(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】内燃エンジンのシリンダー内に存在する再循環排気ガスの濃度を特定するための推定方法
(51)【国際特許分類】
F02D 45/00 20060101AFI20230801BHJP
F02D 21/08 20060101ALI20230801BHJP
F02M 26/06 20160101ALI20230801BHJP
F02M 26/46 20160101ALI20230801BHJP
F02M 26/47 20160101ALI20230801BHJP
【FI】
F02D45/00 368Z
F02D21/08 L
F02D45/00 360A
F02D45/00 362
F02D45/00 364D
F02D45/00 368F
F02M26/06 311
F02M26/46 A
F02M26/47 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019189499
(22)【出願日】2019-10-16
【審査請求日】2022-09-05
(31)【優先権主張番号】102018000009537
(32)【優先日】2018-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】519372043
【氏名又は名称】マレリ・ヨーロッパ・エッセ・ピ・ア
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マルコ・パンチロリ
(72)【発明者】
【氏名】ガエターノ・ディ・ヴィエステ
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-505818(JP,A)
【文献】特開平11-159404(JP,A)
【文献】特開平10-37786(JP,A)
【文献】特開平8-128359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 45/00
F02D 21/08
F02M 26/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃エンジン(1)のシリンダー(2)内に存在する再循環排気ガスの濃度を特定するための推定方法であって、前記シリンダー(2)は、吸気マニホールド(4)で終端する吸気ダクト(6)を介して新鮮な空気および再循環排気ガスからなるガス混合物を受け取り、前記推定方法は、
前記吸気ダクト(6)または前記吸気マニホールド(4)を通って流れるガス混合物中の酸素のパーセンテージ(%O
2)を、前記吸気ダクト(6)に沿ってあるいは前記吸気マニホールド(4)内に配置された第1のセンサー(29)によって周期的に測定するステップと、
前記第1のセンサー(29)によって測定された酸素の対応するパーセンテージ(%O
2)に基づいて、前記吸気ダクト(6)または前記吸気マニホールド(4)内に存在する再循環排気ガスの濃度(%EGR)を周期的に特定するステップと、
第1の時点(T
1)に続く前記シリンダー(2)内での次の燃焼のプログラミングを前記第1の時点(T
1)において実行するステップと、を備え、
前記推定方法はさらに、
再循環排気ガスの濃度(%EGR)をバッファー(30)に格納するステップと、
前記第1の時点(T
1)と、前記第1の時点(T
1)に続きかつ空気が前記シリンダー(2)内での次の燃焼のために前記シリンダー(2)内に取り込まれる将来における第2の時点(T
2)との間の時間量に対応する進み時間(T
pred)を特定するステップと、
前記第1のセンサー(29)が配置されている場所から前記シリンダー(2)まで前記ガス混合物が流れるのに必要な、前記進み時間(T
pred)以上の輸送時間(T
TR)を特定するステップと、
前記第1の時点(T
1)から、前記輸送時間(T
TR)と前記進み時間(T
pred)との間の差に等しい時間量を減算することによって、前記第1の時点(T
1)に、したがって前記第2の時点(T
2)に先行する、過去の第3の時点(T
3)を計算するステップと、
前記バッファー(30)に格納されると共に前記第3の時点(T
3)に対応する再循環排気ガスの濃度(%EGR)に基づいて、前記第2の時点(T
2)において前記シリンダー(2)内に存在する再循環排気ガスの濃度を推定するステップと、
前記第1の時点(T
1)において、前記シリンダー(2)内での次の燃焼をプログラミングするために前記第2の時点(T
2)において前記シリンダー(2)内に存在する再循環排気ガスの濃度を使用するステップと、
を備えることを特徴とする推定方法。
【請求項2】
前記シリンダー(2)内での燃焼のプログラミングは、所定のストローク数(Xp)に等しい進みを必要とし、かつ、前記進み時間(T
pred)は、以下の式を使用して計算される、請求項1に記載の推定方法。
T
pred=Xp/(2*ω)[9]
ここで、
T
pred:進み時間
Xp:進みストローク数
ω:前記内燃エンジン(1)の回転速度
【請求項3】
前記輸送時間(T
TR)は以下の式を使用して計算される、請求項1または請求項2に記載の推定方法。
T
TR=D/S
TR [10]
ここで、
T
TR:輸送時間
D:前記第1のセンサー(29)の位置と前記シリンダー(2)との間に存在する距離
S
TR:前記ガス混合物が前記吸気ダクト(6)に沿って、したがって前記吸気マニホールド(4)を通って流れる輸送速度
【請求項4】
前記輸送速度(S
TR)は以下の式を使用して計算される、請求項3に記載の推定方法。
S
TR=M
TOT/(ρ*S)[11]
ここで、
S
TR:輸送速度
M
TOT:前記吸気ダクト(6)を通って流れる前記ガス混合物の質量流量
ρ:前記吸気ダクト(6)を通って流れる前記ガス混合物の密度
S:前記吸気ダクト(6)の断面積
【請求項5】
前記吸気ダクト(6)を通って流れる前記ガス混合物の密度(ρ)は、制御ユニット(26)に格納されかつ前記ガス混合物の温度(T)および圧力(P)に応じた前記ガス混合物の密度(ρ)を示す実験マップに基づいて特定される、請求項4に記載の推定方法。
【請求項6】
前記吸気ダクト(6)を通って流れる前記ガス混合物の密度(ρ)は以下の式を使用して計算される、請求項4に記載の推定方法。
ρ=P/(R*T)[12]
ここで、
ρ:前記吸気ダクト(6)を通って流れる前記ガス混合物の密度
P:前記ガス混合物の圧力
R:ガスの固有定数
T:前記ガス混合物の温度
【請求項7】
前記吸気ダクト(6)内の前記ガス混合物の温度(T
int)および圧力(P
int)は第2のセンサー(27)によって測定され、
前記吸気マニホールド(4)内の前記ガス混合物の温度(T
man)および圧力(
Pman)は、第3のセンサー(28)によって測定され、
前記吸気ダクト(6)を通って流れる前記ガス混合物の密度(ρ)を特定するために、前記第2のセンサー(27)の測定値と前記第3のセンサー(28)の測定値との平均が使用される、請求項4ないし請求項6のいずれか1項に記載の推定方法。
【請求項8】
前記輸送時間(T
TR)は以下の式を使用して計算される、請求項1または請求項2に記載の推定方法。
T
TR=(D*S*P)/(M*R*T)[13]
ここで、
T
TR:輸送時間
D:前記第1のセンサー(29)の位置と前記シリンダー(2)との間に存在する距離
M:前記吸気ダクト(6)を通って流れるガス混合物の質量流量
S:前記吸気ダクト(6)の断面積
P:前記ガス混合物の圧力
R:ガスの固有定数
T:前記ガス混合物の温度
【請求項9】
前記輸送時間(T
TR)が以下の式を使用して計算される、請求項1または請求項2に記載の推定方法。
T
TR=(V
TR*P)/(M*R*T)[14]
ここで、
V
TR:輸送体積
M:前記吸気ダクト(6)を通って流れる前記ガス混合物の質量流量
P:前記ガス混合物の圧力
R:ガスの固有定数
T:前記ガス混合物の温度
【請求項10】
前記輸送体積(V
TR)は固定された設計情報であり、先験的に知られている、請求項9に記載の推定方法。
【請求項11】
前記輸送体積(V
TR)は、制御ユニット(26)に格納されかつ前記内燃エンジン(1)の吸気効率(ET
INT)および回転速度(ω)に従って前記輸送体積(V
TR)を示す実験マップに基づいて特定される、請求項9に記載の推定方法。
【請求項12】
時間遅延が、前記バッファー(30)に格納されると共に前記第3の時点(T
3)に対応する再循環排気ガスの濃度(%EGR)に適用される、請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載の推定方法。
【請求項13】
前記時間遅延は一次フィルターにより得られる、請求項12に記載の推定方法。
【請求項14】
前記一次フィルターは、前記吸気ダクト(6)を通って流れる前記ガス混合物の質量流量(M
TOT)に応じて変化するゲインを有する、請求項13に記載の推定方法。
【請求項15】
前記一次フィルターは、前記吸気ダクト(6)を通って流れる前記ガス混合物の質量流量(M
TOT)および前記進み時間(T
pred)に応じて変化するゲインを有する、請求項13に記載の推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本特許出願は、2018年10月17日に出願されたイタリア特許出願第102018000009537号の優先権を主張し、その開示全体は参照により本明細書中に組み込まれる。
【0002】
本発明は、内燃エンジンのシリンダー内に存在する再循環排気ガスの濃度を特定するための推定方法に関する。
【背景技術】
【0003】
よく知られているように、内燃エンジンは、それぞれが、少なくとも一つのそれぞれの吸気バルブによって吸気マニホールドに、そして少なくとも一つのそれぞれの排気バルブによって排気マニホールドに接続された、複数のシリンダーを含む。吸気マニホールドは、吸気ダクトを介して、(EGR回路から来る)排気ガスと(外部から来る)外気とを含むガス混合物を受け取る。
【0004】
現代の内燃エンジンでは、排気ガス(すなわち燃焼ガス)が再循環させられるが、これは、排気ガス中に存在する汚染物質(主にNox)の一部を減らすために、それを排気ダクトから吸気ダクトへと流動させることによって、排気ガスのごく一部(5~25%)が再循環させられることを意味する。
【0005】
オットーサイクルに従って動作する内燃熱エンジン(すなわち混合物が火花によって点火されるエンジン)は、(ほぼ)常に、酸素(空気)および燃料(ガソリンなど)の化学量論比に等しい比率で、シリンダー内で燃焼が行われる必要がある。結果として、シリンダー内の燃焼を正しくプログラミングするために(すなわち、適切な進みで空気および燃料の供給を調整するアクチュエータを動作させるために)、シリンダー内に存在するガス混合物の組成を、燃焼の時点で、ある程度の進みを伴って知っている必要がある。言い換えれば、燃焼の時点でシリンダー内に存在するガス混合物中に存在する再循環排気ガスの濃度を知っている必要がある。また、別の補完的な観点から、燃焼の時点でシリンダー内に存在するガス混合物中に存在する新鮮な空気、したがって酸素の濃度を知る必要がある(燃焼の時点でシリンダー内に存在するガス混合物は、外部から流入する新鮮な空気と、EGRシステムを通って再循環する排気ガスとからなる。したがって、新鮮な空気の濃度がわかっている場合、再循環排気ガスの濃度は減算によって容易に特定でき、その逆も同様である)。
【0006】
燃焼の時点でシリンダー内に存在するガス混合物中に存在する再循環排気ガスの濃度の推定が十分に正確でない場合、ノック現象またはメガノック現象の発生のリスクを回避するために、理想値(化学量論値)に対して燃料の量を増やす必要がある。ただし、この濃厚化(すなわち燃料量の増加)は、それが燃焼中の汚染物質の生成の増加を促すために、排気ガスの再循環に由来する利点を無効にする。
【0007】
特許文献1、特許文献2および特許文献3は、吸気ダクトに沿って配置され、吸気ダクトに沿って流れるガス混合物中の酸素濃度を測定するセンサーを備えた内燃エンジンを開示している。吸気ダクトに沿って流れるガス混合物中の酸素濃度を測定するセンサーの読み取り値に応じて、それは、低圧排気ガス再循環EGR回路の質量流量を特定し、すなわちそれは、シリンダー内に流入するガス混合物中に存在する再循環排気ガスの濃度を特定する。シリンダー内に流入するガス混合物中に存在する再循環排気ガスの濃度のこの特定は、定常運転モード(すなわち、回転速度およびエンジンポイントがある時間にわたって安定している場合)では非常に正確であるが、都合の悪いことに、動的走行モード(すなわち、回転速度およびエンジンポイントが変化し続ける場合)では、(相対的に)かろうじて正確であるに過ぎない。なぜなら、それは、ガス混合物がシリンダー内に流入する実際の時点とは異なる(それに対して先立つ)時点で、吸気ダクトに沿って流れるガス混合物の酸素濃度を測定するからである。
【0008】
特許文献4、特許文献5、特許文献6および特許文献7は、吸気ダクトに沿って流れる(新鮮な空気および再循環排気ガスからなる)ガス混合物の質量流量および酸素濃度を測定することを含む、内燃エンジンの制御方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】欧州特許出願公開第3040541号明細書
【文献】欧州特許出願公開第3128159号明細書
【文献】欧州特許出願公開第3128158号明細書
【文献】独国特許出願公開第102005044266号明細書
【文献】米国特許出願公開第2012037134号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2017268451号明細書
【文献】欧州特許出願公開第0843084号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、内燃エンジンのシリンダー内に存在する再循環排気ガスの濃度を特定するための推定方法を提供することであり、この推定方法により、あらゆる可能な運転条件で内燃エンジンのシリンダー内に存在する再循環排気ガスの濃度を極めて正確に特定することができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、特許請求の範囲の記載に従って、内燃エンジンのシリンダー内に存在する再循環排気ガスの濃度を特定するための推定方法が提供される。
【0012】
以下、本発明について、その非限定的な実施形態を示す添付図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明による推定方法を実施する電子制御ユニットを備えた内燃エンジンの概略図である。
【
図2】電子制御ユニットに実装された推定ロジックの概略図である。
【
図3】酸素濃度の推定(排気ガス濃度の推定に相当)に適用される一次フィルターの効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1において符号1は、全体として、ターボチャージャー過給システムによって過給される内燃エンジンを示している。
【0015】
内燃エンジン1は、四つのシリンダー2と、シリンダー2内に燃料を直接噴射する四つのインジェクター3とを備える。各シリンダー2は、少なくとも一つのそれぞれの吸気バルブ(図示せず)によって吸気マニホールド4に、そして少なくとも一つのそれぞれの排気バルブ(図示せず)によって排気マニホールド5に接続される。
【0016】
吸気マニホールド4は、排気ガス(以下でより詳細に説明する)と新鮮な空気(すなわち外部から来る空気)とを含むガス混合物を、新鮮な空気流用のエアフィルター7を備えると共に、吸気ダクト6と吸気マニホールド4との間に配置されたスロットルバルブ8によって調整される吸気ダクト6を通して受け取る。吸気ダクト6に沿ってかつエアフィルター7の下流にはマルチセンサー9も存在し、これは、流入空気流量MAIR、流入空気温度TAIRおよびエアフィルター7の下流の吸気圧力Pairを測定する。
【0017】
吸気ダクト6に沿って、取り込まれた空気を冷却する機能を満たすインタークーラー10が設けられている(あるいは、インタークーラー10は、吸気ダクト6の全長を短縮するために、吸気マニホールド4に内蔵することができる)。
【0018】
排気マニホールド5は排気ダクト11に接続されているが、これは、排気システムの一部であり、燃焼により生成されたガスを大気中に放出する。酸化触媒コンバーター12と消音器16とが排気ダクト11に沿って連続して配置されている。
【0019】
内燃エンジン1の過給システムは、シリンダー2から排出される排気ガスの作用により高速で回転するように排気ダクト11に沿って配置されたタービン18と、吸気ダクト6に沿って配置されると共にタービン18に機械的に接続されて供給ダクト6内に存在する空気の圧力を増加させるためにタービン18によって回転させられるコンプレッサー19とを備えたターボチャージャー17を備える。
図1に示す実施形態では、タービン18には、排気ガスがタービン18を迂回することを可能にするウエストゲートバルブが設けられている。過給システムに過度のストレスがかかるのを防ぐことを目的とするウエストゲートバルブの動作は、タービン18の回転速度を特定の制限内に保ち、したがって吸気側の過給圧力も制限する。可能な実施形態によれば、タービン18のインペラは可変ジオメトリーを有し、タービン18のインペラのジオメトリーは、(一般に電気的)アクチュエータによって制御され、排気ガスの速度または代替的にその流量を高める。
【0020】
内燃エンジン1は低圧排気ガス再循環回路を備え、これは、排気ダクト10から、好ましくは酸化触媒コンバーター12の下流から始まり、マルチセンサー9の下流で吸気ダクト6に至るEGRダクト23を備える。EGRダクト23に沿って、EGRダクト23を通って流れる排気ガスの流量を調整するように設計された低圧EGRバルブ24が設けられる。EGRダクト23に沿って、低圧EGRバルブ24の上流には、排気ダクト10からコンプレッサー19内に流入するガスを冷却する機能を果たす熱交換器25も設けられる。
【0021】
内燃エンジン1は、内燃エンジン1の全てのコンポーネントの動作を制御する電子制御ユニット26によって制御される。
【0022】
制御ユニット26は、スロットルバルブ8のすぐ上流で吸気ダクト6に沿って配置されると共に吸気ダクト6を通って流れるガス混合物の温度Tintおよび圧力Pintを測定するセンサー27に接続されている。制御ユニット26は、吸気マニホールド4内に配置されると共に吸気マニホールド4内に存在するガス混合物の温度Tmanおよび圧力Pmanを測定するセンサー28(全体的にセンサー27と同様)に接続される。最後に、制御ユニット26は、(センサー27の上流で)吸気ダクト6に沿って配置されると共に吸気ダクト6を通って流れるガス混合物中の酸素のパーセンテージ%O2(すなわち酸素の濃度%O2)を測定するセンサー29に接続される。特にセンサー29は、その出力がラムダ値に応じて電流に関して変化し得る値でありかつ酸素のパーセンテージ%O2を特定するために使用できるUEGO(ユニバーサル排気ガス酸素)ラムダセンサーである。好ましい実施形態によれば、特許出願EP30405441A1、EP3128159A1およびEP3128158A1の開示に従って、センサー29によって提供される読み取りが改善される(すなわちより正確で信頼性が高くなる)。
【0023】
以下、燃焼の時点でシリンダー2内に存在する再循環排気ガスの濃度を特定するために(すなわち、燃焼の時点でシリンダー2中に存在する新鮮な空気、したがって酸素の濃度を特定するために)、電子制御ユニット26で実施されるストラテジーについて説明する。新鮮な空気(すなわち外部から来る空気)では、酸素の濃度(すなわちパーセンテージ)は実質的に一定である(地上レベルの乾燥空気は、概ね、約78.09%の窒素N2と、20.9%の酸素O2と、0.93%のアルゴンArと、0.04%の二酸化炭素CO2と、少量のその他の成分とからなる)。結果として、酸素の濃度(すなわちパーセンテージ)から(単純な乗算により)容易に新鮮な空気の濃度を特定でき、逆もまた同様である。
【0024】
吸気ダクト6を通って流れるガス混合物の総質量流量MTOTは以下の式を満たす。
MTOT=MEGR_LP+MAIR [1]
MEGR_LP=MTOT-MAIR [1]
MTOT:吸気ダクト6を通って流れるガス混合物の質量流量
MAIR:吸気ダクト6を通って流れる外部から来る新鮮な空気の質量流量
MEGR_LP:吸気ダクト6を通って流れる低圧回路EGRLPを介して(すなわちEGR回路23を介して)再循環させられる排気ガスの質量流量
【0025】
吸気管6を通って流れるガス混合物の総質量流量MTOTに対する低圧EGR回路のインシデンスを示す量REGRを次のように定義する。
REGR=MEGR_LP/MTOT [2]
REGR:吸気管6を通って流れるガス混合物の総質量流量MTOTに対する低圧EGR回路のインシデンス
MTOT:吸気ダクト6を通って流れるガス混合物の質量流量
MEGR_LP:吸気ダクト6を通って流れる低圧回路EGRLPを通って再循環させられる排気ガスの質量流量
【0026】
式[2]に式[1]を挿入すると、次のようになる。
REGR=(MTOT-MAIR)/MTOT=1-(MAIR/MTOT)[3]
REGR:吸気管6を通って流れるガス混合物の総質量流量MTOTに対する低圧EGR回路のインシデンス
MTOT:吸気ダクト6を通って流れるガス混合物の質量流量
MAIR:吸気ダクト6を通って流れる外部から来る新鮮な空気の質量流量
【0027】
吸気ダクト6を通って流れる外部から流入する新鮮な空気の質量流量に約21%の酸素が含まれているという事実を考慮すると、次の式が適用される。
MAIR*21=MTOT*%O2 [5]
MAIR/MTOT=%O2/21 [5]
MTOT:吸気ダクト6を通って流れるガス混合物の質量流量
MAIR:吸気ダクト6を通って流れる外部から来る新鮮な空気の質量流量
%O2:センサー29によって検出される、吸気ダクト6を通って流れるガス混合物の質量流量に含まれる酸素のパーセンテージ
【0028】
式[4]を式[5]に挿入すると、次の式が得られる。
REGR=1-(%O2/21)[6]
REGR:吸気管6を通って流れるガス混合物の総質量流量MTOTに対する低圧EGR回路のインシデンス
%O2:センサー29によって検出される、吸気ダクト6を通って流れるガス混合物の質量流量に含まれる酸素のパーセンテージ
【0029】
可能な変形例によれば、マルチセンサー9は、外部から流入して吸気ダクト6を通って流れる新鮮な空気の質量流量MAIRおよび温度TAIRに加えて、外部から流入し吸気ダクト6を通って流れる新鮮な空気のサイコメトリックレベルPSIAIRも検出するように構成される。
【0030】
したがって、吸気ダクト6を通って流れるガス混合物の総質量流量MTOTに対する低圧回路EGRのインシデンスを示す量(または比率)REGRの推定を改善し、式[6]をより正確にすると共に、以下の式を使用して、吸気ダクト6を通って流れるガス混合物中の低圧排気ガス再循環回路EGRのパーセンテージ質量流量%REGRを導入できる。
REGR=1-(%O2/O2_REF)[7]
O2_REF=f(PSIAIR,TAIR)[8]
REGR:吸気管6を通って流れるガス混合物の総質量流量MTOTに対する低圧EGR回路のインシデンス
%O2:センサー29によって検出される、吸気ダクト6を通って流れるガス混合物の質量に含まれる酸素のパーセンテージ
O2_REF:温度TAIRおよび外部から流入して吸気ダクト6を通って流れる新鮮な空気のサイコメトリックレベルPSIAIRに応じて実験マップから得られる酸素の基準パーセンテージ
【0031】
吸気ダクト6を通って流れるガス混合物の質量に含まれる酸素のパーセンテージ%O2を測定するセンサー29は、吸気ダクト6に沿って物理的に取り付けられ、かつ、コンプレッサー19の位置およびスロットルバルブ8の位置のほぼ中間に、すなわち明らかに、シリンダー2内へのガス混合物の入口を調節する吸気バルブの前に存在する。特に、センサー29は、シリンダー2内へのガス混合物の入口を調節する吸気バルブから距離D(約数十センチメートル)に存在する。結果として、センサー29によって測定された酸素のパーセンテージ%O2は、シリンダー2内への充填に対して(すなわち、ガス混合物がシリンダー2内に流入する実際の時点に対して)明らかに進んでいる。言い換えれば、センサー29は、シリンダー2内に実際に流入するガス混合物中の酸素のパーセンテージ%O2を後で、すなわち酸素のパーセンテージ%O2が測定される時点に対する遅延を伴って測定する(したがって、酸素のパーセンテージ%O2の測定は、ガス混合物が実際にシリンダー2内に流入する時点と比較して進んでいる)。定常運転モード(すなわち回転速度およびエンジンポイントがある時間にわたって安定している場合)では、センサー29によって実行される酸素のパーセンテージ%O2の測定の進みは、酸素のパーセンテージ%O2がある時間にわたって同様に一定であるので影響を与えない(あるいは、とにかく、それは測定の進みよりも大幅に長い変動時間で非常にゆっくりと変化する)。一方、動的運転モード(すなわち回転速度および/またはエンジンポイントが変化し続ける場合)では、酸素のパーセンテージ%O2も時間の経過と共に同様に変化し(すなわち、それは測定の進みよりも短い変化時間で急速に変化する)、したがって、センサー29によって実行される酸素のパーセンテージ%O2の測定の進みは、以下で説明する方法で適切に補正されない場合、シリンダー2内での燃焼のプログラミングの誤差につながる。
【0032】
図2によると、各シリンダー2には、一つの燃焼サイクル、すなわち吸気(A)、圧縮(C)、出力(E)、排気(S)を構成する四つの段階(ピストンのストローク)が交互に周期的に存在する。各ストロークの開始時(すなわち前のストロークの終了時)に、対応するピストンが死点(上死点または下死点)に到達し、そこで動きの方向が反転するため、各ストロークは、死点から他の死点へのピストンの変位を伴う。
【0033】
制御ユニット26は、所定のストローク数Xpに等しい進みで各シリンダー2の燃焼をプログラムしなければならない。明らかに、ストローク数Xpに対応する進み時間Tpredは、以下の式に従って内燃エンジン1の回転速度に依存するために可変である。
Tpred=Xp/(2*ω)[9]
Tpred:進み時間
Xp:進みストロークの数
ω:内燃エンジン1の回転速度(たとえば、1秒あたりの回転数で測定)
【0034】
換言すれば、進み時間Tpredは、シリンダー2における燃焼のプログラミングと、シリンダー2における燃焼の実行(すなわち実際の実行)との間の経過時間に対応する。
【0035】
制御ユニット26は、センサー29によって実行される酸素のパーセンテージ%O
2の測定値を周期的に(例えば4msの周期で、すなわち4msごとに)受信し、センサー29で測定された酸素の各パーセンテージ%O
2に応じてセンサー29の領域で吸気ダクト6を通って流れる空気中に存在する再循環排気ガスの濃度(すなわちパーセンテージ)%EGRを特定し、そして、バッファー30に再循環排気ガスのこの濃度%EGRを格納する(これは、バッファー30内に再循環排気ガスの一連の濃度%EGRが存在することを示している
図2に大まかに示されている)。異なる実施形態によれば、酸素のパーセンテージ%O
2の測定値は、バッファー30内に格納され(すなわちバッファー30内には酸素の一連のパーセンテージ%O
2の測定値が存在する)、再循環排気ガスの濃度%EGRは、酸素のパーセンテージ%O
2の対応する測定に応じて後に特定される。
【0036】
明らかに、バッファー30は有限サイズを有し、したがって、(センサー29により実行される酸素のパーセンテージ%O2の測定に基づいて特定される)再循環排気ガスの一定かつ所定の数の濃度%EGRを含む。再循環排気ガスの新しい濃度%EGRが計算されるたびに(すなわちセンサー29が新しい測定値を提供するたびに)、再循環排気ガスの新しい濃度%EGRは最新のもの、すなわち再循環排気ガスの最も若い濃度%EGRとなり、そして最も新しくないもの、すなわち再循環排気ガスの最も古い濃度%EGRはバッファー30から削除される。一例として、センサー29は、4msごとに酸素のパーセンテージ%O2の新しい測定値を提供する(したがって、再循環排気ガスの濃度%EGRの新しい値は4msごとにバッファー30に格納され、再循環排気ガスの濃度%EGRの古い値はキャンセルされる)。
【0037】
さらに、制御ユニット26は、酸素のパーセンテージ%O2を測定するセンサー29が位置する地点からシリンダー2へと流れるためにガス混合物が必要とする輸送時間TTRを以下の式により計算する。
TTR=D/STR [10]
TTR:輸送時間
D:酸素のパーセンテージ%O2を測定するセンサー29の位置とシリンダー2との間に存在する距離
STR:輸送速度
【0038】
言い換えると、制御ユニット26は、酸素のパーセンテージ%O2を測定するセンサー29の位置とシリンダー2との間に存在する距離Dを知っており(この距離Dは、内燃エンジン1の形状によるものであり、先験的に知られている固定された設計情報である)、ガス混合物が吸気ダクト6に沿って、したがって吸気マニホールド4を通って流れる(すなわち、ガス混合物が距離Dを移動する)輸送速度STRを推定し、そして単純な除算で輸送時間TTRを計算する。
【0039】
各シリンダー2には、他のシリンダー2の距離Dと(わずかに)異なる(すなわち、シリンダー2がスロットルバルブ8に近いほど小さく、シリンダー2がスロットルバルブから遠いほど大きくなる)ことがある対応する距離Dがあることに留意されたい。したがって、各シリンダー2について、他の要因が同じであれば、他のシリンダー2の輸送時間TTRと潜在的に(わずかに)異なる対応する輸送TTR時間が計算される。
【0040】
吸気ストロークAの終わりにシリンダー2内に存在する酸素のパーセンテージ%O2を特定するために、制御ユニット26は、(センサー29によって実行される酸素のパーセンテージ%O2の測定値に基づいて計算されると共にバッファー30に時系列に保存される)再循環排気ガスの濃度%EGRを(燃焼のプログラミングの一部である)吸気の予測と同期させる。燃焼のプログラミングには、燃焼のアクターのシリンダー2内への供給、すなわち酸素を含む空気(酸化剤)の供給および燃料(還元剤)の供給を制御するアクチュエータおよび火花の点火(これは明らかに火花点火エンジンの場合にのみ燃焼を開始させる)の制御方法の確立が含まれる。結果として、燃焼のプログラミングには、燃料を供給するインジェクターの制御方法の確立、イグニッションコイルの制御方法の確立(存在する場合、すなわち火花点火エンジンの場合のみ)、スロットルバルブ8の制御方法の確立、および吸気バルブの制御方法の確立(明らかに吸気バルブの開閉時点を調整できる場合)が含まれる。言い換えると、燃焼のプログラミングは、シリンダー2への空気の供給を調整するアクチュエータの制御のプログラミング、シリンダー2への燃料の供給を調整するアクチュエータの制御のプログラミング、および/またはシリンダー2内の混合物の(火花)点火のプログラミングを意味する。
【0041】
この同期を実行するためには、そして
図2に模式的に示すように、現在の時点は時点T
1であり(すなわちエンジン制御は時点T
1にある)、プログラムされる燃焼に対応する吸気ストロークA
*が生じる時点T
2の直後に起こる燃焼をプログラミングする必要がある(
図2によれば、通常、吸気ストロークの終わりが考慮される)。時点T
1と時点T
2(これは時点T
1に時間的に続いており、したがって時点T
1に対して未来にある)との間には(進みストロークXpの数に対応した)進み時間T
predが存在する。現在の時点T
1から始まって、進み時間T
predを時点T
1に付加すると、プログラムされる燃焼に対応する吸気ストロークA
*が生じる(将来の)時点T
2が得られる。時点T
2から輸送時間T
TRを減算することにより(すなわち時点T
2を進めることにより)、(過去の)時点T
3が特定されるが、そこでは、(センサー29によって測定された酸素のパーセンテージ%O
2に基づいて計算された)再循環排気ガスの濃度%EGR値はバッファー30に読み込まれ、この測定値は吸気ストロークA
*に対応する燃焼をプログラミングするために使用される。換言すれば、再循環排気ガスの濃度%EGRを吸気ストロークA
*に対応する燃焼のプログラミングと同期させるために、バッファー30が読み取られ、時点T
3に対応する再循環排気ガスの濃度%EGRが取得されるが、これは、燃焼のプログラミングが実行される現在の時点T
1から、輸送時間T
TRと進み時間T
predとの差に等しい時間量を減算する(減少させる)ことにより得られる。輸送時間T
TRは、通常、進み時間T
predよりも長い(またはせいぜい等しい)。
【0042】
非限定的であるが好ましい実施形態によれば、吸気ストロークA
*に対応する燃焼をプログラミングするとき、時点T
3における再循環排気ガスの濃度%EGRは直接使用されず、一次フィルターが時点T
3での再循環排気ガスの上記濃度%EGRに適用され、この一次フィルターは吸気マニホールド4内のガスの混合を考慮したものである(すなわち、それは、吸気マニホールド4内のガス混合のモデルを創出し、したがって吸気マニホールド4内のガスの混合の効果をシミュレートする)。言い換えれば、新しい値への前の値からの再循環排気ガスの濃度%EGRの変化は瞬間的には(すなわち、物理的現実に対応しない段階的な変動の法則により)発生せず、それは(一次フィルターに対応する)指数関数的な変動の法則により段階的に発生する。上記の内容は
図3に示されているが、
図3は、どのようにして、再循環排気ガスの濃度%EGRの以前の値(「OLD」)から再循環排気ガスの濃度%EGRの次の値(「NEW」)への移行が(一次フィルターを使用して数学的に得られた)指数関数的な法則に従って緩やかに生じるかを示している。
【0043】
可能な実施形態によれば、時点T3における再循環排気ガスの濃度%EGRをフィルタリングするために使用される(すなわち、再循環排気ガスの濃度%EGRの以前の値から次の値への移行を遅くするために使用される)一次フィルターは一定のゲインを有する。あるいは、一次フィルターのゲインは可変であり、制御ユニット26に格納されると共に吸気ダクト6を通って流れるガス混合物の質量流量MTOTに基づいて一次フィルターのゲインを提供する実験マップに従って特定される。さらなる変形例によれば、一次フィルターのゲインは可変であり、制御ユニット26に格納されると共に吸気ダクト6を通って流れるガス混合物の質量流量MTOTに基づいてかつ進み時間Tpredに基づいて一次フィルターのゲインを提供する実験マップに従って特定される。このマップは、実験室の調整段階で実験的に特定される。すなわち、全ての可能な動作点で一次フィルターのゲインの理想値を特定するために、一連の高性能実験室センサー(すなわち非常に正確で非常に敏捷なセンサー)が取り付けられた内燃熱エンジン1が使用される。
【0044】
好ましいが非限定的な実施形態によれば、輸送速度STR(すなわち、吸気ダクト6および吸気マニホールド4に沿ってガスが流れる平均速度)は、以下の式を用いて制御ユニット26によって計算される。
STR=MTOT/(ρ*S)[11]
STR:輸送速度
MTOT:吸気ダクト6を通って流れるガス混合物の質量流量
ρ:吸気ダクト6を通って流れるガス混合物の密度
S:吸気ダクト6の断面積
【0045】
吸気ダクト6を通って流れるガス混合物の質量流量MTOTは、標準的なエンジン制御ストラテジーを使用する既知の方法で制御ユニット26により推定される(例えば、「速度密度」として知られるモデルにより推定できる)。言い換えれば、制御ユニット26は、とりわけ、吸気ダクト6を通って流れるガス混合物の質量流量MTOTの信頼できる推定値の特定を可能にすることができる標準的なエンジン制御ストラテジーを実行する。代替的に、吸気ダクト6を通って流れるガス混合物の質量流量MTOTは、上記の式[1](またはその他の同様の式)を使用し、そして外部から来る新鮮な空気の質量流量MAIRを(たとえば空気流量計の測定値から、そして酸素のパーセンテージの測定から得られたEGR濃度の値から、あるいは低圧回路EGRLPを通って再循環される排気ガスの質量流量MEGR_LPから)知ることで計算できる。
【0046】
吸気ダクト6を通って流れるガス混合物の密度ρは、制御ユニット26に格納されると共にガス混合物の温度Tおよび圧力Pに基づいてガス混合物の密度ρを提供する実験マップに従って特定することができる。ガス混合物の温度Tおよび圧力Pは、センサー27によって測定される吸気ダクト6を通って流れるガス混合物の温度Tintおよび圧力Pint、あるいはセンサー28によって測定される吸気マニホールド4内に存在するガス混合物の温度Tmanおよび圧力Pman、あるいはセンサー27および28の測定間の平均であってもよい。上記マップは、実験室の調整段階中に実験的に特定される。すなわち、全ての可能な動作点でガス混合物の密度ρの値を特定するために、一連の高性能実験室センサー(すなわち非常に正確で非常に敏捷なセンサー)が取り付けられた内燃熱エンジン1が使用される。
【0047】
代替的に、吸気ダクト6を通って流れるガス混合物の密度ρは次の式を使用して計算できる。
ρ=P/(R*T)[12]
ρ:吸気ダクト6を通って流れるガス混合物の密度
P:ガス混合物の圧力(センサー27で測定されるか、センサー28で測定されるか、またはセンサー27および28の測定値間の平均)
R:空気のそれに近似するガスの固有定数(第一近似では、一般ガス定数に等しいと仮定できる)
T:ガス混合物の温度(センサー27で測定されるか、センサー28で測定されるか、またはセンサー27および28の測定値間の平均)
【0048】
式[10]、式[11]および式[12]を組み合わせると次の方程式が得られる(これは、式[10]、式[11]および式[12]の代わりに制御ユニット26に実装できる)。
TTR=(D*S*P)/(M*R*T)[13]
TTR:輸送時間
D:酸素のパーセンテージ%O2を測定するセンサー29の位置とシリンダー2との間に存在する距離
M:吸気ダクト6を通って流れるガス混合物の質量流量
S:吸気ダクト6の断面積
P:ガス混合物の圧力(センサー27で測定されるか、センサー28で測定されるか、またはセンサー27および28の測定値間の平均)
R:空気のそれに近似するガスの固有定数(第一近似では一般ガス定数に等しいと仮定できる)
T:ガス混合物の温度(センサー27で測定されるか、センサー28で測定されるか、またはセンサー27および28の測定値間の平均)
【0049】
代替的に、式[13]の代わりに次の式を使用できる。
TTR=(VTR*P)/(M*R*T)[14]
VTR:輸送体積(すなわちセンサー29と検査中のシリンダー2の吸気バルブとの間に含まれる吸気体積)
M:吸気ダクト6を通って流れるガス混合物の質量流量
P:ガス混合物の圧力(センサー27で測定されるか、センサー28で測定されるか、またはセンサー27および28の測定値間の平均)
R:空気のそれに近似するガスの固有定数(第一近似では、一般ガス定数に等しいと仮定できる)
T:ガス混合物の温度(センサー27で測定されるか、センサー28で測定されるか、またはセンサー27および28の測定値間の平均)
【0050】
可能な実施形態によれば、輸送体積VTRは、内燃エンジン1のジオメトリーによるものであり、かつ、先験的に知られている固定された設計情報である。(より詳細かつ正確な)代替実施形態によれば、輸送体積VTRは、制御ユニット26に格納されかつ(制御ユニット26によって使用される標準的なエンジン制御ストラテジーから得られる)吸気効率ETintおよび内燃エンジン1の回転速度ωに基づく輸送容積VTRを提供する実験マップに従って特定される。
【0051】
このマップは、実験室の調整段階で実験的に決定される。すなわち、内燃熱エンジン1が使用され、これには、一連の高性能実験室センサー(すなわち非常に正確で非常に敏捷なセンサー)が、全ての可能な動作時点における輸送体積VTRの値を測定するために設置される。
【0052】
上述したように、バッファー30には、センサー29によって測定された対応する酸素のパーセンテージ%O2に応じて計算された再循環排気ガスの濃度%EGRが格納されている。代替的に、バッファー30には、センサー29によって測定された酸素のパーセンテージ%O2を格納することができ、これは後で再循環排気ガスの対応する濃度%EGRを特定するために使用される。
【0053】
添付図面に示されている実施形態では、内燃エンジンはターボ過給エンジンである(ターボチャージャーの代替として容積コンプレッサーを使用できる)。本明細書に示されていない別の実施形態によれば、内燃エンジン1は吸気(すなわちターボチャージャーまたは容積コンプレッサーによって得られる過給を受けない)エンジンである。
【0054】
添付図面に示す実施形態では、EGRダクト23は吸気ダクト6内に、したがってスロットルバルブ8の上流に通じている(明らかに、センサー29はEGRダクト23の到着点の下流で吸気ダクト6に沿って配置される)。本明細書に示されていない別の実施形態によれば、EGRダクト23は吸気マニホールド4内に、したがってスロットルバルブ8の下流に通じている(明らかに、センサー29はEGRダクト23の到着点の下流で吸気マニホールド4内に配置されている)。
【0055】
本明細書に記載の実施形態は、この理由のために本発明の保護範囲を超えることなく、互いに組み合わせることができる。
【0056】
上記のように、燃焼の時点でシリンダー2内に存在する再循環排気ガスの濃度を推定するための方法には多くの利点がある(既に述べたように、再循環排気ガスの濃度を特定することは、新鮮な空気/酸素の濃度を特定することを意味し、逆も同様である)。
【0057】
第一に、上記のように、燃焼の時点でシリンダー2内に存在する再循環排気ガスの濃度を推定するための方法は、定常走行モード(すなわち回転速度およびエンジンポイントがある時間にわたって安定しているとき)だけでなく、特に動的走行モード(すなわち回転速度および/またはエンジンポイントが変化し続けるとき)でも、全ての可能な動作時点において非常に正確である(すなわちわずかな誤差しか生じない)。
【0058】
さらに、上記のように、燃焼の時点でシリンダー2内に存在する再循環排気ガスの濃度を推定するための方法は、それが相当な計算能力を必要とせず、しかも大きなメモリスペースを必要としないので、簡単であり、かつ、経済的に実施できる。
【符号の説明】
【0059】
1 エンジン
2 シリンダー
3 インジェクター
4 吸気マニホールド
5 排気マニホールド
6 吸気ダクト
7 エアフィルター
8 スロットルバルブ
9 マルチセンサー
10 インタークーラー
11 排気ダクト
12 酸化触媒コンバーター
16 サイレンサー
17 ターボチャージャー
18 タービン
19 コンプレッサー
23 EGRダクト
24 EGRバルブ
25 熱交換器
26 電子制御ユニット
27 センサー
28 センサー
29 センサー
30 バッファー
%O2 酸素のパーセンテージ
%EGR 再循環排気ガスの濃度
D 距離
Tpred 進み時間
TTR 輸送時間
Xp 進みストローク数