(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】細長い制振機構が横断する切削部分を有する外側旋削工具
(51)【国際特許分類】
B23B 27/00 20060101AFI20230801BHJP
【FI】
B23B27/00 C
(21)【出願番号】P 2020545471
(86)(22)【出願日】2019-03-10
(86)【国際出願番号】 IL2019050262
(87)【国際公開番号】W WO2019202581
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2022-02-02
(32)【優先日】2018-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514105826
【氏名又は名称】イスカル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】サフォーリ,ジョニー
(72)【発明者】
【氏名】バー ヘン,メイア
(72)【発明者】
【氏名】ハーマン,メイア
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-177973(JP,A)
【文献】特開2002-154003(JP,A)
【文献】特表2005-516780(JP,A)
【文献】特開2015-217512(JP,A)
【文献】特開2011-115929(JP,A)
【文献】国際公開第2017/109771(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 27/00 - 29/34
B23Q 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側旋削工具(10)であって、前
記外側旋削工具(10)は、
間に軸方向(AD)を規定する、対向する締め付け部分(16)及び切削部分(18)を有する細長い工具本体(12)と、
前記切削部分(18)における制振機構(20)と、を備え、
前記制振機構(20)は、延長軸(E)を有する細長い
加重制振部材(42)
と弾性部材(44)とを備え、
前記延長軸(E)は、軸方向(AD)と共に非ゼロ制振部材角度(α)を形成
し、
前記切削部分(18)は、前記制振部材(42)を収容するように構成した細長い制振凹部(40)と、対向する切削部分上面(29)及び切削部分底面(31)とを有し、
前記制振凹部(40)は、前記切削部分上面(29)及び前記切削部分底面(31)のうち厳密に1つに開口し、
前記制振部材(42)は、前記切削部分(18)内に完全に閉じ込められ、このため、前記制振部材(42)のどの部分も、前記切削部分の全ての眺めから見えない、外側旋削工具(10)。
【請求項2】
前記制振部材角度(α)は、45~135度の範囲に及ぶ、請求項1に記載の外側旋削工具(10)。
【請求項3】
前記制振部材角度(α)は、80~100度の範囲に及ぶ、請求項1又は2に記載の外側旋削工具(10)。
【請求項4】
前記外側旋削工具(10)は、前記工具本体(12)内に中心に延在する工具軸(T)を有し、前記工具軸(T)は、前記軸方向(AD)に平行であり、
前記制振部材(42)は、前記工具軸(T)からずれた質量中心(CM)を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の外側旋削工具(10)。
【請求項5】
前記制振部材(42)は、最大部材長さ(ML)を有し、前記最大部材長さ(ML)は、前記延長軸(E)に沿った前記制振部材(42)の末端の間で測定され、
前記最大部材長さ(ML)は、最大部材厚さ(MT)よりも大きく、前記最大部材厚さ(MT)は、前記延長軸(E)に直交する方向で末端の間で測定される、請求項1~4のいずれか1項に記載の外側旋削工具(10)。
【請求項6】
前記最大部材長さ(ML)は、前記最大部材厚さ(MT)よりも少なくとも1.5倍大きい、請求項5に記載の外側旋削工具(10)。
【請求項7】
前記制振機構(20)は、蓋(48)と、較正機構(46)とを更に備え、前記較正機構(46)は、弾性部材(44)に逆らって前記制振部材(42)上に永続的な力を加えるように構成される、請求項1~
6のいずれか1項に記載の外側旋削工具(10)。
【請求項8】
前記切削部分(18)は、対向する切削部分側面(35)を有し、前記延長軸(E)は、前記切削部分側面(35)に交差しない、請求項1~
7のいずれか1項に記載の外側旋削工具(10)。
【請求項9】
前記制振部材(42)は、円筒形である、請求項1~
8のいずれか1項に記載の外側旋削工具(10)。
【請求項10】
少なくとも前記切削部分(18)を通じて延在する冷却剤通路(38)を含む冷却剤搬送組立体(36)を更に備える、請求項1~
9のいずれか1項に記載の外側旋削工具(10)。
【請求項11】
前記切削部分(18)は、前記工具本体(1
2)の軸断面形状とは異なる軸断面形状を有する、請求項1~
10のいずれか1項に記載の外側旋削工具(10)。
【請求項12】
前記制振機構(
20)は、後方向で前記締め付け部分(16)内に延在しない、請求項1~
11のいずれか1項に記載の外側旋削工具(10)。
【請求項13】
前記切削部分(1
8)のポケット(15)内に取り外し可能に保持される旋削インサート(14)を更に備える、請求項1~
12のいずれか1項に記載の外側旋削工具(10)。
【請求項14】
前記旋削インサート(14)は、すくい面(78)と逃げ面(80)との交線に形成された切れ刃(76)を備え、
前記延長軸(E)は、前記逃げ面(
80)に平行又は実質的に平行に延在する、請求項
13に記載の外側旋削工具(10)。
【請求項15】
前記軸方向(AD)に直交する平面(P)は、前記旋削インサート(14)及び前記制振機構(20)の両方に交差する、請求項
13又は14に記載の外側旋削工具(10)。
【請求項16】
前記外側旋削工具(10)の上面図において、前記制振部材(42)の質量中心(CM)は、前記旋削インサート(14)の真下に位置しない、請求項
13~15のいずれか1項に記載の外側旋削工具(10)。
【請求項17】
前記外側旋削工具(10)は、前記工具本体(12)内に中心に延在する工具軸(T)を有し、前記工具軸(T)は、前記軸方向(AD)に平行であり、
前記外側旋削工具(10)の上面図において、前記制振部材(42
)の質量中心(CM)及び前記旋削インサート(14)は、前記工具軸(T)の両側に位置する、請求項
13~16のいずれか1項に記載の外側旋削工具(10)。
【請求項18】
前記制振部材(42)は、前記切削部分(18)内に完全に閉じ込められ、このため、前記制振部材(42)のどの部分も、前記切削部分(1
8)の全ての眺めから見えず、
前記制振部材角度(α)は、45~135度の範囲に及ぶ、請求項
13~17のいずれか1項に記載の外側旋削工具(10)。
【請求項19】
前記切削部分(18)は、前記締め付け部分(16)の軸断面形状とは異なる軸断面形状を有する、請求項
18に記載の外側旋削工具(10)。
【請求項20】
前記制振機構(
20)は、後方向で前記締め付け部分(16)内に延在しない、請求項
19に記載の外側旋削工具(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[001] 本出願の主題は、制振機構を含む外側旋削機械加工工具に関する。より詳細には、本出願の主題は、溝入れ工具及び/又は突切り工具で一般に見られる種類の刃形状切削部分ではなく、非刃形状切削部分を有する旋削工具に関する。
【背景技術】
【0002】
[002] 当分野において、旋削工具内で制振機構がもたらす制振効果又は振動抑制が、主に3つのパラメータ:A):制振部材の重量、B)制振部材の質量中心とCNC機械に固着される締め付け部分との間の距離、及びC)旋削工具の剛性によって影響を受けることは公知である。制振効果を最大化するため、これらのパラメータは、機械加工の用途及び/又は旋削工具の形状ごとに最適化/選択される。最も多いシナリオにおいて、3つのパラメータの全ては、好ましく最大化される。
【0003】
[003] 当分野の典型的な制振旋削工具は、比較的大きな長さ対幅比を有し、締め付け部分及び切削部分と、これらの間に延在する工具本体とを有する。CNC機械内での締め付け位置において、締め付け部分の少なくとも一部分は、CNC機械内にしっかりと締め付けられる一方で、工具本体及び切削部分は、CNC機械から飛び出ている。典型的な制振機構は、狭く細長い制振部材を含み、この制振部材は、細長い工具本体に沿って、制振空洞又は制振凹部内にある。制振部材は、粘性材料及び/又は弾性材料を介して旋削工具と相互作用する。制振部材のサイズ/重量を最大化すると、必要とされる制振凹部のために、工具本体が薄い外周エンベロープの状態で残るにすぎない。この種類の制振機構は、制振機構を中に含まない中実/ぎっしりと詰まった工具本体と比較して工具剛性を著しく低減させる。要約すると、上述の制振旋削工具は、工具、又は工具本体、剛性、及び制振部材質量中心と締め付け部分との間の距離を犠牲にして、制振部材重量を最大化させるものである。
【0004】
[004] 概して、効果的な非制振旋削工具は、他の特徴の中でも、適切な剛性のある構造体を有し、費用対効果が良好でなければならない。そのような工具の設計は、特に、十分な重量のある制振部材に対して適切な位置、向き及び/又は十分な空間を見つける一方で、工具の構造剛性及び適切な工具の隙間を保持しながら制振機構を実装する際、より一層複雑になる。本発明は、上述の問題を克服する、外側旋削工具の制振に関する解決策を提供する。
【発明の概要】
【0005】
[005] 本出願の主題の第1の態様によれば、細長い工具本体を備える外側旋削工具を提供し、細長い工具本体は、間に軸方向を規定する、対向する締め付け部分と切削部分とを有し、
切削部分は、細長い制振部材を有する制振機構を備え、細長い制振部材は、延長軸を規定し、延長軸は、軸方向と共に非ゼロ制振部材角度を形成する。
【0006】
[006] 本出願の主題の第2の態様によれば、ポケット内に固着される旋削インサートと、間に軸方向を規定する、対向する締め付け部分及び切削部分を有する工具本体とを備える外側旋削工具を提供し、
切削部分のみ、細長い制振部材を有する制振機構を備え、制振部材は、延長軸を規定し、延長軸は、軸方向で45~135度の範囲に及ぶ制振部材角度を形成する。
【0007】
[007] 本出願の主題の第3の態様によれば、ポケット内に固着される旋削インサートを備える非刃形状切削部分と、間に軸方向を規定する、対向する締め付け部分及び切削部分を有する工具本体とを有する外側旋削工具を提供し、
切削部分のみ、細長い制振部材を有する制振機構を備え、制振部材は、粘性材料を介して工具本体と相互作用する。
【0008】
[008] 以下の特徴のいずれも、単独であれ、組合せであれ、本出願の主題に対する上記態様のいずれかに適用可能とすることができる。
【0009】
[009] 制振部材角度は、45~135度の範囲に及ぶことができる。
【0010】
[0010] 制振部材角度は、80~100度の範囲に及ぶことができる。
【0011】
[0011] 旋削工具は、工具本体内に中心に延在する工具軸を有し、工具軸は、軸方向に平行であり、制振部材は、工具軸からずれた質量中心を有する。
【0012】
[0012] 制振部材は、最大部材長さを有し、最大部材長さは、延長軸に沿って制振部材の末端の間で測定され、最大部材長さは、最大部材厚さよりも大きく、最大部材厚さは、延長軸に直交する方向で末端の間で測定される。
【0013】
[0013] 最大部材長さは、最大部材厚さよりも少なくとも1.5倍大きい。
【0014】
[0014] 制振部材は、異なる重量の制振部材と取り替え可能であり、それぞれ、特定又はある範囲の制振シナリオで構成又は較正される。
【0015】
[0015] 切削部分は、制振部材を収容するように構成した細長い制振凹部を有し、制振凹部は、凹部延長軸を有し、凹部延長軸は、軸方向と共に非ゼロ制振凹部角度を形成する。
【0016】
[0016] 切削部分は、旋削インサートを含み、旋削工具の上面図において、制振部材及び旋削インサートの質量中心は、工具軸の両側に位置する。
【0017】
[0017] 制振機構は、弾性部材を有することができる。
【0018】
[0018] 制振機構は、蓋と較正機構とを有することができ、較正機構は、弾性部材に逆らって制振部材上に永続的な力を加えるように構成される。
【0019】
[0019] 制振部材は、切削部分内に完全に閉じ込めることができる。したがって、制振部材42のどの部分も、切削部分の全ての眺めから見えない。また、制振部材は、後方向で締め付け部分内に延在しない。
【0020】
[0020] 制振部材は、その両端に面取り部を有することができる。
【0021】
[0021] 切削部分は、対向する切削部分側面を有し、延長軸は、切削部分側面に交差せずに、切削部分側面の間に延在することができる。
【0022】
[0022] 切削部分は、対向する切削部分上面と切削部分底面とを有し、制振凹部は、切削部分上面及び切削部分底面のうち厳密に1つに開口する。
【0023】
[0023] 制振部材は、単一の一体化構造を有することができる。
【0024】
[0024] 制振部材は、円筒形とすることができる。
【0025】
[0025] 旋削工具は、旋削インサートを更に含み、旋削インサートは、上向きすくい面と前向き及び/又は側向き逃げ面との間の交線に形成された切れ刃を有する。
【0026】
[0026] 延長軸は、逃げ面に平行又は実質的に平行に延在することができる。
【0027】
[0027] 旋削工具は、冷却剤搬送組立体を有し、冷却剤搬送組立体は、少なくとも切削部分を通じて延在する冷却剤通路を有する。
【0028】
[0028] 軸方向に直交する平面は、旋削インサート及び制振機構の両方に交差することができる。
【0029】
[0029] 切削部分は、工具本体の軸断面形状とは異なる軸断面形状を有することができる。
【0030】
[0030] 本出願の主題をより良好に理解し、本出願を実際にどのように実行し得るかを示すため、次に、添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】旋削工具の切削部分の分解等角図であり、切削部分は、横断する制振機構及び底部開口を有する。
【
図2】隠れ線を示す、
図1の切削工具の上面図である。
【
図3】
図2の線III-IIIに沿って取った断面図である。
【
図4】
図2の線IV-IVに沿って取った断面図である。
【
図6】
図5の線VI-VIに沿って取った断面図である。
【
図8】旋削工具の第2の実施形態の上面図であり、旋削工具は、制振機構及び上部開口を有する。
【
図9】
図8の線IX-IXに沿って取った断面図である。
【
図10】2つの周波数応答関数(FRF)を示すモード検査結果のグラフであり、それぞれ、制振機構付き、制振機構なしの同じ旋削工具を表す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
[0031] 適切であると見なされる場合、参照数字は、対応又は類似する要素を示すように図面の中で繰り返すことがある。
【0033】
[0032] 以下の説明では、本出願の主題の様々な態様を説明する。説明のために、特定の構成及び詳細を十分詳細に示し、本出願の主題に対する完全な理解を提供する。しかし、本明細書で提示する特定の構成及び詳細を伴わずに本出願の主題を実行し得ることも当業者には明らかであろう。
【0034】
[0033]
図1に注意を向けられたい。振動を抑制するように構成した旋削工具10は、細長い工具本体12と、ポケット15内に固着される旋削インサート14とを含む。ポケット15は、旋削インサート14を収容するように構成される。旋削インサート14は、少なくとも1つの切れ刃76を有し、少なくとも1つの切れ刃76は、上向きすくい面78と前向き及び/又は側向き逃げ面80との間の合流部に形成される。旋削工具10は、工具本体12の対向する末端に、締め付け部分16と切削部分18とを有する。切削部分18は、制振機構20を更に含む。細長い工具本体12は、長手方向又は軸方向ADを規定する。長手方向又は軸方向という用語は、工具本体12の延長方向に平行なあらゆる軸を指す。特に、軸方向ADは、CNC機械から飛び出る工具本体12の突出方向によって決定することができる。旋削工具10は、締め付け部分16を介してCNC機械に固着又は結合される。軸方向ADは、機械加工される工作物の回転軸に直交することもできる。
【0035】
[0034] 工具本体12は、中心に延在する工具軸Tも規定し、工具軸Tは、軸方向ADに平行であり、工具本体12の中心を通過する。本実施形態によれば、工具軸T及び軸方向ADの両方は、締め付け部分16及び切削部分18を通過する。
【0036】
[0035] 締め付け部分16は、CNC機械内に締め付けられるように構成され、工具軸Tに直交して取った正方形断面(軸断面)を有することができる。締め付け部分16は、CNC機械内に締め付けられると、切削工具10の制振基準に対する剛性静的基準点とみなされる。
【0037】
[0036]
図2、
図6及び8に注意を向けられたい。工具本体12は、本体外周面22を有し、本体外周面22は、軸方向ADに沿って締め付け部分16と切削部分18との間に延在する。特に、軸方向ADは、本体外周面22に平行である。本実施形態によれば、本体外周面22は、対向する本体上面及び本体底面28と、本体上面28と本体底面30との間に延在する、対向する本体側面32とを有する。本体外周面22は、軸方向ADに直交して取られる正方形軸断面を有することができる。工具軸T及び軸方向ADは、本体側面32に平行である。工具軸T及び軸方向ADは、本体上面28及び本体底面30にも平行である。工具軸Tは、本体側面32の間の中間に位置することができる。工具軸Tは、本体上面28と本体底面30との間の中間に位置することができる。
【0038】
[0037]
図4及び
図6に注意を向けられたい。旋削工具10は、最大工具幅TWを有し、最大工具幅TWは、本体側面32に直交する方向及び工具軸Tに直交する方向で、旋削工具本体12の外側末端の間で測定される。旋削工具10は、最大工具高さTHを更に有し、最大工具高さTHは、本体側面32に平行な方向及び工具軸Tに直交する方向で、旋削工具本体12の外側末端の間で測定される。
【0039】
[0038] 旋削工具10は、3.5より小さい、好ましくは3よりも小さい高さ対幅比HWR=TH/TWを有する。本実施形態によれば、高さ対幅比HWRは1である。この寸法比は、制振機構20を効率的に実装し得る、切削工具10内で利用可能な(内側又は外側)体積に関連する。全部ではないとしても、大部分の刃形状工具は、4.5を超える高さ対幅比を有する。したがって、突切り工具又は刃形状の切断工具は狭すぎ、本発明による制振機構20を内部に含めることはできない。特に、本出願による適切で効果的な重量を有する細長い制振部材42は、単に刃形状機械加工工具が適合しないという理由で、刃形状機械加工工具の内部に実装又は収容することができない。
【0040】
[0039]
図1~
図4に注意を向けられたい。切削部分18は、工具本体12から延在する。切削部分18は、工具前面33から締め付け部分16の方に延在する切削部分上面29と切削部分底面31とを有する。切削部分18は、切削部分上面29と切削部分底面31との間に延在する切削部分側面35を更に有する。切削部分18は、少なくとも1つのポケット15と、ポケット15内に固着される旋削インサート14とを含む。切削部分18は、冷却剤搬送組立体36と、少なくとも切削部分18を通じて延在する冷却剤通路38とを更に含むことができる。本実施形態によれば、切削部分18は、工具本体12の軸断面形状とは異なる軸断面形状を有する。本実施形態によれば、切削部分18は、軸方向ADで延在し、ポケット15は、切削部分18の最前軸端部に形成される。
【0041】
[0040] 本実施形態によれば、制振機構20は、細長い制振凹部40と、細長い制振部材42と、少なくとも1つの弾性部材44と、較正機構46と、蓋48とを含む。
【0042】
[0041]
図2に注意を向けられたい。本実施形態によれば、制振部材42は、切削部分18内に完全に閉じ込められる。別の言い方をすれば、本例では、制振部材42のどの部分も、切削部分18から外側に突出しない。したがって、制振部材42のどの部分も、切削部分の全ての眺めから見えない。また、制振部材42は、後方向で締め付け部分16内に延在しない。制振部材は、高い重量対体積比を達成する比較的高密度の材料から作製される。制振部材42は、タングステン製とすることができる。現在の例では、制振部材42は、1個の材料から作製され、したがって、単一の一体化構造を有する。
【0043】
[0042] 制振部材42、特に制振部材42の質量中心CMは、締め付け部分16から可能な最も遠い位置で、工具前面33に隣接して位置する。本実施形態では、ポケット15及び制振機構20は、軸方向ADで少なくとも部分的に重なる。言い換えれば、軸方向ADに直交する平面Pは、ポケット15及び制振機構20の両方に交差する。
【0044】
[0043] これらの向きに関連する特徴は、工具本体12の構造完全性及び/又は剛性を損なわないように制振機構20を切削部分18に置くという有利な設計に関連する。
【0045】
[0044]
図7に注意を向けられたい。制振部材42は、第1の端面50及び第2の端面52と、第1の端面50と第2の端面52との間に延在する部材外周面54とを有することができる。本実施形態によれば、部材外周面54は、ねじ山を含まない。制振部材42は、第1の端面50及び第2の端面52を通過する中心延長軸Eを有する。延長軸Eは、制振部材延長方向で延在する。延長軸Eは、軸方向及び工具軸Tと共に非ゼロ制振部材角度αを形成する(
図4)。制振部材角度αは、好ましくは、45~135度の範囲に及ぶ。本例では、制振部材角度αは、96度である。制振部材角度αは、制振部材42、したがって制振部材42の重量に対して利用可能な空間/体積を最大化するように、工具形状によって、即ち設計努力に従って決定することができる。制振部材角度αは、ポケット15及び/又は冷却剤搬送組立体36等、切削部分18内の他の凹部によって影響を受けることもある。更に、工具軸Tに沿った軸方向の眺めにおいて、制振部材42の向き、したがって延長軸Eは、好ましくは、
図3に示されるように直立している。言い換えれば、本実施形態では、延長軸Eは、切削部分側面35の両方に交差せずに、切削部分側面35の間に延在する。本実施形態では、
図4に示されるように、延長軸Eは、工具前面に平行又は実質的に平行である。本実施形態によれば、機械加工の間、延長軸Eは、有効逃げ面80に平行又は実質的に平行に延在し、有効逃げ面80は、工作物を切削する有効切れ刃76から延在する。
【0046】
[0045] 本例によれば、部材外周面54は、円筒形状を有し、部材外周面54の中心軸は、延長軸Eと一致する。質量中心CMは、頂点によって規定される。本実施形態によれば、質量中心CMは、延長軸E上にある。本実施形態によれば、制振部材42は、工具本体12に対して中心に置かれない。言い換えれば、本実施形態では、質量中心CMは、工具軸T内にない。特に、(
図2で示される)切削部分18の上面図又は切削部分上面29の平面図において、質量中心CMの突出部は、工具軸Tからずれている。このことは、工具軸Tに対する制振部材42の偏り又は応力中心距離により、制振部材42に、機械加工力が発生させるねじり振動に対して抑制する逆トルクを生成させることを可能にするため、有利である。このことは、本実施形態では、ポケット15も工具軸Tに対して中心に置かれない場合に当てはまる。本実施形態によれば、切削部分18の上面図又は切削部分上面29の平面図において、
図2に示すように、質量中心CM及び旋削インサート14は、好ましくは、工具軸Tの両側に位置する。
図2に示されるように、質量中心CMは、旋削インサート14の真下、又は旋削インサート14の下に位置しない。言い換えれば、すくい面78の平面図において、質量中心CMは、旋削インサート14の突出部に重ならない。
【0047】
[0046] 制振部材42は、最大部材長さMLを有し、最大部材長さMLは、延長軸Eに沿った制振部材42の末端の間で測定される。制振部材42は、最大部材厚さMTも有し、最大部材厚さMTは、延長方向に直交する方向で制振部材42の末端の間で測定される。制振部材42が円筒形本体を有する場合、最大部材厚さMTは、円筒形本体の直径に対応することは理解されよう。最大部材長さMLは、最大部材厚さMTよりも大きい。最大部材長さMLは、好ましくは、最大部材厚さMTよりも1.2倍大きい。言い換えれば、制振部材42は、長さ対厚さ比ML/MT=LTR>1.2を有する。本実施形態によれば、長さ対厚さ比LTRは1.5である。この比率は、非刃形状切削部分を有する旋削工具で利用可能な体積及び製造規制に対して、制振部材42の形状を最適化することに直接関連する。特に、細長い形状は、例えば、球状又は立方体形状の制振部材よりも大きな回転慣性を有する。更に、細長い形状は、小型化を可能にする一方で、ポケット15内のインサート締め付け機構又は冷却剤通路38等、旋削工具10の様々な機構をなくす。現在の旋削工具10において、制振機構20の現在の位置及び向きは、比較的小さな限られた体積で達成される最大重量、製造効率及び(
図10に示す)制振検査結果の点で好ましいことがわかっている。既に述べたように、制振部材42の重量及び締め付け部分16からの距離が増大すると、切削部分18と締め付け部分16との間の距離が増大するため、より影響がある。即ち、工具がより長いことは、CNC機械からの突出がより大きいことを意味し、機械加工が生じさせる振動の増大につながるためである。
【0048】
[0047] 制振部材42は、2つの面取り部56を有することができる。各面取り部56は、部材外周面54と第1の端面50及び第2の端面52のそれぞれとの間に延在する。延長軸Eに沿った断面において、面取り部56は、垂直に出現することができる。各面取り部56は、弾性部材44に当接するように構成される。
【0049】
[0048] 制振凹部40は細長く、細長い制振部材42を収容するように構成される。本実施形態によれば、制振凹部40は、止まり穴又は凹部であり、即ち、単一開口58のみを含む。本実施形態によれば、制振凹部40は、切削部分底面31のみに開口し、開口58は、切削部分底面31に位置する。このことは、滑らかで突出のない切削部分上面29を可能にし、これにより、中断なくチップが流れる道を与える。更に、この平滑な上面は、主観的に美しく、市場価値の点で有利であるとみなされる。
【0050】
[0049]
図1~
図4及び
図9に注意を向けられたい。制振凹部40は、凹部延長軸REを有する。凹部延長軸REは、軸方向ADと共に非ゼロ制振凹部角度βを形成する。制振凹部角度βは、好ましくは、45~135度の範囲に及ぶ。本実施形態によれば、制振凹部角度βは、96度を示す。制振機構20を据え付け、工具が動作していない場合、制振部材の延長軸E及び凹部延長軸REは、位置合わせされていることは理解されよう。
【0051】
[0050] 制振凹部40は、凹部基部面62から延在する凹部壁60を有することができ、凹部基部面62は、延長軸REに沿った制振凹部40の最内部分に位置する。凹部壁60は、円筒形とすることができる。凹部壁60は、本体底面30のみに開口することができる。開口58において又は開口58に隣接して、凹部壁60は、凹部雌ねじ64を有することができ、凹部雌ねじ64は、蓋48の外側蓋雄ねじ66を受け入れ、外側蓋雄ねじ66に対応するように構成される。蓋48は、内側蓋雌ねじ68を有することもでき、内側蓋雌ねじ68は、以下で更に説明するように調節ねじ70を受け入れ、調節ねじ70に対応するように構成される。
【0052】
[0051] 本実施形態によれば、制振機構20は、2つの弾性部材44を有する。各弾性部材44は、それぞれの面取り部56に当接することができる。各弾性部材44は、ゴム製弾性Oリングとすることができる。
【0053】
[0052] 本実施形態によれば、制振機構20を組み立てた位置において、較正機構46は、以下の順で、圧力板72と、調節ねじ70と、蓋48と、位置決めナット74とを含むことができる。圧力板72は、調節ねじ70の第1の端部と弾性部材44との間に位置し、調節ねじ70は、内側蓋雌ねじ68に螺入され、位置決めナット74は、調節ねじ70の第2の端部に螺入される。蓋48を凹部雌ねじ64にしっかりと締結した後、調節ねじ70を回転させ、制振機構20を較正する、即ち、圧力板72を介してそれぞれの弾性部材44上に加えられる力の量を調節することができ、圧力板72は、弾性部材44上に力を分散させる。制振機構20を適切に較正した後、即ち、所望の力を達成した後、位置決めナット74を締結し、現在の較正又は調節ねじ70の場所を保持する。
【0054】
[0053]
図8及び
図9に注意を向けられたい。第2の実施形態によれば、制振凹部40は、本体上面28のみに開口している。制振機構20の特徴の残りは、上記で開示した第1の実施形態と同様又は同一である。