(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】試験構造のための動的な試験経過を実行する試験台及び方法
(51)【国際特許分類】
G01M 99/00 20110101AFI20230801BHJP
G01M 15/02 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
G01M99/00 A
G01M15/02
(21)【出願番号】P 2020535178
(86)(22)【出願日】2018-12-28
(86)【国際出願番号】 EP2018097062
(87)【国際公開番号】W WO2019129835
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-12-23
(32)【優先日】2017-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】398055255
【氏名又は名称】アー・ファウ・エル・リスト・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(72)【発明者】
【氏名】ヴァダマル・ラージャ・サンギリ
(72)【発明者】
【氏名】バイドル・クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ビーア・マクシミーリアーン
【審査官】岡村 典子
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-300683(JP,A)
【文献】特開2017-122642(JP,A)
【文献】特開2007-163164(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 99/00
G01M 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験台(1)において試験構造(PA)のための動的な試験経過を実行する方法であって、試験構造(PA)が少なくとも1つのトルク発生装置(DE)を含んでおり、トルク発生装置は、試験台(1)において、少なくとも1つの連結要素(KE)を用いて少なくとも1つのトルク低減部(DS)に機械的に結合され、トルク発生装置(DE)、連結要素(KE)及びトルク低減部(DS)が、動的な特性を特徴付けるシステムパラメータ(SP)によって記述される、方法において、
動的な入力信号u(t)が試験構造(PA)に導入されることで試験構造(PA)が試験台(1)において動的に励起され、このとき、試験構造(PA)の入力信号(u(t))及び試験構造(PA)の生じる出力信号(y(t))の測定値(MW)が測定されること、検出された入力信号(u(t))及び出力信号(y(t))に基づき、パラメータによらない識別手法によって、出力信号(y(t))と入力信号(u(t))の間の試験構造(PA)の動的な特性の周波数応答(G(Ω
k))が算出されること、周波数応答(G(Ω
k))に基づき、入力信号(u(t))を出力信号(y(t))へ反映するパラメータによるモデルの
、周波数応答の分子多項式及び分母多項式の次数に対応するモデル構造が導出されること、モデル構造及びパラメータによる識別手法に基づき、試験構造(PA)の少なくとも1つのシステムパラメータ(SP)が算出されること、並びに少なくとも1つの識別されるシステムパラメータ(SP)が試験経過の実行のために用いられることを特徴とする方法。
【請求項2】
少なくとも1つのシステムパラメータ(SP)が、試験構造(PA)の少なくとも1つの構成要素のための調節器(R,R
D)の設計のために用いられることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1つのシステムパラメータ(SP)が、試験構造(PA)の少なくとも1つの構成要素のための調節器(R,R
D)についての目標値(SW)又は試験構造(PA)の少なくとも1つの構成要素のための調節器(R,R
D)へ供給される制御偏差(w)をフィルタするフィルタ(F)の設計のために用いられることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
時間にわたる少なくとも1つのシステムパラメータ(SP)の変化が監視されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
試験構造(PA)の動的な特性を所望の動的な特性へ適合させるために、少なくとも1つのシステムパラメータ(SP)が用いられることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
パラメータによらない識別手法において、入力信号(u(t))及び/又は出力信号(y(t))の測定ノイズが考慮されることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
パラメータによらない識別手法として、全ての周波数に対する周波数応答(G(Ω
k))を局所的周波数(Ω
k)について多項式によって近似する局所多項式法が用いられることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
パラメータによらない識別手法によって、出力信号(y(t))の測定ノイズの分散(σ
2
Y(k))及び/又は入力信号(u(t))の測定ノイズの分散(σ
2
U(k))及び/又は入力と出力の間の測定ノイズの共分散(σ
2
YU(k))が追加的に算出されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
周波数応答(G(Ω
k))に基づき、システムパラメータ(SP)として共振周波数(ω
R)及び/又は同調周波数(ω
F)が算出されることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
パラメータによる識別手法が、時間領域
又は周波数領域
で用いられることを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
時間領域では、予測誤差法(PEM)がパラメータによる識別手法として用いられることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
周波数領域では、最尤推定法がパラメータによる識別手法として用いられることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項13】
パラメータによる識別手法によってパラメータによるモデルのモデルパラメータ(θ)が算出され、少なくとも1つのシステムパラメータ(SP)を有する物理的なシステムモデルとパラメータによるモデルを比較することで、少なくとも1つのシステムパラメータ(SP)がモデルパラメータ(θ)に基づき算出されることを特徴とする請求項1~
12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
パラメータによるモデルがそれぞれモデルパラメータ(θ)を有する部分モデルへ分割され、少なくとも1つのシステムパラメータ(SP)を有する物理的な部分モデルと少なくとも1つの部分モデルを比較することで、少なくとも1つのシステムパラメータ(SP)が部分モデルのモデルパラメータ(θ)に基づき算出されることを特徴とする請求項1~
12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1つのトルク発生装置(DE)を有する試験構造(PA)のための動的な試験経過を実行する試験台であって、トルク発生装置が、少なくとも1つの連結要素(KE)を用いて、少なくとも1つのトルク低減部(DS)に機械的に結合されており、トルク発生装置(DE)、連結要素(KE)及びトルク低減部(DS)が、動的な特性を特徴付けるシステムパラメータ(SP)によって記述されている、試験台において、
試験台(1)に試験台制御ユニット(11)が設けられており、試験台制御ユニットは、試験構造(PA)に対する入力信号をあらかじめ設定することで試験台(1)における試験構造(PA)を動的に励起させ、試験構造(PA)の入力信号(u(t))及び生じる出力信号(y(t))の測定値(MW)を測定する測定センサ(MS)が試験台(1)に設けられていること、評価ユニット(12)が設けられており、評価ユニットは、検出された入力信号(u(t))及び出力信号y(t)に基づき、パラメータによらない識別手法によって、出力信号(y(t))と入力信号(u(t))の間の試験構造(PA)の動的な特性の周波数応答(G(Ω
k))を算出し、周波数応答(G(Ω
k))に基づき、入力信号(u(t))を出力信号(y(t))へ反映するパラメータによるモデルの
、周波数応答の分子多項式及び分母多項式の次数に対応するモデル構造を導出し、モデル構造及びパラメータによる識別手法に基づき、試験構造(PA)の少なくとも1つのシステムパラメータ(SP)を算出すること、並びに試験台制御ユニット(11)が、少なくとも1つの識別されるシステムパラメータ(SP)を、試験経過を実行するために用いることを特徴とする試験台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
具体的な本発明は、試験台において試験構造のための動的な試験経過を実行する試験台及び方法に関するものであり、試験構造は、試験台において連結要素を用いて少なくとも1つのトルク低減部に結合される少なくとも1つのトルク発生装置を含んでおり、トルク発生装置、連結要素及びトルク低減部は、動的な特性を特徴付けるシステムパラメータによって記述される。
【背景技術】
【0002】
例えば内燃エンジン又は電気モータのような駆動ユニットの開発、このような駆動ユニットを有するドライブトレーンの開発又はこのような駆動ユニットを有するドライブトレーン構成要素の開発は、主に試験台において行われる。同様に、通常、例えば排出特性のような法的な規定を満たすための車両の開ループ制御機能又は閉ループ制御機能のキャリブレーションも試験台において行われる。試験台における試験の実行のために、被試験物、すなわち駆動ユニット又はパワートレーン又はパワートレーン構成要素は、当該被試験物を負荷に抗して動作させることができるように、負荷機械(通常、電気モータ又はダイナモメータ(動力計)と呼ばれる)を有する試験台において試験構造へ結合される。通常、被試験物及び負荷機械の結合は、試験台軸、連結フランジなどのような連結要素を用いてなされる。被試験物、連結要素及び負荷機械から成る試験構造は、(例えば内燃エンジンの燃焼衝撃又は負荷跳躍による)適当な励起時にシステムの動的な特性に従って応答する動的なシステムを形成する。試験台における試験構造の所定の部分、特に連結要素の損傷又は破壊につながり得るクリティカルな状態が生じ得るため、当然、動的なシステムの固有周波数による励起は試験台においてクリティカルである。したがって、試験構造の動的な特性の認識は、試験台における試験の実行のために重要である。
【0003】
しかし、試験の実行のために試験構造の構成要素、特に負荷機械及び駆動ユニットを制御するために、調節器も用いられる。調節器の設定について、調節器特性をこれに適合させることができるように、及び/又は制御システムの安定性を確保するために、同様に試験構造の動的な特性の正確な認識も望ましい。
【0004】
特に、試験構造の直接測定されない量又は直接測定できない量を他のアクセス可能な又は利用可能な測定量に基づき演算するために、試験台ではしばしばいわゆる監視装置も用いられる。これについての一例は、駆動ユニットの内部トルク、すなわち実際に発生し出力されないトルクであり、当該トルクは、試験台において、試験経過のためにしばしば必要となるか、又は用いられる。
【0005】
調節器及び/又は監視装置の設定のために、通常、動的なシステムの、すなわち試験構造のモデルが必要であり、このことは、動的なシステムの十分な認識を前提としている。
【0006】
試験台における試験構造の動的な特性は、主に、試験構造の構成要素(特に被試験物及び負荷機械)の質量慣性と、場合によっては減衰(係数)、被試験物と負荷機械の間(すなわち試験構造の質量を有する構成要素間)の連結の剛性、例えば試験台軸の回転剛性とによって決定される。これらパラメータは、しばしば各構成要素に対して個々に決定されるか、又は各構成要素についてのデータシートに基づき既知である。しかし、これら既知のパラメータの使用は、実際には試験経過の実行においてしばしば不十分であり、しばしば良くない結果につながってしまう。その理由は、試験台では、しばしば、動的なシステムを変更する試験構造の機械的な構造における適応(改造)が行われることにある。例えば、他の測定センサ、例えば試験台軸におけるトルクセンサが用いられるか、又は試験台において機械的な構成要素が交換され、若しくは追加され、若しくは取り除かれる。例えば、試験構造の2つの構成要素間のアダプタフランジが変更され得る。しかし、試験構造の構成要素の特性は、劣化によっても変化することがあり、このことは、同様に動的なシステムの特性に影響を与える。
【0007】
動的な特性のパラメータを試験台において直接算出することが特許文献1から知られている。このために、試験構造は、疑似確率的な回転数励起によって動的に励起され、動的なシステムのモデルのパラメータ、例えば結合軸の剛性及び減衰(係数)は、識別理論の手法によって算出される。試験構造のモデルの識別されるパラメータにより、試験構造の特性を十分正確に記述することができ、当該特性は、監視装置又は調節器の設定にも、またシステムの監視にも用いられることが可能である。このアプローチにおいては、試験構造のパラメータによるモデル、すなわち動的なシステムのパラメータを含み、動的システムの入力特性/出力特性を反映するモデルが用いられる。ここで、パラメータは、動的なシステムの極(値)として算出される。当該方法の難点は、回転数励起に基づき、生じるトルクが動的なシステムの出力量として測定される必要があるが、このことは試験台においては実際には困難なことにある。それとは別に、仮定されるモデルのパラメータを算出することができるように、モデル構造の所定の仮定をあらかじめ行う必要がある。適切なモデル構造が選択されないと、現実の動的な特性が、制限されてのみ、又は不正確にモデルによって反映されてしまう。しかし、実際には、モデル構造の正確な選択は、とりわけ複数の質量及びそれらの間の連結部を有する複雑な試験構造においては困難な課題であるとともに、専門家によってのみ行うことができ、方法の応用性が制限される。さらに、識別時には測定信号(例えば測定される回転数)のノイズが考慮されず、これにより、より悪い識別結果となり得る。加えて、特許文献1における識別は、試験台における測定信号が閉じた制御ループにおいて測定されるにもかかわらず、開いたループにおいて行われる。これは、識別クオリティも低減させるものであり、特に、疑似確率的な回転数励起も、所望の周波数領域又は必要な周波数領域に設定されることができない。これにより、所定の周波数が全く励起されないか、又は必要な周波数よりも大きく励起されて同様に識別クオリティにネガティブな影響を与え得るということとなりかねない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】独国特許出願公開第102006025878号明細書
【非特許文献】
【0009】
【文献】L.Ljung著、「System Identification:The Theory for the User」、第2版、Prentice Hall PTR、1999年
【文献】Thomas Kuttner著、「Praxiswissen Schwingungsmesstechnik」、Springer Vieweg、2015年、p325~335
【文献】R.Pintelonら著、「Estimation of non-paramteric noise and FRF models for multivariable systems-Part I:Theory」、Mechanical Systems and Signal Processing,volume 24, Issue 3,p573~595
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、具体的な本発明の課題は、試験台の試験構造のシステムパラメータの識別を、特に識別のクオリティに関して改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明により、当該課題は、動的な入力信号が試験構造に導入されることで試験構造が試験台において動的に励起され、このとき、試験構造の入力信号及び試験構造の生じる出力信号の測定値が測定され、検出された入力信号及び出力信号に基づき、パラメータによらない識別手法によって、出力信号と入力信号の間の試験構造の動的な特性の周波数応答が算出され、周波数応答に基づき、入力信号を出力信号へ反映するパラメータによるモデルのモデル構造が導出され、モデル構造及びパラメータによる識別手法に基づき、試験構造の少なくとも1つのシステムパラメータが算出され、少なくとも1つの識別されるシステムパラメータが試験経過の実行のために用いられることによって解決される。これにより、必要なシステムパラメータのシステマティックな識別が可能となり、第1に試験構造の動的な特性の基礎となる特徴付けが行われ、当該特徴付けに基づき、試験構造の基礎となるモデル構造を導出することが可能である。これにより、パラメータによらない識別によって、試験構造の複雑性にかかわらずモデル構造の適切な選択を保証することが可能である。そして、システムパラメータを算出するために、後続のパラメータによる識別はモデル構造の認識を用いる。追加的な利点は、パラメータによらない識別も、またパラメータによる識別も、同一の測定量を用いており、これにより、識別方法の実行が容易となるという点に見ることができる。
【0012】
ここで、パラメータによらない識別手法においては、入力信号及び/又は出力信号の測定ノイズも考慮することができ、これにより、識別クオリティを改善することが可能である。加えて、パラメータによらない識別手法によって、出力信号の測定ノイズの分散及び/又は入力信号の測定ノイズの分散及び/又は入力と出力の間の測定ノイズの共分散を算出することが可能である。そして、当該分散は、パラメータによる識別方法における使用にも用いられる。
【0013】
有利には、パラメータによる識別手法によって、パラメータによるモデルのモデルパラメータが算出され、これに基づき、少なくとも1つのシステムパラメータを有する物理的なシステムモデルとパラメータによるモデルを比較することで、試験構造のシステム構成要素の少なくとも1つのシステムパラメータが算出される。このことは、パラメータによるモデルがそれぞれモデルパラメータを有する部分モデルへ分割され、少なくとも1つのシステムパラメータを有する物理的な部分モデルと少なくとも1つの部分モデルを比較することで、少なくとも1つのシステムパラメータが部分モデルのモデルパラメータに基づき算出される場合に容易となり得る。
【0014】
少なくとも1つの識別されるシステムパラメータは、少なくとも1つのシステムパラメータが試験構造の少なくとも1つの構成要素のための調節器の設計に用いられることで、あるいは、少なくとも1つのシステムパラメータが、試験構造の少なくとも1つの構成要素のための調節器についての目標値又は試験構造の少なくとも1つの構成要素のための調節器へ供給される制御偏差をフィルタするフィルタの設計のために用いられることで、あるいは、時間にわたる少なくとも1つのシステムパラメータの変化が監視されることで、あるいは、試験構造の動的な特性を所望の動的な特性へ適合させるために、少なくとも1つのシステムパラメータが用いられることで、試験経過の実行のために用いられることが可能である。
【0015】
以下に、具体的な本発明を、例示的、概略的、かつ、制限せずに本発明の有利な形態を示す
図1~
図6を参照しつつ詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】試験構造としてのデュアルマス振動器を有する試験台を示す図である。
【
図2a】デュアルマス振動器の周波数応答の例を示す図である。
【
図2b】デュアルマス振動器の周波数応答の例を示す図である。
【
図3】試験構造の構成要素を制御する調節器を示す図である。
【
図4】試験台において試験経過を実行するフィルタの使用を示す図である。
【
図6】試験台における本発明の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、試験経過を実行するために、
図1における単純な場合において図示されているように、例えば内燃エンジン2のような駆動ユニットであるトルク発生装置DEを有する被試験物と、負荷としての、これに結合されたトルク低減部DS、例えば負荷機械3(ダイナモメータ)とを有する試験台1における試験構造(被試験装置)PAを基礎としている。しかし、トルク発生装置DE、例えば内燃エンジン2は、内燃エンジン2を有するドライブトレーンであっても、及び/又は電気モータであっても、又はこれらの一部であってよい。被試験物は、少なくとも1つのトルク低減部DEを含んでいる。トルク発生装置DE及びトルク低減部DSは、少なくとも1つの連結要素KE、例えばトルクを伝達する試験台軸4を介して互いに機械的に結合されている。連結要素4も、測定に関わる複数の重要な機械的な構成要素、例えば連結フランジ、ギヤ装置などを含み得る。これにより、試験構造PAは、原動力に影響を及ぼす構成要素に関して適宜複合的となり得る。試験構造PAの動的な特性は、公知の態様で、主に試験構造PAの構成要素の質量慣性Jによって(すなわち測定に関わる重要な部分によって)、及びその間の連結の態様(剛性c、減衰係数d)において決定される。このような試験構造PAによって試験を実行するにあたって、試験構造PAの動的な特性を知るために、動的なシステムパラメータを知ることが重要である。例えば、試験構造PAの共振周波数ω
Rを知ることは、共振周波数ω
Rの範囲における励起を回避するために重要である。これに基づき、試験台1における試験過程により、被試験物が実際の車両に組み込まれていて実際の車両と共に移動するときに生じる被試験物の特性が再現されるべきである。したがって、この関係において、現実に近い試験経過を可能とするために、試験台1における被試験物の動的な特性が車両における動的な特性にほぼ対応することが重要である。試験構造PAの動的なシステムパラメータが既知であれば、試験台1における動的な特性を現実の特性に適合させるために、試験台1において意図的に措置、例えば、更なる、若しくは別の質量、剛性及び/若しくは減衰部のような機械的な措置、又はフィルタ及び/若しくは調節器を付加するような制御技術的な措置をとることができる。試験構造PAの所定の構成要素、例えば負荷機械3のためのダイノ調節器を制御するために可能な調節器の設定についても、調節器特性を試験構造PAの具体的な動的な特性に最適に適合させることができるように、システムパラメータが必要である。
【0018】
本発明は、動的な特性を記述する動的なシステムパラメータ、特に躯体的な試験構造PAの、質量慣性モーメントJ、回転剛性c、回転減衰係数d、共振周波数ωR又は同調周波数ωTが少なくとも部分的に既知ではなく、試験台1における試験の実行前に特定されるべきであるということに基づいている。
【0019】
このために、本発明によれば、まず、パラメータによらない識別手法によって、試験構造PAの動的な特性の基礎となる特徴が特定され、これに基づき、試験構造PAのモデルのモデル構造が、動的な特性を記述する試験構造PAのシステムパラメータSPによって導出される。つづいて、システムパラメータSPを有するモデル構造に基づき、パラメータによる識別手法を用いてモデルのシステムパラメータSPが特定される。パラメータによらない識別時には、測定された入力信号u(t)及び測定された出力信号y(t)のみが検査される。
【0020】
パラメータによらない識別手法に基づき、(振幅及び場合によっては相により周波数を介して特徴付けられた)試験構造PAの周波数応答が検出される。周波数応答のために、物理的な動的システム(ここでは試験構造)が公知のように所定の周波数成分を有する動的な信号u(t)(入力信号)によって励起され、試験構造PAにおける応答y(t)(出力信号)が測定される。入力信号u(t)は例えばトルク低減部DS(例えば負荷機械3)の回転数ω
Dであり、出力信号y(t)は例えば試験台軸4における軸モーメントT
sh又はトルク発生装置DEの回転数ω
Eである。典型的には、所定の測定量(入力信号u(t)、出力信号y(t))を検出するために、試験台1には測定センサMS(
図6)、例えば、
図1に図示されているような、負荷機械3の回転数ω
Dを検出する回転数センサ5及び/又は軸モーメントT
shを検出するトルクセンサ6も試験台1に設けられている。例えばトルク発生装置DE(例えば内燃エンジン2)の回転数ω
E若しくは生成されるトルクT
E又はトルク低減部DSのトルクT
Dのような他の測定量も測定技術的に検出されることが可能である。
【0021】
しかし、このとき、入力信号u(t)として用いられるもの及び出力信号y(t)として用いられるものは決定的なものではない。以下に説明する手法は、これとは独立したものである。
【0022】
入力信号u(t)及び出力信号y(t)のフーリエ変換によって、公知の態様で周波数応答が算出される。周波数k=jωkにおける入力信号u(t)のフーリエ変換がU(k)で示され、周波数k=jωkにおける出力信号y(t)のフーリエ変換がY(k)で示される場合には、出力信号y(t)のフーリエ変換Y(k)及び入力信号u(t)のフーリエ変換U(k)に基づく商として周波数応答G(k)が得られる。このとき、入力信号u(t)及び出力信号y(t)のノイズを考慮することも知られている。ノイズは、例えば物理量の測定時の測定ノイズに基づき、試験台における目標値設定と試験台における目標値の調整の間の偏差やプロセスノイズなどによって生じる。入力部におけるノイズをnu(t)で示し、出力部におけるノイズをny(t)で示せば、入力信号u(t)は、時間範囲においてu(t)=u0(t)+nu(t)又は周波数領域においてU(k)=U0(k)+Nu(k)と記載されることができ、出力信号y(t)も、ノイズのない信号u0,yoあるいはU0,Y0及びノイズ信号nu,nyあるいはNu,Nyによって、時間範囲においてy(t)=y0(t)+ny(t)又は周波数領域においてY(k)=Y0(k)+Ny(k)と記載されることができる。
【0023】
入力部ノイズ及び出力部ノイズが存在する場合に周波数応答Gを近似させるために、公知の様々な、パラメータによらない識別手法、例えばスペクトル解析又は局所多項式法(Local Polynom Method、LPM)が存在する。例えば非特許文献1又は非特許文献2に記載されているように、スペクトル解析の場合には、周波数応答の振幅スペクトル又は出力スペクトルが評価される。局所多項式法は、例えば、非特許文献3に記載されている。以下に、周波数応答Gの検出(算出)を、LPMの例において簡単に説明する。
【0024】
LPMにおいては、周波数応答Gが、局所的周波数kについて局所的に多項式によって近似される。これは、周波数応答Gの全ての周波数jωkについて行われる。時間的に連続な場合についてのΩk=jωkと時間的に不連続な場合のΩk=e-jωkによって一般的な周波数Ωkが用いられれば、動的なシステム(試験構造PA)の入力-出力特性は、以下のように記述され得る。
Y(k)=G(Ωk)U(k)+T(Ωk)+V(k)
【0025】
ここで、G(Ωk)は動的なシステムの伝達関数のフーリエ変換(すなわち選択された入力と出力の間の周波数応答)を表し、T(Ωk)は励起に帰さない周波数Ωk,dについての出力における過渡的誤差を表し、V(k)は出力信号の測定ノイズを表している。ここで、U(k)及びY(k)は、測定された入力信号u(t)及び出力信号y(t)のフーリエ変換である。
【0026】
周波数Ωkに依存した量は、局所的周波数Ωkについての局所多項式によって近似される。Ωkについての周波数は変数r=-n,-n+1,…,nによって示され、ここで、nはあらかじめ設定されるか、又は選択される。これにより以下となる。
【0027】
【0028】
ここで、gs及びtsは、(選択又はあらかじめ設定される)次数の局所多項式の2(R+1)の未知のパラメータを表す。これにより、各周波数kについてのrに基づき、2(R+1)の未知数(gs,ts)について全部で2n+1の方程式が得られる。パラメータベクトル
Θ(k)=[G(Ωk)g1(k)g2(k)LgR(k)T(Ωk)t1(k)t2(k)LtR(k)]
により、2n+1の方程式が、行列
【0029】
【0030】
によって、行列式
Y(k)≒Φ(k)Θ(k)
で記述される。ここで、周波数kについて生じる2n+1の方程式は、それぞれ互いに重ね合わされている。この手法の利点は、過渡的な部分T(Ωk)が、直接共に推定されることができるとともに、例えばスペクトル解析のようにある程度の周波数範囲についてのウィンドウアプローチによって特定される必要がないことである。
【0031】
そして、パラメータベクトルΘ(k)は、例えば方程式
Θ^(k)=[Φ(k)HΦ(k)]-1Φ(k)HY(k)
に基づくパラメータ推定による最小二乗(近似)法の意味合いにおいて推定されることができ、「()H」は、随伴行列(転置共軛)を表す。
【0032】
最小二乗(近似)法の生じる残り
e(Ωk+1)=Y(k+r)-[G(Ωk+1)U(k+r)+T(Ωk+1)]
によって、出力信号の測定ノイズの分散σ2
Y(k)を共に計算することが可能である。
【0033】
【0034】
当該近似は、周波数応答G^(Ωk)及び過渡的な部分T^(Ωk)についての直接的な推定も提供する。以下では、「^」によって常に推定を表す。何を入力信号U(k)及び出力信号Y(k)として用いるかに応じて、当然、異なる周波数応答G^(Ωk)が得られる。
【0035】
更にノイズを有する入力信号u(t)の場合又はノイズを有する出力信号y(t)の入力へのフィードバックの場合(例えば閉じた制御回路の場合)にも、同様にノイズを有する入力信号u(t)をもたらすものを、カバーすることが可能である。入力ノイズが存在するときにパラメータ推定におけるシステム上の誤差を回避するために、この場合、パラメータ推定は、有利には閉じた制御回路において行われる。この点では、これは本質的な限定ではない。なぜなら、試験台1における試験構造PAのような技術的なシステムは、通常、閉じた制御回路において動作するためである。ここで、閉じた制御回路のための目標値設定に対応する基準信号s(t)(あるいはフーリエ変換S(k))を出発点とする。入力信号u(t)と基準信号s(t)の間の関係は、制御回路の伝達関数R及び実際の実際値yistによって、u=(s-yist)・Rについて得られる。そして、例えば上述のように、入力U(k)への基準信号の周波数応答Gru(Ωk)及び出力Y(k)への基準信号の周波数応答Gry(Ωk)が算出され、これは、Grz(Ωk)=[Gry(Ωk)Gru(Ωk)]Tによって、推定される周波数応答G^ru(Ωk)及びG^ry(Ωk)となる。VY(k)によって出力信号Y(k)の測定のノイズが表され、VU(k)によって入力信号U(k)の測定ノイズが表される。Z(k)=[Y(k)U(k)]T及びVZ(k)=[VY(k)VU(k)]Tによって、システム方程式を
Z(k)=Grz(Ωk)R(k)+Trz(Ωk)+VZ(k)
の形態で記述することができ、ここで、
Trz(Ωk)=[Try(Ωk)Tru(Ωk)]T
は、入力及び出力における過渡的なシステム誤差を表す。入力ノイズ及び出力ノイズが存在する場合の周波数応答G^(Ωk)の推定は、
G^(Ωk)=G^ry(Ωk)G^-1
ru(Ωk)
から得られる。
【0036】
出力ノイズの場合と同様に、入力ノイズ及び出力ノイズの場合にも、出力信号の測定ノイズの分散σ2
Y(k)と、入力信号の測定ノイズの分散σ2
U(k)と、入力と出力の間のノイズの共分散σ2
YU(k)とを算出することが可能である。
【0037】
動的なシステムの励起のために、内燃エンジン2のようなトルク発生装置DEは、好ましくはけん引されずに、したがって点火されずに動作する。点火される内燃エンジン2のように、励起時にアクティブに動作されるトルク発生装置DEも可能であるものの、このことは、識別をより複雑にするものである。なぜなら、トルク発生装置DE自体が回転振動をもたらすためである。したがって、好ましくは、トルク発生装置DEに結合されたトルク低減部DS、すなわち構成により電気モータとしても駆動可能な負荷機械3が励起のために用いられ、回転数振動が励起のために加えられる。励起は、例えば(各時点において同時に複数の周波数が励起される)マルチサイン信号又は(各時点において例えば線形の周波数増加により周波数が励起される)チャープ信号のような様々な信号によって励起されることができる。励起信号は、励起動作のための試験台1に対する目標値設定である。例えば、励起信号として、負荷機械3の調節器のための回転数目標値設定があらかじめ設定される。
【0038】
それぞれ周波数応答G(Ω
k)の振幅A=|G(Ω
k)|を示す
図2a及び
図2bに基づき説明されるように、周波数応答G(Ω
k)に基づき、動的なシステムのいくつかの重要な特性を導出することができる。
図2aでは、負荷機械3のトルクT
Dによる周波数応答G(Ω
k)が入力u(t)として示され、負荷機械3の回転数ω
Dが出力y(t)として示され、
図2bでは、負荷機械3のトルクT
Dによる周波数応答G(Ω
k)が入力u(t)として示され、内燃エンジン2の回転数ω
Eが出力y(t)として示されている。これは、励起時に入力u(t)及び出力u(t)が測定され、上述のように、これに基づき、そのフーリエ変換U(k),Y(k)から周波数応答G(Ω
k)が算出されることを意味する。ここで、当然、例えばどの測定量が存在するかに応じて、様々な入力信号/出力信号の組合せを用いることが可能である。
【0039】
周波数応答G(Ω
k)に基づき、例えば共振周波数ω
R及び/又は同調周波数ω
Fを導出することが可能である。両周波数は、周波数応答G(Ω
k)における最小値及び最大値並びに勾配を算出することで算出されることができる。したがって、1つの同調周波数ω
Tは、負から正への勾配転換を有する最小値である。1つの共振周波数ω
Rは、正から負への勾配転換を有する最大値である。当然、周波数応答G(Ω
k)において、複数の同調周波数ω
T及び/又はu共振周波数ω
Rが生じ得るし、あるいはこれらが生じることもない。さらに、周波数応答G(Ω
k)からゼロ位置についての情報も導出することが可能である。基本的には、様々なシステム、例えばデュアルマス振動系(
図2a,
図2b)又はマルチマス振動器についての特徴的な周波数応答が知られている。既知の周波数応答を算出された周波数応答G(Ω
k)と比較することで、所定のモデル構造を推定することが可能である。周波数応答G(Ω
k)が分母多項式に対する分子多項式の形態で示されることができることから、当該比較に基づき、例えば(モデル構造に対応する)分子多項式及び分母多項式の次数を設定することが可能である。共振周波数ω
Rの数に基づいても、モデル構造への逆推定を行うことが可能である。ここで、通常、共振周波数ω
Rの数は、振動可能な質量の数-1に対応している。したがって、デュアルマス振動系は、(例えば
図2a及び
図2bにおけるように)共振周波数ω
Rを有している。
【0040】
したがって、(振動可能な質量及びこれらの間の機械的な結合を有する)様々なシステム構成について、既知の異なる特徴的な周波数応答G(Ωk)が生じる。特徴的な周波数応答G(Ωk)は、推定される周波数応答G^(Ωk)の比較によって、当該の試験構造PAのモデル構造を推定することができるように、例えばメモリされることが可能である。
【0041】
そのほか、
図2a及び
図2bにはそれぞれ算出された分散σ
2
YU(k)も示されている。
【0042】
当該措置における利点は、パラメータによらない識別のために、例えばモデル構造の選択について、とりわけ試験台1におけるトルクの測定なしで済むことにもある。これにより、簡易な態様で、特に試験構造PAへのトルク測定フランジの収容なしに、試験台1における試験構造PAの動的な特性の第1の推定が可能となる。
【0043】
本発明によれば、動的な技術的なシステム(試験構造PA)の動的な入力-出力特性が試験構造PAの動的な特性を記述するシステムパラメータSPを有するモデルによって近似される、パラメータによる識別手法がパラメータによらない識別手法に追従する。このためにも、時間領域においても、また周波数領域においても既知の手法が存在し、これについて以下に簡単に説明する。
【0044】
パラメータによる識別は、モデルパラメータθを有する動的なシステムのモデルに基づいており、当該モデルは、入力u(k)及び外乱に基づき出力y(k)を演算する。出力y(k)への入力u(k)の変換は、システムモデルパラメータgθ及びバックシフト演算子q-kを有するシステムモデル
【0045】
【0046】
によってなされる。ここで、(例えば測定ノイズによる)外乱は、
【0047】
【0048】
及びノイズモデルパラメータhθをもって、外乱モデルH(q,θ)及び確率分布e又は確率密度関数feによってモデル化されることができる。ここで、ここでのkはパラメータによらない識別におけるように周波数を表すものではなく、時間離間信号の時間インデックス、例えばu(k)及びy(k)を表すものであることに留意すべきである。そして、動的なシステムのモデルは、時間離散表示において
y(k)=G(q,θ)u(k)+H(q,θ)e(k)
として記述されることが可能である。したがって、目標は、当該モデルによって、時点kでの出力y(k)を、入力u及び出力yの、時点k-1までの(すなわち過去のデータ)既知の過去のデータに基づいて推定することである。データZK={u(1),y(1),…,u(k-1),y(k-1),u(k),y(k)}を利用可能である。このために、様々な既知のアプローチが存在する。
【0049】
時間領域におけるパラメータによらない識別手法についての一例は、例えば非特許文献1に記載されているように、いわゆる予測誤差法(PEM)である。周波数領域における公知の手法は、最尤推定法(MLE)である。
【0050】
PEMでは、動的なシステムのモデル
【0051】
【0052】
を出発点とし、ここで、θは、モデルパラメータである。ここで、v(k)は、有色ノイズである。確率分布e(k)としてホワイトノイズが用いられれば、有色ノイズv(k)は、
【0053】
【0054】
としても記述されることが可能である。ここで、m(k-1)は、時点(k-1)までの平均値である。これは、Hの逆(関)数Hinvを用いて、
m(k-1)=v^(k|k-1)=(H(q,θ)-1)e(k)=(1-Hinv(q,θ))v(k)
という形態で書き換えられることができる。そして、データZKに基づく出力y^(k|k-1)の推定は、以下の形態で記述されることが可能である:
y^(k|θ,ZK)=G(q,θ)u(k)+v^(k|k-1)=Hinv(q,θ)G(q,θ)u(k)+(1-Hinv(q,θ))y(k)
そして、推定誤差は、
ε(k,θ)=y(k)-y^(k,θ)
について得られる。モデルパラメータθを算出するために、重み付けされた推定誤差を最小化するコスト関数J(θ,ZK)を記述することができる。このために、例えば数学的なノルムl()、例えば重み付けされた推定誤差のユークリッドノルム(2-Norm)l()=||()||2を用いることができる。
εF(k,θ)=F(q)ε(k,θ)
が重みF(q)を有する重み付けされた推定誤差を表す場合には、コスト関数は、例えば
【0055】
【0056】
として記述されることができる。当該コスト関数Jは、モデルパラメータθを推定するために最小化される:
θ^=argθminJ(θ,ZK)
モデルパラメータθに基づき、動的なシステムの求められるシステムパラメータSPを決定するために、時間離散モデル
y(k)=G(q,θ)u(k)+H(q,θ)e(k)
は、有利な実際の実施において、多項式
A(q)=1+a1q-1+…+anaq-na
B(q)=1+b1q-1+…+anbq-nb
C(q)=1+c1q-1+…+ancq-nc
によって、また
【0057】
【0058】
(ARMAXモデル)の形態で記述されることが可能である。モデルパラメータθは、 θ=[a1…ana b1…bnb c1…cnc]
について得られる。これは、ホワイトノイズe(k)の場合には、
θ=[a1…ana b1…bnb]
により
【0059】
【0060】
(ARXモデル)へ低減される。多項式A,B,Cの次数na,nb,ncは、パラメータによらない識別によって設定されたモデル構造によれば、あらかじめ設定されている。
【0061】
例えば
図1による試験構造の場合のようなデュアルマス振動器においては、分母多項式A(q)として、次数n
a=2を有する多項式が得られ、分子多項式B(q)として次数n
b=1を有する多項式が得られる。
【0062】
求められるシステムパラメータSPに至るために、時間離散モデルにおけるモデルパラメータの等価性及び動的なシステムの物理モデルのパラメータから出発する。
【0063】
例えば、
図1による試験構造PAは、(質量慣性J
Eを有する)内燃エンジン2、(回転剛性c及び回転減衰係数dを有する)試験台軸4及び(質量慣性モーメントJ
Dを有する)負荷機械3と共に物理的にモデル化されることが可能である。
【0064】
【0065】
他の一例は、入力信号ω
D及び出力信号ω
Eを有する
図1によるデュアルマス振動器において得られ、これは、モデル
【0066】
【0067】
をもたらす。当然、この場合、周波数応答Gもこの入力信号及び出力信号によって算出される。ここで、様々な入力信号及び/又は出力信号において様々なモデルも得られることが分かる。これら方程式は、時間離散した表記とすることができ、これにより、推定されたモデルパラメータ
θ=[a1…ana b1…bnb]
とのシステムパラメータSP(JE,c,d,JD)の比較が可能となる。これに基づき、システムパラメータSP(JE,c,d,JD)を算出することが可能である。
【0068】
周波数応答Gに基づきモデル構造が既知となっていることから、モデルを部分モデルに分割することも可能であり、これにより、システムパラメータSP(JE,c,d,JD)の算出が容易となる。デュアルマス振動器は、例えば内燃エンジン2のための第1の部分モデルと、試験台軸4のための第2の部分モデルと、負荷機械3のための第3の部分モデルとに分割されることが可能である。これにより、時間離散したモデルを適当な部分モデルに分割することも可能であり、これにより、部分モデルの次数が相応して低減される。そして、部分モデルのモデルパラメータは、上述のように推定される。
【0069】
同様に、物理的な部分モデルが用いられ、以下に、これをデュアルマス振動器の例において説明する。
【0070】
第1の部分モデルについて、内燃エンジン2(
図1)についてのモーメント平衡が、ラプラス演算子s、内燃エンジン2の回転数ω
E、内燃エンジン2の内部トルクT
E及び軸モーメントT
shを用いて、時間離散した表記で
【0071】
【0072】
の形態で記述される。内燃エンジン2が好ましくはけん引して動作されることから、モデル構造の確率的でない部分TE=0が得られ、したがって、既知のサンプリング時間Ts(典型的にはkHzの範囲)によって、時間離散した表記において
【0073】
【0074】
又は
【0075】
【0076】
が得られる。そして、比較によって、第1のモデルに基づきa1=-1及びb1=Ts/JEが得られ、これに基づき、システムパラメータJEが算出され得る。これにより、パラメータ推定のクオリティの評価も可能となる。推定されるモデルパラメータa1が1近傍にあれば、高い識別クオリティと考えることができる。
【0077】
内燃エンジン2と負荷機械3の間の結合のシステムパラメータSPと、回転減衰係数dと、回転剛性cとを決定するために、試験台軸4のための第2の部分モデルが考慮に入れられる。解放された試験台軸4におけるトルク平衡に基づき、負荷機械3の回転数ωDを有するΔω=ωE-ωDによって記述されることができるか、又はTE=0の仮定によって、
【0078】
【0079】
又は時間離散した表記において
Tsh(k)-Tsh(k-1)=(-cTs+d)Δω(k)-dΔω(k-1)
で記述され得る。比較により、第2の部分モデルのモデルパラメータに基づき、システムパラメータa1=-1,b1=-(cTs+d)及びb2=-dが再び得られ、これに基づき、求められるシステムパラメータc,dを再び決定することが可能である。ここで、当然、第2の部分モデルのモデルパラメータa1,b1は、第1の部分モデルのモデルパラメータに対応していない。
【0080】
同様に、システムパラメータJDを算出するために、負荷機械3のための第3の部分モデルを用いることが可能である。負荷機械の質量慣性JDは、デュアルマス振動器について、当然、パラメータによらない識別から既知である共振周波数ωRに基づき、例えば
【0081】
【0082】
として算出されることが可能である。しばしば、負荷機械3の質量慣性JDは既知であるため、既知の質量慣性により、識別クオリティの調整も行うことが可能である。
【0083】
上述のように、パラメータによる識別は、例えばMLEを用いて周波数領域においても行うことが可能である。MLEにおいては、いわゆる尤度関数を最大化するモデルパラメータθが推定される。以下に、当該それ自体公知の方法を簡単に説明する。
【0084】
MLEは、出力信号y=y1,y2,…,yNの測定データと、モデルパラメータθによって記述され、既知であるとみなされる、出力における測定ノイズの対応する確率密度関数fnyとを用いる。f(y|θ0)は、推定問題における偶然に依存する部分の確率密度関数を記述する。励起及びパラメータを記述する仮定のモデルy0=G(u0,θ)によって、出力における測定ノイズの場合の尤度関数を
f(y|θ0)=fny(y-y0)
として記述することができる。ここで、u0は、ノイズのない入力を表している。そして、既知でないモデルパラメータθは、尤度関数fの最大化によって算出され得る:
θ^(N)=argθmaxf(y|θ,u0)
入力における追加的な測定ノイズの場合には、入力における測定ノイズの確率密度関数fnuによって、尤度関数を
f(y,u|θ,y0,u0)=fny(y-y0)fnu(u-u0)
として記述することができる。
【0085】
入力及び出力におけるノイズが平均値ゼロを有し、正規分布に従い、周波数に依存しないという仮定の下では、ガウスのコスト関数
【0086】
【0087】
(尤度関数)を記述することができる。ここで、θはパラメータベクトルであり、Z(k)=[Y(k)U(k)]は、入力U(k)及び出力Y(k)の存在する測定データを表す。eは形態
e(Ωk,θ,Z(k))=Y(k)-G(Ωk,θ)U(k)
での全ての周波数Ωkにわたる誤差を表し、σeは
【0088】
【0089】
の形態での誤差eの共分散を表す。ここで、Reは、実部を表している。
【0090】
分かるように、上記方程式には、入力σ2
U(k)、出力σ2
Y(k)及び入力-出力σ2
YU(k)における測定ノイズの分散及び共分散が必要である。有利には、上述のように、これらをパラメータによらない識別に基づいて得ることができる。
【0091】
コスト関数VML(尤度関数)の最大化の得られる最適化問題は非線形であることから、最適化は、例えば知られたレーベンバーグ・マーカート法(Levensberg-Marquardt法)によって解かれる。最適化の最適性の分散は、本質的に最適化の初期値に依存する。初期値として、求められるシステムパラメータSPの推定値を考慮に入れることができるか、又は例えば一般化総最小二乗法に基づく他の公知の初期化方法を応用することができる。
【0092】
パラメータによる伝達関数
【0093】
【0094】
が用いられれば、MLEについてのコスト関数を、
【0095】
【0096】
と書き換えることができる。
【0097】
ここで、A及びBは再び多項式
A(q)=1+a1q-1+…+anaq-na
B(q)=1+b1q-1+…+bnbq-nb
である。多項式の次数na,nbは、再びパラメータによらない識別により推定された周波数応答G^(Ωk)に基づき得られる。これにより、最適化に基づき、再びモデルパラメータ
θ=[a1…ana b1…bnb]
が得られ、当該モデルパラメータは、システムパラメータSP(JE,c,d,JD)に至るように、ここでも動的システム(試験構造PA)の物理的なモデルとの比較に基づいて比較される。同様に、システムパラメータSP(JE,c,d,JD)を単純化するために、再び部分モデルも用いることが可能である。
【0098】
Z変換による時間離散した表記における内燃エンジン2及び試験台軸4のための部分モデルは、
【0099】
【0100】
及び
【0101】
【0102】
について得られ、これに基づき、システムパラメータSP(JE,c,d,JD)は、推定された部分モデルに基づき、
【0103】
【0104】
【0105】
、d=-bsについて得られる。
【0106】
したがって、これにより、パラメータによる識別は、励起された動的なシステム(例えば
図1に示されるような試験構造PA)のシステムパラメータSP(J
E,c,d,J
Dデュアルマス振動器の場合)を提供する。少なくとも1つのシステムパラメータSPによって、試験構造の所定の構成要素のための調節器、例えば負荷機械3のための回転数調節器又は内燃エンジン2のためのトルク調節器は、従来の調節器設計手法により設計されることができる。
【0107】
図3には、
図1による試験構造PAのための例示的な閉じた制御回路が図示されている。制御システム10は、内燃エンジン2の質量慣性モーメントJ
E及び負荷機械3の質量慣性モーメントJ
Dを有する試験構造PAを表している。試験台軸4は、回転剛性c及び回転減衰係数dによって表される。システムパラメータSPは、上記パラメータによらない/パラメータによる識別によって算出された。負荷機械3は、ダイノ調節器R
D(例えばPI調節器)によって回転数制御される。このために、目標回転数ω
Dsollがあらかじめ設定される。生じる実際の回転数ω
Dは、試験台1において測定される。制御誤差(制御エラー)ω
Dsoll-ω
Dは、ダイノ調節器R
Dによって、設定された制御特性に従って修正される。ここで、具体的な動的なシステムにおける所望される制御特性を調整するための調節器パラメータは、十分に知られた調節器設計手法によって設定されることが可能である。
【0108】
パラメータによらない識別により算出された、同様にシステムパラメータSPを示す共振周波数ω
Rは、試験台1におけるあり得る共振を阻止すべきフィルタFを設計するために用いられることが可能である。フィルタFの目的は、共振周波数ω
Rによる励起を阻止することである。試験台1における試験構造PAの動的な特性にフィルタFによってできる限りわずかに影響を与えるために、狭い周波数領域内の周波数を除去する、例えばいわゆるノッチフィルタ(Notch Filter)であるフィルタFは、このために考慮に値する。このために、周波数が狭い周波数領域において共振周波数ω
Rだけ除去されるように設計される。このようなフィルタFは、試験構造PAの構成要素のための調節器R、例えばダイノ調節器R
Dの手前で、調節器Rに供給される制御偏差w(制御量の目標値SWと実際値IWに基づく偏差)をフィルタするために用いられることができるか(
図4)、又は調節器Rについての目標値SW(例えば目標回転数ω
Dsoll)をフィルタするためにも用いられることが可能である(
図4における破線で示唆)。
【0109】
識別されるシステムパラメータSP(ωR,JE,c,d,JD)又はこれらのうち少なくとも1つは、試験構造の測定不能な量、例えば内燃エンジン2の内部の有効なトルクTEを推定するために、監視部のためにも用いられることが可能である。
【0110】
識別されるシステムパラメータSP(ωR,JE,c,d,JD)又はこれらのうち少なくとも1つも、例えば劣化、損傷、構成変更などにより試験構造PAにおける変更を設定するために用いることが可能である。このために、システムパラメータSP(JE,c,d,JD)は、定期的な間隔で新たに算出されることができるとともに、システムパラメータSP(JE,c,d,JD)の時間的な変化を監視することが可能である。ここで、通常でない、又は不所望の変化が特定される場合には、試験経過を適合(改変)又は中断することが可能である。
【0111】
特に、少なくとも1つの識別されるシステムパラメータSPを変更するために、また試験台1における所望の動的な特性を表すために、試験構造PAも試験自体の実行のために変更されることが可能である。このことは、例えば、試験構造PAのトルク発生装置DEが用いられるべき車両の動力へ試験台1における試験構造PAの動力を適合するために用いることができる。
【0112】
図6には、試験構造PA、例えば
図1のようなデュアルマス振動器を有する試験台1が示唆されている。試験構造PAにおいては、適切な測定センサMSによって、動的な励起時に必要な入力信号u(t)及び出力信号y(t)についての測定値WMが検出され、このことは、当然、信号u(k),y(k)の時間離散した検出も含む。評価ユニット12(ハードウェア及び/又はソフトウェア)では、測定値WMに基づき、上述のように、試験構造PAの必要なシステムパラメータSP、例えばJ
E,c,d,J
Dが算出される。少なくとも1つの識別されるシステムパラメータSPは、試験台制御ユニット(ハードウェア及び/又はソフトウェア)において、試験構造PAを有する試験台1における試験経過の実行のために用いられる。評価ユニット12及び試験台制御ユニット11は、当然、共通のユニットにおいて統合されることも可能である。試験構造PAの励起は、試験制御ユニット11によってなされる。少なくとも1つの識別されるシステムパラメータSPは、上述のように、試験経過の実行のために試験台1において用いられることが可能である。
【0113】
本発明がデュアルマス試験構造の例について上述されているとしても、本発明は、適宜のマルチマス試験構造、例えば、トルク発生装置DEが軸、結合部、軸結合部及び/又はギヤ装置を介してトルク低減部DSと結合されたドライブトレーン試験台の場合においても拡張され得ることが明らかである。ここで、試験経過の実行のために、トルク発生装置DEを有する被試験物、例えば内燃エンジン2と、電気モータ、また内燃エンジン2及び電気モータの組合せとがトルク低減部DS、例えば負荷機械3と常に機械的に結合されている。当該結合は、デュアルマス試験台について
図1に図示されているように、少なくとも1つの連結要素KE、例えば試験台軸4によってなされる。しかし、当該結合は、別の質量慣性(マルチマス試験構造)を含み得る様々な機械的な結合部を含む、例えば試験台1における被試験物としてのパワートレーンの場合におけるような結合要素によっても行うことが可能である。
【0114】
図5には、例えばトリプルマス試験構造が図示されている。当該トリプルマス試験構造は、結合要素によってそれぞれ回転剛性c1,c2及び回転減衰係数d1,d2に結び付けられた3つの質量慣性J1,J2,J3を含んでいる。J1は、例えばトルク発生装置DE、例えば内燃エンジン2であり、J2,J3は、トルク低減部DS、例えばトルク測定フランジ、デュアルマスフライホイール又は結合部及び負荷機械3である。2つのトルク発生装置DE、すなわち内燃エンジン2及び電気モータと、トルク低減部DS、すなわち負荷機械3とを有する構成も当然考えられる。システムパラメータSP(J1,J2,J3,c1,c2,d1,d2)の本発明による識別は、上述同様に行うことが可能である。
【0115】
どの測定量を利用可能であるかに応じて、例えば以下の構成を示すことが可能である:
【0116】
【0117】
なお、本発明は、以下の態様も包含し得る:
1.試験台(1)において試験構造(PA)のための動的な試験経過を実行する方法であって、試験構造(PA)が少なくとも1つのトルク発生装置(DE)を含んでおり、トルク発生装置は、試験台(1)において、少なくとも1つの連結要素(KE)を用いて少なくとも1つのトルク低減部(DS)に機械的に結合され、トルク発生装置(DE)、連結要素(KE)及びトルク低減部(DS)が、動的な特性を特徴付けるシステムパラメータ(SP)によって記述される、方法において、
動的な入力信号u(t)が試験構造(PA)に導入されることで試験構造(PA)が試験台(1)において動的に励起され、このとき、試験構造(PA)の入力信号(u(t))及び試験構造(PA)の生じる出力信号(y(t))の測定値(MW)が測定されること、検出された入力信号(u(t))及び出力信号(y(t))に基づき、パラメータによらない識別手法によって、出力信号(y(t))と入力信号(u(t))の間の試験構造(PA)の動的な特性の周波数応答(G(Ω
k
))が算出されること、周波数応答(G(Ω
k
))に基づき、入力信号(u(t))を出力信号(y(t))へ反映するパラメータによるモデルのモデル構造が導出されること、モデル構造及びパラメータによる識別手法に基づき、試験構造(PA)の少なくとも1つのシステムパラメータ(SP)が算出されること、並びに少なくとも1つの識別されるシステムパラメータ(SP)が試験経過の実行のために用いられることを特徴とする方法。
2.少なくとも1つのシステムパラメータ(SP)が、試験構造(PA)の少なくとも1つの構成要素のための調節器(R,R
D
)の設計のために用いられることを特徴とする上記1.に記載の方法。
3.少なくとも1つのシステムパラメータ(SP)が、試験構造(PA)の少なくとも1つの構成要素のための調節器(R,R
D
)についての目標値(SW)又は試験構造(PA)の少なくとも1つの構成要素のための調節器(R,R
D
)へ供給される制御偏差(w)をフィルタするフィルタ(F)の設計のために用いられることを特徴とする上記1.に記載の方法。
4.時間にわたる少なくとも1つのシステムパラメータ(SP)の変化が監視されることを特徴とする上記1.に記載の方法。
5.試験構造(PA)の動的な特性を所望の動的な特性へ適合させるために、少なくとも1つのシステムパラメータ(SP)が用いられることを特徴とする上記1.に記載の方法。
6.パラメータによらない識別手法において、入力信号(u(t))及び/又は出力信号(y(t))の測定ノイズが考慮されることを特徴とする上記1.~5.のいずれか1つに記載の方法。
7.パラメータによらない識別手法として、全ての周波数に対する周波数応答(G(Ω
k
))を局所的周波数(Ω
k
)について多項式によって近似する局所多項式法が用いられることを特徴とする上記1.~6.のいずれか1つに記載の方法。
8.パラメータによらない識別手法によって、出力信号(y(t))の測定ノイズの分散(σ
2
Y
(k))及び/又は入力信号(u(t))の測定ノイズの分散(σ
2
U
(k))及び/又は入力と出力の間の測定ノイズの共分散(σ
2
YU
(k))が追加的に算出されることを特徴とする上記7.に記載の方法。
9.周波数応答(G(Ω
k
))に基づき、システムパラメータ(SP)として共振周波数(ω
R
)及び/又は同調周波数(ω
F
)が算出されることを特徴とする上記1.~8.のいずれか1つに記載の方法。
10.時間領域では、パラメータによる識別手法、好ましくは予測誤差法(PEM)が用いられ、周波数領域では、好ましくは最尤推定法が用いられることを特徴とする上記1.~9.のいずれか1つに記載の方法。
11.パラメータによる識別手法によってパラメータによるモデルのモデルパラメータ(θ)が算出され、少なくとも1つのシステムパラメータ(SP)を有する物理的なシステムモデルとパラメータによるモデルを比較することで、少なくとも1つのシステムパラメータ(SP)がモデルパラメータ(θ)に基づき算出されることを特徴とする上記1.~10.のいずれか1つに記載の方法。
12.パラメータによるモデルがそれぞれモデルパラメータ(θ)を有する部分モデルへ分割され、少なくとも1つのシステムパラメータ(SP)を有する物理的な部分モデルと少なくとも1つの部分モデルを比較することで、少なくとも1つのシステムパラメータ(SP)が部分モデルのモデルパラメータ(θ)に基づき算出されることを特徴とする上記1.~10.のいずれか1つに記載の方法。
13.少なくとも1つのトルク発生装置(DE)を有する試験構造(PA)のための動的な試験経過を実行する試験台であって、トルク発生装置が、少なくとも1つの連結要素(KE)を用いて、少なくとも1つのトルク低減部(DS)に機械的に結合されており、トルク発生装置(DE)、連結要素(KE)及びトルク低減部(DS)が、動的な特性を特徴付けるシステムパラメータ(SP)によって記述されている、試験台において、
試験台(1)に試験台制御ユニット(11)が設けられており、試験台制御ユニットは、試験構造(PA)に対する入力信号をあらかじめ設定することで試験台(1)における試験構造(PA)を動的に励起させ、試験構造(PA)の入力信号(u(t))及び生じる出力信号(y(t))の測定値(MW)を測定する測定センサ(MS)が試験台(1)に設けられていること、評価ユニット(12)が設けられており、評価ユニットは、検出された入力信号(u(t))及び出力信号y(t)に基づき、パラメータによらない識別手法によって、出力信号(y(t))と入力信号(u(t))の間の試験構造(PA)の動的な特性の周波数応答(G(Ω
k
))を算出し、周波数応答(G(Ω
k
))に基づき、入力信号(u(t))を出力信号(y(t))へ反映するパラメータによるモデルのモデル構造を導出し、モデル構造及びパラメータによる識別手法に基づき、試験構造(PA)の少なくとも1つのシステムパラメータ(SP)を算出すること、並びに試験台制御ユニット(11)が、少なくとも1つの識別されるシステムパラメータ(SP)を、試験経過を実行するために用いることを特徴とする試験台。