(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】ラマン分光法を使用する細胞培養の自動制御
(51)【国際特許分類】
G01N 21/65 20060101AFI20230801BHJP
C12M 3/00 20060101ALI20230801BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20230801BHJP
C12N 5/0735 20100101ALI20230801BHJP
C12N 5/074 20100101ALI20230801BHJP
C12N 5/078 20100101ALI20230801BHJP
【FI】
G01N21/65
C12M3/00 A
C12N5/0783
C12N5/0735
C12N5/074
C12N5/078
(21)【出願番号】P 2020519750
(86)(22)【出願日】2018-10-05
(86)【国際出願番号】 US2018054524
(87)【国際公開番号】W WO2019071076
(87)【国際公開日】2019-04-11
【審査請求日】2021-09-22
(32)【優先日】2017-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391003864
【氏名又は名称】ロンザ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LONZA LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(72)【発明者】
【氏名】ウェブスター,タディーアス
(72)【発明者】
【氏名】ハドリー,ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】メイソン,キャリー
(72)【発明者】
【氏名】ジャック,コリン
(72)【発明者】
【氏名】トゥマラ,セシュ
(72)【発明者】
【氏名】ローランド-ジョーンズ,ルース・クリスティン
(72)【発明者】
【氏名】レビンソン,ヨナタン
(72)【発明者】
【氏名】ウス,ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】シンハ,パンカジ
(72)【発明者】
【氏名】エイブラハム,エイタン
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-526203(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0130186(US,A1)
【文献】特表2008-504845(JP,A)
【文献】特開2005-337777(JP,A)
【文献】特表2017-506077(JP,A)
【文献】特表2016-513465(JP,A)
【文献】特開2000-214091(JP,A)
【文献】特表2013-541711(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0104594(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0123688(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/65
C12M 1/00-C12M 1/42
C12M 3/00-C12M 3/10
C12N 1/00-C12N 1/42
C12N 5/00-C12N 5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞培養物を増殖させるための方法であって、
バイオリアクター(10)中の細胞培養物をコヒーレント光源(52)に曝露して光を散乱させるステップ、
ラマン分光器(54)を使用して散乱光の強度を測定するステップ、
測定した散乱光強度に基づいて、コントローラ(60)を使用して細胞培養物における物質の濃度をパラメータとして決定し、決定されたパラメータの濃度に基づいて、コントローラ(60)が、バイオリアクター(10)へのパラメータ影響物質の流量(36、38、40)を選択的に増加または減少させて、パラメータを予め設定した限度内に維持するステップ
を含み、
該細胞培養物は、流体が連続的に除去および補充される灌流法で操作され、
該細胞培養物は、該パラメータの濃度を少なくとも4時間ごとに1回決定するためにコヒーレント光源に曝露され、そして
該コントローラが該バイオリアクターへのパラメータ影響物質の流量を選択的に増加または減少させるのに先立って、該パラメータの濃度が、最初の1から6日にわたって決定される、
方法。
【請求項2】
パラメータの濃度が、光強度データを参照データと比較することによって決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
コントローラ(60)が、決定されたパラメータの濃度に基づいてパラメータのその後の濃度を外挿する予測モデルを含み、算出したその後の濃度に基づいて、バイオリアクター(10)へのパラメータ影響物質の流量(36、38、40)を選択的に増加または減少させて、パラメータを予め設定した限度内に維持する、請求項1
または2に記載の方法。
【請求項4】
パラメータが、グルコース、乳酸、グルタミン酸、アンモニウム、生存細胞濃度、総細胞濃度、または産物濃度を含む、請求項1から
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも2つの異なるパラメータの濃度が、測定した散乱光強度に基づいてコントローラ(60)によって細胞培養物において決定され、コントローラが、バイオリアクターへの1種または複数種のパラメータ影響物質の流量(36、38、40)を選択的に増加または減少させて、少なくとも2つのパラメータを予め設定した限度内に維持する、請求項1から
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも2つの異なるパラメータが、グルコース、乳酸、グルタミン酸、アンモニウム、生存細胞濃度、総細胞濃度、または産物濃度を含む群から選択される2つのパラメータを含む、請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
パラメータ影響物質が栄養培地を含む、請求項1から
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
細胞培養物が哺乳動物細胞を含有する、請求項1から
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
細胞培養物が幹細胞を含有する、請求項1から
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
測定した散乱光強度の統計分析を実行するステップをさらに含み、統計分析が、標準正規変量を適用するステップ、一次微分を適用するステップ、およびパラメータと相関するスペクトル範囲を選択するステップを含み、標準正規変量を適用するステップの後にトレンド除去を行うステップを含む、請求項1から
9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
細胞培養物が、約6日間から約30日間増殖され、次いで回収される、請求項1から
10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
パラメータの濃度が約12時間から約4日間で決定され、その後、コントローラ(60)がパラメータのその後の濃度を外挿する、請求項
3に記載の方法。
【請求項13】
細胞培養物が、コヒーレント光源(52)にインラインまたはアットラインで曝露される、請求項1から
12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
コントローラ(60)が、パラメータ影響物質の流量(36)を選択的に増加または減少させるための制御モデルを用いてプログラムされ、制御モジュールが、異なる種類の細胞を含有する異なる細胞培養物内のパラメータを予め設定した限度内に維持することができる、請求項1から
13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
予測モデルが、参照試験中に少なくとも1つのパラメータの相関をなくすことによって創出される、請求項
3に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
[0001]本出願は、いずれもその全体が参照によって本明細書に組み込まれる、2017年10月06日を出願日とする米国仮特許出願第62/569,076号および2017年10月06日を出願日とする米国仮特許出願第62/569,190号に基づき、その優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
[0002]生物学的反応またはプロセスが実験室規模または工業規模で実行できる装置であるバイオリアクターは、バイオ医薬品産業において広く使用されている。バイオリアクターは、実に様々な種類のバイオ産物を生産するために使用することができる。バイオ産物としては、例えば、細胞培養物、ならびに飲料、バイオ燃料、バイオエネルギー、生化学物質、抗生物質、アミノ酸、酵素、モノクローナル抗体、単量体、タンパク質、食品培養物、バイオポリマー、アルコール、調味料、および香料等を含む細胞培養物に由来する物質を挙げることができる。一部の実施形態では、細胞培養物は細胞療法のために増殖させることができる。細胞療法とは、ex vivoで操作または変化させた自家、同種異系、または異種の細胞の投与による、ヒトにおける疾患または損傷の予防、処置、治療、または緩和である。細胞療法の目標の1つは、傷害された組織または器官を修復、交換、または回復することである。
【0003】
[0003]細胞培養物は、典型的には、生物学的材料が反応時間の終了までバイオリアクターに留まるバッチ法で増殖させる。ある特定のバッチ法では、バイオリアクター内に含有される液体培地を定期的または連続的に除去および再供給して、液体培地内に含有される栄養素を補充し、場合によりプロセス中に生産される傷害性副産物を除去することができる。
【0004】
[0004]細胞培養物の増殖の間、培地中の重要な栄養素を調節することは、生産される産物の品質に直接的な影響を及ぼし得る。例えば、グルコース等の様々な炭水化物は、細胞増殖を促進させるためにバイオリアクターに送給される。しかしながら、最適なグルコースレベル未満であると、増殖を阻止または阻害する場合がある。例えば、より低いグルコースレベルは、細胞培養物を飢餓状態にし、廃棄物の増大を引き起こす場合がある。欠乏を予防するために単にグルコースレベルを増加させることもまた、細胞増殖にさらに有害な影響を与えるグルコースレベルの劇的な増減を引き起こす場合がある。細胞培養物中の最適な栄養素および廃棄物レベルを維持する試みは、細胞培養物が常にモニタリングされない場合、予測不能であり、予見不能な変化の影響を受ける場合がある。
【0005】
[0005]これまで、上流バイオプロセスは、試料を取り出し、次いで範囲が限定されている連続的なリアルタイム測定値(例えば、pH、溶存酸素分圧(DOT)、温度)を用いて、選択した代謝産物、細胞増殖、および産物濃度に関してオフライン方法を使用して分析することによってモニタリングされてきた。オフライン方法は、熟練の操作者を必要とし、多くの場合労働集約的であり、高価な試薬および試料の使用を通じて廃棄物を生み出す。その上、オフライン測定は、典型的には長い間をおいて行われ(例えば、12または24時間ごと)、異常なプロセスを示唆し得る細胞代謝のシフトを見逃す可能性がある。さらに、バイオリアクターから取り出されたいずれの試料も、汚染に関する追加された潜在的リスクを保有する。
【0006】
[0006]業界内における近年のプロセス改善の取組みは、バイオプロセスを連続的にリアルタイムでモニタリングおよび制御するために使用することができるプロセス分析技術を同定することに焦点を当てている。これらの選択肢は、バイオリアクタープロセスのより頻繁なモニタリングを可能にするが、バイオリアクターからの連続的な試料の取出しを必要とし、分析のために依然として高価な試薬の使用を必要とする。さらに、これらのシステムの拡張性に関する懸念、および試料の取出しによる汚染の潜在的リスクの増加は、これらの選択肢を連続的なプロセスのモニタリングにとってより望ましくないものにしている。以上を考慮すると、非侵襲性であり、かつ連続的または定期的な調整によりバイオリアクター内の最適な状態を維持することを可能にする、細胞培養物を増殖させるためのプロセス等の生化学的および生物薬学的プロセスをモニタリングするための方法およびシステムの必要性が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
[0007]本開示は、全体として、細胞培養物等の生物材料を増殖させるための処理システムを対象とする。一実施形態では、例えば、本開示の処理システムは哺乳動物細胞培養物を増殖させることを対象とする。代替的な実施形態では、本開示のシステムおよび方法は、細胞療法のための細胞を増殖させるために使用することができる。本開示に従って処理される細胞培養物としては、例えば、幹細胞、T細胞、ならびにB細胞、ナチュラルキラー細胞、樹状細胞、腫瘍浸潤リンパ球、単球、および巨核球等を含む免疫細胞を挙げることができる。本開示においては、ラマン分光法が、バイオリアクター内のバイオプロセスの1つまたは複数のパラメータをモニタリングするために使用される。本開示に従ったラマン分光法の使用は、オフラインサンプリングに関連する不都合なしに、バイオプロセスにおける1つまたは複数のパラメータの定期的または連続的なモニタリングを可能にする。例えば、ラマン分光法は、パラメータ濃度分析に必要とされる容量および分析時間を減少させることができる。本開示においては、ラマン分光法は、改善したプロセス堅牢性および制御を結果として生じる、処理速度の自動化を可能にする制御システムと組み合わされる。一実施形態では、例えば、制御システムは、バイオプロセス環境を入念に制御された限度内に維持するために、その後のパラメータ濃度を外挿する予測モデルを含むことができる。
【0008】
[0008]一実施形態では、例えば、本開示は細胞培養物を増殖させるための方法を対象とする。方法は、バイオリアクター中の細胞培養物をコヒーレント光源に曝露して光を散乱させるステップを含む。コヒーレント光源は、例えば、レーザーによって出射される光ビームを有してもよい。細胞培養物と接触する光は、一実施形態では、約400nmから約1500nm、例えば約700nmから約850nmの波長を有することができる。
【0009】
[0009]散乱光の強度は、ラマン分光法を使用して測定する。細胞培養物中の少なくとも1つのパラメータの濃度は、測定した光の強度に基づいて決定される。一実施形態では、例えば、濃度はコントローラによって決定される。決定されたパラメータの濃度に基づいて、コントローラは次いで、バイオリアクターへのパラメータ影響物質の流量を選択的に増加または減少させて、パラメータを予め設定した限度内に維持することができる。
【0010】
[0010]方法に従って測定するパラメータは、例えば、グルコース濃度、乳酸濃度、グルタミン酸濃度、アンモニウム濃度、生存細胞濃度、総細胞濃度、産物濃度、またはそれらの混合物を含むことができる。一実施形態では、例えば、少なくとも2つ、例えば少なくとも3つ、例えば少なくとも4つの異なるパラメータが、散乱光の強度からラマン分光法を使用して測定される。コントローラは、全ての濃度データを受け取り、1種または複数種のパラメータ影響物質を制御するように構成することができる。パラメータ影響物質は、例えば、1種または複数種の栄養培地を含むことができる。例えば、コントローラは、バイオリアクター中への炭水化物、例えばグルコースの流量を増加させてもよい。あるいは、コントローラは、灌流を使用する方法では、バイオリアクターからの液体培地の回収量を増加させることができる。
【0011】
[0011]少なくとも1つのパラメータの濃度は、様々な方法を使用して決定することができる。一実施形態では、例えば、パラメータの濃度は、光強度データをコントローラ内に含まれた参照データと比較することによって決定される。一実施形態では、コントローラは、決定されたパラメータの濃度に基づいてパラメータのその後の濃度を外挿する予測モデルを含むことができ、算出したその後の濃度に基づいて、少なくとも1種のパラメータ影響物質を選択的に増加または減少させて、パラメータを予め設定した限度内に維持することができる。
【0012】
[0012]パラメータの濃度を決定する際、ラマン分光法を使用して測定した散乱光強度に関して統計分析を実行してもよい。一実施形態では、例えば、標準正規変量を、測定した散乱光強度に適用してもよい。標準正規変量を適用した後、一次微分を適用し、続いてトレンド除去を行ってもよい。実行した統計分析は、最小二乗回帰法を使用してモデル化されてもよい。測定した散乱光強度を前処理した後、モニタリングされているパラメータと相関するスペクトル範囲を選択することができる。測定した散乱光強度の統計分析または前処理は、コントローラによって実行することができる。
【0013】
[0013]一実施形態では、細胞培養物は、約2日間から約28日間バッチ法で増殖され、次いで回収される。少なくとも1つのパラメータの濃度は、プロセスの最初の12時間から4日以内に決定することができる。次いで、初期濃度データは、初期測定後にパラメータ影響物質の流速を選択的に増加または減少させるコントローラによって使用され得る。
【0014】
[0014]プロセスの間、少なくとも1つのパラメータの濃度は定期的または連続的に決定することができる。一実施形態では、例えば、濃度決定は少なくとも24時間ごと、例えば少なくとも16時間ごと、例えば少なくとも8時間ごと、例えば少なくとも4時間ごと、例えば少なくとも2時間ごと、例えば少なくとも1時間ごとに行うことができる。
【0015】
[0015]本開示はまた、細胞培養物を増殖させるためのシステムも対象とする。システムは、細胞培養物を収容するための中空内部を画定するバイオリアクターを備える。バイオリアクターは、材料を送給するためおよび/または材料を中空内部から除去するための複数のポートを含む。栄養培地をバイオリアクターの中空内部に送給するための栄養培地送給器は、システムに備えられ、バイオリアクターのポートのうちの少なくとも1つと流体連通する。システムは、バイオリアクターの中空内部と連通する光搬送装置をさらに備える。光搬送装置は、光をバイオリアクターに搬送するため、および光をバイオリアクターから搬送するためのものである。
【0016】
[0016]システムは、光搬送装置と連通するコヒーレント光源をさらに備える。コヒーレント光源は、バイオリアクター中の細胞培養物を光のビームに曝露する。コヒーレント光源は、例えば、約400nmから約1500nmの波長の光を出射するように構成されているレーザーを備えてもよい。
【0017】
[0017]光搬送装置はラマン分光器と連通する。ラマン分光器は、細胞培養物がコヒーレント光源からの光のビームに曝露された後にバイオリアクターからの散乱光を受けるためのものである。ラマン分光器は、バイオリアクター内に含まれる1つまたは複数のパラメータの濃度を決定するために散乱光の強度を測定するためのものである。
【0018】
[0018]本開示においては、システムはコントローラをさらに備える。コントローラは、散乱光の強度に関する情報を受け取るためにラマン分光器と連通することができる。コントローラは、1つまたは複数のパラメータの濃度をラマン分光器から決定するように構成することができる。コントローラはさらに、決定されたパラメータ濃度に基づいて、栄養培地送給器を制御するように構成することができる。コントローラは、例えば、栄養培地送給器からバイオリアクターへの栄養培地の流量を選択的に増加または減少させて、1つまたは複数のパラメータの濃度を予め設定した限度内に維持することができる。
【0019】
[0019]コントローラは1つまたは複数のマイクロプロセッサを備えることができる。本明細書で使用する場合、マイクロプロセッサとしては、任意のプログラム可能な論理演算装置を挙げることができる。
【0020】
[0020]一実施形態では、コントローラは、細胞培養物が増殖している間、1つまたは複数のパラメータのその後の濃度を外挿および予測することができる予測モデルを用いてプログラムすることができる。コントローラは、決定された1つまたは複数のパラメータの濃度に基づいて、およびその後の予測された1つまたは複数のパラメータの濃度に基づいて、バイオリアクターへの栄養送給を選択的に増加または減少させるように構成することができる。
【0021】
[0021]本開示の他の特徴および態様は、以下でより詳細に記述される。
[0022]本開示の完全かつ実施可能な開示は、添付の図面の参照を含む本明細書の残りの部分でより詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】[0023]
図1は、本開示に従ったバイオリアクターシステムの一実施形態の断面図である。
【
図2A】[0024]
図2Aは、以下の実施例で得た結果の一部のグラフ表示である。
【
図2B】
図2Bは、以下の実施例で得た結果の一部のグラフ表示である。
【
図3A】
図3Aは、以下の実施例で得た結果の一部のグラフ表示である。
【
図3B】
図3Bは、以下の実施例で得た結果の一部のグラフ表示である。
【
図3C】
図3Cは、以下の実施例で得た結果の一部のグラフ表示である。
【
図3D】
図3Dは、以下の実施例で得た結果の一部のグラフ表示である。
【
図3E】
図3Eは、以下の実施例で得た結果の一部のグラフ表示である。
【
図3F】
図3Fは、以下の実施例で得た結果の一部のグラフ表示である。
【
図3G】
図3Gは、以下の実施例で得た結果の一部のグラフ表示である。
【
図4A】
図4Aは、以下の実施例で得た結果の一部のグラフ表示である。
【
図4B】
図4Bは、以下の実施例で得た結果の一部のグラフ表示である。
【
図4C】
図4Cは、以下の実施例で得た結果の一部のグラフ表示である。
【
図4D】
図4Dは、以下の実施例で得た結果の一部のグラフ表示である。
【
図4E】
図4Eは、以下の実施例で得た結果の一部のグラフ表示である。
【
図4F】
図4Fは、以下の実施例で得た結果の一部のグラフ表示である。
【
図4G】
図4Gは、以下の実施例で得た結果の一部のグラフ表示である。
【
図5】
図5は、以下の実施例で得た結果の一部のグラフ表示である。
【
図6】
図6は、以下の実施例で得た結果の一部のグラフ表示である。
【
図7】
図7は、以下の実施例で得た結果の一部のグラフ表示である。
【
図8】
図8は、以下の実施例で得た結果の一部のグラフ表示である。
【
図9】
図9は、以下の実施例で得た結果の一部のグラフ表示である。
【
図10】
図10は、以下の実施例で得た結果の一部のグラフ表示である。
【
図11】
図11は、以下の実施例で得た結果の一部のグラフ表示である。
【
図12】
図12は、以下の実施例で得た結果の一部のグラフ表示である。
【
図13】
図13は、以下の実施例で得た結果の一部のグラフ表示である。
【
図14】
図14は、以下の実施例で得た結果の一部のグラフ表示である。
【
図15】
図15は、以下の実施例で得た結果の一部のグラフ表示である。
【
図16】
図16は、以下の実施例で得た結果の一部のグラフ表示である。
【
図17】
図17は、以下の実施例で得た結果の一部のグラフ表示である。
【
図18】
図18は、以下の実施例で得た結果の一部のグラフ表示である。
【
図19】
図19は、以下の実施例で得た結果の一部のグラフ表示である。
【
図20】
図20は、以下の実施例で得た結果の一部のグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[0025]本明細書および図面における参照符号の繰り返しの使用は、本発明の同一または類似の特徴または要素を表すことを意図している。
[0026]本記述は例示的な実施形態の説明に過ぎず、本開示のより広い態様を限定するものとして意図されていないということは、当業者によって理解されるべきである。
【0024】
[0027]全般に、本開示はバイオ産物を生産するための方法およびシステムを対象とする。一実施形態では、例えば、本開示は細胞培養物をバイオリアクター内で増殖させるための方法およびシステムを対象とする。本開示のシステムは、バイオリアクターの1つまたは複数のパラメータをモニタリングし、次いでバイオリアクター中へのまたはバイオリアクターからのパラメータ影響物質の流量を自動的に変化または変動させるための開ループまたは閉ループ制御を使用することができる。自律的な制御は、バイオリアクター内の1つまたは複数のパラメータの連続的または定期的な非侵襲性モニタリングを可能にするラマン分光法と組み合わされる。ラマン分光法は、例えば、約800nmから約2500nm等の波長域内の情報を連続的にモニタリングおよび収集し、観察された基礎吸収帯の高調波に関する情報を収集することができ、その情報は、パラメータ濃度を決定するために使用することができる。
【0025】
[0028]ラマン分光法は、成分特異的な分子結合の振動周波数の変化を測定する。ラマンは、より伝統的な中赤外分光法と相補的(complimentary)な情報を提供するが、水の干渉に対する耐性のために水溶液においてより高い有用性を有し、バイオリアクター用途に望ましいものとなる。
【0026】
[0029]多変量解析(MVA)と組み合わせた、インラインラマンプローブから収集したラマンスペクトルは、代謝産物および細胞濃度をモニタリングすることができる。ラマン分光法により、バイオプロセスをリアルタイムでモニタリングできるようになり、栄養送給器のフィードバック制御の実行が可能となり、改善した産物品質および細胞生産性がもたらされる。
【0027】
[0030]本開示においては、インライン分光法は予測モデル制御と組み合わせることができる。特に有利なこととして、本開示の方法およびシステムは、バイオリアクターの多様な大きさおよび様々な細胞株に合わせて拡張することができる。例えば、本開示に従って使用される予測モデルは、堅牢であり、かつ細胞株依存的ではないプラットフォームプロセスのために開発され、それゆえ臨床的製造および商業的製造に使用することができる。特に、バイオ産物の生産中のバイオリアクターに含まれるある特定のパラメータは包括的であり、それゆえ特定の細胞株の適用に依存しないことが見出された。
【0028】
[0031]
図1を参照して、本開示に従ったバイオリアクターシステムの一実施形態が示される。バイオリアクターシステムはバイオリアクター10を備える。全般に、本開示のシステムおよび方法は、任意の好適なバイオリアクターを使用することができる。バイオリアクターとしては、例えば、発酵槽、撹拌槽型リアクター、接着用バイオリアクター、波型バイオリアクター、および使い捨てバイオリアクター等を挙げることができる。
図1に例示される実施形態では、バイオリアクター10は、液体増殖培地内の細胞培養物を収容するためのバイオリアクター容量12を含む中空容器または入れ物を備える。
図1に示すように、バイオリアクターシステムは、二重インペラ16および18等の撹拌器に連結した回転可能軸14をさらに備えてもよい。
【0029】
[0032]バイオリアクター10は多様な材料から作製することができる。一実施形態では、例えば、バイオリアクター10はステンレス鋼等の金属から作製することができる。金属製バイオリアクターは、典型的には、再使用されるように設計される。
【0030】
[0033]あるいは、バイオリアクター10として、硬質ポリマーまたは可撓性ポリマーフィルムから作製した単回使用バイオリアクターを挙げることができる。例えば、硬質ポリマーから作製した場合、バイオリアクター壁は自立することができる。あるいは、バイオリアクターは、液体不透過性であることができ、かつ親水性内面を有することができる可撓性ポリマーフィルムまたは形状適合材料から作製することができる。一実施形態では、バイオリアクター10は、所望の形状を取るために金属製の入れ物等の硬質構造物に挿入されるように設計される可撓性ポリマーフィルムから作製することができる。硬質容器または可撓性ポリマーフィルムを作製するために使用され得るポリマーとしては、ポリオレフィンポリマー、例えばポリプロピレンおよびポリエチレンが挙げられる。あるいは、ポリマーはポリアミドであってもよい。さらに別の実施形態では、可撓性ポリマーフィルムは、多層の異なるポリマー材料から形成してもよい。一実施形態では、可撓性ポリマーフィルムはガンマ線照射されてもよい。
【0031】
[0034]バイオリアクター10は任意の好適な容量を有することができる。例えば、バイオリアクター10の容量は、0.1mLから約25,000L、またはそれ以上であってもよい。例えば、バイオリアクター10の容量12は、約0.5L超、例えば約1L超、例えば約2L超、例えば約3L超、例えば約4L超、例えば約5L超、例えば約6L超、例えば約7L超、例えば約8L超、例えば約10L超、例えば約12L超、例えば約15L超、例えば約20L超、例えば約25L超、例えば約30L超、例えば約35L超、例えば約40L超、例えば約45L超であってもよい。バイオリアクター10の容量は、全般に、約25,000L未満、例えば約15,000L未満、例えば約10,000L未満、例えば約5,000L未満、例えば約1,000L未満、例えば約800L未満、例えば約600L未満、例えば約400L未満、例えば約200L未満、例えば約100L未満、例えば約50L未満、例えば約40L未満、例えば約30L未満、例えば約20L未満、例えば約10L未満である。一実施形態では、例えば、バイオリアクターの容量は約1Lから約5Lであってもよい。代替的な実施形態では、バイオリアクターの容量は約25Lから約75Lであってもよい。さらに別の実施形態では、バイオリアクターの容量は約1,000Lから約5,000Lであってもよい。
【0032】
[0035]インペラ16および18に加えて、バイオリアクター10は、生物細胞の培養および増殖を可能にする様々な追加の機器、例えば邪魔板、スパージャー、ガス供給器、熱交換器、または熱循環器用ポート等を備えることができる。例えば、
図1に例示される実施形態では、バイオリアクター10は、スパージャー20および邪魔板22を備える。加えて、バイオリアクターシステムは、圧力、気泡、pH、溶存酸素、および溶存二酸化炭素等を測定およびモニタリングするための様々なプローブを備えることができる。
【0033】
[0036]
図1に示すように、バイオリアクター10は、インペラ16および18に取り付けられる回転可能軸14を備えることができる。回転可能軸14は、軸14ならびにインペラ16および18を回転させるためのモータ24に連結することができる。インペラ16および18は、任意の好適な材料、例えば金属または生体適合性ポリマーから作製することができる。バイオリアクターシステムにおける使用に好適なインペラの例としては、水中翼インペラ、高ソリディティピッチブレードインペラ、高ソリディティ水中翼インペラ、Rushtonインペラ、ピッチブレードインペラ、および丸みを帯びた(gentle)マリンブレードインペラ等が挙げられる。2つ以上のインペラを含む場合、インペラは回転軸(rotating shaft)14に沿って離して配置することができる。
【0034】
[0037]
図1に示すように、バイオリアクター10はまた、複数のポートも含む。ポートは、流体および他の材料を添加および除去するための、バイオリアクター10中へのおよびバイオリアクター10からの供給ラインおよび送給ラインを可能にし得る。加えて、1つまたは複数のポートは、バイオリアクター10内の状態をモニタリングするための1本または複数本のプローブに接続するためのものであってもよい。加えて、バイオリアクター10は、バイオリアクター内の培養物の質量を測定するためのロードセルと連結して設置されてもよい。
【0035】
[0038]
図1に例示される実施形態では、バイオリアクター10は、材料をバイオリアクターから連続的または定期的に回収するための排出器28に接続した底部ポート26を含む。材料は、任意の好適な方法を使用してバイオリアクター10から回収することができる。例えば、代替的な実施形態では、排出物は、バイオリアクターの上部から浸漬管を使用して、バイオリアクター10から除去することができる。加えて、バイオリアクター10は複数の上部ポート、例えばポート30、32、および34を含む。ポート30は第1の流体送給器36と流体連通し、ポート32は第2の送給器38と流体連通し、ポート34は第3の送給器40と流体連通する。送給器36、38、および40は、栄養培地等の多様な材料をバイオリアクター10へ送給するためのものである。本明細書で使用する場合、栄養培地は、バイオ産物の質量を増加させることができる任意の流体、化合物、分子、または物質、例えば生物が生存するか、増殖するか、またはそうでなければ生物量を増大させるために使用することができるあらゆるものを指す。例えば、栄養送給器は、気体、例えば呼吸または任意の種類の代謝に使用される酸素または二酸化炭素を含んでもよい。他の栄養培地は炭水化物源を含んでもよい。炭水化物源としては、複合糖質ならびに単純糖質、例えば、グルコース、マルトース、フルクトース、ガラクトース、およびそれらの混合物が挙げられる。栄養培地はまた、アミノ酸を含んでもよい。アミノ酸としては、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、セリン、トレオニン、アスパラギン、グルタミン、チロシン、システイン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、アスパラギン酸、およびグルタミン酸、それらの単一の立体異性体、およびそれらのラセミ混合物を挙げることができる。「アミノ酸」という用語は、公知の非標準アミノ酸、例えば、4-ヒドロキシプロリン、ε-N,N,N-トリメチルリジン、3-メチルヒスチジン、5-ヒドロキシリジン、O-ホスホセリン、γ-カルボキシグルタミン酸、γ-N-アセチルリジン、ω-N-メチルアルギニン、N-アセチルセリン、N,N,N-トリメチルアラニン、N-ホルミルメチオニン、γ-アミノ酪酸、ヒスタミン、ドーパミン、チロキシン、シトルリン、オルニチン、β-シアノアラニン、ホモシステイン、アザセリン、およびS-アデノシルメチオニンを指すこともできる。一部の実施形態では、アミノ酸は、グルタミン酸、グルタミン、リジン、チロシン、またはバリンである。
【0036】
[0039]栄養培地はまた、1種または複数種のビタミンを含有してもよい。栄養培地に含有され得るビタミンとしては、B群のビタミン、例えばB12が挙げられる。他のビタミンとしては、ビタミンA、ビタミンE、リボフラビン、チアミン、ビオチン、およびそれらの混合物が挙げられる。栄養培地はまた、1種または複数種の脂肪酸および1種または複数種の脂質を含有してもよい。例えば、栄養培地送給器は、コレステロール、ステロイド、およびそれらの混合物を含んでもよい。栄養培地はまた、タンパク質およびペプチドをバイオリアクターに供給してもよい。タンパク質およびペプチドとしては、例えば、アルブミン、トランスフェリン、フィブロネクチン、フェツイン、およびそれらの混合物が挙げられる。本開示内の増殖培地はまた、成長因子および成長阻害因子、微量元素、無機塩、加水分解物、ならびにそれらの混合物を含んでもよい。一実施形態では、増殖培地は、血清、例えばヒト血清または仔ウシ血清を含有してもよい。
【0037】
[0040]
図1に示すように、バイオリアクターは多数の栄養送給器と連通することができる。このようにして、プロセスの間、バイオリアクター中の栄養素の濃度をより良好に制御するために、単一の栄養素のみを含有する栄養培地がバイオリアクターに送給されてもよい。加えてまたはあるいは、異なる送給ラインは、気体および液体をバイオリアクターへ別個に送給するために使用してもよい。
【0038】
[0041]バイオリアクター10の上部および底部のポートに加えて、バイオリアクターは、側壁に位置付けられたポートを含んでもよい。例えば、
図1に示されるバイオリアクター10は、ポート44および46を含む。側壁に位置付けられたポートは任意選択である。例えば、代替的な実施形態では、細胞培養物のモニタリングは、バイオリアクター10の上部からヘッドプレートポートを使用して行うことができる。
【0039】
[0042]本開示においては、ポート46は、細胞培養物を増殖させるための、またはそうでなければバイオ産物を生産するためのバイオリアクター10の1つまたは複数のパラメータの最適な濃度を維持することができるパラメータモニタリング・制御システムと連通する。
図1に例示される実施形態では、システムはインライン測定を行うように設計される。特に、細胞培養物に関する測定は、細胞培養物がバイオリアクター10内に存在する間に、すなわちオンラインで行われる。しかしながら、あるいは、測定はアットラインまたはオフラインで行われてもよい。例えば、一実施形態では、バイオリアクター10はサンプリングステーションと連通してもよい。細胞培養物の試料は、光散乱測定を行うためにサンプリングステーションに送給されてもよい。さらに別の実施形態では、細胞培養物の試料は、バイオリアクターから取り出されてオフラインで測定されてもよい。
【0040】
[0043]
図1に例示される実施形態では、ポート46は光搬送装置50と連通する。光搬送装置50は光源52、例えばコヒーレント光源と連通する。加えて、光搬送装置50はラマン分光器54と連通する。光源52は、バイオリアクター10内の細胞培養物を光のビームに曝露するためのものである。この場合、光搬送装置50は、バイオリアクター10内の1つまたは複数のパラメータの濃度を決定するために、細胞培養物から反射した散乱光をラマン分光器54に搬送するように構成される。ラマン分光器54および/または光源52は、コントローラ60と連通することができる。コントローラ60は、ラマン分光器54から受け取った情報またはデータからバイオリアクター10内の1つまたは複数のパラメータの濃度を決定することができ、またそのデータに基づいて、1つもしくは複数の送給器36、38、もしくは40を制御して、かつ/または排出器28を制御して、バイオリアクター10内の1つまたは複数のパラメータを予め設定した濃度の限度内に維持することができる。
【0041】
[0044]本開示に従った光源52は、制御された波長または波長範囲を有するコヒーレント光ビームを出射することができる。光源52は、例えば、レーザー、発光ダイオード、または場合により様々なフィルタを組み合わせたフィラメント電球を備えることができる。光源52は、バイオリアクター10に存在する生物材料等、様々な要因に基づいて選択され得る。光源52は、例えば、システムの幾何形状および感度に適合させることができ、リアクター内に含有される生物材料のスペクトル特性に基づいて選択することができる。一実施形態では、光源52は、バイオリアクター10内の細胞培養物の照射のために単色光を出射する。一実施形態では、単一の光源52が使用され得る。しかしながら、あるいは、システムは、全てが同一の波長または異なる波長で作動する多数の光源を備えてもよい。全般に、光源52によって出射された光ビームは、可視スペクトル、IRスペクトル、および/またはNIRスペクトルの波長を有し得る。例えば、光の波長は、全体として約400nm超、例えば約500nm超、例えば約600nm超、例えば約700nm超であり得る。光源52によって出射される光の波長は、全体として約1500nm未満、例えば約1200nm未満、例えば約1000nm未満、例えば約900nm未満であり得る。一実施形態では、光源の波長は、約700nmから約850nmであり得る。特定の一実施形態では、光源は785nmの波長を有する光ビームを出射する。より長い光の波長は、例えば、ラマン散乱放射の強度を減少させ得る。
【0042】
[0045]光源52は、任意選択で、1つまたは複数のレンズ、ビームスプリッタ、回折格子、偏光フィルタ、バンドパスフィルタ、または所望の手段でバイオリアクター内の試料を照らすために選択される他の光学素子と組み合わせてもよい。
【0043】
[0046]光源52は、光のビームをバイオリアクター10内に含有される細胞培養物に直接出射することができる。あるいは、光源52からの放射は、1つまたは複数の光搬送装置50、例えば光ファイバを介して試料表面に伝送されてもよい。1本または複数本の光ファイバは、試料の表面を連続的または断続的に照らすために使用することができる。加えて、1本または複数本の光ファイバは、全体として、細胞培養物の同一の区域を照らしても、異なる位置で細胞培養物を照射するように位置決めされてもよい。
【0044】
[0047]一実施形態では、バイオリアクター内の試料を照らすために使用される1本または複数本の光ファイバは、その表面から反射、出射、または散乱した放射を収集するために使用される1本または複数本の光検出用ファイバと一緒に束ねられる。照射用および検出用光ファイバの別々の(discreet)束は、試料表面の選択された区域を対象とすることができる。各束の照射用ファイバは、光を光源52からその表面の選択された区域へ伝送することができる。その表面の区域から反射、出射、または散乱した光は、次いで検出用ファイバによって収集することができる。各束の検出用ファイバによって伝送された光は、所望に応じて組み合わせてまたは別々に評価することができる。
【0045】
[0048]光搬送装置50または光ファイバは、任意選択で、1つまたは複数のレンズ、ビームスプリッタ、回折格子、偏光フィルタ、バンドパスフィルタ、または他の光学素子に連結させることができる。一実施形態では、例えば、光搬送装置50によって収集した反射光または散乱光は、ホログラフィックノッチフィルタと連通してもよい。
【0046】
[0049]ホログラフィックノッチフィルタに加えて、照らされた試料から伝送、反射、出射、または散乱される光は、様々な他の光学素子を含み、光の伝送を容易にし、強度を測定することができる。例えば、経路に含めることができる他の光学素子としては、レンズ、ビームスプリッタ、回折格子、偏光フィルタ、およびバンドパスフィルタ等が挙げられる。例えば、試料によって散乱されたラマンシフト放射を検出する場合、他の好適なフィルタとしては、カットオフフィルタ、ファブリ・ペロー角度調整フィルタ、音響光学波長可変フィルタ、液晶波長可変フィルタ、リオフィルタ、エヴァンス分割素子液晶波長可変フィルタ、ショルク(Solc)液晶波長可変フィルタ、および液晶ファブリ・ペロー波長可変フィルタ等を挙げることができる。使用することができる好適な干渉計としては、偏光非依存性(polarization-independent)撮像干渉計、マイケルソン干渉計、サニャック干渉計、トワイマン(Twynam)・グリーン干渉計、マッハ・ツェンダー干渉計、および波長可変ファブリ・ペロー干渉計等が挙げられる。全般に、任意の好適な検出器は、試料区域から受けたラマンシフト散乱放射をより良好に同定するために使用され得る。
【0047】
[0050]
図1に示すように、1本または複数本の光ファイバを備えることができる光搬送装置50はラマン分光器54に接続する。ラマン分光器54は検出器を備える。例えば、散乱光は、試料表面の異なる評価領域から伝送された光が検出器によって区別され得るような、マッピング可能なまたはアドレス指定可能な様式で検出器に伝送され得る。そうでなければ、試料表面の別々の評価領域からの光は、線形または二次元配列の検出素子を有する検出器の別々の部分に別個に伝送され得る。
【0048】
[0051]
図1に示すようなラマン分光器54は検出器を備えることができる。ラマン分光法の間、散乱光の強度が測定され、振動、回転、およびその他の低周波変化またはシフトが観察される。一実施形態では、試料または細胞培養物からの散乱光は、光の非弾性散乱のみを観察するために、ホログラフィックノッチフィルタ等のフィルタを通して送られる。このようにして、光子の元の波長からのシフトを観察することができる。例えば、光のビームと細胞培養物内の化学的構成要素との相互作用の結果、レーザー光子はアップシフトまたはダウンシフトする。エネルギーのシフトは、システムの振動モードに関する情報を与え、異なるパラメータ、例えば様々な分子の存在および濃度を識別するために使用することができる。
【0049】
[0052]本開示の一実施形態では、ラマン分光器54は、光子シフトおよび光子シフトの強度をより良好に測定するための波長分離器およびCCD(電荷結合素子)カメラを備える。このようにして、ラマン分光器54は、バイオリアクター10内の1つまたは複数のパラメータを同時に検出することができる。
【0050】
[0053]ラマン分光法は、本開示に従って使用した場合、数多くの利点および利益を提供することができる。例えば、上記のように、ラマン分光法は、非弾性光散乱を処理して、試料内の特定の分子結合の存在に関する具体的な情報を提供する。ここで、多数のパラメータまたは成分は、同時に測定およびモニタリングすることができる。ラマン分光法は、特定のパラメータの存在を同定することができるだけでなく、それらのパラメータの濃度に関する情報を提供することもできる。
図1に示すように、ラマン分光法は、細胞培養物の試料をバイオリアクター10から取り出す必要のないインラインで使用することもできる。さらに、試料は希釈を全く必要とせず、測定は水の存在による影響をあまり受けない。加えて、測定は、連続的にまたは比較的短い時間間隔で行うことができる。例えば、測定は、少なくとも24時間ごと、例えば少なくとも20時間ごと、例えば少なくとも15時間ごと、例えば少なくとも10時間ごと、例えば少なくとも8時間ごと、例えば少なくとも4時間ごと、例えば少なくとも2時間ごと、例えば少なくとも1時間ごと、例えば少なくとも30分ごと、例えば少なくとも10分ごと、例えば少なくとも5分ごとに行うことができる。
【0051】
[0054]ラマン分光器54からのデータはコントローラ60に送ることができる。コントローラ60および/またはラマン分光器は、バイオリアクター10に含有される細胞培養物の1つまたは複数のパラメータの濃度を算出することができる。
【0052】
[0055]一実施形態では、本開示の方法は、1つまたは複数の品質特性をモニタリングおよび調整するために使用することができる。例えば、モニタリングおよび制御され得る1つの産物品質特性は、タンパク質に影響を及ぼすグリコシル化プロファイルである。モニタリングされ変化を加えられ得る別の産物品質属性は、産物中の不純物の存在を指示し得る電荷異性体プロファイルである。
【0053】
[0056]多様な異なるパラメータは、本開示に従ってモニタリングすることができる。例えば、一実施形態では、栄養素の濃度がモニタリングされ得る。モニタリングされ得る栄養素の例としては、例えば、グルコース、グルタミン、および/またはグルタミン酸が挙げられる。あるいは、モニタリングされるパラメータは廃棄産物の濃度に関するものでもよい。本開示に従ってモニタリングされ得る廃棄産物としては、乳酸およびアンモニウムが挙げられる。加えて、様々な増殖および特性がモニタリングされ得る。例えば、増殖特性パラメータとしては、生存細胞濃度および総細胞濃度が挙げられる。最後に、モニタリングされるパラメータとしては、最終産物の濃度を挙げることができる。
【0054】
[0057]本開示においては、一実施形態では、コントローラ50は、バイオリアクター10内で生じ得る予期されたプロセス変動を包含するラマンスペクトルを収集することができる。次いで、コントローラ60は、任意の好適な方法を使用して1つまたは複数のパラメータの濃度を決定することができる。一実施形態では、例えば、パラメータ濃度は、収集したスペクトルをオフライン参照データと比較することによって測定される。コントローラ60はまた、多変量ソフトウェアを使用して較正モデルを開発することもできる。一実施形態では、コントローラはまた、独立したデータセットに基づいて開発した適格な予測モデルを含んでもよい。
【0055】
[0058]一実施形態では、コントローラによって収集したラマンスペクトルは、パラメータ濃度を決定する前に様々な統計分析または前処理を受けてもよい。例えば、一実施形態では、標準正規変量をラマンスペクトルに適用して散乱効果を除去してもよい。例えば、一実施形態では、標準正規変量から平均および標準偏差を算出して、確率密度関数を生成してもよい。例えば、特定の一実施形態では、標準正規変量は0の期待値と1の分散とを含み得る。
【0056】
[0059]一実施形態では、標準正規変量は、一次微分を適用するステップおよびトレンド除去を行うステップと組み合わせて使用してもよい。トレンド除去は、例えば、蛍光によって引き起こされたベースライン上昇傾向を低減するために使用することができる。標準正規変量を適用するステップ、トレンド除去を行うステップ、一次微分を適用するステップの後、次いで、目的のパラメータと相関するスペクトル範囲が選択され得る。一実施形態では、処理したスペクトルは部分的最小二乗回帰を使用してモデル化することができる。
【0057】
[0060]コントローラ60は、1つまたは複数のプログラム可能な装置またはマイクロプロセッサを備えてもよい。
図1に示すように、コントローラ60は、1つまたは複数の送給器36、38、および40、ならびに1つまたは複数の排出器28と連通することができる。コントローラは、1つまたは複数のパラメータの濃度に基づいてバイオリアクター10中への材料および物質の流量を増加または減少させるように構成することができる。例えば、コントローラ60は、ラマン分光器54から受け取った信号を分析し、1つまたは複数の入力および/または出力装置を制御することができる出力信号を生成することができる。
【0058】
[0061]一実施形態では、コントローラ60は、パラメータのラマンスペクトルを使用して測定したパラメータの濃度に基づいて、バイオリアクター10中へのまたはバイオリアクター10からのパラメータ影響物質の流量を選択的に増加または減少させるように構成することができる。このようにして、コントローラ60は、パラメータの濃度を予め設定した限度内に維持することができる。コントローラ60は、開ループ制御システムで作動させても、入力および/または出力装置の調整が自動的に完了する閉ループ制御システムで作動させてもよい。
【0059】
[0062]一実施形態では、コントローラ60は、バイオリアクター10内の少なくとも2つのパラメータをモニタリングする。例えば、コントローラ60は、少なくとも3つのパラメータ、例えば少なくとも4つのパラメータ、例えば少なくとも5つのパラメータをモニタリングし得る。例えば、一実施形態では、コントローラ60は、約2つから約10のパラメータ、例えば約2つから約6つのパラメータをモニタリングし得る。
【0060】
[0063]一実施形態では、プロセスの開始からプロセスの終了まで、最適な状態がバイオリアクター内に確実に残るようにするために、コントローラは、1つまたは複数のパラメータのその後の濃度を予測することができる予測モデルを用いてプログラムされ得る。予測モデルを、例えば連続的なモニタリングと組み合わせて用いてコントローラ60をプログラムすることは、非常に複雑な溶液の潜在的なフィードバック制御を提供する。予測モデルを、とりわけ2つ以上のパラメータをモニタリングすることと組み合わせて使用することで、例えば、細胞培養物を増殖させるプロセス全体にわたり、可能な限り多くの変動性を捉えることができる。
【0061】
[0064]予測モデルは、所望のパラメータの濃度および関連するラマンスペクトルを含有しかつプロセスの可能な限り多くの部分を包含する実験手法の設計を使用して、創出することができる。さらなる改善は、濃度を変動させ、その結果として生じるスペクトルを測定した際のパラメータの急上昇により得ることができる。加えて、予測モデルのさらなる改善は、存在し得る相関を強制的になくすことによって得ることができる。これらのデータ点を較正モデルに含めることは、そのモデルの、その後のデータセットに関する予測性能を改善する。ラマンスペクトルからの較正および予測モデルが開発されると、それらはバイオリアクター内のプロセスモニタリングおよびフィードバック制御に使用することができる。特に有利なこととして、本開示の方法は、予測モデルが多くの異なる細胞培養物に対して、かつ多くの異なる種類のバイオリアクターにおいて使用されることを可能にする。
【0062】
[0065]一実施形態では、バイオリアクター10は、細胞培養物をバッチ法で増殖させるためのものである。あるいは、バイオリアクター10は、流体が連続的に除去および補充される灌流法で操作してもよい。細胞培養物が増殖する時間の量は様々な要因に応じて変動し得る。全般に、例えば、細胞培養物は、約6日から約30日、例えば約8日から約20日の期間、増殖させることができる。一実施形態では、1つまたは複数のパラメータの濃度測定値は、細胞増殖の初期段階で得ることができる。例えば、ラマンスペクトルは、最初の1から6日にわたって、例えば最初の2から4日にわたって、異なるパラメータに関して得ることができる。コントローラ60は、この情報を受け取り、モニタリングされるパラメータのそれぞれのその後の濃度を予測する予測データを構築し始めることができる。ある期間情報を受け取った後、コントローラ60は次いで、バイオリアクター10から送給または回収され得るパラメータ影響物質を選択的に増加または減少させることができる。例えば、一実施形態では、コントローラ60は、データを受け取った2から4日後、パラメータの濃度が予測モデル内に収まる手段に基づいてバイオリアクターの選択的調整を開始することができる。
【0063】
[0066]例えば、一実施形態では、システムは、グルコース濃度を少なくとも1つの他のパラメータ、例えば乳酸濃度と共にモニタリングするように構成することができる。モニタリングされた両方のパラメータの濃度に基づいて、コントローラ60は次いで、バイオリアクター10中への1種または複数種の栄養培地の流量の調整を自動的に行うことができる。栄養培地は、例えばグルコースを含有し得る。このようにして、乳酸濃度を予め設定したパラメータ内に維持すると共に、グルコース濃度は予め設定したパラメータ内に維持され得る。一実施形態では、例えば、グルコースレベルは、乳酸レベルの増減を最小にし、乳酸レベルを所望の設定点未満に維持するように維持される。
【0064】
[0067]代替的な実施形態では、コントローラは、連続灌流バイオリアクターの排出速度を制御して、パラメータレベルを所望の設定点未満に維持する、例えば乳酸レベルを所望の設定点未満に維持するために使用することができる。
【0065】
[0068]ラマン分光法により1つまたは複数のパラメータをモニタリングすることに加えて、コントローラは様々な他のプロセス条件を制御することができる。例えば、コントローラは、熱循環器、ロードセル、制御ポンプと連通してこれらを制御することができ、また様々なセンサおよびプローブから情報を受け取ることができる。例えば、コントローラは、pH、酸素分圧、溶存二酸化炭素、温度、撹拌状態、アルカリ状態、圧力、および気泡レベル等を制御および/またはモニタリングし得る。例えば、pHプローブからのpH読取り値に基づいて、コントローラは、必要量の酸またはアルカリを添加することによってpHレベルを調節するように構成されてもよい。コントローラはまた、二酸化炭素ガス供給器を使用してpHを低下させてもよい。同様に、コントローラは、温度情報を受け取り、バイオリアクターを取り囲む温度を上昇または低下させるための水ジャケットに送給される流体を制御することができる。
【0066】
[0069]多くの異なる細胞培養物は、本開示の方法を使用して維持または増殖させることができる。例えば、一実施形態では、バイオリアクターは哺乳動物細胞を含有してもよい。あるいは、本開示の方法は細胞療法のための細胞を回収するために使用してもよい。例えば、一実施形態では、バイオリアクターは幹細胞、T細胞、および免疫細胞等を含有してもよい。
【0067】
[0070]本開示の方法により、細胞培養物は優れた産物特性を有して増殖し得る。例えば、細胞培養物は優れた生存率特性を有して増殖し得る。例えば、生存率は生存細胞数を総細胞数で割ることによって測定することができ、これらの細胞数はいずれも、ラマンスペクトルを使用して測定することができる2つのパラメータである。本開示においては、細胞培養物は、約0.6超、例えば約0.7超、例えば約0.8超、例えば約0.9超の上記のような生存比を有する本開示に従って増殖し得る。実際、生存比は、約0.94超、例えば約0.96超、例えば約0.98超であり得る。
【0068】
[0071]本開示は、以下の実施例を参照することでより良く理解されるだろう。
【実施例】
【0069】
実施例1
[0072]異なるモノクローナル抗体(mAb)を産生する3種の異なるCHOK1SV GS-KO(商標)細胞株を本研究に使用した。2種の細胞株を較正モデル開発のために使用し、残りの細胞株をモデル認定のために使用した。全ての細胞株をプラットフォーム培地およびフィードで15日の期間にわたり培養した。較正モデル用の全ての細胞培養を、5リットルの作業容量を有する4つの撹拌槽型リアクター(STR)で実施した。各較正用細胞培養に対し、約3g/Lの標的残留グルコース濃度で作動する2つの制御を設けた。グルコースの操作範囲を拡大するために、2つのSTRを約1g/Lの追加の初期グルコースで操作し、1g/Lの標的残留グルコース濃度に維持した。さらに、5リットルの作業容量を有する4つのSTRにおける1ラウンドの異常な細胞培養からのデータを含めて、プラットフォームプロセスに関して予期された範囲から大きく外れた代謝産物および細胞濃度を調査した。モデル認定に関しては、5リットルの作業容量を有する2つのSTRを操作する一方で、10リットルの作業容量を有する1つのSTRを操作してモデル拡張性を評価した。
【0070】
[0073]オフライン分析法
[0074]培養の間、オフライン試料(約20mL)を、代謝産物および細胞増殖の分析のために各培養物から1日2回収集した。グルコース、乳酸、グルタミン酸、およびアンモニウムのオフライン分析を、NOVA Bioprofile400(NOVA Biomedical)を使用して実施した。VCC(生存細胞濃度)およびTCC(総細胞濃度)のオフライン分析を、Vi-Cell XR(Beckman Coulter)を使用して実施した。培養4日目以降、1日2回、アリコート(約2mL)を産物濃度分析のために細胞培養上清から採取した。産物濃度を、プロテインA HPLCを介して分析した。
【0071】
[0075]インラインラマンスペクトルを、4本の420mmの生体光学プローブ(1つのバイオリアクター当たり1本のプローブ)を使用する785nmのレーザーを備えたKaiser Optical System,Inc.製のRAMANRXN2(商標)(RXN2)システムを使用して収集した。ラマンスペクトルを、5秒の露光時間で150回の走査から、約12.5分の総分析時間で生成した。較正セットを構築するために使用する細胞培養に関しては、インラインラマンスペクトルを各バイオリアクターから1日2回収集し、オフライン試料の測定と同時に行った。4本全てのプローブからのインラインラマンスペクトルの総収集時間は約1時間であった。
【0072】
[0076]モデル認定に関しては、インラインラマンスペクトルを3時間ごとに収集し、オフライン測定と比較した。認定用運転中、オフラインサンプリングの間に収集した追加のスペクトルは、それぞれのオフライン測定と適合させた後SIMCA v13.0.3にインポートする場合、経時的に測定したパラメータをトレンド分析することを可能にし、開発したモデルのモニタリング性能に対するさらなる理解を提供した。指紋領域の外側の隣接する領域を除去して(大半のモデルでは500cm-1未満と1700cm-1超)、これらの信号が結果として得られるモデルに不適切な重みを与えることを予防した(
図2A)。これらの領域が残っている場合は、これらの領域のノイズが、代謝産物濃度(例えば残留グルコース濃度)の変化と相関するラマン領域の影響を隠し、モデルの堅牢性を妨げる場合がある。スペクトル排除後、異なる組合せのスペクトル前処理を適用し、PLSモデルを作った。異なる細胞培養運転からの生スペクトルは実験の過程にわたりベースラインシフトを示し、これを一次微分フィルタの適用によって低減した(
図2B)。さらに、微分フィルタは、本研究における全てのパラメータの最良のモデルを創出するのに必要とされた。利用された実際のスペクトル前処理がパラメータ依存性であることは注意されるべきである。結果として得たモデルの統計量を比較し、最小のRMSEE/RMSECVを有するモデルを、認定セットをモニタリングする際の使用のために保存した。
【0073】
[0077]モデル較正
[0078]5リットルSTRにおいてプラットフォームプロセスを利用する12の細胞培養運転からのオフラインデータをそれぞれのラマンスペクトルと組み合わせて使用して、グルコース、グルタミン酸、乳酸、アンモニウム、生存細胞濃度(VCC)、総細胞濃度(TCC)、および産物濃度の較正モデルを生成した(表1)。全般に、モデルは全てのパラメータに関して低いRMSEE/RMSECV値とR2Y>0.90とを有した。さらに、アンモニウムを除く全てのモデルは、比較的少ない数の潜在変数(LV)を有した。アンモニウムモデルのLVの数が多いことは、このパラメータのモデルが過剰適合していることを指示し得る(R2cv=0.89)。モデルを構築する際は、プラットフォームプロセスの通常の操作条件から外れた範囲を包含するオフラインデータおよびスペクトルを収集した。これは、モデルが外挿することを要求される状況を引き起こすのを避けるために行われた。それぞれのオフライン参照方法と比較した、予測されたグルコース、グルタミン酸、乳酸、アンモニウム、VCC、TCC、および産物濃度の較正モデルのプロットは、全般に全てのモデルが測定した値と良好に相関することを指示する(
図3)。
【0074】
【0075】
[0079]モデル認定および拡張性
[0080]モデルを、較正モデルに含まれていない細胞株を使用して認定した。全ての認定用運転を、プラットフォームプロセスの通常の操作条件下で実施した。開発したモデルの潜在的な拡張性を調査するため、10リットル培養も実施した。3つ全ての認定用運転に関する、オフライン参照方法と比較した、結果として得た予測のプロファイルを
図4に示す。予測された値のエラーバーは、各培養運転の±RMSEPである。オフライン参照方法のエラーバーは、販売業者によって明記された±精度である。全てのモデルは、比較的低いRMSEP値で所望のパラメータの変化をモニタリングすることができた(表2)。
【0076】
【0077】
[0081]開発したグルコースの予測モデルは、5.18g/Lのグルコース平均プロセス濃度に対して0.44g/Lの平均RMSEPを有し、3つ全ての細胞培養物にわたってグルコースの濃度を十分に予測することが見出された。重要なことに、開発したモデルは、培養物に濃縮グルコースフィードを送給した場合、残留グルコース濃度の変化をモニタリングすることができた(
図4A)。CHO細胞培養物への入念なグルコース送給は産物品質を高めることが示された。糖化率は残留グルコースの制御によりおよそ半分低下させることができ、これはインラインラマンモニタリングにより可能となる。
【0078】
[0082]開発した乳酸の予測モデルは、0.81g/Lの乳酸平均プロセス濃度に対して0.23g/Lの平均RMSEPを有し、3つ全ての培養物で乳酸濃度の変化を十分にモニタリングした。1つの培養の終了付近で乳酸のわずかな過大予測が観察された(
図4Ci)。これは、測定した値がオフライン参照方法の下限を下回り、自動で0g/Lの値になったことによるものと考えられる。重要なことに、このモデルは、プラットフォームプロセスの予期された範囲から外れた乳酸濃度のシフトを測定することができた(
図4Cii)。これは、このプロセスに関して典型的に観察されるものから大きく外れた乳酸の濃度範囲を有する較正データセットを利用したことに起因する(表1)。PLSモデルがデータを外挿することができないため、較正の間の任意の潜在的な逸脱を確実に含めることが、典型的でない培養成果に対するモデルの堅牢性を高めることに役立つ(
図4Cii)。
【0079】
[0083]開発したアンモニウムの予測モデルは、0.09g/Lのアンモニウム平均プロセス濃度に対して0.03g/Lの平均RMSEPを有し、全ての培養物でアンモニウム濃度の変化をモニタリングすることができた。1つの細胞培養物に関して運転の終了付近でわずかな過小予測が観察された(
図4Dii)。これは、おそらくは、較正用培養物におけるアンモニウムの濃度範囲が0.2g/L未満となり、モデルにこれらの値を外挿させたことによるものである(表1、
図4D)。より広い範囲のアンモニウム濃度を包含するより多くのオフライン参照測定を含めることは、アンモニウム濃度の変化をモニタリングする性能が改善したより堅牢なモデルを可能にするだろう。
【0080】
[0084]開発したVCCおよびTCCの予測モデルは、それぞれ1.80×106および1.86×106細胞/mLの平均プロセス値に対して1.90×106および1.85×106細胞/mLの平均RMSEPを有し、3つ全ての認定用培養物で変化をモニタリングすることができた。重要なことに、モデルは、認定用培養物の大部分に関してオフライン参照方法の誤差内にVCCおよびTCCを予測することができた。増殖の静止期の間の予測されたVCCと測定されたVCCとの相違は、これらの高細胞濃度時における、Vi Cell XR分析のための試料調製に関連する希釈誤差の結果であると考えられる。これらの誤差にもかかわらず、開発したVCCのモデルは、それまでインライン静電容量プローブを使用して毎日のVCC測定に基づいて調整されてきた流加および灌流細胞培養物への栄養送給のオンライン制御を実現するのに好適であると考えられる。静電容量に基づく予測は効果的であることが示されたが、工学上の制約から、典型的なGMPバイオリアクター容器において利用可能なプローブ用ポートの数は限定される。この場合、栄養送給器のフィードバック制御に関する多数のパラメータをモニタリングする単一のプローブの使用が望ましく、インラインラマンプローブに明確な利点を与える。
【0081】
[0085]開発したグルタミン酸の予測モデルは、1.64mMのグルタミン酸平均プロセス濃度に対して1.61mMの平均RMSEPを有し、認定用培養物で変化をモニタリングした(
図4B)。グルタミン酸モデルにおけるあらゆる誤差は、NOVA Bioprofile400からのグルタミン酸検出に関連する測定誤差によるものと考えられる。オフライン参照方法による正確な測定は、インラインラマンスペクトルから堅牢なPLSモデルを構築するために必要とされ得る。したがって、グルタミン酸モデルは、この成分に関するより正確な参照方法の使用により改善し得る。
【0082】
[0086]開発した産物濃度の予測モデルは、本プロセスでは、1.74g/Lの平均産物濃度に対して0.98g/Lの平均RMSEPを有した(
図4)。産物濃度の予測におけるあらゆる誤差は、モデル開発のために使用した細胞培養の初期時点のデータの不足に起因すると考えられる。細胞培養の開始時、モデルは、ほとんど存在しないことが予期されているにもかかわらず、相当量の産物の存在を予測した(
図4G)。この相違は、較正モデルが培養4日目以前のオフライン産物濃度データを含んでいないことによるものと考えられる。そのようなデータを含めることは、改善した予測モデルの開発を可能にし得る。培養の後期のあらゆる予測誤差は、ラマンスペクトルから構築したモデルは産物濃度の変化を直接測定しているのではなく、このパラメータと相関する他の因子に基づいて産物濃度を推定しているということを指示している可能性がある。例えば、産物濃度は時間およびVCCと相関するが、この相関は細胞株間で、また産物間で著しく変動する。モデルが時間およびVCCとの相関から産物濃度を推定していた場合、これは、較正モデルに含まれない細胞株に関して、モデルが後期時点で産物濃度を予測する際にわずかにずれていた理由を説明するのに役立ち得る(
図4G)。さらに、異なるmAbは、異なるラマン信号を生じ得る異なるアミノ酸配列を有することができる。このことは、開発したモデルの、細胞培養の間異なるmAb濃度を予測する性能に影響を及ぼし得る。
【0083】
[0087]4本の異なるラマンプローブからのインラインラマンスペクトルを使用して、プラットフォーム培地で培養した2種のCHOK1SV GS-KO(商標)細胞株のオフライン参照測定から、プロセス代謝産物、細胞増殖、および産物濃度の予期された変動を包含した較正モデルを創出した。較正モデルは、異なる規模の3ラウンドの認定用細胞培養に関するオフライン参照方法の誤差内にグルコース、乳酸、アンモニウムの濃度、生存細胞濃度、および総細胞濃度を予測することができた。さらに、これらの包括的モデルは、これらのプロセスパラメータに使用したCHOK1SV GS-KO(商標)細胞株に依存しないことが見出された。グルタミン酸および産物濃度の堅牢なモデルは、小さな変更で十分に作成することができる。より感度の高いオフライン方法およびより多くのデータの包含は、それぞれグルタミン酸および産物濃度のモデルを改善し得る。
【0084】
[0088]本開示の方法により、栄養送給器のフィードバック制御は、生産物を品質の点で改善するための、細胞培養物の入念なモニタリングおよび自動調整を可能にする。
図5を参照すると、グルコース濃度が経時的に図示されている。示されるように、本開示の方法は、とりわけ毎日の測定に基づいてグルコースの送給速度を単に調整する従前のシステムと比較して、グルコースレベルを入念に制御された限度内に維持することができる。
図5に示すように、ラマン信号からのグルコース送給器の連続した調整は、培養物の大部分に関して標的に近いより一貫したグルコースプロファイルをもたらす。
【0085】
[0089]本開示に従った、生存細胞濃度と関連する複雑な栄養送給の制御もまた
図6に示す。
[0090]本開示のシステムおよび方法に関するさらなる情報および例示も付加する。
【0086】
[0091]包括的モデルの開発は、産業用プラットフォームプロセスにおいて重要な培養代謝産物を測定するためにラマン分光法を適用することが可能であることを実証する。さらに、これらのモデルは、プロセスがGMP規模で1回または2回のみ実行される臨床的製造操作における自動プロセス制御の可能性を実現することに役立ち得る。最後に、開発したモデルを使用した、強調したパラメータの成功したモニタリングは、連続的なモニタリングのためのインラインラマンプローブの使用および栄養送給器の制御により、臨床的製造規模と商業的製造規模の両方においてより堅牢で一貫したプロセスを実現することを可能にするだろう。
【0087】
実施例2
[0092]ヒト間葉系幹細胞(MSC)を、マイクロキャリアを含む撹拌槽型バイオリアクターで培養した。培養期間は総計8日であった。最初の4日間は、細胞を2g/Lのグルコース濃度のMSC培地でインキュベートした。培養4日目から8日目までは、連続灌流を開始し、古い培地を4g/Lのグルコース濃度の新鮮なMSC培地と交換した。これらの8日の過程にわたり、試料をバイオリアクターから定期的に抜き出し、グルコース、乳酸、およびアンモニウム濃度を、新鮮な試料から、Nova BioProfile Flex測定器を使用して測定した。インラインラマンスペクトルを、特定のスペクトル範囲を走査する785nmのレーザーを備えたKaiser Optical System,Inc.製のRamanRXN2(商標)システムを使用して収集し、420~2465cm-1をモデル化に使用した。
【0088】
[0093]モデル較正:
[0094]3.5Lの培養物を含有する4つの5Lバイオリアクターを、モデル較正のために運転した。ラマン測定器は10秒の露光時間を使用し、各測定に関して75回の積算で収集した。測定を30分ごとに行った。総計47(N=47)の試料を4つの運転からNovaで測定した。
【0089】
[0095]前処理を4つのステップによって実施した:標準正規変量(SNV)を適用するステップ、トレンド除去を行うステップ、一次微分を適用するステップ、および目的の分子と相関するスペクトル範囲を選択するステップ。
図7~10は、認定用運転のうちの1つに適用されたこれらの前処理ステップを例示する。
図7は生、すなわち未処理スペクトルを示す。
図8は、
図7と同一だが、SNVを適用した後のスペクトルを示す。
図9は、SNVおよびトレンド除去後の同一のスペクトルを示す。
図10は、SNV、トレンド除去、および一次微分を適用した後の同一のスペクトルを示す。
【0090】
[0096]次いで、処理したスペクトルを、部分的最小二乗回帰(PLS-R)を使用してモデル化した。表1は結果として得たモデルの統計量を要約する。0の値を有したため、17個のアンモニウムの試料のみをPLS-Rモデルに含めた。
【0091】
【0092】
[0097]
図11~13は、3種のモデル化した分子のそれぞれに関する、モデルにおけるそれぞれの追加の因子(潜在変数)によって説明されるY分散の増加百分率を示す。
図14~16は、3種のモデル化した分子のそれぞれに関する、較正セットのどの点が95%信頼区間内にあり、どの点が95%信頼区間外にあるかを視覚化するホテリングのT
2楕円を示す。
【0093】
[0098]これらの統計量からの結論は、モデルはプロセスにおいて測定されることが意図されていた濃度範囲に比して比較的小さい誤差内にあり、グルコース、乳酸、およびアンモニウムに関して良好に適合する、というものである。
【0094】
[0099]モデル認定:
[0100]2~3Lの範囲の作業容量を有する7つの3Lバイオリアクターをモデル認定のために運転した。各バイオリアクター運転から平均7個の試料、総計50個の試料を収集した。少数の試料は乳酸およびアンモニウムの参照値が欠損していたが、これは、それらの特定の試料に関するNovaの技術的な問題、および一部の0の値によるものであった。認定用運転のためのMSCプロセスは大部分が較正に使用したプロセスと同一であったが、数少ない小さな例外を有した:異なるロットの培地を使用した、認定用運転はゲンタマイシンを使用して実施した、および認定用運転はプロセスの一部の間消泡剤の添加を含んだ。ゲンタマイシンの存在によって引き起こされたラマンスペクトルの差が存在し、これを計量化学によって補正した。
【0095】
[0101]表2は認定用運転からの統計量を示す。グルコースは、7つの運転のうち6つでは、較正統計量によって予想された範囲内に予測され、7つ目の運転では、RMSEP値が、0.29のRMSECVよりもごくわずかに高い0.33であった。乳酸は、7つの運転のうち6つでは、較正統計量によって予想された範囲内に予測され、7つ目の運転では、RMSEP値が、0.17のRMSECVよりもごくわずかに高い0.19であった。アンモニウムは、7つ全ての運転で較正統計量によって予想された範囲外に予測されたが、1つ目の運転を除いて、なおも真値の0.5g/Lを超えなかった。これは、おそらくは、較正セットにおけるより少ない数のアンモニウム試料によるものであった。3種全ての分子に関する7つ全ての運転の予測プロットは、
図17~19において確認することができる。
【0096】
【0097】
[0102]自動ラマン駆動制御:
[0103]1つの運転を実施して、自動ラマン駆動制御を試験した。測定の頻度を増加させ、結果として10分ごとの測定とした。この運転を実行する前に、ラマンを介して測定される分子のいずれかに関して設定点を定義することができるように、ラマンシステムをバイオリアクターコントローラにつないだ。
【0098】
[0104]この運転では、これを例示するためにグルコースを選択した。
図20に示すように、MSCを最初に2g/Lのグルコースで培養した。4日目に、グルコース濃度を、4g/Lの設定点を定義することによって修正した。コントローラを濃縮グルコース送給器に接続し、カスタムフィードバック機能により自動的にバイオリアクターへポンプ輸送した-ポンプ輸送の活動は
図20において赤い波形によって指示される。培養の残り4日にわたって、グルコースを自動的に送給して設定点を維持した。
【0099】
[0105]本明細書に記載される装置、設備、および方法は、原核細胞株および/または真核細胞株を含む任意の所望の細胞株を培養するのに好適である。さらに、複数の実施形態では、装置、設備、および方法は、浮遊細胞または足場依存性(接着)細胞を培養するのに好適であり、医薬品およびバイオ医薬品-例えばポリペプチド製剤、核酸製剤(例えばDNAもしくはRNA)、または細胞療法および/もしくはウイルス療法に使用されるもの等の細胞および/もしくはウイルス-の生産のために構成された生産工程に好適である。
【0100】
[0106]複数の実施形態では、細胞は、組換え治療用産物または組換え診断用産物等の産物を発現または産生する。以下でより詳細に記載されるように、細胞によって産生される産物の例としては、これらに限定されないが、抗体分子(例えば、モノクローナル抗体、二重特異性抗体)、抗体模倣物(抗原に特異的に結合するが、例えばDARPin、アフィボディ、アドネクチン、もしくはIgNAR等の抗体と構造的には関連しないポリペプチド分子)、融合タンパク質(例えば、Fc融合タンパク質、キメラサイトカイン)、他の組換えタンパク質(例えば、グリコシル化タンパク質、酵素、ホルモン)、ウイルス治療薬(例えば、抗癌腫瘍溶解性ウイルス、遺伝子療法およびウイルス免疫療法のためのウイルスベクター)、細胞治療薬(例えば、多能性幹細胞、間葉系幹細胞、および成体幹細胞)、ワクチンまたは脂質封入粒子(例えば、エクソソーム、ウイルス様粒子)、RNA(例えばsiRNA等)またはDNA(例えばプラスミドDNA等)、抗生物質、あるいはアミノ酸が挙げられる。複数の実施形態では、装置、設備、および方法は、バイオシミラーを生産するために使用することができる。
【0101】
[0107]言及されたように、複数の実施形態では、装置、設備、および方法は、真核細胞、例えば哺乳動物細胞、または例えば酵母細胞もしくは糸状菌細胞等の下等真核細胞、あるいはグラム陽性細胞もしくはグラム陰性細胞等の原核細胞、および/あるいは真核細胞によって大規模に合成される真核細胞または原核細胞の産物、例えば、タンパク質、ペプチド、抗生物質、アミノ酸、核酸(例えばDNAまたはRNA)の生産を可能にする。本明細書に別段の記載がない限り、装置、設備、および方法は、任意の所望の容量、または実験規模、パイロット規模、および実生産規模の能力を含むがこれらに限定されない任意の所望の生産能力を含むことができる。
【0102】
[0108]さらに、本明細書に別段の記載がない限り、装置、設備、および方法は、撹拌槽型、エアリフト型、繊維型、マイクロ繊維型、中空糸型、セラミックマトリックス型、流動床型、固定床型、および/または噴流床型バイオリアクターを含むがこれらに限定されない任意の好適なリアクター含むことができる。本明細書で使用する場合、「リアクター」としては発酵槽もしくは発酵ユニット、または任意の他の反応容器を挙げることができ、「リアクター」という用語は「発酵槽」と交換可能に使用される。例えば、一部の態様では、バイオリアクターユニットの一例は、以下のうちの1つまたは複数または全てを実施することができる:栄養素および/もしくは炭素源の送給、好適な気体(例えば酸素)の注入、発酵培地もしくは細胞培養培地の流入および流出、気相および液相の分離、温度の維持、酸素レベルおよびCO2レベルの維持、pHレベルの維持、撹拌(例えばかき混ぜ)、ならびに/または清浄化/滅菌。発酵ユニット等のリアクターユニットの例は、ユニット内に多数のリアクターを含有してもよく、例えばユニットは各ユニットに1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、もしくは100以上のバイオリアクターを有することができ、および/または設備は設備内に単一もしくは多数のリアクター(reacotr)を有する多数のユニットを含有してもよい。様々な実施形態では、バイオリアクターは、バッチ法、半流加法、流加法、灌流法、および/または連続発酵法に好適であり得る。任意の好適なリアクター径を使用することができる。複数の実施形態では、バイオリアクターは約100mLから約50,000Lの間の容量を有し得る。非限定的な例としては、100mL、250mL、500mL、750mL、1リットル、2リットル、3リットル、4リットル、5リットル、6リットル、7リットル、8リットル、9リットル、10リットル、15リットル、20リットル、25リットル、30リットル、40リットル、50リットル、60リットル、70リットル、80リットル、90リットル、100リットル、150リットル、200リットル、250リットル、300リットル、350リットル、400リットル、450リットル、500リットル、550リットル、600リットル、650リットル、700リットル、750リットル、800リットル、850リットル、900リットル、950リットル、1000リットル、1500リットル、2000リットル、2500リットル、3000リットル、3500リットル、4000リットル、4500リットル、5000リットル、6000リットル、7000リットル、8000リットル、9000リットル、10,000リットル、15,000リットル、20,000リットル、および/または50,000リットルの容量が挙げられる。さらに、好適なリアクターは多回使用、単回使用、使い捨て、または非使い捨てであることができ、ステンレス鋼(例えば316Lまたは任意の他の好適なステンレス鋼)およびインコネル等の合金、プラスチック、ならびに/またはガラス等の任意の好適な材料で形成することができる。
【0103】
[0109]複数の実施形態では、本明細書に別段の記載がない限り、本明細書に記載される装置、設備、および方法はまた、別段に言及されていない任意の好適な単位操作および/または機器、例えばそのような産物の分離、精製、および単離のための操作および/または機器を含むこともできる。任意の好適な設備および環境、例えば、伝統的な現場組立式設備、モジュール式、移動式、および仮設設備、または任意の他の好適な構築物、設備、および/もしくは施設を使用することができる。例えば、一部の実施形態では、モジュール式クリーンルームを使用することができる。さらに、別段の記述がない限り、本明細書に記載される装置、システム、および方法は、単一の場所または設備に入れ、かつ/またはそこで実施、あるいは別個のまたは多数の場所および/または設備に入れ、かつ/またはそこで実施することができる。
【0104】
[0110]非限定的な例であり限定するものではないが、それらの全体が参照によって本明細書に組み込まれる、米国公開第2013/0280797号、同第2012/0077429号、同第2011/0280797号、同第2009/0305626号、ならびに米国特許第8,298,054号、同第7,629,167号、および同第5,656,491号は、好適であり得る設備、機器、および/またはシステムの例を記載している。
【0105】
[0111]複数の実施形態では、細胞は真核細胞、例えば哺乳動物細胞である。哺乳動物細胞は、例えばヒトまたはげっ歯類またはウシ細胞株または細胞系であり得る。そのような細胞、細胞株、または細胞系の例は、例えばマウス骨髄腫(NSO)細胞株、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株、HT1080、H9、HepG2、MCF7、MDBK、Jurkat、NIH3T3、PC12、BHK(ベビーハムスター腎臓細胞)、VERO、SP2/0、YB2/0、Y0、C127、L細胞、COS、例えばCOS1およびCOS7、QC1-3、HEK-293、VERO、PER.C6、HeLA、EBl、EB2、EB3、腫瘍溶解性またはハイブリドーマ細胞株である。好ましくは、哺乳動物細胞はCHO細胞株である。一実施形態では、細胞はCHO細胞である。一実施形態では、細胞はCHO-K1細胞、CHO-K1 SV細胞、DG44 CHO細胞、DUXB11 CHO細胞、CHOS、CHO GSノックアウト細胞、CHO FUT8 GSノックアウト細胞、CHOZN、またはCHO由来細胞である。CHO GSノックアウト細胞(例えばGSKO細胞)は、例えばCHO-K1 SV GSノックアウト細胞である。CHO FUT8ノックアウト細胞は、例えばPotelligent(登録商標)CHOK1 SV(Lonza Biologics,Inc.)である。真核細胞はまた、例えばEBx(登録商標)細胞、EB14、EB24、EB26、EB66、またはEBvl3等のトリ細胞、細胞株、または細胞系であってもよい。
【0106】
[0112]一実施形態では、真核細胞は幹細胞である。幹細胞は、例えば、胚性幹細胞(ESC)、成体幹細胞、人工多能性幹細胞(iPSC)、組織特異的幹細胞(例えば造血幹細胞)、および間葉系幹細胞(MSC)を含む多能性幹細胞であり得る。
【0107】
[0113]一実施形態では、細胞は細胞療法のためのものである。
[0114]一実施形態では、細胞としてT細胞または免疫細胞を挙げてもよい。例えば、細胞として、B細胞、ナチュラルキラー細胞、樹状細胞、腫瘍浸潤リンパ球、単球、または巨核球等を挙げることができる。
【0108】
[0115]一実施形態では、細胞は、本明細書に記載される細胞のいずれかの分化形態である。一実施形態では、細胞は、培養の任意の初代細胞に由来する細胞である。
[0116]複数の実施形態では、細胞は肝細胞、例えばヒト肝細胞、動物肝細胞、または非実質細胞である。例えば、細胞は、接着型代謝試験用ヒト肝細胞、接着型誘導試験用ヒト肝細胞、接着型Qualyst Transporter Certified(商標)ヒト肝細胞、浮遊型試験用ヒト肝細胞(10名のドナーおよび20名のドナーのプールされた肝細胞を含む)、ヒト肝臓クッパー細胞、ヒト肝星細胞、イヌ肝細胞(単一のおよびプールされたビーグル肝細胞を含む)、マウス肝細胞(CD-1およびC57Bl/6肝細胞を含む)、ラット肝細胞(Sprague-Dawley、Wistar Han、およびWistar肝細胞を含む)、サル肝細胞(カニクイザルまたはアカゲザル肝細胞を含む)、ネコ肝細胞(ドメスティックショートヘア肝細胞を含む)、ならびにウサギ肝細胞(ニュージーランドホワイト肝細胞を含む)であり得る。肝細胞の例は、Triangle Research Labs,LLC、6 Davis Drive Research Triangle Park、North Carolina、USA 27709から市販されている。
【0109】
[0117]一実施形態では、真核細胞は、例えば酵母細胞(例えばPichia属(例えばPichia pastoris、Pichia methanolica、Pichia kluyveri、およびPichia angusta)、Komagataella属(例えばKomagataella pastoris、Komagataella pseudopastoris、もしくはKomagataella phaffii)、Saccharomyces属(例えばSaccharomyces cerevisae、cerevisiae、Saccharomyces kluyveri、Saccharomyces uvarum)、Kluyveromyces属(例えばKluyveromyces lactis、Kluyveromyces marxianus)、Candida属(例えばCandida utilis、Candida cacaoi、Candida boidinii)、Geotrichum属(例えばGeotrichum fermentans)、Hansenula polymorpha、Yarrowia lipolytica、またはSchizosaccharomyces pombe等の下等真核細胞である。Pichia pastoris種が好ましい。Pichia pastoris系の例は、X33、GS115、KM71、KM71H、およびCBS7435である。
【0110】
[0118]一実施形態では、真核細胞は真菌細胞(例えばAspergillus(例えばA.niger、A.fumigatus、A.orzyae、A.nidula)、Acremonium(例えばA.thermophilum)、Chaetomium(例えばC.thermophilum)、Chrysosporium(例えばC.thermophile)、Cordyceps(例えばC.militaris)、Corynascus、Ctenomyces、Fusarium(例えばF.oxysporum)、Glomerella(例えばG.graminicola)、Hypocrea(例えばH.jecorina)、Magnaporthe(例えばM.orzyae)、Myceliophthora(例えばM.thermophile)、Nectria(例えばN.heamatococca)、Neurospora(例えばN.crassa)、Penicillium、Sporotrichum(例えばS.thermophile)、Thielavia(例えばT.terrestris、T.heterothallica)、Trichoderma(例えばT.reesei)、またはVerticillium(例えばV.dahlia))である。
【0111】
[0119]一実施形態では、真核細胞は、昆虫細胞(例えばSf9、Mimic(商標)Sf9、Sf21、High Five(商標)(BT1-TN-5B1-4)、またはBT1-Ea88細胞)、藻類細胞(例えば、Amphora属、Bacillariophyceae、Dunaliella属、Chlorella属、Chlamydomonas属、Cyanophyta(cyanobacteria)、Nannochloropsis属、Spirulina属、またはOchromonas属の)、あるいは植物細胞(例えば、単子葉植物(例えば、トウモロコシ、イネ、コムギ、もしくはSetaria)からの、または双子葉植物(例えば、キャッサバ、ジャガイモ、ダイズ、トマト、タバコ、アルファルファ、Physcomitrella patens、もしくはArabidopsisからの細胞)である。
【0112】
[0120]一実施形態では、細胞は細菌細胞または原核細胞である。
[0121]複数の実施形態では、原核細胞はグラム陽性細胞、例えばBacillus、Streptomyces、Streptococcus、Staphylococcus、またはLactobacillusである。使用することができるBacillusは、例えば枯草菌(B.subtilis)、B.amyloliquefaciens、B.licheniformis、B.natto、またはB.megateriumである。複数の実施形態では、細胞は枯草菌、例えば枯草菌3NAおよび枯草菌168株である。Bacillusは、例えばBacillus Genetic Stock Center、Biological Sciences 556、484 West 12th Avenue、Columbus OH 43210-1214から取得可能である。
【0113】
[0122]一実施形態では、原核細胞はグラム陰性細胞、例えばSalmonella spp.、または例えばTG1、TG2、W3110、DH1、DHB4、DH5a、HMS174、HMS174(DE3)、NM533、C600、HB101、JM109、MC4100、XL1-Blue、およびOrigami、ならびに例えばBL-21もしくはBL21(DE3)等の大腸菌(Escherichia coli)B系に由来するもの等の大腸菌であり、これらの全ては市販されている。
【0114】
[0123]好適な宿主細胞は、例えばDSMZ(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen and Zellkulturen GmbH、Braunschweig、Germany)またはAmerican Type Culture collection(ATCC)等の菌株保存機関から市販されている。
【0115】
[0124]複数の実施形態では、培養細胞は、治療に使用するための、タンパク質、例えば抗体、例えばモノクローナル抗体、および/または組換えタンパク質を産生させるために使用される。複数の実施形態では、培養細胞は、ペプチド、アミノ酸、脂肪酸、または他の有用な生化学的中間体もしくは代謝産物を産生する。例えば、複数の実施形態では、約4000ダルトンから約140,000ダルトン超の分子量を有する分子が産生され得る。複数の実施形態では、これらの分子は、ある範囲の複雑性を有することができ、グリコシル化を含む翻訳後修飾を含むことができる。
【0116】
[0125]複数の実施形態では、タンパク質は、例えば、BOTOX、Myobloc、Neurobloc、Dysport(またはボツリヌス神経毒素の他の血清型)、アルグルコシダーゼアルファ、ダプトマイシン、YH-16、絨毛性ゴナドトロピンアルファ、フィルグラスチム、セトロレリックス、インターロイキン-2、アルデスロイキン、テセロイキン、デニロイキンジフチトクス、インターフェロンアルファ-n3(注射剤)、インターフェロンアルファ-n1(interferon alpha-nl)、DL-8234、インターフェロン、サントリー(ガンマ-1a)、インターフェロンガンマ、チモシンアルファ1、タソネルミン、DigiFab、ViperaTAb、EchiTAb、CroFab、ネシリチド、アバタセプト、アレファセプト、Rebif、エプトテルミンアルファ、テリパラチド(骨粗鬆症)、注射用カルシトニン(骨疾患)、カルシトニン(点鼻、骨粗鬆症)、エタネルセプト、ヘモグロビングルタマー250(ウシ)、ドロトレコギンアルファ、コラゲナーゼ、カルペリチド、組換えヒト上皮成長因子(局所外用ゲル、創傷治癒)、DWP401、ダルベポエチンアルファ、エポエチンオメガ、エポエチンベータ、エポエチンアルファ、デシルジン、レピルジン、ビバリルジン、ノナコグアルファ、Mononine、エプタコグアルファ(活性型)、組換え第VIII因子+VWF、Recombinate、組換え第VIII因子、第VIII因子(組換え)、Alphanate(Alphnmate)、オクトコグアルファ、第VIII因子、パリフェルミン、Indikinase、テネクテプラーゼ、アルテプラーゼ、パミテプラーゼ、レテプラーゼ、ナテプラーゼ、モンテプラーゼ、フォリトロピンアルファ、rFSH、hpFSH、ミカファンギン、ペグフィルグラスチム、レノグラスチム、ナルトグラスチム、セルモレリン、グルカゴン、エキセナチド、プラムリンチド、イミグルセラーゼ(iniglucerase)、ガルスルファーゼ、Leucotropin、モルグラモスチム(molgramostirn)、酢酸トリプトレリン、ヒストレリン(皮下インプラント、Hydron)、デスロレリン、ヒストレリン、ナファレリン、ロイプロリド徐放性デポー(ATRIGEL)、ロイプロリドインプラント(DUROS)、ゴセレリン、Eutropin、KP-102プログラム、ソマトロピン、メカセルミン(成長不全)、エンフビルチド(enlfavirtide)、Org-33408、インスリングラルギン、インスリングルリジン、インスリン(吸入)、インスリンリスプロ、インスリンデテミル(insulin deternir)、インスリン(頬側、RapidMist)、メカセルミンリンファベート、アナキンラ、セルモロイキン、99mTc-アプシチド注射剤、ミエロピド、Betaseron、酢酸グラチラマー、Gepon、サルグラモスチム、オプレルベキン、ヒト白血球由来アルファインターフェロン、Bilive、インスリン(組換え)、組換えヒトインスリン、インスリンアスパルト、メカセルミン(mecasenin)、Roferon-A、インターフェロン-アルファ2、Alfaferone、インターフェロンアルファコン-1、インターフェロンアルファ、Avonex組換えヒト黄体形成ホルモン、ドルナーゼアルファ、トラフェルミン、ジコノチド、タルチレリン、ジボテルミンアルファ、アトシバン、ベカプレルミン、エプチフィバチド、Zemaira、CTC-111、Shanvac-B、HPVワクチン(四価)、オクトレオチド、ランレオチド、アンセスチム(ancestirn)、アガルシダーゼベータ、アガルシダーゼアルファ、ラロニダーゼ、酢酸プレザチド銅(局所外用ゲル)、ラスブリカーゼ、ラニビズマブ、Actimmune、PEG-Intron、Tricomin、組換えヒョウヒダニアレルギー脱感作注射剤、組換えヒト副甲状腺ホルモン(PTH)1-84(sc、骨粗鬆症)、エポエチンデルタ、トランスジェニックアンチトロンビンIII、Granditropin、Vitrase、組換えインスリン、インターフェロン-アルファ(経口トローチ)、GEM-21S、バプレオチド、イデュルスルファーゼ、オマパトリラト(omnapatrilat)、組換え血清アルブミン、セルトリズマブペゴル、グルカルピダーゼ、ヒト組換えC1エステラーゼインヒビター(血管性浮腫)、ラノテプラーゼ、組換えヒト成長ホルモン、エンフビルチド(無針注射剤、Biojector2000)、VGV-1、インターフェロン(アルファ)、ルシナクタント、アビプタジル(吸入、肺疾患)、イカチバント、エカランチド、オミガナン、Aurograb、酢酸ペキシガナン、ADI-PEG-20、LDI-200、デガレリクス、シントレデキンベスドトクス(cintredelinbesudotox)、FavId、MDX-1379、ISAtx-247、リラグルチド、テリパラチド(骨粗鬆症)、チファコギン、AA4500、T4N5リポソームローション、カツマキソマブ、DWP413、ART-123、Chrysalin、デスモテプラーゼ、アメジプラーゼ、コリフォリトロピンアルファ、TH-9507、テデュグルチド、Diamyd、DWP-412、成長ホルモン(徐放性注射剤)、組換えG-CSF、インスリン(吸入、AIR)、インスリン(吸入、Technosphere)、インスリン(吸入、AERx)、RGN-303、DiaPep277、インターフェロンベータ(C型肝炎ウイルス感染症(HCV))、インターフェロンアルファ-n3(経口)、ベラタセプト、経皮インスリンパッチ、AMG-531、MBP-8298、Xerecept、オペバカン、AIDSVAX、GV-1001、LymphoScan、ランピルナーゼ、Lipoxysan、ルスプルチド、MP52(ベータ-リン酸三カルシウム担体、骨再生)、黒色腫ワクチン、シプロイセル-T、CTP-37、Insegia、ビテスペン、ヒトトロンビン(凍結、手術による出血)、トロンビン、TransMID、アルフィメプラーゼ、Puricase、テルリプレシン(静脈内、肝腎症候群)、EUR-1008M、組換えFGF-I(注射用、血管疾患)、BDM-E、ロチガプチド、ETC-216、P-113、MBI-594AN、デュラマイシン(吸入、嚢胞性線維症)、SCV-07、OPI-45、エンドスタチン、アンジオスタチン、ABT-510、ボーマン・バークインヒビター濃縮物、XMP-629、99mTc-Hynic-アネキシンV、カハラリドF、CTCE-9908、テベレリクス(持続放出型)、オザレリクス、ロミデプシン(rornidepsin)、BAY-504798、インターロイキン4、PRX-321、Pepscan、イボクタデキン、rhラクトフェリン、TRU-015、IL-21、ATN-161、シレンギチド、Albuferon、Biphasix、IRX-2、オメガインターフェロン、PCK-3145、CAP-232、パシレオチド、huN901-DMI、卵巣癌免疫療法ワクチン、SB-249553、Oncovax-CL、Oncovax-P、BLP-25、CerVax-16、マルチエピトープペプチド黒色腫ワクチン(MART-1、gp100、チロシナーゼ)、ネミフィチド、rAAT(吸入)、rAAT(外皮)、CGRP(吸入、喘息)、ペグスネルセプト、チモシンベータ4、プリチデプシン、GTP-200、ラモプラニン、GRASPA、OBI-1、AC-100、サケカルシトニン(経口、eligen)、カルシトニン(経口、骨粗鬆症)、エキサモレリン、カプロモレリン、Cardeva、ベラフェルミン、131I-TM-601、KK-220、T-10、ウラリチド、デペレスタット、ヘマチド、Chrysalin(局所外用)、rNAPc2、組換え第VIII因子(PEG化リポソーム)、bFGF、PEG化組換えスタフィロキナーゼバリアント、V-10153、SonoLysis Prolyse、NeuroVax、CZEN-002、島細胞新生療法、rGLP-1、BIM-51077、LY-548806、エキセナチド(放出制御型、Medisorb)、AVE-0010、GA-GCB、アボレリン、ACM-9604、酢酸リナクロチド、CETi-1、Hemospan、VAL(注射用)、速効型インスリン(注射用、Viadel)、鼻腔内インスリン、インスリン(吸入)、インスリン(経口、eligen)、組換えメチオニルヒトレプチン、ピトラキンラ(皮下(subcutancous)注射剤、湿疹)、ピトラキンラ(吸入用乾燥粉末、喘息)、Multikine、RG-1068、MM-093、NBI-6024、AT-001、PI-0824、Org-39141、Cpn10(自己免疫疾患/炎症)、タラクトフェリン(局所外用)、rEV-131(点眼)、rEV-131(呼吸器疾患)、経口組換えヒトインスリン(糖尿病)、RPI-78M、オプレルベキン(経口)、CYT-99007、CTLA4-Ig、DTY-001、バラテグラスト、インターフェロンアルファ-n3(局所外用)、IRX-3、RDP-58、Tauferon、胆汁酸塩刺激リパーゼ、Merispase、アルカリ(alaline)ホスファターゼ、EP-2104R、メラノタン-II、ブレメラノチド、ATL-104、組換えヒトマイクロプラスミン、AX-200、SEMAX、ACV-1、Xen-2174、CJC-1008、ダイノルフィンA、SI-6603、LAB GHRH、AER-002、BGC-728、マラリアワクチン(ビロソーム、PeviPRO)、ALTU-135、パルボウイルスB19ワクチン、インフルエンザワクチン(組換えノイラミニダーゼ)、マラリア/HBVワクチン、炭疽ワクチン、Vacc-5q、Vacc-4x、HIVワクチン(経口)、HPVワクチン、Tatトキソイド、YSPSL、CHS-13340、PTH(1-34)リポソームクリーム(Novasome)、Ostabolin-C、PTHアナログ(局所外用、乾癬)、MBRI-93.02、MTB72Fワクチン(結核)、MVA-Ag85Aワクチン(結核)、FARA04、BA-210、組換えペストFIVワクチン、AG-702、OxSODrol、rBetV1、Der-p1/Der-p2/Der-p7アレルゲン標的ワクチン(チリダニアレルギー)、PR1ペプチド抗原(白血病)、変異型rasワクチン、HPV-16 E7リポペプチドワクチン、迷路障害(labyrinthin)ワクチン(腺癌)、CMLワクチン、WT1-ペプチドワクチン(癌)、IDD-5、CDX-110、Pentrys、Norelin、CytoFab、P-9808、VT-111、イクロカプチド、テルベルミン(外皮、糖尿病性足潰瘍)、ルピントリビル、reticulose、rGRF、HA、アルファ-ガラクトシダーゼA、ACE-011、ALTU-140、CGX-1160、アンジオテンシン治療用ワクチン、D-4F、ETC-642、APP-018、rhMBL、SCV-07(経口、結核)、DRF-7295、ABT-828、ErbB2特異的免疫毒素(抗癌)、DT3SSIL-3、TST-10088、PRO-1762、Combotox、コレシストキニン-B/ガストリン受容体結合ペプチド、111In-hEGF、AE-37、トラスツズマブ(trasnizumab)-DM1、アンタゴニストG、IL-12(組換え)、PM-02734、IMP-321、rhIGF-BP3、BLX-883、CUV-1647(局所外用)、L-19に基づく放射免疫治療薬(癌)、Re-188-P-2045、AMG-386、DC/1540/KLHワクチン(癌)、VX-001、AVE-9633、AC-9301、NY-ESO-1ワクチン(ペプチド)、NA17.A2ペプチド、黒色腫ワクチン(パルス抗原治療薬)、前立腺癌ワクチン、CBP-501、組換えヒトラクトフェリン(ドライア
イ)、FX-06、AP-214、WAP-8294A(注射用)、ACP-HIP、SUN-11031、ペプチドYY[3-36](肥満、鼻腔内)、FGLL、アタシセプト、BR3-Fc、BN-003、BA-058、ヒト副甲状腺ホルモン1-34(点鼻、骨粗鬆症)、F-18-CCR1、AT-1100(セリアック病/糖尿病)、JPD-003、PTH(7-34)リポソームクリーム(Novasome)、デュラマイシン(点眼、ドライアイ)、CAB-2、CTCE-0214、糖PEG化エリスロポエチン、EPO-Fc、CNTO-528、AMG-114、JR-013、第XIII因子、アミノカンジン、PN-951、716155、SUN-E7001、TH-0318、BAY-73-7977、テベレリクス(即放性)、EP-51216、hGH(放出制御型、Biosphere)、OGP-I、シフビルチド、TV4710、ALG-889、Org-41259、rhCC10、F-991、チモペンチン(肺疾患)、r(m)CRP、肝選択的インスリン、スバリン、L19-IL-2融合タンパク質、エラフィン、NMK-150、ALTU-139、EN-122004、rhTPO、トロンボポエチン受容体アゴニスト(血小板減少性障害)、AL-108、AL-208、神経成長因子アンタゴニスト(疼痛)、SLV-317、CGX-1007、INNO-105、経口テリパラチド(eligen)、GEM-OS1、AC-162352、PRX-302、LFn-p24融合ワクチン(Therapore)、EP-1043、小児用肺炎球菌ワクチン、マラリアワクチン、B群髄膜炎菌ワクチン、新生児用B群レンサ球菌ワクチン、炭疽ワクチン、HCVワクチン(gpE1+gpE2+MF-59)、中耳炎療法、HCVワクチン(コア抗原+ISCOMATRIX)、hPTH(1-34)(経皮、ViaDerm)、768974、SYN-101、PGN-0052、アビスクミン(aviscumnine)、BIM-23190、結核ワクチン、マルチエピトープチロシナーゼペプチド、癌ワクチン、エンカスチム、APC-8024、GI-5005、ACC-001、TTS-CD3、血管標的TNF(固形腫瘍)、デスモプレシン(頬側放出制御型)、オネルセプト、およびTP-9201である。
【0117】
[0126]一部の実施形態では、ポリペプチドは、アダリムマブ(HUMIRA)、インフリキシマブ(REMICADE(商標))、リツキシマブ(RITUXAN(商標)/MAB THERA(商標))、エタネルセプト(ENBREL(商標))、ベバシズマブ(AVASTIN(商標))、トラスツズマブ(HERCEPTIN(商標))、ペグフィルグラスチム(pegrilgrastim)(NEULASTA(商標))、またはバイオシミラーおよびバイオベターを含む任意の他の好適なポリペプチドである。
【0118】
[0127]他の好適なポリペプチドは、以下およびUS2016/0097074の表1に列挙されているものである。
【0119】
【0120】
【0121】
【0122】
【0123】
【0124】
【0125】
【0126】
[0128]複数の実施形態では、ポリペプチドは、表2に示すようなホルモン、血液凝固因子、サイトカイン/成長因子、抗体分子(molelcule)、融合タンパク質、タンパク質ワクチン、またはペプチドである。
【0127】
【0128】
【0129】
【0130】
【0131】
[0129]複数の実施形態では、タンパク質は多重特異性タンパク質、例えば表3に示すような二重特異性抗体である。
【0132】
【0133】
【0134】
【0135】
【0136】
【0137】
【0138】
[0130]本発明のこれらのおよび他の変更形態および変形形態は、当業者であれば、添付の特許請求の範囲により詳細に記載される本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく実施することができる。加えて、様々な実施形態の態様は全体的であれ部分的であれ交換することができるということが理解されるべきである。さらに当業者は、前述の説明は単に例に過ぎず、そのような添付の特許請求の範囲にさらに記載される本発明を限定することを意図するものではないということを理解するだろう。