし、ムラや気泡ができる場合を不合格とした。
コーンプレート型動粘度計を用い、上記積層造形用スラリ―の粘度ηa1を測定した(室温、せん断速度0~25/s)。
コーンプレート型動粘度計において、せん断速度を0/sから25/sと上昇させた場合の、10/sのせん断速度時のせん断応力A(Pa)と、せん断速度を25/sから0/sと減少させた場合の、10/sのせん断速度時のせん断応力B(Pa)とを比較することで、測定用スラリーのチクソトロピー性を評価した。A/B>1のときを合格とし、A/B≦1のときは不合格とした。得られた結果を表3に示す。表中の〇は合格を示し、×は不合格を示す。
【0058】
[焼結体評価]
焼結体の評価は、脱脂処理前の積層造形体のX、Y、Z軸方向の各寸法及び焼結後の焼結体のX、Y、Z軸方向の各寸法を測定し、脱脂処理前と焼結後での寸法の変化量から収縮率を評価した。
【0059】
【表3】
【0060】
表3に示す通り、実施例1~4の積層造形用スラリーは、良好な敷設性(粘度)、チクソトロピー性を示し、その焼結体の収縮率も低かった。一方、比較例1は、粒径体積比率が28.0よりも低いため、積層造形用スラリーの粘度が高くなり、積層造形用スラリーとしては不適であった。また、比較例2~4は、粒径体積比率が53.0よりも高いため、積層造形用スラリーの粘度が高くなり、積層造形用スラリーとしては不適であった。これらの結果を縦軸を粒径体積比率、横軸を体積混合比(粗粒無機粉末/微細無機粉末)として図5に示す。図5中の〇は敷設性が良好であった実施例を示し、×は、敷設性が不良であった比較例を示す。図5に示す通り、粒径体積比率が28.0~53.0であれば良好な敷設性が得られる。
また、焼結体の評価をチクソトロピー性、敷設性に優れ、粉末濃度が75.0%以上である実施例1及び2に対して行った。実施例1及び2ともに5%以下の低い収縮率を示し、特に実施例2は実施例1より低い収縮率を示した。
【符号の説明】
【0061】
1 粗粒無機粉末
2 微細無機粉末
3 液状樹脂
10 積層造形用粉末
11 積層造形用スラリー
図1
図2
図3
図4
図5