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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04746 20160101AFI20230801BHJP
   H01M 8/04492 20160101ALI20230801BHJP
   H01M 8/2465 20160101ALI20230801BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20230801BHJP
   B60L 50/72 20190101ALN20230801BHJP
   B60L 58/30 20190101ALN20230801BHJP
【FI】
H01M8/04746
H01M8/04492
H01M8/2465
H01M8/10 101
B60L50/72
B60L58/30
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019233487
(22)【出願日】2019-12-24
(65)【公開番号】P2021103617
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】前田 正史
(72)【発明者】
【氏名】畑▲崎▼ 美保
(72)【発明者】
【氏名】竹内 仙光
【審査官】笹岡 友陽
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-129479(JP,A)
【文献】特開2009-135066(JP,A)
【文献】特開2006-221947(JP,A)
【文献】特開2007-141780(JP,A)
【文献】特開平8-236139(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04746
H01M 8/04492
H01M 8/2465
H01M 8/10
B60L 50/72
B60L 58/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された複数の単セルと、前記複数の単セルを貫通し、前記複数の単セルに反応ガスを供給する供給マニホールド及び前記供給マニホールドよりも重力方向下側に位置し前記複数の単セルから前記反応ガスが排出される排出マニホールドと、を有する燃料電池スタックと、
前記供給マニホールドを介して前記複数の単セルに前記反応ガスを供給するガス供給部と、
前記排出マニホールドに設けられ、前記排出マニホールド内の液水量を検知するための液水センサと、
前記燃料電池スタックの発電時において前記液水センサによって検知した前記液水量が所定値以上である場合、前記ガス供給部を制御して前記燃料電池スタックに供給される前記反応ガスの流量を前記燃料電池スタックの通常運転時に比べて多くする制御部と、を備える燃料電池システム。
【請求項2】
前記液水センサは、静電容量式液水センサである、請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記排出マニホールド内の前記液水量が多い程、前記反応ガスの流量および前記反応ガスの供給時間の少なくとも一方を増やす、請求項1または2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記液水センサは、前記複数の単セルの積層方向における前記複数の単セルの中央よりも前記排出マニホールドの出口とは反対側に位置する、請求項1または2に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記液水センサは、前記排出マニホールド内にて、重力方向において下側に位置して前記排出マニホールドに設けられる、請求項1または2に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記燃料電池スタックの傾斜角度を計測する傾斜角センサを備え、
前記制御部は、前記液水センサにより取得した前記液水量と前記傾斜角センサにより取得した前記傾斜角度とに基づいて、前記燃料電池スタックの前記傾斜角度が大きい程、前記傾斜角度が小さい場合に比べて、前記燃料電池スタックに供給する前記反応ガスの流量を多くする、請求項1または2に記載の燃料電池システム。
【請求項7】
前記制御部は、前記燃料電池スタックの負荷が高くなる程、前記燃料電池スタックに供給する前記反応ガスの流量を多くする、請求項1または2に記載の燃料電池システム。
【請求項8】
前記排出マニホールドに複数の前記液水センサが設けられ、
前記制御部は、前記複数の液水センサにより取得した前記液水量の差から前記燃料電池スタックの傾斜角度を算出し、前記傾斜角度が大きい程、前記傾斜角度が小さい場合に比べて、前記燃料電池スタックに供給する前記反応ガスの流量を多くする、請求項1または2に記載の燃料電池システム。
【請求項9】
前記燃料電池スタック内に水素ガスを供給するインジェクタと、
前記インジェクタによって供給された前記水素ガスを前記燃料電池スタック内に循環させる循環ポンプと、を備え、
前記供給マニホールドは水素供給マニホールドであり、
前記排出マニホールドは水素排出マニホールドであり、
前記制御部は、前記燃料電池スタックの発電時において前記液水センサによって検知した前記液水量が所定値以上である場合、前記インジェクタ及び/又は前記循環ポンプを制御して前記水素ガスの流量を調整することにより、前記燃料電池スタックに供給される前記反応ガスの流量を前記燃料電池スタックの通常運転時に比べて多くする、請求項1または2に記載の燃料電池システム。
【請求項10】
前記燃料電池スタック内に空気を供給するエアコンプレッサを備え、
前記供給マニホールドは空気供給マニホールドであり、
前記排出マニホールドは空気排出マニホールドであり、
前記制御部は、前記燃料電池スタックの発電時において前記液水センサによって検知した前記液水量が所定値以上である場合、前記エアコンプレッサを制御して前記空気の流量を調整することにより、前記燃料電池スタックに供給される前記反応ガスの流量を前記燃料電池スタックの通常運転時に比べて多くする、請求項1または2に記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
積層された複数の単セルと、複数の単セルを貫通して設けられ、反応ガスが流れるマニホールドと、を有する燃料電池スタックが知られている。燃料電池スタックでは、発電反応により生じた水等が単セル内に溜まり、単セル内における反応ガスの流れが阻害されてセル電圧の低下が生じることがある。そこで、一定時間毎に通常運転時よりも反応ガスを多く燃料電池スタックに供給することで、単セル内に液水が溜まることを抑制することが知られている。
【0003】
しかしながら、一定時間毎に反応ガスの流量を多くした場合でも、単セル内から反応ガス排出用の排出マニホールドに押し出された液水が排出マニホールド内に留まることがある。排出マニホールドは複数の単セルそれぞれから排出された反応ガスが合流することから、排出マニホールドの出口とは反対側になるほど反応ガスの流量が少なくなり、排出マニホールド内に液水が溜まり易くなる。また、排出マニホールドの出口が上方を向くように燃料電池スタックが傾斜している場合では、更に排出マニホールドの出口とは反対側に液水が溜まり易くなる。
【0004】
排出マニホールド内に液水が溜まると、液水が溜まった箇所での反応ガスの圧力損失が高くなり、この箇所近傍に位置する単セルへの反応ガスの分配量が少なくなる。このため、セル電圧の低下等が生じてしまう。排出マニホールド内に液水が溜まり易い運転状態にあるか否かを判断し、液水が溜まり易い運転状態にあると判断した場合に、燃料電池スタックに供給する反応ガスの流量を通常運転時に比べて多くすることが知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-136466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の方法は、燃料電池スタックの姿勢等から排出マニホールド内に液水が溜まり易い運転状態にあると判断した場合に通常運転時よりも多い量の反応ガスを供給して排水処理を行っている。この場合、運転状態に基づいて排水処理を行うことから、排出マニホールド内の液水を適切なタイミングで排出することが難しい。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、排出マニホールド内の液水を適切に排出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、積層された複数の単セルと、前記複数の単セルを貫通し、前記複数の単セルに反応ガスを供給する供給マニホールド及び前記供給マニホールドよりも重力方向下側に位置し前記複数の単セルから前記反応ガスが排出される排出マニホールドと、を有する燃料電池スタックと、前記供給マニホールドを介して前記複数の単セルに前記反応ガスを供給するガス供給部と、前記排出マニホールドに設けられ、前記複数の単セルの積層方向における前記複数の単セルの中央よりも前記排出マニホールドの出口とは反対側に位置し、前記排出マニホールド内の液水量を検知するための液水センサと、前記燃料電池スタックの発電時において前記液水センサによって検知した液水量が所定値以上である場合、前記ガス供給部を制御して前記燃料電池スタックに供給される前記反応ガスの流量を前記燃料電池スタックの通常運転時に比べて多くする制御部と、を備える燃料電池システムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、排出マニホールド内の液水を適切に排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、車両に搭載された実施例1に係る燃料電池システムの構成図である。
図2図2は、実施例1における燃料電池スタックを示す図である。
図3図3(a)は、液水センサの断面図、図3(b)は、液水センサの特性を示す図である。
図4図4は、比較例における燃料電池スタックを示す図である。
図5図5は、実施例1におけるECUの排水処理の制御の一例を示すフローチャートである。
図6図6(a)は、液水量に応じて空気流量を変化させる場合を示す図、図6(b)は、液水量に応じて空気の供給時間を変化させる場合を示す図、図6(c)は、FCスタックの発電負荷に応じて第1所定値を変化させる場合を示す図である。
図7図7(a)は、従来の方法による排水処理の一例を示すタイミングチャート、図7(b)は、実施例1における排水処理の一例を示すタイミングチャートである。
図8図8(a)及び図8(b)は、実施例2における燃料電池スタックを示す図である。
図9図9は、実施例2におけるECUの排水処理の制御の一例を示すフローチャートである。
図10図10は、FCスタックの傾斜角度に応じて空気流量を変化させる場合を示す図である。
図11図11(a)及び図11(b)は、燃料電池スタックの傾斜と排水性との関係を示す図である。
図12図12(a)は、実施例1における排水処理の一例を示すタイミングチャート、図12(b)は、実施例2における排水処理の一例を示すタイミングチャートである。
図13図13は、実施例3における燃料電池スタックを示す図である。
図14図14は、実施例3におけるECUの排水処理の制御の一例を示すフローチャートである。
図15図15は、実施例3の変形例1における燃料電池スタックを示す図である。
図16図16は、車両に搭載された実施例4に係る燃料電池システムの構成図である。
図17図17は、実施例4における燃料電池スタックを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0012】
[燃料電池システムの概略構成]
図1は、車両に搭載された実施例1に係る燃料電池システムの構成図である。図1を参照して、燃料電池システム100は、ECU(Electronic Control Unit)10、燃料電池スタック(以下、FCスタックと称す)20、二次電池(以下、BATと称す)94、酸化剤ガス系30、燃料ガス系50、電力系70、及び冷却系80を含む。また、車両は、走行用のモータ90、変速機91、車輪92、及びアクセル開度センサ93を備えている。FCスタック20は、燃料ガスと酸化剤ガスの供給を受けて発電する。車両は、FCスタック20及びBAT94を電力源としてモータ90を駆動させて走行する。
【0013】
酸化剤ガス系30は、酸化剤ガスとして酸素を含む空気をFCスタック20に供給し、FCスタック20から排出された空気を外部に排気する。酸化剤ガス系30は、ガス供給管31、ガス排出管32、エアクリーナー34、エアコンプレッサ35、インタークーラ36、及び調圧弁37を含む。ガス供給管31はFCスタック20の酸化剤ガス供給マニホールド(以下、空気供給マニホールドと称す)に接続されている。ガス排出管32はFCスタック20の酸化剤ガス排出マニホールド(以下、空気排出マニホールドと称す)に接続されている。空気排出マニホールドには液水センサ1が設けられている。液水センサ1の詳細については後述する。エアクリーナー34、エアコンプレッサ35、及びインタークーラ36は、ガス供給管31に空気の流れにおいて上流側から順に配置されている。調圧弁37はガス排出管32に設けられている。
【0014】
エアコンプレッサ35及び調圧弁37の駆動はECU10により制御される。ECU10は、エアコンプレッサ35の回転速度を制御することにより、FCスタック20に供給される空気の流量を調整する。エアコンプレッサ35はガス供給部の一例である。
【0015】
燃料ガス系50は、燃料ガスとしての水素ガスをFCスタック20に供給し、FCスタック20から排出された水素ガスをFCスタック20に循環させる。燃料ガス系50は、タンク60、ガス供給管51、ガス排出管52、ガス循環管53、タンク弁54、調圧弁55、インジェクタ56、気液分離器57、排水弁58、及び循環ポンプ59を含む。
【0016】
タンク60とFCスタック20の燃料ガス供給マニホールド(以下、水素供給マニホールドと称す)は、ガス供給管51により接続されている。タンク60には、燃料ガスである水素ガスが貯留されている。ガス排出管52は、FCスタック20の燃料ガス排出マニホールド(以下、水素排出マニホールドと称す)に接続されている。ガス循環管53は、気液分離器57とガス供給管51とを連通している。タンク弁54、調圧弁55、及びインジェクタ56は、ガス供給管51に水素ガスの流れにおいて上流側から順に配置されている。タンク弁54が開いた状態で、調圧弁55の開度が調整され、インジェクタ56は水素ガスを噴射する。これにより、FCスタック20に水素ガスが供給される。
【0017】
ガス排出管52には、気液分離器57及び排水弁58が水素ガスの流れに対して上流側から順に配置されている。気液分離器57は、FCスタック20から排出された水素ガスから水分を分離して貯留する。気液分離器57に貯留された水は、排水弁58が開くことにより、ガス排出管52を介して外部へと排出される。ガス循環管53は、水素ガスをFCスタック20へ還流させるための管であり、一端が気液分離器57に接続され、他端がガス供給管51に接続されている。ガス循環管53には循環ポンプ59が配置されている。FCスタック20から排出された水素ガスは、循環ポンプ59によって適度に加圧されてガス供給管51へ導かれる。タンク弁54、調圧弁55、インジェクタ56、排水弁58、及び循環ポンプ59の駆動は、ECU10により制御される。ECU10は、インジェクタ56の噴射時間、噴射回数及び/又は循環ポンプ59の回転速度を制御することにより、FCスタック20に供給される水素ガスの流量を調整する。インジェクタ56及び/又は循環ポンプ59はガス供給部の一例である。
【0018】
電力系70は、燃料電池DC/DCコンバータ(以下、FDCと称す)71、バッテリDC/DCコンバータ(以下、BDCと称す)72、モータインバータ(以下、MINVと称す)73、補機インバータ(以下、AINVと称す)74を含む。FDC71は、FCスタック20からの直流電力を調整してMINV73及び/又はAINV74に出力する。BDC72は、BAT94からの直流電流を調整してMINV73及び/又はAINV74に出力する。FCスタック20の発電電力は、BAT94に充電可能である。MINV73は、入力された直流電流を三相交流電力に変換してモータ90に供給する。モータ90は、変速機91を介して車輪92を回転させることで車両を走行させる。FCスタック20及びBAT94の電力は、AINV74を介して負荷装置に供給可能である。負荷装置は、FCスタック20用の補機と車両用の補機とを含む。FCスタック20用の補機とは、上述したエアコンプレッサ35、調圧弁37、タンク弁54、調圧弁55、インジェクタ56、排水弁58、及び循環ポンプ59を含む。車両用の補機は、例えば空調整備、照明装置、及びハザードランプ等を含む。
【0019】
冷却系80は、冷却水を所定の経路を経て循環させることによりFCスタック20を冷却する。冷却系80は、供給管81、排出管82、ラジエータ83、及びウォータポンプ84を含む。供給管81は、FCスタック20の冷却水供給マニホールドに接続されている。排出管82は、FCスタック20の冷却水排出マニホールドに接続されている。ラジエータ83は、供給管81と排出管82に接続されている。ウォータポンプ84は供給管81に配置されている。ウォータポンプ84は、冷媒としての冷却水を、供給管81及び排出管82を介してFCスタック20とラジエータ83との間で循環させる。ラジエータ83は、FCスタック20から排出された冷却水を外気と熱交換することにより冷却する。ウォータポンプ84の駆動は、ECU10により制御される。
【0020】
ECU10は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)を含む。ECU10は、アクセル開度センサ93、エアコンプレッサ35、調圧弁37、タンク弁54、調圧弁55、インジェクタ56、排水弁58、循環ポンプ59、FDC71、及びBDC72に電気的に接続されている。ECU10は、アクセル開度センサ93の検出値、上述した車両用の補機並びにFCスタック20用の補機の駆動状態、及びBAT94の蓄電電力等に基づいて、FCスタック20への要求電力Pを算出する。ECU10は、FCスタック10への要求電力Pに応じて、エアコンプレッサ35を制御して空気の流量を調整し、インジェクタ56及び/又は循環ポンプ59を制御して水素ガスの流量を調整する。要求電力Pは、FCスタック20に要求される電力であり、BAT94等のFCスタック20以外に要求される電力は含まない。
【0021】
[燃料電池スタック]
図2は、実施例1におけるFCスタックを示す図である。図2を参照して、FCスタック20は、固体高分子電解質型の単セル21が複数積層されている。積層された複数の単セル21を挟んで集電板22a及び22b、絶縁板23a及び23b、エンドプレート24a及び24bが配置されている。
【0022】
FCスタック20の内部には、空気供給マニホールド25及び空気排出マニホールド26が形成されている。空気供給マニホールド25及び空気排出マニホールド26は共に、複数の単セル21、集電板22b、絶縁板23b、及びエンドプレート24bを複数の単セル21が積層されたZ方向に貫通して形成されている。空気排出マニホールド26は空気供給マニホールド25よりも重力方向Gにおいて下側に位置している。
【0023】
単セル21は、電解質膜の両面に電極を配置した発電体である膜電極接合体と、膜電極接合体を挟持する一対のセパレータと、を備える。電解質膜は、スルホン酸基を有するフッ素系樹脂材料又は炭化水素系樹脂材料で形成された固体高分子膜であり、湿潤状態において良好なプロトン伝導性を有する。電極は、カーボン担体と、スルホン酸基を有する固体高分子であって湿潤状態で良好なプロトン伝導性を有するアイオノマーと、を含んで構成されている。カーボン担体には、発電反応を促進させるための触媒(例えば白金又は白金-コバルト合金等)が担持されている。各単セル21には空気供給マニホールド25及び空気排出マニホールド26を用いて空気が供給される。また、図2では図示していないが、各単セル21には水素供給マニホールド及び水素排出マニホールドを用いて水素ガスが供給される。
【0024】
空気排出マニホールド26に液水センサ1が設けられている。液水センサ1は、複数の単セル21が積層されたZ方向における複数の単セル21の中央29よりもエンドプレート24a側に位置して空気排出マニホールド26に設けられている。すなわち、液水センサ1は複数の単セル21の中央29よりも空気排出マニホールド26の出口26aとは反対側に位置して空気排出マニホールド26に設けられている。液水センサ1は、例えば単セル21と単セル21の間から空気排出マニホールド26に挿入されている。液水センサ1は空気排出マニホールド26内の液水の検知に用いられ、ECU10は液水センサ1の計測結果から液水量を取得する。ECU10は、液水センサ1を用いて取得した液水量に応じて、エアコンプレッサ35を制御してFCスタック20に供給される空気の流量を調整する。液水センサ1は、空気排出マニホールド26内の液水を適切に検知できるように、重力方向Gにおいて下側に位置して空気排出マニホールド26に設けられることが好ましい。
【0025】
[液水センサ]
図3(a)は、液水センサの断面図、図3(b)は、液水センサの特性を示す図である。図3(a)を参照して、液水センサ1は、静電容量式の液水センサであり、基板3上に2本の電極4a、4bが設けられている。基板3は、例えば樹脂基板(ポリイミド基板等)であり、その厚さは10μm~70μm程度である。電極4a、4bは、例えば銅膜であり、その厚さは10μm~70μm程度である。基板3と電極4a、4bとの合計厚さは、例えば100μm以下であり、80μm以下が好ましい。基板3は樹脂基板以外の絶縁基板であってもよい。電極4a、4bは銅膜以外であってもよく、例えば金膜又は白金膜等でもよく、導電率が高い金属膜が好ましい。
【0026】
電極4aと4bに液水5が付着した場合、図3(b)に示すように、液水5の付着量に応じて静電容量が変化する。したがって、液水センサ1で計測された静電容量から液水量を取得することができる。詳しくは図4で説明するが、空気排出マニホールド26には出口26aと反対側に液水5が溜まり易いことから、液水センサ1を複数の単セル21の中央29よりも空気排出マニホールド26の出口26aとは反対側に設けることで、液水5が溜まり易い箇所で液水5を検知できる。液水5の検知が良好に行われるよう、基板3及び電極4a、4bの表面に撥水処理が施されていてもよい。静電容量式の液水センサ1を用いることで、ソーク中の液水5の検知が可能となり、FCスタック20の発電直後に後述する排水処理の制御が可能となる。
【0027】
[比較例]
図4は、比較例における燃料電池スタックを示す図である。図4を参照して、比較例においては、空気排出マニホールド26に液水センサが設けられていない。その他の構成は図2と同じであるため説明を省略する。
【0028】
図4のように、例えば空気排出マニホールド26の出口26a側が出口26aとは反対側よりも重力方向Gにおいて上側に位置するようにFCスタック20が傾斜した場合、重力により空気排出マニホールド26のエンドプレート24a側に液水5が溜まり易くなる。また、空気排出マニホールド26は複数の単セル21から排出されたガスが合流することから、空気排出マニホールド26の出口26aとは反対側になるほどガス流量が少なくなって液水5が押し出され難くなり、空気排出マニホールド26のエンドプレート24a側に液水5が溜まり易くなる。液水5は、例えば単セル21での発電反応により生じた水及び/又は単セル21に供給された空気に含まれる水等である。液水5の量が多くなると空気の圧力損失が大きくなり、エンドプレート24a側に位置する単セル21への空気の分配量が少なくなる。このため、単セル21のセル電圧の低下及び/又はポンピング水素の発生等が起こることがある。
【0029】
特許文献1に記載の従来方法のように、FCスタック20の姿勢から空気排出マニホールド26に液水5が溜まり易い状態かどうかを判断する方法は、空気排出マニホールド26内の液水5を直接的に検知している訳ではない。このため、空気排出マニホールド26に液水5が多く溜まっているのに排水処理が始まらずに、セル電圧の低下等が生じてしまうことがある。そこで、実施例1では、液水センサ1を用いて取得した液水5の量に基づき排水処理を行い、空気排出マニホールド26内の液水5を適切に排出することとしている。
【0030】
[実施例1におけるECUの排水処理の制御]
図5は、実施例1におけるECUの排水処理の制御の一例を示すフローチャートである。図5の制御は、例えば燃料電池システム100が搭載された車両のイグニッションキーがオンされてFCスタック20が発電すると実行される。図5を参照して、ECU10は、液水センサ1で計測された静電容量から空気排出マニホールド26内の液水5の量を取得する(ステップS10)。次いで、ECU10は、ステップS10で取得した液水5の量が第1所定値以上であるか否かを判断する(ステップS12)。ここで、第1所定値は、空気排出マニホールド26内の液水5によってセル電圧の低下が起こる液水量(言い換えると、単セル21への空気の分配不良が発生する液水量)を予め実験で求めておき、この液水量の1/3~2/3の値とする。
【0031】
液水5の量が第1所定値よりも少ない場合(ステップS12:No)、ステップS20に進む。一方、液水5の量が第1所定値以上である場合(ステップS12:Yes)、ECU10はエアコンプレッサ35を制御して空気流量を通常運転時よりも多い量に調整してFCスタック20に供給する(ステップS14)。ここで、通常運転とはFCスタック20への要求電力Pに応じた運転であり、通常運転時よりも多い空気流量とは要求電力Pに応じた運転で取り得る空気流量よりも多い空気流量のことである。すなわち、通常運転時においては、ECU10は、通常運転として予め定められたエアストイキ比(例えば1.5)となるように要求電力Pに基づきエアコンプレッサ35を制御して空気流量を調整する。ステップS14においては、ECU10が有するメモリにはステップS14で参照するエアストイキ比として通常運転時のエアストイキ比よりも大きい値が記憶されており、ECU10は要求電力Pに基づきエアストイキ比がかかる値となるようにエアコンプレッサ35を制御して空気流量を調整する。
【0032】
ステップS14において調整する空気流量は、液水5の量に関わらずに一定であってもよいし、液水5の量に応じて変化させてもよい。図6(a)は、液水量に応じて空気流量を変化させる場合を示す図である。図6(a)のように、液水5の量が多い場合には液水5の量が少ない場合に比べてFCスタック20に供給する空気流量を多くしてもよい。
【0033】
また、ステップS14で調整した流量の空気をFCスタック20に供給する時間を液水5の量に関わらず一定にしてもよいし、液水5の量に応じて変化させてもよい。図6(b)は、液水量に応じて空気の供給時間を変化させる場合を示す図である。図6(b)のように、液水5の量が多い場合には液水5の量が少ない場合に比べてステップS14で調整した空気を供給する時間を長くしてもよい。
【0034】
このように、液水5の量に応じて空気流量及び/又は空気供給時間を変化させることで、NV(Noise Vibration)等を低減させつつ、効率的に排水処理を行うことができる。
【0035】
また、ステップS12の第1所定値は、FCスタック20の発電負荷に応じて変化させてもよい。図6(c)は、FCスタックの発電負荷に応じて第1所定値を変化させる場合を示す図である。FCスタック20の負荷が低い場合ではFCスタック20に供給する空気流量を増やすとNVの影響が大きくなることから、図6(c)のように、FCスタック20が低負荷の場合では中負荷及び高負荷の場合に比べて第1所定値を高くし、負荷が高くなるほど排水処理が行われ易くなるようにしてもよい。FCスタック20の負荷が低い場合は高い場合に比べて空気排出マニホールド26内に液水5が溜まり難いことから、第1所定値をFCスタック20の負荷が低い場合は高い場合に比べて高くすることができる。
【0036】
次いで、ECU10は、液水センサ1で計測された静電容量から空気排出マニホールド26内の液水5の量を取得する(ステップS16)。次いで、ECU10は、ステップS16で取得した液水5の量が第2所定値以下であるか否かを判断する(ステップS18)。液水5の量が第2所定値よりも多い場合(ステップS18:No)は、ステップS14に戻る。液水5の量が第2所定値以下の場合(ステップS18:Yes)は、ステップS20に進む。ここで、第2所定値は、第1所定値よりも小さい値であり、第1所定値の1/3~2/3の値であり、例えば1/2の値である。第2所定値をゼロとしないのは、空気排出マニホールド26では結露等が生じて液水5がゼロとなることはほとんどないため、第2所定値をゼロとするとステップS14からS18を永遠と繰り返すことになるためである。また、第2所定値は、空気排出マニホールド26から液水5が排出されなくなったときに残存している液水5の量を予め実験で求めておき、この液水量としてもよい。
【0037】
ステップS20では、ECU10はイグニッションキーがオフされたか否か判断する(ステップS20)。イグニッションキーがオフされていない場合(ステップS20:No)、ステップS10に戻る。一方、イグニッションキーがオフされた場合(ステップS20:Yes)、ECU10は排水処理を終了する。
【0038】
[タイミングチャート]
図7(a)は、従来の方法による排水処理の一例を示すタイミングチャート、図7(b)は、実施例1における排水処理の一例を示すタイミングチャートである。図7(a)を参照して、FCスタック20の姿勢から液水5が溜まり易い状態かどうかを判断して排水処理を行う従来の方法では、空気排出マニホールド26内の液水5の量がセル電圧の低下が起こる限界量Wαを超えてしまうことが起こり得る。限界量Wαを超えた後に、FCスタック20に供給する空気流量を通常発電時の流量Aαよりも多い流量Aβに上げて排水処理を行ったとしても、液水5の量が限界量Wαを超えている間はセル電圧の低下が生じてしまう。
【0039】
図7(b)を参照して、液水センサ1を用いて排水処理を行う場合は、液水センサ1により取得した液水5の量が第1所定値W以上になるとFCスタック20に供給する空気流量を通常運転時の流量Aαよりも多い流量に上げる。図7(b)では、図6(a)で説明したような液水量に応じて空気流量を変化させる場合を示している。液水センサ1を用いて取得した液水5の量が第2所定値W以下になるとFCスタック20に供給する空気流量を通常運転時の流量Aαに戻す。このように、液水センサ1により液水5の量を取得し、その量が限界量Wαよりも小さい第1所定値W以上になるとFCスタック20に供給する空気流量を上げている。このため、液水5の量が限界量Wαを超えることを抑制でき、セル電圧の低下を抑制できる。また、過剰に排水処理を行うことも抑制される。
【0040】
例えば、FCスタック20を発電させた発電時間に対するエンドプレート24aに最も近い単セル21のセル電圧が低下した時間は、排水処理を行わない場合は10%程度であり、従来方法の排水処理を行った場合は3%程度であったのに対し、実施例1の排水処理を行った場合は1%以下になった。
【0041】
実施例1によれば、図2のように、液水センサ1が、Z方向における複数の単セル21の中央29よりも空気排出マニホールド26の出口26aとは反対側に位置して空気排出マニホールド26に設けられている。上述したように、空気排出マニホールド26は出口26aとは反対側であるエンドプレート24a側で液水5が溜まり易い。このため、中央29よりもエンドプレート24a側に液水センサ1を設けることで、液水5が溜まり易い箇所で液水5を検知することができる。図5及び図7(b)のように、ECU10は、FCスタック20の発電時において液水センサ1により取得した液水5の量が第1所定値以上である場合、エアコンプレッサ35を制御してFCスタック20に供給される空気の流量をFCスタック20の通常運転時に比べて多くする。液水センサ1により取得した液水5の量に基づき排水処理を行うことから、液水5の排水を適切に行うことができ、セル電圧の低下等を抑制できる。
【0042】
上述したように、液水5はエンドプレート24a側に位置して空気排出マニホールド26内に溜まり易い。したがって、液水センサ1は、例えば、Z方向において複数の単セル21を4等分したときに最もエンドプレート24a側に位置する範囲内に配置されることが好ましく、8等分したときに最もエンドプレート24a側に位置する範囲内に配置されることがより好ましく、16等分したときに最もエンドプレート24a側に位置する範囲内に配置されることが更に好ましい。また、複数の単セル21をエンドプレート24a側から順に数えた場合(すなわちエンドプレート24aに最も近い単セル21が1番目の単セル21)、液水センサ1は、例えば、1番目の単セル21と40番目の単セル21の間に配置されることが好ましく、1番目の単セル21と20番目の単セル21の間に配置されることがより好ましく、1番目の単セル21と10番目の単セル21の間に配置されることが更に好ましく、1番目の単セル21と2番目の単セル21の間に配置されることが最も好ましい。
【0043】
空気排出マニホールド26内の液水5を排出するために、排水処理においてFCスタック20に供給する空気流量はFCスタック20の通常運転時に比べて2倍以上である場合が好ましく、3倍以上である場合がより好ましく、4倍以上である場合が更に好ましい。
【実施例2】
【0044】
図8(a)及び図8(b)は、実施例2におけるFCスタックを示す図である。図8(a)を参照して、実施例2では、FCスタック20に傾斜角センサ6が設けられている。傾斜角センサ6は、例えばエンドプレート24bに取り付けられているが、FCスタック20のその他の箇所に取り付けられていてもよい。傾斜角センサ6はFCスタック20が傾いたときの傾斜角度を計測し、ECU10はその計測結果からFCスタック20の傾斜角度を取得する。ECU10は、液水センサ1により取得した液水量と傾斜角センサ6により取得した傾斜角度とに基づいて、エアコンプレッサ35を制御してFCスタック20に供給される空気の流量を調整する。
【0045】
図8(b)を参照して、FCスタック20の傾斜角度は、例えば複数の単セル21の積層方向であるZ方向が重力方向Gに垂直なH方向から傾いたときの角度である。実施例2では、空気排出マニホールド26の出口26aが出口26aとは反対側よりも重力方向Gにおいて上側に位置するようにFCスタック20が傾いたときの傾斜角度を正とする。傾斜角センサ6は一般的に知られている傾斜角センサを用いることができる。実施例2の燃料電池システムのその他の構成は、実施例1の燃料電池システム100と同じであるため説明を省略する。
【0046】
[実施例2におけるECUの排水処理の制御]
図9は、実施例2におけるECUの排水処理の制御の一例を示すフローチャートである。図9の制御は、実施例1の図5と同じく、例えば燃料電池システムが搭載された車両のイグニッションキーがオンされてFCスタック20が発電すると実行される。図9を参照して、ECU10は、液水センサ1で計測された静電容量から空気排出マニホールド26内の液水5の量を取得する(ステップS30)。次いで、ECU10は、傾斜角センサ6の計測結果からFCスタック20の傾斜角度を取得する(ステップS32)。
【0047】
次いで、ECU10は、ステップS30で取得した液水5の量が第1所定値以上であるか否かを判断する(ステップS34)。液水5の量が第1所定値よりも少ない場合(ステップS34:No)、ステップS42に進む。一方、液水5の量が第1所定値以上である場合(ステップS34:Yes)、ECU10はエアコンプレッサ35を制御して空気流量を通常運転時よりも多い量に調整してFCスタック20に供給する(ステップS36)。ここで、FCスタック20に供給する空気流量をFCスタック20の傾斜角度に応じて変化させる。
【0048】
図10は、FCスタックの傾斜角度に応じて空気流量を変化させる場合を示す図である。図10のように、FCスタック20の正の傾斜角度が大きいほど正の傾斜角度が小さい場合に比べてFCスタック20に供給する空気流量を多くする。
【0049】
次いで、ECU10は、液水センサ1で計測された静電容量から空気排出マニホールド26内の液水5の量を取得する(ステップS38)。次いで、ECU10は、ステップS38で取得した液水5の量が第2所定値以下であるか否かを判断する(ステップS40)。液水5の量が第2所定値よりも多い場合(ステップS40:No)は、ステップS36に戻る。液水5の量が第2所定値以下の場合(ステップS40:Yes)は、ステップS42に進む。ステップS42では、ECU10はイグニッションキーがオフされたか否か判断する(ステップS42)。イグニッションキーがオフされていない場合(ステップS42:No)、ステップS30に戻る。一方、イグニッションキーがオフされた場合(ステップS42:Yes)、ECU10は排水処理を終了する。
【0050】
図11(a)及び図11(b)は、FCスタックの傾斜と排水性との関係を示す図である。図11(a)は、FCスタック20の正の傾斜角度が小さい場合を図示し、図11(b)は、FCスタック20の正の傾斜角が大きい場合を図示している。図11(a)及び図11(b)を参照して、FCスタック20に供給する空気流量を通常運転時よりも多くして排水処理を行う場合において、FCスタック20の正の傾斜角度が大きい場合は小さい場合に比べて空気排出マニホールド26内に溜まった液水5が排水され難くなる。
【0051】
[タイミングチャート]
図12(a)は、実施例1における排水処理の一例を示すタイミングチャート、図12(b)は、実施例2における排水処理の一例を示すタイミングチャートである。図12(a)及び図12(b)では、図11(b)のように、FCスタック20の正の傾斜角度が大きい場合での排水処理のタイミングチャートの一例を示している。
【0052】
図12(a)を参照して、傾斜角センサが設けられていない実施例1の場合では、FCスタック20に供給する空気流量を通常運転時の流量Aαよりも多くしたとしても、空気排出マニホールド26内の液水5がなかなか減らないことが起こり得る。液水5の排水性を考慮して空気流量を多くした場合、FCスタック20の傾斜角度が小さいにも関わらず過剰の流量の空気が供給されることが生じ、NVに悪影響を及ぼしてしまう。図12(b)を参照して、傾斜角センサ6が設けられた実施例2の場合では、図10のように傾斜角センサ6で計測されたFCスタック20の正の傾斜角度が大きくなるほどFCスタック20に供給する空気流量を多くすることで、空気排出マニホールド26内の液水5をNVの影響を抑えつつ短時間で減らすことができる。
【0053】
実施例2によれば、FCスタック20の傾斜角度を計測する傾斜角センサ6が設けられている。ECU10は、傾斜角センサ6により取得したFCスタック20の正の傾斜角度が大きい場合は小さい場合に比べて空気供給マニホールド25に供給する空気流量を多くする。これにより、空気排出マニホールド26内の液水5の量を短時間で減らすことができる。
【実施例3】
【0054】
図13は、実施例3におけるFCスタックを示す図である。図13を参照して、実施例3では、空気排出マニホールド26に2つの液水センサ1a、1bが設けられている。液水センサ1a、1bは共に、複数の単セル21が積層されたZ方向における複数の単セル21の中央29よりも空気排出マニホールド26の出口26aとは反対側であるエンドプレート24a側に位置して空気排出マニホールド26に設けられている。実施例3の燃料電池システムのその他の構成は、実施例1の燃料電池システム100と同じであるため説明を省略する。
【0055】
[実施例3におけるECUの排水処理の制御]
図14は、実施例3におけるECUの排水処理の制御の一例を示すフローチャートである。図14の制御は、実施例1の図5と同じく、例えば燃料電池システムが搭載された車両のイグニッションキーがオンされてFCスタック20が発電すると実行される。図14を参照して、ECU10は、液水センサ1aで計測された静電容量から空気排出マニホールド26内の液水5の量を取得する(ステップS50)。液水5の量の取得は、液水センサ1bを用いて行ってもよいが、エンドプレート24aに近いほど液水5が溜まり易いことから、エンドプレート24aの近くに配置された液水センサ1aを用いることが好ましい。
【0056】
次いで、ECU10は、液水センサ1bにより取得した液水5の量A1と液水センサ1aにより取得した液水5の量A2との差(A1-A2)から、FCスタック20の傾斜角度を算出する(ステップS52)。その後、ECU10は、実施例2の図9のステップS34からステップS42と同じ処理であるステップS54からステップS62を実行する。
【0057】
ステップS56においては、(A1-A2)の値が大きい場合はFCスタック20の正の傾斜角度が大きく、(A1-A2)の値が小さい場合はFCスタック20の正の傾斜角度が小さいことから、(A1-A2)の値が大きい場合は小さい場合に比べてFCスタック20に供給される空気流量が多くなるように調整する。
【0058】
実施例2では、FCスタック20に設けた傾斜角センサ6の計測結果からFCスタック20の傾斜角度を取得する場合を例に示したが、実施例3のように、複数の液水センサ1a、1bにより取得した液水5の量の差からFCスタック20の傾斜角度を算出してもよい。
【0059】
図15は、実施例3の変形例1におけるFCスタックを示す図である。図15を参照して、実施例3の変形例1では、液水センサ1bがガス排出管32に設けられている。その他の構成は、実施例3と同じであるため説明を省略する。
【0060】
液水センサ1bは、複数の単セル21の中央29よりもエンドプレート24a側に位置して空気排出マニホールド26に設けられていてもよいし、ガス排出管32等のような中央29よりもガス排出管32側に位置して設けられていてもよい。実施例3のように、液水センサ1a、1bが近づいて配置されていることで、配線の取り回しが容易となり、液水センサ1a、1bを簡易に設置することができる。実施例3の変形例1のように、液水センサ1bが液水センサ1aから離れて配置されていることで、空気排出マニホールド26から液水5が排出されたかを良好に検知できる。液水センサ1bを空気排出マニホールド26の出口26a付近に設けることで結露検知等にも用いることができる。
【実施例4】
【0061】
図16は、車両に搭載された実施例4に係る燃料電池システムの構成図である。図16を参照して、実施例4の燃料電池システム400では、液水センサ1は水素排出マニホールドに設けられている。その他の構成は、実施例1の図1と同じであるため説明を省略する。図17は、実施例4におけるFCスタックを示す図である。図17を参照して、FCスタック20の内部には、水素供給マニホールド27及び水素排出マニホールド28が形成されている。水素供給マニホールド27及び水素排出マニホールド28は共に、複数の単セル21、集電板22b、絶縁板23b、及びエンドプレート24bを複数の単セル21が積層されたZ方向に貫通して形成されている。水素排出マニホールド28は水素供給マニホールド27よりも重力方向Gにおいて下側に位置している。
【0062】
液水センサ1は水素排出マニホールド28に設けられている。液水センサ1は、複数の単セル21が積層されたZ方向における複数の単セル21の中央29よりも水素排出マニホールド28の出口28aとは反対側であるエンドプレート24a側に位置して水素排出マニホールド28に設けられている。ECU10は、液水センサ1により取得した液水5の量に応じて、インジェクタ56及び/又は循環ポンプ59を制御してFCスタック20に供給される水素の流量を調整する。
【0063】
実施例4におけるECU10の排水処理の制御は、実施例1の図5のステップ14においてエアコンプレッサ35を制御して空気流量を調整する代わりにインジェクタ56及び/又は循環ポンプ59を制御して水素流量を調整すること以外は、図5と同じ方法によって実行される。
【0064】
実施例4のように、液水センサ1が水素排出マニホールド28に設けられ、ECU10は液水センサ1により取得した液水5の量が第1所定値以上である場合、インジェクタ56及び/又は循環ポンプ59を制御してFCスタック20に供給される水素の流量を通常運転時に比べて多くしてもよい。これにより、水素排出マニホールド28内の液水5の排水を適切に行うことができ、水素欠による触媒の劣化を抑制することができる。
【0065】
実施例5においても、実施例2と同様にFCスタック20に傾斜角センサ6を設けてもよいし、実施例3及び実施例3の変形例1と同様に複数の液水センサ1a、1bによりFCスタック20の傾斜角度を算出してもよい。
【0066】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0067】
1、1a、1b 液水センサ
3 基板
4a、4b 電極
5 液水
6 傾斜角センサ
10 ECU
20 燃料電池スタック
21 単セル
22a、22b 集電板
23a、23b 絶縁板
24a、24b エンドプレート
25 空気供給マニホールド
26 空気排出マニホールド
26a 空気排出マニホールドの出口
27 水素供給マニホールド
28 水素排出マニホールド
28a 水素排出マニホールドの出口
29 中央
30 酸化剤ガス系
31 ガス供給管
32 ガス排出管
34 エアクリーナー
35 エアコンプレッサ
36 インタークーラ
37 調圧弁
50 燃料ガス系
51 ガス供給管
52 ガス排出管
53 ガス循環管
54 タンク弁
55 調圧弁
56 インジェクタ
57 気液分離器
58 排水弁
59 循環ポンプ
60 タンク
70 電力系
80 冷却系
100、400 燃料電池システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17