(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】過熱監視装置、配電盤、過熱監視プログラム
(51)【国際特許分類】
G01J 5/00 20220101AFI20230801BHJP
G01J 5/12 20060101ALI20230801BHJP
G01J 1/42 20060101ALI20230801BHJP
H02B 3/00 20060101ALI20230801BHJP
H02B 13/065 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
G01J5/00 101Z
G01J5/12
G01J1/42 B
H02B3/00 M
H02B13/065 C
(21)【出願番号】P 2019226851
(22)【出願日】2019-12-16
【審査請求日】2022-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】503035604
【氏名又は名称】旭化成テクノシステム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000116736
【氏名又は名称】旭化成エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】今野 淳一
(72)【発明者】
【氏名】藤原 英二
(72)【発明者】
【氏名】富高 久幸
【審査官】小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-315592(JP,A)
【文献】特開2016-038277(JP,A)
【文献】特開平05-060617(JP,A)
【文献】特開平08-083544(JP,A)
【文献】特開平09-200918(JP,A)
【文献】特開2002-366953(JP,A)
【文献】特開平08-029541(JP,A)
【文献】特開2010-216858(JP,A)
【文献】特開2010-185704(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 1/00 - G01J 1/60
G01J 5/00 - G01J 5/90
G01J 11/00
H02B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視領域の異なる複数の検出部を有し、当該検出部は前記監視領域に存在する物体の放射エネルギを検出する放射エネルギ検出部と、
少なくとも2つの前記検出部で検出された少なくとも2つの前記放射エネルギと予め設定した第1しきい値との関係に基づいて、前記
少なくとも2つの
前記検出部
それぞれの前記監視領域のうちの
、少なくとも一
つの前記監視領域に存在する前記物体が過熱状態にあるか否かを判定する過熱判定部と、
前記過熱判定部によって判定された判定結果を通知する通知部と、を備え
、
前記過熱判定部は、前記少なくとも2つの前記放射エネルギのうち前記第1しきい値以上となる放射エネルギを検出した前記検出部の数が1以上第1規定値以下であるか否かに基づいて、前記第1しきい値以上となる放射エネルギを検出した前記検出部の前記監視領域に存在する前記物体が過熱状態にあるか否かを判定し、
前記第1規定値は、前記複数の検出部の全個数に対する所定の比率に応じて設定される過熱監視装置。
【請求項2】
少なくとも2つの異なる監視領域に存在する物体の放射エネルギをそれぞれ検出する複数の検出部を有する放射エネルギ検出部から、前記複数の検出部それぞれによって検出された放射エネルギを示す情報を受信する受信部と、
当該受信部で受信した前記情報が示す前記放射エネルギと予め設定した第1しきい値との関係に基づいて、前記検出部のうちの少なくとも一
つの前記監視領域に存在する前記物体が過熱状態にあるか否かを判定する過熱判定部と、
前記過熱判定部による判定結果を通知する通知部と、を備え
、
前記過熱判定部は、前記少なくとも2つの前記放射エネルギのうち前記第1しきい値以上となる放射エネルギを検出した前記検出部の数が1以上第1規定値以下であるか否かに基づいて、前記第1しきい値以上となる放射エネルギを検出した前記検出部の前記監視領域に存在する前記物体が過熱状態にあるか否かを判定し、
前記第1規定値は、前記複数の検出部の全個数に対する所定の比率に応じて設定される過熱監視装置。
【請求項3】
前記過熱判定部は、前記第1しきい値以上となる前記放射エネルギを検出した前記検出部の数が1以上前記第1規定値以下である場合、前記第1しきい値以上となる前記放射エネルギを検出した前記検出部の前記監視領域に存在する前記物体が過熱状態にあると判定する請求項
1又は請求項2に記載の過熱監視装置。
【請求項4】
前記複数の検出部は、当該複数の検出部のいずれかの監視領域に監視対象の物体が配置されるように配置され、複数の前記物体は、それぞれ複数の系統のうちのいずれかの系統に属し且つ同一の系統に属する物体は互いに関連して動作し、
前記過熱判定部は、前記第1しきい値以上となる放射エネルギを検出した前記検出部の数が
前記第1規定値以上であり且つ前記第1規定値よりも大きい第2規定値以下であって、さらに、前記第1しきい値以上となる放射エネルギを検出した前記検出部の監視領域に存在する物体のうち、同一の前記系統に属する物体の数が、当該物体が属する系統に属している全ての物体数に対する所定の比率に応じて設定される第3規定値以上である場合、当該第3規定値以上であると判定される前記物体が属する系統の動作に起因して、前記第1しきい値以上の前記放射エネルギが生じたと判定し、
前記第1しきい値以上となる放射エネルギを検出した前記検出部の数が、前記第2規定値以上である場合は、前記第1しきい値以上の前記放射エネルギは、環境温度の上昇に起因して生じたと判定する請求項1又は請求項2に記載の過熱監視装置。
【請求項5】
前記放射エネルギ検出部は、前記検出部として、第一の監視距離及び第一の視野角で決まる第一の監視領域内に存在する物体の放射エネルギを検知する第一の検出部と、
前記第一の監視距離よりも短い第二の監視距離及び第二の視野角で決まる第二の監視領域内に存在する物体の放射エネルギを検知する第二の検出部と、を有する請求項1から請求項
4のいずれか一項に記載の過熱監視装置。
【請求項6】
請求項1から請求項
5のいずれか一項に記載の過熱監視装置を、筐体内の過熱状態を監視する装置として備える配電盤。
【請求項7】
監視領域の異なる検出部を少なくとも2つ有し、それぞれの前記監視領域に存在する物体の放射エネルギを少なくとも2つ出力する放射エネルギ検出部から、少なくとも2つの前記検出部で検出された2つの前記放射エネルギを示す情報を受信するステップと、
受信した少なくとも前記2つの前記検出部で検出された前記少なくと
も2つの前記放射エネルギを示す情報と予め設定した第1しきい値との関係に基づいて、前記少なくとも2つの前記放射エネルギを検出した前記少なくとも2つの前記検出部のうちの
、少なくとも一
つの前記監視領域に存在する前記物体が過熱状態にあるか否かを判定するステップと、
前記過熱状態にあるか否かを判定するステップでの判定結果を通知するステップと、を
有し、
前記過熱状態にあるか否かを判定するステップでは、受信した前記少なくとも2つの検出部で検出された前記少なくとも2つの前記放射エネルギのうち、前記第1しきい値以上となる放射エネルギを検出した前記検出部の数が1以上第1規定値以下であるか否かに基づいて、前記第1しきい値以上となる前記放射エネルギを検出した前記検出部の前記監視領域に存在する前記物体が過熱状態にあるか否かを判定し、
前記第1規定値は、前記放射エネルギ検出部が有する前記検出部の全個数に対する所定の比率に応じて設定される、
コンピュータに実行させるための過熱監視プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過熱監視装置、配電盤、過熱監視プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気設備の火災を防ぐため、電気設備の温度を検出することで、火災の原因となる電気設備の過熱を検出するようにした電気設備温度監視装置が知られている。
このような電気設備温度監視装置では、環境温度の上昇に起因して電気設備の温度が通常より高くなった場合、異常が発生していると誤検知されることがある。この誤検知を回避するために、例えば、監視対象領域において過去に検出された過去温度と現在の温度とに基づいて、監視対象領域の温度の正常性を評価するようにした電気設備温度監視装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、過去温度と現在の温度とに基づいて、監視対象領域の温度の正常性を評価する場合、過去の各時点で推測された過去温度とこの過去温度が計測された時刻とを関連付けた温度履歴が、メモリに記憶されていなければならない。そのため、正常性を評価するのに十分な温度履歴が記憶されるまで評価を行うことができず、その間、過熱状態の監視を行うことができないという問題がある。
そこで、この発明は、上記従来の未解決の課題に着目してなされたものであり、温度履歴を用いなくとも監視対象領域の過熱状態を監視することの可能な過熱監視装置、配電盤、及び過熱監視プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態に係る過熱監視装置は、監視領域の異なる複数の検出部を有し、当該検出部は前記監視領域に存在する物体の放射エネルギを検出する放射エネルギ検出部と、少なくとも2つの前記検出部で検出された少なくとも2つの前記放射エネルギと予め設定した第1しきい値との関係に基づいて、前記少なくとも2つの前記検出部それぞれの前記監視領域のうちの、少なくとも一つの前記監視領域に存在する前記物体が過熱状態にあるか否かを判定する過熱判定部と、前記過熱判定部によって判定された判定結果を通知する通知部と、を備え、前記過熱判定部は、前記少なくとも2つの前記放射エネルギのうち前記第1しきい値以上となる放射エネルギを検出した前記検出部の数が1以上第1規定値以下であるか否かに基づいて、前記第1しきい値以上となる放射エネルギを検出した前記検出部の前記監視領域に存在する前記物体が過熱状態にあるか否かを判定し、前記第1規定値は、前記複数の検出部の全個数に対する所定の比率に応じて設定されることを特徴としている。
【0006】
本発明の他の態様に係る過熱監視装置は、少なくとも2つの異なる監視領域に存在する物体の放射エネルギをそれぞれ検出する複数の検出部を有する放射エネルギ検出部から、前記複数の検出部それぞれによって検出された放射エネルギを示す情報を受信する受信部と、当該受信部で受信した前記情報が示す前記放射エネルギと予め設定した第1しきい値との関係に基づいて、前記検出部のうちの少なくとも一つの前記監視領域に存在する前記物体が過熱状態にあるか否かを判定する過熱判定部と、前記過熱判定部による判定結果を通知する通知部と、を備え、前記過熱判定部は、前記少なくとも2つの前記放射エネルギのうち前記第1しきい値以上となる放射エネルギを検出した前記検出部の数が1以上第1規定値以下であるか否かに基づいて、前記第1しきい値以上となる放射エネルギを検出した前記検出部の前記監視領域に存在する前記物体が過熱状態にあるか否かを判定し、前記第1規定値は、前記複数の検出部の全個数に対する所定の比率に応じて設定されることを特徴としている。
【0007】
本発明の他の態様に係る配電盤は、上記態様の過熱監視装置を、筐体内の過熱状態を監視する装置として備えることを特徴としている。
【0008】
さらに、本発明の他の態様に係る過熱監視プログラムは、監視領域の異なる検出部を少なくとも2つ有し、それぞれの前記監視領域に存在する物体の放射エネルギを少なくとも2つ出力する放射エネルギ検出部から、少なくとも2つの前記検出部で検出された2つの前記放射エネルギを示す情報を受信するステップと、受信した少なくとも前記2つの前記検出部で検出された前記少なくとも2つの前記放射エネルギを示す情報と予め設定した第1しきい値との関係に基づいて、前記少なくとも2つの前記放射エネルギを検出した前記少なくとも2つの前記検出部のうちの、少なくとも一つの前記監視領域に存在する前記物体が過熱状態にあるか否かを判定するステップと、前記過熱状態にあるか否かを判定するステップでの判定結果を通知するステップと、を有し、前記過熱状態にあるか否かを判定するステップでは、受信した前記少なくとも2つの検出部で検出された前記少なくとも2つの前記放射エネルギのうち、前記第1しきい値以上となる放射エネルギを検出した前記検出部の数が1以上第1規定値以下であるか否かに基づいて、前記第1しきい値以上となる前記放射エネルギを検出した前記検出部の前記監視領域に存在する前記物体が過熱状態にあるか否かを判定し、前記第1規定値は、前記放射エネルギ検出部が有する前記検出部の全個数に対する所定の比率に応じて設定される、コンピュータに実行させるための過熱監視プログラム。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、温度履歴を予め検出していなくても、監視対象領域の過熱状態を監視することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る過熱監視装置の一例を示す構成図である。
【
図2】配電盤における放射エネルギ検出部の配置例を説明するための説明図である。
【
図3】検出部の監視領域の一例を説明するための図である。
【
図4】判定部での判定処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図5】しきい値Sth1の設定方法を説明するための図である。
【
図7】第二実施形態における判定処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図10】第三実施形態における判定処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図11】本発明の変形例を説明するための説明図である。
【
図12】本発明の変形例を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものである。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0012】
<第一実施形態>
まず、本発明の第一実施形態を説明する。
図1は、本発明の第一実施形態に係る過熱監視装置の一例を示す構成図である。
ここでは、過熱監視装置100により、配電盤の温度監視を行う場合について説明する。なお、配電盤の温度監視を行う場合に限るものではなく、任意の対象物について温度監視を行う場合であっても適用することができる。
図1に示すように、過熱監視装置100は、放射エネルギ検出部1と、過熱検出部2と、を備える。放射エネルギ検出部1は、物体の放射エネルギを検出する、監視領域の異なる複数の検出部11と、制御部12とを備える。検出部11は、例えば放射エネルギ検出素子を含んで構成される。放射エネルギ検出素子は、例えば、赤外線検出素子又はサーモパイル等である。
【0013】
制御部12は、各検出部11で検出された放射エネルギの計測値を入力し、この計測値の送信元の検出部11を特定する識別情報を付加して検出信号として出力する。制御部12は、例えば、FPGA(field-programmable gate array)等の処理回路と、MPU(microprocessor unit)等の演算回路と、SRAM(static random access memory)等の記憶部等とを備える。また制御部12は、過熱検出部2の後述する判定部21と通信を行うためのインタフェース部12aを有し、各検出部11で検出された放射エネルギの計測値とメモリ等に格納された各検出部11の識別情報とを演算回路で対応付け、これを検出信号としてインタフェース部12aを介してバス等の通信回線による有線又は無線で過熱検出部2に送信する。
【0014】
過熱検出部2は、判定部(過熱判定部)21と、記憶部22と、過熱状態通知部(通知部)23と、を備える。
判定部21は、例えばマイクロコンピュータ等で構成され、放射エネルギ検出部1の制御部12と通信を行うためのインタフェース部(受信部)21aを備えている。判定部21は、インタフェース部21aを介して制御部12から検出信号を入力し、検出信号に含まれる識別情報から、この検出信号の送信元の検出部11を特定し、入力した放射エネルギの計測値に基づき、検出部11の監視領域内の物体が過熱状態にあるか否かを判定する。
【0015】
記憶部22には、放射エネルギの計測値から過熱状態であるか否かを判定する判定処理を実行するためのプログラムや、判定処理での判定に用いるしきい値や規定値等、判定処理に必要な情報が格納される。
過熱状態通知部23は、判定部21が過熱状態であると判定した場合に、過熱状態であることを外部に通知する。過熱状態通知部23は、例えば、警報ランプ、表示装置、警報音発生回路、上位システムとの通信装置等、これらのうちの一又は複数で形成される。
【0016】
なお、過熱状態通知部23が、判定部21から、過熱状態であることを表す放射エネルギを検出した検出部を特定する情報も入力するように構成し、特定した検出部を特定する情報と対応付けて過熱状態であることを表示装置に表示するようにしてもよい。また、例えば、工場等、放射エネルギ検出部1が複数箇所に設けられている場合には、放射エネルギ検出部1が設けられている箇所それぞれに過熱状態通知部23として例えば警報ランプを設けておき、過熱状態を検出した放射エネルギ検出部1に対応する警報ランプを点灯させるように構成してもよい。
【0017】
放射エネルギ検出部1は基板10に実装され、例えば、
図2に示すように、略直方体状の配電盤200内の上面及び下面に、放射エネルギ検出部1U及び1Dが設けられ、これらは基板10に実装された検出部11の入射面が互いに対向するように配置される。また、例えば、配電盤200の正面に設けられた扉の内側に、放射エネルギ検出部1Fが設けられ、このとき、基板10に実装された検出部11の入射面が、配電盤200の扉と対向する面と対向するように配置される。
放射エネルギ検出部1(1U、1D、1F)は、
図2に示すように、それぞれ三つの検出部11が基板10の長手方向に平行な直線上に配置され、この基板10が長手方向に例えば四つ連接して配置される。隣り合う基板10どうしは例えばバス接続され、一方の端部の基板10と過熱検出部2とが通信回線によって接続される。
【0018】
過熱検出部2は、例えば、放射エネルギ検出部1U、下面に配置した放射エネルギ検出部1D、側面に配置した放射エネルギ検出部1Fとで共通に一つ設けられ、一つの過熱検出部2と、各放射エネルギ検出部1U、1D及び1Fとが通信回線によって、接続されていてもよい。
なお、
図2では、分かりやすくするために、放射エネルギ検出部1U、1D及び1F実線で記載している。
【0019】
放射エネルギ検出部1U及び1Dは必ずしも対向するように配置されていなくともよい。また、ここでは、配電盤200内の上面、下面及び扉それぞれに放射エネルギ検出部1U、1D及び1Fを設ける場合について説明しているがこれに限るものではない。例えば、配電盤200の高さと、検出部11の検出可能距離との関係から、仮に配電盤200の上面及び下面のいずれか一方のみに放射エネルギ検出部1を設けたとしても配電盤200内の各部の放射エネルギを十分検出することが可能であれば、上面及び下面のいずれか一方にのみ、放射エネルギ検出部1を設けてもよい。また、放射エネルギ検出部1は、配電盤200の上下の面及び四つの側面のそれぞれに設けてもよく、配電盤200の六面のうちいずれか一つの面のみに設けてもよい。要は、配電盤200内の温度監視対象物の位置に応じて、検出部11が温度監視対象物からの放射エネルギを検出することのできる位置に放射エネルギ検出部1を配置すればよい。また、検出部11は、温度監視対象物の数や大きさ等に応じて必要数配置すればよい。
【0020】
また、過熱検出部2は、放射エネルギ検出部1毎に設けてもよい。
過熱検出部2は、必ずしも配電盤200内に配置される必要はなく、例えば、工場内に配置された配電盤200に放射エネルギ検出部1を設け、工場内の集中管理室に過熱検出部2を設けてもよい。放射エネルギ検出部1と過熱検出部2との間で無線又は有線により通信を行い、配電盤200に設けた放射エネルギ検出部1において検出した検出信号を、集中管理室の過熱検出部2に無線又は有線により送信し、集中管理室に設けた過熱検出部2で、過熱状態を判定するようにしてもよい。
【0021】
図3は、
図2に示すように配置された複数の放射エネルギ検出部1のうち、例えばケーブル端子201の温度監視を行う放射エネルギ検出部1の、各検出部11における監視領域を側面から見た図である。なお、
図3は、放射エネルギ検出部1として、3つの検出部11が等間隔に配置された基板10を4つ並べて、12個の検出部11a~11lを備える場合を示す。各検出部11a~11lは、ケーブル端子201a~201lそれぞれに対応して設けられ、各検出部11a~11lは、それぞれ対応するケーブル端子201の放射エネルギを個別に検出するようになっている。なお、ここでは、ケーブル端子201a~201lのそれぞれに検出部11a~11lを対応させる場合について説明するが、これに限るものではなく、例えば一つの検出部11によって複数のケーブル端子201の放射エネルギを検出するようにしてもよい。また、複数の検出部11a~11lは、当該複数の検出部11a~11lのいずれかの監視領域の少なくとも一部に監視対象の物体である複数のケーブル端子201のいずれかが配置されるように、配置されればよい。例えば、一の検出部の監視領域と他の検出部の監視領域とは少なくとも一部で重なり、一の検出部の監視領域と他の検出部の監視領域とを含むいずれかの領域に1つ以上のケーブル端子201が配置されてもよい。
【0022】
図4は、判定部21での判定処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
各判定部21での処理は同一であるので、ここでは、放射エネルギ検出部1Uに含まれる検出部11a~11lで検出された計測値に基づき、判定部21で過熱状態を監視する場合について説明する。
第一実施形態における判定部21では、予め記憶部22に記憶されている、過熱状態にあると判定するための放射エネルギの計測値のしきい値(第1しきい値)Sth1と、各検出部11で検出した放射エネルギの検出値との大小関係に基づいて過熱状態であるか否かを判定する。
【0023】
しきい値Sth1は、例えば、予め試験を行うことで設定される。例えば、放射エネルギ検出部1に含まれる検出部11a~11lのうちのいずれか一つ、例えば一列に配置された検出部11のうちの中央部付近に位置する検出部11fについて、
図5に示すように、過熱が生じていないときの放射エネルギの平均値μ1及び過熱が生じているときの放射エネルギμ2を取得する。この「μ2-δ」と「μ1+δ」との間の値を、しきい値Sth1として設定する。なお、δは、過熱が生じていないときの放射エネルギの平均値μ1及び過熱が生じているときの放射エネルギμ2それぞれの変動を考慮したマージンである。
【0024】
つまり、しきい値Sth1は、放射エネルギの大きさから過熱が生じているとみなすことの可能な値に設定される。
図2に示すように、配電盤200内に放射エネルギ検出部1U、1D、1Fが設けられている場合には、放射エネルギ検出部1毎にしきい値Sth1を設けてもよいし、放射エネルギ検出部1U、1D、1Fで共通のしきい値Sth1を設定してもよく、しきい値Sth1は検出対象物と各放射エネルギ検出部1との位置関係等に基づいて設定すればよい。
【0025】
図4のフローチャートに示すように、判定部21では、制御部12から各検出部11a~11lで検出した放射エネルギの計測値を検出信号として読み込むと、放射エネルギの計測値のうち、いずれかがしきい値Sth1以上であるか否かを判定する(ステップS1)。判定部21は、いずれの検出部11からの放射エネルギの計測値もしきい値Sth1よりも小さいと判定した場合には、ステップS1に戻り、いずれかの検出部11からの放射エネルギの計測値がしきい値Sth1以上となるまでの間、例えば1分毎等、所定周期で各検出部11からの放射エネルギがしきい値Sth1以上であるか否かを判定する。判定部21は、いずれかの検出部11で検出された放射エネルギがしきい値Sth1以上であると判定した場合、ステップS2に移行する。ステップS2では、判定部21は、各検出部11で検出された計測値のうち、放射エネルギがしきい値Sth1以上であると判定した計測値の数が、1以上規定値(第1規定値)X1以下であるか否かを判定する。規定値X1は、検出部11の全個数に対して所定の比率となるように設定される。規定値X1は、例えば、予め試験を行うことで設定され、正常状態の範囲内で監視領域内の物体を発熱させたときに、放射エネルギ検出部1Uに含まれる検出部11a~11lの計測値のうち、放射エネルギがしきい値Sth1以上となる計測値の数の最大値に設定される。
【0026】
判定部21は、放射エネルギがしきい値Sth1以上である計測値の数が規定値X1以下であると判定した場合には、ステップS2からステップS3に移行する。ステップS3では、判定部21は、放射エネルギがしきい値Sth1以上であると判定した検出部11で検出された放射エネルギが、規定値Y1回以上連続して上昇しているか否かを判定し、連続して上昇していない場合には、ステップS4に移行し、過熱状態ではなく正常状態であると判定する。つまり、判定部21は、放射エネルギの検出値がしきい値Sth1以上となる計測値が存在するが、この計測値が規定値Y1回以上連続して上昇していない場合には、この時点では過熱状態であるとは判定せずに、正常状態であると判定する。そして、ステップS1に戻る。
判定部21は、ステップS3の処理で放射エネルギの計測値が規定値Y1回以上連続して上昇した場合には、ステップS5に移行し、局所過熱が生じたとみなして、過熱状態通知部23としての警報音発生装置を作動させ、アラームを発報させる。そしてステップS1に戻る。
【0027】
一方、判定部21は、ステップS2で、各検出部11で検出された放射エネルギの計測値のうち、放射エネルギがしきい値Sth1以上である計測値の数が、1以上規定値X1以下でない場合、つまり規定値X1よりも多い場合には、ステップS6に移行し、放射エネルギがしきい値Sth1以上であると判定された計測値のうち、計測値が規定値Y1回以上連続して上昇している計測値が存在するか否かを判定する。そして、判定部21は、規定値Y1回以上連続して上昇する計測値が存在する場合にはステップS7に移行し、環境要因により放射エネルギが上昇したと判定する。つまり、判定部21は、多数の検出部11で放射エネルギが連続して上昇していることを検出していることから、いずれかのケーブル端子201に過熱が生じているのではなく、配電盤200内の環境温度が上昇していると判定する。そして、ステップS1に戻る。
【0028】
一方、判定部21は、放射エネルギがしきい値Sth1以上である計測値の数が規定値X1よりも多いが、計測値が規定値Y1回以上連続して上昇していない場合には、ステップS6からステップS8に移行し、過熱状態ではなく正常と判定する。つまり、判定部21は、放射エネルギがしきい値Sth1以上である計測値の数が規定値X1よりも多いが、放射エネルギが連続して規定値Y1回以上上昇していないことから、この時点では環境温度が上昇している状況であるとは判定せず、正常と判定する。そして、ステップS1に戻る。
【0029】
次に、上記第一実施形態の動作を説明する。
図3に示すように、配電盤200内のケーブル端子201a~201l毎に検出部11a~11lが対応付けられ、各検出部11が対応するケーブル端子201の放射エネルギを検出するように構成した場合、各ケーブル端子201で過熱が生じていない場合には、
図6(a)に示すように、各検出部11で検出される放射エネルギはしきい値Sth1を下回る。なお、
図6において、縦軸は放射エネルギの大きさを表し、各棒グラフは、各検出部11a~11lを表し、各検出部11a~11lが監視するケーブル端子201a~201lに対応している。
この場合、いずれの放射エネルギもしきい値Sth1以上とはならないことから、判定部21ではステップS1の処理を繰り返す。
【0030】
この状態から、ケーブル端子201bで過熱が生じ、検出部11bで検出される放射エネルギがしきい値Sth1以上となると、判定部21では、
図4のステップS1からステップS2に移行する。判定部21では、検出部11bを除く他の検出部で検出される放射エネルギがしきい値Sth1未満である場合は、ステップS2からステップS3に移行し、放射エネルギがしきい値Sth1を超える計測値、つまり、検出部11bで検出される放射エネルギの計測値がY1回以上連続して上昇しているか否かを判定する。検出部11bで検出される放射エネルギの計測値がY1回以上連続して上昇していない間は、判定部21は、ステップS4に移行し、正常状態であり過熱状態にはないと判定する。
【0031】
この状態からさらに検出部11cで検出される放射エネルギがしきい値Sth1以上となると、規定値X1が、例えば、「2」よりも大きい値に設定されているとすると、判定部21では、ステップS2からステップS3に移行する。そして、検出部11b及び検出部11cで検出される放射エネルギがしきい値Sth1以上であるが、放射エネルギの計測値が上昇する回数がY1回未満であり、他の検出部11で検出される放射エネルギがしきい値Sth1よりも小さい間は、判定部21では、引き続き正常状態であると判定する(ステップS4)。そして、検出部11bで検出される放射エネルギがしきい値Sth1以上でありY1回連続して上昇すると、判定部21では、ステップS3からステップS5に移行し、検出部11bに対応するケーブル端子201bが過熱状態であると判定し、過熱状態通知部23を作動しアラームを発報させる。つまり、
図6(b)に示すように、ケーブル端子201a~201lのうちケーブル端子201b及び201cに局所的に過熱が生じている場合には、規定値X1以下の2つのケーブル端子201b及び201cのみ放射エネルギがしきい値Sth1を超えて上昇している状態である。そのため、判定部21では、それぞれの放射エネルギの計測値が連続して上昇する回数がY1回を超えた時点で、ケーブル端子201a~201lのうち、ケーブル端子201b及び201cにのみ、局所的に過熱が生じていると判定し、過熱状態通知部23によりアラームを発報させる(ステップS5)。
【0032】
一方、
図6(c)に示すように、全ての検出部11a~11lで検出される放射エネルギがしきい値Sth1以上となる場合には、放射エネルギがしきい値Sth1以上となる計測値の数が規定値X1を上回ると、判定部21では、ステップS1からステップS2を経てステップS3に移行する。そして、規定値X1を上回る数の計測値がしきい値Sth1以上となり、且つ、これら計測値がY1回続けて上昇すると、判定部21では、ステップS2からステップS6を経てステップS7に移行し、環境要因による放射エネルギの上昇であると判定する。つまり、放射エネルギがしきい値Sth1以上となる計測値の数が規定値X1よりも多いということは、局所的に過熱が生じているわけではなく、配電盤200内の環境温度が上昇したと予測することができる。そのため、判定部21では、環境要因による温度の上昇と判定し、過熱状態であるとの判定は行わない。
【0033】
このように、過熱監視装置100では、いずれかの検出部11で検出された放射エネルギがしきい値Sth1以上である場合、他の検出部11で検出された放射エネルギがしきい値Sth1以上である計測値の数や検出された放射エネルギの変動状況を利用することで、ケーブル端子が過熱状態であるのか正常状態であるのか、さらには、環境温度の変化による放射エネルギの上昇であるのか局所的な過熱状態であるのかについても容易に識別することができる。そのため、過熱監視装置100によれば、従来のように、過去のデータ等を比較用のデータとして予め記憶しておき、この過去のデータ等を利用して過熱状態であるか環境温度の変動が生じているのかを判定しなくともよく、複数の検出部11で検出された現時点での複数の放射エネルギの計測値を用いて容易に判定することができる。
【0034】
また、過去のデータを用いて過熱状態であるか否かを判定する場合、例えば、配電盤200に接続されるシステム構成が異なる、或いは温度環境が異なる等、過去のデータを取得したときの配電盤200の環境と、現時点での環境とが異なる場合には、過去のデータを用いて過熱状態であるか否かを判定した場合には、誤判定する可能性がある。しかしながら、過熱監視装置100では、現時点での複数の放射エネルギの計測値を利用して、過熱状態であるか否かの判定を行っているため、的確に判定することができる。
また、判定部21では、一つの検出部11例えば検出部11aで検出された放射エネルギがしきい値Sth1以上である場合でも、放射エネルギの上昇状況と、検出部11aを除く他の検出部11の放射エネルギとしきい値Sth1との大小関係と、を考慮して、検出部11aで検出された放射エネルギに基づき過熱状態であるか否かを判定している。そのため、環境の変化や一時的な負荷変動によって放射エネルギがしきい値Sth1以上となった場合に、過熱状態であると誤判定されることを回避することができる。
【0035】
なお、上記第一実施形態に係る過熱監視装置100では、ステップS3の処理及びステップS6の処理で、放射エネルギがY1回以上連続して上昇しているかどうかを判定することで、一時的な放射エネルギの変動により過熱状態であると判定されることを回避し、また、放射エネルギの上昇が環境要因の変化によるものであるか否かについても判別するようにしているがこれに限るものではない。ステップS3の処理及びステップS6の処理は行わずに、ステップS2での判定結果に応じて、各検出部11で検出された放射エネルギの計測値のうち、放射エネルギがしきい値Sth1以上である計測値の数が、1以上規定値X1以下である場合には、そのままステップS5に移行して過熱異常と判定し、そうでない場合にはそのままステップ7に移行して環境要因による放射エネルギの上昇とみなし、正常であると判定するようにしてもよい。また、ステップS3の処理及びステップS6の処理のいずれか一方のみを実施するようにしてもよい。
【0036】
また、上記第一実施形態に係る過熱監視装置100において、さらに、ケーブル端子が複数の系統に割り付けられている場合には、放射エネルギの上昇が過熱によるものであるのか、環境温度の変化によるものであるのか、さらに、系統の単位で、放射エネルギの上昇が生じているのか、を判定するように構成してもよい。
つまり、局所的な過熱であることを判定するための規定値(第1規定値)X1よりも大きい規定値(第2規定値)X2を設定する。規定値X2は、環境温度による放射エネルギの上昇と判定するためのしきい値であり、検出部11の全個数に対する比率に応じて設定される。さらに、
図3に示すようにケーブル端子が複数の系統に分類されているとき、同一系統内に含まれるケーブル端子の放射エネルギが上昇した場合に、放射エネルギが系統の単位で上昇しているとみなすことの可能な規定値(第3規定値)X3を設定する。規定値X3は規定値X2よりも値が小さい。規定値X3は、検出部11の全個数に対する比率に応じて設定される。
【0037】
このように規定値X2及び規定値X3を設定した状態で、しきい値Sth1以上となる放射エネルギの計測値の数が規定値X1以上規定値X2未満であって、この計測値のうち同一系統に含まれる検出部11の計測値が規定値X3よりも大きい場合には、判定部21では、系統の単位で放射エネルギが上昇していると判定する。つまり、系統の稼動が高まっていることに伴い放射エネルギが上昇していると予測され、過熱による放射エネルギの上昇ではないため、判定部21では、過熱状態ではないと判定する。
一方、しきい値Sth1以上となる放射エネルギが検出された計測値の数が、規定値X2以上である場合は、判定部21では、環境温度によって放射エネルギが上昇したと判定する。つまり、多数の放射エネルギの計測値が上昇しているため、判定部21では、過熱や系統の稼動が高まることによる放射エネルギの上昇ではないと判定し、過熱状態であるとは判定しない。
【0038】
このように設定することによって、例えば、
図6(d)に示すように、
図3の系統1に含まれるケーブル端子201a~201eに対応する放射エネルギのみがしきい値Sth1を上回る場合には、放射エネルギがしきい値Sth1以上である計測値の数が規定値X1(例えば2)を上回り、且つ規定値X2(例えば6)未満であるため、これらの放射エネルギがしきい値Sth1を超えて上昇する状態がY1回連続していない場合には正常と判定される。放射エネルギがしきい値Sth1を超えて上昇する状態がY1回連続した場合には、放射エネルギがしきい値Sth1以上である計測値の数が規定値X2未満であり、そのうち、系統1に含まれる検出部11に対応する計測値の数は
図6(d)の場合5個であって、規定値X3(例えば4)以上であることから、系統1に含まれる5個の検出部11による放射エネルギが上昇しており、すなわち系統1において稼動状況の変動により放射エネルギが上昇したとみなし、過熱状態であるとの判定は行わない。これによって、放射エネルギの上昇が、局所的な過熱状態であることによるものであるのか、温度環境の変動によるものであるのかだけでなく、系統の稼動状況の変動に伴うものかを判別することができる。
【0039】
なお、上記実施形態において、放射エネルギがしきい値Sth1以上である計測値について、所定期間前に同じ検出部11で検出された放射エネルギの計測値と比較し、両者の差が所定範囲内である場合には正常状態であると判定し、両者が一致しない場合にのみ局所的な過熱状態であると判定するようにしてもよい。つまり、工場等においては、一日の稼動状況によって、負荷が変動するため、放射エネルギも変化する。そのため、放射エネルギがしきい値Sth1以上である計測値の数から、局所的な過熱状態であると判定される場合に、さらに、過去の同時刻における放射エネルギの大きさと比較するようにしてもよい。つまり、工場等、毎日のシステムの稼動状況が略一定である場合には、放射エネルギも毎日同様に変動すると推測することができる。そのため、例えば、一日における放射エネルギの過去データを収集して記憶するようにし、例えば、放射エネルギがしきい値Sth1以上となった場合に、過去の同時刻における放射エネルギの過去データと比較し、両者の差が許容範囲内である場合には過熱状態ではないと判定し、両者の差が許容範囲外である場合にのみ過熱状態であると判定するようにしてもよい。過去データとしては一日前のデータ、一年前のデータであってもよく、また、正常状態における平均的な値を過去データとして記憶してもよい。また、各系統の同一稼動状態として、一つ前の状態との間で放射エネルギの値が大きく異なりしきい値を超えているかどうかで判定するようにしてもよい。
【0040】
<第二実施形態>
次に、本発明の第二実施形態を説明する。
この第二実施形態は、第一実施形態において、判定部21での判定処理の処理手順が異なること以外は同一であるので同一部の詳細な説明は省略する。
第二実施形態は、判定部21において、検出部11で検出された放射エネルギどうしの差分を監視することで、放射エネルギの計測値が異常値であるか否かを判定するようにしたものである。
各判定部21での処理は同一であるので、ここでは、放射エネルギ検出部1Uに含まれる検出部11a~11lで検出された検出信号を、判定部21で処理する場合について説明する。
【0041】
図7のフローチャートに示すように、判定部21では、制御部12から各検出部11a~11lで検出した放射エネルギの計測値を検出信号として読み込むと、二つの検出部11毎に放射エネルギの計測値の差分を演算し、演算した差分のうちいずれかがしきい値(第2しきい値)Sth2以上であるか否かを判定する(ステップS11)。例えば、
図3に示すように一列に配置された検出部11のうち、隣り合う二つの検出部11毎に差分を演算してもよく、また、一つおきの関係にある二つの検出部11毎に差分を演算してもよく、任意に設定した二つの検出部11毎に差分を演算すればよい。
【0042】
判定部21では、ステップS11で演算した差分のうち、いずれの差分もしきい値Sth2未満である場合は、ステップS21に移行し、いずれかの検出部11で検出された放射エネルギの計測値がしきい値Sth1以上であるかを判定する。そして、判定部21では、いずれの計測値もしきい値Sth1未満である場合には、ステップS11に戻り、例えば1分毎等一定周期でステップS11及びステップS21の処理を繰り返し行う。
ステップS11でいずれかの差分がしきい値Sth2以上となると、判定部21では、ステップS12に移行し、しきい値Sth2以上である差分の数が1以上規定値X11以下であるか否かを判定する。
【0043】
しきい値Sth2は、予め試験を行うことなどによって、2つの検出部11の放射エネルギの計測値の差分から、過熱状態であるとみなすことの可能な値に設定される。規定値X11は、検出部11の全個数に対して所定の比率となるように設定される。例えば、予め試験を行うことなどによって正常状態の範囲内で監視領域内の物体を発熱させたときに、この状態で、しきい値Sth2以上となる差分の数から、過熱状態であるとみなすことの可能な値に設定される。
【0044】
判定部21では、ステップS12で、しきい値Sth2以上である差分の数が1以上規定値X11以下であると判定した場合には、ステップS13に移行する。判定部21は、しきい値Sth2以上である差分が存在するが、規定値Y2回連続して差分が上昇していない場合には、ステップS13からステップS14に移行してこの時点ではまだ正常であると判定し、ステップS11に戻る。一方、ステップS13で規定値Y2回連続して差分が上昇した場合には、判定部21では、過熱が生じていると判定して、過熱状態通知部23によってアラームを発報させる(ステップS15)。そして、ステップS11に戻る。規定値Y2は、しきい値Sth2以上である差分が連続して上昇する回数から、過熱が生じたとみなすことの可能な値に設定される。
【0045】
判定部21では、ステップS12で、しきい値Sth2以上である差分の数が1以上規定値X11以下でない場合にはステップS21に移行し、各検出部11で検出された放射エネルギの計測値のうち、しきい値Sth1以上となるものは存在するかを判定する(ステップS21)。判定部21では、入力される放射エネルギの計測値のうち、計測値がしきい値Sth1以上となるものは存在しないと判定した場合にはステップS11に戻る。
【0046】
一方、判定部21では、ステップS21で、いずれかの計測値がしきい値Sth1以上であると判定した場合には、ステップS22に移行し、放射エネルギの計測値がしきい値Sth1以上である計測値の数が規定値X1を上回るかを判定する。判定部21では、放射エネルギがしきい値Sth1以上である計測値の数が規定値X1よりも多く、且つこの計測値が上昇する状態が規定値Y1回以上連続した場合には(ステップS23)、環境要因による放射エネルギの上昇であると判定する(ステップS24)。そして、ステップS11に戻る。一方、判定部21では、ステップS22で放射エネルギの計測値がしきい値Sth1以上である計測値の数が規定値X1以下である場合、また、ステップS22で放射エネルギの計測値がしきい値Sth1以上である計測値の数が規定値X1を上回るが、計測値が規定値Y1回以上連続して上昇していない場合には、ステップS25に移行し正常と判定する。そして、ステップS11に戻る。
【0047】
次に、上記第二実施形態の動作を説明する。
図3に示すように、配電盤200内のケーブル端子201a~201l毎に検出部11a~11lが対応付けられ、各検出部11が対応するケーブル端子201の過熱を検出するように構成した場合、各ケーブル端子201で過熱が生じていない場合には、
図8に示すように、隣り合う検出部11で検出された放射エネルギの計測値の差分は、しきい値Sth2を下回り、また、各放射エネルギの計測値は比較的小さくしきい値Sth1未満であるため、判定部21では、ステップS11及びステップS21の処理を繰り返す。この状態から、局所過熱状態となり、例えば検出部11b及び11cで検出される放射エネルギの計測値が大きくなると、
図9に示すように、隣り合う検出部11a及び11bとの放射エネルギの計測値の差分は正値をとり、検出部11bと11cとの放射エネルギの計測値の差分は負値をとり、検出部11cと11dとの放射エネルギの計測値の差分は負値をとる。そのため、検出部11a及び11bとの放射エネルギの計測値の差分と、検出部11cと11dとの放射エネルギの計測値の差分である2つの差分は、しきい値Sth2以上となる。そして、しきい値Sth2以上となる差分の数は、「2」であり、規定値X11(例えば3)以下であることから、この2つの差分が共に連続してY2回上昇した場合に、判定部21で、局所過熱状態であると判定されて、過熱状態通知部23によりアラームが発報される(ステップS15)。
【0048】
一方、環境温度の上昇によって各検出部11で検出される放射エネルギの計測値が上昇すると、隣り合う検出部11どうしの放射エネルギの計測値の差分はしきい値Sth2以上とはならないが、計測値の多くが放射エネルギの計測値のしきい値Sth1以上となる。そのため、判定部21では、ステップS21からステップS22を経てステップS23に移行し、計測値が上昇する状態が規定値Y2回連続した場合に、環境要因による放射エネルギの変動と判定する(ステップS24)。一方、計測値がしきい値Sth1以上であり(ステップS21)、しきい値Sth1以上である計測値の数が規定値X1以下である場合(ステップS22)、又はしきい値Sth1以上である計測値の数が規定値X1より多いが(ステップS22)、しきい値Sth1以上である計測値が規定値Y2回連続して上昇しない場合(ステップS23)には、ステップS25に移行し、判定部21では、過熱状態ではなく正常状態であると判定する。
【0049】
このように、判定部21では、検出部11で検出した複数の放射エネルギの計測値を用いて、一つの放射エネルギから過熱状態が生じているか否かを判定している。そのため、判定のための過去のデータ等を比較用のデータとして予め記憶しておくなどといった対処を行う必要はなく、複数の検出部11で検出された複数の放射エネルギの計測値を用いて過熱状態にあるか否かを容易に判定することができる。
【0050】
また、判定部21では、いずれか二つの検出部11の放射エネルギの計測値の差分に着目し、差分がしきい値Sth2以上であり、過熱状態の可能性があると判定される場合でも、この二つの検出部11の放射エネルギの計測値の差分だけでなく、他の二つの検出部11の放射エネルギの計測値の差分も考慮して、過熱状態であるか否か、また、環境要因による放射エネルギの上昇であるか否かを判定している。そのため、環境の変化や一時的な負荷変動によって放射エネルギの計測値の差分がしきい値Sth2以上となった場合に、判定部21で、過熱状態であると誤判定されることを回避することができる。また、差分を取ることにより、環境要因による成分等、検出部11で検出される放射エネルギの計測値に含まれるオフセット成分を除去することができ、オフセット成分による過熱状態の判定精度の低下を抑制することができる。特に隣り合う二つの検出部11の放射エネルギの計測値の差分を取ることによって局所的温度変化を際立たせ、環境要因による全体的な変動による影響を低減させることができる。環境要因としては、1日の間、季節による気温の変化、直射日光などによる配電盤200の筐体の温度変化等が挙げられる。
【0051】
なお、上記第二実施形態では、判定部21では、ステップS13の処理及びステップS23の処理で、差分がY2回以上連続して上昇しているかどうかを判定することで、一時的な放射エネルギの変動により過熱状態(ステップS15)と判定されることを回避し、また、放射エネルギの計測値の上昇が環境要因の変化によるものであるか否か(ステップS24)についても判別するようにしているがこれに限るものではない。判定部21において、ステップS13の処理及びステップS23の処理は行わずに、ステップS12での判定結果に応じて、二つの検出部11で検出された放射エネルギの計測値の差分のうち、差分がしきい値Sth2以上であるものの数が、1以上規定値X1以下である場合には、そのままステップS15に移行して過熱異常と判定し、そうでない場合にはそのままステップ24に移行して正常と判定してもよい。また、ステップS13の処理及びステップS23の処理のうちの、いずれか一方のみを実施するようにしてもよい。
【0052】
また、上記実施形態において、放射エネルギの計測値の差分がしきい値Sth2以上となる隣り合う検出部11について、所定期間前に同じ検出部11で検出された放射エネルギの計測値の差分と比較し、両者の差が所定範囲内である場合には正常であると判定し、両者の差が所定範囲外である場合には局所的な過熱状態であると判定するようにしてもよい。つまり、工場等においては、一日の稼動状況によって、負荷が変動し、これに伴い放射エネルギも同様に変化すると予測されることから、一日前或いは一年前など過去の同時刻における放射エネルギの計測値の差分等と比較し、両者の差が所定範囲内である場合には過熱状態ではないと判定し、両者の差が所定範囲外である場合にのみ過熱状態であると判定するようにしてもよい。また、各系統の同一稼動状態として、一つ前の状態との間で放射エネルギの計測値が大きく異なりしきい値を超えているかどうかで判定するようにしてもよい。
【0053】
<第三実施形態>
次に、本発明の第三実施形態を説明する。
この第三実施形態は、第一実施形態において、判定部21での判定処理の処理手順が異なること以外は同一であるので同一部の詳細な説明は省略する。
第三実施形態は、判定部21において、検出部11で検出された放射エネルギの計測値のうちの最大値と最小値とを抽出し、これらの差分を監視することで、放射エネルギが異常値であるか否かを判定するようにしたものである。
各判定部21での処理は同一であるので、ここでは、放射エネルギ検出部1Uに含まれる検出部11a~11lで検出された検出信号を、判定部21で処理する場合について説明する。
【0054】
図10のフローチャートに示すように、判定部21では、制御部12から各検出部11a~11lで検出した放射エネルギの計測値を検出信号として読み込むと、放射エネルギの計測値の最大値及び最小値を特定して差分を求める(ステップS31)。判定部21では、最大値及び最小値の差分がしきい値(第3しきい値)Sth3以上であるか否かを判定し、差分がしきい値Sth3未満であり、計測値のいずれかがしきい値Sth1以上でない間は、ステップS31及びステップS41の処理を例えば、1分毎等一定周期で繰り返し行う。
【0055】
判定部21では、差分がしきい値Sth3以上となった場合にステップS33に移行し、しきい値Sth3以上である差分について、差分が規定値Y3回以上連続して上昇しているか否かを判定する。判定部21では、差分がY3回以上連続して上昇する場合には、過熱状態であると判定して、過熱状態通知部23によりアラームを発報させる(ステップS34)。そして、ステップS31に戻る。一方、判定部21では、差分がY3回以上連続して上昇しない場合には、過熱状態であるとは判定せず正常と判定する(ステップS35)。そして、ステップS31に戻る。
【0056】
しきい値Sth3は、予め試験を行うことなどによって、放射エネルギ検出部1Uに設けられた各検出部11の放射エネルギの計測値の最大値と最小値との差分から、過熱状態であると判定することの可能な値に設定される。
一方、ステップS32で最大値と最小値の差分がしきい値Sth3以上であり、放射エネルギの計測値がしきい値Sth1未満である場合には(ステップS41)、判定部21では、ステップS31に戻ってステップS31、S32、S41の処理を、例えば1分毎等一定周期で行う。
【0057】
そして、判定部21では、放射エネルギの計測値のいずれかがしきい値Sth1以上である場合には、ステップS41からステップS42に移行し、次に、放射エネルギの計測値がしきい値Sth1以上となる計測値の数は、規定値X1より多いかを判定し、規定値X1より多い場合には、ステップS43に移行し、放射エネルギの計測値がしきい値Sth1以上である計測値がY1回連続して上昇していれば、ステップS44に移行して、環境要因による放射エネルギの変動であると判定する。そして、ステップS31に戻る。一方、判定部21では、ステップS42でしきい値Sth1以上となる計測値の数が規定値X1以下である場合、または、しきい値Sth1以上となる計測値の数が規定値X1よりも多いが(ステップS42)、この計測値がY1回連続して上昇していなければ(ステップS43)、ステップS45に移行し、正常と判定する。そして、ステップS31にも戻る。
【0058】
このように、判定部21では、各検出部で検出した放射エネルギの計測値の最大値及び最小値の差分を用いて、過熱が生じている状態であるか否かを判定するようにしているため、予め過熱状態であるかを判定するためのデータを検出して記憶しておく等の対処を行う必要はなく、過熱状態であるか否かを容易に検出することができる。また、例えば、環境温度の変化によって放射エネルギが上昇した場合等に、過熱状態にあると誤判定することを回避することができる。
【0059】
なお、上記第三実施形態では、ステップS33の処理で、放射エネルギの計測値の最大値と最小値との差分がY3回以上連続して上昇しているかどうか、また、ステップS43の処理で放射エネルギの計測値が、Y1回以上連続して上昇しているかどうかを判定しているため、一時的な放射エネルギの変動により過熱状態と判定されることを回避するようにしているがこれに限るものではない。例えば、ステップS33の処理は行わずに、ステップS32で放射エネルギの計測値の差分がしきい値Sth3以上であれば、そのままステップS34に移行して過熱状態であると判定し、そうでない場合には、ステップS41に移行してもよい。また、ステップS42での判定の結果、しきい値Sth1以上となる計測値の数が規定値X1よりも多い場合に、ステップS44に移行して環境要因による放射エネルギの上昇と判定し、しきい値Sth1以上となる計測値の数が規定値X1以下の場合に、ステップS45に移行して正常状態であると判定するようにしてもよい。また、ステップS33の処理及びステップS43の処理のうちの、いずれか一方のみを実施するようにしてもよい。
【0060】
<変形例>
(1)上記各実施形態において、放射エネルギの計測値からケーブル端子201が過熱状態であるか否かを判定する際に、さらに、各検出部11a~11lで検出される放射エネルギの計測値の変動パターンと現時点で検出された放射エネルギの計測値の変動パターンとの相互相関演算を行い、相互相関演算結果がしきい値以下であり類似性が低い場合、局所過熱状態であると判定するようにしてもよい。
相互相関演算は、例えば、
図11に示すように、横軸を検出部11、縦軸を各検出部11における放射エネルギの計測値とし、検出部11の数をm、各検出部11をn(nは1から始まる整数)とした場合、次式(1)で表すことができる。なお、パターン形状の類似性の無さを判定させるために、ディープラーニング(Deep Learning)手法を用いることも可能である。
【0061】
【0062】
(2)上記各実施形態において、放射エネルギ検出部1は、
図12に示すように、検出部11として、第一の検出部SE1と、第一の検出部SE1の監視距離(第一の監視距離)よりも短い監視距離(第二の監視距離)を有する第二の検出部SE2とを備えていてもよい。
つまり、検出部11として、少なくとも第一の検出部SE1と第二の検出部SE2とを含み、これら検出部が基板10に交互に一列に配置される。
図12において、検出部11a、11c、11eが第一の検出部SE1で構成され、検出部11b、11d、11fが第二の検出部SE2で構成される。なお、
図12は、検出部11の監視領域を側面から見た図である。放射エネルギ検出部1は、第一の検出部SE1と第二の検出部SE2とを少なくとも一つ備えていればよく、第一の検出部SE1の数及び、第二の検出部SE2の数は、任意に設定することができる。
【0063】
第一の検出部SE1は、物体の放射エネルギを検知する第一の放射エネルギ検出素子を備え、この第一の放射エネルギ検出素子の受光面の前に、その表面と対向して配置されたレンズとを備える。第一の検出部SE1の視野角(第一の視野角)は、SN比の観点から、0°より大きく50°以下が好ましい。より好ましくは、視野角は20°である。
第二の検出部SE2は、第一の放射エネルギ検出素子と同一特性を有する第二の放射エネルギ検出素子を備える。第二の検出部SE2の視野角(第二の視野角)は、第一の検出部SE1の視野角よりも大きく且つ、この第一の検出部SE1の視野角との関係から、0°より大きく100°以下であることが好ましい。より好ましくは、視野角は80°である。
【0064】
第一の放射エネルギ検出素子及び第二の放射エネルギ検出素子は、例えば、赤外線検出素子又はサーモパイル等である。また、レンズは、ポリエチレン、シリコン等の赤外線透過性を有するフレネルレンズが適用される。なお、レンズは、フレネルレンズに限るものではなく、球面レンズ等、他のレンズであってもよい。
【0065】
なお、ここでは、第一の検出部SE1のみがレンズを備える場合について説明するが、これに限るものではない。第一の検出部SE1及び第二の検出部SE2共にレンズを備えていてもよい。また、第一の検出部SE1が有する第一の放射エネルギ検出素子及び第二の検出部SE2が有する第二の放射エネルギ検出素子は、同一特性を有している必要はない。要は、第一の検出部SE1よりも第二の検出部SE2の方が監視距離がより短い特性を有していればよく、より具体的には、第一の検出部SE1の監視領域(第一の監視領域)を除く領域と第二の検出部SE2の監視領域(第二の監視領域)とが重なり、第一の検出部SE1と第二の検出部SE2とが互いに、監視領域どうし間で補間することが可能な特性を有していればよい。なお、
図12では、簡単のために検出部11a~11fのみ記載している。
【0066】
検出部11a~11fを備えた放射エネルギ検出部1において、レンズをそれぞれ備えた検出部11a、11c、11eの監視領域は、
図12中に破線で示すように、レンズを持たない検出部11b、11d、11fの監視領域に比較して大きい。また、レンズを備えた検出部11a、11c、11eの視野角θ1に対し、レンズを持たない検出部11b、11d、11fの視野角θ2はより広い(θ2>θ1)。そのため、
図12に示すように、レンズを備えた検出部11a、11c、11eの監視領域に比較して、レンズを持たない検出部11b、11d、11fは、監視距離はより短く、視野角はより広い。つまり、検出部11a、11c、11eの監視領域に含まれない領域が、検出部11b、11d、11fの監視領域に含まれる状態となる。その結果、検出部11a~11fによって、領域Ar全体をほぼ監視することができる。また、複数の検出部11を、等間隔に配置しているため、いずれの検出部11の監視領域にも含まれない死角領域の偏りを抑制することができ、領域Arに対し、各検出部11a~11fの監視領域を効率よく設定することができる。また、
図3に示すように、各検出部11の監視領域が同一である場合には、監視対象領域を漏れなく監視するためには、監視領域どうしが重なるように検出部11を配置する必要があり、より多くの検出部11が必要となる。これに対し、
図12に示すように、監視領域が異なる第一の検出部SE1と第二の検出部SE2とにより監視するようにしているため、より少ない数の検出部によって所望の領域全体をいずれかの検出部11の監視領域内に含めることができ、特にレンズを用い、視野角を絞ることによってSN比の向上を図ることができると共に、領域Arを漏れなく監視するために必要な検出部11の数をより削減することができる。言い換えれば、限られた数の検出部11によって、近距離から遠距離までの領域について放射エネルギを検出することができ、監視対象領域のうち検出可能範囲外となる範囲を低減させることができ、限られた数の検出部11で、過熱状態をより高精度に検出することができる。
【0067】
このように、放射エネルギ検出部1が第一の検出部SE1と第二の検出部SE2とを含む場合には、放射エネルギを第一の検出部SE1及び第二の検出部SE2で検出したとしても、得られる放射エネルギの大きさが異なるため、第一の検出部SE1からなる検出部11の放射エネルギ毎、また、第二の検出部SE2からなる検出部11の放射エネルギ毎に、判定処理を行えばよい。
また、第一の検出部SE1と第二の検出部SE2とは、必ずしも交互に配置されている必要はなく、所望の監視対象領域を、第一の検出部SE1の監視領域と第二の検出部SE2の監視領域とで漏れなく覆うように配置すればよい。
【0068】
(3)上記各実施形態においては、過熱状態と判定された場合にのみ、過熱状態通知部23によってアラームを発報させるようにした場合について説明したが、過熱状態と判定された場合だけでなく、環境要因による放射エネルギの上昇と判定された場合にも、過熱状態通知部23によってアラームを発報させるようにしてもよい。また、系統の稼動状況の変化による放射エネルギの上昇であることも判定するようにした場合には、このように判定された場合にも、過熱状態通知部23によってアラームを発報させるようにしてもよい。また、環境要因による放射エネルギの上昇と判定された場合、或いは、系統の稼動状況の変化による放射エネルギの上昇であると判定された場合には、過熱状態と判定された場合とは別の何らかの通知を行うようにしてもよい。
【0069】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【符号の説明】
【0070】
1 放射エネルギ検出部
2 過熱検出部
11 検出部
12 制御部
12a インタフェース部
21 判定部
21a インタフェース部
22 記憶部
23 過熱状態通知部
100 過熱監視装置
200 配電盤