(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】振れ補正機能付き光学ユニット
(51)【国際特許分類】
G03B 5/00 20210101AFI20230801BHJP
G02B 7/04 20210101ALI20230801BHJP
H04N 23/57 20230101ALI20230801BHJP
H04N 23/68 20230101ALI20230801BHJP
G03B 30/00 20210101ALI20230801BHJP
【FI】
G03B5/00 J
G02B7/04 E
H04N23/57
H04N23/68
G03B30/00
(21)【出願番号】P 2019187558
(22)【出願日】2019-10-11
【審査請求日】2022-10-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】須江 猛
(72)【発明者】
【氏名】南澤 伸司
【審査官】門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-61957(JP,A)
【文献】特開2018-205480(JP,A)
【文献】特開2009-75270(JP,A)
【文献】特開2006-101488(JP,A)
【文献】特開2019-164174(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0370035(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第109073852(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 5/00
G02B 7/04
H04N 23/57
H04N 23/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学モジュールおよび前記光学モジュールの外周側を囲むホルダを備えた可動体と、
前記可動体を光軸と交差する第1軸線周りに揺動可能に支持すると共に、前記可動体を前記光軸および前記第1軸線と交差する第2軸線周りに揺動可能に支持する揺動支持機構と、
前記揺動支持機構を介して前記可動体を支持する固定体と、
前記可動体を前記第1軸線周りおよび前記第2軸線周りに揺動させる振れ補正用駆動機構と、を有し、
前記光学モジュールは、外周側へ突出する突出部を備え、
前記ホルダは、前記突出部が前記光軸方向に当接する位置規制部を備え、
前記固定体は、前記ホルダを収容するケースを備え、
前記ケースは、前記ホルダの外周側を囲む外枠部および前記外枠部の前記光軸方向の像側の端部から内周側へ張り出す張り出し部を備え、
前記張り出し部は、前記光軸方向から見て前記ホルダと重なるストッパ部を備え、
前記突出部および前記位置規制部は、前記光軸方向から見て前記張り出し部の内周側に位置することを特徴とする振れ補正機能付き光学ユニット。
【請求項2】
前記張り出し部の内周縁に外周側へ凹む第1切欠き部が設けられ、
前記突出部および前記位置規制部は、前記光軸方向から見て前記第1切欠き部の内側に位置することを特徴とする請求項1に記載の振れ補正機能付き光学ユニット。
【請求項3】
前記ホルダの内周縁に前記光軸方向に凹む凹部が設けられ、
前記凹部は、前記光軸方向から見て前記張り出し部の内周側に位置し、
前記凹部は、前記光学モジュールを前記ホルダに固定する接着剤を入れる接着剤溜まりであることを特徴とする請求項2に記載の振れ補正機能付き光学ユニット。
【請求項4】
前記凹部は、第1凹部と、前記第1凹部と異なる位置に設けられた第2凹部を備え、
前記第1凹部は、前記光軸方向から見て前記第1切欠き部の内側に位置し、
前記位置規制部は、前記第1凹部に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の振れ補正機能付き光学ユニット。
【請求項5】
前記張り出し部の内周縁に外周側へ凹む第2切欠き部が設けられ、
前記第2凹部は、前記光軸方向から見て前記第2切欠き部の内側に位置することを特徴とする請求項4に記載の振れ補正機能付き光学ユニット。
【請求項6】
前記光学モジュールは、光学素子と、前記光学素子を収容するハウジングと、前記ハウジングにおける前記光軸方向の像側の端部に固定される基板と、を備え、
前記突出部は、前記ハウジングにおける前記基板側の端部から外周側へ突出することを特徴とする請求項1から5の何れか一項に記載の振れ補正機能付き光学ユニット。
【請求項7】
前記固定体は、前記張り出し部に固定されるカバーを備え、
前記張り出し部は、少なくとも前記ストッパ部を含む領域が前記カバーに接着されていることを特徴とする請求項1から6の何れか一項に記載の振れ補正機能付き光学ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学モジュールの振れ補正を行う振れ補正機能付き光学ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯端末や移動体に搭載される光学ユニットには、携帯端末や移動体の移動時の撮影画像の乱れを抑制するために、光学モジュールが搭載される可動体を揺動あるいは回転させて振れを補正する機構を備えるものがある。特許文献1には、この種の振れ補正機能付き光学ユニットが開示される。特許文献1では、箱状のカバー内に撮像ユニットが収容された可動体と、固定体と、固定体に対して可動体を揺動可能に支持するジンバル機構と、可動体を揺動させる振れ補正用駆動機構を備える。
【0003】
振れ補正用駆動機構は、磁石およびコイルを備えた磁気駆動機構であり、磁石およびコイルの一方が可動体に固定され、他方が固定体に固定される。例えば、撮像ユニットを収容するカバーの側面に磁石が固定される。また、特許文献1には、可動体の他の構成として、撮像ユニットのレンズ鏡筒を保持するホルダにコイルが固定される構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
振れ補正機能付き光学ユニットにおいて、可動体は、振れ補正用駆動機構の磁石またはコイルが固定されるカバーやホルダ等の保持部材を備えており、保持部材に対して撮像ユニット(光学モジュール)が光軸方向に位置決めされている。例えば、撮像ユニットの天面を度当たり面とし、ホルダ等の保持部材に対して光軸方向の後ろ側(像側)から撮像ユニットの天面を当接させて光軸方向の位置決めが行われる。
【0006】
しかしながら、撮像ユニット(光学モジュール)の天面を度当たり面として光軸方向の位置決めを行う構造では、位置決め基準である度当たり面が、可動体の回転中心(揺動中心)から光軸方向で大きく離れた部位である。従って、可動体の重心位置のばらつきが大きい。
【0007】
ここで、撮像ユニット(光学モジュール)の天面以外の部位に光軸方向に度当たりする度当たり部を形成すれば、可動体の回転中心(揺動中心)に位置決め基準を近づけることができる。例えば、光学モジュールに外周側へ突出する突出部を形成して、突出部を位置決め基準にすれば、天面以外の部位を位置決め基準にすることができる。しかしながら、外周側へ突出する突出部を設けると、振れ補正機能付き光学ユニットの組立時に、突出部と固定体側の部品とが干渉する方向からは光学モジュールを組付けられない。
【0008】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、光学モジュールの光軸方向の位置決め基準を可動体の回転中心に近づけると共に、光学モジュールの位置決め基準と固定体側の部品との干渉を回避することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の振れ補正機能付き光学ユニットは、光学モジュ
ールおよび前記光学モジュールの外周側を囲むホルダを備えた可動体と、前記可動体を光軸と交差する第1軸線周りに揺動可能に支持すると共に、前記可動体を前記光軸および前記第1軸線と交差する第2軸線周りに揺動可能に支持する揺動支持機構と、前記揺動支持機構を介して前記可動体を支持する固定体と、前記可動体を前記第1軸線周りおよび前記第2軸線周りに揺動させる振れ補正用駆動機構と、を有し、前記光学モジュールは、外周側へ突出する突出部を備え、前記ホルダは、前記突出部が前記光軸方向に当接する位置規制部を備え、前記固定体は、前記ホルダを収容するケースを備え、前記ケースは、前記ホルダの外周側を囲む外枠部および前記外枠部の前記光軸方向の像側の端部から内周側へ張り出す張り出し部を備え、前記張り出し部は、前記光軸方向から見て前記ホルダと重なるストッパ部を備え、前記突出部および前記位置規制部は、前記光軸方向から見て前記張り出し部の内周側に位置する。
【0010】
本発明によれば、光学モジュールが外周側へ突出する突出部を備えており、光学モジュールを囲むホルダは、突出部が光軸方向に当接する位置規制部を備えている。従って、突出部が光学モジュールの光軸方向の位置決め基準になるため、光学モジュールの天面とは異なる部位で光軸方向の位置決めを行うことができる。よって、光学モジュールの位置決め基準を可動体の回転中心に近づけることができ、可動体の重心位置のばらつきを小さくすることができる。
【0011】
また、本発明によれば、固定体は、ホルダを収容するケースを備え、ケースに設けられた張り出し部がストッパ部を備えると共に、位置決め基準となる突出部および位置規制部が光軸方向から見て張り出し部の内周側に位置する。従って、光学モジュールに位置決め基準となる突出部を設けた構成でありながら、ホルダの内側に光学モジュールを挿入して可動体を組み立てる際、位置決め基準(突出部)がケースの張り出し部に干渉することを回避できる。従って、ケースとホルダとの間に揺動支持機構および振れ補正用駆動機構を組み立てた後に、張り出し部の側からケース内に光学モジュールを入れてホルダに挿入するという手順で振れ補正機能付き光学ユニットを組み立てることができる。
【0012】
本発明において、前記張り出し部の内周縁に外周側へ凹む第1切欠き部が設けられ、前記突出部および前記位置規制部は、前記光軸方向から見て前記第1切欠き部の内側に位置することが好ましい。このようにすると、張り出し部がケースの内周側へ張り出していても、光学モジュールをケースの内側に入れる際、突出部が張り出し部と干渉することを回避できる。従って、張り出し部の側からケース内に光学モジュールを入れることができ、位置規制部に対して突出部を当接させて光学モジュールを位置決めすることができる。
【0013】
本発明において、前記ホルダの内周縁に前記光軸方向に凹む凹部が設けられ、前記凹部は、前記光軸方向から見て前記張り出し部の内周側に位置し、前記凹部は、前記光学モジュールを前記ホルダに固定する接着剤を入れる接着剤溜まりであることが好ましい。このようにすると、光学モジュールをホルダに固定する接着剤を凹部へ塗布する際、接着剤塗布用のシリンジを張り出し部の側から凹部へ入れて塗布することができる。従って、ケースの外側からケースの内側に配置されるホルダに接着剤を塗布することができる。
【0014】
本発明において、前記凹部は、第1凹部と、前記第1凹部と異なる位置に設けられた第2凹部を備え、前記第1凹部は、前記光軸方向から見て前記第1切欠き部の内側に位置し、前記位置規制部は、前記第1凹部に設けられていることが好ましい。このようにすると、接着剤を第1凹部へ塗布する際、接着剤塗布用のシリンジを第1切欠き部に通して塗布することができる。従って、光学モジュールの突出部と張り出し部とが干渉することを回避するための第1切欠き部を利用して、ケースの外側から第1凹部に接着剤を塗布することができる。
【0015】
本発明において、前記張り出し部の内周縁に外周側へ凹む第2切欠き部が設けられ、前記第2凹部は、前記光軸方向から見て前記第2切欠き部の内側に位置することが好ましい。このようにすると、位置規制部とは異なる位置に設けられた第2凹部に接着剤を塗布する際においても、接着剤塗布用のシリンジを第2切欠き部に通して塗布することができる。従って、ケースの外側から第2凹部に接着剤を塗布することができる。
【0016】
本発明において、前記光学モジュールは、光学素子と、前記光学素子を収容するハウジングと、前記ハウジングの前記光軸方向の像側の端部に固定される基板と、を備え、前記突出部は、前記ハウジングにおける前記基板側の端部から外周側へ突出することが好ましい。このように、基板に近い位置に位置決め基準を配置することにより、位置決め基準を可動体の回転中心に近づけることができる。従って、可動体の重心位置のばらつきを小さくすることができる。
【0017】
本発明において、前記固定体は、前記張り出し部に固定されるカバーを備え、前記張り出し部は、少なくとも前記ストッパ部を含む領域が前記カバーに接着されていることが好ましい。このように、ストッパ部にカバーを接着することにより、ストッパ部の剛性を高めることができる。従って、落下時などに可動体がストッパ部に衝突した衝撃によって張り出し部が破壊されるおそれを少なくすることができる。よって、振れ補正機能付き光学ユニットの耐衝撃性を高めることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、光学モジュールが外周側へ突出する突出部を備えており、光学モジュールを囲むホルダは、突出部が光軸方向に当接する位置規制部を備えている。従って、突出部が光学モジュールの光軸方向の位置決め基準になるため、光学モジュールの天面とは異なる部位で光軸方向の位置決めを行うことができる。よって、光学モジュールの位置決め基準を可動体の回転中心に近づけることができ、可動体の重心位置のばらつきを小さくすることができる。また、固定体は、ホルダを収容するケースを備え、ケースに設けられた張り出し部がストッパ部を備えると共に、位置決め基準となる突出部および位置規制部が光軸方向から見て張り出し部の内周側に位置する。従って、光学モジュールに位置決め基準となる突出部を設けた構成でありながら、ホルダの内側に光学モジュールを挿入して可動体を組み立てる際、位置決め基準(突出部)がケースの張り出し部に干渉することを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明を適用した振れ補正機能付き光学ユニットの外観斜視図である。
【
図2】
図1の振れ補正機能付き光学ユニットの被写体側から見た分解斜視図である。
【
図3】
図1の振れ補正機能付き光学ユニットの像側から見た分解斜視図である。
【
図4】第1カバーを取り外した振れ補正機能付き光学ユニットの平面図である。
【
図5】
図1の振れ補正機能付き光学ユニットの断面図(
図1のA-A位置で切断した断面図)である。
【
図6】ジンバルフレーム、第1スラスト受け部材、および第2スラスト受け部材の分解斜視図である。
【
図7】第2カバーを取り外した振れ補正機能付き光学ユニットの底面図である。
【
図8】第2カバーを取り外した固定体とホルダの底面図、および、光学モジュールの底面図である。
【
図9】第2カバーを取り外した固定体、ホルダ、および光学モジュールを像側から見た斜視図である。
【
図10】
図1の振れ補正機能付き光学ユニットの断面図(
図7のB-B位置で切断した断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した振れ補正機能付き光学ユニット1の実施形態を説明する。本明細書において、XYZの3軸は互いに直交する軸線方向であり、X軸方向の一方側を+X、他方側を-Xで示し、Y軸方向の一方側を+Y、他方側を-Yで示し、Z軸方向の一方側を+Z、他方側を-Zで示す。Z軸方向は、光学モジュール2の光軸L方向と一致する。従って、+Z方向は光軸L方向の一方側であり、被写体側である。また、-Z方向は光軸L方向の他方側であり、像側である。
【0021】
(全体構成)
図1は本発明を適用した振れ補正機能付き光学ユニット1の斜視図である。
図2は、
図1の振れ補正機能付き光学ユニット1の被写体側(+Z方向)から見た分解斜視図である。
図3は、
図1の振れ補正機能付き光学ユニット1の像側(-Z方向)から見た分解斜視図である。
図4は、第1カバー51を取り外した振れ補正機能付き光学ユニット1の平面図であり、被写体側(+Z方向)から見た平面図である。
図5は、
図1の振れ補正機能付き光学ユニット1の断面図(
図1のA-A位置で切断した断面図)である。
図6は、ジンバルフレーム9、第1スラスト受け部材44、および第2スラスト受け部材46の分解斜視図である。
【0022】
図1に示すように、振れ補正機能付き光学ユニット1は、レンズ等の光学素子を備えた光学モジュール2を有する。振れ補正機能付き光学ユニット1は、例えば、カメラ付き携帯電話機、ドライブレコーダー等の光学機器や、ヘルメット、自転車、ラジコンヘリコプター等の移動体に搭載されるアクションカメラやウエアラブルカメラ等の光学機器に用いられる。このような光学機器では、撮影時に光学機器の振れが発生すると、撮像画像に乱れが発生する。振れ補正機能付き光学ユニット1は、撮影画像が傾くことを回避するため、ジャイロスコープ等の検出手段によって検出された加速度や回転速度、振れ量等に基づき、光学モジュール2の傾きを補正する。
【0023】
図1~
図5に示すように、振れ補正機能付き光学ユニット1は、光学モジュール2が搭載された可動体3と、可動体3を揺動可能に支持するジンバル機構4と、ジンバル機構4を介して可動体3を支持する固定体5と、固定体5に対して可動体3を揺動させる振れ補正用駆動機構6と、可動体3に接続される第1フレキシブルプリント基板7と、固定体5に取り付けられる第2フレキシブルプリント基板8を備える。第1フレキシブルプリント基板7は、可動体3に接続される側とは反対側の端部に設けられたコネクタ部を備える。また、第2フレキシブルプリント基板8は、固定体5に取り付けられる側とは反対側の端部に設けられた端子部を備える。
【0024】
振れ補正機能付き光学ユニット1は、光軸L(Z軸)と交差し且つ互いに交差する2軸(X軸およびY軸)回りに可動体3を揺動させて振れ補正を行う。X軸周りの振れ補正と、Y軸周りの振れ補正を行うことにより、ピッチング(縦揺れ)方向の振れ補正、および、ヨーイング(横揺れ)方向の振れ補正を行う。
【0025】
図1、
図4に示すように、可動体3は、ジンバル機構4により、光軸L(Z軸)と直交する第1軸線R1回りに揺動可能に支持されるとともに、光軸Lおよび第1軸線R1と直交する第2軸線R2回りに揺動可能に支持される。第1軸線R1および第2軸線R2は、X軸およびY軸に対して45度傾いている。第1軸線R1回りの回転および第2軸線R2回りの回転を合成することにより、可動体3は、X軸周りおよびY軸周りに揺動可能である。従って、可動体3は、ジンバル機構4により、X軸周りおよびY軸周りに揺動可能に支持されている。
【0026】
図4に示すように、ジンバル機構4は、可動体3の第1軸線R1上の対角位置に設けら
れた第1支点部41と、固定体5の第2軸線R2上の対角位置に設けられた第2支点部42と、ジンバルフレーム9を備える。ジンバルフレーム9は、金属製の板ばねであり、第1軸線R1上の対角位置に設けられた2箇所の第1支持部901、および、第2軸線R2上の対角位置に設けられた2箇所の第2支持部902を備える。ジンバル機構4は、第1支持部901を第1支点部41に点接触させ、第2支持部902を第2支点部42に点接触させるように組み立てられる。これにより、可動体3は、ジンバルフレーム9を介して、第1軸線R1回りに揺動可能に支持されるとともに、第2軸線R2回りに揺動可能に支持される。
【0027】
図2~
図4に示すように、振れ補正用駆動機構6は、可動体3をX軸周りに回転させる第1磁気駆動機構6Xと、可動体3をY軸周りに回転させる第2磁気駆動機構6Yを備える。第1磁気駆動機構6Xは、1組の磁石61Xおよびコイル62Xを備える。また、第2磁気駆動機構6Yは、1組の磁石61Yおよびコイル62Yを備える。第1磁気駆動機構6Xの磁石61Xおよびコイル62Xは、Y軸方向に対向する。第2磁気駆動機構6Yの磁石61Yおよびコイル62Yは、X軸方向に対向する。本形態では、磁石61X、61Yが可動体3に配置され、コイル62X、62Yが固定体5に配置される。なお、磁石61X、61Yとコイル62X、62Yの配置は、本形態とは逆でも良い。すなわち、磁石61X、61Yを固定体5に配置し、コイル62X、62Yを可動体3に配置してもよい。
【0028】
第1磁気駆動機構6Xは、可動体3の-Y方向の側面に配置される。また、第2磁気駆動機構6Yは、可動体3の+X方向の側面に配置される。また、可動体3に接続される第1フレキシブルプリント基板7は、可動体3の外周面のうち、第1磁気駆動機構6Xおよび第2磁気駆動機構6Yが配置されていない+Y方向の側面から引き出される。本形態では、後述するように、第1フレキシブルプリント基板7を+Z方向に折り曲げて逆向きに1回折り返した第1折り返し部分71を可動体3の+Y方向の側面に配置している。
【0029】
(可動体)
図2、
図3に示すように、可動体3は、光学モジュール2と、光学モジュール2を保持するホルダ30を備える。光学モジュール2は、光軸L方向から見て矩形のハウジング20と、ハウジング20の-Z方向の端部に配置される基板25と、ハウジング20から+Z方向に突出する筒部26と、筒部26に保持されるレンズ群2A(光学素子)と、ハウジング20の内部に配置されるレンズ駆動機構27(
図4、
図5参照)を備える。基板25には撮像素子(図示省略)が搭載されている。本形態の光学モジュール2は、レンズ群2A、レンズ駆動機構27、および撮像素子を備えたカメラモジュールである。
【0030】
レンズ駆動機構27は、光軸L方向に並ぶレンズ群2Aのレンズ位置を調節することにより、被写体に対する焦点合わせを行う。本形態では、レンズ駆動機構27は磁気駆動機構を備える。なお、レンズ駆動機構27は、磁気駆動機構以外の駆動源を備えていてもよい。例えば、モータを備えていてもよい。レンズ駆動機構27は、第1磁気駆動機構6Xまたは第2磁気駆動機構6Yに対して光軸Lを挟んで反対側に配置される。本形態では、レンズ駆動機構27は、光軸Lを挟んで第1磁気駆動機構6Xとは反対側に配置される。
【0031】
ホルダ30は、光学モジュール2の外周側を囲む枠状部材である。ハウジング20は+X方向を向く第1側面21、-X方向を向く第2側面22、+Y方向を向く第3側面23、-Y方向を向く第4側面24を備える。ホルダ30は、ハウジング20の第1側面21に沿う第1枠部31、第2側面22に沿う第2枠部32、第3側面23に沿う第3枠部33、第4側面24に沿う第4枠部34を備えている。第1枠部31、第2枠部32、および第4枠部34は、ハウジング20に当接している。一方、第3枠部33とハウジング20の第3側面23との間には、隙間Sが設けられている(
図5参照)。また、第3枠部3
3は、-Z方向の端部を+Z方向に切り欠いた切欠き部35を備える。第1フレキシブルプリント基板7は、ハウジング20の第3側面23に沿って配置される第1折り返し部分71を形成した後、+Y方向へ屈曲して切欠き部35からホルダ30の外側へ引き出される。
【0032】
第3枠部33とハウジング20の第3側面23との間に設けられた隙間Sには、第1フレキシブルプリント基板7を1回折り返した第1折り返し部分71が配置される。第1折り返し部分71は、ハウジング20の+Y方向の側面に沿ってZ軸(光軸L)方向に延びている。第1フレキシブルプリント基板7は、第1折り返し部分71の-Z方向の端部において略直角に折り曲げられ、第3枠部33に設けられた切欠き部35に通されて、ホルダ30の+Y方向側へ引き出されている。
【0033】
図2、
図3に示すように、ホルダ30は、ジンバル機構4の第1支点部41を備えている。本形態では、第2枠部32と第3枠部33とが繋がる角部の内面、および、第1枠部31と第4枠部34とが繋がる角部の内面の2箇所に、それぞれ、第1支点部41が設けられている。第1支点部41は、径方向外側へ凹む凹部43と、凹部43に配置される第1スラスト受け部材44を備える。
図6に示すように、第1スラスト受け部材44は、Z軸(光軸L)方向に延びる板状の第1板部441と、第1板部441の-Z方向の端部から略直角に屈曲して径方向内側へ延びる第2板部442を備える。ホルダ30に設けられた凹部43の-Z方向の内面に対して第2板部442がZ軸(光軸L)方向に当接することにより、第1支点部41がZ軸(光軸L)方向に位置決めされる。
【0034】
図6に示すように、第1スラスト受け部材44には、第1板部441を貫通する貫通孔443が設けられ、貫通孔443には径方向内側から球体444が固定される。第1スラスト受け部材44は金属製であり、球体444は、溶接により第1板部441に固定される。球体444は、ジンバルフレーム9に設けられた第1支持部901と点接触する。第1支持部901は、球体444の半径よりも曲率半径が大きい凹曲面であり、径方向内側から球体444に弾性接触する。
【0035】
ホルダ30は、第1枠部31、第2枠部32、第3枠部33、および第4枠部34の+Z方向の端面から突出する凸部36を備える。凸部36は、第1枠部31と第2枠部32のY軸方向の中央、および、第3枠部33と第4枠部34のX軸方向の中央にそれぞれ1箇所ずつ設けられている。4箇所の凸部36は、+Z方向への突出高さが同一である。凸部36は、可動体3の第1軸線R1周りおよび第2軸線R2周りの揺動範囲を規制するストッパとして機能する。すなわち、可動体3が第1軸線R1周りおよび第2軸線R2周りに揺動する際、凸部36が固定体5の第1カバー51と当たることによって可動体3の揺動範囲が規制される。
【0036】
ホルダ30の第1軸線R1方向の対角位置には、ジンバル機構4の第1支点部41を構成する凹部43を径方向外側から囲む隅部38が設けられている。隅部38は、第1軸線R1方向の対角位置において第1カバー51と光軸L方向に対向する。隅部38は、ジンバルフレーム9の径方向外側に位置し、凸部36よりも-Z方向側に位置する。可動体3が第2軸線R2周りに揺動する際、隅部38が第1カバー51と当たることによって可動体3の揺動範囲が規制される。
【0037】
ホルダ30は、第1磁気駆動機構6Xの磁石61X、および、第2磁気駆動機構6Yの磁石61Yが配置される磁石配置用凹部37を備える。本形態では、第1枠部31および第4枠部34に磁石配置用凹部37が形成される。磁石配置用凹部37は、径方向内側へ凹んでいる。本形態では、ホルダ30が樹脂製であるため、磁石配置用凹部37には、板状のヨーク部材63が配置される。磁石配置用凹部37の内面にヨーク部材63が固定さ
れ、磁石61X、61Yは、ヨーク部材63の径方向外側の面に固定される。磁石61X、61Yは、径方向外側を向く面の磁石が、Z軸(光軸L)方向の略中央に位置する着磁分極線を境にして異なるように着磁されている。
【0038】
(固定体)
固定体5は、ケース50と、ケース50に固定される第1カバー51および第2カバー52と、配線カバー53を備える。本形態では、ケース50は樹脂からなり、第1カバー51、第2カバー52、および配線カバー53は、非磁性の金属からなる。ケース50は、可動体3の外周側を囲む外枠部50Aと、外枠部50Aの-Z方向側の部分から+Y方向へ突出する配線収容部50Bと、外枠部50Aの-Z方向側(像側)の端部から内周側へ張り出す張り出し部50Cを備える。第1カバー51は、外枠部50Aの+Z方向の端部に固定される。第2カバー52は、張り出し部50Cおよび配線収容部50Bの-Z方向の端部に固定される。配線カバー53は、配線収容部50Bの+Z方向の端部に固定される。
【0039】
第1カバー51、第2カバー52、および配線カバー53の外周縁には、弾性係合部58が設けられている。また、ケース50の外周面には、爪部59が設けられている。弾性係合部58は、Z軸(光軸L)方向に延びる金属片であり、爪部59が嵌まる開口部を備えている。爪部59は、ケース50の外周面に形成された凹部の内面から径方向外側へ突出する。第1カバー51、第2カバー52、および配線カバー53は、弾性係合部58を爪部59に係合させることにより、ケース50に固定される。また、第1カバー51は、+Y方向の縁から略直角に屈曲して-Z方向へ延びる当接部57を備える。当接部57は、外枠部50Aの第3枠部503に対して外周側(+Y方向)から当接する。
【0040】
第1カバー51は、外枠部50Aの内側に配置される可動体3の外周部分とZ軸方向に対向しており、可動体3が+Z方向へ飛び出すことを規制している。第1カバー51は、略矩形の開口部510を備えている。本形態では、ジンバルフレーム9の一部が、開口部510から+Z方向に突出する。また、ジンバルフレーム9の径方向の中央に設けられた中央穴90からは、光学モジュール2の筒部26が+Z方向に突出する。第1カバー51は、固定体5の+Z方向の端部に位置している。従って、本形態では、光学モジュール2およびジンバルフレーム9の一部が、固定体5の+Z方向の端部よりも+Z方向側に突出している。
【0041】
外枠部50Aは、可動体3の+X方向側および-X方向側においてY軸方向に平行に延びる第1枠部501および第2枠部502と、可動体3の+Y方向側および-Y方向側においてX軸方向に平行に延びる第3枠部503および第4枠部504を備える。配線収容部50Bは、第1枠部501および第2枠部502の-Z方向の端部から+Y方向に平行に延びる第5枠部505および第6枠部506と、第5枠部505および第6枠部506の+Y方向の端部に接続され、X軸方向に延びる第7枠部507を備える。
【0042】
外枠部50Aには、第3枠部503の-Z方向の端部を+Z方向に切り欠いた切欠き部508が設けられている。第1フレキシブルプリント基板7は、切欠き部508から配線収容部50Bの内側へ延びている。第1フレキシブルプリント基板7は、配線収容部50Bの内側で+Y方向へ延びて逆向きに1回折り返された第2折り返し部分72と、第2折り返し部分72の+Z方向側に重なる第3折り返し部分73を備える。
【0043】
配線カバー53は、-Y方向の縁の略中央を+Y方向へ切り欠いた切欠き部531を備えている。第1フレキシブルプリント基板7の第3折り返し部分73は、切欠き部531から配線収容部50Bの外側へ引き出され、配線カバー53に沿って+Y方向側へ延びている。第1フレキシブルプリント基板7は、配線カバー53に固定される固定部74を備
える。固定部74は、切欠き部531の縁に固定される。
【0044】
第1フレキシブルプリント基板7は、可撓性基板70と、可撓性基板70に固定される補強板75を備える。補強板75は、第1折り返し部分71および第2折り返し部分72に配置され、逆向きに屈曲した可撓性基板70に挟まれてスペーサとして機能している。また、固定部74に設けられた補強板75は、配線カバー53と可撓性基板70との間に配置され、配線カバー53と可撓性基板70との間でスペーサとして機能している。
【0045】
外枠部50Aは、ジンバル機構4の第2支点部42を備えている。本形態では、第1枠部501と第3枠部503とが繋がる角部の内面、および、第2枠部502と第4枠部504とが繋がる角部の内面の2箇所に、それぞれ、第2支点部42が設けられている。第2支点部42は、径方向外側へ凹む凹部45と、凹部45に配置される第2スラスト受け部材46を備える。
図6に示すように、第2スラスト受け部材46は、光軸L方向に延びる第1板部461と、第1板部461の-Z方向の端部から略直角に屈曲して径方向内側へ延びる第2板部462を備える。外枠部50Aに設けられた凹部45の-Z方向の内面に対して第2板部462がZ軸(光軸L)方向に当接することにより、第2支点部42がZ軸(光軸L)方向に位置決めされる。
【0046】
図6に示すように、第2スラスト受け部材46には、第1板部461を貫通する貫通孔463が設けられ、貫通孔443には径方向内側から球体464が固定される。第2スラスト受け部材46は金属製であり、球体464は、溶接により第1板部461に固定される。球体464は、ジンバルフレーム9に設けられた第2支持部902と点接触する。第2支持部902は、球体464の半径よりも曲率半径が大きい凹曲面であり、径方向内側から球体464に弾性接触する。
【0047】
外枠部50Aは、第1磁気駆動機構6Xのコイル62X、および、第2磁気駆動機構6Yのコイル62Yが接着剤等により固定されるコイル配置穴54を備える。本形態では、コイル配置穴54は、第1枠部501および第4枠部504を貫通する。コイル62X、62Yは、長円形の空芯コイルであり、+Z方向側および-Z方向側に位置する2本の長辺が有効辺として利用される。外枠部50Aには、第1枠部501および第4枠部504に対して径方向外側から第2フレキシブルプリント基板8が固定される。第2フレキシブルプリント基板8は、第4枠部504のコイル配置穴54に対して径方向外側から重なる第1基板部分81、および、第1枠部501のコイル配置穴54に対して径方向外側から重なる第2基板部分82を備える。
【0048】
第1基板部分81とコイル62Xとの間、および、第2基板部分82とコイル62Yとの間には、それぞれ、矩形の磁性板64が配置される。第1基板部分81とコイル62Xとの間に配置された磁性板64は、磁石61Xと対向しており、可動体3をX軸周りの回転方向における基準回転位置に復帰させるための磁気バネを構成している。また、第2基板部分82とコイル62Yとの間に配置された磁性板64は、磁石61Yと対向しており、可動体3をY軸周りの回転方向における基準回転位置に復帰させるための磁気バネを構成している。
【0049】
磁性板64は、コイル62X、62Yの中心穴と重なる位置に矩形の貫通穴を備えており、貫通穴には、磁気センサ65が配置される。磁気センサ65は、例えば、ホール素子である。振れ補正機能付き光学ユニット1は、コイル62Xの中心に配置される磁気センサ65の出力から、可動体3のX軸周りの揺動角度を検出する。また、コイル62Yの中心に配置される磁気センサ65の出力から、可動体3のY軸周りの揺動角度を検出する。
【0050】
(ジンバルフレーム)
図6に示すように、ジンバルフレーム9は、Z軸方向から見て略正方形の第1フレーム部分91と、第1フレーム部分91における4箇所の角部から略直角に屈曲して-Z方向へ延びる第2フレーム部分92を備える。第2フレーム部分92は、第1フレーム部分91の第1軸線R1方向の両側の第1対角位置、および、第1フレーム部分91の第2軸線R2方向の両側の第2対角位置に配置される。第1フレーム部分91の中央には、第1フレーム部分91を貫通する中央穴90が設けられている。
【0051】
第1フレーム部分91は、Z軸(光軸L)方向から見て第1軸線R1方向および第2軸線R2方向を対角方向とする正方形の矩形部分910と、矩形部分910の第1軸線R1方向の両側の角部から径方向外側へ突出する第1突出部分913と、矩形部分910の第2軸線R2方向の両側の角部から径方向外側へ突出する第2突出部分914を備える。
【0052】
図1、
図6に示すように、第1フレーム部分91の矩形部分910は、第2軸線R2方向の中央に位置する中央部分911が-Z方向に凹んでおり、第2軸線R2方向の両端の角部分912が中央部分911より+Z方向側に位置する。つまり、第1フレーム部分91は、第2軸線R2方向の角部分912が中央部分911よりも可動体3から離間している。従って、ジンバルフレーム9の-Z方向側で可動体3が第1軸線R1周りに揺動して可動体3の第2軸線R2方向の両端(本形態では、ハウジング20の第2軸線R2方向の角部)がZ軸方向に移動した場合においても、可動体3とジンバルフレーム9との衝突を回避できる。
【0053】
また、中央部分911は、第1フレーム部分91の第1軸線R1方向の角部まで延びている。ここで、第1フレーム部分91の第1軸線R1方向の角部は、可動体3が第2軸線R2周りに揺動する際、第2支点部42を中心として第2軸線R2周りに揺動するジンバルフレーム9がZ軸(光軸L)方向に最も大きく移動する部位である。このように、第1フレーム部分91の第1軸線R1方向の角部が最も-Z方向に凹んだ形状である場合には、可動体3が揺動する際のジンバルフレーム9の動作スペースをZ軸(光軸L)方向で小さくすることができる。従って、振れ補正機能付き光学ユニット1を設置するスペースのZ軸(光軸L)方向の必要高さを小さくすることができる。
【0054】
第2フレーム部分92は、ジンバルフレーム9の第1軸線R1上の2箇所の角部に設けられた第1支持部用延設部93と、ジンバルフレーム9の第2軸線R2上の2箇所の角部に設けられた第2支持部用延設部94を備える。第1支持部用延設部93は、第1フレーム部分91の第1突出部分913から-Z方向に直線状に延びている。第1支持部用延設部93の先端部分には、径方向内側へ凹んだ凹曲面である第1支持部901がプレス加工によって形成されている。第2支持部用延設部94は、第1フレーム部分91の第2突出部分914から-Z方向へ延びる第1部分941と、第1部分941から略直角に屈曲して径方向外側へ延びる第2部分942と、第2部分942から略直角に屈曲して-Z方向へ延びる第3部分943を備えている。第3部分943の先端部分には、径方向内側へ凹んだ凹曲面である第2支持部902がプレス加工によって形成されている。
【0055】
第1支持部用延設部93は、第1カバー51の開口部510における第1軸線R1方向の角部を径方向外側へ切り欠いた切欠き部511に配置される。切欠き部511の-Z方向側には、可動体3側に設けられたジンバル機構4の支点部である第1支点部41が配置されており、第1支持部用延設部93の先端部は、第1支点部41によって支持される。また、第2支持部用延設部94は、第1カバー51の開口部510における第2軸線R2方向の角部を径方向外側へ切り欠いた切欠き部512に配置される。切欠き部512の-Z方向側には、固定体5側に設けられたジンバル機構4の支点部である第2支点部42が配置されており、第2支持部用延設部94の先端部は、第2支点部42によって支持される。
【0056】
第1支持部用延設部93および第2支持部用延設部94は、径方向に弾性変形する。従って、第1支持部用延設部93の先端部に設けられた第1支持部901は、第1支点部41に設けられた球体444と弾性接触する。また、第2支持部用延設部94の先端部に設けられた第2支持部902は、第2支点部42に設けられた球体464と弾性接触する。これにより、第1支持部用延設部93および第2支持部用延設部94が第1支点部41および第2支点部42から外れにくくなっており、支点部のぶれを抑制している。
【0057】
(光学モジュールの位置決め基準)
図7は第2カバー52を取り外した振れ補正機能付き光学ユニット1の底面図である。
図8(a)は第2カバー52を取り外した固定体5とホルダ30の底面図であり、
図8(b)は光学モジュール2の底面図である。
図8、
図9は-Z方向(像側)から見た図である。
図9は、第2カバー52を取り外した固定体5、ホルダ30、および光学モジュール2を-Z方向(像側)から見た斜視図である。
図2、
図9に示すように、光学モジュール2は、外周側へ突出する複数の突出部28を備える。また、ホルダ30の-Z方向の端面の内周縁には、+Z方向(被写体側)へ凹む複数の凹部39が形成されている。
図8、
図9に示すように、凹部39は、Z軸(光軸L)方向から見て突出部28と重なる位置に設けられた4箇所の第1凹部391と、突出部28と重なる位置とは異なる位置に設けられた2箇所の第2凹部392を備える。
【0058】
図2、
図9に示すように、突出部28は、ハウジング20の-Z方向(像側)の端部から外周側へ突出する。従って、突出部28は、ハウジング20において最も基板25に近い端部に配置される。突出部28は、ハウジング20においてZ軸(光軸L)を挟んで反対側を向く2つの側面(第1側面21、第2側面22)に形成されている。第1側面21の-Z方向の端部には、Y方向に離間する2箇所に+X方向へ突出する突出部28が形成されている。また、第2側面22の-Z方向の端部には、Y方向に離間する2箇所に-X方向へ突出する突出部28が形成されている。一方、ホルダ30において、第1凹部391は、ハウジング20の+X方向に位置する第1枠部31と、ハウジング20の-X方向に位置する第2枠部32にそれぞれ2箇所ずつ形成されている。また、ハウジング20の-Y方向に位置する第4枠部34には、X方向に離間した2箇所に第2凹部392が形成されている。
【0059】
図10は、
図1の振れ補正機能付き光学ユニット1の断面図(
図7のB-B位置で切断した断面図)である。ホルダ30には、光学モジュール2の+Z方向(被写体側)への移動を規制する位置規制部393が設けられている。本形態では、位置規制部393は、第1凹部391の底面である。可動体3を組み立てる際、ホルダ30の内側へ-Z方向(像側)からハウジング20を挿入する。その際、
図10に示すように、突出部28が位置規制部393(第1凹部391の底面)に-Z方向(像側)から当接する位置までハウジング20を挿入する。これにより、光学モジュール2がホルダ30に対してZ軸(光軸L)方向に位置決めされる。このように、可動体3は、突出部28を光学モジュール2の光軸L方向の位置決め基準として組み立てられている。
【0060】
(ケースの底部形状)
図2、
図9に示すように、本形態のケース50は、ホルダ30の外周側を囲む外枠部50Aの-Z方向側(像側)の端部から内周側へ張り出す張り出し部50Cを備える。張り出し部50Cは、外枠部50Aの第1枠部501、第2枠部502、および第4枠部504から内周側へ張り出している。張り出し部50Cの内周側には、略矩形の開口部50Dが形成されている。開口部50Dの+Y方向に位置する第3枠部503には、第1フレキシブルプリント基板7を引き出すための切欠き部508が形成されている。従って、開口部50Dは配線収容部50Bの内側の空間と連続している。
【0061】
図7、
図8(a)に示すように、ホルダ30の内周縁は開口部50Dより小さい。従って、ケース50およびホルダ30を光軸L方向から見たとき、ホルダ30の内周縁は開口部50Dの内周側に位置する。一方、ホルダ30の外周部分は開口部50Dの外周側に位置する。従って、張り出し部50Cは、光軸L方向から見てホルダ30と重なるストッパ部55を備えている。ストッパ部55は、
図7において一点鎖線で示すホルダ30の外周面の位置よりも内周側の部分である。本形態では、ケース50がストッパ部55を備えているため、可動体3がケース50から-Z方向へ飛び出すことが規制される。
【0062】
開口部50Dは、ケース50の-Z方向の端部に固定された第2カバー52によって塞がれている。第2カバー52は、上述した第2カバー52の弾性係合部58とケース50の爪部59による係止構造によってケース50に係止されるとともに、接着剤によって張り出し部50Cに固定される。従って、張り出し部50Cは、第2カバー52によって補強される。接着剤は、少なくとも、可動体3が衝突する可能性があるストッパ部55に塗布される。これにより、落下時の衝撃などによって可動体3がストッパ部55に衝突した場合にストッパ部55が折れて張り出し部50Cが破損するおそれが低減される。本形態では、張り出し部50Cの全領域に接着剤を塗布して第2カバー52を固定しており、ケース50の底部全体が第2カバー52によって補強される。
【0063】
図10に示すように、張り出し部50Cの光軸L方向の厚さをT1とし、第2カバー52の光軸L方向の厚さをT2とするとき、T2はT1より小さい。第2カバー52は金属製であるため、板厚を小さくしても剛性が高い。例えば、第2カバー52を金属製にした場合、最小厚さは0.1mmである。一方、ケース50は樹脂部品であり、成形可能な最小厚さが0.3mmである。従って、張り出し部50Cを補強する場合に、樹脂製の張り出し部50Cの板厚を厚くして補強する場合よりも、金属製の第2カバー52を固定した方が、補強部分の光軸L方向の厚さを小さくすることができる。よって、補強による振れ補正機能付き光学ユニット1の光軸L方向の高さの増大を抑制できる。
【0064】
図7~
図9に示すように、張り出し部50Cの内周縁には、外周側へ凹む切り欠き部56が形成されている。切欠き部56は、Z軸(光軸L)方向から見てホルダ30の第1凹部391の外周側を囲む形状に切り欠かれた第1切欠き部561、および、Z軸(光軸L)方向から見てホルダ30の第2凹部392の外周側を囲む形状に切り欠かれた第2切欠き部562を備える。第1切欠き部561は、張り出し部50Cの+X方向側の内周縁、および、-X方向側の内周縁にそれぞれ2箇所ずつ形成されている。また、第2切欠き部562は、張り出し部50Cの-Y方向側の内周縁に形成されている。
【0065】
図7に示すように、ホルダ30に形成された第1凹部391および第2凹部392は、光軸L方向から見て張り出し部50Cの内周側に位置する。より詳細には、第1切欠き部561は、Y軸方向の幅が第1凹部391よりも大きく、且つ、X軸方向の深さが第1凹部391よりも大きい。従って、光軸L方向から見た場合に、第1切欠き部561の内周縁は第1凹部391の外周側を囲む形状になっており、第1凹部391は、第1切欠き部561の内側に配置されている。同様に、第2切欠き部562は、X軸方向の幅が第2凹部392よりも大きく、且つ、Y軸方向の深さが第2凹部392よりも大きい。従って、光軸L方向から見た場合に、第2切欠き部562の内周縁は第2凹部392の外周側を囲む形状になっており、第2凹部392は、第2切欠き部562の内側に配置されている。
【0066】
本形態では、振れ補正機能付き光学ユニット1を組み立てる際、ケース50の内側にホルダ30を配置して、ケース50とホルダ30との間にジンバル機構4および振れ補正用駆動機構6を組み立てる。しかる後に、ケース50の内側に配置されたホルダ30に対して、-Z方向側(像側)から光学モジュール2を挿入して固定する。その後に、ケース5
0に対して第2カバー52を固定して開口部50Dを塞ぐ。
【0067】
光学モジュール2は、張り出し部50Cの側からケース50の内側へ挿入される。上記のように、光学モジュール2の突出部28は、張り出し部50Cの内周側に配置されているので、張り出し部50Cに干渉することなくホルダ30の内側へ光学モジュール2を挿入できる。また、本形態では、張り出し部50Cに第1切欠き部561が形成されているので、ホルダ30の内側へ光学モジュール2を挿入する際、突出部28は第1切欠き部561を通過し、ストッパ部55と突出部28とが干渉しない。
【0068】
光学モジュール2は、ホルダ30に対して接着剤により固定される。可動体3を組み立てる際には、ホルダ30の第1凹部391および第2凹部392が接着剤溜まりとして用いられる。その際、張り出し部50Cに設けられた第1切欠き部561および第2切欠き部562は、接着剤塗布用のシリンジを通す窓部として用いられる。すなわち、第1凹部391に接着剤を塗布する際には、第1切欠き部561に接着剤塗布用のシリンジを通してシリンジの先端を第1凹部391へ到達させ、接着剤を塗布する。また、第2凹部392に接着剤を塗布する際には、第2切欠き部562に接着剤塗布用のシリンジを通してシリンジの先端を第2凹部392へ到達させ、接着剤を塗布する。これにより、ケース50の内側にホルダ30を組み込んだ状態で、張り出し部50Cの外側から接着剤を塗布することができる。
【0069】
(本形態の主な作用効果)
以上のように、本形態の振れ補正機能付き光学ユニット1は、光学モジュール2および光学モジュール2の外周側を囲むホルダ30を備えた可動体3と、可動体3を光軸Lと交差する第1軸線R1周りに揺動可能に支持すると共に、可動体3を光軸Lおよび第1軸線R1と交差する第2軸線R2周りに揺動可能に支持する揺動支持機構であるジンバル機構4と、揺動支持機構であるジンバル機構4を介して可動体3を支持する固定体5と、可動体3を第1軸線R1周りおよび第2軸線R2周りに揺動させる振れ補正用駆動機構6とを有する。光学モジュール2は、外周側へ突出する突出部28を備え、ホルダ30は、突出部28が光軸L方向に当接する位置規制部393を備えている。また、固定体5は、ホルダ30を収容するケース50を備え、ケース50は、ホルダ30の外周側を囲む外枠部50Aおよび外枠部50Aの-Z方向(光軸L方向の像側)の端部から内周側へ張り出す張り出し部50Cを備えている。そして、張り出し部50Cは、光軸L方向から見てホルダ30と重なるストッパ部55を備え、突出部28および位置規制部393は、光軸L方向から見て張り出し部50Cの内周側に位置する。
【0070】
このように、本形態では、光学モジュール2が外周側へ突出する突出部28を備えており、光学モジュール2を囲むホルダ30は、突出部28が光軸L方向に当接する位置規制部393を備えている。従って、突出部28が光学モジュール2の光軸L方向の位置決め基準になるため、光学モジュール2の天面とは異なる部位で光軸L方向の位置決めを行うことができる。よって、光学モジュール2の天面を位置決め基準とする場合よりも、光学モジュール2の位置決め基準を可動体3の回転中心に近づけることができる。従って、可動体3の重心位置のばらつきを小さくすることができる。
【0071】
また、本形態の固定体5は、ホルダ30を収容するケース50を備え、ケース50に設けられた張り出し部50Cがストッパ部55を備えると共に、位置決め基準となる突出部28および位置規制部393が光軸L方向から見て張り出し部50Cの内周側に位置する。このように、張り出し部50Cは、ホルダ30に対してはストッパとして機能し、且つ、光学モジュール2をケース50の内側に組み込むことが可能な形状である。従って、光学モジュール2に位置決め基準となる突出部28を設けた構成でありながら、ホルダ30の内側に光学モジュール2を挿入して可動体3を組み立てる際、位置決め基準(突出部2
8)がケース50の張り出し部50Cに干渉することを回避できる。従って、ケース50とホルダ30との間に揺動支持機構であるジンバル機構4および振れ補正用駆動機構6を組み立てた後に、張り出し部50Cの側からケース50内に光学モジュール2を入れてホルダ30に固定するという手順で振れ補正機能付き光学ユニット1を組み立てることができる。
【0072】
本形態では、張り出し部50Cの内周縁に外周側へ凹む第1切欠き部561が設けられ、突出部28および位置規制部393は、光軸L方向から見て第1切欠き部561の内側に位置する。より詳細には、突出部28の外周側の先端部、および、位置規制部393が設けられた第1凹部391の外周側の端部が第1切欠き部561の開口部に配置され、第1切欠き部561を設けたことによって突出部28と張り出し部50Cとの間に隙間が確保される。従って、張り出し部50Cがケース50の内周側へ張り出していても、光学モジュール2をケース50の内側に入れる際、突出部28が張り出し部50Cと干渉することを回避できる。従って、張り出し部50Cの側からケース50内に光学モジュール2を入れることができ、位置規制部393に対して突出部28を当接させて光学モジュール2を位置決めすることができる。
【0073】
本形態では、ホルダ30の内周縁に光軸L方向に凹む凹部39が設けられ、凹部39は、光軸L方向から見て張り出し部50Cの内周側に位置する。また、凹部39は接着剤溜まりであり、凹部39に塗布された接着剤によって光学モジュール2がホルダ30に固定される。このように、張り出し部50Cの内周側に接着剤溜まり(凹部39)を設けることにより、接着剤を凹部39へ塗布する際、接着剤塗布用のシリンジを張り出し部50Cの開口部50Dに通してシリンジの前端を凹部39へ到達させることができる。従って、ケース50の外側から接着剤溜まり(凹部39)に接着剤を塗布することができる。
【0074】
本形態では、凹部39は、第1凹部391と、第1凹部391と異なる位置に設けられた第2凹部392を備えている。第1凹部391は、光軸L方向から見て第1切欠き部561の内側に位置し、第1凹部391に位置規制部393が設けられている。このようにすると、突出部28が張り出し部50Cと干渉することを回避するための第1切欠き部561を、接着剤塗布用のシリンジを通すための窓部として利用できる。従って、ケース50の外側から第1凹部391に接着剤を塗布することができる。また、位置規制部393と接着剤溜まりとを同一位置に配置できるため、部品形状が複雑化することを回避できる。
【0075】
本形態では、張り出し部50Cの内周縁に外周側へ凹む第2切欠き部562が設けられ、第2凹部392は、光軸L方向から見て第2切欠き部562の内側に位置する。より詳細には、第2凹部392の外周側の端部が第2切欠き部562の開口部に配置され、第2切欠き部562を設けたことによって第2凹部392と張り出し部50Cとの間に隙間が確保される。従って、第2切欠き部562に接着剤塗布用のシリンジを通すことにより、ケース50の外側から第2凹部392に接着剤を塗布することができる。
【0076】
本形態では、光学モジュール2は、光学素子であるレンズ群2Aと、レンズ群2Aを収容するハウジング20と、ハウジング20の-Z方向(光軸L方向の像側)の端部に配置される基板25と、を備え、突出部28は、ハウジング20における基板25側の端部から外周側へ突出する。このように、基板25に近い位置に位置決め基準となる突出部28を配置することにより、位置決め基準を可動体3の回転中心に近づけることができる。従って、可動体3の重心位置のばらつきを小さくすることができる。
【0077】
本形態では、固定体5は、張り出し部50Cに固定される第2カバー52を備えており、張り出し部50Cは、少なくともストッパ部55を含む領域が第2カバー52に接着さ
れている。このように、ストッパ部55に第2カバー52を接着することにより、ストッパ部55を補強でき、可動体3が衝突するおそれがある部位の剛性を高めることができる。本形態では、ケース50の底面全体を第2カバー52によって補強している。従って、落下時などに可動体3がストッパ部55に衝突した衝撃によって張り出し部50Cが破壊されるおそれを少なくすることができる。よって、振れ補正機能付き光学ユニット1の耐衝撃性を高めることができる。
【符号の説明】
【0078】
1…振れ補正機能付き光学ユニット、2…光学モジュール、2A…レンズ群、3…可動体、4…ジンバル機構、5…固定体、6…振れ補正用駆動機構、6X…第1磁気駆動機構、6Y…第2磁気駆動機構、7…第1フレキシブルプリント基板、8…第2フレキシブルプリント基板、9…ジンバルフレーム、20…ハウジング、21…第1側面、22…第2側面、23…第3側面、24…第4側面、25…基板、26…筒部、27…レンズ駆動機構、28…突出部、30…ホルダ、31…第1枠部、32…第2枠部、33…第3枠部、34…第4枠部、35…切欠き部、36…凸部、37…磁石配置用凹部、38…隅部、39…凹部、41…第1支点部、42…第2支点部、43…凹部、44…第1スラスト受け部材、45…凹部、46…第2スラスト受け部材、50…ケース、50A…外枠部、50B…配線収容部、50C…張り出し部、50D…開口部、51…第1カバー、52…第2カバー、53…配線カバー、54…コイル配置穴、55…ストッパ部、56…切欠き部、57…当接部、58…弾性係合部、59…爪部、61X、61Y…磁石、62X、62Y…コイル、63…ヨーク部材、64…磁性板、65…磁気センサ、70…可撓性基板、71…第1折り返し部分、72…第2折り返し部分、73…第3折り返し部分、74…固定部、75…補強板、81…第1基板部分、82…第2基板部分、90…中央穴、91…第1フレーム部分、92…第2フレーム部分、93…第1支持部用延設部、94…第2支持部用延設部、391…第1凹部、392…第2凹部、393…位置規制部、441…第1板部、442…第2板部、443…貫通孔、444…球体、461…第1板部、462…第2板部、463…貫通孔、464…球体、501…第1枠部、502…第2枠部、503…第3枠部、504…第4枠部、505…第5枠部、506…第6枠部、507…第7枠部、508…切欠き部、510…開口部、511、512…切欠き部、531…切欠き部、561…第1切欠き部、562…第2切り欠き部、901…第1支持部、902…第2支持部、910…矩形部分、911…中央部分、912…角部分、913…第1突出部分、914…第2突出部分、941…第1部分、942…第2部分、943…第3部分、L…光軸、R1…第1軸線、R2…第2軸線、S…隙間、T1…張り出し部の厚さ、T2…第2カバーの厚さ