(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】電磁波遮蔽体
(51)【国際特許分類】
H05K 9/00 20060101AFI20230801BHJP
B32B 7/025 20190101ALI20230801BHJP
B32B 3/10 20060101ALI20230801BHJP
B32B 15/01 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
H05K9/00 W
H05K9/00 F
B32B7/025
B32B3/10
B32B15/01 Z
(21)【出願番号】P 2019165164
(22)【出願日】2019-09-11
【審査請求日】2022-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000110147
【氏名又は名称】トクセン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 雅人
【審査官】小林 大介
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-062017(JP,A)
【文献】実公昭49-013890(JP,Y1)
【文献】特開平11-040973(JP,A)
【文献】特開昭59-061198(JP,A)
【文献】特開2008-218462(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
B32B 7/025
B32B 3/10
B32B 15/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列された複数のコイルを備えており、
それぞれのコイルが、このコイルの長さ方向に沿って並ぶ複数のエレメントを有しており、
それぞれのエレメントの軸方向が上記コイルの長さ方向に対して傾斜しており、
それぞれのコイルにおいて、エレメントが他のエレメントと、正面視においてオーバーラップしており、
それぞれのコイルが、1又は2以上の他のコイルと接触している電磁波遮蔽体。
【請求項2】
上記コイルが、1又は2以上の他のコイルと絡み合っている請求項1に記載の電磁波遮蔽体。
【請求項3】
上記エレメントが、ループと、このループの曲率半径よりも大きい曲率半径を有するジョイントとを有する請求項1又は2に記載の電磁波遮蔽体。
【請求項4】
上記コイルの外径が3.0mm以上20mm以下である請求項1から3のいずれかに記載の電磁波遮蔽体。
【請求項5】
上記コイルの線径が0.10mm以上0.50mm以下である請求項1から4のいずれかに記載の電磁波遮蔽体。
【請求項6】
上記エレメントのピッチが0.5mm以上2.0mm以下である請求項1から5のいずれかに記載の電磁波遮蔽体。
【請求項7】
上記コイルの材質が、磁性金属である請求項1から6のいずれかに記載の電磁波遮蔽体。
【請求項8】
上記複数のコイルが、その材質が導電性金属である第一コイルと、その材質が高透磁率金属である第二コイルとを含む請求項1から7のいずれかに記載の電磁波遮蔽体。
【請求項9】
上層と下層とを備えており、
上記上層が並列された複数のコイルを有しており、それぞれのコイルが、このコイルの長さ方向に沿って並ぶ複数のエレメントを有しており、それぞれのエレメントの軸方向が上記コイルの長さ方向に対して傾斜しており、
それぞれのコイルにおいて、エレメントが他のエレメントと、正面視においてオーバーラップしており、
それぞれのコイルが、1又は2以上の他のコイルと接触しており、
上記下層が並列された複数のコイルを有しており、それぞれのコイルが、このコイルの長さ方向に沿って並ぶ複数のエレメントを有しており、それぞれのエレメントの軸方向が上記コイルの長さ方向に対して傾斜しており、
それぞれのコイルにおいて、エレメントが他のエレメントと、正面視においてオーバーラップしており、それぞれのコイルが、1又は2以上の他のコイルと接触している、電磁波遮蔽体。
【請求項10】
上記上層において、上記コイルが1又は2以上の他のコイルと絡み合っており、
上記下層において、上記コイルが1又は2以上の他のコイルと絡み合っている請求項9に記載の電磁波遮蔽体。
【請求項11】
上記上層におけるコイルの延在方向と、上記下層におけるコイルの延在方向とが、異なっている、
請求項9又は10に記載の電磁波遮蔽体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波による悪影響を防止する目的で使用される電磁波遮蔽体(Electromagnetic Wave Shield)に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車のモータは、電磁波ノイズを放出する。このノイズは、電子機器の誤作動を誘発する。電磁波による人体への悪影響も、懸念される。自動車部品以外の種々の機器においても、電磁波の悪影響が懸念される。電磁波による悪影響を抑制する目的で、電磁波遮蔽体が使用されている。
【0003】
典型的な電磁波遮蔽体は、金属板から形成されている。この電磁波遮蔽体は、柔軟性に劣る。従って、複雑な形状を有する対象物を適切に覆うことは、難しい。この電磁波遮蔽体では、省スペースの要請に沿うことは難しい。
【0004】
金属メッシュからなる電磁波遮蔽体が、提案されている。この電磁波遮蔽体は、金属板に比べると、柔軟性に優れる。しかし、その柔軟性は、決して十分ではない。
【0005】
特開2008-218462公報には、ワイヤが編まれることで形成された電磁波遮蔽体が開示されている。この電磁波遮蔽体は、柔軟である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特開2008-218462公報に開示された電磁波遮蔽体は、柔軟であるものの、その伸縮性は、不十分である。この電磁波遮蔽体が複雑な形状を有する対象物に適用された場合、この電磁波遮蔽体は、対象物の形状に十分に沿うことができない。この電磁波遮蔽体では、電磁波の漏出が懸念される。
【0008】
本発明の目的は、伸縮性に優れた電磁波遮蔽体の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る電磁波遮蔽体は、並列された複数のコイルを有する。それぞれのコイルは、このコイルの長さ方向に沿って並ぶ複数のエレメントを有する。それぞれのエレメントの軸方向は、コイルの長さ方向に対して傾斜している。それぞれのコイルは、1又は2以上の他のコイルと接触している。
【0010】
好ましくは、コイルは、1又は2以上の他のコイルと絡み合っている。
【0011】
好ましくは、エレメントは、ループと、このループの曲率半径よりも大きい曲率半径を有するジョイントとを有する。
【0012】
好ましくは、コイルの外径は、3.0mm以上20mm以下である。好ましくは、コイルの線径は、0.10mm以上0.50mm以下である。
【0013】
好ましくは、エレメントのピッチは、0.5mm以上2.0mm以下である。
【0014】
好ましくは、コイルの材質は、磁性金属である。
【0015】
これらのコイルが、その材質が導電性金属である第一コイルと、その材質が高透磁率金属である第二コイルとを含んでもよい。
【0016】
他の観点によれば、本発明に係る電磁波遮蔽体は、上層と下層とを有する。
【0017】
上層は、並列された複数のコイルを有する。それぞれのコイルは、このコイルの長さ方向に沿って並ぶ複数のエレメントを有する。それぞれのエレメントの軸方向は、コイルの長さ方向に対して傾斜している。それぞれのコイルは、1又は2以上の他のコイルと接触している。
【0018】
下層は、並列された複数のコイルを有する。それぞれのコイルは、このコイルの長さ方向に沿って並ぶ複数のエレメントを有する。それぞれのエレメントの軸方向は、コイルの長さ方向に対して傾斜している。それぞれのコイルは、1又は2以上の他のコイルと接触している。
【0019】
好ましくは、上層において、コイルは1又は2以上の他のコイルと絡み合っている。好ましくは、下層において、コイルは1又は2以上の他のコイルと絡み合っている。
【0020】
好ましくは、上層におけるコイルの延在方向と、下層におけるコイルの延在方向とは、異なる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る電磁波遮蔽体は、コイルを有するので、伸縮性に優れる。この電磁波遮蔽体は、複雑な形状を有する対象物に適用されうる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る電磁波遮蔽体が示された正面図である。
【
図2】
図2は、
図1の電磁波遮蔽体の一部が示された拡大図である。
【
図3】
図3(a)は
図1の電磁波遮蔽体に用いられるコイルの一部が示された正面図であり、
図3(b)は
図3(a)のコイルが示された左側面図である。
【
図4】
図4は、
図3のIV-IV線に沿った拡大断面図である。
【
図5】
図5(a)は
図3のコイルのエレメントが示された正面図であり、
図5(b)は
図5(a)のエレメントが示された右側面図である。
【
図6】
図6は、
図1の電磁波遮蔽体の製造の様子が示された正面図である。
【
図7】
図7は、本発明の他の実施形態に係る電磁波遮蔽体が示された、一部切り欠き正面図である。
【
図8】
図8は、
図7のVIII-VIII線に沿った拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0024】
図1に示された電磁波遮蔽体2は、複数のコイル4を有している。この実施形態では、電磁波遮蔽体2は、11本のコイル4を有している。これらのコイル4は、並列されている。従って電磁波遮蔽体2は、概ね矩形の正面形状を有している。それぞれのコイル4の長さ方向は、
図1における上下方向である。
【0025】
図2は、
図1の電磁波遮蔽体2の一部が示された拡大図である。
図2には、3本のコイル4が示されている。中央に位置するコイル4aは、その左側に位置するコイル4bとオーバーラップしている。コイル4aとコイル4bとは、絡み合っている。中央に位置するコイル4aは、その右側に位置するコイル4cとオーバーラップしている。コイル4aとコイル4cとは、絡み合っている。「コイルが絡み合う」という用語の意味は、後述される。
【0026】
中央に位置するコイル4aが絡み合うコイル4の数は、2である。このコイル4aが、3以上のコイル4と絡み合ってもよい。左側に位置するコイル4bが絡み合うコイル4の数は、1である。このコイル4bが、2又は3以上のコイル4と絡み合ってもよい。右側に位置するコイル4cが絡み合うコイル4の数は、1である。このコイル4cが、2又は3以上のコイル4と絡み合ってもよい。
【0027】
図3及び4に、1つのコイル4が示されている。
図3及び4では、電磁波遮蔽体2に組まれていないコイル4が示されている。従ってこのコイル4は、他のコイル4と絡み合っていない。
図3及び4では、荷重が負荷されていない状態のコイル4が示されている。
【0028】
このコイル4は、複数のエレメント6を有している。これらのエレメント6は、コイル4の長さ方向(
図3における上下方向)に沿って並んでいる。エレメント6は、所定のピッチP(
図3参照)にて、並んでいる。正面視(
図3(a)のビュー)において、1つのエレメント6は他のエレメント6とオーバーラップしている。後述されるように、コイル4は、ワイヤが螺旋状に巻かれることで形成されている。従って、エレメント6は隣接する他のエレメント6と連続してる。このエレメント6は、コイル4における繰り返しの単位である。
【0029】
図3において、矢印A1はコイル4の長さ方向を表し、矢印A2はエレメント6の軸方向を表す。軸方向A2は、エレメント6を含む平面の法線方向である。通常のコイルでは、長さ方向A1と軸方向A2とは、概ね一致する。
図3のコイル4では、エレメント6が倒れているので、エレメント6の軸方向A2はコイル4の長さ方向A1に対して傾斜している。傾斜角度θは50°以上であり、特には70°以上である。
【0030】
図5に、1つのエレメント6が示されている。このエレメント6は、ループ8とジョイント10とを有している。ジョイント10は、ループ8に連続している。ジョイント10の曲率半径は、ループ8の曲率半径よりも大きい。コイル4において、複数のループ8と複数のジョイント10とが、交互に配置されている。ジョイント10は、ループ8とループ8とを繋ぐ。このジョイント10の存在に起因して、エレメント6の軸方向A2がコイル4の長さ方向A1に対して傾斜する。このジョイント10の存在に起因して、複数のエレメント6がコイル4の長さ方向A1に沿って並ぶ。エレメント6のピッチP(
図3参照)は、ジョイント10の長さと、概ね一致する。
【0031】
本実施形態では、ジョイント10の形状は直線である。従ってこのジョイント10の曲率半径は、無限大である。ジョイント10の形状が、曲線であってもよい。ジョイント10の形状が、互いに曲率半径が異なる複数の曲線の組み合わせであってもよい。ジョイント10の形状が、直線と曲線との組み合わせであってもよい。
【0032】
コイル4は、伸縮性に優れる。従って、このコイル4を有する電磁波遮蔽体2も、伸縮性に優れる。この電磁波遮蔽体2は、対象物の形状に応じて容易に変形しうる。この電磁波遮蔽体2により、電磁波の漏洩が抑制される。
【0033】
この電磁波遮蔽体2では、コイル4が他のコイル4と絡み合っているので、コイル4の密度が高い。この高密度は、電磁波遮蔽性を高める。密度の観点から、1つのコイル4が絡み合う他のコイル4の数は2以上が好ましい。
【0034】
エレメント6の軸方向A2がコイル4の長さ方向A1に対して傾斜しているので、この電磁波遮蔽体2の厚みは小さい。この電磁波遮蔽体2は、省スペースに寄与しうる。しかもこの電磁波遮蔽体2では、コイル4の密度が高い。
【0035】
この電磁波遮蔽体2が、ポリマー組成物に埋設されてもよい。この電磁波遮蔽体2は伸縮性に優れるので、ポリマー組成物が変形するとき、この電磁波遮蔽体2がこの変形に追従する。
【0036】
コイル4の好ましい材質は、磁性金属である。磁性金属として、純鉄、鉄-コバルト合金、パーマロイ及びフェライト系ステンレススチールが例示される。パーマロイは、ニッケル及び鉄が主成分である合金である。パーマロイは、銅、モリブデン、クロム、ニオブ及びタンタルを含みうる。パーマロイの概念には、スーパーマロイ、ミューメタル及びハードパーマロイが含まれる。典型的なフェライト系ステンレススチールは、SUS430である。互いに材質が異なる2種以上のコイル4を、電磁波遮蔽体2が有してもよい。
【0037】
電磁波遮蔽体2が、その材質が導電性金属である第一コイル4と、その材質が高透磁率金属である第二コイル4とを含んでもよい。第一コイル4は、電気遮蔽性を有する。好ましくは、電気伝導率が1.0・107S/m以上である金属が、第一コイル4に用いられうる。第二コイル4は、磁気遮蔽性を有する。好ましくは、透磁率μが1.0・105H/m以上である金属が、第二コイル4に用いられうる。
【0038】
図5において矢印D1は、コイル4の外径を表す。外径D1は、3.0mm以上20mm以下が好ましい。外径が3.0mm以上であるコイル4は、伸縮性に優れる。この観点から、外径D1は4.0mm以上がより好ましく、4.5mm以上が特に好ましい。外径D1が20mm以下であるコイル4を有する電磁波遮蔽体2では、コイル4の高密度が達成されうる。この観点から、外径D1は18mm以下がより好ましく、16mm以下が特に好ましい。外径D1が互いに異なる2種以上のコイル4を、電磁波遮蔽体2が有してもよい。
【0039】
図5において矢印D2は、コイル4の線径を表す。線径D2は、0.10mm以上0.50mm以下が好ましい。外径が0.10mm以上であるコイル4は、電磁波遮蔽性に優れる。この観点から、線径D2は0.15mm以上がより好ましく、0.20mm以上が特に好ましい。線径D2が0.5mm以下であるコイル4は、伸縮性に優れ、かつ軽量である。これらの観点から、線径D2は0.45mm以下がより好ましく、0.40mm以下が特に好ましい。線径D2が互いに異なる2種以上のコイル4を、電磁波遮蔽体2が有してもよい。
【0040】
図3において矢印Pは、エレメント6のピッチを表す。ピッチPは、0.5mm以上2.0mm以下が好ましい。ピッチPが0.5mm以上であるコイル4から、厚みが小さく、コイル4の密度が高い電磁波遮蔽体2が得られうる。この観点から、ピッチPは0.7mm以上がより好ましく、0.8mm以上が特に好ましい。ピッチPが2.0mm以下であるコイル4を有する電磁波遮蔽体2では、コイル4の高密度が達成されうる。この観点から、ピッチP1.8mm以下がより好ましく、1.6mm以下が特に好ましい。ピッチPが互いに異なる2種以上のコイル4を、電磁波遮蔽体2が有してもよい。
【0041】
図3において矢印Tは、コイル4の厚みを表す。前述の通り、この厚みTは小さい。従って、このコイル4を有する電磁波遮蔽体2は、省スペースに寄与しうる。この観点から、厚みTと外径D1との比(T/D1)は0.50以下が好ましく、0.40以下がより好ましく、0.30以下が特に好ましい。厚みTが互いに異なる2種以上のコイル4を、電磁波遮蔽体2が有してもよい。
【0042】
傾斜角度θが互いに異なる2種以上のコイル4を、電磁波遮蔽体2が有してもよい。
【0043】
以下、この電磁波遮蔽体2の製造方法の一例が、説明される。まず、原料となる線材に伸線と熱処理とが交互に施されてワイヤが得られる。このワイヤがコイリングマシンに供給されて塑性加工が施され、円筒状コイルが形成される。この円筒状コイルでは、長さ方向A1と軸方向A2とは、概ね一致している。この円筒コイルのエレメントの一部に塑性加工が施され、この部分の曲率半径が高められて、ジョイント10が形成される。ジョイント10が順次形成されて、コイル4が得られる。
【0044】
図6には、2本のコイル4が示されている。左側のコイル4dには、引っ張りの荷重がかかっている。従ってこのコイル4dは、伸張している。このコイル4dにおいて、エレメント6dとこれに隣接する他のエレメント6dとは、離れている。右側のコイル4eには、引っ張りの荷重がかかっている。従ってこのコイル4eは、伸張している。このコイル4eにおいて、エレメント6eとこれに隣接する他のエレメント6eとは、離れている。左側エレメント6dの右端近傍は、2つの右側エレメント6eの間に入り込んでいる。右側エレメント6eの左端近傍は、2つの左側エレメント6dの間に入り込んでいる。
【0045】
荷重が除去されると、左側コイル4dが収縮し、右側コイル4eも収縮する。これらの収縮により、1つの左側エレメント6dは2つの右側エレメント6eに当接し、これら右側エレメント6eに挟まれる。1つの右側エレメント6eは2つの左側エレメント6dに当接し、これら左側エレメント6dに挟まれる。こうして、電磁波遮蔽体2が得られる。本発明では、コイル4のそれぞれのエレメント6が、他のコイル4の2つのエレメント6に挟まれる状態を、「コイルが他のコイルと絡み合う」と称する。互いに絡み合うコイル4同士は、互いに接触している。
【0046】
他のコイル4と絡み合わないコイル4を、電磁波遮蔽体2が有してもよい。この場合、好ましくは、コイル4は、1又は2以上の他のコイル4と接触する。この接触は、コイル4と他のコイル4との間の通電を提供する。この接触は、電磁波遮蔽に寄与しうる。
【0047】
コイル4のエレメント6が、他のコイル4のエレメント6と連結されてもよい。連結により、絡み合う(又は接触し合う)コイル4同士の分離が阻止される。これらのコイル4を有する電磁波遮蔽体2は、形状保持性能に優れる。連結の方法として、バンド線での結束、金属線での結束、ステープルでの固定、プレス加工での固定、溶接及びロウ付けが例示される。
【0048】
図7は、本発明の他の実施形態に係る電磁波遮蔽体12が示された、一部切り欠き正面図である。
図8は、
図7のVIII-VIII線に沿った拡大断面図である。この電磁波遮蔽体12は、上層14と下層16とを有している。上層14は、下層16と積層されている。
図7では、上層14の一部が切り欠かれている。上層14及び下層16のそれぞれの構造は、
図1-6に示された電磁波遮蔽体2の構造と同等である。この電磁波遮蔽体12は、2つの層を有している。層の数が3以上であってもよい。
【0049】
上層14は、複数のコイル18fを有している。この実施形態では、上層14は、11本のコイル18fを有している。これらのコイル18fは、並列されている。それぞれのコイル18fの長さ方向は、
図7における上下方向である。このコイル18fの形状及び材質は、
図1-5に示されたコイル4のそれと同じである。それぞれのコイル18fは、1又は2以上の他のコイル18fと絡み合っている。他のコイル18fと絡み合わないコイル18fを、上層14が有してもよい。この場合、好ましくは、コイル18fは、1又は2以上の他のコイル18fと接触する。
図1-6に示された電磁波遮蔽体2と同様の方法で、コイル18fのエレメントが、他のコイル18fのエレメントと連結されてもよい。
【0050】
下層16は、複数のコイル18gを有している。この実施形態では、下層16は、11本のコイル18gを有している。これらのコイル18gは、並列されている。それぞれのコイル18gの長さ方向は、
図7における左右方向である。このコイル18gの形状及び材質は、
図1-5に示されたコイル4のそれと同じである。それぞれのコイル18gは、1又は2以上の他のコイル18gと絡み合っている。他のコイル18gと絡み合わないコイル18gを、下層16が有してもよい。この場合、好ましくは、コイル18gは、1又は2以上の他のコイル18gと接触する。
図1-6に示された電磁波遮蔽体2と同様の方法で、コイル18gのエレメントが、他のコイル18gのエレメントと連結されてもよい。
【0051】
この電磁波遮蔽体12では、上層14が電磁波遮蔽性に寄与し、かつ下層16も電磁波遮蔽性に寄与する。上層14におけるコイル18の延在方向と下層16におけるコイル18の延在方向とが異なっているので、ノイズが効率的に除去される。上層14におけるコイル18の延在方向と下層16におけるコイル18の延在方向とのなす角度(絶対値)は、30°以上が好ましく、60°以上がより好ましく、90°が特に好ましい。本実施形態では、この角度は、90°である。上層14のコイル18fは、下層16のコイル18gと接触している。上層14のコイル18fと下層16のコイル18gとが絡み合ってもよい。
【0052】
上層14のコイル18fのエレメントが、下層16のコイル18gのエレメントと連結されてもよい。連結により、上層14と下層16との分離が阻止される。これらのコイル18f、18gを有する電磁波遮蔽体12は、形状保持性能に優れる。連結の方法として、バンド線での結束、金属線での結束、ステープルでの固定、プレス加工での固定、溶接及びロウ付けが例示される。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明に係る電磁波遮蔽体は、電磁波ノイズを放出する種々の機器に対して用いられうる。
【符号の説明】
【0054】
2、12・・・電磁波遮蔽体
4、18・・・コイル
6・・・エレメント
8・・・ループ
10・・・ジョイント
14・・・上層
16・・・下層