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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】魚釣用リール
(51)【国際特許分類】
   A01K 89/033 20060101AFI20230801BHJP
【FI】
A01K89/033 501
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020196586
(22)【出願日】2020-11-27
(65)【公開番号】P2022085090
(43)【公開日】2022-06-08
【審査請求日】2022-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 浩司
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 亮
(72)【発明者】
【氏名】野上 雅行
【審査官】吉原 健太
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-090615(JP,U)
【文献】特開2016-116463(JP,A)
【文献】特開2010-017098(JP,A)
【文献】特開2002-335835(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 89/00 - 89/08
B65H 23/00 - 23/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リール本体に設けられ、回動操作可能なレバーと、
前記レバーと共に一体回転する回転部材と、
前記回転部材に対向配置され、カム面の作用によって前記レバーの回動操作で軸方向移動する移動部材と、を備え、
前記移動部材の軸方向移動によって、スプールに対して制動力を付与するレバードラグ機構を有する魚釣用リールにおいて、
前記回転部材と前記移動部材の何れか一方に形成されるカム面は、
前記レバーの回動操作によって前記移動部材を軸方向に移動してスプールの制動力を調整する制動領域と、
前記制動領域に連続して形成され、レバーを回動操作した際に前記移動部材を軸方向に移動させない移動不能領域と、
前記移動不能領域から制動領域と反対側にレバーを回転させることで、スプールへの制動力を解除する解除領域と、
を有することを特徴とする魚釣用リール。
【請求項2】
前記カム面には、前記移動不能領域の前記解除領域側の端部に、前記レバーの回動操作に抵抗力を付与する抵抗力付与部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の魚釣用リール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レバードラグ機構を備えた魚釣用リールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、魚釣用リールとして、レバードラグ機構を備えた構成が知られている。レバードラグ機構は、リール本体に一定角度回動可能に装着されたレバーを備えており、このレバーを一方の端部に向けて回動することで、スプールに対する制動部材の摩擦係合力が増大してハンドルの回転操作がスプールに伝達される動力伝達状態となり、レバーを他方の端部に向けて回動することで、スプールを制動部材から離間させてスプールがフリー回転状態になるよう構成されている。
【0003】
上記したレバードラグ機構は、レバーと一体回転可能でカム面(傾斜カム)が形成されたカム部材(回転部材)と、前記カム面に面接して軸方向に移動する移動部材とを備えており、レバーを回動操作することで、カム面の傾斜形状によって移動部材を軸方向に移動させ、移動部材と共に軸方向に移動するスプールを制動部材に接触させて制動力を調整するようになっている。このようなレバードラグ機構を備えた魚釣用リールでは、スプールフリーからドラグ力の最大位置までレバーの回動操作で行われるが、実釣時にレバーを誤操作してスプールフリーにしてしまう可能性がある。例えば、魚が掛かっている状態で、誤ってスプールフリーになると、急激にスプールが回転してバックラッシュ現象を起こしてしまう。
【0004】
そこで、そのような不具合を解消するために、特許文献1には、カム面のドラグ解除位置の手前に規制突起を形成し、ドラグ解除位置の手前でレバーの回動に規制を付与する構成が開示されている。この規制突起は、頂点を境にしてドラグ解除位置に延びる第1傾斜面と、ドラグ解除位置とは逆に延びる第2傾斜面を備えており、第1傾斜面の傾斜角度を第2傾斜面の傾斜角度よりも小さくして、ドラグ解除位置への回動操作を行ない難く、かつドラグ解除位置からの回動操作を行ない易くしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5135091号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したレバードラグ機構のカム面は、ドラグ作用状態からフリー状態に移行する際、傾斜面の傾斜角度によって制動力が徐々に弱まり、その傾斜面の下端で規制突起の第2傾斜面に急に移行させる形状となっているため、この位置での節度感が大きくなり過ぎてしまい、スムーズ性に欠けるという問題がある。
すなわち、ドラグ力を解除する方向のレバーの回動操作では、カム面の傾斜によってドラグ力が弱まり、傾斜面の最下端で逆向きの規制突起の第2傾斜面に移行することから、回動操作が引っ掛かってしまい、この位置でスムーズ感が無くなってしまう。また、スプールのフリー状態からドラグ作用状態に移行するレバーの回動操作においても、第1傾斜面を介して規制突起を乗り越えると第2傾斜面の傾斜角度によって急激にドラグ力が弱まり、第2傾斜面の最下端で逆向きの連続した傾斜面になるため、この位置で回動操作が引っ掛かってしまい、この位置でスムーズ感が無くなってしまう。
【0007】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、レバードラグ機構のレバーを回動操作した際、ドラグ作用状態とフリー状態との間で適度な節度感が得られると共に、レバーの回動操作がスムーズに行える魚釣用リールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、本発明に係る魚釣用リールは、リール本体に設けられ、回動操作可能なレバーと、前記レバーと共に一体回転する回転部材と、前記回転部材に対向配置され、カム面の作用によって前記レバーの回動操作で軸方向移動する移動部材と、を備え、前記移動部材の軸方向移動によって、スプールに対して制動力を付与するレバードラグ機構を有しており、前記回転部材と前記移動部材の何れか一方に形成されるカム面は、前記レバーの回動操作によって前記移動部材を軸方向に移動してスプールの制動力を調整する制動領域と、前記制動領域に連続して形成され、レバーを回動操作した際に前記移動部材を軸方向に移動させない移動不能領域と、前記移動不能領域から制動領域と反対側にレバーを回転させることで、スプールへの制動力を解除する解除領域と、を有することを特徴とする。
【0009】
上記した構成の魚釣用リールによれば、ドラグ調整するに際して、制動領域では、操作者のレバーの回動操作した際の位置に応じて、スプールに対する制動力が任意に調整される。この場合、制動力を解除する方向にレバーを回動操作して、最も制動力が弱くなった位置では、制動領域に連続して移動部材を軸方向に移動させない移動不能領域が設けられている。この移動不能領域に移行する際、カム面の急激な変化がなく、更に、レバーを回動しても移動部材が移動しない(制動力が変化せず最も弱い制動力が維持される)ことから、レバーを制動領域から移動不能領域に回動した際に、大きな引っ掛かりが生じることはなく、適度な節度感を把握することが可能となる。そして、移動不能領域では大きな抵抗感が生じることはなく、引き続いて解除領域に移動するため、制動領域から解除領域に移行する回動をスムーズに行なうことが可能となる。また、解除領域から制動領域に移行するレバーの回動操作においても、上記の移動不能領域が設けられていることで、カム面の急激な角度変化はないことから、回動操作に支障を来すような引っ掛かり(大きい節度感)を生じさせることはなく、スムーズに制動領域に移行することが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、レバードラグ機構のレバーを回動操作した際に、ドラグ作用状態とフリー状態との間で適度な節度感が得られると共に、レバーの回動操作がスムーズに行える魚釣用リールが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る魚釣用リール(両軸受型リール)の全体の概略構成を示す断面図。
図2図1に示す魚釣用リールにおいて、レバードラグ機構の主要部分の構成を示す図。
図3図1に示す魚釣用リールをハンドル側から見た側面図。
図4】カム部材の構成を示す図であり、(a)はスプール側から見た図、(b)は図(a)のC-C線に沿った断面図、(c)はハンドル側から見た図。
図5】カム部材を示す斜視図。
図6】カム部材のカム面の展開図。
図7】カム部材に面接する移動部材の構成を示す図であり、(a)はスプール側から見た図、(b)は、上方から見た図、(c)は図(a)のD-D線に沿った断面図、(d)はハンドル側から見た図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1から図3は、本発明に係る魚釣用リール(両軸受型リール)の一実施形態を示す図であり、図1は、魚釣用リールの全体の概略構成を示す断面図、図2は、レバードラグ機構の主要部分の構成を示す図、図3は、図1に示す魚釣用リールをハンドル側から見た側面図である。
【0013】
魚釣用リールのリール本体1は、左右フレーム2a,2bが一体化されたフレーム2と、右フレーム2bに所定の空間を隔てて装着される右カバー3bと、を備えた左右側板1A,1Bを有している。前記左右フレーム2a,2bは複数の支柱を介して一体化されており、下方の支柱に設けられるリール脚2cによって、リール本体1が釣竿のリールシート(図示せず)に装着される。本実施形態のリール本体の反ハンドル側の左側板1Aは、左フレーム2aそのもので構成されているが、右側板と同様、カバーを装着した構成であっても良い。
【0014】
左右フレーム2a,2b(左右側板1A,1B)間には、スプール軸5が軸方向に移動可能に支持されており、スプール軸5には、左右の軸受6a,6bを介して、釣糸が巻回されるスプール7が回転可能に支持されている。
【0015】
前記スプール7は、右側板側に装着されたハンドル10を回転操作することによって回転駆動されるように構成されており、ハンドル10は、右側板1Bから突出したハンドル軸11の端部に着脱自在に取り付けられている。前記ハンドル軸11は、右カバー3bに対して軸受11a,11bを介して回転自在に支持されるとともに、両軸受の間に介在される一方向クラッチ12によって釣糸巻き取り方向にのみ回転可能に支持されており、釣糸繰り出し時のスプール7の逆回転時に後述のドラグディスク7Bの回転を止めて制動状態となるように構成されている。
【0016】
右側板1B内には、前記ハンドル10の回転運動をスプール7側に伝達する駆動力伝達機構15が設けられており、本実施形態の駆動力伝達機構15には、ギア変速機構16が介在されている。前記駆動力伝達機構15及びギア変速機構16については、一般的に公知であるため、詳細な説明については省略するが、前記ハンドル軸11に組み込まれて外部から押圧操作可能な操作機構18の操作ボタン18aを押圧操作することで、高速ギア列及び低速ギア列のいずれかが選択されてスプール側に伝達される。
【0017】
この場合、ハンドル10の回転操作による回転駆動力は、例えば、以下のように構成される公知のレバードラグ機構20を介してスプール7に伝達される。
本実施形態のレバードラグ機構20は、前記スプール7のハンドル側のスプールフランジ7aに取り付けた摩擦板7Aと、この摩擦板に対して対向配設され、摩擦板7Aと面接されるドラグディスク7Bとを備えている。前記ドラグディスク7Bは、前記スプール軸5に支持される軸受6cの外輪に装着される軸受部材21に固定されており、軸受部材21には、前記ギア変速機構16を構成する低速入力ギア16aが一体的に連結されている。なお、低速入力ギア16aには、ギア変速機構16を構成する高速入力ギア16bが一体的に連結しており、軸受部材21には、低速入力ギア16a及び高速入力ギア16bのいずれか一方のギア(選択されたギア)から動力が伝達される。
【0018】
上記したように、スプール軸5は、軸方向に移動可能に支持されており、反ハンドル側の軸受6a側には、皿バネ23が配設されることで位置規制されている。また、ハンドル側の軸受6b側には、軸受6cとの間でコイルスプリング24が配設されており、スプール7を、軸受6bを介して反ハンドル側に向けて常時、付勢している。
【0019】
前記レバードラグ機構20は、前記摩擦板7Aとドラグディスク7Bを摩擦結合させるように、リール本体に設けられた回動操作可能なレバー25と、レバー25と共に一体回転し、カム面26Aが形成されたカム部材(回転部材)26と、カム部材26のカム面26Aに面接し、前記レバー25の回動操作によって軸方向移動する移動部材(カム体)27と、を備えており、移動部材27が軸方向に移動することで、摩擦板7Aとドラグディスク7Bとの間の摩擦力が調整され、スプール7に対して付与される制動力を調整するよう構成されている。
【0020】
以下、上記したように作動するレバードラグ機構20の構成について、図4から図7を併せて参照しながら説明する。
これらの図において、図4は、カム部材の構成を示す図であり、(a)はスプール側から見た図、(b)は図(a)のC-C線に沿った断面図、(c)はハンドル側から見た図、図5は、カム部材を示す斜視図、図6は、カム部材のカム面の展開図、図7は、カム部材に面接する移動部材の構成を示す図であり、(a)はスプール側から見た図、(b)は、上方から見た図、(c)は図(a)のD-D線に沿った断面図、(d)はハンドル側から見た図である。
【0021】
前記レバー25は、図3に示すように、実線の位置(釣糸に急激な負荷が作用しても糸切れが生じない程度のドラグ力が発揮される位置;ストライクポジションSPと称する)に対して、A方向又はB方向に一定角度回動操作可能にリール本体に支持されている。
なお、このストライクポジションSPにおける制動力は、釣人がレバードラグ機構の微調整部材(回転ノブ29)を回転操作することで、任意に調整することが可能である。
【0022】
前記カム部材26は、図4及び図5に示すように、内周部26B及び外周部26Cを有する略リング状の環状部材であり、例えば、ステンレス合金やアルミニウム合金などの金属材料で形成されている。前記スプール軸5の右端部には、筒状の支持部材5dが配設されており、この支持部材5dは、リール本体(右カバー3b)のボス部1aの内周にインサート成形で固着されている。すなわち、ボス部1aの内周には支持部材5dの外周が固着されており、支持部材5dの内周にスプール軸5が軸方向に移動可能に支持されている。
【0023】
前記ボス部1aの外周には、カラー26Dが装着されている。この場合、カラー26Dは、ボス部1aと回転可能な関係であっても良いし、回転不能であっても良く、カム部材26がカラー26Dを介して回転できれば良い。また、カラー26Dの外周には、カム部材26の内周部26Bを構成する円形の内周開口が保持されており、カラー26Dとカム部材26は、回転可能な関係となっている。更に、カム部材26の外周部26Cは、断面多角形状に形成されており、この部分に前記レバー25の基部が回り止め嵌合されている。このため、レバー25を回動操作すると、カム部材26もレバー25と共に一体回動する。
【0024】
前記カム面26Aは、カム部材26のハンドル側の輪帯状の表面に360°に亘って形成されており、180°の円弧範囲で対称形状となるように形成されている。
すなわち、図6は、カム面26Aの一方の180°の範囲内におけるカム形状を示した展開図であり、同様のカム形状が、もう一方のカム面26Aの180°の範囲内に形成されている(カム面26Aの形状については後述する)。
【0025】
前記移動部材27は、カム部材26の軸方向外方に配設されるリング状の部材であり、スプール側の内面27Aには、前記カム部材26のカム面26Aに押し付けられるように一対の突起27aが形成されている。また、移動部材27の外周部27Bは、レバー25の基部に一体形成されている円筒部25dの内面にOリングを介在して圧入されており、その内周部27Cは断面多角形状に形成されて、前記支持部材5dの外周に対して軸方向に移動可能に回り止め嵌合されている。
【0026】
また、円筒部25dの外面には、Oリングを介在してキャップ状の回転ノブ29が圧入されている。この回転ノブ29のスプール側内面の中央部には、雌螺子部を具備した円筒部29aが形成されており、回転ノブ29は、スプール軸5の端部に螺着されている。この回転ノブ29は、公知のように、制動力の微調整機能を備えると共に、回転操作することでスプール軸5の軸方向位置を変えて、レバー25を回動操作したときに発生するドラグ力の調整範囲を変更することが可能となっている。
【0027】
前記移動部材27は、回転ノブ29の内側底面との間に配設される圧縮バネ29bで常時スプール側に付勢されており、移動部材27の突起27aは、カム部材26のカム面26Aに押し付けられている。このため、レバー25の回動操作(例えば、図3の実線で示すストライクポジションからドラグを強めるA方向の回動操作)でカム部材26が一体的に回動すると、カム面26Aと移動部材27との係合関係で、移動部材27は軸方向右側に移動し、スプール軸5の端部に螺合している回転ノブ29の内側底面を押し付ける。すなわち、スプール軸5は、カム面26Aと突起27aのカム作用によってハンドル側に牽引されて、皿バネ23、軸受6aを介してスプール7も同方向(ハンドル側)に移動する。そして、レバー25をA方向に回動するに連れて、摩擦板7Aとドラグディスク7Bとの面接触力が次第に強くなり、A方向の端部位置まで回動操作すると、強制動状態(強ドラグ)となり、ハンドル10の回転駆動力は、滑りが生じることなく、駆動力伝達機構15及びギア変速機構16を介してスプール7に伝達されるようになる。
【0028】
また、レバー25を、図3のストライクポジションからB方向に回動操作すると、カム面26Aと移動部材27との係合関係で、スプール軸5は、ハンドル側への牽引状態が解除され、コイルスプリング24の付勢力によってスプール7も反ハンドル側へ移動し、摩擦板7Aとドラグディスク7Bとの面接触力が次第に弱くなって弱制動状態(弱ドラグ)となる。この場合、レバー25を、最も手前側に回動操作すると、摩擦板7Aとドラグディスク7Bは離間し、スプール7はフリー回転状態となる。
【0029】
以上のように、スプール7に作用する制動力は、後述する制動領域では、レバー25をA方向に回動することで強制動となり、B方向に回動することで弱制動となる。また、弱制動位置から更にB方向に回動操作すると、後述する移動不能領域及び非制動領域を介して、スプール回転をフリー状態にする解除領域となる。
【0030】
前記レバー25には、回動操作した際、それに伴って節度感のある音(クリック音)を発生する発音装置30を設けておいても良い。発音装置30は、例えば、リール本体1の支持部1a´に装着され、外周面に周方向に沿って凹凸31aが連続形成された発音部材31と、前記レバー25の基部に装着され、凹凸31aに対して弾性付勢されて係合する音出し部材35と、を備えている。前記支持部1a´は、右カバー3bに一体形成されており、前記高速入力ギア16bを回転可能に支持する軸受5Aが、その内部に圧入されるように円筒状に構成されている。このため、発音部材31は、円筒状の支持部1a´に装着されるように、軸方向に一定の長さを有するリング状に形成されている。
このような発音装置30によれば、レバー25を回動操作すると、音出し部材35が発音部材31の凹凸31aに対して弾性付勢されながらクリック音を生じさせることができる。
【0031】
次に、レバードラグ機構のカム部材26のカム面26Aの構成について説明する。
上述したように、カム面26Aは、図4及び図5に示すように、カム部材26のハンドル側の輪帯状の表面に360°に亘って形成されており、180°の円弧範囲で対称形状となるように形成されている。前記移動部材27の一対の突起27aは、それぞれの180°の円弧範囲で当て付いており、カム部材26がレバー25の回動操作に伴って一体回動することで、移動部材27は、それぞれのカム面26Aの傾斜面形状によって軸方向へ移動される。
【0032】
ここで、上記したカム面26Aの形状を、図4(c)、図5及び図6の展開図を参照しながら説明する。なお、図6では、一方の円弧範囲のカム面の形状が示されており、対称側も同様なカム面が形成されているため、一方の円弧範囲のカム面の形状について説明する。
【0033】
カム面26Aは、上記したように、レバー25の回動操作に伴って回動する。この場合、前記レバー25をA方向に回動操作すると、カム面26Aは、図6において左側に移動し、レバー25をB方向に回動操作すると、カム面26Aは、図6において右側に移動する。
【0034】
前記カム面26Aは、レバー25の回動操作によって前記移動部材27を軸方向に移動させてスプールの制動力を調整する制動領域26aを具備している。この制動領域26aは、周方向に沿って傾斜する傾斜面で構成されており、前端部(レバー25のA方向での回動停止位置)P1に向けて次第に上昇する形状で構成されている。すなわち、この制動領域26aでは、レバー25を回動操作することで、スプールに作用する制動力を調整することが可能となっている。なお、上記したストライクポジションSPは、この制動領域26aの範囲内に位置しており、前記回転ノブ29を回転操作することで、ストライクポジションSPの位置を微調整することが可能である。
【0035】
前記カム面26Aは、上記の制動領域26aにおいて、最も弱制動となる位置P2から一定の範囲に亘って、レバー25を回動操作した際に移動部材27を軸方向に移動させない移動不能領域26bを具備している。この移動不能領域26bは、平坦な面(水平面)で形成されており、この範囲内では、レバー25をA方向及びB方向に回動操作しても、移動部材27は軸方向に移動しないことから、位置P2における制動力(弱制動力)がそのまま維持される。この移動不能領域26bは、レバー25の回動角度で9°~12°程度に亘って形成されていれば良い。
【0036】
前記カム面26Aは、上記の移動不能領域26bの位置P2とは反対側の位置P3から一定の範囲に亘って非制動領域26cを備えている。この非制動領域26cは、レバー25を回動操作しても制動力が作用しない領域であり、レバー25のB方向の回動停止位置P4に向けて次第に下降する形状で構成されている。この非制動領域26cは、スプールに制動力を付与する方向(A方向)にレバー25を回動操作しても、スプールに対して制動力が作用しない領域であり、前記摩擦板7Aとドラグディスク7Bが多少、接触状態にあったとしても、直ちに接触状態が解除できるように、前記制動領域26aの傾斜面よりも急な傾斜面で構成されている。
【0037】
そして、非制動領域26cの最も窪んだ領域26dは、スプールの制動力を完全に解除する解除領域(フリー領域)であり、この解除領域26dでは、レバー25を回動操作しても、図2に示すように、前記摩擦板7Aとドラグディスク7Bは完全に離間して、スプールはフリー回転状態となる。
【0038】
上記した構成の魚釣用リールによれば、制動領域26aでは、操作者のレバー25の回動操作した際の位置に応じて、スプールに対する制動力を任意に調整することが可能である。この場合、制動力を解除する方向(B方向)にレバー25を回動操作すると、カム面の制動領域26aによって移動部材27が軸方向に移動して制動力が弱まり、その制動領域の端部(最も弱制動となる位置P2)に連続して、所定の範囲に亘って、移動部材27を軸方向に移動させない(位置P2の制動力が変わらない)移動不能領域26bが設けられている。
【0039】
この移動不能領域26bでは、レバー25を回動しても、移動部材27が移動することがなく(制動力が変化しない)、この移動不能領域26bに移行するに際し、カム面が急激な変化することはないため、大きな引っ掛かりが生じることはなく、更に、レバーを回動しても移動部材27は移動しない(制動力が変化せず最も弱い制動力が維持される)ことから、レバー25を制動領域26aから移動不能領域26bに回動した際、適度な節度感を把握することが可能となる。そして、移動不能領域26bでは大きな抵抗感が生じることはなく、引き続いて非制動領域26cを経由して解除領域26dに移動するため、制動領域から解除領域に移行する回動をスムーズに行なうことが可能となる。また、上記した移動不能領域26bを設けたことで、レバー25が不用意に解除領域26dに移動することを防止しながら適度な節度感を生じさせて、スプールの制動力の解除をスムーズに行なうことが可能となる。
【0040】
さらに、解除領域26dから制動領域26aに移行するレバー25の回動操作では、水平な移動不能領域26bを設けたことで、カム面の急激な角度変化はないことから、大きい節度感(回動操作に支障を来す節度感)を生じさせることはなく、スムーズに制動領域26aに移行することができる。
【0041】
上記した構成において、移動不能領域26bと非制動領域26cとの境界位置P3(移動不能領域の解除領域側の端部)に、レバー25の回動操作に抵抗力を付与する抵抗力付与部26gを形成しておいても良い。
このような抵抗力付与部26gは、カム部材のカム面26Aに、径方向に延びる突起で構成することが可能であり、このような抵抗力付与部26gを形成しておくことで、節度感を高めることができ、更には、レバー25が不用意に解除領域26dに移動することをより効果的に防止することが可能となる。
【0042】
この場合、抵抗力付与部26gの形状は、A方向の回動、B方向の回動で同様な節度感となるように、断面が半円形状、半楕円形状、略台形形状等の断面対称形状に形成しておくことが好ましい。また、抵抗力付与部(突起)26gの高さについては、高く形成し過ぎると、節度感が強くなり過ぎて、レバー25のスムーズな回動を妨げることから、移動不能領域26cの表面から0.05mm以下に形成しておくことが好ましい。
【0043】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記した実施形態に限定されることはなく、適宜、変形することが可能である。
本発明は、スプール7に制動力を付与するためのレバードラグ機構20のレバー25を回動させた際、回転部材と軸方向に対向する移動部材との対向面にカム面が形成されていれば良く、そのカム面の非制動領域側に、一定範囲、レバー25を回動しても制動力が変化しない領域(移動部材27の移動不能領域)が設けられていれば良い。上記した実施形態では、回転部材(カム部材)26にカム面を形成したが、この構成とは逆に、回転部材26に突起を形成し、移動部材27に制動領域と移動不能領域及び非制動領域、解除領域を形成(カム面を形成)しても良い。また、それ以外の構成については適宜変形することが可能である。例えば、カム面26Aの制動領域26aや非制動領域26cの範囲、傾斜状態等、適宜、変形することが可能である。また、移動不能領域26bは、移動部材27を移動させない(制動力が変わらない)状態が維持できれば良く、その形状についても適宜、変形することが可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 リール本体
1a 支持部
5 スプール軸
7 スプール
20 レバードラグ機構
25 レバー
25 カム部材(回転部材)
25A カム面
25a 制動領域
25b 移動不能領域
25c 非制動領域
25d 解除領域(フリー領域)
27 移動部材
27a 突起
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7