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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】燃料電池セパレータと燃料電池セル
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0247 20160101AFI20230801BHJP
   H01M 8/0258 20160101ALI20230801BHJP
   H01M 8/10 20160101ALI20230801BHJP
【FI】
H01M8/0247
H01M8/0258
H01M8/10 101
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019150903
(22)【出願日】2019-08-21
(65)【公開番号】P2021034170
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 英明
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 丈明
【審査官】山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-114509(JP,A)
【文献】特開2019-175713(JP,A)
【文献】特開2014-026960(JP,A)
【文献】特開2014-022188(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00- 8/0297
H01M 8/08- 8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池用セパレータであって、
燃料電池用セパレータの一方の面に設けられた直線状の凸部と、
前記直線状の凸部に対して一方の側において、前記直線状の凸部と並列に伸びる複数の波形状の凸部と、を有し、
複数の前記波形状の凸部のうち、最も前記直線状の凸部と近い前記波形状の凸部と、前記直線状の凸部と、の間であって、前記波形状の凸部の各部のうち、前記直線状の凸部から最も離れている部分と、前記直線状の凸部との間に、複数の凸部が設けられ、
前記複数の凸部は、
前記波形状の凸部と前記直線状の凸部とから互いに独立しており、
それぞれ三角柱状の形状であることを特徴とし、
前記直線状の凸部と、前記複数の凸部のそれぞれとの間には、反応ガスを流通させる流路が形成されている、
燃料電池用セパレータ。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池用セパレータであって、
前記直線状の凸部は、前記波形状の凸部のうち前記直線状の凸部と最も近い部分に向かって突出する一つ以上の部分を有する、
燃料電池用セパレータ。
【請求項3】
燃料電池セルであって、
膜電極ガス拡散層接合体と、
前記膜電極ガス拡散層接合体を挟む、互いに向かい合う第1の辺および第2の辺と互いに向かい合う第3の辺と第4の辺とを有する一対の四角形の板状のセパレータと、
前記第2の辺よりも前記第1の辺に近い位置に設けられた、酸化ガス供給マニホールドと、冷却水供給マニホールドと、燃料ガス排出マニホールドと、
前記第1の辺よりも前記第2の辺に近い位置に設けられた、燃料ガス供給マニホールドと、冷却水排出マニホールドと、酸化ガス排出マニホールドと、
前記セパレータの一方の面であって、前記膜電極ガス拡散層接合体と向かい合う側の面に、
前記第1の辺から前記第2の辺に向かう向きに伸びる複数の波形凸部と、
前記波形凸部と並列に伸びる直線状の凸部と、
を有し、
前記波形凸部のうち、前記直線状の凸部に最も近い前記波形凸部と、前記直線状の凸部との間であって、前記波形凸部の各部のうち、前記直線状の凸部から最も離れている部分と、前記直線状の凸部との間に、複数の凸部が設けられており、
前記複数の凸部は、
前記波形凸部と前記直線状の凸部とから互いに独立しており、
それぞれ三角柱状の形状であることを特徴とし、
前記膜電極ガス拡散層接合体の前記セパレータと向かい合う面において、前記複数の波形凸部または前記複数の凸部が接していない部分と、前記セパレータとの間には、流路が形成されている、
燃料電池セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料電池セパレータに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池車両では、燃料電池を収容するためのスペースの、鉛直方向の寸法が制限されることがある。そのため、燃料電池車両では、例えば、鉛直方向の長さに対して、水平方向の長さが大きい形状を有する燃料電池が用いられている。このような燃料電池のセパレータのGDLと向かいあう面においては、波形状の凸部が水平方向に伸びるように形成されている。波形状の凸部の間に波形状の流路が形成される。特許文献1では、図9に示すように、セパレータ70において波形状の凸部C702に加えて、重力方向の最下部に、平坦状の凸部C701を設けることにより、波形状の凸部C702と平坦状の凸部C701の間に、波形状の流路F702よりも断面積が大きい流路F701を形成したセパレータ70を提示している。このセパレータ70においては、生成水の、重力方向の下方の流路での滞留の防止、及び、生成水のガス流路への効率的な排出を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2074-27970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、GDLは、カーボンペーパ等で構成されている。また、GDLに対してセパレータと逆の側には、表面に触媒層が設けられたMEAが配されている。従来技術においては、図10に示すように、波形状の凸部C702と平坦状の凸部C701の間の流路幅R701は、波形状の凸部C702と波形状の凸部C702の間の流路幅R702よりも広くなる。この結果、セパレータ70と重ねられているGDL80が広くなった流路F701に突出し、流路の圧損が生じるおそれがあった(図10破線枠内参照)。また、流路幅が大きくなっている部分において、GDLと触媒層との接触抵抗が増加するという心配があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
(1)本開示の一形態によれば、燃料電池用セパレータが提供される。この燃料電池用セパレータは、燃料電池用セパレータの一方の面に設けられた直線状の凸部と、前記直線状の凸部に対して一方の側において、前記直線状の凸部と並列に伸びる複数の波形状の凸部と、を有し、複数の前記波形状の凸部のうち、最も前記直線状の凸部と近い前記波形状の凸部と、前記直線状の凸部と、の間であって、前記波形状の凸部の各部のうち、前記直線状の凸部から最も離れている部分と、前記直線状の凸部との間に、複数の凸部が設けられ、前記複数の凸部は、前記波形状の凸部と前記直線状の凸部とから互いに独立しており、それぞれ三角柱状の形状であることを特徴とし、前記直線状の凸部と、前記複数の凸部のそれぞれとの間には、反応ガスを流通させる流路が形成されている。
(2)本開示の他の形態によれば、燃料電池セルが提供される。この燃料電池セルは、膜電極ガス拡散層接合体と、前記膜電極ガス拡散層接合体を挟む、互いに向かい合う第1の辺および第2の辺と互いに向かい合う第3の辺と第4の辺とを有する一対の四角形の板状のセパレータと、前記第2の辺よりも前記第1の辺に近い位置に設けられた、酸化ガス供給マニホールドと、冷却水供給マニホールドと、燃料ガス排出マニホールドと、前記第1の辺よりも前記第2の辺に近い位置に設けられた、燃料ガス供給マニホールドと、冷却水排出マニホールドと、酸化ガス排出マニホールドと、前記セパレータの一方の面であって、前記膜電極ガス拡散層接合体と向かい合う側の面に、前記第1の辺から前記第2の辺に向かう向きに伸びる複数の波形凸部と、前記波形凸部と並列に伸びる直線状の凸部と、を有し、前記波形凸部のうち、前記直線状の凸部に最も近い前記波形凸部と、前記直線状の凸部との間であって、前記波形凸部の各部のうち、前記直線状の凸部から最も離れている部分と、前記直線状の凸部との間に、複数の凸部が設けられており、前記複数の凸部は、前記波形凸部と前記直線状の凸部とから互いに独立しており、それぞれ三角柱状の形状であることを特徴とし、前記膜電極ガス拡散層接合体の前記セパレータと向かい合う面において、前記複数の波形凸部または前記複数の凸部が接していない部分と、前記セパレータとの間には、流路が形成されている。
【0006】
本開示の一形態によれば、燃料電池用セパレータが提供される。この燃料電池用セパレータは、燃料電池用セパレータの一方の面に設けられた直線状の凸部と、前記直線状の凸部に対して一方の側において、前記直線状の凸部と並列に伸びる複数の波形状の凸部と、を有し、複数の前記波形状の凸部のうち、最も前記直線状の凸部と近い前記波形状の凸部と、前記直線状の凸部と、の間であって、前記波形状の凸部の各部のうち、前記直線状の凸部から最も離れている部分と、前記直線状の凸部との間に、少なくとも一つ以上の凸部が設けられていることを特徴とする。この形態の燃料電池用セパレータによれば、燃料電池用セパレータを燃料電池セルに取り付けた際、流路におけるGDLの突出を防ぐことができる。このため流路の圧損の増加を防ぐことができる。また、GDLと触媒層との接触抵抗の増加を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の第一実施形態における、燃料電池セルの概略構成図を示す説明図である。
図2】本開示の第一実施形態における、カソード側セパレータの概略構成図を示す説明図である。
図3】本開示の第一実施形態における、アノード側セパレータの概略構成図を示す説明図である。
図4】本開示の第一実施形態の、図1におけるIV-IV線断面図である。
図5】本開示における第二実施形態における、アノード側セパレータの概略構成図を示す説明図である。
図6】本開示の第二実施形態の、図4におけるIV-IV線と同じ箇所での断面図である。
図7】本開示における第三実施形態における、カソード側セパレータの概略構成図を示す説明図である。
図8】本開示の第三実施形態の、図7におけるVIII-VIII線での断面図である。
図9】従来技術のセパレータの概略構成図を示す説明図である。
図10】従来技術の燃料電池セルの、図4におけるIV-IV線と同じ箇所での断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.第一実施形態
A1.燃料電池セル1の構成
図1は、本開示の第一実施形態における、燃料電池セル1の概略構成図を示す説明図である。燃料電池セル1は、反応ガスとして水素を含有する燃料ガスと、酸素を含有する酸化ガスとの供給を受けて発電する。燃料ガスとしては、水素ガスを用いる。酸化ガスとしては、空気を用いる。
【0009】
燃料電池セル1は、複数の燃料電池セル1が図示しない一対のエンドプレートにより積層方向であるY軸の方向に支持される。また、積層方向は水平方向である。燃料電池セル1は、カソード側セパレータ10と、アノード側セパレータ20と、膜電極ガス拡散層接合体30を備える。説明の便宜上、膜電極ガス拡散層接合体30を、MEGA(Membrane Electrode Gas diffusion layer Assembly)30とも呼ぶ。
【0010】
図2は、本開示の第一実施形態における、カソード側セパレータ10の概略構成図を示す説明図である。カソード側セパレータ10は、隣接するMEGA30に酸素ガスを供給する(図2参照)。カソード側セパレータ10は、金属製部材により形成される。
【0011】
カソード側セパレータ10は、酸化ガス供給マニホールド100aと、冷却水供給マニホールドCW1と、燃料ガス排出マニホールド200bと、燃料ガス供給マニホールド200aと、冷却水排出マニホールドCW2と、酸化ガス排出マニホールド100bと、直線状凸部C101と、波形状凸部C102と、三角状凸部C103と、流入側エンボス103aと排出側エンボス104aを備える。
【0012】
燃料電池セル1は、複数が積層されることで、図示しない燃料電池スタックを形成する。燃料電池スタックの内部には、積層方向であるY軸方向に沿って、複数のマニホールド(100a、100b、200a、200b、CW1、CW2)が形成される(図1参照)。
【0013】
酸化ガス供給マニホールド100aには、酸化ガスが流入される。冷却水供給マニホールドCW1には、冷却水が流入される。燃料ガス排出マニホールド200bには、燃料ガスが排出される。酸化ガス供給マニホールド100aと、冷却水供給マニホールドCW1と、燃料ガス排出マニホールド200bは、カソード側セパレータ10の、二つの短辺のうち、一辺である辺Aの近傍に沿って形成されている。酸化ガス供給マニホールド100aと、冷却水供給マニホールドCW1と、燃料ガス排出マニホールド200bは、Z軸の負方向に向かって、この順に設けられている。
【0014】
燃料ガス供給マニホールド200aには、燃料ガスが供給される。冷却水排出マニホールドCW2には、冷却水が排出される。酸化ガス排出マニホールド100bには、酸化ガスが排出される。燃料ガス供給マニホールド200aと、冷却水排出マニホールドCW2と、酸化ガス排出マニホールド100bは、上述した辺Aと対向する辺Bの近傍に沿って形成されている。燃料ガス供給マニホールド200aと、冷却水排出マニホールドCW2と、酸化ガス排出マニホールド100bは、Z軸の負方向に向かって、この順に設けられている。
【0015】
後述するアノード側セパレータ20でも、酸化ガス供給マニホールド100aと、冷却水供給マニホールドCW1と、燃料ガス排出マニホールド200bと、燃料ガス供給マニホールド200aと、冷却水排出マニホールドCW2と、酸化ガス排出マニホールド100bを備える。それらの構成は、カソード側セパレータ10と同様の構成である。
【0016】
直線状凸部C101は、略直線の形状を有する凸部である。直線状凸部C101は、カソード側セパレータ10の一方の面である10aに設けられている。直線状凸部C101は、面10aから突出する。面10aは、MEGA30に向かう面である。直線状凸部C101は、X軸上に伸びている。直線状凸部C101は、後述する波形状凸部C102に対して、カソード側セパレータ10のZ軸の正方向の側と、負方向の側にそれぞれ一つずつ設けられている。また、直線状凸部C101は、後述する波形状凸部C102と三角状凸部C103との間に、X軸上に伸びる直線状流路F101を形成する。
【0017】
波形状凸部C102は、略波形の形状を有する複数の凸部である。波形状凸部C102は、面10aから突出する。波形状凸部C102は、直線状凸部C101に対して、カソード側セパレータ10の中心側において、直線状凸部C101と並列に伸びるように形成されている。波形状凸部C102は、伸びている方向に沿って、直線状凸部C101との距離が変動する。隣接する波形状凸部C102は、波形状流路F102を形成する。波形状凸部C102は、屈曲して接続された直線状部分で構成されている。また、波形状凸部C102は、周期、振幅が一定の三角波である。
【0018】
三角状凸部C103は、略三角の形状を有する複数の凸部である。三角状凸部C103は、面10aから突出する。三角状凸部C103は、複数の波形状凸部C102のうち、最も直線状凸部C101と近い波形状凸部C102aと、直線状凸部C101との間に設けられている。また、三角状凸部C103は、波形状凸部C102aの各部のうち、直線状凸部C101から最も離れている部分102aaと、直線状凸部C101との間に設けられている。三角状凸部C103は、波形状凸部C102との間に屈曲流路F103を形成する。
【0019】
直線状流路F101と、波形状流路F102と、屈曲流路F103を合わせた流路を、酸化ガス流路部F10ともよぶ。
【0020】
流入側エンボス103aは、カソード側セパレータ10の、MEGA30に向かう面10aから突出する複数の突起である。複数の流入側エンボス103aは、互いに離れて設けられており、複数の流入側エンボス103a間の空間が互いに連通してエンボス部103を形成している。エンボス部103は、酸化ガスを面10a内にてX軸の負方向に均一に分配する機能を奏する。
【0021】
排出側エンボス104aは、カソード側セパレータ10の、MEGA30に向かう面10aから突出する複数の突起である。排出側エンボス104aは、互いに離れて設けられており、複数の排出側エンボス104a間の空間が互いに連通してエンボス部104を形成している。エンボス部104は、酸化ガスを均一に排出する機能を奏する。
【0022】
図3は、本開示の第一実施形態における、アノード側セパレータ20の概略構成図を示す説明図である。アノード側セパレータ20は、隣接するMEGA30に燃料ガスを供給する。
【0023】
アノード側セパレータ20は、酸化ガス供給マニホールド100aと、冷却水供給マニホールドCW1と、燃料ガス排出マニホールド200bと、燃料ガス供給マニホールド200aと、冷却水排出マニホールドCW2と、酸化ガス排出マニホールド100bと、直線状凸部C201と、波形状凸部C202と、三角状凸部C203と、流入側エンボス203aと排出側エンボス204aを備える。
【0024】
直線状凸部C201は、略直線の形状を有する凸部である。直線状凸部C201は、アノード側セパレータ20の一方の面である20aに設けられている。直線状凸部C201は、面20aから突出する。面20aは、MEGA30に向かう面である。直線状凸部C201は、X軸上に伸びている。直線状凸部C201は、後述する波形状凸部C202に対して、アノード側セパレータ20のZ軸の正方向の側と、負方向の側にそれぞれ一つずつ設けられている。また、直線状凸部C201は、後述する波形状凸部C202と三角状凸部C203との間に、X軸上に伸びる直線状流路F201を形成する。
【0025】
波形状凸部C202は、略波形の形状を有する複数の凸部である。波形状凸部C202は、面20aから突出する。波形状凸部C202は、直線状凸部C201に対して、アノード側セパレータ20の中心側において、直線状凸部C201と並列に伸びるように形成されている。波形状凸部C202は、伸びている方向に沿って、直線状凸部C201との距離が変動する。隣接する波形状凸部C202は、波形状流路F202を形成する。波形状凸部C202は、屈曲して接続された直線状部分で構成されている。また、波形状凸部C202は、周期、振幅が一定の三角波である。
【0026】
三角状凸部C203は、略三角の形状を有する凸部である。三角状凸部C203は、面20aから突出する。三角状凸部C203は、波形状凸部C202のうち、最も直線状凸部C201と近い波形状凸部C202aと直線状凸部C201との間に設けられている。また、三角状凸部C203は、波形状凸部C202aの各部のうち、直線状凸部C201から最も離れている部分C202aaと、直線状凸部C201との間に設けられている。三角状凸部C203は、波形状凸部C202との間に屈曲流路F203を形成する。
【0027】
直線状流路F201と、波形状流路F202と、屈曲流路F203を、合わせて燃料ガス流路部F20ともよぶ。
【0028】
流入側エンボス203aは、アノード側セパレータ20の、MEGA30に向かう面20aから突出する複数の突起である。複数の流入側エンボス203aは、互いに離れて設けられており、複数の流入側エンボス203a間の空間が互いに連通してエンボス部203を形成している。エンボス部203は、燃料ガスを面20a内にてX軸の正方向に均一に分配する機能を奏する。
【0029】
排出側エンボス204aは、アノード側セパレータ20の、MEGA30に向かう面20aから突出する複数の突起である。排出側エンボス204aは、互いに離れて設けられており、複数の排出側エンボス204a間の空間が互いに連通してエンボス部204を形成している。エンボス部204は、燃料ガスを均一に排出する機能を奏する。
【0030】
図4は、本開示の第一実施形態の、図1におけるIV-IV線断面図である。図4に示すように、MEGA30は電解質膜300と、カソード電極310aと、アノード電極310bと、酸化ガス拡散層320aと、燃料ガス拡散層320bを有している。
【0031】
電解質膜300は、プロトンの伝導及びこれに伴う水の移動についての性能を有する。電解質膜300は、スルホン酸基を含むフッ素樹脂系のイオン交換膜で形成される。
【0032】
カソード電極310aは、カソード側の電極反応が進行する反応場であり、アノード電極310bと同様に、電解質膜300との接触面の近辺に触媒を含んでいる。アノード電極310bは、アノード側の電極反応が進行する反応場であり、電解質膜300との接触面の近辺に電極反応を促進する触媒を含んでいる。
【0033】
酸化ガス拡散層320aは、酸化ガスの供給時に酸化ガスを拡散する。酸化ガス拡散層320aは、ガス透過性および電子伝導性を有する。燃料ガス拡散層320bは、燃料ガスの供給時に燃料ガスを拡散する。燃料ガス拡散層320bは、ガス透過性および電子伝導性を有する。
【0034】
A2.燃料電池セル1の動作:
図1に示すように、酸化ガス供給マニホールド100aに、矢印SA(図1の白抜き矢印参照)の向きに酸化ガスが供給される。供給された酸化ガスは、酸化ガス供給マニホールド100aから、凸部が突出している面10aに導入される。供給された酸化ガスは、エンボス部103を通って、酸化ガス流路部F10をX軸の負方向に向かって流動する(図2参照)。
【0035】
酸化ガスの供給とともに、燃料ガス供給マニホールド200aに、矢印SB(図1のクロスハッチング矢印参照)のように燃料ガスが供給される。供給された燃料ガスは、燃料ガス供給マニホールド200aから面20aに導入される。供給された燃料ガスは、エンボス部203を通って、燃料ガス流路部F20をX軸の正方向に向かって流動する(図3参照)。
【0036】
酸化ガス流路部F10を通る酸化ガスは、酸化ガス拡散層320aを透過してカソード電極310aに供給される。また、燃料ガス流路部F20を通る燃料ガスは、燃料ガス拡散層320bを透過してアノード電極310bに供給される。供給された酸化ガスと燃料ガスは、電気化学反応により消費され、発電が行われる。
【0037】
発電により生じた生成水は、カソード側セパレータ10においては酸化ガス拡散層320aを介してX軸の負方向及びZ軸の負方向に移動する(図2参照)。本実施形態においては、Z軸の負方向は重力方向の下方ともよぶ。重力方向の下方に移動した生成水は、酸化ガス流路部F10のうち、特に直線状流路F101と屈曲流路F103からエンボス部104を通った後に、酸化ガス排出マニホールド100bから排出される。
【0038】
アノード側セパレータ20においては、酸化ガス流路部F10から燃料ガス流路部F20に浸透した生成水が重力方向の下方に移動する(図3参照)。燃料ガス流路部F20に移動した生成水は、燃料ガス流路部F20のうち、特に直線状流路F201と屈曲流路F203からエンボス部204を通った後に、燃料ガス排出マニホールド200bから排出される。
【0039】
図9は、従来技術のセパレータ70の概略構成図を示す説明図である。図10は、従来技術の、燃料電池セルの図4におけるIV-IV線と同じ箇所での断面図である。図9及び図10に示すように、セパレータ70の流路幅R701とは、直線状凸部C701から最も離れている部分C702aaと直線状凸部C701との間の流路をいう。
【0040】
図2に示すように、直線状凸部C101から最も離れている部分C102aaと直線状凸部C101との間に三角状凸部C103が設けられている。これにより、直線状流路F101の流路幅R101の寸法が、三角状凸部C103が設けられていない場合の流路幅R701の寸法よりも小さくなる(図4及び図10参照)。
【0041】
また、図3に示すように、直線状凸部C201から最も離れている部分C202aaと直線状凸部C201との間に三角状凸部C203が設けられている。これにより、直線状流路F201の流路幅R201の寸法が、三角状凸部C203が設けられていない場合の流路幅R701の寸法よりも小さくなる(図4及び図10参照)。
【0042】
この結果、直線状流路F101及び直線状流路F201における酸化ガス拡散層320a及び燃料ガス拡散層320bの突出を防ぐことができる(図4破線枠内)。このため直線状流路F101及び直線状流路F201における酸化ガス拡散層320a及び燃料ガス拡散層320bの圧損の増加を防ぐことができる。また、酸化ガス拡散層320a及び燃料ガス拡散層320bと触媒層との接触抵抗の増加を抑えることができる。
【0043】
さらに、三角状凸部C103、C203を設けることで、直線状流路F101、F201と屈曲流路F103、F203の間を流れる酸化ガス及び燃料ガスが酸化ガス拡散層320a及び燃料ガス拡散層320bに入り込みやすくなる。これにより酸化ガス拡散層320a及び燃料ガス拡散層320bから生成水が押し出されるため、生成水が流路から排出されやすくなる。
【0044】
消費された酸化ガスは、酸化ガス排出マニホールド100bに排出される。排出された酸化ガスは、Y軸の負方向へ流動する(図1参照)。また、消費された燃料ガスは、燃料ガス排出マニホールド200bに排出される。排出された燃料ガスは、Y軸の負方向へ流動する(図1参照)。
【0045】
酸化ガスと燃料ガスの供給とともに、冷却水供給マニホールドCW1に、矢印SC(図1のシングルハッチング参照)のように純水である冷却水が供給される。供給された冷却水は、カソード側セパレータ10の面10bとアノード側セパレータ20の面20b間の冷却水流路部FWを、X軸の負方向に向かって流動する。冷却水はMEGA30を冷却した後、冷却水排出マニホールドCW2に排出される(図1参照)。
【0046】
B.第二実施形態
図5は、本開示における第二実施形態における、アノード側セパレータ40の概略構成図を示す説明図である。第二実施形態では、アノード側セパレータ20の三角状凸部C203に代えて第二波形状凸部C403を備え、カソード側セパレータ10の三角状凸部C103に代えて第二波形状凸部C503を備える点で第一実施形態と異なる。それ以外の構成は第一実施形態の及びカソード側セパレータ10及びアノード側セパレータ20と同様である。なお、以下において、第一実施形態と同様の構成については、同様の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0047】
図5に示すように、第二波形状凸部C403は、略波形の形状を有する凸部である。第二波形状凸部C403は、アノード側セパレータ40の、MEGA30に向かう面40aから突出する。第二波形状凸部C403は、X軸上に伸びている。第二波形状凸部C403は、波形状凸部C202のうち、最も直線状凸部C201と近い波形状凸部C202aと直線状凸部C201との間に設けられている。また、第二波形状凸部C403は、波形状凸部C202aの各部のうち、直線状凸部C201から最も離れている部分C202aaと、直線状凸部C201との間に設けられている。第二波形状凸部C403の振幅は、波形状凸部C202の振幅よりも小さい。また、波形状凸部C202の波長の大きさと第二波形状凸部C403の波長の大きさは同じである。
【0048】
第二波形状凸部C403は、直線状凸部C201との間に、X軸上に伸びる直線状流路F401を形成する。また、第二波形状凸部C403は、波形状凸部C202との間に、屈曲流路F403を形成する。
【0049】
カソード側セパレータ50は、アノード側セパレータ40と同様の形状を有する。
【0050】
図6は、本開示の第二実施形態の、図4におけるIV-IV線と同じ箇所での断面図である。直線状凸部C201から最も離れている部分C202aaと直線状凸部C201との間に第二波形状凸部C403が設けられている(図5参照)。これにより、直線状流路F401の流路幅R401の寸法が、第二波形状凸部C403が設けられていない場合の流路幅R701の寸法よりも小さくなる(図6及び図10参照)。
【0051】
また、アノード側セパレータ40と同様に、カソード側セパレータ50の直線状凸部C101から最も離れている部分C102aaと直線状凸部C501との間に第二波形状凸部C503が設けられている。これにより、直線状流路F501の流路幅R501の寸法が、第二波形状凸部C503が設けられていない場合の流路幅R701の寸法よりも小さくなる(図6及び図10参照)。
【0052】
この結果、直線状流路F401及び直線状流路F501における酸化ガス拡散層320a及び燃料ガス拡散層320bの突出を防ぐことができる(図6破線枠内)。このため直線状流路F401及び直線状流路F501における酸化ガス拡散層320a及び燃料ガス拡散層320bの圧損を防ぐことができる。また、酸化ガス拡散層320a及び燃料ガス拡散層320bと触媒層との接触抵抗の増加を抑えることができる。
【0053】
さらに、第二波形状凸部C403、C503を設けることで、直線状流路F401、F501と屈曲流路F403、F503の間を流れる酸化ガス及び燃料ガスが、酸化ガス拡散層320a及び燃料ガス拡散層320bに入り込みやすくなる。そのため酸化ガス拡散層320a及び燃料ガス拡散層320bから生成水が押し出されるため、排水性が向上する。
【0054】
C.第三実施形態
図7は、本開示における第三実施形態における、カソード側セパレータ60の概略構成図を示す説明図である。第三実施形態では、カソード側セパレータ10の直線状凸部C101及び波形状凸部C102に代えて、直線状凸部C601と波形状凸部C602を備える点で第一実施形態と異なる。それ以外の構成は第一実施形態と同様である。なお、以下において、第一実施形態と同様の構成については、同様の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0055】
図7に示すように、直線状凸部C601は、Z軸の方向に突出する複数の第一凸部C601aと、X軸の方向に伸びる平坦部C601bを有する。平坦部C601bのZ軸方向の幅RH601bの寸法は、第一実施形態における直線状凸部C101のZ軸方向の幅RH101の寸法よりも小さい(図2参照)。
【0056】
波形状凸部C602は、第二凸部C602aaと第三凸部C602bbをそれぞれ複数有している。第二凸部C602aaと第三凸部C602bbは、Z軸の方向に突出する。第二凸部C602aaは、直線状凸部C601と最も近い波形状凸部C602aの山又は谷に設けられている。第三凸部C602bbは、直線状凸部C601と、波形状凸部C602aの次に近い波形状凸部C602bの山又は谷に設けられている。
【0057】
第二凸部C602aaと第三凸部C602bbは、第一凸部C601aとZ軸上に並んで設けられている。第一凸部C601a、第二凸部C602aa、第三凸部C602bbがZ軸上に並んだ部分を、凸部エリア600とする(図7破線枠内参照)。図7に示すように、X軸の負方向に向かって凸部エリア600が存在する密度が増加する。また、X軸の負方向に向かって凸部エリア600が存在する間隔が小さくなる。
【0058】
図8は、本開示の第三実施形態の、図7におけるVIII-VIII線での断面図である。図8に示すように、実線部分が、凸部エリア600が設けられていない部分の断面に該当する。図8の破線で示した部分は、凸部エリア600の断面に該当する(図7の線8b参照)。図8に示すように、凸部エリア600の直線状流路F601の流路幅R601の寸法と、屈曲流路F603の流路幅R603の寸法と、波形状流路F602の流路幅R602の寸法は、第一凸部C601a、第二凸部C602aa、第三凸部C602bbが設けられていない流路幅の寸法よりも小さい。また、直線状流路F601と屈曲流路F603と波形状流路F602のY軸の方向の寸法は、凸部エリア600が設けられていない部分の寸法と同じである。
【0059】
これにより、凸部エリア600を通る酸化ガスが酸化ガス拡散層320aに入り込みやすくなる。また、X軸の負方向に向かって生成水が増大する。このため、生成水が酸化ガス拡散層320aから排出されやすくなる。
【0060】
カソード側セパレータ10とアノード側セパレータ20のことを、燃料電池用セパレータともよぶ。酸化ガス拡散層320aと燃料ガス拡散層320bのことを、GDLともよぶ。平坦状の凸部と直線状の凸部のことを、直線状凸部ともよぶ。波形状の凸部のことを、波形状凸部ともよぶ。また、各図は技術内容を説明するための説明図であり、各部の寸法を正確に表すものではない。
【0061】
D:他の実施形態
D1)上記実施形態では、カソード側セパレータ10は、金属製部材により形成される。しかし、カソード側セパレータは、カーボン製部材により形成されてもよい。
【0062】
D2)上記実施形態では、電解質膜300は、スルホン酸基を含むフッ素樹脂系のイオン交換膜で形成される。しかし、電解質膜は、スルホン酸基に限らず、リン酸基やカルボン酸基など、他のイオン交換基(電解質成分)を含む膜を用いることができる。
【0063】
D3)上記実施形態では、冷却水として純水が用いられる。しかし、冷却水は純水に限らずエチレングリコールや、エチレングリコールと水の混合溶液等、他の冷却媒体を用いることもできる。
【0064】
D4)第三実施形態では、直線状流路F601と屈曲流路F603と波形状流路F602のY軸の方向の寸法は、凸部エリア600が設けられていない部分の寸法と同じである。しかし、直線状流路F601と屈曲流路F603と波形状流路F602のY軸の方向の寸法が、凸部エリア600が設けられていない部分の寸法よりも小さくなっていてもよい。
【0065】
本開示は、上述の実施形態や変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜削除することが可能である。
【符号の説明】
【0066】
1…燃料電池セル、10、50、60…カソード側セパレータ、10a、10b、20a、20b…面、20、40…アノード側セパレータ、30…膜電極ガス拡散層接合体(MEGA)、70…従来技術のセパレータ、100a…酸化ガス供給マニホールド、100b…酸化ガス排出マニホールド、200a…燃料ガス供給マニホールド、200b…燃料ガス排出マニホールド、CW1…冷却水供給マニホールド、CW2…冷却水排出マニホールド、103、104、203、204…エンボス部、103a、203a、…流入側エンボス、104a、204a…排出側エンボス、300…電解質膜、310a…カソード電極、310b…アノード電極、320a…酸化ガス拡散層、320b…燃料ガス拡散層、C101、C201、C501、C601、C701…直線状凸部、C102、C102a、C202、C202a、C602、C602a…波形状凸部、C103、C203…三角状凸部、C102aa、C202aa、C702aa…部分、C403、C503…第二波形状凸部、C601a…第一凸部、C601b…平坦部、C602aa…第二凸部、C602bb…第三凸部、600…凸部エリア、F10…酸化ガス流路部、F20…燃料ガス流路部、F101、F201、F401、F501、F601…直線状流路、F102、F202、F602…波形状流路、F103、F203、F403、F603…屈曲流路、FW…冷却水流路部、R101、R201、R401、R501、R601、R602、R603、R701…流路幅、RH101、RH601…幅、A、B…辺、SA、SB、SC…矢印、8b…線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10