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特許7323532短い核酸断片の単離、精製及び/又は濃縮のために水性二相系を使用する方法
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  • 特許-短い核酸断片の単離、精製及び/又は濃縮のために水性二相系を使用する方法 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】短い核酸断片の単離、精製及び/又は濃縮のために水性二相系を使用する方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/10 20060101AFI20230801BHJP
【FI】
C12N15/10 100Z
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020536924
(86)(22)【出願日】2018-09-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-17
(86)【国際出願番号】 US2018051354
(87)【国際公開番号】W WO2019055926
(87)【国際公開日】2019-03-21
【審査請求日】2021-06-23
(31)【優先権主張番号】62/560,180
(32)【優先日】2017-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520157602
【氏名又は名称】フェーズ サイエンティフィック インターナショナル リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Phase Scientific International Ltd.
【住所又は居所原語表記】32 & 33/F, Gravity, 29 Hung Yip Street, Kwun Tong, Kowloon, Hong Kong (CN)
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】チウ, イン トゥ
【審査官】大久保 元浩
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/041030(WO,A1)
【文献】Biopolymers,1992,Vol.32,pp.1365-1373
【文献】Biopolymers,1990,Vol.30,pp.703-718
【文献】Separation and Purification Technology,2014,Vol.122,pp.144-148
【文献】Langmuir,2006,Vol.22,pp.4282-4290
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C12Q
G01N
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料から250bp以下の核酸断片を選択的に単離及び濃縮するための組成物であって、水溶液に溶解するときに水性二相系(ATPS)を形成できる第1の相成分と第2の相成分とを含み、
第1の相成分は8~11重量%の濃度で第1の相に溶解するポリマーであり、
第2の相成分は20~22重量%の濃度で第2の相に溶解する塩であり、
前記ポリマーはポリエチレングリコール6000であり、前記塩は二塩基性リン酸カリウムであり、
前記核酸断片が前記ATPSと混合されると、前記断片は上相に濃縮される、組成物。
【請求項2】
前記ポリマーの濃度が11重量%であり、前記塩の濃度が20重量%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリマーの濃度が8重量%であり、前記塩の濃度が22重量%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記核酸断片は、コードDNA、非コードDNA、メッセンジャーRNA、リボソームRNA、マイクロRNA及びトランスファーRNAからなる群から選択される、請求項1~のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記核酸断片は、無細胞DNA又は循環腫瘍DNAである、請求項1~のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記試料は、血液、血漿、血清、脳脊髄液、尿、唾液、糞便、涙、痰、鼻咽頭粘液、膣分泌物及び陰茎排出物からなる群から選択される、請求項1~のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
試料から250bp以下の核酸断片を選択的に単離及び濃縮する方法であって、
a)請求項1~のいずれかの組成物を調製することと、
b)ステップa)からの組成物を、前記試料を含む水溶液と混合し、得られた混合物を2相に分配し、前記核酸断片を上相に濃縮することと、
c)前記上相から前記核酸断片を単離することとを含む、方法。
【請求項8】
試料から250bp以下の核酸断片を選択的に単離及び濃縮する方法であって、
a)成分が水溶液に溶解するときに水性二相系(ATPS)を形成できる、8~11重量%の濃度で第1の相に溶解するポリマーである第1の相成分と、20~22重量%の濃度で第2の相に溶解する塩である第2の相成分とを含む組成物を調製することと、
ここで、前記ポリマーはポリエチレングリコール6000であり、前記塩は二塩基性リン酸カリウムであり、
b)ステップa)からの組成物を、前記試料を含む水溶液と混合し、得られた混合物を2相に分配し、前記核酸断片を上相に濃縮することと、
c)前記核酸断片が濃縮された上相を単離することと、を含む方法。
【請求項9】
ステップc)における相から前記核酸断片を回収することをさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリマーの濃度が11重量%であり、前記塩の濃度が20重量%である、請求項またはに記載の方法。
【請求項11】
前記ポリマーの濃度が8重量%であり、前記塩の濃度が22重量%である、請求項またはに記載の方法。
【請求項12】
ステップb)の前に、
i)水溶液に溶解するときに水性二相系(ATPS)を形成できる第1の相成分と第2の相成分とを含む組成物を調製することと、
ここで第1の相成分は15重量%の濃度で第1の相に溶解するポリマーを含み、第2の相成分は15重量%の濃度で第2の相に溶解する塩を含み、
前記ポリマーはポリエチレングリコール1000であり、前記塩は二塩基性リン酸カリウムであり、
ii)ステップi)からの組成物を、前記試料を含む水溶液と混合し、得られた混合物を2 相に分配することと、
ここで前記核酸断片は下相に濃縮され、
iii)前記下相をステップb)の試料として単離することと、
をさらに含む、請求項11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記核酸断片は、コードDNA、非コードDNA、メッセンジャーRNA、リボソームRNA、マイクロRNA及びトランスファーRNAからなる群から選択される、請求項12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記核酸断片は、無細胞DNA又は循環腫瘍DNAである、請求項12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記試料は、血液、血漿、血清、脳脊髄液、尿、唾液、糞便、涙、痰、鼻咽頭粘液、膣分泌物及び陰茎排出物からなる群から選択される、請求項14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記核酸断片は、前記試料と比較して少なくとも10倍濃縮される、請求項15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
(a)水溶液に溶解するときに第1の水性二相系(ATPS)を形成できる第1の相成分と第2の相成分とを含む、第1の組成物と、
ここで、第1の相成分は15重量%の濃度で第1の相に溶解するポリエチレングリコール1000であり、第2の相成分は15重量%の濃度で第2の相に溶解する二塩基性リン酸カリウムである、
(b)水溶液に溶解するときに第2の水性二相系(ATPS)を形成できる第3の相成分と第4の相成分とを含む、第2の組成物と、
ここで、第3の相成分は8~11重量%の濃度で第3の相に溶解するポリエチレングリコール6000であり、第4の相成分は20~22重量%の濃度で第4の相に溶解する二塩基性リン酸カリウムである、
を含む、
試料から250bp以下の核酸断片を選択的に単離及び濃縮するためのキット。
【請求項18】
前記ポリエチレングリコール6000の濃度が11重量%であり、前記二塩基性リン酸カリウムの濃度が20重量%である、請求項17に記載のキット。
【請求項19】
前記ポリエチレングリコール6000の濃度が8重量%であり、前記二塩基性リン酸カリウムの濃度が22重量%である、請求項17に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2017年9月18日に出願された米国出願第62/560,180号の利益を主張している。前述の出願のすべての内容及び開示は、参照により本願に組み込まれている。
【0002】
本発明は、水性二相系(ATPS)における短い核酸断片の単離、濃縮及び/又は精製方法に関する。特に、本発明は、生体材料から短い核酸断片を単離、濃縮及び/又は精製する方法、キット及びATPS成分を提供する。本願は、様々な刊行物を引用しており、それらのすべての内容は参照により本願に組み込まれている。
【背景技術】
【0003】
1983年にポリメラーゼ連鎖反応、又は単にPCRが発見されて以来、全ゲノムの配列が決定されており、そのために生命科学の基本的な理解及び重要な医学の進歩における多くの発見が可能になっている。PCRをより効率的、効果的、低コストにするために、技術革新の分野全体が生まれている。また、核酸はPCRの入力と出力の両方であるため、上流での調製及び下流での分析をより正確、精密、迅速、かつ費用対効果の高いものにするために、たゆまぬ努力がなされ、今も続いている。
【0004】
効率の限界利得は、規模のリターンの減少に伴って停滞期に入っている。このボトルネックは、長さが250塩基対(bp)未満の小さな核酸断片を単離する必要がある場合に特に顕著である。小さな核酸(NA)断片を単離、精製及び濃縮する必要がある分野の出現は、リキッドバイオプシーの分野において最近である。リキッドバイオプシーは、無細胞DNA(cfDNA)、特に循環腫瘍DNA(ctDNA)の捕捉と増幅に基づいているため、寛解期にある患者の腫瘍形成又は癌の再発の早期診断を行うことができる。循環腫瘍DNA(循環腫瘍ctDNA)は、腫瘍細胞に由来する、サイズが100~300塩基対のDNA断片の一種である。腫瘍細胞から放出される循環遊離DNA(cfDNA)は、起源の問題の特性を保持する。従来のバイオプシーに比べて、cfDNAの分析と研究は、非侵襲的プロセスによる腫瘍の遺伝的特性評価を可能にする。cfDNA分析は、疾患の過程全体におけるゲノムの変化を検出し監視する非侵襲的かつ迅速な代替方法である。利用可能な技術は、異なる起源の細胞/組織からのDNA抽出を可能にする。様々なプロトコルを使用し、かつ様々な材料(生体液、細胞培養、新鮮又は凍結組織試料)から核酸を抽出するために使用できる「キット」として商品化することができる。cfDNA濃度は通常非常に低く、cfDNAは短いピーク断片(例えば、250bp未満)で高度に断片化される。特に、約160~165bpの核酸は通常尿中に出現し、これはリキッドバイオプシーにとってより望ましい試料タイプである。したがって、生体試料からcfDNAを単離する抽出方法は、cfDNAの収量に大きな影響を与える可能性があり、それにより異なるテストの特性及び臨床検証の程度にさらに影響を与え得る。
【0005】
本発明は、生体マトリックスの複雑な背景に対して、非常にまれでまばらな核酸断片を単離、精製、濃縮することを課題とする。多くの場合、関連する断片の収量は非常に低いため、後続のPCR結果には、十分な診断感度と特異性がない場合がある。したがって、250bp未満の核酸断片の単離、精製、濃縮のより効果的な新しい方法を開発することは緊急の課題である。
【0006】
生体試料から核酸を単離する様々な異なる方法、例えば、基質への核酸の選択的吸着を含む方法、及び可溶性核酸からの汚染物質の除去を含む方法が開発されている。米国特許第5,057,426号、第4,923,978号、欧州特許出願公開第0512767号、欧州特許第0515484号明細書、国際公開第95/13368号、国際公開第97/10331号、及び国際公開第96/18731号に記載されているように、現在利用可能な精製方法は、フェノール/クロロホルムの使用、塩析、カオトロピック塩及びシリカ樹脂の使用、アフィニティー樹脂の使用、イオン交換クロマトグラフィー、及び磁気ビーズの使用に基づく方法である。
【0007】
国際公開第2004/106516号に記載された水性二相系(ATPS)によるプラスミドDNAの精製プロセス、及びJournal of Chromatography A,1082(2005),176-184に記載された水性二相抽出及び疎水性相互作用クロマトグラフィーによるプラスミドDNAベクターの精製のためのプロセスも知られている。いずれのプロセスも、プラスミドDNA精製のためにATPSを使用することを開示しているが、それらはいずれも、長さが250bp以下の核酸を単離するために設計されたものではない。大きな核酸分子を精製する既存のプロセスは、下流の用途の満足できる性能のために十分な純度で250bp以下の短い核酸を精製できるとは考えられていない。
【0008】
250bp以下の核酸断片を単離、精製、濃縮するための生体試料を調製する必要性は、研究及び産業のいずれの分野においても非常に重要であるが、この必要性は、既存の方法ではほとんど満たされていない。異なる化学製剤を使用して水系において種分離を達成する様々な方法が記載されているが、本発明が達成したことを実証しているように、時間効率が高く、費用対効果が高く、簡単、迅速かつ優れた収率を実現する方法で、250bp以下の核酸断片の単離、精製、濃縮を行う可能性を活用する試みは、一度も成功していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許第5,057,426号
【文献】米国特許第4,923,978号
【文献】欧州特許出願公開第0512767号
【文献】欧州特許第0515484号明細書
【文献】国際公開第95/13368号
【文献】国際公開第97/10331号
【文献】国際公開第96/18731号
【文献】国際公開第2004/106516号
【非特許文献】
【0010】
【文献】Journal of Chromatography A,1082(2005),176-184
【発明の概要】
【0011】
本発明は、水性二相系(ATPS)における短い核酸断片の単離、濃縮及び/又は精製に関する。一実施形態では、本発明は、約250塩基対(bp)以下を有する短い核酸断片の単離、濃縮及び/又は精製のためにATPSを使用する方法を提供する。一実施形態では、本発明は、核酸含有生体材料から約250塩基対以下を有する短い核酸断片を精製する組成物及びキットを提供する。別の実施形態では、本発明は、核酸含有生体材料から約250塩基対以下を有する短い核酸断片を精製するためのATPSにおける特定の塩及び/又はポリマーの使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A】ポリマーと塩の添加により誘導される相分離を示す。図1Aのチューブは、上相/下相の体積比が1:1の2つの分離した相で構成される。図1Bのチューブは、上相/下相の体積比が9:1の2つの分離した相を示す。ATPS成分を調整することにより、上相と下相の体積比は、1:1から9:1に変更することができ、さらに標的分子をより小さな体積の相に濃縮するように変更することができる。図1Bは、標的分子が下相(濃い色で示される)に濃縮される典型的なシナリオを示す。
図1B】ポリマーと塩の添加により誘導される相分離を示す。図1Aのチューブは、上相/下相の体積比が1:1の2つの分離した相で構成される。図1Bのチューブは、上相/下相の体積比が9:1の2つの分離した相を示す。ATPS成分を調整することにより、上相と下相の体積比は、1:1から9:1に変更することができ、さらに標的分子をより小さな体積の相に濃縮するように変更することができる。図1Bは、標的分子が下相(濃い色で示される)に濃縮される典型的なシナリオを示す。
図2】本発明の一実施形態により精製されたDNAのゲル電気泳動画像を示す。
図3】本発明の一実施形態に係る、2つの異なる相に分配された異なるサイズの核酸のゲル電気泳動画像を示す。
図4】本発明の一実施形態に従って抽出された異なるサイズのDNAの回収率を示す。
図5】本発明の一実施形態とQIAamp Blood DNAミニキットによって抽出された異なるサイズのDNAの回収率を比較する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の説明では、本発明のいくつかの実施形態を説明する。説明の目的で、実施形態の完全な理解を提供するために、特定の構成及び詳細を示す。また、単語の複数形又は単数形に対して、及び実施形態の向きが「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」等として説明されている範囲において、これらの文言は、読者が実施形態を理解するのを助けるためのものであり、物理的に限定することを意図するものではない。当業者にとって、本発明が特定の詳細なしに実施され得ることは明らかである。本発明は、以下の実施例を参照することにより、よりよく理解されるが、当業者であれば、特定の実施例が単に例示を目的としており、その後に続く特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を限定すべきではないことを容易に理解するであろう。「含有する(containing)」と同義である移行語「含む(comprising)」又は「含む(including)」もしくは「によって特徴付けられる」は、包括的又は非限定的であり、追加の、引用されていない要素又は方法ステップを除外しないことに留意すべきである。
【0014】
本発明においては、様々な生体材料からの約250塩基対(bp)以下を有する短い核酸断片の単離、濃縮及び/又は精製のために、水性二相系(ATPS)を適用する。
【0015】
一実施形態では、本発明は、約250塩基対(bp)以下を有する短い核酸断片の単離、濃縮及び/又は精製のために水性二相系(ATPS)を使用する方法を提供する。一実施形態では、当該方法は
(a)ATPS組成物を提供するステップと、
(b)前記ATPS組成物を、短い核酸断片を含む試料溶液と接触させる又は混合するステップと、
(c)前記ATPSと試料溶液との混合物を第1の相と第2の相に分離させるステップとを含み、
短い核酸断片を第1の相溶液又は第2の相溶液に分配することにより、短い核酸断片を単離及び濃縮する。
【0016】
一実施形態では、本発明は、試料から250bp以下の核酸断片を単離及び濃縮するための組成物を提供し、組成物は、成分が水溶液に溶解するときに水性二相系(ATPS)を形成できる第1の相成分と第2の相成分を含む。一実施形態では、第1の相成分はポリマー、塩又はミセル溶液の1つ以上である。一実施形態では、第2の相は、ポリマー、塩又はミセル溶液の1つ以上である。一実施形態では、第1の相成分はポリマーであり、第2の相は塩である。一実施形態では、250bp以下の核酸断片は一相に濃縮される。
【0017】
一実施形態では、本発明は、試料から250bp以下の核酸断片を単離及び濃縮する方法を提供し、この方法は、本明細書に記載の組成物を短い核酸断片を含む試料溶液と混合することにより、短い核酸断片を単離及び濃縮する。
【0018】
一実施形態では、短い核酸断片は、コードDNA、非コードDNA、メッセンジャーRNA、リボソームRNA、マイクロRNA又はトランスファーRNAである。一実施形態では、短い核酸断片は、無細胞DNA又は循環腫瘍DNAである。
【0019】
ATPS(水性二相系)
油-水系と同様に、ATPSは比を容易に制御できる2つの異なる液相で構成される。ATPS系に懸濁された生体分子は、物理化学的特性(例えば、2つの相の親水性と界面張力)に基づいて2つの水相の一方に分配されるため、目的の生体分子が濃縮される。
【0020】
一実施形態では、本発明は、試料から1つ以上の短い核酸断片又は標的分子(例えば、核酸分子)を単離/濃縮/精製/回収する2成分水性二相系(ATPS)を提供する。混合物中の異なる分子は、それらの異なる特性により、2つの相の間で異なって分布し、最小限のセットアップと人間の介入でATPSを使用して標的分子を分離し濃縮することが可能である。一実施形態では、流体の流れは等温動的原理に基づく毛細管作用のみに依存するため、相分離を引き起こすための電力又は機器は不要である。
【0021】
本発明の利点は、高純度及び高濃度の標的分子を簡単な方法で得ることができ、かつ精製又は濃縮のステップを追加することなく、増幅(例えば、PCR)、配列決定、標識又は検出(例えば、ハイブリダイゼーション又はラテラルフローイムノアッセイ(LFA))を含むがこれらに限定されない下流の用途に適合することができることである。
【0022】
本明細書で提供される方法及び装置は、堅牢で、安価で、シンプルで、扱いやすく、安全で、使いやすく、高速である。本方法は、1つ以上の短い核酸断片又は標的分子を精製し濃縮することができるため、精製及び濃縮された分子を使用する下流の用途の性能が、元の試料の不純物によって影響されないことを保証する。
【0023】
本明細書に記載の独自の特徴により、本発明は、複雑な機器を使用せずに、標的分子を簡便かつ迅速に精製及び濃縮することができ、1つ以上の短い核酸断片又は標的分子を非常に少量又は小容量含む試料に適用することができる。さらに、本方法は、ハイスループットスクリーニングシステムを含む自動化に容易に適応可能である。
【0024】
核酸の小さな断片を単離及び/又は濃縮するためのATPS(水性二相系)の使用
一実施形態では、本発明は、試料から1つ以上の短い核酸断片又は標的分子を単離、精製、回収、濃縮するために使用される。一実施形態では、本発明は、非標的分子から1つ以上の短い核酸断片又は標的分子を分離し、標的核酸分子を同時に濃縮することができる。
【0025】
本発明の一実施形態では、短い核酸断片又は標的分子はATPS埋め込み多孔質材料に保持され、一方、非標的材料は液体系(例えば、元の試料と非ATPS成分)に残される。一実施形態では、非標的材料はATPS埋め込み多孔質材料に保持され、一方、短い核酸断片又は標的分子は液体系(例えば、元の試料と非ATPS成分)に残される。
【0026】
本発明において、様々な生体材料から約250塩基対以下を有する短い核酸断片を単離、濃縮及び/又は精製するために、水性二相系(ATPS)を適用する。
【0027】
一実施形態では、本発明は、約250塩基対以下を有する短い核酸断片を単離、濃縮及び/又は精製するために、水性二相系(ATPS)を使用する方法を提供する。一実施形態では、当該方法は、
(a)第1の相溶液と第2の相溶液を含むATPS組成物を提供するステップと、
(b)上記ATPS組成物を短い核酸断片を含む試料溶液と接触させるステップと、
(c)短い核酸断片を第1の相溶液又は第2の相溶液中で濃縮させるステップとを含み、それによって、短い核酸断片を単離、濃縮及び/又は精製する。
【0028】
一実施形態では、ATPS組成物は、ポリマー、塩、及び界面活性剤を含むATPS成分の混合相溶液である。一実施形態では、組成物は、試料溶液と接触した後、第1の相溶液と第2相溶液に分離することにより、相分離を開始する。
【0029】
一実施形態では、核酸は、無細胞DNA(cfDNA)である。本明細書で使用される「無細胞DNA」(cfDNA)とは、細胞の外側に存在するDNA、例えば、被験者の血液、血漿、血清、又は尿に存在するDNAである。特定の理論又はメカニズムに束縛されることなく、cfDNAは、例えば細胞のアポトーシスを介して細胞から放出されるか又はそれに由来すると考えられている。本明細書で使用される「天然型cfDNA」又は「被験者のcfDNA」とは、被験者の細胞(例えば、非癌細胞)から放出されるか又はそれに由来する無細胞DNAを指す。本明細書で使用される「非天然型cfDNA」又は「被験者に由来しないcfDNA」とは、配列、例えば、本明細書に記載のものを含むがこれらに限定されない1つ以上の遺伝子座における配列同一性に関して、被験者のcfDNAとは異なる非天然源からの無細胞DNAを指す。非天然型DNAの例には、移植ドナーDNA及び癌/腫瘍DNAが含まれるが、これらに限定されない。非天然型cfDNAの例には、移植ドナーcfDNA(本明細書ではドナー特異的cfDNAとも呼ばれる)及び腫瘍cfDNA(本明細書では癌特異的cf-DNAとも呼ばれる)が含まれるが、これらに限定されない。非天然型cf-DNAの供給源は、被験者によって異なる。別の例として、非天然型cfDNAは、細菌、真菌及びウイルスのDNAを含む。例えば、被験者が移植受容者である場合、非天然型cfDNAは、移植された移植臓器(ドナー固有のcfDNA)から放出され、天然型cfDNAは、宿主/被験者(宿主cf-DNA)からの細胞によって放出される可能性がある。被験者が癌を有する場合、非天然型cf-DNAは、例えば腫瘍及び/又は転移(癌特異的cf-DNA)によって放出され、天然型cf-DNAは、例えば、被験者の非癌細胞によって放出される可能性がある。
【0030】
一実施形態では、核酸は、癌患者の血漿又は血清に存在する循環腫瘍DNA(ctDNA)である。
【0031】
一実施形態では、本発明の対象となる短い核酸断片は、サイズが250bp以下である。別の実施形態では、短い核酸断片はサイズが160~165bpである。別の実施形態では、短い核酸断片はサイズが約20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240又は250bpである。
【0032】
一実施形態では、短い核酸断片は第1の相溶液に分配される。一実施形態では、短い核酸断片は第2の相溶液に分配される。別の実施形態では、短い核酸断片は、第1の相溶液と第2の相溶液の界面に分配される。
【0033】
一実施形態では、試料溶液は、核酸含有試料又は核酸含有生体材料である。本発明の意義は、組織、血液、血漿、血清、脳脊髄液(CSF)、尿、唾液、糞便、及び涙、痰、鼻咽頭粘液、膣分泌物、陰茎排出物などの分泌物を含むがこれらに限定されない核酸含有試料及び核酸含有生体材料の処理及び調製にある。
【0034】
本発明の様々な実施形態で使用できる様々なATPS系は、ポリマー塩(例えば、PEG塩)、ポリマー-ポリマー(例えば、PEGデキストラン、PEGポリアクリレート)、ミセル(例えば、Triton X-114)、塩ミセル(例えば、塩Triton X-114)又はポリマーミセル(例えば、PEG-Triton X-114)を含むが、これらに限定されない。
【0035】
一実施形態では、第1及び/又は第2の相溶液はポリマーを含む。一実施形態では、ポリマーは、疎水変性ポリアルキレングリコールなどのポリアルキレングリコール、ポリ(オキシアルキレン)ポリマー、疎水変性ポリ(オキシアルキレン)共重合体などのポリ(オキシアルキレン)共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルカプロラクタム、ポリビニルメチルエーテル、アルコキシル化界面活性剤、アルコキシル化デンプン、アルコキシル化セルロース、アルキルヒドロキシアルキルセルロース、シリコーン変性ポリエーテル、ポリN-イソプロピルアクリルアミド及びそれらの共重合体を含むが、これらに限定されない。別の実施形態では、第1のポリマーは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアクリレート又はデキストランを含む。一実施形態では、ポリマーは、UCONTMポリマー(Dow Chemical Company)又はFicollTMポリマー(Sigma-Aldrich)である。
【0036】
一実施形態では、第1の相溶液又は第2の相溶液のポリマー濃度は、水溶液の総重量の約0.01重量%~約90重量%の範囲(w/w)である。様々な実施形態では、ポリマー溶液は、約0.01%w/w、約0.05%w/w、約0.1%w/w、約0.15%w/w、約0.2%w/w、約0.25%w/w、約0.3%w/w、約0.35%w/w、約0.4%w/w、約0.45%w/w、約0.5%w/w、約0.55%w/w、約0.6%w/w、約0.65%w/w、約0.7%w/w、約0.75%w/w、約0.8%w/w、約0.85%w/w、約0.9%w/w、約0.95%w/w又は約1%w/wであるポリマー溶液から選択される。いくつかの実施形態では、ポリマー溶液は、約1%w/w、約2%w/w、約3%w/w、約4%w/w、約5%w/w、約6%w/w、約7%w/w、約8%w/w、約9%w/w、約10%w/w、約11%w/w、約12%w/w、約13%w/w、約14%w/w、約15%w/w、約16%w/w、約17%w/w、約18%w/w、約19%w/w、約20%w/w、約21%w/w、約22%w/w、約23%w/w、約24%w/w、約25%w/w、約26%w/w、約27%w/w、約28%w/w、約29%w/w、約30%w/w、約31%w/w、約32%w/w、約33%w/w、約34%w/w、約35%w/w、約36%w/w、約37%w/w、約38%w/w、約39%w/w、約40%w/w、約41%w/w、約42%w/w、約43%w/w、約44%w/w、約45%w/w、約46%w/w、約47%w/w、約48%w/w、約49%w/w、約50%w/wであるポリマー溶液から選択される。一実施形態では、ポリマーの濃度は約0.01%~40%w/wである。一実施形態では、ポリマーの濃度は約6%~35%w/wである。一実施形態では、ポリマーの濃度は約10%~30%w/wである。
【0037】
一実施形態では、第1及び/又は第2の相溶液は塩を含み、それにより塩溶液を形成する。一実施形態では、本発明の対象となる塩は、コスモトロピック塩、カオトロピック塩、及び直鎖又は分岐トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、トリプロピルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムなどの陽イオンと、リン酸塩、硫酸塩、硝酸塩、塩化物、炭酸水素塩などの陰イオンとを有する無機塩を含むが、これらに限定されない。別の実施形態では、塩は、NaCl、NaPO、NaHPO、NaHP0、KPO、KHPO、KHP0、NaSO、NaHSO、クエン酸カリウム、(NHSO、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム又はそれらの組み合わせであり得る。他の塩、例えば酢酸アンモニウムは使用されてよい。一実施形態では、pH値を調整するため又は相間の界面張力を変更するために2つ以上の塩が使用される。
【0038】
一実施形態では、総塩濃度は約0.01%~約90%の範囲である。当業者であれば、水性二相系を形成するのに必要な塩の量が、ポリマーの分子量、濃度及び物理的状態によって影響されることを理解するであろう。
【0039】
様々な実施形態では、塩溶液は約0.001%~90%w/wである。様々な実施形態では、塩溶液は、約0.01%w/w、約0.05%w/w、約0.1%w/w、約0.15%w/w、約0.2%w/w、約0.25%w/w、約0.3%w/w、約0.35%w/w、約0.4%w/w、約0.45%w/w、約0.5%w/w、約0.55%w/w、約0.6%w/w、約0.65%w/w、約0.7%w/w、約0.75%w/w、約0.8%w/w、約0.85%w/w、約0.9%w/w、約0.95%w/w又は約1%w/wである。いくつかの実施形態では、塩溶液は、約1%w/w、約2%w/w、約3%w/w、約4%w/w、約5%w/w、約6%w/w、約7%w/w、約8%w/w、約9%w/w、約10%w/w、約11%w/w、約12%w/w、約13%w/w、約14%w/w、約15%w/w、約16%w/w、約17%w/w、約18%w/w、約19%w/w、約20%w/w、約21%w/w、約22%w/w、約23%w/w、約24%w/w、約25%w/w、約26%w/w、約27%w/w、約28%w/w、約29%w/w、約30%w/w、約31%w/w、約32%w/w、約33%w/w、約34%w/w、約35%w/w、約36%w/w、約37%w/w、約38%w/w、約39%w/w、約40%w/w、約41%w/w、約42%w/w、約43%w/w、約44%w/w、約45%w/w、約46%w/w、約47%w/w、約48%w/w、約49%w/w、約50%w/wである。一実施形態では、塩の濃度は約2%~40%w/wである。一実施形態では、塩の濃度は約3%~30%w/wである。一実施形態では、塩の濃度は約5%~20%w/wである。
【0040】
一実施形態では、第1及び/又は第2の相溶液は、水と混合しない溶媒を含む。いくつかの実施形態では、溶媒は非極性有機溶媒を含む。いくつかの実施形態では、溶媒は油を含む。いくつかの実施形態では、溶媒はペンタン、シクロペンタン、ベンゼン、1,4-ジオキサン、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、クロロホルム、トルエン又はヘキサンであり得る。
【0041】
一実施形態では、第1及び/又は第2の相溶液はミセル溶液を含む。いくつかの実施形態では、ミセル溶液は非イオン性界面活性剤を含む。いくつかの実施形態では、ミセル溶液は界面活性剤を含む。いくつかの実施形態では、ミセル溶液はTriton-Xを含む。いくつかの実施形態では、ミセル溶液はIgepal CA-630及びNonidet P-40などのTriton-Xと同様のポリマーを含む。いくつかの実施形態では、ミセル溶液は、本質的にTriton-Xを含む。
【0042】
一実施形態では、第1の相溶液はミセル溶液を含み、第2の相溶液はポリマーを含む。一実施形態では、第2の相溶液はミセル溶液を含み、第1の相溶液はポリマーを含む。一実施形態では、第1の相溶液はミセル溶液を含み、第2の相溶液は塩を含む。一実施形態では、第2の相溶液はミセル溶液を含み、第1の相溶液は塩を含む。一実施形態では、ミセル溶液はTriton-X溶液である。一実施形態では、第1の相溶液は第1のポリマーを含み、第2の相溶液は第2のポリマーを含む。一実施形態では、第1/第2のポリマーはポリエチレングリコール及びデキストランから選択される。一実施形態では、第1の相溶液はポリマーを含み、第2の相溶液は塩を含む。一実施形態では、第2の相溶液はポリマーを含み、第1の相溶液は塩を含む。いくつかの実施形態では、第1の相溶液はポリエチレングリコールを含み、第2の相溶液はリン酸カリウムを含む。いくつかの実施形態では、第2の相溶液はポリエチレングリコールを含み、第1の相溶液はリン酸カリウムを含む。一実施形態では、第1の相溶液は塩を含み、第2の相溶液は塩を含む。一実施形態では、第1の相溶液はコスモトロピック塩を含み、第2の相溶液はカオトロピック塩を含む。一実施形態では、第2の相溶液はコスモトロピック塩を含み、第1の相溶液はカオトロピック塩を含む。
【0043】
一実施形態では、第1の相溶液と第2の相溶液の比は1:1~1:1000の範囲である。いくつかの実施形態では、第1の相溶液と第2の相溶液の比は、約1:1、約1:2、約1:3、約1:4、約1:5、約1:6、約1:7、約1:8、約1:9、及び約1:10の比であり得る。いくつかの実施形態では、第1の相溶液と第2の相溶液の比は、約1:20、約1:30、約1:40、約1:50、約1:60、約1:70、約1:80、約1:90、及び約1:100の比であり得る。いくつかの実施形態では、第1の相溶液と第2の相溶液の比は、約1:200、約1:300、約1:400、約1:500、約1:600、約1:700、約1:800、約1:900、及び約1:1000の比であり得る。
【0044】
一実施形態では、第2の相溶液と第1の相溶液の比は、約1:1、約1:2、約1:3、約1:4、約1:5、約1:6、約1:7、約1:8、約1:9、又は約1:10の比であり得る。いくつかの実施形態では、第2の相溶液と第1の相溶液の比は、約1:20、約1:30、約1:40、約1:50、約1:60、約1:70、約1:80、約1:90、又は約1:100の比であり得る。いくつかの実施形態では、第2の相溶液と第1の相溶液の比は、約1:200、約1:300、約1:400、約1:500、約1:600、約1:700、約1:800、約1:900、又は約1:1000の比であり得る。
【0045】
ATPSの第1の相溶液及び第2の相溶液がポリマーである一実施形態では、ATPSと試料の混合物の相分離後、第1の相溶液又は第2の相溶液のポリマー濃度は、水溶液の総重量の約0.01重量%~約90重量%の範囲(w/w)である。様々な実施形態では、濃度は、約0.01%w/w、約0.05%w/w、約0.1%w/w、約0.15%w/w、約0.2%w/w、約0.25%w/w、約0.3%w/w、約0.35%w/w、約0.4%w/w、約0.45%w/w、約0.5%w/w、約0.55%w/w、約0.6%w/w、約0.65%w/w、約0.7%w/w、約0.75%w/w、約0.8%w/w、約0.85%w/w、約0.9%w/w、約0.95%w/w又は約1%w/wである。いくつかの実施形態では、塩溶液は、約1%w/w、約2%w/w、約3%w/w、約4%w/w、約5%w/w、約6%w/w、約7%w/w、約8%w/w、約9%w/w、約10%w/w、約11%w/w、約12%w/w、約13%w/w、約14%w/w、約15%w/w、約16%w/w、約17%w/w、約18%w/w、約19%w/w、約20%w/w、約21%w/w、約22%w/w、約23%w/w、約24%w/w、約25%w/w、約26%w/w、約27%w/w、約28%w/w、約29%w/w、約30%w/w、約31%w/w、約32%w/w、約33%w/w、約34%w/w、約35%w/w、約36%w/w、約37%w/w、約38%w/w、約39%w/w、約40%w/w、約41%w/w、約42%w/w、約43%w/w、約44%w/w、約45%w/w、約46%w/w、約47%w/w、約48%w/w、約49%w/w、約50%w/wであるポリマー溶液から選択される。一実施形態では、第1の相溶液のポリマー濃度は、約10%~50%w/wであり、第2の相溶液の濃度は、約0.01%~6%w/wである。別の実施形態では、第1の相溶液のポリマー濃度は、約22%~45%w/wであり、他の相の濃度は、約0.01%~4%w/wである。
【0046】
ATPSの第1の相溶液及び第2の相溶液が塩である様々な実施形態では、ATPSと試料の混合物の相分離後、第1の相溶液又は第2の相溶液の塩濃度は、約0.001%~90w/wである。様々な実施形態では、塩濃度は、約0.01%w/w、約0.05%w/w、約0.1%w/w、約0.15%w/w、約0.2%w/w、約0.25%w/w、約0.3%w/w、約0.35%w/w、約0.4%w/w、約0.45%w/w、約0.5%w/w、約0.55%w/w、約0.6%w/w、約0.65%w/w、約0.7%w/w、約0.75%w/w、約0.8%w/w、約0.85%w/w、約0.9%w/w、約0.95%w/w又は約1%w/wである。いくつかの実施形態では、塩溶液は、約1%w/w、約2%w/w、約3%w/w、約4%w/w、約5%w/w、約6%w/w、約7%w/w、約8%w/w、約9%w/w、約10%w/w、約11%w/w、約12%w/w、約13%w/w、約14%w/w、約15%w/w、約16%w/w、約17%w/w、約18%w/w、約19%w/w、約20%w/w、約21%w/w、約22%w/w、約23%w/w、約24%w/w、約25%w/w、約26%w/w、約27%w/w、約28%w/w、約29%w/w、約30%w/w、約31%w/w、約32%w/w、約33%w/w、約34%w/w、約35%w/w、約36%w/w、約37%w/w、約38%w/w、約39%w/w、約40%w/w、約41%w/w、約42%w/w、約43%w/w、約44%w/w、約45%w/w、約46%w/w、約47%w/w、約48%w/w、約49%w/w、約50%w/wであるポリマー溶液から選択される。一実施形態では、第1の相中の塩の濃度は、約0.01%~10%w/wであり、第2の相中の塩の濃度は、約20%~40%w/wである。別の実施形態では、第1の相中の塩の濃度は、約0.01%~6%w/wであり、第2の相中の塩の濃度は、約22%~35%w/wである。
【0047】
一実施形態では、本発明は、短い核酸断片を単離及び/又は濃縮する組成物を提供し、この組成物は、水性二相系(ATPS)を形成できる成分を含む。
【0048】
一実施形態では、本組成物は、前述の説明に記載されたものを含む、第1の相溶液及び第2の相溶液を含む混合相溶液を含む。
【0049】
一実施形態では、短い核酸断片を単離及び/又は濃縮する本組成物は、ポリエチレングリコール(PEG)6000及び二塩基性リン酸カリウム(KHPO)を含む。一実施形態では、短い核酸断片を単離及び/又は濃縮する本組成物は、約5~20%のポリエチレングリコール(PEG)6000及び5~35%のKHPOを含む。別の実施形態では、短い核酸断片を単離及び/又は濃縮する本組成物は、8%のポリエチレングリコール(PEG)6000及び22%のKHPOを含む。
【0050】
一実施形態では、短い核酸断片を単離及び/又は濃縮する本組成物は、ポリエチレングリコール(PEG)1000及びKHPOを含む。一実施形態では、短い核酸断片を単離及び/又は濃縮する本組成物は、約10~30%のポリエチレングリコール(PEG)1000及び5~20%のKHPOを含む。別の実施形態では、短い核酸断片を単離及び/又は濃縮する本組成物は、15%のポリエチレングリコール(PEG)1000及び15%のKHPOを含む。
【0051】
一実施形態では、短い核酸断片を単離及び/又は濃縮する本組成物は、ポリエチレングリコール(PEG)1000、及び二塩基性リン酸カリウム(KHPO)と一塩基性リン酸カリウム(KHPO)の混合物を含む。
【0052】
濃度係数の調整
例として、いくつかの実施形態では、標的の短い核酸断片は、例えば、第1の相溶液と第2の相溶液の体積比1:9を使用することにより、第1の相溶液中で10倍濃縮される。
【0053】
一実施形態では、ATPS成分の相対量は変更することができる。ATPSの2つの成分の体積比は、短い核酸断片又は標的分子を優先的に1相で単離/精製/濃縮/回収するように制御される。
【0054】
本発明に関連する現象をより定量化するために、ATPS成分の相対量と達成された結果(例えば、濃縮/単離/回収の効率)との間の相関を評価するアッセイを開発する。これにより、ATPS成分の相対量を調整することにより、濃縮係数、単離効率、回収率を選択し、微調整することができる。
【0055】
一実施形態では、ATPSの2つの相の間の比は、ATPS成分の濃度を変化させることにより容易に制御することができる。図1A~Bは、溶液に対して異なるATPS成分(例えば、ポリマー及び塩)を添加することにより誘導された相分離濃度を示す。ATPS成分と試料は1:1で混合されている。ATPS成分を調整することにより、混合相は分離し、標的分子は2つの相の一方に分配される。図1Bは、標的分子が体積比9:1で下相に濃縮されたことを示す。上相と下相の体積比をさらに変更して、より小さな体積の相に標的分子を濃縮することができる。
【0056】
別の実施形態では、ATPS成分を調整する(例えば、同じ又は異なる種類の追加のATPS成分を混合物に添加するか、又は最終溶液を調製するときに混合物に追加されるATPS成分の相対体積又は濃度を変更するか、又は最終溶液を調製するときに系に追加される試料溶液の体積を調整する)ことにより、最終混合物中のATPS成分の相対体積又は濃度を変更することができる。一実施形態では、上相と下相の体積比は、1:1から9:1又はそれ以上の比に変更することができる。この現象は、電力、機器又はトレーニングを必要とせずに標的分子を濃縮するために活用できる。水又は生理食塩水などの単純な培地では、これを再現するのは簡単であるが、変動性が高く、潜在的に他の干渉物質を含む複雑な培地(例えば、唾液、血液、尿、血漿、血清、脳脊髄液(CSF)、糞便、涙、痰、鼻咽頭粘液、膣分泌物、陰茎分泌物)の場合、有用な体積比を達成することはより困難である。複雑な培地から干渉物質を除去すると役立つ場合がある。例えば、本発明のいくつかの実施形態では、クエン酸を使用して尿から尿素を除去してよく、或いは、トリクロロ酢酸を使用して唾液からタンパク質を除去してもよい。
【0057】
ATPS埋め込み多孔質材料の設計
一実施形態では、本方法は、ATPS成分が埋め込まれた多孔質材料を提供する。一実施形態では、ATPS成分が埋め込まれた多孔質材料を試料が通過するときに、短い核酸断片を単離及び濃縮することができる。一実施形態では、単離及び濃縮された短い核酸断片は、後続の分析又は保存のために多孔質材料から直接収集される。
【0058】
多孔質材料は、液体を吸収し移送することができる任意の適切な多孔質材料で作られてよい。本発明に適した多孔質材料は、ガラス繊維紙、綿ベース紙、他の種類の紙、ポリマー発泡体、セルロース発泡体、他の種類の発泡体、レーヨン織物、綿織物、他の種類の織物、木材、石、及び液体を吸収し移送することができる他の材料を含むが、これらに限定されない。
【0059】
一実施形態では、ATPSは、第1の相溶液と第2の相溶液を含む混合相溶液を含み、第1の相溶液の成分と第2の相溶液の成分は、混合相溶液が多孔質材料を通って流れるときに相分離を受けるのに十分な濃度又は負荷で、多孔質材料に埋め込まれる。
【0060】
一実施形態では、ATPSは、混合相溶液が多孔質材料を通って流れるときに相分離を受けるのに十分な濃度又は負荷で、多孔質材料に埋め込まれる。
【0061】
一実施形態では、一部かのATPS成分は、多孔質材料に埋め込まれ、次いで、標的核酸断片を含む試料を前記多孔質材料に添加する前に脱水される。
【0062】
一実施形態では、一部のATPS成分は多孔質材料に埋め込まれ、次いで脱水され(「前処理された多孔質材料」)、残りのATPS成分は最初に標的核酸断片を含む試料と混合され、その後に前処理された多孔質材料内の相分離により後続の単離及び濃縮が行われる。
【0063】
一実施形態では、一部のATPS成分は、最初に短い核酸断片を含む試料と混合され、その後、得られた混合物は多孔質材料に埋め込まれ、残りのATPS成分は、多孔質材料内の相分離による後続の単離及び濃縮のために多孔質材料に追加される。
【0064】
一実施形態では、短い核酸断片は、ATPS成分の混合物と接触するか、ATPS成分と混合され、多孔質材料を通過するときに第1の相溶液、第2の相溶液又は第1の相溶液と第2の相溶液との界面(又は中間相)に分配される。
【0065】
一実施形態では、試料中の短い核酸断片と長い核酸分子を分離するための多孔質材料内の2成分ATPS(水性二相系)が提供されている。一実施形態では、短い核酸断片と長い核酸分子は、ATPSが多孔質材料内で相分離を受けるにつれて、ATPSの異なる相に分配される。
【0066】
一実施形態では、多孔質材料とATPSは、第1の相溶液が多孔質マトリックスを第1の速度で流れ、第2の相溶液が多孔質マトリックスを第2の速度で流れるように選択され、第1の速度と第2の速度は異なる。
【0067】
一実施形態では、多孔質材料は、市販されているか、又は社内で製造されている。
【0068】
一実施形態では、ATPS成分を多孔質材料に組み込むために、ATPS成分は水(又は適切な緩衝液)に可溶化され、特定の比及び/又は濃度で多孔質材料に適用される。次に、多孔質材料を凍結乾燥機に入れて水を除去すると、多孔質材料に直接ATPS成分が埋め込まれる。試料を多孔質材料に導入する際に、ATPS成分は直ちに再水和され、それにより試料中の短い核酸断片又は標的分子が分離される。一実施形態では、短い核酸断片は、流体の流れの前面に濃縮される。一実施形態では、駆動力を提供するための外部電力又は機器は使用されない。
【0069】
ラテラルフローイムノアッセイ(LFA)を用いる診断の改善
本方法により得られる短い核酸断片は、ラテラルフローイムノアッセイ(LFA)を用いる検出又は分析に供することができる。
【0070】
ラテラルフローイムノアッセイ(LFA)方法と装置は幅広く記載されている。例えば、Gordon;Pugh、米国特許第4,956,302号、H.Buckら、WO90/06511、T.Wang、米国特許第6,764,825号、W.Brownら、米国特許第5,008,080号、Kuo;Meritt、US6,183,972、欧州特許出願公開第00987551号サーチレポートを参照されたい。このようなアッセイは、リガンドと受容体からなる特異的結合対のメンバーである検体物質の検出と決定に関与する。リガンドと受容体は、受容体がリガンドに特異的に結合し、特定の1つ又は複数のリガンドを、類似した特徴を有する他の試料成分から区別できるという点で関連している。抗体と抗原間の反応に関与する免疫学的アッセイは、特異的結合アッセイのそのような例の1つである。他の例は、DNAやRNAのハイブリダイゼーション反応と、ホルモン及び他の生体受容体が関与する結合反応とを含む。
【0071】
一実施形態では、本発明は、被験者に存在する疾患を示す短い核酸断片を濃縮することができ、得られた生成物は、短い核酸断片の検出又は定量を必要とする下流の診断手順の対象となる。本発明は、短い核酸断片の濃度が増加しているため、ラテラルフローイムノアッセイ(LFA)において、信号対雑音比を低減し、陽性シグナルを増強することができることも期待される。その結果、偽陽性率と偽陰性率も低下する可能性がある。濃度を改善することができるため、存在量の少なさ又は試料中の不純物の干渉に起因して検出できなかった分子を検出することができる。
【0072】
短い核酸断片の濃度が極端に低い場合、偽陰性の結果が生じる可能性がある。一実施形態では、短い核酸断片の濃度の増加により、LFAの検出限界が改善される。その結果、テストの再現性が向上する。
【0073】
一実施形態では、本発明は、試料から250bp以下の核酸断片を単離及び濃縮するための組成物を提供し、当該組成物は、成分が水溶液に溶解するときに水性二相系(ATPS)を形成できる第1の相成分と第2の相成分を含む。一実施形態では、第1の相成分は5~20重量%の濃度で第1の相に溶解するポリマーであり、第2の相成分は5~35重量%の濃度で第2の相に溶解する塩であり、核酸断片がATPSと混合されると、断片は2つの相の一方に濃縮される。
【0074】
本組成物の一実施形態では、当該ポリマーは、ポリアルキレングリコール、ポリ(オキシアルキレン)ポリマー、ポリ(オキシアルキレン)共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルカプロラクタム、ポリビニルメチルエーテル、アルコキシル化界面活性剤、アルコキシル化デンプン、アルコキシル化セルロース、アルキルヒドロキシアルキルセルロース、シリコーン変性ポリエーテル、ポリN-イソプロピルアクリルアミド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアクリレート、デキストラン、UCONTMポリマー及びFicollTMポリマーである。
【0075】
本組成物の一実施形態では、当該塩は、コスモトロピック塩、カオトロピック塩、及びトリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、トリプロピルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム又はテトラブチルアンモニウムの陽イオンと、リン酸塩、硫酸塩、硝酸塩、塩化物又は炭酸水素塩の陰イオンとを有する無機塩、塩化ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、硫酸ナトリウム、クエン酸カリウム、硫酸アンモニウム、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム又は酢酸アンモニウムである。
【0076】
本組成物の一実施形態では、ポリマーは100~10000Daの範囲の分子量を有するポリエチレングリコールである。
【0077】
本組成物の一実施形態では、塩は二塩基性リン酸カリウム、一塩基性リン酸カリウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、及びリン酸ナトリウムのうちの1つ以上である。
【0078】
本組成物の一実施形態では、試料が組成物と混合されると、得られた混合物は相分離し、250bp以下の核酸断片が2つの相の一方に濃縮される。一実施形態では、250bpより大きい核酸断片と250bp以下の断片はATPSの異なる相に濃縮される。
【0079】
本組成物の一実施形態では、核酸断片は、コードDNA、非コードDNA、メッセンジャーRNA、リボソームRNA、マイクロRNA又はトランスファーRNAである。一実施形態では、核酸断片は、無細胞DNA又は循環腫瘍DNAである。
【0080】
本組成物の一実施形態では、試料は、血液、血漿、血清、脳脊髄液、尿、唾液、糞便、涙、痰、鼻咽頭粘液、膣分泌物及び陰茎排出物である。
【0081】
一実施形態では、本発明は、試料から250bp以下の核酸断片を単離及び濃縮する方法を提供し、方法は、
a)本願に記載された組成物を調製することと、
b)ステップa)からの組成物を、試料を含む水溶液と混合し、得られた混合物を2相に分配し、核酸断片をその2相の一方に濃縮することと、
c)2つの相の一方から核酸断片を単離することとを含む。
【0082】
一実施形態では、本発明は、試料から250bp以下の核酸断片を単離及び濃縮する方法を提供し、方法は、
a)成分が水溶液に溶解するときに水性二相系(ATPS)を形成できる、5~20重量%の濃度で第1の相に溶解するポリマーである第1の相成分と、15~25重量%の濃度で第2の相に溶解する塩である第2の相成分とを含む組成物を調製することと、
b)ステップa)からの組成物を、試料を含む水溶液と混合し、得られた混合物を2相に分配し、核酸断片をその2相の一方に濃縮することと、
c)核酸断片が濃縮した2つの相の一方を単離することと、を含む。
【0083】
本方法の一実施形態では、方法は、ステップc)における相から核酸断片を回収することをさらに含む。
【0084】
本方法の一実施形態では、ポリマーは、ポリアルキレングリコール、ポリ(オキシアルキレン)ポリマー、ポリ(オキシアルキレン)共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルカプロラクタム、ポリビニルメチルエーテル、アルコキシル化界面活性剤、アルコキシル化デンプン、アルコキシル化セルロース、アルキルヒドロキシアルキルセルロース、シリコーン変性ポリエーテル、ポリN-イソプロピルアクリルアミド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアクリレート、デキストラン、UCONTMポリマー及びFicollTMポリマーである。
【0085】
本方法の一実施形態では、塩は、コスモトロピック塩、カオトロピック塩、及びトリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、トリプロピルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム又はテトラブチルアンモニウムの陽イオンと、リン酸塩、硫酸塩、硝酸塩、塩化物又は炭酸水素塩の陰イオンとを有する無機塩、塩化ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、硫酸ナトリウム、クエン酸カリウム、硫酸アンモニウム、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム又は酢酸アンモニウムである。
【0086】
本方法の一実施形態では、ポリマーは100~10000Daの範囲の分子量を有するポリエチレングリコールである。
【0087】
本方法の一実施形態では、塩は二塩基性リン酸カリウム、一塩基性リン酸カリウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、及びリン酸ナトリウムのうちの1つ以上である。
【0088】
本方法の一実施形態では、250bpより大きい核酸断片と250bp以下の断片は、ステップb)においてATPSの異なる相に濃縮される。
【0089】
本方法の一実施形態では、核酸断片は、コードDNA、非コードDNA、メッセンジャーRNA、リボソームRNA、マイクロRNA又はトランスファーRNAである。一実施形態では、核酸断片は、無細胞DNA又は循環腫瘍DNAである。
【0090】
本方法の一実施形態では、試料は、血液、血漿、血清、脳脊髄液、尿、唾液、糞便、涙、痰、鼻咽頭粘液、膣分泌物及び陰茎排出物である。
【0091】
本方法の一実施形態では、核酸断片は、試料と比較して少なくとも10倍濃縮される。
【0092】
本発明は、以下の実施例を参照することにより、よりよく理解されるであろう。しかしながら、当業者であれば、提供された実施例が単に例示を目的としており、その後の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を限定することを意味しないことを容易に理解するであろう。
【0093】
本願を通して、「含む(including)」、「含有する(containing)」と同義である移行語「備える(comprising)」もしくは「によって特徴付けられる」は、包括的又は非限定的であり、追加の、引用されていない要素又は方法ステップを除外しないことに留意すべきである。
【実施例1】
【0094】
水性二相系を用いるPBS溶液からの短い核酸断片(<250bp)の選択的単離と濃縮
DNAラダー(GeneRuler 1kb+DNAラダー、サーモフィッシャーサイエンティフィック)を、PBS溶液中の11%(w/w)ポリエチレングリコール(PEG)6000及び20%(w/w)のKHPOからなる水性二相系1mlにスパイクして、最終DNA濃度を1μg/mlとした。徹底的にボルテックスした後、相分離のために混合物を10000rcfで10秒間遠心分離した。上相と下相の体積比は、約1:3であった。上相と下相を抽出し、それぞれ新しいチューブに移した。抽出した相をエタノール沈殿にかけ、沈殿物をゲル電気泳動により分離して、図3に示すように、各相のDNAサイズの分配を視覚化した。250bpより大きい核酸のほとんどは下相(右レーン)に分配され、250bpより小さい核酸は上相(左レーン)に分配された。上相と下相の体積比は、約1:3であったため、短い核酸断片は長い核酸断片から単離され、その後、より少量の溶液に濃縮された。
【0095】
上記手順から得られた短い核酸断片を、対照としてATPSによる濃縮をされていないDNA試料を用いて、LFAによってさらに分析した。ImageJ又はGelanalyzerを使用してテストラインの強度を測定し、結果を以下の表1にまとめた。
【0096】
【表1】
【実施例2】
【0097】
水性二相系を用いる血漿試料からの短い核酸断片(<250bp)の選択的単離と濃縮
DNAラダー(GeneRuler Low Range DNAラダー、サーモフィッシャーサイエンティフィック)を、血漿試料500μlにスパイクした。スパイクした血漿試料を、MilliQ水の15%(w/w)ポリエチレングリコール(PEG)1000及び15%(w/w)KHPOからなる水性二相系500μlに添加して、最終DNA濃度を1μg/mlとした。徹底的にボルテックスした後、相分離のために混合物を10000rcfで10秒間遠心分離した。上相と下相の体積比は、約1:1であった。
【0098】
下相を抽出し、11%(w/w)ポリエチレングリコール(PEG)6000及び20%(w/w)KHPOからなる別のATPS溶液に添加した。徹底的にボルテックスした後、相分離のために混合物を10000rcfで10秒間遠心分離した。上相と下相の体積比は、約1:3であった。上相と下相を抽出し、それぞれ新しいチューブに移した。抽出された相をエタノール沈殿にかけ、沈殿物をゲル電気泳動により分離して、各セクションのDNAサイズの分配を視覚化した(図3)。250bpより大きい核酸は下相(右レーン)に分配され、250bpより小さい核酸は上相(左レーン)に分配されたため、試料溶液から小さなサイズの核酸が単離され、少量の溶液に濃縮された。
【0099】
この実施例で説明したように、ATPSによって単離及び濃縮した後、異なるサイズのDNAラダーの回収率を推定した(図4において、回収率=回収されたDNAの絶対収量/試料にスパイクされたDNAの量)。250bpより小さいDNAは高い割合で回収されたが、250bpより大きいDNAは大幅に減少したことが明らかになった。これは、本発明が250bpより小さいDNAを捕捉することに特異的であることを示している。
【実施例3】
【0100】
水性二相系とQIAamp Blood DNAミニキット(Qiagen)との比較
異なるサイズ(250、200、150、100、75、50、25bp)の消化されたDNAプラスミドを血漿試料にスパイクして、最終DNA濃度を100ng/mLとした。得られたスパイク血漿試料1mLを、MilliQ水の15%(w/w)ポリエチレングリコール(PEG)1000及び15%(w/w)KHPOからなる水性二相系1mLに添加した。徹底的にボルテックスした後、相分離のために混合物を10000rcfで10秒間遠心分離した。上相と下相の体積比は、約1:1であった。
【0101】
下相を抽出し、8%(w/w)ポリエチレングリコール(PEG)6000及び22%(w/w)KHPOからなる別のATPS溶液に添加した。徹底的にボルテックスした後、相分離のために混合物を10000rcfで10秒間遠心分離した。上相と下相の体積比は、約1:5であった。上相を抽出し、新しいチューブに移した。
【0102】
QIAamp Blood DNAミニキット(Qiagen)を使用して、スパイクした血漿試料1mLで別の抽出を行った。2つの異なる方法の使用による核酸の単離効果を、Agilent Bioanalyzerで単離された核酸の電気泳動アッセイにより比較した。結果を図5に示す。図5に示すように、本発明を使用すると、250bpよりも短い(25~200bp)核酸の50~80%を抽出し、150~200bpの核酸の約80%を抽出した。これに対して、QIAamp Blood DNAミニキットは25bpのDNAを抽出できないことが判明した。したがって、本発明は、QIAamp Blood DNAミニキットと比べて改善された性能を示している。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5