(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】親綱設置方法
(51)【国際特許分類】
E04G 21/32 20060101AFI20230801BHJP
A62B 35/00 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
E04G21/32 D
A62B35/00 H
(21)【出願番号】P 2020076620
(22)【出願日】2020-04-23
【審査請求日】2022-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100161230
【氏名又は名称】加藤 雅博
(72)【発明者】
【氏名】植月 英貴
【審査官】菅原 奈津子
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-013294(JP,A)
【文献】特開2002-155632(JP,A)
【文献】特開2016-008434(JP,A)
【文献】特開平10-179775(JP,A)
【文献】特開平09-250237(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0312633(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0047008(US,A1)
【文献】国際公開第2004/067095(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/24-21/32
E04D 15/00
A62B 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視において矩形形状をなす屋根を備え、
前記屋根には、屋根端縁部として、平面視にて互いに直交する方向に延びる第1屋根端縁部及び第2屋根端縁部が形成されている建物に適用され、
前記屋根の上に2本の親綱を互いの中間部において接続された状態で平面視にてX字状をなすように張る
ことで、それら各親綱を平面視にて前記第1屋根端縁部及び前記第2屋根端縁部のいずれに対しても傾斜する方向に延びた状態で配置する綱張り工程と、
前記綱張り工程の後、前記各親綱が接続された接続部に安全帯を接続する安全帯接続工程と、を備えることを特徴とする親綱設置方法。
【請求項2】
前記接続部に、作業者が前記屋根上に梯子を用いて上る際に使用する昇降用ロープを接続する昇降用ロープ接続工程を備えることを特徴とする請求項1に記載の親綱設置方法。
【請求項3】
前記屋根には、平面視にて互いに対向しかつ平行に延びる一対の
前記屋根端縁部が形成されており、
前記綱張り工程の前に行う工程として、
パイロットラインを前記各屋根端縁部を挟んだ両側に跨がるように前記屋根上にかけるパイロットライン設置工程と、
前記接続部において接続された前記各親綱の一端側を前記パイロットラインに接続した状態で、前記屋根にかけられた当該パイロットラインを手繰り寄せることにより、前記各親綱を前記各屋根端縁部を挟んだ両側に跨がるようにかつ前記接続部が前記屋根上に載るように前記屋根上に引き上げる綱引き上げ工程とを備え、
前記綱張り工程では、前記各親綱において前記接続部から反対側に延びる一対の綱部をそれぞれ前記屋根端縁部に沿って移動させることで、前記各親綱を平面視において前記X字状に配置することを特徴とする請求項1又は2に記載の親綱設置方法。
【請求項4】
前記各親綱の一端側を仮固定する仮固定工程を備え、
前記仮固定工程では、前記一端側において前記各親綱を揃えた状態で折り返すことによりループを形成し、そのループが保持されるようにして前記仮固定を行い、
前記綱引き上げ工程では、前記仮固定された前記各親綱の前記一端側に前記パイロットラインを接続した状態で、前記各親綱の前記屋根上への引き上げを行うことを特徴とする請求項3に記載の親綱設置方法。
【請求項5】
前記パイロットライン設置工程では、2本の前記パイロットラインを前記屋根上にかけ、
前記綱引き上げ工程では、前記各パイロットラインのうち一方を前記各親綱の前記一端側において前記ループに接続し、他方を前記ループよりも前記接続部側に接続した状態で、前記各パイロットラインを手繰り寄せることにより前記各親綱を前記屋根上に引き上げることを特徴とする請求項4に記載の親綱設置方法。
【請求項6】
前記パイロットライン設置工程では、前記パイロットラインを2本の操作棒に掛け渡して前記屋根よりも高い位置に保持した状態で、それら各操作棒を前記各屋根端縁部を挟んだ両側にそれぞれ移動させることで前記パイロットラインを前記屋根の上方に位置させ、その後、前記各操作棒を操作して前記パイロットラインを下ろすことで当該パイロットラインを前記屋根上にかけることを特徴とする請求項3乃至5のいずれか一項に記載の親綱設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の屋根の上に親綱を設置する親綱設置方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
住宅等の建物を新築する際や、既存の建物についてメンテナンス作業を行う際に、作業者が屋根の上に登る場合がある。この場合、あらかじめ屋根に親綱を張っておき、作業者は、自身に装着した安全帯を親綱に連結することで、屋根の上での作業について安全性を確保することができる。
【0003】
屋根に親綱を設置する方法として、特許文献1には、屋根上に2本の親綱を平面視において十字状をなすように張って設置する方法が開示されている。この設置方法では、各親綱が互いに交差する交差部において結ばれることにより接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
屋根上で作業する作業者が屋根上から落下する際には、例えば屋根の軒先から落下することが考えられる。この場合、上記特許文献1の設置方法では、十字をなす各親綱のうち、平面視にて上記の軒先と直交する方向に延びる親綱に作業者の落下荷重が集中してかかることが想定される。そのため、上記特許文献1の設置方法は、落下荷重による親綱の損傷を防止する上で未だ改善の余地があるといえ、ひいては親綱を用いた屋根上での作業について安全性を高める上で未だ改善の余地があるといえる。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、親綱を用いた屋根上での作業について安全性を高めることができる親綱設置方法を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく、第1の発明の親綱設置方法は、建物の屋根の上に2本の親綱を互いの中間部において接続された状態で平面視にてX字状をなすように張る綱張り工程と、前記綱張り工程の後、前記各親綱が接続された接続部に安全帯を接続する安全帯接続工程と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、建物の屋根上に2本の親綱が互いの中間部において接続された状態で平面視にてX字状をなすように張られる。そして、屋根上に張られたそれら各親綱の接続部に対し作業者の安全帯が接続される。この場合、作業者が屋根の四方のいずれから落下した場合にも、その落下荷重(墜落荷重)が2本の親綱に分散してかかることになる。そのため、落下荷重による親綱の損傷を確実に防止することができ、その結果、親綱を用いた屋根上での作業について安全性を高めることができる。
【0009】
第2の発明の親綱設置方法は、第1の発明において、前記接続部に、作業者が前記屋根上に梯子を用いて上る際に使用する昇降用ロープを接続する昇降用ロープ接続工程を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、各親綱の接続部に作業者が屋根上に梯子を用いて上る際に利用する昇降用ロープが接続される。この場合、作業者が梯子を用いて屋根に上り、その後屋根上を接続部まで移動するまでの間、昇降用ロープを利用することができる。これにより、作業者が自身に装着した安全帯を接続部に接続するまでの一連の移動を安全に行うことができる。
【0011】
第3の発明の親綱設置方法は、第1又は第2の発明において、前記屋根には、平面視にて互いに対向しかつ平行に延びる一対の屋根端縁部が形成されており、前記綱張り工程の前に行う工程として、パイロットラインを前記各屋根端縁部を挟んだ両側に跨がるように前記屋根上にかけるパイロットライン設置工程と、前記接続部において接続された前記各親綱の一端側を前記パイロットラインに接続した状態で、前記屋根にかけられた当該パイロットラインを手繰り寄せることにより、前記各親綱を前記各屋根端縁部を挟んだ両側に跨がるようにかつ前記接続部が前記屋根上に載るように前記屋根上に引き上げる綱引き上げ工程とを備え、前記綱張り工程では、前記各親綱において前記接続部から反対側に延びる一対の綱部をそれぞれ前記屋根端縁部に沿って移動させることで、前記各親綱を平面視において前記X字状に配置することを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、屋根上にまずパイロットラインをかけ、その後パイロットラインに各親綱の一端側を接続した状態で当該パイロットラインを手繰り寄せることにより各親綱を屋根上に引き上げる。この際、各親綱は対向する一対の屋根端縁部を挟んだ両側に跨がるように屋根上に引き上げられる。その後、各親綱において接続部から延びる一対の綱部を屋根端縁部に沿って移動させることで、各親綱を平面視においてX字状に張る。この場合、綱部を移動させる際、綱部を上記の屋根周縁部から当該屋根周縁部と屋根角部を挟んで隣接する屋根周縁部へ移動させる必要がない。そのため、綱部を移動させる際、綱部が屋根角部に引っ掛かって移動が困難になるのを回避できる。これにより、各親綱をX字状に張る上で、その作業を容易に行うことができる。
【0013】
第4の発明の親綱設置方法は、第3の発明において、前記各親綱の一端側を仮固定する仮固定工程を備え、前記仮固定工程では、前記一端側において前記各親綱を揃えた状態で折り返すことによりループを形成し、そのループが保持されるようにして前記仮固定を行い、前記綱引き上げ工程では、前記仮固定された前記各親綱の前記一端側に前記パイロットラインを接続した状態で、前記各親綱の前記屋根上への引き上げを行うことを特徴とする。
【0014】
パイロットラインを手繰り寄せることにより各親綱が屋根上に引き上げられる際には、パイロットラインに接続されている各親綱の一端側が先端となって引き上げられることになる。この場合、各親綱の引き上げに際し、各親綱の一端側が屋根端縁部において引っ掛かってしまうことが想定され、特に2つの親綱を同時に引き上げる場合にはこうした引っ掛かりが生じ易いと考えられる。
【0015】
そこで、本発明では、こうした点に鑑み、各親綱の一端側においループを形成し、そのループの形成状態で各親綱の一端側を仮固定するようにしている。そして、その仮固定した一端側にパイロットラインを接続した状態で、各親綱の屋根上への引き上げを行うようにしている。この場合、各親綱を引き上げる際、各親綱の一端側に形成されたループを先端として引き上げることができるため、当該一端側が屋根端縁部において引っ掛かるのを抑制することができる。
【0016】
第5の発明の親綱設置方法は、第4のいずれかの発明において、前記パイロットライン設置工程では、2本の前記パイロットラインを前記屋根上にかけ、前記綱引き上げ工程では、前記各パイロットラインのうち一方を前記各親綱の前記一端側において前記ループに接続し、他方を前記ループよりも前記接続部側に接続した状態で、前記各パイロットラインを手繰り寄せることにより前記各親綱を前記屋根上に引き上げることを特徴とする。
【0017】
ところで、屋根端縁部(ひいては屋根)の形状等によっては、各親綱の一端側にループを形成した上記第5の発明であっても、屋根端縁部での引っ掛かりが生じる場合が想定される。そこで、本発明では、仮に屋根端縁部にて引っ掛かりが生じた場合でも、その引っ掛かりを解消できるよう、次のような方法を採用している。
【0018】
すなわち、本発明では、2本のパイロットラインを用いて各親綱の屋根上への引き上げを行うようにしている。この場合、各パイロットラインのうち一方を各親綱の一端側においてループに接続し、他方をループよりも接続部側に接続した状態で、各パイロットラインを手繰り寄せることにより各親綱を屋根上に引き上げる。ここで、各親綱の引き上げに際し、引き上げ方向の先端となるループが屋根端縁部において引っ掛かった場合には、ループに接続されたパイロットラインを手繰り寄せるのをやめ、その状態でループよりも接続部側に接続されたパイロットラインを手繰り寄せるようにする。これにより、ループよりも接続部側からループが持ち上げられ、その持ち上げによりループの引っ掛かりが解消される。
【0019】
このように、本発明では、各親綱を引き上げる際、仮に屋根端縁部にて引っ掛かったとしても、その引っ掛かりを速やかに解消することができる。そのため、親綱の引き上げ作業を迅速に行うことができる。
【0020】
第6の発明の親綱設置方法は、第3乃至第5のいずれかの発明において、前記パイロットライン設置工程では、前記パイロットラインを2本の操作棒に掛け渡して前記屋根よりも高い位置に保持した状態で、それら各操作棒を前記各屋根端縁部を挟んだ両側にそれぞれ移動させることで前記パイロットラインを前記屋根の上方に位置させ、その後、前記各操作棒を操作して前記パイロットラインを下ろすことで当該パイロットラインを前記屋根上にかけることを特徴とする。
【0021】
本発明によれば、パイロットラインを屋根上にかける作業を行う際、パイロットラインを屋根よりも高い位置で2本の操作棒に掛け渡した状態で、それら各操作棒を持つ2人の作業者がそれぞれ各屋根端縁部に沿って移動等することで、パイロットラインを屋根上にかけることができる。この場合、パイロットラインを屋根にかける作業を建物の近くで行うことができるため、建物の敷地が狭小で建物周囲に作業スペースをそれほど確保できない場合でも、パイロットラインを比較的容易に屋根上にかけることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】(a)が親綱を設置した状態の建物を示す斜視図であり、(b)が平面図。
【
図2】(a)が親綱接続工程を示す斜視図であり、(b)が各親綱の接続部を拡大して示す図。
【
図6】(a)が仮固定工程を示す図であり、(b)がパイロットライン接続工程を示す図である。
【
図12】(a)が綱引き上げ工程を示す斜視図であり、(b)が同工程を示す側面図である。
【
図13】親綱の一端側が軒先において引っ掛かった場合の解消方法を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、(a)が親綱を設置した状態の建物を示す斜視図であり、(b)が平面図である。
【0024】
図1(a)及び(b)に示すように、住宅等の建物10は、切り妻式の屋根11を備えている。屋根11は、平面視にて矩形形状(長方形状)をなしている。屋根11の頂部には棟12が形成され、屋根11の端縁部には軒先13とけらば14とが形成されている。棟12と軒先13とは、平面視において屋根11の長手方向に延びており、けらば14は平面視において屋根11の短手方向に延びている。なお、軒先13とけらば14とがそれぞれ屋根端縁部に相当する。
【0025】
屋根11の上には、2本の親綱21,22が張られた状態で設置されている。親綱21,22は、合成樹脂材料や金属材料等により形成されたロープ等の線状部材であり、柔軟性を有している。親綱21,22は、作業者が屋根11の上で作業を行う際に用いられるものである。作業者が屋根11上で作業を行う際には、自身に装着した安全帯24を親綱21,22に接続した状態で作業を行う。
【0026】
各親綱21,22は、平面視においてX字状に交差した状態で屋根11上に張られている。この場合、各親綱21,22は、屋根11上において、平面視にて互いに直交する方向に延びる軒先13及びけらば14のいずれに対しても傾斜する方向に延びている。各親綱21,22は、互いに交差する交差部において接続されている。この場合、各親綱21,22の交差部には、それら各親綱21,22が接続されることにより接続部23が形成されている。接続部23は、屋根11の棟12に配置され、平面視にて屋根11の略中央に位置している。
【0027】
各親綱21,22は、屋根11上において棟12を経由して各軒先13に跨がって延びており、両端側がそれぞれ各軒先13から下方に向けて延びている。各親綱21,22の両端側はそれぞれ建物10の周囲に設けられたアンカー25に固定されている。アンカー25は、建物10の四隅付近にそれぞれ配置され、地面に対して固定されている。これらのアンカー25に各親綱21,22の両端側が固定されることで、各親綱21,22が屋根11上に張った状態で設置されるようになっている。また、アンカー25は複数のタンク25aを有しており、それら各タンク25aに水が充填されて重量が増すことで地面に固定される。
【0028】
各親綱21,22の接続部23には、昇降用ロープ26が接続されている。昇降用ロープ26は作業者が屋根11上に梯子27を用いて昇降する際に使用されるものである。昇降用ロープ26は、その一端部が接続部23に接続され、他端側が軒先13から下方に垂れ下がっている。
【0029】
次に、親綱21,22を屋根11上に設置する際の作業の流れについて説明する。親綱21,22を屋根11上に設置するに際しては、まず親綱接続工程を行う。
図2は(a)が親綱接続工程を示す斜視図であり、(b)が各親綱21,22の接続部23を拡大して示す図である。また、
図3は各親綱21,22を示す図である。
【0030】
図3に示すように、各親綱21,22はいずれも同じ長さを有している。また、各親綱21,22は、互いに区別がし易いように異なる色で形成されている。各親綱21,22には、その長さ方向において複数のマーカ28(目印)が設けられている。各親綱21,22において複数のマーカ28は同じ構成とされており、そのため、ここでは各親綱21,22のマーカ28に共通の符号28を付している。
【0031】
マーカ28は親綱21,22に着色されることにより形成されている。各マーカ28には、親綱21,22の長さ方向の中央に配置された第1マーカ28aと、第1マーカ28aを挟んだ両側に配置された一対の第2マーカ28bとが含まれている。各第2マーカ28bはいずれも第1マーカ28aからの距離が同じとされている。第1マーカ28aと第2マーカ28bとの間の距離は屋根11の棟12から軒先13までの距離よりも大きくなっており、例えば6m程度とされている。
【0032】
親綱接続工程では、
図2(a)に示すように、各親綱21,22を互いの中間部において接続する作業を行う。この作業では、各親綱21,22の中間部を互いに結ぶことにより接続する。詳しくは、この作業では、
図2(b)に示すように、各親綱21,22の中間部をまとめて二重8の字結びすることにより接続する。これにより、各親綱21,22の中間部に接続部23が形成されるとともに、その接続部23にループ29が形成される。また、より詳しくは、各親綱21,22を接続する際には、第1マーカ28aがループ29に位置するように接続する。
【0033】
また、各親綱21,22を接続することにより、親綱21には接続部23から互いに反対側に延びる一対の綱部21a,21bが形成される。また、親綱22には接続部23から互いに反対側に延びる一対の綱部22a,22bが形成される。
【0034】
次に、昇降用ロープ接続工程を行う。
図4は昇降用ロープ接続工程を示す斜視図である。
図4に示すように、昇降用ロープ接続工程では、各親綱21,22の接続部23に昇降用ロープ26の一端部を接続する作業を行う。この作業では、接続部23のループ29の内側に昇降用ロープ26の一端部を通し、その状態で当該一端部をループ29に結んで接続する。
【0035】
次に、パイロットライン接続工程を行う。
図5はパイロットライン接続工程を示す斜視図である。また、
図6は、(a)がパイロットライン接続工程の前に行う仮固定工程を示す図であり、(b)がパイロットライン接続工程を示す図である。
【0036】
図5に示すように、パイロットライン接続工程では、各親綱21,22(詳しくは各綱部21b,22b)の一端側にパイロットライン31,32を接続する作業を行う。パイロットライン31,32は、合成樹脂材料や金属材料により形成されたワイヤ等の線状部材であり、柔軟性及び弾力性を有している。パイロットライン31,32は、親綱21,22に比べて軽量であり、単位長さ当たりの重量が親綱21,22よりも小さくなっている。また、各パイロットライン31,32は区別がし易いように異なる色で形成されている。
【0037】
パイロットライン接続工程についてより具体的に説明すると、本実施形態では、パイロットライン接続工程に先立ちまず、各親綱21,22の一端側(同士)を仮固定する仮固定工程を行う。仮固定工程では、
図6(a)に示すように、各親綱21,22の一端側において、各親綱21,22を揃えた状態で折り返すことによりループ35を形成するとともに、そのループ35が保持されるようにして各親綱21,22を仮固定する作業を行う。この作業では、各親綱21,22を各々の一端部が同じ位置となるように位置合わせした状態で折り返しを行い、その折り返した側の先端部となる上記一端部をそれよりも他端側(接続部23側)の部位と粘着テープ34により仮固定する。なお、この仮固定は粘着テープ34以外の仮固定部材を用いて行ってもよい。また、仮固定工程により形成されるループ35の大きさは20~30cm程度とするのが望ましい。また、ループ35において接続部23側とは反対側の端部はループ35の頂部37となっている。
【0038】
続いて、パイロットライン接続工程を行う。パイロットライン接続工程では、
図6(b)に示すように、パイロットライン31の一端部を各親綱21,22の一端側においてループ35の頂部37に接続し、パイロットライン32の一端部を各親綱21,22の一端側においてループ35よりも接続部23側に接続する。この場合、パイロットライン31についてはループ35に結び付けることにより接続し、パイロットライン32については粘着テープ39等の接続材を用いて接続する。但し、各パイロットライン31,32の接続の仕方はこれに限らず、他の接続方法を採用してもよい。また、パイロットライン32については、各親綱21,22が粘着テープ34を用いて仮固定された仮固定部位に対して接続する。
【0039】
次に、仮置き工程を行う。
図7は、仮置き工程を示す斜視図である。
【0040】
図7に示すように、仮置き工程では、上記各工程により接続された親綱21,22、昇降用ロープ26及びパイロットライン31,32を建物10の側方において地面上に仮置きする作業を行う。仮置き工程ではまず、親綱21,22、昇降用ロープ26及びパイロットライン31,32を収納袋41に入れて収納する。この場合、親綱21,22、昇降用ロープ26及びパイロットライン31,32をパイロットライン31,32から先に繰り出し可能な状態で収納袋41に収納する。
【0041】
続いて、各部材21,22,26,31,32の入った収納袋41を建物10の側方において地面の上に仮置きする。この場合、平面視において各軒先13を挟んだ両側のうちの一方側に収納袋41を仮置きする。この仮置き位置は、軒先13の延びる方向において当該軒先13(屋根11)の中心位置と略同じ位置に設定されている。
【0042】
次に、パイロットライン設置工程を行う。
図8~
図10はパイロットライン設置工程を示す斜視図である。
【0043】
パイロットライン設置工程では、
図8に示すように、2本の操作棒43を用いて2人の作業者により作業を行う。操作棒43は伸縮可能に形成され、その伸長状態では長さが例えば7~15m程度とされる。そのため、地上にいる作業者が伸長状態の操作棒43を持った場合に、操作棒43の先端部が屋根11の棟12よりも高い位置に届くようになっている。操作棒43の先端部には、略U字状のフック44が取り付けられている。このフック44には、パイロットライン31,32や親綱21,22を引っ掛けることが可能となっている。
【0044】
パイロットライン設置工程ではまず、
図8に示すように、各操作棒43の先端部に2本のパイロットライン31,32を掛け渡す作業を行う。この作業は、各操作棒43を縮めた状態で行う。この作業では、収納袋41から各パイロットライン31,32を引き出して、その引き出した部分を各操作棒43のフック44に掛け渡す。この際、各操作棒43のうち一方の操作棒43のフック44には各パイロットライン31,32の一端部(引き出した先端部)を結び付けて接続し、他方の操作棒43のフック44には各パイロットライン31,32の中間部を引っ掛ける。その後、各操作棒43を伸長状態とし、各パイロットライン31,32を屋根11よりも高い位置に上げる。これにより、各パイロットライン31,32が屋根11よりも高い位置で各操作棒43に掛け渡されて保持された状態となる。
【0045】
続いて、
図9に示すように、各操作棒43を各軒先13を挟んだ両側にそれぞれ移動させることで、パイロットライン31,32を屋根11の上方に位置させる作業を行う。この作業は、操作棒43を持つ各作業者がそれぞれ(平面視にて)各軒先13を挟んだ両側に移動することにより行う。
【0046】
続いて、
図10に示すように、各操作棒43を縮めることによりパイロットライン31,32を屋根11に下ろし、それにより当該パイロットライン31,32を屋根11上にかける(設置する)作業を行う。これにより、パイロットライン31,32が各軒先13を挟んだ両側に跨がる状態で屋根11上にかけられる。この作業の後、各操作棒43からパイロットライン31,32を取り外す。なお、この場合、各軒先13が、平面視にて互いに対向しかつ平行に延びる一対の屋根端縁部に相当する。
【0047】
次に、アンカー設置工程を行う。
図11は、アンカー設置工程を示す斜視図である。
図11に示すように、アンカー設置工程では、建物10の周囲に複数(4つ)のアンカー25を設置する作業を行う。この作業では、アンカー25を、平面視において各軒先13を挟んだ両側にそれぞれ2つずつ同じ間隔をあけて配置する(
図1(b)も参照)。
【0048】
次に、綱引き上げ工程を行う。
図12は、(a)が綱引き上げ工程を示す斜視図であり、(b)が同工程を示す側面図である。
【0049】
図12(a)に示すように、綱引き上げ工程では、屋根11にかけられたパイロットライン31,32を、親綱21,22が接続されている側とは反対側となる先端側から手繰り寄せることにより、各親綱21,22を屋根11上に引き上げる作業を行う。この作業では、
図12(b)に示すように、各親綱21,22が各軒先13を挟んだ両側に跨がるように、それら各親綱21,22を屋根11上に引き上げる。これにより、各親綱21,22の接続部23が屋根11上に載った状態となり、親綱21において接続部23から延びる各綱部21a,21bがそれぞれ異なる軒先13から下方に垂れ下がった状態となるとともに、親綱22において接続部23から延びる各綱部22a,22bがそれぞれ異なる軒先13から下方に垂れ下がった状態となる。また、この場合、各親綱21,22の綱部21a,22aが同じ軒先13から下方に垂れ下がった状態となり、各親綱21,22の綱部21b,22bが同じ軒先13から下方に垂れ下がった状態となる。
【0050】
また、綱引き上げ工程では、各親綱21,22の接続部23が屋根11の棟12に位置するようにして各親綱21,22を屋根11上に引き上げる。この場合、親綱21の各綱部21a,21bに付された第2マーカ28bの位置が同じ高さ位置となるように、また、親綱22の各綱部22a,22bに付された第2マーカ28bの位置が同じ高さ位置となるように、各親綱21,22の引き上げを行う。これにより、接続部23が棟12に位置するように各親綱21,22が屋根11上に引き上げられる。
【0051】
また、各親綱21,22が屋根11上に引き上げられることに伴い、接続部23に接続された昇降用ロープ26も屋根11上に引き上げられる。昇降用ロープ26は、各親綱21,22の綱部21a,22aとともに軒先13から下方に垂れ下がった状態で配置される。
【0052】
ここで、上述した綱引き上げ工程では、パイロットライン31,32と接続されている各親綱21,22の一端側が先端側となって各親綱21,22が屋根11上に引き上げられることになる。この場合、各親綱21,22の引き上げに際し、各親綱21,22の一端側が屋根11の軒先13において引っ掛かってしまうことが想定される。例えば、軒先13自体に引っ掛かってしまったり、軒先13に沿って配設された雨樋等の部材に引っ掛かってしまうことが想定される。その点、上述の構成では、各親綱21,22の一端側にループ35が形成されているため、そのループ35を先端として各親綱21,22を屋根11上に引き上げることができる。そのため、各親綱21,22の引き上げに際し、各親綱21,22の一端側が軒先13において引っ掛かってしまうのを抑制することが可能となっている。
【0053】
ところで、上述のように、ループ35により軒先13での引っ掛かりを抑制した構成であっても、屋根11(軒先13)の形状や軒先13に配置される部材等によっては引っ掛かりが生じる場合が想定される。そこで、以下では、軒先13において引っ掛かりが生じた場合の解消方法について
図13に基づき説明する。
図13は、親綱21,22の一端側が軒先13において引っ掛かった場合の解消方法を説明する図である。
【0054】
図13(a)では、各親綱21,22を屋根11上に引き上げる際、各親綱21,22の一端側が軒先13において引っ掛かった状態を示している。この例では、上記一端側に形成されたループ35の頂部37、つまりパイロットライン31と接続されている接続部分である頂部37が軒先13に対して引っ掛かっている。このため、各パイロットライン31,32を手繰り寄せて引っ張っても、親綱21,22を屋根11上に引き上げることができない状態となっている。
【0055】
そこで、このような場合には、
図13(b)に示すように、各パイロットライン31,32のうち、頂部37に接続されているパイロットライン31を手繰り寄せるのをやめ、その状態で、ループ35よりも接続部23側に接続されているパイロットライン32を手繰り寄せるようにする。これにより、ループ35よりも接続部23側から(つまりループ35よりも下方から)ループ35が持ち上げられ、それによりループ35の頂部37における引っ掛かりが解消される。
【0056】
引っ掛かりが解消した後は、
図13(c)に示すように、頂部37に接続されているパイロットライン31を手繰り寄せる。これにより、ループ35が屋根11上に載った状態となり、その後は両パイロットライン31,32を手繰り寄せながら各親綱21,22を屋根11上に引き上げていく。
【0057】
綱引き上げ工程を行った後、パイロットライン31,32を親綱21,22の一端側から取り外すとともに、各親綱21,22の一端側を仮固定している粘着テープ34を取り外し当該仮固定を解除する。
【0058】
次に、綱張り工程を行う。
図14は、綱張り工程を示す斜視図である。
【0059】
図14(a)に示すように、綱張り工程では、各親綱21の綱部21a,21bを軒先13に沿って移動させるとともに、各親綱22の綱部22a,22bを軒先13に沿って移動させることで、各親綱21,22を屋根11上において平面視にてX字状をなすように配置する。この場合、各綱部21a,21b,22a,22b(以下、略して綱部21a~22bという)を移動させる際には、操作棒43により綱部21a~22bを屋根11から上方に持ち上げた(離間させた)状態で綱部21a~22bを移動させる。また、操作棒43による綱部21a~22bの持ち上げは、操作棒43先端のフック44に綱部21a~22bを引っ掛けた状態で行う。
【0060】
綱張り工程では、
図14(b)に示すように、各親綱21,22を平面視にてX字状に配置した状態で、各親綱21,22の両端側をそれぞれアンカー25に接続する。これにより、各親綱21,22がアンカー25に固定され、各親綱21,22が屋根11上にX字状に張られた状態で設置される。この場合、各親綱21,22は、屋根11上において、平面視にて軒先13及びけらば14のいずれに対しても傾斜する方向に直線状に延びた状態で配置される(
図1(b)も参照)。また、この場合、各親綱21,22は、屋根11上において接続部23を中心とした対称形状となるようにX字状に張られる。
【0061】
次に、屋根移動工程を行う。
図15は、屋根移動工程を示す斜視図である。
【0062】
図15に示すように、屋根移動工程では、作業者が梯子27を用いて屋根11上へと移動する。この場合、まず梯子27を屋根11の軒先13に立て掛けた状態で昇降用ロープ26に沿って設置する。その後、作業者が安全帯24を装着した状態で、梯子27を上って屋根11上へ移動する。
【0063】
作業者が梯子27を上る際には、昇降用ロープ26を利用する。この場合、作業者の安全帯24と昇降用ロープ26とを落下防止用の接続具(図示略)により接続し、その接続状態で作業者は梯子27を上る。接続具は、昇降用ロープ26と接続されるロープ接続部が昇降用ロープ26に沿ってスライド可能となっている。また、ロープ接続部には、昇降用ロープ26に沿った下方への急激な変位が生じると、その変位を規制する規制機能(ストッパ機能)が設けられている。これにより、作業者が梯子27から落下した場合、その規制機能が働いて地面への落下が防止されるようになっている。
【0064】
また、作業者は屋根11上に上った後、屋根11上を昇降用ロープ26に沿って棟12まで移動する。つまり、この際、作業者は各親綱21,22の接続部23が配置されている位置まで移動する。
【0065】
次に、安全帯接続工程を行う。
図16は、安全帯接続工程を示す斜視図である。
【0066】
図16に示すように、安全帯接続工程では、作業者の安全帯24を各親綱21,22の接続部23に接続する作業を行う。この作業では、安全帯24と接続部23とをロープ状の接続部材47(命綱)を介して接続する。接続部材47の一端部は安全帯24に取り付けられる。また、接続部材47の他端部にはブロック状の接続部47aが設けられ、その接続部47aが接続部23のループ29に引っ掛けられた状態で取り付けられる。
【0067】
安全帯接続工程の後、安全帯24と昇降用ロープ26とを接続している接続具を取り外す。また、各親綱21,22において軒先13と接触している部分に親綱21,22を保護するための保護部材49(
図1(a)参照)を取り付ける。以上により、各親綱21,22の設置作業が終了する。
【0068】
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0069】
建物10の屋根11上に2本の親綱21,22を互いの中間部にて接続された状態で平面視にてX字状をなすように張るようにした。そして、屋根11上に張られたそれら各親綱21,22の接続部23に作業者の安全帯24を接続するようにした。この場合、作業者が屋根11の四方のいずれから落下した場合にも、その落下荷重(墜落荷重)が2本の親綱21,22に分散してかかることになる。そのため、落下荷重による親綱21,22の損傷を確実に防止することができ、その結果、親綱21,22を用いた屋根11上での作業について安全性を高めることができる。
【0070】
各親綱21,22の接続部23に作業者が屋根11上に梯子27を用いて上る際に利用する昇降用ロープ26を接続するようにした。この場合、作業者が梯子27を用いて屋根11に上り、その後屋根11上を接続部23まで移動するまでの間、昇降用ロープ26を利用することができる。これにより、作業者が自身に装着した安全帯24を接続部23に接続するまでの一連の移動を安全に行うことができる。
【0071】
屋根11上にまずパイロットライン31,32をかけ、その後パイロットライン31,32に各親綱21,22の一端側を接続した状態で当該パイロットライン31,32を手繰り寄せることにより各親綱21,22を屋根11上に引き上げるようにした。この際、各親綱21,22を対向する一対の軒先13を挟んだ両側に跨がるように屋根11上に引き上げるようにした。そして、その後、各親綱21,22において接続部23から延びる一対の綱部21a,21b(22a,22b)を軒先13に沿って移動させることで、各親綱21,22を平面視においてX字状に張るようにした。この場合、綱部21a,21b,22a,22bを移動させる際、綱部21a,21b,22a,22bを軒先13から当該軒先13と屋根11の角部を挟んで隣接するけらば14へ移動させる必要がない。そのため、綱部21a,21b,22a,22bを移動させる際、綱部21a,21b,22a,22bが屋根11の角部に引っ掛かって移動が困難になるのを回避できる。これにより、各親綱21,22をX字状に張る上で、その作業を容易に行うことができる。
【0072】
各親綱21,22を屋根11上に引き上げるに際しては、2本のパイロットライン31,32を用いて引き上げるようにした。具体的には、一方のパイロットライン31を各親綱21,22の一端側においてループ35に接続し、他方のパイロットライン32をループ35よりも接続部23側に接続した状態で各親綱21,22を引き上げるようにした。この場合、各親綱21,22の引き上げに際し、各親綱21,22の一端側(ループ35)が軒先13において引っ掛かった場合には、
図13を用いて説明した上述の手順で引っ掛かりを解消することができる。そのため、各親綱21,22を引き上げる際、仮に軒先13において引っ掛かったとしても、その引っ掛かりを速やかに解消することができ、その結果、各親綱21,22の引き上げ作業を迅速に行うことができる。
【0073】
パイロットライン31,32を屋根11上にかける際には、パイロットライン31,32を屋根11よりも高い位置で2本の操作棒43に掛け渡した状態で、それら各操作棒43を持つ2人の作業者がそれぞれ各軒先13に沿って移動等することで、パイロットライン31,32を屋根11上にかけることができる。この場合、パイロットライン31,32を屋根11にかける作業を建物10の近くで行うことができるため、建物10の敷地が狭小で建物10周囲に作業スペースをそれほど確保できない場合でも、パイロットライン31,32を比較的容易に屋根11上にかけることができる。
【0074】
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
【0075】
・上記実施形態では、仮固定工程において、各親綱21,22の一端側をループ35を形成した状態で仮固定したが、ループ35を形成しないで各親綱21,22の一端側を揃えただけの状態で仮固定してもよい。その場合にも、仮固定した各親綱21,22の一端側にパイロットラインを接続し、その状態でパイロットラインを手繰り寄せることで各親綱21,22を屋根11上に引き上げることが可能である。
【0076】
・上記実施形態では、綱引き上げ工程において、2本のパイロットライン31,32を用いて各親綱21,22を屋根11上に引き上げたが、これを変更して、パイロットラインを1本だけ各親綱21,22の一端側に接続し、その1本のパイロットラインを用いて各親綱21,22を屋根11上に引き上げてもよい。
【0077】
・上記実施形態では、各親綱21,22の綱部21a,21b,22a,22bがそれぞれ軒先13から下方に垂れ下がるようにして、各親綱21,22を屋根11上にて平面視X字状をなすように配置したが、これを変更して、各親綱21,22の綱部21a,21b,22a,22bがけらば14から下方に垂れ下がるようにして各親綱21,22を屋根11上にて平面視X字状をなすように配置してもよい。
【0078】
・上記実施形態では、各親綱21,22を、屋根11上において、平面視にて接続部23を中心とした対称形状となるようにX字状に配置したが、各親綱21,22がなすX字状は必ずしも対称形状である必要はなく、非対称形状であってもよい。例えば、上記実施形態では、一方の軒先13における各親綱21,22間の距離と、他方の軒先13における各親綱21,22間の距離とが同じ距離となっていたが、これら各距離を互いに異ならせて非対称形状としてもよい。この場合にも、全体として各親綱21,22が略X字状をなしていれば、作業者が屋根11から落下した際の落下荷重が各親綱21,22にそれぞれ作用することになるため、落下荷重による各親綱21,22の損傷を確実に抑制するという効果を得ることができる。
【0079】
・例えば、各親綱21,22を接続しない状態で個別に屋根11上にかけ、その後、屋根11上で各親綱21,22を互いの中間部にて接続するようにしてもよい。この場合、その接続後、各親綱21,22をX字状に張る綱張り工程を行うことになる。ただ、屋根11上での親綱21,22の接続作業は安全性等の面で好ましくないため、親綱21,22の接続作業は、上記実施形態のように、親綱21,22を屋根11上にのせる前に行うのが望ましい。
【0080】
・上記実施形態では、パイロットライン設置工程に際し、2本の操作棒43を用いて2人の作業者によりパイロットライン31,32を屋根11上にかけたが、パイロットライン31,32を屋根11上にかける作業は必ずしもこのように行う必要はない。例えば、一の操作棒43の先端部にパイロットラインの先端部を接続し、その接続状態で操作棒43を伸長状態とするとともに、その操作棒43を操作してパイロットラインが屋根11上に載るように作業者が建物10の周囲を移動することでパイロットラインを屋根11上にかける方法が考えられる。この場合、1人の作業者によりパイロットラインを屋根11上にかけることが可能となる。
【0081】
・上記実施形態では、切り妻式の屋根11に本発明の親綱設置方法を適用したが、寄せ棟式の屋根や片流れ式の屋根、陸屋根等に本発明の親綱設置方法を適用してもよい。
【符号の説明】
【0082】
10…建物、11…屋根、13…屋根端縁部としての軒先、21…親綱、21a,21b…綱部、22…親綱、22a,22b…綱部、23…接続部、24…安全帯、26…昇降用ロープ、27…梯子、31…パイロットライン、32…パイロットライン、35…ループ、37…頂部、43…操作棒。