(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20230801BHJP
B41J 2/21 20060101ALI20230801BHJP
B65H 26/04 20060101ALI20230801BHJP
B41J 11/42 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
B41J2/01 203
B41J2/01 451
B41J2/21
B41J2/01 305
B41J2/01 209
B65H26/04
B41J11/42
(21)【出願番号】P 2019178642
(22)【出願日】2019-09-30
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100104695
【氏名又は名称】島田 明宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121348
【氏名又は名称】川原 健児
(74)【代理人】
【氏名又は名称】奥田 邦廣
(74)【代理人】
【識別番号】100148459
【氏名又は名称】河本 悟
(72)【発明者】
【氏名】岡本 晃澄
(72)【発明者】
【氏名】吉田 充宏
【審査官】亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-047775(JP,A)
【文献】特開2019-144789(JP,A)
【文献】国際公開第2018/168695(WO,A1)
【文献】特開2012-160013(JP,A)
【文献】特開2012-101534(JP,A)
【文献】米国特許第09162475(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
B65H 26/04
B41J 11/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続した印刷基材を所定の搬送方向に搬送する搬送部と、
第1印刷データに基づき前記印刷基材に対して第1インクを吐出する第1印刷部と、
前記第1印刷部よりも前記搬送方向の下流側に設けられ、第2印刷データに基づき前記印刷基材に対して第2インクを吐出する第2印刷部と、
前記第1印刷データを含む印刷データに基づき、前記第1印刷部による印刷の前から前記第2印刷部による印刷の前までに前記印刷基材に対して吐出されるインクの量を推定するインク量推定部と、
前記印刷基材のエッジ位置を検出するエッジセンサと、
少なくとも前記インク量推定部で推定されたインク量
および前記エッジセンサにより検出される前記印刷基材のエッジ位置に基づき、前記第1印刷部による印刷位置と前記第2印刷部による印刷位置との間のずれ量
として、前記印刷基材の搬送方向のずれ量である搬送方向ずれ量と前記印刷基材の幅方向のずれ量である幅方向ずれ量とを含むずれ量を求めるずれ量取得部と、
前記ずれ量に基づき、前記第2印刷部による印刷位置を制御する印刷制御部とを備えた、印刷装置。
【請求項2】
前記搬送部によって搬送中の前記印刷基材に加わる張力を検出する張力検出部をさらに備え、
前記ずれ量取得部は、少なくとも前記インク量と前記張力とに基づき前記ずれ量を求めることを特徴とする、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記ずれ量取得部は、少なくとも前記インク量を入力として前記ずれ量を出力する機械学習により学習済みの演算器を含むことを特徴とする、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記ずれ量取得部は、少なくとも前記インク量を入力とする機械学習により学習済みの演算器を含み、前記演算器の出力に基づき前記ずれ量を求めることを特徴とする、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記ずれ量取得部は、少なくとも前記インク量と前記張力とを入力として前記ずれ量を出力する機械学習により学習済みの演算器を含むことを特徴とする、請求項2に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記ずれ量取得部は、少なくとも前記インク量と前記張力とを入力とする機械学習により学習済みの演算器を含み、前記演算器の出力に基づき前記ずれ量を求めることを特徴とする、請求項2に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記ずれ量との間に相関関係を有するデータを供給するデータ供給部をさらに備え、
前記ずれ量取得部は、前記インク量と前記張力と前記データとに基づき前記ずれ量を求めることを特徴とする、請求項2に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記ずれ量取得部は、前記インク量と前記張力と前記データとを入力として前記ずれ量を出力する機械学習により学習済みの演算器を含むことを特徴とする、請求項7に記載の印刷装置。
【請求項9】
前記ずれ量取得部は、前記インク量と前記張力と前記データの一部とを入力とする機械学習により学習済みの演算器を含み、前記演算器の出力と前記データの残部とに基づき前記ずれ量を求めることを特徴とする、請求項7に記載の印刷装置。
【請求項10】
前記データは、前記印刷基材の単位面積あたりの質量、前記印刷基材の搬送速度、前記印刷基材の周辺の温度、前記印刷基材の周辺の湿度、前記印刷基材のエッジ位置、前記印刷基材の面に垂直な方向の位置、前記第1印刷部と前記第2印刷部との間の前記搬送方向の距離、前記第2印刷部に含まれる印刷ヘッドと前記印刷基材との間の距離、および、前記インクの特性のうち1以上を含むことを特徴とする、請求項7~9のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項11】
テストデータを記憶するテストデータ記憶部と、
前記テストデータを用いて前記印刷基材に印刷を行って得られたテスト印刷物を撮影する撮影部と、
前記撮影部で撮影された画像に基づき、前記テスト印刷物における前記ずれ量を測定するずれ量測定部とをさらに備え、
前記演算器は、少なくとも前記テストデータに基づき推定された前記インク量と前記ずれ量測定部で測定されたずれ量とを用いて機械学習により学習済みであることを特徴とする、請求項3~6、8および9のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項12】
前記第2印刷部は、前記印刷基材の幅方向に並んだ複数の印刷ヘッドを含み、
前記インク量推定部は、前記印刷基材を前記複数の印刷ヘッドに対応づけて前記幅方向に分割して得られた複数の領域のそれぞれについて前記インク量を推定し、
前記ずれ量取得部は、前記複数の領域のそれぞれについて前記ずれ量を求め、
前記印刷制御部は、前記ずれ量に基づき、前記複数の印刷ヘッドによる印刷位置を個別に制御することを特徴とする、請求項1~11のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項13】
前記印刷制御部は
、前記搬送方向ずれ量に基づき、前記複数の印刷ヘッドの印刷タイミングを個別に制御することを特徴とする、請求項12に記載の
印刷装置。
【請求項14】
前記印刷制御部は
、前記幅方向ずれ量に基づき、前記複数の印刷ヘッドによる前記幅方向の印刷位置を個別に制御することを特徴とする、請求項12に記載の印刷装置。
【請求項15】
前記複数の印刷ヘッドのそれぞれは、前記印刷基材の幅方向に並んだ複数のノズルを有し、
前記印刷制御部は、前記幅方向ずれ量に基づき、前記複数のノズルの中からインクを吐出するノズルを選択することにより、前記複数の印刷ヘッドによる前記幅方向の印刷位置を個別に制御することを特徴とする、請求項14に記載の印刷装置。
【請求項16】
前記幅方向ずれ量に基づき、前記第2印刷データが表す画像の前記幅方向のサイズを変更する画像サイズ変更部をさらに備えた、請求項1~13のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項17】
前記第1インクは、1枚のカラー画像を構成する第1色成分画像を印刷するためのインクであり、
前記第2インクは、前記カラー画像を構成する第2色成分画像を印刷するためのインクであることを特徴とする、請求項1~
16のいずれかに記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関し、特に、搬送中の印刷基材に対して複数の印刷部からインクを順に吐出する印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、連続した印刷基材を長手方向に搬送し、搬送中の印刷基材に対して複数の印刷部から互いに異なる色のインクを順に吐出するインクジェット方式のカラー印刷装置が知られている。典型的なインクジェット方式のカラー印刷装置は、搬送中の印刷基材に対して4個の印刷部から黒、シアン、マゼンタ、および、イエローのインクを順に吐出する。以下、印刷基材の長手方向を搬送方向、短手方向を幅方向という。
【0003】
インクジェット方式のカラー印刷装置は、複数の印刷部を用いて複数の色の印刷を順に行う。このため、複数の色の間で印刷位置がずれることがある。このような印刷位置のずれは、見当ずれと呼ばれる。複数の色の間で印刷位置がずれると、印刷物の品質は大きく低下する。このため、カラー印刷装置では、複数の色の間で印刷位置のずれを防止する必要がある。また、両面印刷装置では、表面(おもてめん)と裏面の間で印刷位置のずれを防止する必要がある。
【0004】
カラー印刷装置における印刷位置のずれを防止する方法は、例えば、特許文献1および2に記載されている。特許文献1には、2種類の検出用チャートの印刷結果に基づき、搬送方向における印刷位置のずれ方向とずれ量を求める印刷装置が記載されている。特許文献2には、2個の検出部を用いて基材のエッジの幅方向の位置を検出し、2個の検出結果に基づき基材の搬送方向の位置または搬送速度のずれ量を求める基材処理装置が記載されている。
【0005】
両面印刷装置における印刷位置のずれを防止する方法は、例えば、特許文献3~5に記載されている。特許文献3には、印刷媒体の情報と表面印刷時の情報とに基づき表面印刷後の印刷媒体の幅方向の伸縮情報を求め、求めた伸縮情報に基づき裏面印刷時に見当合わせ補正を行う印刷装置が記載されている。特許文献4には、表面印刷のインク付与時から裏面印刷開始までに発生する用紙の伸縮量を予測し、予測した伸縮量に基づき算出した画像補正量に基づき表面画像データと裏面画像データのうち少なくとも一方を補正する印刷装置が記載されている。特許文献5には、表面画像を形成したときに生じる記録媒体の収縮率に応じて縮小された裏面画像を形成するための裏面画像データを生成し、縮小された裏面画像データの画像サイズが表面画像データの画像サイズと同じになるように裏面画像データに余白領域を付加する画像処理装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2017/51796号
【文献】特開2018-162161号公報
【文献】特開2014-144608号公報
【文献】特開2011-121237号公報
【文献】特開2015-116709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
インクジェット方式の印刷装置では、印刷部から吐出されたインクが印刷基材に付着すると、付着したインクによって印刷基材が伸びる。このため、インクジェット方式のカラー印刷装置では、複数の色の間でインクの付着位置にずれが生じ、複数の色の間で印刷位置がずれることがある。
【0008】
図16は、従来のカラー印刷装置における印刷位置のずれを示す図である。
図16では、左から右に向かう方向が搬送方向、上から下に向かう方向が幅方向であるとする。符号L1を付した線分は搬送方向の上流側に設けられた印刷部から吐出された黒インクによる印刷位置を模式的に示し、符号L2を付した線分は搬送方向の下流側に設けられた印刷部から吐出されたシアンインクによる印刷位置を模式的に示す。線分L1の印刷位置と線分L2の印刷位置は、理想的には同じであるとする。しかし、この例では、シアンの線分L2の印刷位置は、黒の線分L1の印刷位置から搬送方向にΔt1、幅方向にΔt2だけずれている。多くの印刷装置は、ずれ量Δt1、Δt2を減少させるために、印刷部ごとに印刷タイミングを制御するなどの処理を行う。
【0009】
しかしながら、従来の印刷装置では、複数の印刷部を用いたときの印刷位置のずれを十分に防止することができなかった。
【0010】
それ故に、本発明は、複数の印刷部を用いたときの印刷位置のずれを防止できる印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の局面は、印刷装置であって、
連続した印刷基材を所定の搬送方向に搬送する搬送部と、
第1印刷データに基づき前記印刷基材に対して第1インクを吐出する第1印刷部と、
前記第1印刷部よりも前記搬送方向の下流側に設けられ、第2印刷データに基づき前記印刷基材に対して第2インクを吐出する第2印刷部と、
前記第1印刷データを含む印刷データに基づき、前記第1印刷部による印刷の前から前記第2印刷部による印刷の前までに前記印刷基材に対して吐出されるインクの量を推定するインク量推定部と、
前記印刷基材のエッジ位置を検出するエッジセンサと、
少なくとも前記インク量推定部で推定されたインク量および前記エッジセンサにより検出される前記印刷基材のエッジ位置に基づき、前記第1印刷部による印刷位置と前記第2印刷部による印刷位置との間のずれ量として、前記印刷基材の搬送方向のずれ量である搬送方向ずれ量と前記印刷基材の幅方向のずれ量である幅方向ずれ量とを含むずれ量を求めるずれ量取得部と、
前記ずれ量に基づき、前記第2印刷部による印刷位置を制御する印刷制御部とを備える。
【0012】
本発明の第2の局面は、本発明の第1の局面において、
前記搬送部によって搬送中の前記印刷基材に加わる張力を検出する張力検出部をさらに備え、
前記ずれ量取得部は、少なくとも前記インク量と前記張力とに基づき前記ずれ量を求めることを特徴とする。
【0013】
本発明の第3の局面は、本発明の第1の局面において、
前記ずれ量取得部は、少なくとも前記インク量を入力として前記ずれ量を出力する機械学習により学習済みの演算器を含むことを特徴とする。
【0014】
本発明の第4の局面は、本発明の第1の局面において、
前記ずれ量取得部は、少なくとも前記インク量を入力とする機械学習により学習済みの演算器を含み、前記演算器の出力に基づき前記ずれ量を求めることを特徴とする。
【0015】
本発明の第5の局面は、本発明の第2の局面において、
前記ずれ量取得部は、少なくとも前記インク量と前記張力とを入力として前記ずれ量を出力する機械学習により学習済みの演算器を含むことを特徴とする。
【0016】
本発明の第6の局面は、本発明の第2の局面において、
前記ずれ量取得部は、少なくとも前記インク量と前記張力とを入力とする機械学習により学習済みの演算器を含み、前記演算器の出力に基づき前記ずれ量を求めることを特徴とする。
【0017】
本発明の第7の局面は、本発明の第2の局面において、
前記ずれ量との間に相関関係を有するデータを供給するデータ供給部をさらに備え、
前記ずれ量取得部は、前記インク量と前記張力と前記データとに基づき前記ずれ量を求めることを特徴とする。
【0018】
本発明の第8の局面は、本発明の第7の局面において、
前記ずれ量取得部は、前記インク量と前記張力と前記データとを入力として前記ずれ量を出力する機械学習により学習済みの演算器を含むことを特徴とする。
【0019】
本発明の第9の局面は、本発明の第7の局面において、
前記ずれ量取得部は、前記インク量と前記張力と前記データの一部とを入力とする機械学習により学習済みの演算器を含み、前記演算器の出力と前記データの残部とに基づき前記ずれ量を求めることを特徴とする。
【0020】
本発明の第10の局面は、本発明の第7~第9のいずれかの局面において、
前記データは、前記印刷基材の単位面積あたりの質量、前記印刷基材の搬送速度、前記印刷基材の周辺の温度、前記印刷基材の周辺の湿度、前記印刷基材のエッジ位置、前記印刷基材の面に垂直な方向の位置、前記第1印刷部と前記第2印刷部との間の前記搬送方向の距離、前記第2印刷部に含まれる印刷ヘッドと前記印刷基材との間の距離、および、前記インクの特性のうち1以上を含むことを特徴とする。
【0021】
本発明の第11の局面は、本発明の第3~第6、第8、および、第9のいずれかの局面において、
テストデータを記憶するテストデータ記憶部と、
前記テストデータを用いて前記印刷基材に印刷を行って得られたテスト印刷物を撮影する撮影部と、
前記撮影部で撮影された画像に基づき、前記テスト印刷物における前記ずれ量を測定するずれ量測定部とをさらに備え、
前記演算器は、少なくとも前記テストデータに基づき推定された前記インク量と前記ずれ量測定部で測定されたずれ量とを用いて機械学習により学習済みであることを特徴とする。
【0022】
本発明の第12の局面は、本発明の第1~第11のいずれかの局面において、
前記第2印刷部は、前記印刷基材の幅方向に並んだ複数の印刷ヘッドを含み、
前記インク量推定部は、前記印刷基材を前記複数の印刷ヘッドに対応づけて前記幅方向に分割して得られた複数の領域のそれぞれについて前記インク量を推定し、
前記ずれ量取得部は、前記複数の領域のそれぞれについて前記ずれ量を求め、
前記印刷制御部は、前記ずれ量に基づき、前記複数の印刷ヘッドによる印刷位置を個別に制御することを特徴とする。
【0023】
本発明の第13の局面は、本発明の第12の局面において、
前記印刷制御部は、前記搬送方向ずれ量に基づき、前記複数の印刷ヘッドの印刷タイミングを個別に制御することを特徴とする。
【0024】
本発明の第14の局面は、本発明の第12の局面において、
前記印刷制御部は、前記幅方向ずれ量に基づき、前記複数の印刷ヘッドによる前記幅方向の印刷位置を個別に制御することを特徴とする。
本発明の第15の局面は、本発明の第14の局面において、
前記複数の印刷ヘッドのそれぞれは、前記印刷基材の幅方向に並んだ複数のノズルを有し、
前記印刷制御部は、前記幅方向ずれ量に基づき、前記複数のノズルの中からインクを吐出するノズルを選択することにより、前記複数の印刷ヘッドによる前記幅方向の印刷位置を個別に制御することを特徴とする。
【0025】
本発明の第16の局面は、本発明の第1~第13のいずれかの局面において、
前記幅方向ずれ量に基づき、前記第2印刷データが表す画像の前記幅方向のサイズを変更する画像サイズ変更部をさらに備える。
【0026】
本発明の第17の局面は、本発明の第1~第16のいずれかの局面において、
前記第1インクは、1枚のカラー画像を構成する第1色成分画像を印刷するためのインクであり、
前記第2インクは、前記カラー画像を構成する第2色成分画像を印刷するためのインクであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
上記第1の局面によれば、第1印刷部による印刷の前から第2印刷部による印刷の前までに印刷基材に対して吐出されるインクの量を推定し、少なくとも推定されたインク量に基づき、第1印刷部による印刷位置と第2印刷部による印刷位置との間のずれ量を求め、求めたずれ量に基づき第2印刷部による印刷位置を制御することにより、第1印刷部による印刷位置と第2印刷部による印刷位置を揃え、複数の印刷部を用いたときの印刷位置のずれを防止することができる。
【0031】
上記第2の局面によれば、少なくとも推定したインク量と検出した張力とに基づきずれ量を求め、求めたずれ量に基づき第2印刷部による印刷位置を制御することにより、第1印刷部による印刷位置と第2印刷部による印刷位置を揃え、複数の印刷部を用いたときの印刷位置のずれを防止することができる。
【0032】
上記第3または第4の局面によれば、インク量とずれ量との間の関係を数式などを用いて表現することが困難な場合でも、機械学習により学習済みの演算器を用いて、インク量に基づきずれ量を高い精度で求めることができる。
【0033】
上記第5または第6の局面によれば、インク量および張力とずれ量との間の関係を数式などを用いて表現することが困難な場合でも、機械学習により学習済みの演算器を用いて、インク量と張力に基づきずれ量を高い精度で求めることができる。
【0034】
上記第7の局面によれば、推定したインク量、検出した張力、および、ずれ量との間に相関関係を有するデータに基づきずれ量を求め、求めたずれ量に基づき第2印刷部による印刷位置を制御することにより、第1印刷部による印刷位置と第2印刷部による印刷位置を揃え、複数の印刷部を用いたときの印刷位置のずれを防止することができる。
【0035】
上記第8または第9の局面によれば、インク量、張力、および、ずれ量との間に相関関係を有するデータとずれ量との間の関係を数式などを用いて表現することが困難な場合でも、機械学習により学習済みの演算器を用いて、インク量、張力、および、ずれ量との間に相関関係を有するデータに基づきずれ量を高い精度で求めることができる。
【0036】
上記第10の局面によれば、インク量と張力に加えて、印刷基材の単位面積あたりの質量、印刷基材の搬送速度、印刷基材の周辺の温度、印刷基材の周辺の湿度、印刷基材のエッジ位置、印刷基材の面に垂直な方向の位置、印刷部間の搬送方向の距離、第2印刷部に含まれる印刷ヘッドと印刷基材との間の距離、および、インクの特性などに基づきずれ量を求め、求めたずれ量に基づき第2印刷部による印刷位置を制御することにより、第1印刷部による印刷位置と第2印刷部による印刷位置を揃え、複数の印刷部を用いたときの印刷位置のずれを効果的に防止することができる。
【0037】
上記第11の局面によれば、テストデータ記憶部、撮影部、および、ずれ量測定部を用いて演算器の機械学習を行い、学習済みの演算器を用いて、インク量などに基づきずれ量を高い精度で求めることができる。
【0038】
上記第12の局面によれば、印刷基材を幅方向に分割して得られた複数の領域のそれぞれについてインク量を推定してずれ量を求め、求めたずれ量に基づき複数の印刷ヘッドによる印刷位置を個別に制御することにより、第1印刷部による印刷位置と第2印刷部による印刷位置を揃え、複数の印刷部を用いたときの印刷位置のずれを効果的に防止することができる。
【0039】
上記第13の局面によれば、求めた搬送方向のずれ量に基づき複数の印刷ヘッドの印刷タイミングを個別に制御することにより、複数の印刷部を用いたときの印刷位置の搬送方向のずれを容易に防止することができる。
【0040】
上記第14の局面によれば、求めた幅方向のずれ量に基づき複数の印刷ヘッドにおける幅方向の印刷位置を個別に制御することにより、複数の印刷部を用いたときの印刷位置の幅方向のずれを防止することができる。なお、上記第15の局面によれば、求めた幅方向ずれ量に基づき、各印刷ヘッドにおける複数のノズルの中からインクを吐出するノズルを選択することにより、複数の印刷ヘッドにおける幅方向の印刷位置が個別に制御される。
【0041】
上記第16の局面によれば、求めた幅方向のずれ量に基づき第2印刷データが表す画像の幅方向のサイズを制御することにより、第2印刷部が幅方向の印刷位置を制御する機能を有しない場合でも、複数の印刷部を用いたときの印刷位置の幅方向のずれを防止することができる。
【0042】
上記第17の局面によれば、複数の印刷部を有するカラー印刷装置において、複数の色の間の印刷位置のずれを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る印刷装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図1に示す印刷装置の一部として機能するコンピュータの構成を示すブロック図である。
【
図3】
図1に示す印刷装置の印刷部の構成を示す模式図である。
【
図4A】
図1に示す印刷装置における印刷前の状態を示す図である。
【
図4B】
図1に示す印刷装置における黒画像印刷後の状態を示す図である。
【
図4C】
図1に示す印刷装置におけるシアン画像印刷後の状態を示す図である。
【
図4D】
図1に示す印刷装置におけるマゼンタ画像印刷後の状態を示す図である。
【
図4E】
図1に示す印刷装置におけるイエロー画像印刷後の状態を示す図である。
【
図5】
図1に示す印刷装置のずれ量取得部の構成を示すブロック図である。
【
図6】
図1に示す印刷装置で使用されるテストデータの例を示す図である。
【
図7】
図6に示すテストデータに含まれる単位パターンの詳細を示す図である。
【
図8】変形例に係る印刷装置のずれ量取得部の構成を示すブロック図である。
【
図9】本発明の第2の実施形態に係る印刷装置の一部を示すブロック図である。
【
図10】第2の実施形態に係る印刷装置におけるエッジセンサの配置位置を示す図である。
【
図11】第2の実施形態に係る印刷装置のエッジセンサの構造を示す模式図である。
【
図12】第2の実施形態に係る印刷装置のずれ量取得部の構成を示すブロック図である。
【
図13】変形例に係る印刷装置のずれ量取得部の構成を示すブロック図である。
【
図14】本発明の第3の実施形態に係る印刷装置の構成を示すブロック図である。
【
図15】本発明の第4の実施形態に係る印刷装置の構成を示すブロック図である。
【
図16】従来のカラー印刷装置における印刷位置のずれを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る印刷装置の構成を示すブロック図である。
図1に示す印刷装置1は、複数のローラ11などを含む搬送部、張力検出部14、4個の印刷部21~24、印刷データ記憶部31、インク量推定部32、機械学習可能な演算器35を含むずれ量取得部33、および、印刷制御部34を備えている。印刷装置1は、演算器35に機械学習を行わせるために、テストデータ記憶部41、データ選択部42、撮影部43、ずれ量測定部44、および、機械学習制御部45をさらに備えている。印刷装置1は、連続した印刷用紙9を搬送部を用いて搬送し、搬送中の印刷用紙9に対して4個の印刷部21~24から互いに異なる4色のインクを順に吐出するインクジェット方式のカラー印刷装置である。
【0048】
印刷用紙9は、印刷基材の一種である。搬送部は、複数のローラ11、巻き出しローラ12、および、巻き取りローラ13を含んでいる。印刷前の印刷用紙9は、巻き出しローラ12に巻かれている。搬送部は、複数のローラ11を用いて、印刷用紙9を所定の方向(図面では左から右に向かう方向)に搬送する。印刷部21~24は、搬送部を用いて搬送中の印刷用紙9に対して特定の色のインクをそれぞれ吐出する。印刷後の印刷用紙9は、巻き取りローラ13に巻き取られる。以下、印刷用紙9の長手方向を搬送方向、印刷用紙9の短手方向を幅方向、印刷用紙9の面に垂直な方向を垂直方向という。
【0049】
印刷部21~24は、印刷用紙9の搬送方向に沿って、参照符号の昇順に設けられる。印刷部22は、印刷部21よりも搬送方向の下流側に設けられる。印刷部23は、印刷部21、22よりも搬送方向の下流側に設けられる。印刷部24は、印刷部21~23よりも搬送方向の下流側に設けられる。印刷制御部34は、印刷部21~24に対して、黒画像データDk、シアン画像データDc、マゼンタ画像データDm、および、イエロー画像データDyをそれぞれ出力する。
【0050】
印刷部21は、黒画像データDkに基づき、印刷用紙9に対して黒インクを吐出する。印刷部22は、シアン画像データDcに基づき、印刷用紙9に対してシアンインクを吐出する。印刷部23は、マゼンタ画像データDmに基づき、印刷用紙9に対してマゼンタインクを吐出する。印刷部24は、イエロー画像データDyに基づき、印刷用紙9に対してイエローインクを吐出する。このように印刷部21~24は、搬送部によって搬送中の印刷用紙9に対して、黒、シアン、マゼンタ、および、イエローのインクを順に吐出する。これにより、印刷用紙9上に黒画像、シアン画像、マゼンタ画像、および、イエロー画像が互いに重なるように順に形成され、カラー印刷が行われる。
【0051】
印刷データ記憶部31は、印刷に用いられる印刷データPDを記憶している。テストデータ記憶部41は、テスト印刷に用いられるテストデータTDを記憶している。印刷装置1の構成要素のうち、印刷データ記憶部31、インク量推定部32、ずれ量取得部33、印刷制御部34、テストデータ記憶部41、データ選択部42、ずれ量測定部44、および、機械学習制御部45は、典型的にはコンピュータを用いて構成される。
【0052】
図2は、印刷装置1の一部として機能するコンピュータの構成を示すブロック図である。
図2に示すコンピュータ100は、CPU101、メインメモリ102、記憶部103、入力部104、表示部105、および、通信部106を備えている。メインメモリ102には、例えば、DRAMが使用される。記憶部103には、例えば、ハードディスクが使用される。入力部104には、例えば、タッチパネルが使用される。表示部105には、例えば、液晶ディスプレイが使用される。通信部106には、例えば、有線通信または無線通信のインターフェイス回路が使用される。
【0053】
記憶部103は、印刷データPDとテストデータTDを記憶し、印刷データ記憶部31およびテストデータ記憶部41として機能する。また、記憶部103は、印刷装置1の制御プログラムを記憶する。テストデータTDと制御プログラムは、例えば、記憶部103に予め記憶されている。印刷データPDは、例えば、他のコンピュータから通信部106を用いて受信される。
【0054】
制御プログラムを実行するときには、制御プログラムと印刷データPD(またはテストデータTD)はメインメモリ102に複写転送される。CPU101は、メインメモリ102を作業用メモリとして利用して、メインメモリ102に記憶された制御プログラムを実行する。このときコンピュータ100は、インク量推定部32、ずれ量取得部33、印刷制御部34、データ選択部42、ずれ量測定部44、および、機械学習制御部45として機能する。なお、以上に述べたコンピュータ100の構成は一例に過ぎず、任意のコンピュータを用いて印刷装置1の一部を構成することができる。
【0055】
図3は、印刷部21~24の構成を示す模式図である。
図3には、上から見た印刷部21~24が記載されている。
図3に示すように、印刷部21~24は、それぞれ、複数の印刷ヘッド25を含んでいる。複数の印刷ヘッド25は、印刷用紙9の幅方向に沿って2列に千鳥状に配置されている。なお、複数の印刷ヘッド25を印刷用紙9の幅方向に沿って1列に配置してもよい。印刷部21~24に含まれる印刷ヘッド25の個数は同じである。印刷用紙9は、1個の印刷部に含まれる複数の印刷ヘッド25に対応づけて幅方向に複数の領域に分割される。以下、印刷部21~24はそれぞれ10個の印刷ヘッド25を含み、印刷用紙9は10個の印刷ヘッド25に対応づけて幅方向に10個の領域R1~R10に分割されるとする。
【0056】
上述したように、印刷データ記憶部31は印刷データPDを記憶し、テストデータ記憶部41はテストデータTDを記憶している。通常動作時には、データ選択部42は、印刷データPDとテストデータTDのうち印刷データPDを選択する。選択された印刷データPDは、インク量推定部32と印刷制御部34に供給される。
【0057】
印刷制御部34は、印刷部21~24に対して、印刷データPDに含まれる黒画像データDk、シアン画像データDc、マゼンタ画像データDm、および、イエロー画像データDyをそれぞれ出力する。印刷部21~24は、それぞれ、黒画像データDk、シアン画像データDc、マゼンタ画像データDm、および、イエロー画像データDyに基づき、搬送中の印刷用紙9に対して、黒、シアン、マゼンタ、および、イエローのインクを順に吐出する。これにより、印刷用紙9上に黒画像、シアン画像、マゼンタ画像、および、イエロー画像が互いに重なるように順に形成され、印刷データPDに基づくカラー印刷が行われる。
【0058】
インク量推定部32は、印刷データPDに含まれる黒画像データDk、シアン画像データDc、および、マゼンタ画像データDmに基づき、領域R1~R10のそれぞれについて、ある印刷部による印刷の前から別の印刷部による印刷の前までに印刷用紙9に対して吐出されるインクの量を推定する。
【0059】
より詳細には、インク量推定部32は、所定量の印刷(例えば、1ページの印刷)に必要な黒画像データDkに基づき、各領域について、印刷用紙9に対して吐出される黒インクの量を推定する。インク量推定部32は、黒画像データDkに含まれる複数の画素データに対応した黒インクの量の総和を求めることにより、黒インクの量を推定する。同様に、インク量推定部32は、所定量の印刷に必要なシアン画像データDcとマゼンタ画像データDmに基づき、各領域について、印刷用紙9に対して吐出されるシアンインクの量とマゼンタインクの量を推定する。
【0060】
インク量推定部32は、各領域について、推定した黒インクの量を、印刷部21による印刷の前から印刷部22による印刷の前までに印刷用紙9に対して吐出されるインクの量(以下、Kインク量という)とする。インク量推定部32は、各領域について、推定した黒インクの量とシアンインクの量の和を、印刷部21による印刷の前から印刷部23による印刷の前までに印刷用紙9に対して吐出されるインクの量(以下、KCインク量という)とする。インク量推定部32は、各領域について、推定した黒インクの量、シアンインクの量、および、マゼンタインクの量の和を、印刷部21による印刷の前から印刷部24による印刷の前までに印刷用紙9に対して吐出されるインクの量(以下、KCMインク量という)とする。インク量推定部32は、領域R1~R10のそれぞれについて推定したKインク量、KCインク量、および、KCMインク量をインク量Xpとして出力する。
【0061】
なお、インク量推定部32は、同様の方法で、印刷部22による印刷の前から印刷部23による印刷の前までに印刷用紙9に対して吐出されるインクの量、印刷部22による印刷の前から印刷部24による印刷の前までに印刷用紙9に対して吐出されるインクの量、および、印刷部23による印刷の前から印刷部24による印刷の前までに印刷用紙9に対して吐出されるインクの量を推定してもよい。インク量推定部32は、3色の画像データDk、Dc、Dmに基づき、領域R1~R10について、上記の方法よりも簡単な方法でインク量Xpを推定してもよい。
【0062】
図4A~
図4Eを参照して、インク量推定部32においてKインク量、KCインク量、および、KCMインク量を推定する理由を説明する。
図4Aは、印刷前の状態を示す図である。
図4B~
図4Eは、それぞれ、黒画像、シアン画像、マゼンタ画像、および、イエロー画像を印刷した後の状態を示す図である。
図4A~
図4Eには、上から見た印刷用紙9が模式的に記載されており、時間の経過と共にカラー印刷が行われる様子が記載されている。なお、印刷用紙9にインクが付着すると、印刷用紙9は搬送方向と幅方向に伸びるが、ここでは説明を容易にするために、印刷用紙9の搬送方向の伸びに着目する。
【0063】
図4Aに示すように、印刷部21、22間の搬送方向の距離をd1、印刷部22、23間の搬送方向の距離をd2、印刷部23、24間の
搬送方向の距離をd3とする。
図4Aに破線で示す領域Qの右端が印刷部21~24に到達する時刻をそれぞれt10、t20、t30、t40とし、領域Qの左端が印刷部21~24から離れる時刻をそれぞれt11、t21、t31、t41とする。
図4B~
図4Eには、それぞれ、時刻t11、t21、t31、t41における印刷用紙9の状態が記載されている。
【0064】
時刻t10から時刻t11までの期間において、印刷部21は印刷用紙9に対して黒インクを吐出する。印刷制御部34は、印刷部21における黒インクの吐出開始タイミングと吐出終了タイミングを制御する。時刻t11(
図4B)では、領域Qには黒画像Qkが印刷されている。
【0065】
次に、時刻t20から時刻t21までの期間において、印刷部22は印刷用紙9に対してシアンインクを吐出する。印刷制御部34は、印刷部22におけるシアンインクの吐出開始タイミングと吐出終了タイミングを制御する。時刻t21(
図4C)では、領域Qには黒画像とシアン画像を重ねた2色画像Qkcが印刷されている。
【0066】
印刷部21、22間の搬送方向の距離d1と印刷用紙9の搬送速度とは既知である。このため、シアン画像の印刷開始時刻t20、または、黒画像の印刷開始からシアン画像の印刷開始までの遅延時間(t20-t10)を制御することにより、シアン画像を黒画像と同じ位置に印刷できるはずである。しかしながら、シアン画像の印刷開始時刻t20では、印刷用紙9は、それまでに印刷用紙9に対して吐出された黒インクによって伸びている。時刻t20における印刷用紙9の伸び量は、印刷部21から吐出されたインクの量が多いほど大きい。このため、このインク量を考慮せずに印刷開始時刻t20または遅延時間(t20-t10)を制御すると、黒画像の印刷位置とシアン画像の印刷位置との間にずれが生じるおそれがある。
【0067】
そこで、印刷装置1は、2色目画像(シアン画像)の印刷開始時刻t20、または、1色目画像(黒画像)の印刷開始から2色目画像の印刷開始までの遅延時間(t20-t10)を求めるときに、1色目画像の印刷で用いられたインクの量(Kインク量)を用いる。これにより、後述するように、黒画像の印刷位置とシアン画像の印刷位置との間のずれを防止することができる。
【0068】
次に、時刻t30から時刻t31までの期間において、印刷部23は印刷用紙9に対してマゼンタインクを吐出する。印刷制御部34は、印刷部23におけるマゼンタインクの吐出開始タイミングと吐出終了タイミングを制御する。時刻t31(
図4D)では、領域Qには黒画像、シアン画像、および、マゼンタ画像を重ねた3色画像Qkcmが印刷されている。
【0069】
印刷部21、23間の搬送方向の距離(d1+d2)と印刷用紙9の搬送速度とは既知である。このため、マゼンタ画像の印刷開始時刻t30、または、黒画像の印刷開始からマゼンタ画像の印刷開始までの遅延時間(t30-t10)を制御することにより、マゼンタ画像を黒画像と同じ位置に印刷できるはずである。しかしながら、マゼンタ画像の印刷開始時刻t30では、印刷用紙9は、それまでに印刷用紙9に対して吐出された黒インクとシアンインクによって伸びている。時刻t30における印刷用紙9の伸び量は、印刷部21、22から吐出されたインクの総量が多いほど大きい。
【0070】
そこで、印刷装置1は、3色目画像(マゼンタ画像)の印刷開始時刻t30、または、1色目画像の印刷開始から3色目画像の印刷開始までの遅延時間(t30-t10)を求めるときに、1色目および2色目画像の印刷に用いられたインクの総量(KCインク量)を用いる。これにより、後述するように、黒画像の印刷位置とマゼンタ画像の印刷位置との間のずれを防止することができる。
【0071】
次に、時刻t40から時刻t41までの期間において、印刷部24は印刷用紙9に対してイエローインクを吐出する。印刷制御部34は、印刷部24におけるイエローインクの吐出開始タイミングと吐出終了タイミングを制御する。時刻t41(
図4E)では、領域Qには黒画像、シアン画像、マゼンタ画像、および、イエロー画像を重ねた4色画像Qkcmyが印刷されている。
【0072】
印刷部21、24間の搬送方向の距離(d1+d2+d3)と印刷用紙9の搬送速度とは既知である。このため、イエロー画像の印刷開始時刻t40、または、黒画像の印刷開始からイエロー画像の印刷開始までの遅延時間(t40-t10)を制御することにより、イエロー画像を黒画像と同じ位置に印刷できるはずである。しかしながら、イエロー画像の印刷開始時刻t40では、印刷用紙9は、それまでに印刷用紙9に対して吐出された黒インク、シアンインク、および、イエローインクによって伸びている。時刻t40における印刷用紙9の伸び量は、印刷部21~23から吐出されたインクの総量が多いほど大きい。
【0073】
そこで、印刷装置1は、4色目画像(イエロー画像)の印刷開始時刻t40、または、1色目画像の印刷開始から4色目画像の印刷開始までの遅延時間(t40-t10)を求めるときに、1色目~3色目画像の印刷に用いられたインクの総量(KCMインク量)を用いる。これにより、後述するように、黒画像の印刷位置とイエロー画像の印刷位置との間のずれを防止することができる。
【0074】
このように印刷装置1は、2色目以降の画像について、当該画像の印刷開始時刻、または、1色目画像の印刷開始から当該画像の印刷開始までの遅延時間を、当該画像よりも前に印刷された1以上の画像の印刷に用いられたインクの量を用いて求める。求めたインク量に基づき対応する印刷部を制御することにより、1色目画像の印刷位置と当該画像の印刷位置との間のずれを防止することができる。2色目以降のすべての色成分画像について上記の処理を行うことにより、1枚のカラー画像を構成する複数の色成分画像の間で印刷位置のずれを防止することができる。
【0075】
張力検出部14は、搬送部に含まれる、あるローラ11の軸に取り付けられる。張力検出部14は、搬送部によって搬送中の印刷用紙9に加わる張力Tを検出する。ずれ量取得部33には、インク量推定部32で推定されたインク量Xpと張力検出部14で検出された張力Tとが入力される。
【0076】
図5は、ずれ量取得部33の構成を示すブロック図である。
図5に示すように、ずれ量取得部33に入力されたインク量Xpと張力Tは、演算器35に入力される。より詳細には、演算器35には、張力Tと共に、領域R1~R10のそれぞれについて、Kインク量、KCインク量、および、KCMインク量が順に入力される。
【0077】
演算器35は、インク量と張力を入力として印刷位置のずれ量を出力するように、機械学習により学習済みである。演算器35は、インク量と張力を特徴量とし、印刷位置のずれ量を目的変数とした学習データを用いて機械学習により学習済みの学習装置である。インク量推定部32で求めたインク量Xp(Kインク量、KCインク量、および、KCMインク量のいずれか)と張力Tとを演算器35に入力したとき、演算器35はずれ量を出力する。
【0078】
より詳細には、領域R1に係るKインク量と張力Tとを演算器35に入力したとき、演算器35は領域R1における印刷部21の印刷位置と印刷部22の印刷位置との間のずれ量を出力する。領域R1に係るKCインク量と張力Tとを演算器35に入力したとき、演算器35は領域R1における印刷部21の印刷位置と印刷部23の印刷位置との間のずれ量を出力する。領域R1に係るKCMインク量と張力Tとを演算器35に入力したとき、演算器35は領域R1における印刷部21の印刷位置と印刷部24の印刷位置との間のずれ量を出力する。演算器35は、領域R2~R10に係るインク量について同様の処理を行う。演算器35から出力されるずれ量には、搬送方向のずれ量と幅方向のずれ量とが含まれる。ずれ量取得部33は、演算器35の出力をずれ量Spとして印刷制御部34に対して出力する。
【0079】
ずれ量取得部33は、演算器35を1個だけ含んでいてもよく、複数の領域に対応して複数の演算器35を含んでいてもよく、複数の色に対応して複数の演算器35を含んでいてもよく、複数の領域および複数の色に対応して複数の演算器35を含んでいてもよい。また、演算器35は、中間層を有するニューラルネットワークを含み、深層学習により学習済みであってもよい。
【0080】
印刷部21~24は、複数の印刷ヘッド25の印刷タイミング(インクの吐出タイミング)を個別に制御できるように構成されている。また、印刷部21~24は、複数の印刷ヘッド25による幅方向の印刷位置を個別に制御できるように構成されている。例えば、印刷ヘッド25は、与えられた制御信号に従い、幅方向に並んだ複数のノズルの中から使用するノズル(インクを吐出するノズル)を選択することにより、幅方向の印刷位置を制御できるように構成されている。
【0081】
印刷制御部34は、ずれ量取得部33で求めたずれ量Spに基づき、印刷部22~24による印刷位置を制御する。印刷制御部34は、ずれ量取得部33で求めたずれ量Spに含まれる搬送方向のずれ量に基づき、領域R1~R10のそれぞれについて、印刷部22~24に含まれる複数の印刷ヘッド25の印刷タイミングを個別に制御する。より詳細には、印刷制御部34は、印刷部21に含まれる複数の印刷ヘッド25の印刷タイミングを同じタイミングに制御する。印刷制御部34は、印刷部21による印刷位置と印刷部22による印刷位置との間の搬送方向のずれ量に基づき、各領域について、印刷部22に含まれる複数の印刷ヘッド25の印刷タイミングを個別に制御する。印刷制御部34は、印刷部21による印刷位置と印刷部23による印刷位置との間の搬送方向のずれ量に基づき、各領域について、印刷部23に含まれる複数の印刷ヘッド25の印刷タイミングを個別に制御する。印刷制御部34は、印刷部21による印刷位置と印刷部24による印刷位置との間の搬送方向のずれ量に基づき、各領域について、印刷部24に含まれる複数の印刷ヘッド25の印刷タイミングを個別に制御する。
【0082】
例えば、インク量推定部32で推定されたインク量が少ないときには、ずれ量取得部33で求められる搬送方向のずれ量は小さくなる。この場合、印刷制御部34は、搬送方向の下流側にある印刷部に含まれる印刷ヘッド25の印刷タイミングを早くする。一方、インク量推定部32で推定されたインク量が多いときには、ずれ量取得部33で求められる搬送方向のずれ量は大きくなる。この場合、印刷制御部34は、搬送方向の下流側にある印刷部に含まれる印刷ヘッド25の印刷タイミングを遅くする。これにより、搬送方向の上流側にある印刷部と搬送方向の下流側にある印刷部との間で印刷位置の搬送方向のずれを防止することができる。
【0083】
また、印刷制御部34は、ずれ量取得部33で求めたずれ量Spに含まれる幅方向のずれ量に基づき、領域R1~R10のそれぞれについて、印刷部22~24に含まれる複数の印刷ヘッド25による幅方向の印刷位置を個別に制御する。より詳細には、印刷制御部34は、印刷部21に含まれる複数の印刷ヘッド25の幅方向の印刷位置を同じ位置に制御する。印刷制御部34は、印刷部21による印刷位置と印刷部22による印刷位置との間の幅方向のずれ量に基づき、各領域について、印刷部22に含まれる複数の印刷ヘッド25の幅方向の印刷位置を個別に制御する。印刷制御部34は、印刷部21による印刷位置と印刷部23による印刷位置との間の幅方向のずれ量に基づき、各領域について、印刷部23に含まれる複数の印刷ヘッド25の幅方向の印刷位置を個別に制御する。印刷制御部34は、印刷部21による印刷位置と印刷部24による印刷位置との間の幅方向のずれ量に基づき、各領域について、印刷部24に含まれる複数の印刷ヘッド25の幅方向の印刷位置を個別に制御する。これにより、搬送方向の上流側にある印刷部と搬送方向の下流側にある印刷部との間で印刷位置の幅方向のずれを防止し、複数の色の間で印刷位置のずれを防止することができる。
【0084】
演算器35の機械学習は、テストデータ記憶部41、撮影部43、ずれ量測定部44、および、機械学習制御部45を用いて行われる。演算器35の機械学習は、例えば、印刷装置1を設置したときや、印刷用紙9を交換するときなどに行われる。演算器35が機械学習を行うときには、データ選択部42は、印刷データPDとテストデータTDのうちテストデータTDを選択する。選択されたテストデータTDは、インク量推定部32と印刷制御部34に供給される。
【0085】
インク量推定部32は、テストデータTDが供給されたときに、印刷データPDが供給されたときと同様に動作する。インク量推定部32は、テストデータTDに含まれる黒画像データDk、シアン画像データDc、および、マゼンタ画像データDmに基づき、領域R1~R10のそれぞれについて、ある印刷部による印刷の前から別の印刷部による印刷の前までに印刷用紙9に対して吐出されるインク量を推定する。推定されたインク量Xtは、機械学習制御部45に対して出力される。
【0086】
印刷制御部34は、印刷部21~24に対して、テストデータTDに含まれる黒画像データDk、シアン画像データDc、マゼンタ画像データDm、および、イエロー画像データDyをそれぞれ出力する。印刷部21~24は、それぞれ、黒画像データDk、シアン画像データDc、マゼンタ画像データDm、および、イエロー画像データDyに基づき、搬送中の印刷用紙9に対して、黒、シアン、マゼンタ、および、イエローのインクを順に吐出する。これにより、テストデータTDに基づくテスト印刷が行われ、テスト印刷物が得られる。
【0087】
撮影部43は、印刷部21~24よりも下流側に設けられ、テスト印刷物(テストデータTDが印刷された印刷用紙9)を撮影する。ずれ量測定部44は、撮影部43で撮影された画像(テスト印刷物を撮影して得られた画像)に基づき、テスト印刷物における、ある印刷部による印刷位置と別の印刷部による印刷位置との間のずれ量Stを測定する。測定されたずれ量Stは、機械学習制御部45に対して出力される。
【0088】
張力検出部14は、テストデータTDを印刷するときに、搬送部によって搬送中の印刷用紙9に加わる張力Tを検出する。機械学習制御部45には、インク量推定部32で推定されたインク量Xt、張力検出部14で検出された張力T、および、ずれ量測定部44で測定されたずれ量Stが入力される。機械学習制御部45は、これらのデータを教師データとして演算器35に与えて、演算器35に機械学習を行わせる。機械学習制御部45は、インク量Xtと張力Tを特徴量とし、ずれ量Stを目的変数とした学習データを用いて、演算器35に機械学習を行わせる。これにより、インク量Xpと張力Tを入力としてずれ量Spを出力する機械学習により学習済みの演算器35が得られる。
【0089】
図6は、印刷装置1で使用されるテストデータの例を示す図である。
図6において、点模様を付した長方形は、1個の領域に対応した単位パターン200を示す。
図6に示すテストパターンは、Kパターン、KCパターン、KCMパターン、KCMYパターンなど、全部で15個のパターンを含んでいる。15個のパターンは、いずれも、30個の単位パターン200を含んでいる。
【0090】
図7は、単位パターン200の詳細を示す図である。
図7に示す単位パターン200は、単一色領域201と2個の検出パターン202、203とを含んでいる。単一色領域201は、単位パターン200ごとに定められた色を有する。検出パターン202は、印刷用紙9の搬送方向に所定の距離だけ離れた黒、シアン、マゼンタ、および、イエローの線分を含んでいる。検出パターン203は、印刷用紙9の幅方向に所定の距離だけ離れた黒、シアン、マゼンタ、および、イエローの線分を含んでいる。
【0091】
Kパターン内の単位パターン200の単一色領域201は、黒の濃度が40%の領域である。KCパターン内の単位パターン200の単一色領域201は、黒とシアンの濃度が40%の領域である。KCMパターン内の単位パターン200の単一色領域201は、黒とシアンとマゼンタの濃度が40%の領域である。KCMYパターン内の単位パターン200の単一色領域201は、黒とシアンとマゼンタとイエローの濃度が40%である領域である。他のパターンについても、これと同様である。
【0092】
撮影部43は、
図6に示すテストパターンが印刷されたテスト印刷物を撮影する。ずれ量測定部44は、テスト印刷物を撮影して得られた画像に基づき、テスト印刷物における、ある印刷部による印刷位置と別の
印刷部による印刷位置との間のずれ量Stを測定し、機械学習制御部45に対して出力する。演算器35の機械学習は、テスト印刷物について測定されたずれ量Stと張力検出部14で検出された張力Tとを用いて行われる。したがって、インク量Xpおよび張力Tとずれ量Spとの間の関係を数式などを用いて表現することが困難な場合でも、機械学習により学習済みの演算器35を用いて、インク量Xpと張力Tに基づきずれ量Spを高い精度で求めることができる。
【0093】
なお、印刷装置1は、
図6に示すテストデータ以外の任意のテストデータを使用してもよい。テストデータの数が多いほど、演算器35の学習時間は長くなるが、演算器35を用いて求められるずれ量Spの精度は高くなる。テストデータの数は、演算器35を用いて求められるずれ量Spの精度が所定レベルよりも高くなるように決定される。
【0094】
印刷装置1では、インク量推定部32は、印刷部21による印刷の前から印刷部22による印刷の前までに印刷用紙9に対して吐出されるインクの量(Kインク量)を推定する。ずれ量取得部33は、推定されたKインク量と張力検出部14で検出された張力Tに基づき、印刷部21による印刷位置と印刷部22による印刷位置との間のずれ量Spを求める。印刷制御部34は、求めたずれ量Spに基づき印刷部22による印刷位置を制御する。また、インク量推定部32は、印刷部21による印刷の前から印刷部23による印刷の前までに印刷用紙9に対して吐出されるインクの量(KCインク量)を推定する。ずれ量取得部33は、推定されたKCインク量と張力Tに基づき、印刷部21による印刷位置と印刷部23による印刷位置との間のずれ量Spを求める。印刷制御部34は、求めたずれ量Spに基づき印刷部23による印刷位置を制御する。さらに、インク量推定部32は、印刷部21による印刷の前から印刷部24による印刷の前までに印刷用紙9に対して吐出されるインクの量(KCMインク量)を推定する。ずれ量取得部33は、推定されたKCMインク量と張力Tに基づき、印刷部21による印刷位置と印刷部24による印刷位置との間のずれ量Spを求める。印刷制御部34は、求めたずれ量Spに基づき印刷部24による印刷位置を制御する。したがって、印刷装置1によれば、印刷部21による印刷位置と印刷部22~24による印刷位置を揃え、複数の印刷部21~24を用いたときの印刷位置のずれを防止することができる。
【0095】
ずれ量取得部33は、インク量推定部32で推定したインク量Xpと張力検出部14で検出した張力Tを入力として印刷位置のずれ量Spを出力するように、機械学習により学習済みの演算器35を含んでいる。したがって、インク量Xpおよび張力Tとずれ量Spとの間の関係を数式などを用いて表現することが困難な場合でも、機械学習により学習済みの演算器35を用いて、インク量Xpに基づきずれ量Spを高い精度で求めることができる。
【0096】
印刷部21~24は、印刷用紙9の幅方向に並んだ10個の印刷ヘッド25を含んでいる。インク量推定部32は、印刷用紙9を複数の印刷ヘッド25に対応づけて幅方向に分割して得られた10個の領域R1~R10のそれぞれについてインク量Xpを推定する。ずれ量取得部33は、領域R1~R10のそれぞれについてずれ量Spを求める。印刷制御部34は、ずれ量Spに基づき、10個の印刷ヘッド25による印刷位置を個別に制御する。これにより、搬送方向の上流側にある印刷部による印刷位置と搬送方向の下流側にある印刷部による印刷位置を揃え、複数の印刷部21~24を用いたときの印刷位置のずれを効果的に防止することができる。
【0097】
第1の実施形態の変形例として、以下に示す印刷装置を構成することができる。変形例に係る印刷装置では、ずれ量取得部33は、
図8に示す構成を有する。
図8に示すずれ量取得部33は、演算器35とずれ量計算部36を含んでいる。この場合、演算器35には、ずれ量取得部33に入力されたインク量Xpだけが入力される。演算器35は、インク量Xpを入力として印刷位置の仮のずれ量を出力するように、機械学習により学習済みである。ずれ量計算部36は、演算器35の出力と張力検出部14で検出された張力Tとに基づきずれ量Spを求める。ずれ量計算部36は、演算器35の出力と張力Tとに基づき、計算を行う方法やテーブルを引く方法などを用いてずれ量Spを求める。変形例に係る印刷装置でも、第1の実施形態に係る印刷装置1と同様の効果が得られる。
【0098】
以下、印刷部21~24のうち搬送方向の上流側に設けられた印刷部を第1印刷部、搬送方向の下流側に設けられた印刷部を第2印刷部という。また、第1印刷部に供給される印刷データを第1印刷データ、第2印刷部に供給される印刷データを第2印刷データ、第1印刷部から吐出されるインクを第1インク、第2印刷部から吐出されるインクを第2インクという。
【0099】
以上に示すように、本実施形態に係る印刷装置1は、連続した印刷基材(印刷用紙9)を所定の搬送方向に搬送する搬送部(複数のローラ11など)と、第1印刷データに基づき印刷基材に対して第1インクを吐出する第1印刷部と、第1印刷部よりも搬送方向の下流側に設けられ、第2印刷データに基づき印刷基材に対して第2インクを吐出する第2印刷部と、第1印刷データを含む印刷データ(画像データDk、Dc、Dmを含む印刷データ)に基づき、第1印刷部による印刷の前から第2印刷部による印刷の前までに印刷基材に対して吐出されるインクの量を推定するインク量推定部32と、少なくともインク量推定部32で推定されたインク量Xpに基づき、第1印刷部による印刷位置と第2印刷部による印刷位置との間のずれ量Spを求めるずれ量取得部33と、ずれ量Spに基づき、第2印刷部による印刷位置を制御する印刷制御部34とを備えている。
【0100】
このように印刷装置1は、第1印刷部による印刷の前から第2印刷部による印刷の前までに印刷基材に対して吐出されるインクの量を推定し、推定されたインク量Xpに基づき、第1印刷部による印刷位置と第2印刷部による印刷位置との間のずれ量Spを求め、求めたずれ量Spに基づき第2印刷部による印刷位置を制御する。したがって、本実施形態に係る印刷装置1によれば、第1印刷部による印刷位置と第2印刷部による印刷位置を揃え、複数の印刷部21~24を用いたときの印刷位置のずれを防止することができる。
【0101】
印刷装置1は、搬送部によって搬送中の印刷基材に加わる張力Tを検出する張力検出部14を備えている。ずれ量取得部33は、少なくともインク量Xpと張力Tとに基づきずれ量Spを求める。したがって、少なくともインク量Xpと張力Tとに基づき求めたずれ量Spに基づき、第1印刷部による印刷位置と第2印刷部による印刷位置を揃え、複数の印刷部21~24を用いたときの印刷位置のずれを防止することができる。
【0102】
ずれ量取得部33は、少なくともインク量Xpを入力としてずれ量Spを出力する機械学習により学習済みの演算器35を含んでいる(
図5、
図8)。ずれ量取得部33は、少なくともインク量Xpを入力とする機械学習により学習済みの演算器35を含み、演算器35の出力に基づきずれ量Spを求めてもよい(
図8)。したがって、インク量Xpとずれ量Spとの間の関係を数式などを用いて表現することが困難な場合でも、機械学習により学習済みの演算器35を用いて、インク量Xpに基づきずれ量Spを高い精度で求めることができる。また、ずれ量取得部33は、少なくともインク量Xpと張力Tとを入力としてずれ量Spを出力する機械学習により学習済みの演算器35を含んでいる(
図5)。したがって、インク量Xpおよび張力Tとずれ量Spとの間の関係を数式などを用いて表現することが困難な場合でも、機械学習により学習済みの演算器35を用いて、インク量Xpと張力Tに基づきずれ量Spを高い精度で求めることができる。
【0103】
印刷装置1は、テストデータTDを記憶するテストデータ記憶部41と、テストデータTDを用いて印刷基材に印刷を行って得られたテスト印刷物を撮影する撮影部43と、撮影部43で撮影された画像に基づき、テスト印刷物におけるずれ量Stを測定するずれ量測定部44とを備えている。ずれ量取得部33に含まれる演算器35は、少なくともテストデータTDに基づき推定されたインク量Xtとずれ量測定部44で測定されたずれ量Stとを用いて機械学習により学習済みである。したがって、テストデータ記憶部41、撮影部43、および、ずれ量測定部44を用いて演算器35の機械学習を行い、学習済みの演算器35を用いて、インク量Xpなどに基づきずれ量Spを高い精度で求めることができる。
【0104】
第2印刷部は、印刷基材の幅方向に並んだ複数の印刷ヘッド25を含み、インク量推定部32は、印刷基材を複数の印刷ヘッド25に対応づけて幅方向に分割して得られた複数の領域(領域R1~R10)のそれぞれについてインク量Xpを推定し、ずれ量取得部33は、複数の領域のそれぞれについてずれ量Spを求め、印刷制御部34は、ずれ量Spに基づき、複数の印刷ヘッド25による印刷位置を個別に制御する。これにより、第1印刷部による印刷位置と第2印刷部による印刷位置を揃え、複数の印刷部21~24を用いたときの印刷位置のずれを効果的に防止することができる。
【0105】
印刷制御部34は、ずれ量Spに含まれる搬送方向のずれ量に基づき、複数の印刷ヘッド25の印刷タイミングを個別に制御する。これにより、複数の印刷部21~24を用いたときの印刷位置の搬送方向のずれを容易に防止することができる。印刷制御部34は、ずれ量Spに含まれる幅方向のずれ量に基づき、複数の印刷ヘッド25による幅方向の印刷位置を個別に制御する。これにより、複数の印刷部21~24を用いたときの印刷位置の幅方向のずれを防止することができる。第1インクは1枚のカラー画像を構成する第1色成分画像を印刷するためのインクであり、第2インクは当該カラー画像を構成する第2色成分画像を印刷するためのインクである。したがって、複数の印刷部21~24を有するカラー印刷装置において、複数の色の間の印刷位置のずれを防止することができる。
【0106】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る印刷装置は、第1の実施形態に係る印刷装置に対してデータ供給部を追加し、ずれ量取得部の構成を変更したものである。以下、第1の実施形態との相違点を説明する。
【0107】
図9は、本実施形態に係る印刷装置の一部を示すブロック図である。
図9には、データ供給部50とずれ量取得部57が記載されている。データ供給部50は、パラメータ記憶部51、速度センサ52、温度センサ53、湿度センサ54、エッジセンサ55、および、垂直位置センサ56を含んでいる。ずれ量取得部57は、機械学習可能な演算器58を含んでいる。
【0108】
パラメータ記憶部51は、印刷用紙9の単位面積あたりの質量、印刷部21~24間の搬送方向の距離、印刷ヘッド25と印刷用紙9との間の距離、および、印刷部21~24から吐出されるインクの特性を記憶している。速度センサ52は、搬送部によって搬送中の印刷用紙9の搬送速度を検出する。温度センサ53は、印刷用紙9の周辺の温度を検出する。湿度センサ54は、印刷用紙9の周辺の湿度を検出する。エッジセンサ55は、搬送部によって搬送中の印刷用紙9のエッジの位置を検出する。垂直位置センサ56は、搬送部によって搬送中の印刷用紙9の垂直方向の位置(印刷用紙9の面に垂直な方向の位置)を検出する。パラメータ記憶部51に記憶された値、並びに、速度センサ52、温度センサ53、湿度センサ54、エッジセンサ55、および、垂直位置センサ56の出力は、ずれ量取得部57に入力される。
【0109】
図10は、エッジセンサ55の配置位置を示す図である。
図10に示すように、本実施形態に係る印刷装置は、2個のエッジセンサ55を備えている。一方のエッジセンサ55は、印刷部21よりも搬送方向の上流側のエッジの近傍に設けられ、印刷部21よりも搬送方向の上流側におけるエッジ位置を検出する。他方のエッジセンサ55は、印刷部24よりも搬送方向の下流側のエッジの近傍に設けられ、印刷部24よりも搬送方向の下流側におけるエッジ位置を検出する。
【0110】
図11は、エッジセンサ55の構造を示す模式図である。
図11に示すように、エッジセンサ55は、発光部81と複数の受光部82を含んでいる。発光部81は、印刷用紙9の幅方向に並んだ複数の位置から、印刷用紙9の垂直方向(図面では上から下に向かう方向)に光を出射する。複数の受光部82は、発光部81と対向するように印刷用紙9の幅方向に並べて配置され、発光部81から出射された光を受光する。印刷用紙9のエッジ部分は、発光部81と複数の受光部82の間に挟まれる。印刷用紙9が存在しない位置に配置された受光部82は、発光部81から出射された光を受光する。印刷用紙9が存在する位置に配置された受光部82は、発光部81から出射された光を受光しない。したがって、複数の受光部82の出力に基づき、印刷用紙9のエッジ位置を検出することができる。
【0111】
図12は、ずれ量取得部57の構成を示すブロック図である。
図12に示すように、ずれ量取得部57に入力されたインク量Xp、張力T、および、データ供給部50から供給されたデータは、演算器58に入力される。データ供給部50から供給されたデータには、印刷用紙9の単位面積あたりの質量、印刷用紙9の搬送速度、印刷用紙9の周辺の温度、印刷用紙9の周辺の湿度、印刷用紙9のエッジの位置、印刷用紙9の垂直方向の位置、印刷部21~24間の搬送方向の距離、印刷ヘッド25と印刷用紙9との間の距離、および、印刷部21~24から吐出されるインクの特性が含まれる。これらのデータは、いずれも、印刷位置のずれ量との間に相関関係を有する。
【0112】
データ供給部50は、ずれ量取得部57に対して、上記のデータのうち一部を供給してもよい。データ供給部50から供給されるデータは、印刷用紙9の単位面積あたりの質量、印刷用紙9の搬送速度、印刷用紙9の周辺の温度、印刷用紙9の周辺の湿度、印刷用紙9のエッジの位置、印刷用紙9の垂直方向の位置、印刷部21~24間の搬送方向の距離、印刷ヘッド25と印刷用紙9との間の距離、および、印刷部21~24から吐出されるインクの特性のうち1以上を含んでいればよい。
【0113】
演算器58は、インク量Xp、張力T、および、データ供給部50から供給されたデータを入力として印刷位置のずれ量を出力するように、機械学習により学習済みである。第1の実施形態と同様に、インク量推定部32で推定されたインク量Xp(Kインク量、KCインク量、および、KCMインク量のいずれか)と張力Tとを演算器58に入力したとき、演算器58はずれ量を出力する。ずれ量取得部57は、演算器58の出力をずれ量Spとして印刷制御部34に対して出力する。
【0114】
本実施形態に係る印刷装置では、ずれ量取得部57は、インク量推定部32で推定されたインク量Xp、張力検出部14で検出された張力T、および、データ供給部50から供給されたデータに基づき、第1印刷部(搬送方向の上流側にある印刷部)による印刷位置と第2印刷部(搬送方向の下流側にある印刷部)による印刷位置との間のずれ量Spを求める。本実施形態に係る印刷装置によれば、第1の実施形態と同様に、第1印刷部と第2印刷部との間で印刷位置のずれを防止し、複数の色の間で印刷位置のずれを防止することができる。
【0115】
第2の実施形態の変形例として、以下に示す印刷装置を構成することができる。変形例に係る印刷装置では、ずれ量取得部57は、
図13に示す構成を有する。
図13に示すずれ量取得部57は、演算器58とずれ量計算部59を含んでいる。この場合、演算器58には、ずれ量取得部
57に入力されたインク量Xp、張力T、および、データ供給部50から供給されたデータの一部(ここでは、印刷用紙9の単位面積あたりの質量、印刷部21~24間の搬送方向の距離、印刷ヘッド25と印刷用紙9との間の距離、印刷部21~24から吐出されるインクの特性、および、印刷用紙9の搬送速度)が入力される。演算器
58は、インク量Xp、張力T、および、データ供給部50から供給されたデータの一部を入力として印刷位置の仮のずれ量を出力するように、機械学習により学習済みである。ずれ量計算部59は、演算器58の出力とデータ供給部50から供給されたデータの残部(印刷用紙9の周辺の温度、印刷用紙9の周辺の湿度、印刷用紙9のエッジの位置、および、印刷用紙9の垂直方向の位置)とに基づきずれ量Spを求める。ずれ量計算部59は、演算器58の出力とデータ供給部50から供給されたデータの残部とに基づき、計算を行う方法やテーブルを引く方法などを用いてずれ量Spを求める。変形例に係る印刷装置でも、第2の実施形態に係る印刷装置と同様の効果が得られる。
【0116】
データ供給部50から供給されたデータを演算器58とずれ量計算部59に分けて入力するときに、供給されたデータを
図13に示す方法以外の方法で分けてもよい。一般に、ずれ量Spとの間に相関関係を有するn個のデータがデータ供給部50から供給されたときには、n個のデータのうち任意のk個(kは1以上n未満の整数)のデータを演算器58に入力し、残り(n-k)個のデータをずれ量計算部59に入力すればよい。
【0117】
以上に示すように、本実施形態に係る印刷装置は、ずれ量Spとの間に相関関係を有するデータを供給するデータ供給部50を備えている。ずれ量取得部57は、インク量Xp、張力T、および、データ供給部50から供給されたデータに基づきずれ量Spを求める。このようにインク量推定部32で推定したインク量Xp、張力検出部14で検出した張力T、および、ずれ量Spとの間に相関関係を有するデータに基づきずれ量Spを求め、求めたずれ量に基づき第2印刷部による印刷位置を制御することにより、第1印刷部による印刷位置と第2印刷部による印刷位置を揃え、複数の印刷部21~24を用いたときの印刷位置のずれを防止することができる。
【0118】
ずれ量取得部57は、インク量Xpと張力Tとデータ供給部50から供給されるデータとを入力としてずれ量Spを出力する機械学習により学習済みの演算器58を含んでいる(
図12)。ずれ量取得部57は、インク量Xpと張力Tとデータ供給部50から供給されるデータの一部とを入力とする機械学習により学習済みの演算器58を含み、演算器58の出力とデータ供給部50から供給されるデータの残部とに基づきずれ量Spを求めてもよい(
図13)。したがって、インク量Xp、張力T、および、ずれ量Spとの間に相関関係を有するデータとずれ量Spの間の関係を数式などを用いて表現することが困難な場合でも、機械学習により学習済みの演算器58を用いて、インク量Xp、張力T、および、ずれ量Spとの間に相関関係を有するデータに基づきずれ量Spを高い精度で求めることができる。ずれ量取得部57は、少なくともインク量Xpと張力Tとを入力とする機械学習により学習済みの演算器58を含み、演算器58の出力に基づきずれ量Spを求める(
図13)。したがって、インク量Xpおよび張力Tとずれ量Spの間の関係を数式などを用いて表現することが困難な場合でも、機械学習により学習済みの演算器58を用いて、インク量Xpと張力Tに基づきずれ量Spを高い精度で求めることができる。
【0119】
データ供給部50から供給されるデータは、印刷基材(印刷用紙9)の単位面積あたりの質量、印刷基材の搬送速度、印刷基材の周辺の温度、印刷基材の周辺の湿度、印刷基材のエッジ位置、印刷基材の面に垂直な方向の位置、第1印刷部と第2印刷部との間の搬送方向の距離、第2印刷部に含まれる印刷ヘッド25と印刷基材との間の距離、および、インクの特性のうち1以上を含んでいる。このようにインク量Xpと張力Tに加えて、上記データのうち1以上に基づきずれ量を求め、求めたずれ量に基づき第2印刷部(搬送方向の下流側にある印刷部)による印刷位置を制御することにより、第1印刷部(搬送方向の上流側にある印刷部)による印刷位置と第2印刷部による印刷位置を揃え、複数の印刷部21~24を用いたときの印刷位置のずれを効果的に防止することができる。
【0120】
(第3の実施形態)
図14は、本発明の第3の実施形態に係る印刷装置の構成を示すブロック図である。
図14に示す印刷装置3は、第1の実施形態に係る印刷装置1に画像サイズ変更部61を追加し、印刷制御部34を印刷制御部62に置換したものである。本実施形態の構成要素のうち第1の実施形態と同じ要素については、同じ参照符号を付して説明を省略する。
【0121】
データ選択部42で選択された印刷データPDは、インク量推定部32と画像サイズ変更部61に供給される。インク量推定部32とずれ量取得部33は、第1の実施形態と同様に動作する。ずれ量取得部33は、求めたずれ量Spを印刷制御部34と画像サイズ変更部61に対して出力する。
【0122】
画像サイズ変更部61は、ずれ量取得部33で求めたずれ量Spに含まれる幅方向のずれ量に基づき、領域R1~R10のそれぞれについて、印刷部22~24に供給される画像データが表す画像の幅方向のサイズを変更する。より詳細には、画像サイズ変更部61は、印刷部21による印刷位置と印刷部22による印刷位置との間の幅方向のずれ量に基づき、各領域について、印刷部22に供給されるシアン画像データDcが表すシアン画像の幅方向のサイズを変更する。画像サイズ変更部61は、印刷部21による印刷位置と印刷部23による印刷位置との間の幅方向のずれ量に基づき、各領域について、印刷部23に供給されるマゼンタ画像データDmが表すマゼンタ画像の幅方向のサイズを変更する。画像サイズ変更部61は、印刷部21による印刷位置と印刷部24による印刷位置との間の幅方向のずれ量に基づき、各領域について、印刷部24に供給されるイエロー画像データDyが表すイエロー画像の幅方向のサイズを変更する。
【0123】
印刷制御部62は、第1の実施形態に係る印刷制御部34から、幅方向のずれ量に基づき幅方向の印刷位置を制御する機能を削除したものである。印刷制御部62は、印刷制御部34と同様に、ずれ量取得部33で求めたずれ量Spに含まれる搬送方向のずれ量に基づき、領域R1~R10のそれぞれについて、印刷部22~24に含まれる複数の印刷ヘッド25の印刷タイミングを個別に制御する。一方、印刷制御部34とは異なり、印刷制御部62は、ずれ量取得部33で求めたずれ量Spに含まれる幅方向のずれ量に基づき、領域R1~R10のそれぞれについて、印刷部22~24に含まれる複数の印刷ヘッド25による幅方向の印刷位置を個別に制御する処理を行わない。
【0124】
印刷装置3では、印刷制御部62は、幅方向のずれ量に基づき幅方向の印刷位置を制御する処理を行わない。これに代えて、画像サイズ変更部61は、幅方向のずれ量に基づき、各領域について、印刷部22~24に供給される画像データが表す画像の幅方向のサイズを変更する。印刷装置3によれば、搬送方向の上流側にある印刷部と搬送方向の下流側にある印刷部との間で印刷位置の幅方向のずれを防止し、複数の色の間で印刷位置のずれを防止することができる。
【0125】
以上に示すように、本実施形態に係る印刷装置3は、ずれ量取得部33で求めたずれ量Spに含まれる印刷基材(印刷用紙9)の幅方向のずれ量に基づき、第2印刷部(搬送方向の下流側にある印刷部)に供給される第2印刷データが表す画像の幅方向のサイズを変更する画像サイズ変更部61を備えている。したがって、第2印刷部が幅方向の印刷位置を制御する機能を有しない場合でも、複数の印刷部21~24を用いたときの印刷位置の幅方向のずれを防止することができる。
【0126】
(第4の実施形態)
図15は、本発明の第4の実施形態に係る印刷装置の構成を示すブロック図である。
図15に示す印刷装置4は、第1の実施形態に係る印刷装置1において、ずれ量取得部33とずれ量測定部44を伸び量取得部71と伸び量測定部73にそれぞれ置換したものである。本実施形態の構成要素のうち第1の実施形態と同じ要素については、同じ参照符号を付して説明を省略する。
【0127】
伸び量取得部71には、インク量推定部32で推定されたインク量Xpと張力検出部14で検出された張力Tとが入力される。伸び量取得部71は、機械学習可能な演算器72を含み、ずれ量取得部33と同様の構成を有する(
図5および
図8を参照)。
【0128】
伸び量取得部71が
図5と同様の構成を有する場合、演算器72は、インク量と張力を入力として印刷用紙9の伸び量を出力するように、機械学習により学習済みである。言い換えると、演算器72は、インク量と張力を特徴量とし、印刷用紙9の伸び量を目的変数とした学習データを用いて機械学習により学習済みである。この場合、伸び量取得部71は、演算器72の出力を伸び量Epとして出力する。
【0129】
伸び量取得部71が
図8と同様の構成を有する場合、演算器72は、インク量を入力として印刷用紙9の伸び量を出力するように、機械学習により学習済みである。演算器72は、インク量を特徴量とし、
印刷用紙9の伸び量を目的変数とした学習データを用いて機械学習により学習済みの学習装置である。この場合、伸び量取得部71は、演算器72の出力と張力Tとに基づき伸び量Epを求める。
【0130】
伸び量取得部71は、演算器72を用いて求めた伸び量Epを印刷制御部34に対して出力する。印刷制御部34は、第1の実施形態と同様に、伸び量取得部71で求めた伸び量Epに基づき、印刷部22~24による印刷位置を制御する。伸び量測定部73は、撮影部43で撮影された画像に基づき、テストデータTDが印刷された印刷用紙9の伸び量Etを測定する。測定された伸び量Etは、機械学習制御部45に対して出力される。
【0131】
本実施形態に係る印刷装置4によれば、第1の実施形態と同様に、搬送方向の上流側にある印刷部による印刷位置と搬送方向の下流側にある印刷部による印刷位置を揃え、複数の印刷部を用いたときの印刷位置のずれを効果的に防止することができる。
【0132】
第4の実施形態の変形例として、以下に示す印刷装置を構成することができる。変形例に係る印刷装置では、伸び量取得部71は、
図12および
図13に示すずれ量取得部57と同様の構成を有する。伸び量取得部71が
図12と同様の構成を有する場合、演算器72は、インク量Xp、張力T、および、データ供給部50から供給されたデータを入力として印刷用紙9の伸び量を出力するように、機械学習により学習済みである。伸び量取得部71が
図13と同様の構成を有する場合、演算器72は、インク量Xp、張力T、および、データ供給部50から供給されたデータの一部を入力として印刷用紙9の伸び量を出力するように、機械学習により学習済みである。
【0133】
データ供給部50から供給されたデータには、印刷用紙9の単位面積あたりの質量、印刷用紙9の搬送速度、印刷用紙9の周辺の温度、印刷用紙9の周辺の湿度、印刷用紙9のエッジの位置、印刷用紙9の垂直方向の位置、印刷部21~24間の搬送方向の距離、印刷ヘッド25と印刷用紙9との間の距離、および、印刷部21~24から吐出されるインクの特性が含まれる。変形例に係る印刷装置によっても、第4の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0134】
以上に示すように、本実施形態に係る印刷装置4に含まれる演算器72は、連続した印刷基材(印刷用紙9)に対して印刷ヘッド25からインクを吐出する印刷装置4における印刷基材の伸び量を学習する学習装置であって、少なくとも印刷基材に対して印刷ヘッド25から吐出されるインクの量、および、印刷基材に加わる張力を特徴量とし、印刷基材の伸び量を目的変数とした学習データを用いて学習済みである。演算器72は、印刷基材の単位面積あたりの質量、印刷基材の搬送速度、印刷基材の周辺の温度、印刷基材の周辺の湿度、印刷基材のエッジ位置、印刷基材の面に垂直な方向の位置、印刷ヘッドと印刷基材との間の距離、および、インクの特性のうち1以上を特徴量としてさらに含む学習データを用いて機械学習により学習済みであってもよい。したがって、インク量Xpおよび張力Tと伸び量Epとの間の関係を数式などを用いて表現することが困難な場合でも、機械学習により学習済みの演算器72を用いて、インク量Xpと張力Tなどに基づき伸び量Epを求めることができる。
【0135】
本実施形態に係る印刷装置4は、第1の実施形態と同様に、搬送部と、第1印刷部と、第2印刷部と、インク量推定部32と、張力検出部14とを備え、演算器72を含み、少なくともインク量推定部32で推定されたインク量Xpと張力検出部14で検出された張力Tとを演算器72に与えて、印刷基材の伸び量Epを求める伸び量取得部71と、求めた伸び量Epに基づき、第2印刷部(搬送方向の下流側にある印刷部)による印刷位置を制御する印刷制御部34とを備えている。
【0136】
本実施形態に係る印刷装置4によれば、学習済みの演算器72を用いて、少なくともインク量Xpと張力Tとに基づき印刷基材の伸び量Epを求め、求めた伸び量Epに基づき第2印刷部による印刷位置を制御することにより、第1印刷部(搬送方向の上流側にある印刷部)による印刷位置と第2印刷部による印刷位置を揃え、複数の印刷部21~24を用いたときの印刷位置のずれを防止することができる。
【0137】
以上に述べた各実施形態に係る印刷装置については、各種の変形例を構成することができる。例えば、変形例に係る印刷装置は、印刷用紙9を複数の印刷ヘッド25に対応づけて幅方向に分割する処理を行わなくてもよい。変形例に係る印刷装置は、テストデータ記憶部41、データ選択部42、撮影部43、ずれ量測定部44、および、機械学習制御部45を備えず、機械学習により学習済みの演算器を備えていてもよい。この場合、演算器には、例えば、同じ構成を有する他の印刷装置を用いて機械学習により学習されたものが使用される。
【0138】
以上に述べた印刷装置では、4個の印刷部21~24は、搬送中の印刷用紙9に対して黒、シアン、マゼンタ、および、シアンのインクを順に吐出することとした。変形例に係る印刷装置では、複数の印刷部は、搬送中の印刷用紙9に対して他の順序で上記4色のインクを順に吐出してもよく、上記以外の色のインクを吐出してもよい。変形例に係る印刷装置は、同じ色のインクを吐出する複数の印刷部を含んでいてもよい。変形例に係る印刷装置は、印刷用紙9以外の印刷基材(例えば、フィルムなど)に印刷を行ってもよい。
【符号の説明】
【0139】
1、3、4…印刷装置
9…印刷用紙
11…ローラ
14…張力検出部
21~24…印刷部
25…印刷ヘッド
31…印刷データ記憶部
32…インク量推定部
33、57…ずれ量取得部
34、62…印刷制御部
35、58、72…演算器
36、59…ずれ量計算部
41…テストデータ記憶部
43…撮影部
44…ずれ量測定部
45…機械学習制御部
50…データ供給部
61…画像サイズ変更部
71…伸び量取得部
73…伸び量測定部
100…コンピュータ
101…CPU
102…メインメモリ