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<図1>
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】ワイパモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 7/116 20060101AFI20230801BHJP
   B60S 1/08 20060101ALI20230801BHJP
   H02K 11/21 20160101ALI20230801BHJP
【FI】
H02K7/116
B60S1/08 P
H02K11/21
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019160801
(22)【出願日】2019-09-04
(65)【公開番号】P2021040426
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 修
(72)【発明者】
【氏名】吉田 浩之
【審査官】稲葉 礼子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/049554(WO,A1)
【文献】特開2010-042729(JP,A)
【文献】特開2007-210496(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 7/116
B60S 1/08
H02K 11/21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アーマチュア軸を有するモータと、
前記アーマチュア軸により回転される回転体と、
前記回転体に設けられるリレープレートと、
前記リレープレートの摺接面に摺接されるコンタクトポイントを備えた少なくとも2つのコンタクトプレートと、
を備え、
前記コンタクトポイントが前記摺接面に接触して、前記少なくとも2つのコンタクトプレートが短絡されると、前記アーマチュア軸の回転が停止されるワイパモータであって、
前記回転体は、
前記回転体の軸方向一側に設けられる表面部と、
前記表面部に設けられ、前記リレープレートが収容される収容凹部と、
前記表面部において前記収容凹部を除いた部分を形成する非収容領域と、
を有し、
前記非収容領域における前記収容凹部の周囲には、互いに所定間隔で並べられた複数の穴が設けられていることを特徴とするワイパモータ。
【請求項2】
前記複数の穴が、前記摺接面にも設けられていることを特徴とする請求項に記載のワイパモータ。
【請求項3】
前記複数の穴は、前記回転体の軸方向から見たときに、円形であることを特徴とする請求項または請求項に記載のワイパモータ。
【請求項4】
前記複数の穴は、その直径が300μm以上500μm以下であることを特徴とする請求項に記載のワイパモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リレープレートと、これに摺接される少なくとも2つのコンタクトプレートとを備え、コンタクトプレートがリレープレートに接触して短絡されるとアーマチュア軸の回転が停止されるワイパモータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両には、払拭面を払拭するワイパ部材を揺動させるワイパ装置が搭載されている。ワイパ装置の駆動源には、小型でありながら大きな出力が可能な減速機構を備えたワイパモータが採用されている。ワイパモータは、使用者によるワイパスイッチのオフ操作のタイミングに関わらず、ワイパ部材を格納位置に自動で停止させるオートストップ機能を備えている。このようにオートストップ機能を設けることで、ワイパ部材が払拭面の目の前で停止されることを防止して、良好な視界が確保されるようにしている。このようなオ―トストップ機能を備えた技術には、例えば、特許文献1に記載された技術がある。
【0003】
特許文献1に記載されたワイパモータでは、オートストップ機能に用いられるリレープレートを、無数の空孔を備えた焼結金属(多孔質材料)により形成し、無数の空孔に潤滑油を含浸させるようにしている。これにより、コンタクトプレートがリレープレート上を摺接する度に、空孔内の潤滑油が押し出されたり、空いている空孔内に潤滑油が入り込んだりして、コンタクトプレートとリレープレートとの摺動性および導電性が良好に保たれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-306315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の特許文献1に記載されたワイパモータでは、潤滑油を含浸させた燒結金属よりなるリレープレートを採用するため、ワイパモータの組立工程において、リレープレート同士が張り付いてしまい、これらを剥がす作業が必要になる等、組立工程の煩雑化を招く虞があった。
【0006】
そこで、焼結材料にグラファイト等の自己潤滑剤(固形潤滑剤)を配合することで、後で潤滑油を含浸させないようにすることもできるが、このように潤滑油を無含浸とした焼結金属よりなるリレープレートでは、以下のような別の問題を生じる虞があった。
【0007】
具体的には、コンタクトプレート(コンタクトポイント)のリレープレートに対する摩擦力が多少は大きくなるため、リレープレートの摩耗粉が発生し易くなる。すると、隣り合うコンタクトプレートの間に、導電性を有する上述の摩耗粉が堆積する虞がある。この場合、リレープレート上以外の部分で隣り合うコンタクトプレートが互いに短絡してしまい、ひいては使用者が意図しないタイミングでオートストップ機能が働くという問題を生じる可能性があった。
【0008】
本発明の目的は、潤滑油を無含浸としたリレープレートであっても、隣り合うコンタクトプレートのそれぞれのコンタクトポイントの間に、導電性を有する摩耗粉が堆積することを抑制することが可能なワイパモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様では、アーマチュア軸を有するモータと、前記アーマチュア軸により回転される回転体と、前記回転体に設けられるリレープレートと、前記リレープレートの摺接面に摺接されるコンタクトポイントを備えた少なくとも2つのコンタクトプレートと、を備え、前記コンタクトポイントが前記摺接面に接触して、前記少なくとも2つのコンタクトプレートが短絡されると、前記アーマチュア軸の回転が停止されるワイパモータであって、前記回転体は、前記回転体の軸方向一側に設けられる表面部と、前記表面部に設けられ、前記リレープレートが収容される収容凹部と、前記表面部において前記収容凹部を除いた部分を形成する非収容領域と、を有し、前記非収容領域における前記収容凹部の周囲には、互いに所定間隔で並べられた複数の穴が設けられていることを特徴とする。
【0015】
本発明の他の態様では、前記複数の穴が、前記摺接面にも設けられていることを特徴とする。
【0016】
本発明の他の態様では、前記複数の穴は、前記回転体の軸方向から見たときに、円形であることを特徴とする。
【0017】
本発明の他の態様では、前記複数の穴は、その直径が300μm以上500μm以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、摺接面と非収容領域の少なくともいずれか一方に、少なくとも2つのコンタクトプレートのそれぞれのコンタクトポイントの間にリレープレートの摩耗粉が堆積することを防止する摩耗粉堆積防止部が設けられているので、潤滑油を無含浸としたリレープレートであっても、隣り合うコンタクトプレートのそれぞれのコンタクトポイントの間に、導電性を有する摩耗粉が繋がるようにして堆積することを抑制することができる。したがって、リレープレート上以外の部分で隣り合うコンタクトプレートが互いに短絡して、使用者が意図しないタイミングでオートストップ機能が働いてしまうことを未然に防ぐことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】車両に搭載されたワイパ装置を示す概要図である。
図2図1のワイパモータを示す平面図である。
図3】(a),(b)は、図2のワイパモータ内を示す斜視図である。
図4】ウォームホイールの詳細構造を示す斜視図である。
図5図4のウォームホイールを軸方向一側から見た平面図である。
図6図4のA-A線に沿う断面図である。
図7】実施の形態2の図4に対応した図である。
図8】実施の形態3の図6に対応した図である。
図9】実施の形態4の図4に対応した図である。
図10図9のウォームホイールを軸方向一側から見た平面図である。
図11図9のB-B線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態1について、図面を用いて詳細に説明する。
【0021】
図1は車両に搭載されたワイパ装置を示す概要図を、図2図1のワイパモータを示す平面図を、図3(a),(b)は図2のワイパモータ内を示す斜視図を、図4はウォームホイールの詳細構造を示す斜視図を、図5図4のウォームホイールを軸方向一側から見た平面図を、図6図4のA-A線に沿う断面図をそれぞれ示している。
【0022】
図1に示されるように、車両10の前方側には、フロントガラス11が設けられている。フロントガラス11上には、当該フロントガラス11に付着した雨水等を払拭するDR側ワイパ部材12およびAS側ワイパ部材13が設けられている。ここで、DR側は運転席側を示し、AS側は助手席側を示している。
【0023】
DR側ワイパ部材12は、DR側ワイパブレード12aとDR側ワイパアーム12bとを備えている。DR側ワイパブレード12aは、DR側ワイパアーム12bの先端側に回動自在に装着されている。また、AS側ワイパ部材13は、AS側ワイパブレード13aとAS側ワイパアーム13bとを備えている。AS側ワイパブレード13aは、AS側ワイパアーム13bの先端側に回動自在に装着されている。
【0024】
そして、DR側,AS側ワイパブレード12a,13aは、DR側,AS側ワイパアーム12b,13bの内側に設けられた引張ばね(図示せず)の付勢力により、フロントガラス11にそれぞれ弾性接触されている。
【0025】
また、DR側,AS側ワイパブレード12a,13aは、フロントガラス11上の下反転位置LRPと上反転位置URPとの間に形成されたDR側,AS側払拭範囲11a,11bを、それぞれ同期して同一方向に往復するようになっている。すなわち、DR側,AS側ワイパブレード12a,13aの払拭パターンは、タンデム型となっている。
【0026】
車両10におけるフロントガラス11の前方側には、DR側,AS側ワイパブレード12a,13aを揺動させるワイパ装置14が搭載されている。ワイパ装置14は、車室内等に設けられるワイパスイッチ(図示せず)の操作により駆動されるワイパモータ15と、ワイパモータ15の回転運動をDR側,AS側ワイパブレード12a,13aの揺動運動に変換するリンク機構16と、を備えている。
【0027】
そして、操作者がワイパスイッチを操作することで、ワイパモータ15が回転駆動される。すると、リンク機構16が揺動駆動されて、車両10に設けられたDR側ピボット軸17aおよびAS側ピボット軸17bが揺動される。これにより、DR側,AS側ピボット軸17a,17bに固定されたDR側,AS側ワイパ部材12,13が、フロントガラス11上で揺動されて、フロントガラス11に付着した雨水等が綺麗に払拭される。
【0028】
図2および図3に示されるように、ワイパモータ15は、モータ部20および減速機構部30を備えている。ここで、図3(a),(b)では、ワイパモータ15の内部構造を分かり易くするために、モータケース21(図2参照)の図示を省略するとともに、ハウジング31とハウジングカバー32とを分離して示している。
【0029】
モータ部(モータ)20は、鋼板等の導電材料をプレス加工(深絞り加工)することで有底筒状に形成されたモータケース21を備えている。モータケース21の内壁には、2つの永久磁石22が固定されている。これらの永久磁石22の内側には、所定の隙間を介してアーマチュア23が回転自在に設けられ、アーマチュア23の回転中心にはアーマチュア軸24が固定されている。すなわち、モータケース21は、アーマチュア23およびアーマチュア軸24を回転自在に収容している。
【0030】
アーマチュア軸24の基端側(図中右側)は、軸受部材(図示せず)を介してモータケース21の底部21aに支持されている。一方、アーマチュア軸24の先端側(図中左側)は、減速機構部30を形成するハウジング31の内部にまで延在されている。そして、アーマチュア軸24の先端側には、一対のウォーム25a,25bが一体に設けられている。つまり、一対のウォーム25a,25bは、アーマチュア軸24の回転により回転される。
【0031】
アーマチュア軸24の長手方向に沿うウォーム25bとアーマチュア23との間には、略円筒形状に形成されたコンミテータ26が固定されている。コンミテータ26には、アーマチュア23に巻装されたコイル27の端部が電気的に接続されている。
【0032】
また、コンミテータ26の外周部分には、複数のブラシ28(図3(a)では2つのみ示す)が摺接されるようになっている。これにより、複数のブラシ28を介してコンミテータ26およびコイル27に駆動電流を供給することで、アーマチュア23に電磁力が発生して、アーマチュア軸24が所定の回転数および回転方向で回転される。
【0033】
減速機構部30は、ハウジング31およびハウジングカバー32を備えている。ハウジング31は、アルミ等の導電材料を鋳造成形することで略バスタブ形状に形成されている。そして、ハウジング31は、図2に示されるように、複数の締結ねじ18(図2では2つのみ示す)によって、モータケース21の開口側(図中左側)に連結されている。
【0034】
ハウジング31の内部には、回転体としてのウォームホイール33が回転自在に収容されている。ウォームホイール33は、ポリアセタール(POM)等のプラスチック材料を射出成形することで、略円盤状に形成されている。そして、ウォームホイール33の回転中心には、鋼棒よりなる出力軸34(図1および図2参照)の基端側が固定されている。また、ウォームホイール33の径方向外側には、一対のカウンタギヤCG1,CG2が噛み合わされる歯部33aが設けられている。
【0035】
ここで、ウォームホイール33と一対のウォーム25a,25bとの間には、一対のカウンタギヤCG1,CG2が設けられている。すなわち、ウォームホイール33は、一対のカウンタギヤCG1,CG2を介してアーマチュア軸24によって回転される。そして、一対のウォーム25a,25b,一対のカウンタギヤCG1,CG2およびウォームホイール33は、アーマチュア軸24の回転を減速して高トルク化された回転力を出力軸34から出力させるもので、減速機構SDを構成している。なお、出力軸34の先端側は、ハウジング31の外部に配置され、出力軸34の先端側には、リンク機構16が連結されている(図1参照)。
【0036】
ハウジングカバー32の内側には、図3(b)に示されるように、プラスチック等の絶縁材料よりなるインシュレータ36が固定されている。そして、このインシュレータ36には、複数のモータ側端子40と、複数のコネクタ側端子41と、複数のキャパシター42と、2つのコンタクトプレート43a,43bと、が嵌め込み等により装着されている。そして、これらの電子部品は、インシュレータ36上で、所定の電気回路を形成している。なお、ウォームホイール33には、2つのコンタクトプレート43a,43bのそれぞれの摺接部分TPが摺接される1つのリレープレート44(図3(a)参照)が装着されている。
【0037】
複数のコネクタ側端子41の長手方向一側(図3(b)中左側)は、ハウジングカバー32に一体に設けられたコネクタ接続部32aの内部に露出されている。一方、複数のモータ側端子40の長手方向他側(図3(b)中右側)は、ブラシホルダ(図示せず)の端子接続部TJ(図3(a)参照)に電気的に接続されている。
【0038】
これにより、コネクタ接続部32aに接続される車両側の外部コネクタ(図示せず)から、複数のブラシ28に駆動電流が供給される。ここで、ノイズ対策のためのキャパシター42は、モータ側端子40とコネクタ側端子41との間に配置されている。
【0039】
また、複数のコネクタ側端子41の一部にはアース端子ETが接続され、当該アース端子ETはハウジング31に電気的に接続される。これにより、ワイパモータ15の作動時に発生するノイズが、車両10(図1参照)の車体に効果的に逃がされる。よって、ワイパモータ15から外部に直接放射されるノイズを無くして、他の車載機器等に悪影響を与えないようにしている。
【0040】
さらに、複数のコネクタ側端子41の一部には、一方のコンタクトプレート43aの基端側が電気的に接続されている。そして、コンタクトプレート43aの先端側に設けられた摺接部分TPは、図5に示されるように、ウォームホイール33の軸方向一側に設けられた表面部33dにおいて、その径方向外側に設けられた第1基準線B1上を摺接するようになっている。
【0041】
また、複数のコネクタ側端子41の一部には、他方のコンタクトプレート43bの基端側が電気的に接続されている。そして、他方のコンタクトプレート43bの先端側に設けられた摺接部分TPは、図5に示されるように、ウォームホイール33の軸方向一側に設けられた表面部33dにおいて、その径方向内側に設けられた第2基準線B2上を摺接するようになっている。
【0042】
ここで、一対のコンタクトプレート43a,43bの先端側にそれぞれ設けられた摺接部分TP(図3(b)参照)は、本発明におけるコンタクトポイントを構成している。これらの摺接部分TPは、ウォームホイール33の軸心を通り、かつ径方向に延在される仮想線SL上(図5参照)にそれぞれ配置されている。すなわち、一対のコンタクトプレート43a,43bのそれぞれの摺接部分TPは、ウォームホイール33の径方向に並べられている。これにより、一対のコンタクトプレート43a,43bのそれぞれの摺接部分TPは、ウォームホイール33の表面部33dに設けられたリレープレート44に対して、略同時に接触される。
【0043】
リレープレート44は、無数の空孔(図示せず)を備えた燒結金属により板状に形成されている。具体的には、図4および図5に示されるように、ウォームホイール33を、当該ウォームホイール33の軸方向から見たときに、リレープレート44は略正方形に形成されている。より具体的には、リレープレート44は、概ね、縦15mm,横15mm,厚み3mmの寸法となっている。
【0044】
ここで、リレープレート44には、互いに対向された2組の辺44a,44aおよび44b,44bを備えている。そして、一方の組の辺44b,44bが、図5に示されるように、仮想線SL上に配置されている。より具体的には、仮想線SLの延在方向(図中左右方向)と、一方の組の辺44b,44bの延在方向(図中上下方向)とは、互いに直交されている。
【0045】
なお、リレープレート44を形成する燒結金属の主原料には、本実施の形態では、銅の粉末が用いられている。また、リレープレート44の硬度を増すために、所定量の錫とニッケルの粉末も配合されている。さらには、一対のコンタクトプレート43a,43bの摺接をスムーズにして、リレープレート44の耐摩耗性を向上させるために、所定量のグラファイトや二硫化モリブデン等の固形潤滑剤も配合されている。
【0046】
ただし、焼結金属の主原料には、銅に限らず、他の金属を用いることもできる。また、錫やニッケル,固形潤滑剤の配合比率は、リレープレート44に必要とされる仕様に応じて、任意に設定することができる。
【0047】
このような燒結金属よりなるリレープレート44の成形手順は、以下のようになっている。まず、粉末の銅や錫,ニッケル,固形潤滑剤等を配合し、これを混ぜ合わせて焼結材料を作る。次いで、焼結材料を成形型に入れて圧縮し、所定の形状に成形する。なお、成形型での圧縮の程度により、完成品(リレープレート44)の硬度等を調整することができる。
【0048】
その後、押し固められた焼結材料に熱を加えて、当該焼結材料を焼結させることで、リレープレート44が完成する。ただし、本実施の形態では、焼結後において、リレープレート44に潤滑油を含浸させる処理は行われない。なお、焼結後に、リレープレート44にサイジングやコイニング処理を施して、当該リレープレート44の寸法精度や反り等を修正しても良い。
【0049】
図4および図5に示されるように、リレープレート44は、ウォームホイール33の軸方向一側に設けられた表面部33dに設けられている。具体的には、リレープレート44は、ウォームホイール33の出力軸34と歯部33aとの間に配置されている。そして、リレープレート44の摺接面44c上には、第1基準線B1および第2基準線B2が配置されている。すなわち、リレープレート44がウォームホイール33の回転に伴い出力軸34を中心に回転すると、ウォームホイール33が1回転する度に一対のコンタクトプレート43a,43bのそれぞれの摺接部分TPが、リレープレート44の摺接面44cに接触されて、一対のコンタクトプレート43a,43bが互いに短絡される。
【0050】
ここで、車両側の外部コネクタには、車載コントローラ(図示せず)が電気的に接続されている。そして、操作者がワイパモータ15(図1参照)を停止させるためにワイパスイッチをオフ操作すると、このときに一対のコンタクトプレート43a,43bのそれぞれの摺接部分TPが、第1基準線B1および第2基準線B2上のリレープレート44が無いところにある場合には、車載コントローラはワイパモータ15を停止させること無く継続して回転させる。
【0051】
その後、車載コントローラは、コンタクトプレート43a,43bのそれぞれの摺接部分TPがリレープレート44の摺接面44cに接触されて、コンタクトプレート43a,43bが互いに短絡されたことを検知すると、ワイパモータ15への給電を止めてアーマチュア軸24の回転を停止させる。
【0052】
これにより、DR側ワイパ部材12およびAS側ワイパ部材13(図1参照)が所定の停止位置で自動的に停止される。すなわち、コンタクトプレート43a,43bのそれぞれの摺接部分TPがリレープレート44の摺接面44c上に来るタイミング(短絡されるタイミング)が、DR側ワイパ部材12およびAS側ワイパ部材13が停止位置で停止されるタイミングとなる。
【0053】
図4および図5に示されるように、ウォームホイール33の径方向外側には、歯部33aが設けられている。また、ウォームホイール33の径方向内側の軸心部分には、出力軸34が固定されるボス部33bが設けられている。そして、ウォームホイール33の歯部33aとボス部33bとの間には、略円盤状に形成された本体部33cが設けられている。ここで、ウォームホイール33の軸方向に沿う歯部33aの厚み寸法は、ボス部33bの厚み寸法よりも小さくなっている。また、本体部33cの厚み寸法は、歯部33aの厚み寸法よりも小さくなっている。
【0054】
そして、出力軸34の基端側(図4中上側)の外周部分には、セレーション部(図示せず)が形成されており、このセレーション部がボス部33bの径方向内側に強固に固定されている。これにより、ウォームホイール33の回転に伴って、当該ウォームホイール33に対して空回りすること無く、出力軸34は回転するようになっている。
【0055】
また、本体部33cの表面部33d側とは反対側の裏面部33e側(図6参照)には、複数の肉盗み部33fが形成されている。これらの肉盗み部33fは、ウォームホイール33の軽量化を実現しつつ、ウォームホイール33を射出成形する際に、その硬化時の収縮によりウォームホイール33が歪むことを防止するものである。
【0056】
図4および図5に示されるように、本体部33cの表面部33dには、当該表面部33dからウォームホイール33の軸方向他側の裏面部33e(図6参照)に向けて窪むようにして、収容凹部33gが設けられている。この収容凹部33gには、リレープレート44が収容されている。よって、ウォームホイール33を軸方向から見たときに、収容凹部33gにおいても、略正方形に形成されている。そして、収容凹部33gの寸法は、リレープレート44をがたつかないように収容し得る寸法となっている。
【0057】
また、一対のコンタクトプレート43a,43bのそれぞれの摺接部分TPは、焼結金属よりなる硬いリレープレート44に引っ掛かること無く、第1基準線B1上および第2基準線B2上をスムーズに摺接可能となっている。したがって、一対のコンタクトプレート43a,43bのそれぞれの摺接部分TPが早期に摩耗することが抑えられている。
【0058】
収容凹部33gに収容されたリレープレート44は、一対の固定部FPによって固定されている。これらの固定部FPは、収容凹部33gの周囲に配置され、かつウォームホイール33の軸方向と直交する方向(リレープレート44側)に出っ張っている。ここで、一対の固定部FPは、ウォームホイール33の表面部33dに、それぞれ一体に設けられている。
【0059】
また、一対の固定部FPは、図5に示されるように、リレープレート44の摺接面44cのうちの、一対のコンタクトプレート43a,43bのそれぞれの摺接部分TPが摺接されない非摺接面の一部を覆っている。すなわち、一対の固定部FPは、リレープレート44の摺接面44c上の第1基準線B1および第2基準線B2を避けた部分で、かつリレープレート44の一方の組の辺44b,44bの近傍を覆っている。
【0060】
さらに、一対の固定部FPは、ウォームホイール33を軸方向から見たときに、略長方形に形成され、かつ一方の組の辺44b,44bのそれぞれに沿っている。そして、一対の固定部FPの長さ寸法は、一方の組の辺44b,44bの長さ寸法の半分よりも長く設定されている。これにより、リレープレート44の収容凹部33g内でのがたつきが効果的に抑えられている。
【0061】
なお、一対の固定部FPは、図示しない熱かしめ治具を用いることで、ウォームホイール33の一部を加熱変形させることで形成されている。すなわち、リレープレート44は、ウォームホイール33の収容凹部33gに対して、熱かしめによって強固に固定されている。
【0062】
また、図4ないし図6に示されるように、ウォームホイール33の本体部33cにおける表面部33dには、当該表面部33dからウォームホイール33の軸方向一側(図4および図6中上側)に突出するようにして、略環状に形成された壁部35が一体に設けられている。この壁部35は、本発明における摩耗粉堆積防止部を構成している。
【0063】
壁部35は、ウォームホイール33の周方向に沿って設けられ、かつ本体部33cの表面部33dにおいて、収容凹部33gを除いた部分の全域に亘って設けられている。すなわち、壁部35は、表面部33dのうちの収容凹部33gを除いた部分を形成する非収容領域AR(図5参照)に設けられている。
【0064】
ここで、非収容領域ARは、図5に示されるように、一方のコンタクトプレート43aの摺接部分TPが摺接する領域a(濃色網掛部)と、他方のコンタクトプレート43bの摺接部分TPが摺接する領域b(淡色網掛部)と、から形成されている。そして、壁部35は、一方のコンタクトプレート43aと他方のコンタクトプレート43bとの間に設けられ、第1基準線B1側の領域aの部分と、第2基準線B2側の領域bの部分と、を互いに分離している。
【0065】
さらに、壁部35は、図6に示されるように、径方向外側で起立された第1側壁35aと、径方向内側で起立された第2側壁35bと、これらの第1,第2側壁35a,35bを互いに連結する天壁35cと、から形成されている。なお、壁部35の高さ寸法Hは、約1.0mmに設定されている。これに対し、壁部35の幅寸法W1は、約2.0mmに設定されている(W1≒2×H)。
【0066】
ここで、図6に示されるように、一対のコンタクトプレート43a,43bは、それぞれ導電性に優れた黄銅等によって形成されている。また、一対のコンタクトプレート43a,43bのそれぞれに設けられた先端平坦部FTに、摺接部分TPがそれぞれ設けられている。そして、これらの摺接部分TPは、その断面形状が円弧形状に形成されている。
【0067】
これにより、摺接部分TPの突端部分CPが、リレープレート44の摺接面44c(図5参照)に対して略点接触されるようになっている。したがって、一対のコンタクトプレート43a,43bの弾性力(ばね力)と相俟って、一対のコンタクトプレート43a,43bおよびリレープレート44は、互いに確実に導通(短絡)可能となっている。
【0068】
さらに、図6に示されるように、一対のコンタクトプレート43a,43bの先端平坦部FTの幅寸法W2は、約2.5mmとなっており、先端平坦部FTからの摺接部分TPの突出高さhは、約1.0mmとなっている。また、摺接部分TPの曲率半径rは、約1.6mmとなっており、摺接部分TPの幅寸法W3は、約1.8mmとなっている(W2>W3>r>h)。
【0069】
このような寸法関係で、一対のコンタクトプレート43a,43bにおける先端平坦部FTおよび摺接部分TPの形状を定めている。これにより、図4および図6に示されるように、一対のコンタクトプレート43a,43bと壁部35とが互いに接触することを防止しつつ、一対のコンタクトプレート43a,43bのそれぞれの摺接部分TPがリレープレート44に摺接することで発生したリレープレート44の摩耗粉DSが、壁部35の近傍に集められるようにしている。よって、集められた摩耗粉DSが、壁部35を乗り越えて当該壁部35の反対側に到達することが効果的に抑えられている。
【0070】
具体的には、図4の矢印Rに示されるように、ウォームホイール33が反時計回り方向に回転すると、一対のコンタクトプレート43a,43bのそれぞれの摺接部分TPが、第1,第2基準線B1,B2上を摺接する。このとき、一対のコンタクトプレート43a,43bのばね力により、それぞれの摺接部分TPの突端部分CPがリレープレート44の摺接面44cに所定圧で押し付けられている。したがって、突端部分CPは摺接面44cに対して所定の抵抗(摩擦力)を持って摺接し、これによりリレープレート44の摩耗粉DSが発生する。なお、摩耗粉DSは、突端部分CPが摺接面44cに摺接した直後の部分に溜まり易く、具体的には、図4において、丁度A-A線が引かれた部分に摩耗粉DSは溜まり易くなっている(図6参照)。
【0071】
そして、突端部分CPの摺接面44cに対する摺接により発生した摩耗粉DSは、特にウォームホイール33が回転している場合において、突端部分CPの部分からその周辺に飛び散ろうとする。しかし、突端部分CPの上方(図6中上側)には、先端平坦部FTが存在する。したがって、この先端平坦部FTが障壁となり、先端平坦部FTよりも上方に摩耗粉DSが飛び散ることが抑えられる。
【0072】
これにより、図6に示されるように、それぞれの摺接部分TPの突出高さhと略等しい高さ寸法Hの壁部35の両脇に、具体的には第1,第2側壁35a,35bに沿うようにして、摩耗粉DSが貯留される。したがって、隣り合うコンタクトプレート43a,43bのそれぞれの摺接部分TPの間に、導電性を有する摩耗粉DSが互いに繋がるようにして堆積すること(無用な通電)が防止される。
【0073】
以上詳述したように、本実施の形態に係るワイパモータ15によれば、非収容領域ARに、一対のコンタクトプレート43a,43bの間にリレープレート44の摩耗粉DSが堆積することを防止する壁部35を設けたので、潤滑油を無含浸としたリレープレート44であっても、隣り合うコンタクトプレート43a,43bのそれぞれの摺接部分TPの間に、導電性を有する摩耗粉DSが繋がるようにして堆積することを抑制することができる。
【0074】
したがって、リレープレート44上以外の部分で隣り合うコンタクトプレート43a,43bが互いに短絡して、使用者が意図しないタイミングでオートストップ機能が働いてしまうことを未然に防ぐことが可能となる。
【0075】
また、隣り合うコンタクトプレート43a,43bが互いに短絡することが抑えられるため、一対のコンタクトプレート43a,43bを互いに近接して配置することが可能となる。よって、ウォームホイール33の小型軽量化を図ることができる。
【0076】
さらに、本実施の形態に係るワイパモータ15によれば、本発明における摩耗粉堆積防止部を、非収容領域ARにおいて一対のコンタクトプレート43a,43bのそれぞれの摺接部分TPの間に設けられ、表面部33dからウォームホイール33の軸方向一側に突出し、かつウォームホイール33の周方向に沿う壁部35とした。
【0077】
したがって、隣り合うコンタクトプレート43a,43bのそれぞれの摺接部分TPの間に、導電性を有する摩耗粉DSが繋がるようにして堆積することを、より確実に抑制することができ、さらには、壁部35が補強リブとして機能するため、ウォームホイール33の特に本体部33cの強度を向上させることができる。よって、歪みの少ないウォームホイール33を構築して、ワイパモータ15の静粛性を向上させることが可能となる。
【0078】
次に、本発明の実施の形態2について、図面を用いて詳細に説明する。なお、上述した実施の形態1と同様の機能を有する部分については同一の記号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0079】
図7は実施の形態2の図4に対応した図を示している。
【0080】
実施の形態2では、実施の形態1に比して、ウォームホイール33に設けられる壁部(摩耗粉堆積防止部)50の形状のみが異なっている。具体的には、図4に示されるように、実施の形態1では、壁部35を非収容領域ARの全域に亘って設けていたが、実施の形態2では、図7に示されるように、壁部50を非収容領域ARに部分的に設けている。
【0081】
実施の形態2の壁部50は、ウォームホイール33の表面部33dにおいて、略180°の範囲の部分(略半分)にのみ設けられている。より具体的には、壁部50は、ウォームホイール33の周方向に沿って収容凹部33gを跨ぐようにして設けられており、これにより壁部50は、収容凹部33gの近傍でかつウォームホイール33の周方向に沿う非収容領域ARの一部に設けられている。
【0082】
以上のように形成した実施の形態2においても、上述した実施の形態1と略同様の作用効果を奏することができる。これに加えて、実施の形態2では、壁部50を収容凹部33gの近傍でかつ非収容領域ARの一部に設けているので、ウォームホイール33の重量が増大することを抑制できる。なお、壁部50を設ける範囲は、上述のような略180°の範囲に限らず、例えば、ウォームホイール33の最大回転数やリレープレート44の材質(硬度)等、ワイパモータ15の仕様に応じて、狭くしたり広くしたりすることもできる。
【0083】
次に、本発明の実施の形態3について、図面を用いて詳細に説明する。なお、上述した実施の形態1と同様の機能を有する部分については同一の記号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0084】
図8は実施の形態3の図6に対応した図を示している。
【0085】
実施の形態3では、実施の形態1の壁部35(図6参照)に替えて、摩耗粉堆積防止部としての溝部60を設けた点のみが異なっている。具体的には、図8に示されるように、ウォームホイール33の本体部33cにおける表面部33dには、当該表面部33dからウォームホイール33の軸方向他側(図中下側)に窪むようにして溝部60が設けられている。この溝部60は、ウォームホイール33を軸方向一側(図8中上側)から見たときに、実施の形態1の壁部35と同様に略環状に形成されている。また、溝部60は、ウォームホイール33の周方向に沿って設けられ、図4および図5に示される壁部35と同様に、非収容領域AR(図4および図5参照)の全域に亘って設けられている。
【0086】
そして、溝部60は、一方のコンタクトプレート43aに設けられた摺接部分TPと他方のコンタクトプレート43bに設けられた摺接部分TPとの間に設けられ、第1基準線B1側の領域aの部分(図5参照)と、第2基準線B2側の領域bの部分(図5参照)と、を互いに分離している。
【0087】
さらに、溝部60は、図8に示されるように、径方向外側で起立された第1側壁60aと、径方向内側で起立された第2側壁60bと、これらの第1,第2側壁60a,60bを互いに連結する底壁60cと、から形成されている。なお、溝部60の深さ寸法Dは、壁部35の高さ寸法H(図6参照)と同じ、約1.0mmに設定されている(D=H)。これに対し、溝部60の幅寸法W4は、壁部35の幅寸法W1(図6参照)と同じ、約2.0mmに設定されている(W4=W1,W4≒2×D)。
【0088】
これにより、突端部分CPの摺接面44c(図4および図5参照)に対する摺接により発生した摩耗粉DSは、溝部60の内部に入り込み、当該溝部60内に貯留される。したがって、実施の形態1(図6参照)と同様に、隣り合うコンタクトプレート43a,43bのそれぞれの摺接部分TPの間に、導電性を有する摩耗粉DSが互いに繋がるようにして堆積すること(無用な通電)が防止される。
【0089】
以上のように形成した実施の形態3においても、上述した実施の形態1と略同様の作用効果を奏することができる。これに加えて、実施の形態3では、ウォームホイール33に溝部60を設けるため、ウォームホイール33を軽量化することが可能となる。
【0090】
ここで、溝部60は、実施の形態2の壁部50(図7参照)と同様に、ウォームホイール33の周方向に沿う非収容領域ARの一部に設けることもできる。この場合、溝部60においても、実施の形態2の壁部50と同様に、ウォームホイール33の周方向に沿う収容凹部33g(図7参照)の近傍に設けるようにする。ただし、溝部60を設ける範囲においても、略180°の範囲に限らず、例えば、ウォームホイール33の最大回転数やリレープレート44の材質(硬度)等、ワイパモータ15の仕様に応じて、狭くしたり広くしたりすることができる。
【0091】
次に、本発明の実施の形態4について、図面を用いて詳細に説明する。なお、上述した実施の形態1と同様の機能を有する部分については同一の記号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0092】
図9は実施の形態4の図4に対応した図を、図10図9のウォームホイールを軸方向一側から見た平面図を、図11図9のB-B線に沿う断面図をそれぞれ示している。
【0093】
実施の形態4では、実施の形態1の壁部35(図6参照)に替えて、摩耗粉堆積防止部としての複数の穴70を設けた点のみが異なっている。具体的には、図9ないし図10に示されるように、ウォームホイール33の本体部33cにおける表面部33dには、当該表面部33dからウォームホイール33の軸方向他側(図中下側)に窪むようにして有底の複数の穴70が設けられている。これらの穴70は、非収容領域ARのうちの収容凹部33gの周囲にのみ設けられ、さらには、リレープレート44の摺接面44cにも設けられている。
【0094】
これらの穴70は、ウォームホイール33を軸方向一側(図9中上側)から見たときに、図10に示されるようにそれぞれ円形となっており、かつウォームホイール33の径方向および周方向に、それぞれ互いに所定間隔を持って整然と並べられている。具体的には、ウォームホイール33に設けられる複数の穴70は、当該ウォームホイール33を射出成形する際に形成されるものである。つまり、ウォームホイール33を形作る成形型(図示せず)の内側に、複数の穴70を成型する複数の突起(図示せず)が設けられている。
【0095】
また、リレープレート44の摺接面44cには、その全域に亘って複数の穴70が満遍なく設けられている。そして、摺接面44cに設けられる複数の穴70は、リレープレート44を成形型で圧縮する際に形成されるものである。すなわち、リレープレート44を形作る成形型(図示せず)の内側に、複数の穴70を成型する複数の突起(図示せず)が設けられている。なお、図11に示されるように、複数の穴70は、リレープレート44の両面にそれぞれ設けられている。これにより、リレープレート44の収容凹部33gに対する組み付け方向性(表裏)を無くし、ひいてはワイパモータ15の組み立て作業性を向上させている。
【0096】
さらに、リレープレート44を収容凹部33gに固定する一対の固定部FPは、幾つかの穴70を覆っている。よって、熱かしめにより固定部FPを形成する際に、溶融されたポリアセタール(POM)が、幾つかの穴70の内部に入り込む。すると、これが「アンカー効果」を発揮して、リレープレート44の収容凹部33gに対する固定強度が高められる。ここで、図10に示されるように、複数の穴70は、一対のコンタクトプレート43a,43bの摺接部分TP(図9参照)の軌跡となる第1基準線B1上および第2基準線B2上に、それぞれ複数配置されている。
【0097】
これにより、図9および図11の矢印Rに示されるように、ウォームホイール33が反時計回り方向に回転すると、一対のコンタクトプレート43a,43bのそれぞれの摺接部分TPが、第1,第2基準線B1,B2上を摺接する。その際に発生したリレープレート44の摩耗粉DSは、図11に示されるように、突端部分CPの近傍に引っ掛かって連れ回される。すると、突端部分CPは、第1,第2基準線B1,B2上を摺接するので、第1,第2基準線B1,B2上に配置された複数の穴70が、突端部分CPに付着した摩耗粉DSを削ぎ落とす。これにより、削ぎ落とされた摩耗粉DSが、複数の穴70の内部に入り込んで貯留される。
【0098】
したがって、隣り合うコンタクトプレート43a,43bのそれぞれの摺接部分TPの間に、導電性を有する摩耗粉DSが互いに繋がるようにして堆積すること(無用な通電)が防止される。
【0099】
なお、複数の穴70は、ウォームホイール33の軸方向一側から見たときに円形に形成されている。そのため、複数の穴70よりも大きく、かつ略半球状に形成された摺接部分TPの突端部分CPは、これらの穴70に引っ掛かるようなことが無い。したがって、ワイパモータ15のスムーズな動作に悪影響を与えずに済む。
【0100】
また、複数の穴70の直径および深さは、それぞれ300μm以上500μm以下の寸法となるように設定されている。これに対し、摩耗粉DSの大きさは、最も大きい部分でも100μm以下の寸法となっている。したがって、複数の穴70のそれぞれには、十分な量の摩耗粉DSを貯留させることが可能となっている。
【0101】
ただし、複数の穴70の直径および深さを大きくし過ぎると、以下に示されるような問題を発生する虞がある。第1に、摺接部分TPを形成する突端部分CPが、複数の穴70に引っ掛かり易くなって、ワイパモータ15のスムーズな動作に悪影響を与える可能性がある。第2に、焼結金属よりなるリレープレート44の剛性がより弱くなって、収容凹部33gに装着する際にリレープレート44を破損させてしまう可能性がある。
【0102】
なお、リレープレート44を肉厚にする等してある程度の剛性を確保することも考えられるが、この場合には、リレープレート44の重量増大を招く上に、図9に示されるように、リレープレート44は、ウォームホイール33の回転中心からオフセットされた位置に配置されるため、ウォームホイール33の「回転ムラ」を大きくしてしまう。よって、このような「回転ムラ」の発生をできる限り抑えるためにも、リレープレート44はなるべく薄型でかつ軽量にする必要がある。
【0103】
ここで、ウォームホイール33の「回転ムラ」を許容範囲に抑えるためには、リレープレート44を、上述のように概ね、縦15mm,横15mm,厚み3mmの寸法にするのが望ましい。その上で、リレープレート44の十分な剛性を確保するために、複数の穴70の直径および深さを大きくし過ぎないような寸法にする必要がある。
【0104】
すなわち、必要とされるワイパモータ15の体格や仕様に合わせると、複数の穴70の直径および深さは、上述のような種々の条件を満たすためにも、300μm以上500μm以下の寸法に設定するのが望ましいことが判った。
【0105】
以上のように形成した実施の形態4においても、上述した実施の形態1と略同様の作用効果を奏することができる。これに加えて、実施の形態4では、実施の形態1ないし実施の形態3のような、比較的大きな壁部35,50や溝部60を設けずに済むため、ウォームホイール33自身の「回転ムラ」の発生(回転バランスの乱れ)を最小限に抑えることができ、ひいてはワイパモータ15の静粛性をより向上させることが可能となる。
【0106】
本発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上記各実施の形態では、ワイパモータ15を、払拭パターンがタンデム型のワイパ装置14の駆動源に用いたものを示したが、本発明はこれに限らず、対向払拭型等、他の払拭パターンのワイパ装置の駆動源にも用いることができる。
【0107】
また、上記各実施の形態では、ワイパモータ15を、車両10の前方側に設けられたワイパ装置14に適用したものを示したが、本発明はこれに限らず、車両10の後方側,鉄道車両および航空機等に設けられるワイパ装置に適用することもできる。
【0108】
その他、上記各実施の形態における各構成要素の材質,形状,寸法,数,設置箇所等は、本発明を達成できるものであれば任意であり、上記各実施の形態に限定されない。
【符号の説明】
【0109】
10 車両
11 フロントガラス
11a DR側払拭範囲
11b AS側払拭範囲
12 DR側ワイパ部材
12a DR側ワイパブレード
12b DR側ワイパアーム
13 AS側ワイパ部材
13a AS側ワイパブレード
13b AS側ワイパアーム
14 ワイパ装置
15 ワイパモータ
16 リンク機構
17a DR側ピボット軸
17b AS側ピボット軸
18 締結ねじ
20 モータ部(モータ)
21 モータケース
21a 底部
22 永久磁石
23 アーマチュア
24 アーマチュア軸
25a,25b ウォーム
26 コンミテータ
27 コイル
28 ブラシ
30 減速機構部
31 ハウジング
32 ハウジングカバー
32a コネクタ接続部
33 ウォームホイール(回転体)
33a 歯部
33b ボス部
33c 本体部
33d 表面部
33e 裏面部
33f 肉盗み部
33g 収容凹部
34 出力軸
35 壁部(摩耗粉堆積防止部)
35a 第1側壁
35b 第2側壁
35c 天壁
36 インシュレータ
40 モータ側端子
41 コネクタ側端子
42 キャパシター
43a,43b コンタクトプレート
44 リレープレート
44a,44b 辺
44c 摺接面
50 壁部(摩耗粉堆積防止部)
60 溝部(摩耗粉堆積防止部)
60a 第1側壁
60b 第2側壁
60c 底壁
70 穴(摩耗粉堆積防止部)
AR 非収容領域
B1 第1基準線
B2 第2基準線
CG1,CG2 カウンタギヤ
CP 突端部分
DS 摩耗粉
ET アース端子
FP 固定部
FT 先端平坦部
LRP 下反転位置
SD 減速機構
SL 仮想線
TJ 端子接続部
TP 摺接部分(コンタクトポイント)
URP 上反転位置
a,b 領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11