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▶ ゲーヴェーエフ メスシステメ アーゲーの特許一覧

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  • 特許-流量計およびリフレクタ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】流量計およびリフレクタ
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/667 20220101AFI20230801BHJP
【FI】
G01F1/667 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020505199
(86)(22)【出願日】2018-08-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-10-08
(86)【国際出願番号】 EP2018071396
(87)【国際公開番号】W WO2019030227
(87)【国際公開日】2019-02-14
【審査請求日】2021-05-31
(31)【優先権主張番号】102017118020.6
(32)【優先日】2017-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】517016602
【氏名又は名称】ゲーヴェーエフ メスシステメ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】GWF MESSSYSTEME AG
【住所又は居所原語表記】Obergrundstrasse 119, Postfach 2770, 6002 Luzern Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100116322
【弁理士】
【氏名又は名称】桑垣 衛
(72)【発明者】
【氏名】ヘルフェンシュタイン、マルクス
【審査官】岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第202693159(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2014/0318657(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第0392294(EP,A1)
【文献】特開2008-122317(JP,A)
【文献】下村 政嗣,生物の多様性に学ぶ新世代バイオミメティック材料技術の新潮流,科学技術動向,2010年05月,第9-27頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/00-25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流れるパイプセクションに挿入されるように適合された測定チャネル(18)を備える流量計であって、前記測定チャネル(18)には少なくとも2つの超音波センサ(6、8)が配置され、リフレクタ(28)は、前記超音波センサ(6、8)から離れて前記測定チャネル(18)の横断壁(24)に配置され、前記リフレクタ(28)は、耐堆積性表面構造を有し、前記リフレクタ(28)の耐堆積性は、ライスリーフ効果を有するバイオニック構造によって達成され、
前記バイオニック構造は、前記リフレクタ(28)上のみに設けられ、
前記リフレクタ(28)は、前記測定チャネル(18)と同一平面になるように挿入されることを特徴とする、流量計。
【請求項2】
前記バイオニック構造は、シャークスキン効果および前記ライスリーフ効果の組み合わせを有する、請求項1に記載の流量計。
【請求項3】
前記測定チャネル(18)が楕円形状を有する、請求項1又は2に記載の流量計。
【請求項4】
前記リフレクタ(28)は、前記測定チャネルのポケット(26)に挿入される、請求項1~のいずれか一項に記載の流量計。
【請求項5】
前記リフレクタ(28)が耐堆積性表面を有することを特徴とする、請求項1に記載の流量計(1)用のリフレクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に記載のパイプラインなどにおける流体の流れを測定するための流量計、ならびに、そのような流量計に適したリフレクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、測定インサートが超音波コンバータを受容し、実際の測定チャネルを形成する流量計/流量カウンタが開示されている。したがって、測定範囲内の流れに影響を与え、測定信号のリフレクタが追加的に設けられた測定チャネルを形成するプロファイル本体は、フランジに囲まれたパイプセクションの凹部を通って浸る。
【0003】
同様の解決策が特許文献2に示されている。測定チャネル内の流路は、ハウジングの端面から挿入されるよう適合されたハウジングインサートによって決まり、そこには超音波信号用のリフレクタも支持されているため、超音波コンバータの1つから超音波が出力され、リフレクタを介して、例えば下流に配置されている他の超音波コンバータへと反射される。もちろん、信号を逆方向にガイドしてもよい。
【0004】
特許文献3には、ハウジングのパイプセクションの領域でも接線延在フランジに測定インサートが取り付けられている流量計が記載されている。超音波エネルギは、インサートの底部に、側壁に、およびカバーに固定された複数の反射面によって螺旋状に偏向される。プラスチック製の複数のインサートが提供され、リフレクタを受容してリフレクタを高精度で位置決めする。
【0005】
このような解決策の欠点は、流体中の、粒子、沈殿物、および同様の成分によってリフレクタ上に堆積物が形成され得、信号品質の劣化をもたらし得ることである。
対照的に、本発明の根底にある目的は、改善された測定精度および改善された信号品質で測定を達成する流量計/流量カウンタおよびリフレクタを提供することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】欧州特許第2306160号明細書
【文献】欧州特許第2386836号明細書
【文献】欧州特許第0890826号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この目的は、請求項1の特徴による流量計に関して、および請求項の特徴によるリフレクタに関して、達成される。
本発明の有利な展開は、従属請求項の主題である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
好ましくは同一平面になるよう挿入されるリフレクタは、乱流および失速の減少にもかかわらず生じる可能性のある汚れの堆積物についての潜在的な接触面がないように構成される表面構造を有する反射面を有する。非常に低い流量およびそれに伴う遅い流速により、測定チャネルのリフレクタ側の横断壁にて、リフレクタ側の横断壁が重力の方向に配置されると、沈殿物および他の浮遊粒子、あるいは沈殿物または他の浮遊粒子の形で汚れ堆積物が重力により流体中に堆積する。リフレクタの表面の性質により、リフレクタへの堆積は、低流速でもほとんど不可能になり、測定信号の反射およびそれに伴う高い信号品質が永続的に保証される。堆積物をさらに打ち消すために、測定チャネル全体を流れ方向の軸に沿って旋回させて、リフレクタ側の横断壁が重力の方向に位置しないようにしてもよい。
【0009】
本発明の好ましい例示的実施形態によれば、好ましくは横断壁のポケットと同一平面になるように挿入されるリフレクタは、超音波コンバータから離れた横断壁に配置される。リフレクタ/ミラーおよび/またはセンサ/結合部品を測定チャネルへと同一平面に挿入することにより、前記構成要素の領域における乱流および失速、ならびに、それに伴う汚れ堆積物およびそれに起因する信号の歪曲が防止される。また、測定チャネルに複数のリフレクタを配置することも想定可能である。W字型の信号経路が形成されるようにセンサの反対側の横断壁に2つ、センサ間に1つ、の3つのリフレクタの配置を、信号経路の延長、したがって測定精度の向上のために適用できる。
【0010】
耐堆積性を改善するために、表面構造は、好ましくはバイオニックとなるように形成される。このような形成は、摩擦、摩耗、潤滑、湿潤、自己洗浄および防汚の分野での利点を伴う。驚くべきことに、滑らかな表面と比較して、生物学的モデル(バイオニック)によって特別に構造化された表面は、十分な反射を依然として保証しながら耐堆積性などの所望の機能を達成することが判明した。表面構造はまた、リフレクタのコーティングで形成され得る。
【0011】
バイオニック表面の1つの例示的実施形態は、シャークスキン効果(リブレット効果)を有する表面を構成する。このような設計の表面は、流体の抵抗を永続的に減少させ、あらゆる種類の有機体の堆積ならびに成長を防ぐ(防汚)。シャークスキン効果はとりわけ、表面の長手方向の微小溝によって引き起こされる。微小溝は、ブレードの形であって、表面に垂直なのが理想的である。しかし、波状プロファイルのタイプ(スカラップ)として容易に製造される形状も、望ましい効果を伴う。長手方向の溝の高さとその距離との比は、周囲を流れる流体の流速に依存し、流速が5m/sの場合、0.4~0.9の範囲内、理想的には0.7の範囲内であるべきである。この実施形態では、リブの高さ(h)は50μmであり、リブの間隔(s)は70μmである。
【0012】
バイオニック表面の別の例示的実施形態は、ロータス効果を有する表面であり、すなわち、表面には、流体の接触面が流体表面のわずか数パーセントしか占めない超疎水性層が設けられている。この効果は、超音波の反射を損なわないバイオニック表面の構造的隆起によってもたらされる。
【0013】
バイオニック表面の別の適切な変形例は、ライスリーフ効果を有する表面であり、つまり、異なる高さの隆起が流体の流れの方向に表面にて配置される。前記隆起は流れの方向に対して横断的に配置され、いくつかの隆起は他の隆起の半分の高さを示し、等しい直径を有し、一方の隆起の中心から次の隆起の中心に向かって見たときに2倍の直径だけ互いに離れている。
【0014】
本発明による流量計では、垂直軸の方向(ほぼ超音波信号の送信および受信方向)に延びる測定チャネルの側壁は膨らんでおり、ほぼ横断軸の方向に延びる、ほぼ平面またはわずかに膨らんだ横断壁を有する楕円形状を形成する。驚くべきことに、このような楕円形状により、最適な流れとそれに伴う最大信号品質とが保証されることが判明した。
【0015】
前述のバイオニック表面は、超音波リフレクタとしての機能に関して最適化される。
以下、本発明の好ましい例示的実施形態を、概略図を用いて詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】リフレクタを備える流量計の例示的実施形態を示す。
図2】リフレクタの概略図を示す。
図3】シャークスキン効果を有する表面構造を模式的に示す。
図4】ライスリーフ効果を生み出す表面層の概略図を示す。
図5】シャークスキン効果およびライスリーフ効果を組み合わせたリフレクタ表面層の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、流量計1の長手方向断面を示す。この図からは、2つのセンサ6および8をそれぞれ含む2つの結合部品2、4が明らかである。これらは、2つのそれぞれの凹部10a、10bに挿入される。結合面12は、この例示的実施形態ではパイプセクション20によって形成される測定チャネル18の周壁(横断壁14および側壁16の隣接領域)と同一平面に延びる。したがって、フランジ22の一部は、横断壁14を形成する。この例示的実施形態では、反対側の横断壁24は、外側に開いたポケット26を有するよう形成され、そこにリフレクタ28が挿入される。
【0018】
図2は、図1による測定チャネル18内のリフレクタ28の可能な例示的実施形態を示す。このような構成では、リフレクタ28はポケットに押し込まれる。したがって、それは、ベース領域30を有するリフレクタ28を構成するよう提供される。インサートの異なる形態では、形状を異なるように構成することができる。リフレクタ28のベース材料が超音波を適切に反射する材料であることが、特に重要である。ここで、例えば鋼を含む構造またはポリマー構造を使用でき、超音波を適切に反射する任意の他の材料も想定可能である。表面層32が前記ベース材料に適用される。表面層32は、耐堆積性となるように形成され、これについては以下の図でさらに説明する。
【0019】
図3は、シャークスキン効果を有する表面を設計できる方法を模式的に示す。ベース領域34には、長手方向の微小溝36が設けられている。前記長手方向の溝は、均一な高さhおよび幅tにより優れている。互いに対する距離sは、領域全体で等しく同一である。前記長手方向の微小溝36は、例えば、ベース材料34の機械加工により、または非常に細かい鋳造もしくは射出成形プロセスにより、ベース材料34に適用することができる。フィリグリー構造により、製造に関して、等しい寸法を有する波状構造38を低コストで製造することができる。波状構造38の溝の場合、反射および堆積に対する耐性は制限されない。
【0020】
図4は、ライスリーフの構造の微視的設計を概略的に示す。このようにして生じる堆積に対する耐性の効果は、前記構造によるものである。それにより、個々の隆起部40、42が表面に適用される。例えば、より小さな隆起部42は、より大きな隆起部40の半分の高さを有する。流れの方向で見たとき、隆起部40、42は列状に並置されるように配置され、それにより、一度に1列の大きな隆起部40が1列の小さな隆起部42と交互になる。異なる高さを除いて、隆起部は同一であるように設計され、直径Dおよび距離Pが互いに同一になる。
【0021】
図5は、図3および図4の2つの組み合わせを形成する。この図示では、シャークスキン効果の波状構造38は、ライスリーフ効果に関与する隆起40、42とともに見られる。この文脈では、図示の隆起の高さが均一であることに注意する必要がある。前述の異なる高さの隆起を有する変形例は示されていない。
【0022】
上述のコーティングまたはリフレクタ28の構造化が、使用中の堆積を防止するか、または少なくとも堆積の形成を妨げるのに適していることが判明した。
本発明は、互いに離間した少なくとも2つの測定センサ、好ましくは超音波センサを備えてその測定信号が耐堆積性リフレクタにより反射される流量計を開示する。
【符号の説明】
【0023】
1 流量計
2 結合部品
4 結合部品
6 センサ
8 センサ
10 凹部
12 結合面
14 横断壁
16 側壁
18 測定チャネル
20 パイプセクション
22 フランジ
24 横断壁
26 ポケット
28 リフレクタ
30 ベース領域
32 表面層
34 ベース領域
36 長手方向の微小溝
38 波状構造
40 大きな隆起
42 小さな隆起
図1
図2
図3
図4
図5