(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】トンネル用の避難扉装置
(51)【国際特許分類】
A62B 3/00 20060101AFI20230801BHJP
E21F 11/00 20060101ALI20230801BHJP
E04H 9/14 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
A62B3/00 Z
E21F11/00
E04H9/14 A
(21)【出願番号】P 2019171035
(22)【出願日】2019-09-20
【審査請求日】2022-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】307038540
【氏名又は名称】三和シヤッター工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085394
【氏名又は名称】廣瀬 哲夫
(74)【代理人】
【識別番号】100165456
【氏名又は名称】鈴木 佑子
(72)【発明者】
【氏名】香西 統太
(72)【発明者】
【氏名】平垣 駿
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-144011(JP,A)
【文献】特開平11-093553(JP,A)
【文献】特開平09-279940(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1297715(KR,B1)
【文献】特開平11-072118(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62B 3/00
A62C 2/06
A62C 3/00
E05D 15/00
E06B 5/00
E06B 11/00
E21F 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル内に、
車両が前後方向に通行する車道と、
避難する人が通る避難通路と、
車道から避難通路に避難するための入り口となる避難口と、
該避難口を開閉するため前後方向にスライド移動する避難扉とが備えられ、
該避難扉に設けた走行ローラが、トンネル躯体側に設けた走行レールに案内されることで避難口の開閉をするよう構成したトンネル用の避難扉装置において、
前記走行ローラ
を、避難扉の変位を緩衝するための緩衝材を介して避難扉に設け
るにあたり、
避難扉は、縦パネル部と天井パネル部とを備えた逆L字形に構成され、
走行ローラは、少なくとも天井パネル部の先端部に設けられる上側ローラを備えて構成され、
走行レールは、少なくとも上側ローラが走行する上側レールを備えて構成され、
上側ローラは、ブラケットを介して天井パネル部側に連結され、
緩衝材は、弾性変形可能な状態でブラケットと天井パネル部とのあいだに介装されるものであり、
ブラケットは、天井パネル部に連結される第一ブラケットと、上側ローラが設けられ、前記第一ブラケットに連結される第二ブラケットとを備えて構成され、
緩衝材は、天井パネル部と第一ブラケットとのあいだに介装される第一の緩衝材と、第一ブラケットと第二ブラケットとのあいだに介装される第二の緩衝材とを備えて構成され、
該第一、第二の緩衝材は、弾性変形する方向が異なっていることを特徴とするトンネル用の避難扉装置。
【請求項2】
走行ローラには、縦パネル部の下端部に設けられる下側ローラがさらに備えられ、
走行レールには、下側ローラが走行する下側レールがさらに備えられていることを特徴とする請求項1記載のトンネル用の避難装置。
【請求項3】
緩衝材は、積層枚数を変更できるよう板状体で構成されていることを特徴とする請求項
1または2記載のトンネル用の避難扉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルにおいて、自動車や鉄道等の車両が通過する車道から避難通路に避難するための避難口に設けられるトンネル用の避難扉装置の技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、土木建築技術の進歩に伴い、全長の長いトンネルが構築され、このような長いトンネルにおいては、避難通路(避難路)を車両が通る車道とは区画するようにして別に設け、車道内で火災等の非常事態が発生した場合に、車道にいる避難者が、車道の左右方向一側部に設けた避難口から避難通路に避難することで、車道外へ逃れることができるようにしている。
ところでこのようなトンネルにおいては、例えば車道の左右端部(左右何れか一方または両方)を段差状に高くした側道(監視員通路)が形成され、この側道を監視員が徒歩で通行できるようにしてトンネル内の点検やメンテナンスを行うようにしたものがあるが、このような側道に、避難通路への入り口となる避難口を形成し、該避難口に開閉自在に設けた避難扉(通常時は閉鎖されている。)を開放することで車道から避難通路に避難できるようにしている。
このような避難扉は、該避難扉に設けられる走行ローラがトンネル躯体側に設けた走行レールを転動することで開閉できるようにしたものが提唱されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような避難扉装置をトンネル内に設ける場合に、トンネル自体の施工精度、避難扉装置の組立て精度や施工精度等がある(不陸状態がある)ことから避難扉を完全に直線状に走行する構成にすることは事実上難しいだけでなく、トンネル内を走行する車両が跳ね上げた小石等の跳ね上げ物や飛散物等の異物が走行レール上に落下することもあり、この結果、避難扉は、理想的な状態(設計図に描いた状態)での開閉移動を行わせることは難しく、避難扉の移動に意図しない不用意な抵抗が発生したり、上下方向、左右方向、前後方向、さらにはこれらが複合した三次元方向に複雑に変位したりして円滑な開閉移動が妨げられる惧れがあるという問題が想定され、ここに本発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、トンネル内に、車両が前後方向に通行する車道と、避難する人が通る避難通路と、車道から避難通路に避難するための入り口となる避難口と、該避難口を開閉するため前後方向にスライド移動する避難扉とが備えられ、該避難扉に設けた走行ローラが、トンネル躯体側に設けた走行レールに案内されることで避難口の開閉をするよう構成したトンネル用の避難扉装置において、前記走行ローラを、避難扉の変位を緩衝するための緩衝材を介して避難扉に設けるにあたり、避難扉は、縦パネル部と天井パネル部とを備えた逆L字形に構成され、走行ローラは、少なくとも天井パネル部の先端部に設けられる上側ローラを備えて構成され、走行レールは、少なくとも上側ローラが走行する上側レールを備えて構成され、上側ローラは、ブラケットを介して天井パネル部側に連結され、緩衝材は、弾性変形可能な状態でブラケットと天井パネル部とのあいだに介装されるものであり、ブラケットは、天井パネル部に連結される第一ブラケットと、上側ローラが設けられ、前記第一ブラケットに連結される第二ブラケットとを備えて構成され、緩衝材は、天井パネル部と第一ブラケットとのあいだに介装される第一の緩衝材と、第一ブラケットと第二ブラケットとのあいだに介装される第二の緩衝材とを備えて構成され、該第一、第二の緩衝材は、弾性変形する方向が異なっていることを特徴とするトンネル用の避難扉装置である。
請求項2の発明は、走行ローラには、縦パネル部の下端部に設けられる下側ローラがさらに備えられ、走行レールには、下側ローラが走行する下側レールがさらに備えられていることを特徴とする請求項1記載のトンネル用の避難装置である。
請求項3の発明は、緩衝材は、積層枚数を変更できるよう板状体で構成されていることを特徴とする請求項1または2記載のトンネル用の避難扉装置である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1または2の発明とすることにより、避難扉の開閉作動中に不用意な抵抗や走行姿勢に変位があったときに、緩衝材による緩衝作用が働くことになって走行異常を来すことを効果的に回避できることになる。
しかも、避難扉は、走行姿勢に変位があった場合に逆L字形をしていることで天井パネル部側に倒れ込むような複雑な変位をしようとするが、この変位が天井パネル部側に設けた緩衝材によって緩衝されることになって避難扉の開閉作動の円滑化を図ることができる。
さらに、緩衝材が、弾性変形可能な状態でブラケットと天井パネル部とのあいだに介装されている結果、緩衝材の組付け構造が簡略化されながら、高い緩衝性能を発揮できることになる。
また、上側ローラは、第二ブラケットに設けられた一つのアッシー(部品)として取扱うことができることになってメンテナンス性が向上するものでありながら、緩衝材についても、天井パネル部と第一ブラケットとのあいだ、第一、第二ブラケット同士のあいだの少なくとも一方に介装されたものとなって緩衝材の取り付け構造も簡略化される。
さらにまた、緩衝材が、天井パネル部と第一ブラケットとのあいだ、第一、第二ブラケット同士のあいだの両間に介装されると共に、これら緩衝材は弾性変形する方向が異なっているため、天井パネル部の複雑な変位に対応した高い緩衝ができることになる。
請求項3の発明とすることにより、緩衝材が、積層枚数を変更できるよう板状体で構成されている結果、緩衝材の取り付けが、現場現場に対応した細かい設定にできることになって避難扉の走行性を現場に適したものに迅速に対応できることになる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図4】(A)(B)は避難扉の側面図、平面図である。
【
図5】(A)(B)は避難扉の正面図、背面図である。
【
図7】(A)(B)(C)は上ローラ部の正面図、側面図、平面図である。
【
図8】第二の実施の形態を示す避難扉装置の上ローラ部位の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図面において、1はトンネル(坑道)であって、該トンネル1は、例えばシールド工法により形成された円筒状をし、仕切り部1aを介して上下に仕切られており、該仕切られた上半部に車両が通過する車道2が形成され、下半部に車道2から避難する人が通る避難通路(避難路)3が形成されたものとなっている。
以下、車両が車道2を通過する方向を前後方向とし、車道2の幅方向を左右方向として説明するが、これに限定されるものではない。
【0009】
また、車道2の左右方向少なくとも一側方(車道2の幅方向の左右何れか一方または両方)には、監視員が車道2に沿って前後方向に移動することができる側道(監視員通路)Xが、逆L字形になっていて、車道2に対して段差状に高くなる状態で形成されているが、該側道Xは、前後方向に適間隔を存して切欠かれ、該切欠き部位に避難扉装置Zが設けられており、上側の車道2から避難する避難者は、該避難扉装置Zに設けられる避難口5から連通路6を経由して下側の避難通路3に避難移動できるようになっているが、連通路6は、滑り台、階段や坂道等、避難者が通れる構成のものであればよいことは勿論である。
【0010】
そしてこのものには、前記避難口5を開閉するため本発明が実施された避難扉装置Zが設けられるが、該避難扉装置Zを構成する避難扉7は、車道2側に配された縦パネル部8と、該縦パネル部8の上端縁からトンネル1の側壁部1b側に向けて延出する天井パネル部9とにより前後方向から見たときに逆L字形に形成されたものであるが、避難扉7は、後述するように、縦パネル部8の下端部に設けた下側ローラ10と天井パネル部9の先端部に設けた上側ローラ11とがトンネル1の躯体側に設けた下側レール12、上側レール13をそれぞれ転動して前後方向に移動案内されることで前記避難口5の開閉をするようになっている。
【0011】
前記避難扉装置Zには、側道Xに続く状態で縦板部4aと天板部4bとにより逆L字形で中空状に構成された外筐体(ケーシング)4が設けられているが、該外筐体4の避難口5が設けられる部位が切欠き部4cとなり、該切欠き部4cの前後は、避難扉装置Zとして必要な自閉装置等の各種の部材装置が配された機械室(設備室)になっているが、そのうちの一方は、開放した避難扉7が内装(収容)される戸袋にも構成されている(
図2において開放した状態の避難扉7が二点鎖線で描かれている。)。
そして車道2から避難する人は、避難扉7の縦パネル部8、天井パネル部9に設けた把手7aの何れかに手掛けて避難扉7の開放操作をすると避難口5が開口し、そこで避難者は、該開口した避難口5から連通路6を経由して避難通路3に避難移動することができるが、該開放移動した避難扉7は、開放してから所定時間経過後、自閉装置が機能することになって自動的に自閉作動をし、これによって避難扉7が閉鎖するようになっていること等は、何れも従来公知であり、これらの構造についての詳述は省略する。
尚、本実施の形態の避難扉7は手動開放式となっているが、スイッチ操作により避難扉7を自動開放する自開式にしてもよいことは言うまでもない。
【0012】
前記避難扉7において、縦パネル部8の下端部には、避難口5側に位置する状態で前記下側ローラ10の一対が前後に設けられるが、該下側ローラ10は、車道2側に位置する状態で配され、仕切り部1aの側縁部に配した下側レール12を前後方向に転動できるようになっている。尚、10aは下側ローラ10の支軸、10bは該支軸10aの一端を支持するため縦パネル部8に取付けられるブラケットである。
【0013】
一方、天井パネル部9の先端縁部には、ブラケット14を介して上側ローラ11が設けられるが、本実施の形態においては、上側ローラ11は、横軸を支軸15aとして回転する横軸ローラ15と、縦軸を支軸16aとして回転する縦軸ローラ16とを備えたものとして構成されている。
これに対しブラケット14は、第一、第二ブラケット17、18により二分割されたものとして構成されるが、第一ブラケット17の前後両端部は、天井パネル部9の先端縁側フレーム材9aの側面部(車道側の側面部)に突設した取付け金具9bの下面部9cにボルト17aを介して取付け固定される(上板片部17bに設けたボルト孔(図示せず)を下側から貫通したボルト17aが下面部9cに設けた螺子孔(図示せず)に螺入する。)。この場合に、取付け金具9bの下面部9cと第一ブラケット17の横板状になった上板片部17bとのあいだには、板面が上下に配される横板状になった第一の緩衝材19が介装されている。勿論、第一の緩衝材19には、ボルト17aが遊嵌する貫通孔(図示せず)が設けられている。
【0014】
前記第一ブラケット17の縦板状になった側板片部17cには、トンネル側壁部1b側に配される状態で縦板状になった第二ブラケット18がボルト18aを介して取付け固定される(側板片部17cに設けたボルト孔(図示せず)を車道2側から貫通したボルト18aが第二ブラケット18に設けた螺子孔(図示せず)に螺入する。)が、該第一ブラケット17の側板片部17cと第二ブラケット18とのあいだには、板面が左右に配される縦板状になった第二の緩衝材20が介装されている。勿論、第二の緩衝材20には、ボルト18aが遊嵌する貫通孔(図示せず)が設けられている。
そして第二ブラケット18には、前後方向略中央側下部に位置する状態で前記横軸ローラ15が設けられ、前後方向一端側上部に位置する状態で前記縦軸ローラ16が設けられているが、さらに本実施の形態では、前後方向他端側上部に位置する状態で横軸を支軸21aとする上側横軸ローラ21が設けられている。
【0015】
このようにして設けられる前記第一、第二緩衝材19、20は、本実施の形態ではゴム質弾性材により形成されていて、弾性変形することにより負荷吸収をするようになっているが、前記第一の緩衝材19は、横板状になっていることから上下方向に圧縮変形をし、これによって、上下方向の変位の緩衝を効率よく行うことになる一方、第二の緩衝材20は、縦板状になっていることから左右方向に圧縮変形をし、これによって、左右方向の変位の緩衝を効率よく行うことができるようになっている。
尚、本実施の形態の第一、第二の緩衝材19、20は、それぞれが挟持される上板片部17bと下面部9c、側板片部17cと第二ブラケット18の各部材には固着されておらず、このため単独で着脱できる構成になっていてメンテナンス性の向上に寄与しているが、挟持する何れか一方の部材に固着された構成、さらには挟持される両部材に固着された構成にしても本発明を実施することができる。
【0016】
前記外筐体4を構成する天板部4bは、支持金具1cを介してトンネル側壁部1bに支持されているが、天板部4bの下面には、切欠き部4cよりもトンネル側壁部1b側に配される状態で取付けブラケット4dが設けられ、該取付けブラケット4dに、前記上側ローラ11を構成する横軸ローラ15、縦軸ローラ16、そして上側横軸ローラ21を案内するための上側レール13が設けられている。
上側レール13は、側面視で車道2側が開口したC型形状をし、上端縁が遊端となった下側片部13aが、横軸ローラ15が案内される第一レール13aとなり、上下方向中間の跨部13bが、縦軸ローラ16が案内される第二レール13bとなり、下端縁部が遊端になった上側片部13cが上側横軸ローラ21の必要以上の上動を規制して横軸ローラ15が第一レール13aから外れるのを防止するための第三レール13cとなるよう構成されている。因みに、これらレールは、本実施の形態では上側レール13に一体形成されたものとなっているが、必要において各別に設けてもよいことは言うまでもない。
【0017】
叙述の如く構成された本発明の実施の形態において、トンネル内において、車道2で車両火災が発生したような非常時において、避難者は、車道2から避難通路3に避難し、該避難通路3を通ってトンネル外に脱出することができるが、その場合に避難者は、車道2と避難通路3とを連通する連通路6の車道2側端部に設けた避難口5から連通路6を通って避難通路3に避難移動することができる。
この場合に避難口5は、避難扉7によって閉鎖されたものが、該避難扉7の開放移動によって開口することになるが、避難扉7の該開放移動は、該避難扉7を構成する縦パネル部8の下端部に設けた下側ローラ10がトンネル仕切り部1aに設けた下側レール12を走行することで実行される。
【0018】
このものにおいて、避難扉7は、前記縦パネル部8と、該縦パネル部8の上端縁部からトンネル側壁部1b側に延びる天井パネル部9とを備えた逆L字形をした構成になっており、このため重心が縦パネル部8位置ではなくトンネル側壁部1b側に偏倚したものとなっていて、下側ローラ10による自立走行はできない。そこで避難扉7は、天井パネル部9の先端部に設けた上側ローラ11がトンネル躯体側に設けた上側レール13に支持案内されることで自立した状態で開閉移動できるようになっているが、この場合に、上側ローラ11は、天井パネル部9に対して緩衝材19、20を介して取付けられた構成になっているため、例えばトンネル自体の施工精度、避難扉装置の組立て精度や施工精度等があることから避難扉7を完全に直線状に走行させることができない状態や、第二レール13bが平滑(平面)でないため縦軸ローラ16が左右方向に変位した状態(不陸状態)になってしまったり、下側ローラ10が下側レール12上に乗っていた小石等の異物を乗り越えたりすることで単純に上下方向に移動したとしても、上側ローラ11は、天井パネル部9の先端部に設けられているため、避難扉7は単に上下方向だけでなく左右方向、前後方向の変位を伴った複雑な三次元的な変位をすることになって避難扉7の走行姿勢が乱れて上側レール13との走行に不用意な抵抗が発生したり避難扉7が外筐体4に当接や擦過したりする惧れがあるが、このような場合、緩衝材19、20の弾性変形による緩衝機能が発揮されることになって避難扉7の走行姿勢の乱れを矯正し、前記不用意な抵抗が低減(軽減)されたり避難扉7の外筐体4に対する当接等の不具合発生を低減して、避難扉7の円滑な開閉移動が実行される。
【0019】
しかもこのものでは、上側ローラ11を取付けるためのブラケットとして、天井パネル部9に連結される第一ブラケット17と、上側ローラ11が設けられ、前記第一ブラケット17に連結される第二ブラケット18とを備えて構成されたものになっており、しかも緩衝材としては、天井パネル部9と第一ブラケット17とのあいだに介装される第一緩衝材19と、第一ブラケット17と第二ブラケット18とのあいだに介装される第二緩衝材20とを備えたものとして構成され、しかも第一緩衝材19は板面が上下方向に配され(横板状に配され)ていることで上下方向の圧縮変形がなされ、第二緩衝材20は板面が左右方向に配され(縦板状に配され)ていることで左右方向の圧縮変形がなされることになり、この結果、第一緩衝材19は主に上下方向の変位の緩衝をし、第二緩衝材20は左右方向の緩衝をするという弾性変形する方向が異なたものとなっているため、天井パネル部9が上下、左右、前後方向の変位が混じった三次元方向の複雑な変位をしたとしても、第一、第二緩衝材19、20がこの変位に対応した緩衝ができることになって、前記不陸状態等の問題があったとしてもこれを緩衝して避難扉7の円滑な開閉移動を促すことになる。
【0020】
そしてこのものでは、第二ブラケット18が、上側ローラ11を構成部材となる横軸ローラ15、縦軸ローラ16だけでなく、上側横軸ローラ21までもが設けられたものとなっていて、上側ローラ11が設けられた一組のアッシーとして部材提供することができ、この結果、上側ローラ11に異常があった場合等においてのメンテナンス性が向上する。
【0021】
尚、本発明は前記の実施の形態のものに限定されないものであることは勿論であって、緩衝材としては、一枚板状のものではなく、
図8に示す第二の実施の形態のように薄板状の緩衝材22、22aを適数枚積層したものとし、その積層枚数を現場に対応して適宜変更できるよう構成することができる。
そして本実施の形態のように第一、第二の緩衝材(複数の緩衝材)19、20を採用した場合には、これらの緩衝材19、20の弾性変形力(弾性係数)を異ならしめたものとしてもよい。
さらに緩衝材としては、肉厚状のものとする等、肉厚を必要において適宜変更(調整)することができ、またコイル弾機、板バネ等の弾性材とすることも必要において採用することができる。
【0022】
因みに本実施の形態は、トンネルに設けられる避難口の開閉をする避難扉に実施できるものであって、本実施の形態のように逆L字形をした避難扉に限定されず、冂字形をしたもの、平板状のもの等、各種に形状の避難扉に実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、トンネルにおいて、自動車や鉄道等の車両が通過する車道から避難通路に避難するための避難口に設けられるトンネル用の避難扉装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0024】
1 トンネル
1a 仕切り壁(トンネル躯体側)
1b 側壁部(トンネル躯体側)
2 車道
3 避難通路
5 避難口
7 避難扉
8 縦パネル部
9 天井パネル部
10 下側ローラ
11 上側ローラ
12 下側レール
13 上側レール
14 ブラケット
15 横軸ローラ
16 縦軸ローラ
17 第一ブラケット
18 第二ブラケット
19 第一緩衝材
20 第二緩衝材
Z 避難扉装置