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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】土密度試験方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 1/00 20060101AFI20230801BHJP
   G01B 11/24 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
E02D1/00
G01B11/24 A
G01B11/24 K
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020105516
(22)【出願日】2020-06-18
(65)【公開番号】P2021195844
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2022-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】303056368
【氏名又は名称】東急建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100143720
【弁理士】
【氏名又は名称】米田 耕一郎
(72)【発明者】
【氏名】黒川 進
(72)【発明者】
【氏名】小島 文寛
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-108592(JP,A)
【文献】特開2005-227233(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0260711(US,A1)
【文献】特開昭60-253617(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 1/00- 3/115
G01B 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
土密度試験方法であって、
試験対象の土の一部を掘って孔を形成するとともに土を取り出す孔形成工程と、
取り出した土の質量を測定する質量測定工程と、
孔の体積を計測する孔体積計測工程と、
土の質量と孔の体積とに基づいて試験対象の密度を求める密度算出工程と、を備え、
前記孔形成工程は、
孔が設けられたベースプレートを用意し、
前記ベースプレートにはマッチング用マークが複数設けられており、
前記ベースプレートを土の上に置き、
前記ベースプレートの孔のサイズを目安にして土に孔を掘り、
前記孔体積計測工程は、
光学的非接触計測法によって孔および孔周辺の計測データを収集する孔計測データ収集工程と、
前記孔計測データ収集工程で収集された計測データから土の孔形状を取得する孔形状取得工程と、
前記孔形状取得工程で取得された孔形状から孔の体積を算出する孔体積算出工程と、を有し、
前記孔計測データ収集工程は、
前記ベースプレートをそのまま土の上に置いたままで、光学的非接触計測法によって、前記ベースプレートを含めて孔および孔周辺の計測データを複数の方向から取得し、
前記孔形状取得工程は、
前記マッチング用マークを参照して縮尺および位置合わせにより、前記複数の方向から取得した前記計測データを合成することで孔の形状のモデルを求める
ことを特徴とする土密度試験方法。
【請求項2】
請求項1に記載の土密度試験方法において、
前記孔形状取得工程では、
さらに、前記ベースプレートを閾値として土の孔の形状を抽出する
ことを特徴とする土密度試験方法。
【請求項3】
土密度試験方法であって、
試験対象の土の一部を掘って孔を形成するとともに土を取り出す孔形成工程と、
取り出した土の質量を測定する質量測定工程と、
孔の体積を計測する孔体積計測工程と、
土の質量と孔の体積とに基づいて試験対象の密度を求める密度算出工程と、を備え、
前記孔形成工程の前に、
孔が設けられたベースプレートを用意し、
さらに、前記ベースプレートにはマーク設置用の目印が複数設けられており、
前記ベースプレートを土の上に置き、さらに、前記マーク設置用の目印に従って土に複数のマッチング用マークを設置し、その後、前記ベースプレートを土から外し、
次に、試験対象となる土の表面の形状を基準面として光学的非接触計測法によって取得する基準面取得工程を行い、
続いて、
前記孔形成工程は、
前記ベースプレートを再び土の上に置き、前記ベースプレートの孔のサイズを目安にして土に孔を掘り、
前記孔体積計測工程は、
光学的非接触計測法によって孔および孔周辺の計測データを収集する孔計測データ収集工程と、
前記孔計測データ収集工程で収集された計測データから土の孔形状を取得する孔形状取得工程と、
前記孔形状取得工程で取得された孔形状から孔の体積を算出する孔体積算出工程と、を有し、
前記孔計測データ収集工程では、
前記ベースプレートを土の表面から外してから、前記マッチング用マークを含めて土の孔および孔周辺の計測データを複数の方向から取得し、
前記孔形状取得工程では、
前記マッチング用マークを参照した縮尺および位置合わせと、前記基準面の形状と前記孔計測データ収集工程で取得した孔および孔周辺の形状との対比と、に基づいて土の孔の形状のモデルを取得する
ことを特徴とする土密度試験方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の土密度試験方法において、
前記光学的非接触計測法は、
レーザー測距法または画像測定である
ことを特徴とする土密度試験方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の土密度試験方法において、
前記孔計測データ収集工程の際に土の孔のなかにマッチング用のマークを複数配置しておく
ことを特徴とする土密度試験方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5に記載の土密度試験方法を孔の深さを段階的に深くしながら所定回数または所定の深さになるまで繰り返す
ことを特徴とする土密度試験方法。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の土密度試験方法において、
前記孔形成工程で掘られる前記孔は、土の表面に対して垂直ではなく傾斜した孔である
ことを特徴とする土密度試験方法。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の土密度試験方法において、
土密度試験の対象の面が法面である
ことを特徴とする土密度試験方法。
【請求項9】
請求項8に記載の土密度試験方法において、
前記孔形成工程で掘られる前記孔は、傾斜した法面に対して天面が傾斜した孔であるか、または、傾斜した法面に対して断面視でL字形に削って天面がない孔としたものである
ことを特徴とする土密度試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は盛土等の土密度を試験する土密度試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
盛土、路体、路床等の密度管理としては、砂置換法による土の密度試験方法、RI法、転圧回転数記録、その他、平板載荷試験、打撃による密度試験等があるが、JISで定められた「砂置換法による土の密度試験方法」が主流である(非特許文献1)。砂置換法による土密度試験では、試験孔を掘って、取り除いた土の質量を計測するとともに標準砂による砂置換によって試験孔の体積を計測する。そして、土の質量と体積とから土の密度を求めるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許5107673
【非特許文献】
【0004】
【文献】日本工業規格 JIS A1214:2013 砂置換法による土の密度試験方法
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
砂置換法による土密度試験は標準砂を用いるのであるが、試験後は標準砂を撤去しなければならない。しかし、標準砂を完全に撤去することは困難であるし、非常に手間が掛かる作業となっている。土密度試験は、場所を変えて複数回行なうことが必要であるが、標準砂を入れたり出したりする作業を何度も繰り返すのは労力が掛かる。また、標準砂自体を適切に管理したり校正したりすることにも手間が掛かるし、標準砂を扱うためのジャーやアタッチメント(漏斗)のような特別な器具を複数セット用意したり、管理、運搬等を行なうことにも相当の労力が掛かっている。また、砂置換法では、その原理上、法面のような斜面に対しては適用できず(砂がこぼれてしまう)、砂置換法では法面(斜面)の密度管理を系統的に行なうことはできないという問題もある。
【0006】
砂置換法以外の密度管理法も例えば特許文献1(特許5107673)に開示されるように提案されている。しかしながら、特許文献1(特許5107673)の方法の場合、全体的な密度は推定できるかもしれないが、各ポイントにおける密度が正確に求まるわけではないし、現行のJISの砂置換法とはデータの対比ができないので、補助的な推定値として採用できるに留まると考えられる。
【0007】
本発明の目的は、従来法に比べて作業が簡単な土密度試験方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の土密度試験方法は、
土密度試験方法であって、
試験対象の土の一部を掘って孔を形成するとともに土を取り出す孔形成工程と、
取り出した土の質量を測定する質量測定工程と、
孔の体積を計測する孔体積計測工程と、
土の質量と孔の体積とに基づいて試験対象の密度を求める密度算出工程と、を備え、
前記孔形成工程は、
孔が設けられたベースプレートを用意し、
前記ベースプレートにはマッチング用マークが複数設けられており、
前記ベースプレートを土の上に置き、
前記ベースプレートの孔のサイズを目安にして土に孔を掘り、
前記孔体積計測工程は、
光学的非接触計測法によって孔および孔周辺の計測データを収集する孔計測データ収集工程と、
前記孔計測データ収集工程で収集された計測データから土の孔形状を取得する孔形状取得工程と、
前記孔形状取得工程で取得された孔形状から孔の体積を算出する孔体積算出工程と、を有し、
前記孔計測データ収集工程は、
前記ベースプレートをそのまま土の上に置いたままで、光学的非接触計測法によって、前記ベースプレートを含めて孔および孔周辺の計測データを複数の方向から取得し、
前記孔形状取得工程は、
前記マッチング用マークを参照して縮尺および位置合わせにより、前記複数の方向から取得した前記計測データを合成することで孔の形状のモデルを求める
ことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の土密度試験方法は、
請求項1に記載の土密度試験方法において、
前記孔形状取得工程では、
さらに、前記ベースプレートを閾値として土の孔の形状を抽出する
ことを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の土密度試験方法は、
土密度試験方法であって、
試験対象の土の一部を掘って孔を形成するとともに土を取り出す孔形成工程と、
取り出した土の質量を測定する質量測定工程と、
孔の体積を計測する孔体積計測工程と、
土の質量と孔の体積とに基づいて試験対象の密度を求める密度算出工程と、を備え、
前記孔形成工程の前に、
孔が設けられたベースプレートを用意し、
さらに、前記ベースプレートにはマーク設置用の目印が複数設けられており、
前記ベースプレートを土の上に置き、さらに、前記マーク設置用の目印に従って土に複数のマッチング用マークを設置し、その後、前記ベースプレートを土から外し、
次に、試験対象となる土の表面の形状を基準面として光学的非接触計測法によって取得する基準面取得工程を行い、
続いて、
前記孔形成工程は、
前記ベースプレートを再び土の上に置き、前記ベースプレートの孔のサイズを目安にして土に孔を掘り、
前記孔体積計測工程は、
光学的非接触計測法によって孔および孔周辺の計測データを収集する孔計測データ収集工程と、
前記孔計測データ収集工程で収集された計測データから土の孔形状を取得する孔形状取得工程と、
前記孔形状取得工程で取得された孔形状から孔の体積を算出する孔体積算出工程と、を有し、
前記孔計測データ収集工程では、
前記ベースプレートを土の表面から外してから、前記マッチング用マークを含めて土の孔および孔周辺の計測データを複数の方向から取得し、
前記孔形状取得工程では、
前記マッチング用マークを参照した縮尺および位置合わせと、前記基準面の形状と前記孔計測データ収集工程で取得した孔および孔周辺の形状との対比と、に基づいて土の孔の形状のモデルを取得する
ことを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の土密度試験方法は、
請求項1から請求項3のいずれかに記載の土密度試験方法において、
前記光学的非接触計測法は、
レーザー測距法または画像測定である
ことを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の土密度試験方法は、
請求項1から請求項4のいずれかに記載の土密度試験方法において、
前記孔計測データ収集工程の際に土の孔のなかにマッチング用のマークを複数配置しておく
ことを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の土密度試験方法は、
請求項1から請求項5に記載の土密度試験方法を孔の深さを段階的に深くしながら所定回数または所定の深さになるまで繰り返す
ことを特徴とする。
【0014】
請求項7に記載の土密度試験方法は、
請求項1から請求項6のいずれかに記載の土密度試験方法において、
前記孔形成工程で掘られる前記孔は、土の表面に対して垂直ではなく傾斜した孔である
ことを特徴とする。
【0015】
請求項8に記載の土密度試験方法は、
請求項1から請求項7のいずれかに記載の土密度試験方法において、
土密度試験の対象の面が法面である
ことを特徴とする。
【0016】
請求項9に記載の土密度試験方法は、
請求項8に記載の土密度試験方法において、
前記孔形成工程で掘られる前記孔は、傾斜した法面に対して天面が傾斜した孔であるか、または、傾斜した法面に対して断面視でL字形に削って天面がない孔としたものである
ことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態の土密度試験方法の手順を説明するためのフローチャートである。
図2】ベースプレートを例示する図である。
図3】孔の断面を例示する図である。
図4】孔体積計測工程の手順を説明するためのフローチャートである。
図5】ハンディタイプの3Dスキャナーで孔をスキャンしている様子を例示する図である。
図6】計測データ(点群データ)を合成したモデルを例示した図である。
図7】第2実施形態の手順を説明するためのフローチャートである。
図8】第2実施形態の手順を説明するためのフローチャートである。
図9】変形例1を説明するための図である。
図10】第3実施形態を説明するための図である。
図11】第4実施形態を説明するための図である。
図12】第4実施形態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態を図示するとともに図中の各要素に付した符号を参照して説明する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る土密度試験方法を説明する。
図1は、第1実施形態の土密度試験方法の手順を説明するためのフローチャートである。
まず簡単な下準備を行なう(ST110)。密度試験の対象箇所を決めて、表面の緩んだ土を取り除き、直径数10cmの円形の範囲(あるいは一辺数10cm四方の矩形の範囲)をストレートエッジで平らにならす。土密度試験の対象は平坦な水平面でもよいし、法面であってもよい。ここでは、土密度試験の対象は平坦な水平面とする。
【0019】
平らにならしたところにベースプレートを置く(ST120)。
図2は、ベースプレート100を例示する図である。
ベースプレート100は、中央に円形の孔110を有する矩形の平板である。なお、孔110は円形が望ましいと考えられるが、外形は矩形でなくても例えば円形でもよい。もちろん、孔110も矩形でも円形でもよい。
【0020】
孔110は、例えば直径10cmの真円というように、大きさや形状が高精度に設計値通りに加工されているとよい。後の工程(例えば孔の体積の計測(ST150))において、孔110の形状と大きさが縮尺として利用できるからである。もちろん、後ほど校正することもできるので、孔110の加工精度は必須ではない。
【0021】
本実施形態では、ベースプレート100の孔110の周囲にマッチング用のマーク120が設けられている。
マッチング用のマーク120は、円、三角、バツ、四角、というように幾何学的形状である。
マッチング用のマーク120はベースプレート100に刻印されてもよいし、ベースプレート100にマッチング用マークのシールを貼り付けるようにしてもよい。
マッチング用のマーク120を縮尺として利用する場合、各マッチング用マーク120の形状、大きさ(径や辺の長さ)が設計値通りに高精度に加工されていることが好ましいし、さらに、マッチング用マーク120同士の相対位置(相対距離)が設計値通りに高精度に既知の値になっていることが好ましい。
【0022】
さらに、ベースプレート100の反射率が土との反射率と異なっていることが好ましい。
ベースプレート全体が金属(アルミニウムやその合金)等で形成されてもよいし、樹脂製のベースプレート100の全体または一部に高反射率の塗料(反射材)を塗ってもよい。
ここでは、ベースプレート100の孔110の内周面の全体に高反射率の反射材を塗布している。
もしくは、例えば、ベースプレート100の下面に高反射率の塗料(反射材)を塗ってもよい。この場合、孔110の内側から前記下面の塗料(反射材)が少し見えるように、孔110の内側にも少し回り込むように高反射率の塗料を塗っておくとよい。
【0023】
なお、高反射率の反射材といっても反射率が高すぎてもよくない。レーザー測距や画像の撮像の際に土に露光を合わせたときにベースプレート100の反射光が飽和してしまうようでは意味がない。土に露光を合わせたときに、土とベースプレート100とが反射率の差で両者が明確に区別できればよい。
【0024】
あるいは、ベースプレート100の色を土の色と異なる色、例えば、土が茶色だとすれば、その反対の色である青や緑にしてもよい。
【0025】
なお、ベースプレート上にマークを設けるとして、ベースプレートとマークとが区別されるように互いの反射率あるいは色を違えておくのはもちろんである。
【0026】
次に、土に孔200を掘る(ST130)。
ベースプレート100の孔110の内側の土をスコップ等で掘り出し、土に孔200を掘る。
図3は、孔200の断面図の例示である。
孔200の深さは、規定の深さ、あるいは、十数cm~数10cm程度である。
掘り出した土は質量測定(ST140)に回す。
土の質量測定の方法は規定の方法(例えばJIS)に従う(例えば所定時間乾燥させてから質量計測するなど)。
【0027】
次に土の孔200の体積を計測する(ST150)。
図4は、孔体積計測工程(ST150)の手順を説明するためのフローチャートである。
ここでは、ハンディタイプの3Dスキャナー300で孔200の周囲を含めて孔全体をまんべんなくスキャンする(ST151)。図5は、ハンディタイプの3Dスキャナー300で孔200をスキャンしている様子を例示する図である。
【0028】
次に、ST152において、計測データ(点群データ)を合成して孔200の形状を求める(モデリング)する(ST152)。
図6は、計測データ(点群データ)を合成したモデルを例示した図である。
この際、ベースプレート100の孔110の径および孔周辺のマーク120を参照して、縮尺(サイズ)合わせおよび位置合わせ(合成)をするとよい。
さらに、モデリングしたデータからベースプレート100の部分を取り除いて、土の孔200の形状のみを抽出する(ST153)。ベースプレート100は土と明確に区別できるようにその反射率あるいは色を土とは違えている。したがって、データ上でベースプレート100を土と明確に区別できるし、ベースプレートより下の空洞が求積したい土の孔200であるとわかる。土の孔200の形状が抽出できたので、これを基に孔200の体積を算出する(ST154)。これで孔体積計測工程(ST150)が完了である。
【0029】
なお、計測データの合成(ST152)および孔形状の抽出(ST153)は、小型の端末機器(小型PC(パソコン)、タブレット)を用いてその場で行なうこともできる。
この際、小型の端末機器にインストールしてある所定のアプリケーションプログラムで計測データの演算処理を行なってもよいし、ネットワークを介してデータを大型計算機に送信し、ネットワークを介して大型計算機の演算処理結果を受け取るようにしてもよいだろう。もちろん、現場で演算処理まで行なう必要がなければ、計測データを持ち帰ってから別途計測データの合成(ST152)および孔形状の抽出(ST153)を行なってもよい。
【0030】
ここまでで土の質量(W)と体積(V)が求まっているので、土の密度を算出できる(ST160)。
【0031】
上記土密度試験を必要な回数、場所を変えて繰り返す(例えば3箇所)。
最後に、後工程(ST170)として、孔200を埋め戻す等の処理を行なう。これで土密度試験の完了である。
【0032】
本実施形態の方法によれば、例えば標準砂を用いる方法に比べて孔200の体積の算出が簡単である。
例えば、後工程において標準砂を取り除いたりする工程が無いので、本実施形態の方が必要な手数が格段に少ない。また、砂置換法によって孔体積を求めるには標準砂自体の密度管理(品質管理)やキャリブレーション(校正)が必要になってくるが、管理に手間・費用が掛かるし、キャリブレーションでも残存誤差がどうしても残る(標準砂のキャリブレーションは難しい)。
この点、レーザースキャナやカメラは保管、運搬、メンテナンスが簡単であるし、3Dモデリングの誤差は単純な孔の体積の算出であれば精度も十分である。すなわち、本実施形態によれば、現場作業効率が高く、かつ、精度も高い土密度試験が行えるようになる。
【0033】
(第2実施形態)
続いて、本発明の第2実施形態に係る土密度試験方法を説明する。
図7図8は第2実施形態の手順を説明するためのフローチャートである。
第2実施形態の手順のうち第1実施形態と同じ手順については説明を省略し、第1実施形態と違う手順を説明する。
第2実施形態においては、準備(ST210)のあと、ベースプレート100を設置する前に、試験対象となる土の表面をレーザースキャナ300でスキャンし(ST211)、孔200を掘る前の対象の表面を求めておく(ST212)。
(なお、説明の都合上、フローチャート上ではST212(孔を掘る前の対象の表面の算出)をST211の直後に記載しているが、データ解析はデータを転送したり持ち帰ったりして、後刻にまとめて行なってもよい。)
【0034】
続いて、ベースプレート100を設置し(ST220)、孔200を堀り(ST230)、土の質量測定(ST240)を行なう。これらの工程は第1実施形態と同じである。
【0035】
次に、孔体積計測工程(ST250)の前に、孔200を掘る補助具であるベースプレート100を土から外す(ST241)。そして、ベースプレート100が無い状態で、孔体積計測工程(ST250)を行なう。孔200の周囲を含めて孔全体をまんべんなくスキャンし(ST251)、計測データ(点群データ)を合成して孔200の形状を求める(モデリング)(ST252)。
【0036】
そして、モデリングしたデータから土の孔200形状のみを抽出する(ST253)。
このとき、先にST212において孔200を掘る前の対象の表面が算出されていた。そこで、計測データ(点群データ)を合成して孔200の形状を求めた(ST252)あと、ST212で求めておいた孔200を掘る前の対象表面と対比して、土の孔200だけを正確に切り出すことができる。
【0037】
土の孔200の形状が抽出できたので、これを基に孔200の体積を算出する(ST254)。これで孔体積計測工程(ST250)が完了である。
【0038】
土密度の算出(ST260)や後工程(ST270)は第1実施形態と同じなので説明を割愛する。
【0039】
第2実施形態によれば、孔200を掘る前と孔200を掘る後の状態を対比することで、土の孔200の形状を的確に切り出して、土の孔200の体積がより正確に求められると期待できる。
【0040】
(変形例1)
第2実施形態において、土の表面にマッチング用のマークを設置するとよい。
マークは例えば土の表面に数個のマークを置くようにしてもよいし、土にピンを挿すようにしてもよい。このとき、マークの形状、大きさ、相対位置(相対距離)を既知の値にしておけば、計測データを合成するときに縮尺としても利用できる。
【0041】
例えば、図9(A)に例示のようにベースプレート100にマーク設置用の目印115を設けておいてもよい。
図9(A)では、ベースプレート100の四隅に切欠部115を設けている。
まず、このベースプレート100を試験対象の土の上におき、切欠部115を目安にピン130を土に挿しておく。そして、図9(B)に例示のように、一旦ベースプレート100を土から外して、試験対象となる土の表面をレーザースキャナでスキャンし(ST211)、孔200を掘る前の対象の表面を求めておく(ST212)。
再度ベースプレート100を土に置いて、ベースプレート100の孔110を目安に土に孔200を掘る(ST230)。
この後の工程は第2実施形態で説明した通りある。
土の表面にマッチング用のマーク130があれば、孔200を掘る前の計測データ(ST212)と孔200を掘った後の計測データ(ST252)とを対比する際に誤差が少なくなると期待できる。
【0042】
(変形例2)
第1実施形態および第2実施形態において、土の孔200のスキャンするにあたって(ST151、ST251)、土の孔200のなかにもマッチング用のマークを設置しておくとよい。
例えば、土の孔200の内周に複数のマークを置く(貼る)ようにしてもよいし、土にピンを挿すようにしてもよい。マークを1つ1つ丁寧に所定の位置に置く(貼るあるいは挿す)ようにしてもよいし、小さな紙片やチップを複数用意しておいて、孔のなかにパラパラと撒くようにしてもよいだろう。
【0043】
なお、変形例1、2においても、マークが土と容易に区別されるように、マークの反射率あるいは色を土と違えておくのが好ましい。
【0044】
(第3実施形態)
第1実施形態および第2実施形態で説明したように、本発明の土密度試験方法は標準砂の置換法で孔の体積を求めるわけではないので標準砂を入れたり出したりするといった工程は必要ない。
したがって、本発明の土密度試験方法は土の孔200の深さを段階的に徐々に深くしながら所定回数または所定深さになるまで繰り返すことが容易である。
例えば、図10に例示するように、一段目は深さ10cmの孔で土密度を計測する。
二段目は、一段目の孔を更に掘って、深さ10cm-20cmの孔で土密度を計測する。これを繰り返し、所定回数または所定深さになるまで繰り返す。(例えば、孔の深さが50cmや100cmに達するまでとしてもよいだろう。)
従来の標準砂置換法では、段階的に掘り進んでいくことは難しいし、そもそも深い孔では砂置換法を適用することが難しい。この点、本発明によれば、土密度の変化を深さ方向で管理することも容易にできるようになる。
【0045】
(第4実施形態)
第1実施形態および第2実施形態で説明したように、本発明の土密度試験方法は標準砂の置換法で孔の体積を求めるわけではないので標準砂を入れたり出したりするといった工程は必要ない。
したがって、本発明の土密度試験方法は、試験対象が平坦な水平面に限定されず、例えば、図11または図12に例示のように、法面210のような斜面に対しても適用できる。
切土や盛土を造成するとき、法面(斜面)210を叩いて固めて整形するが、その密度がどの程度になっているかは正確には管理されてこなかった。従来、切土や盛土の土密度管理であっても平坦な水平面(最上面や各段差の上面)から所定の深さの土密度試験に限られ、法面(斜面)210そのものの土密度管理はされてこなかった。これは砂置換法では原理的にやむ得ないことである。
この点、本発明の土密度試験方法は、孔200が鉛直方向(重力方向)であるかどうかは関係ない。したがって、例えば、図11に例示のように、法面210の土密度の管理も可能になる。このことは法面(傾斜地)210の安定性の向上に大きく貢献すると期待できる。
図11においては、法面210に試験孔を形成するにあたって、法面にほぼ垂直な孔200を形成した例を示している。
【0046】
あるいは、法面210に試験孔を掘るにあたっては、図12中の下の孔のように水平方向に円柱状(あるいは角柱状)の孔220を形成してもよい。
あるいは、天面が崩れるような場合には中段の孔のように天面を傾斜させたような孔230を形成してもよい。
あるいは、上段の孔240のように法面(斜面)210をL字形に掘って(削って)、天面がないような孔240を形成してもよい。
要は、法面を法面に対して垂直な方向あるいは水平方向(あるいは水平方向からやや斜めの方向でもよい)に掘って(削って)、土を採取するとともに、そのときにできた試験孔の計測データを光学的非接触計測法によって得る。
【0047】
なお、本発明は、上記実施形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
上記実施形態では、3Dスキャナー300で孔200をスキャンした計測データ(点群データ)から孔形状を求めるとした。
光学的非接触計測としては、画像合成技術によって孔形状をモデリングしてもよい。すなわち、上記実施形態の説明中のレーザースキャナをデジタルカメラとし、パノラマ写真合成によって孔形状を求めるようにしてもよい。
【0048】
さらには、3Dスキャナー300とデジタルカメラの両方を合わせて用いてもよい。
3Dスキャナー300による計測データ(点群データ)とデジタルカメラによる撮像データとを合わせて用い、両者で補間しあうことでより的確に孔形状をモデリングして求めることができる。
【0049】
ベースプレート100の孔110および土に掘る試験孔(200)の直径については特段限定されるものではない。
例えば、孔110(200)の径が小さい場合には、孔の外からの3Dスキャナーおよび/またはデジタルカメラでの計測(撮影)で試験孔の底まで計測するようにすればよい。
あるいは、3Dスキャナーおよび/またはデジタルカメラを試験孔の内側に差し入れられる程度の大きさの試験孔をあけられるようにベースプレート100の孔110の径を設計してもよい。試験孔の内側まで小型光学機器(3Dスキャナ-、デジタルカメラ)を差し入れられれば、孔の底(奥)まで正確に計測しやすくなる。特に、深い試験孔を掘る場合には、試験孔の内側に小型光学機器(3Dスキャナ-、デジタルカメラ)を差し入れられるとよい。
この場合、直径10cm程度の孔では手および小型光学機器を差し入れ難いので、ベースプレート100の孔110を例えば直径20cm以上にすることが例として挙げられる。
従来のような標準砂置換法では、標準砂の使用量のことも考慮して孔の径はどちらかというと小さくする方がよいとも考えられるが、本発明ではどちらかというと孔の径は大きくてよい。
【符号の説明】
【0050】
100 ベースプレート
110 孔
115 切欠部
120 マッチング用マーク
130 ピン
200 土の孔
210 法面
300 レーザースキャナ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12