(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】シェブロンローラを有する軸受
(51)【国際特許分類】
F16C 19/26 20060101AFI20230801BHJP
F16C 33/34 20060101ALI20230801BHJP
F16C 33/58 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
F16C19/26
F16C33/34
F16C33/58
(21)【出願番号】P 2020547320
(86)(22)【出願日】2018-11-27
(86)【国際出願番号】 FR2018053013
(87)【国際公開番号】W WO2019110891
(87)【国際公開日】2019-06-13
【審査請求日】2020-07-29
【審判番号】
【審判請求日】2022-07-29
(32)【優先日】2017-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】520195707
【氏名又は名称】ジェローム・デュビュ
【氏名又は名称原語表記】Jerome DUBUS
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(72)【発明者】
【氏名】ジェローム・デュビュ
【合議体】
【審判長】小川 恭司
【審判官】内田 博之
【審判官】尾崎 和寛
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第230884(US,A)
【文献】米国特許第3938865(US,A)
【文献】特開平7-83314(JP,A)
【文献】特開2009-52743(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 25/20 , F16C 33/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
転がり軸受機構であって、
ロッド(110)と、
前記ロッド(110)を同軸で囲む外側リング(130)と、
前記ロッド及び前記外側リングの長軸と平行な長軸を有するローラ(120)と、
を含み、
各ローラ(120)は前記ロッド(110)と前記外側リング(130)との間に挟まれて、前記ローラのねじ山は前記ロッドのねじ山と、及び前記外側リングのねじ山と噛合い、
前記転がり軸受機構は、前記ロッド、前記外側リング、及び前記ローラのそれぞれがそれぞれの右手ねじ及びそれぞれの左手ねじを有し、前記ロッドの前記右手ねじは機構の第一の軸セグメント(S1)に位置し、前記左手ねじは機構の第二の軸セグメント(S2)に位置し、
前記第二の軸セグメントは前記第一の軸セグメントから軸方向に離れており、
前記第一の軸セグメント内において前記ローラの前記左手ねじ山(122a)が前記ロッドの前記右手ねじ(112a)と、及び前記外側リングの前記左手ねじ(132a)と噛合い、
前記第二の軸セグメント内において前記ローラ(120)の前記右手ねじ山(122b)が前記ロッド(110)の前記左手ねじ(112b)と、及び前記外側リング(130)の前記右手ねじ(132b)と噛合い、
前記ロッド(110)には、前記ロッド(110)の前記右手ねじ(112a)を、前記ロッド(110)の前記左手ねじ(112b)から分離する実質的に円筒形の部分から構成され
、第一の取り外し溝(116)が備えられ、
前記各ローラ(120)には、前記ローラ(120)の前記右手ねじ(122b)を、前記ローラ(120)の前記左手ねじ(122a)から分離する実質的に円筒形の部分から構成され
、第二の取り外し溝(126)が備えられ、
前記ロッド(110)、前記外側リング(130)、および前記ローラ(120)の、前記右手ねじ(112a、122b、132b)のそれぞれ、ならびに前記左手ねじ(112b、122a、132a)のそれぞれは、それぞれの長軸について複数の回転にわたって延
びる、
転がり軸受機構。
【請求項2】
前記ロッドの前記右手ねじ(112a)、前記ローラの前記左手ねじ(122a)、及び前記外側リングの前記左手ねじ(132a)は、相互に等しい、又は実質的に相互に等しいねじれ角を有し、
また
前記ロッドの前記左手ねじ(112b)、前記ローラの前記右手ねじ(122b)、及び前記外側リングの前記右手ねじ(132b)は、相互に等しい、又は実質的に相互に等しいねじれ角を有し、
ゼロピッチの差動スクリューを形成することを特徴とする、請求項1に記載
の転がり軸受機構。
【請求項3】
前記ロッドの前記右手ねじ(112a)、前記ローラの前記左手ねじ(122a)、及び前記外側リングの前記左手ねじ(132a)は、第一の条数を有し、
また
前記ロッドの前記左手ねじ(112b)、前記ローラの前記右手ねじ、及び前記外側リングの前記右手ねじ(132b)は、第一の条数とは異なる第二の条数を有し、
前記転がり軸受機構は機構の軸方向負荷の2つの方向で異なる負荷容量を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載
の転がり軸受機構。
【請求項4】
前記ロッド(110)は前記ロッドの軸に沿った第一の軸方向長さ(L1)にわたって前記右手ねじ(112a)を有し、前記ローラ(120)は前記ローラに沿った前記第一の軸方向長さにわたって前記左手ねじ(122a)を有し、前記外側リングは前記外側リング(130)に沿った前記第一の軸方向長さにわたって左手ねじを有し、また
前記ロッド(110)は前記ロッドの軸に沿った第二の軸方向長さ(L2)にわたって前記左手ねじ(112b)を有し、前記ローラ(120)は前記ローラに沿った前記第二の軸方向長さにわたって前記右手ねじ(112b)を有し、前記外側リング(130)は前記外側リングに沿った前記第二の軸方向長さにわたって前記右手ねじ(132b)を有し、
前記第二の軸方向長さは前記第一の軸方向長さと異なり、
前
記転がり軸受機構は機構の軸方向負荷の2つの方向で異なる負荷容量を有することを特徴とする、請求項1-3のいずれか1つに記載
の転がり軸受機構。
【請求項5】
前記ローラはそれぞれ一体的に作成され、及び前記ロッドは一体的に作成されることを特徴とする、請求項1-4のいずれか1つに記載
の転がり軸受機構。
【請求項6】
前記外側リング(130)は2つの部品(130’、130’’)から成り、そのうちの1つ部品が前記左手ねじ(132a)を有し、もう1つの部品が前記右手ねじ(132b)を有することを特徴とする、請求項1-5のいずれか1つに記載
の転がり軸受機構。
【請求項7】
前記ローラが中空であることを特徴とする、請求項1-6のいずれか1つに記載
の転がり軸受機構。
【請求項8】
ドライブスクリューによって駆動される直線運動を生成する機械的駆動装置(700;800)であって、
請求項1-7のいずれか1つに記載
の転がり軸受機構(100)と、
ドライブスクリュー(710)を含み、
それらは両方が、前
記転がり軸受機構及び前記ドライブスクリューに共有されるシャフト又はシャンク(720;110)に取り付けられ、
前
記転がり軸受機構は前記共有のシャフト又はシャンクをガイドするための軸受を形成するように構成される、機械的駆動装置。
【請求項9】
機械的駆動装置はさらに、前記ドライブスクリューが取り付けられる別のロッド(720)を含み、
請求項1-7のいずれか1つに記載
の転がり軸受機構(100)は前記別のロッド(720)に取り付けられ、
請求項1-7のいずれか1つに記載
の転がり軸受機構の前記ロッド(110)は中空であり、前記別のロッド(720)に取り付けられ、
前記別のロッドは、前記共有のシャフト又はシャンクを構
成する、
ドライブスクリュー(710)によって駆動される直線運動を生成する、請求項8に記載の機械的駆動装置。
【請求項10】
請求項1-7のいずれか1つに記載
の転がり軸受機構の前記ロッド(110)は、前記転がり軸受から長軸方向に外へ延び、
前記ドライブスクリュー(710)は、前記転がり軸受機構(100)の前記ロッド(110)に直接取り付けられ、
前記ロッドは、前記共有のシャフト又はシャンクを構
成する、
ドライブスクリュー(710)によって駆動される直線運動を生成する、請求項8に記載の機械的駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、転がり軸受の分野に関し、そのような軸受は、回転するアセンブリを支持してガイドする機構である。
【背景技術】
【0002】
従来の転がり軸受は、玉軸受、テーパローラ軸受、又はもちろん円筒ローラ軸受を含み、そのような従来の軸受は、その低いコストのため広く使われているが、特に大きい負荷に耐えるように設計されるとき全体としてのサイズが大きいという欠点がある。ねじ山又はねじ谷を有するローラのシステムに基づく転がり軸受が存在し、それらは従来の軸受よりも高価であるが、荷重容量がより高く、及び/又はよりコンパクトであって全体のサイズがより小さく、全体として性能の向上を提供する。
【0003】
仏国特許第3031554号は、このカテゴリーに属する転がり軸受を開示し、外側リング、内側リング、及び2つのリングの間に挟まれるローラを含み、各ローラは少なくとも1つのねじ部を有し、リングの少なくとも1つは少なくとも1つのねじ部を有し、ローラのねじ部は該リングのねじ部と噛合い、外側リング及び内側リングは回転するときに互いに軸方向には動かず、すなわちローラのスクリューはピッチがゼロであるようにねじ山は作られる。その軸受において、各ローラは円形の溝を有する部分を有し、少なくとも1つのリングは円形の溝を有する部分を有し、ローラの溝の部分はリングの溝の部分と噛合う。
【0004】
したがって、仏国特許第3031554号の転がり軸受は、米国特許第9435377号に記載の円状溝を有するローラのシステムを使う軸受の構造、及び仏国特許出願第2999674号に記載のねじ山を有するローラのシステムを使う軸受の構造を組み合わせたものであり、それにより、円状溝を有するシステムに固有の軸方向のスリップのリスクを、ねじ山を有するシステムの故障の原因であるローラを同期させるための歯のセットを必要とすることなく回避する。
【0005】
国際特許出願PCT/CH81/00036は、ケーシング内のシャフト及びねじローラによって形成される接線ホイールを備えた、エンドレススクリュー、又は「ウォームスクリュー」として動作する減速機構を開示する。
【発明の概要】
【0006】
仏国特許第3031554号の軸受の優位点は、その設計及び使用法の両方が複雑であるという代償を払って初めて取得できるものであり、設計、製造、及び組立は円状溝の特性、及びねじ山の特性に同時に依存するから、使用することが技術的に困難な解決策となっている。
【0007】
本願発明の目的の1つは、軸方向の転がり軸受又はスラスト軸受という意味における当接又はスラスト軸受として使用可能であり、既存の転がり軸受の代替品を提供する技術を形成し、所与の全体サイズの割りに優れた負荷容量を生み、より信頼性が高く、製造及び組立が簡単で容易であると同時に安価でもあるローラ軸受を提案することである。
【0008】
そのため、本願発明は、ロッドと、ロッドを同軸で囲む外側リングと、ロッド及び外側リングの長軸と平行な長軸を有するローラと、を含み、各ローラはロッドと外側リングとに挟まれて、ローラのねじ山はロッドのねじ山と、及び外側リングのねじ山と噛合い、その転がり軸受機構内においてロッド、外側リング、及びローラのそれぞれがそれぞれの右手ねじ及びそれぞれの左手ねじを有し、ロッドの右手ねじは機構の第一の軸セグメントに位置し、左手ねじは機構の第二の軸セグメントに位置し、第二の軸セグメントは第一の軸セグメントから軸方向に離れており、第一の軸セグメント内においてローラの左手ねじ山がロッドの右手ねじ、及び外側リングの左手ねじと噛合い、第二の軸セグメント内においてローラの右手ねじ山がロッドの左手ねじ、及び外側リングの右手ねじと噛合う、転がり軸受機構を提供する。
【0009】
異なる応用への適合、及び製造が既存の類似技術よりも容易なこの機構において、ねじ山は逆の「ねじれ方向」を有し、それによりローラが軸方向にスリップすることを回避するように自然に補償する効果があるため、高速回転時を含む高い負荷の下でローラに優れた安定性がもたらされるものであり、この方法によればねじ山はそれ自体で負荷を伝達する機能とローラを同期させる機能との両方の役割を果たすから、スリップがほとんどなく工具寿命が長いうえに高い負荷容量を有するシステムを得ることが可能となる。
【0010】
この機構は組立に関しても、溝や歯のセットに関与しないため、スクリューを締めることによる組立も非常に簡単であるという優位点を有する。
【0011】
本願発明の転がり軸受機構は、次のような有利な特徴を有し得る。
-ロッドの右手ねじ、ローラの左手ねじ、及び外側リングの左手ねじは、相互に等しい、又は実質的に相互に等しいねじれ角(helix angle)を有し得て、またロッドの左手ねじ、ローラの右手ねじ、及び外側リングの右手ねじは、相互に等しい、又は実質的に相互に等しいねじれ角を有し得るから、ゼロピッチの差動スクリュー(differential screw)を形成する。
-ロッドの右手ねじ、ローラの左手ねじ、及び外側リングの左手ねじは、第一の条数(multiplicity number)を有し得て、またロッドの左手ねじ、ローラの右手ねじ、及び外側リングの右手ねじは、第一の条数とは異なる第二の条数を有し得るから、転がり軸受機構は機構の軸方向負荷の2つの方向で異なる負荷容量を有し得る。
-ロッドはロッドの軸に沿った第一の軸方向長さにわたって右手ねじを有し得て、ローラはローラに沿った第一の軸方向長さにわたって左手ねじを有し得て、外側リングは外側リングに沿った第一の軸方向長さにわたって左手ねじを有し得て、及びロッドはロッドの軸に沿った第二の軸方向長さにわたって左手ねじを有し得て、ローラはローラに沿った第二の軸方向長さにわたって右手ねじを有し得て、外側リングは外側リングに沿った第二の軸方向長さにわたって右手ねじを有し得て、第二の軸方向長さは第一の軸方向長さと異なることも可能であって、転がり軸受機構は機構の軸方向負荷の2つの方向で異なる負荷容量を有し得る。
-各ローラは一体的に作成され得て、及びロッドは一体的に作成され得る。
-外側リングは2つの部品から成り得て、そのうちの1つが左手ねじを有し、もう1つが右手ねじを有してもよい。
-ローラは中空でもよい。
【0012】
本願発明は、ドライブスクリューによって駆動される直線運動を生成する機械的駆動装置も提供し得て、その機械的駆動装置は本願発明の転がり軸受機構と、ドライブスクリューを含み、それらは両方が、転がり軸受機構及びドライブスクリューに共有されるシャフト又はシャンクに取り付けられ、転がり軸受機構は共有のシャフト又はシャンクをガイドするための軸受を形成するように構成される。
【0013】
本願発明の機械的駆動装置は次のような有利な特徴を有し得る。
-機械的駆動装置はさらに、ドライブスクリューが取り付けられる別のロッドを含み得て、本願発明の転がり軸受機構は該別のロッドに取り付けられ得て、該別のロッドは、該共有のシャフト又はシャンクを構成し、ドライブスクリューの重要な部分である。
-ドライブスクリューは、本願発明の転がり軸受機構のロッドに直接取り付けられてもよく、該ロッドは、該共有のシャフト又はシャンクを構成し、ドライブスクリューの重要な部分である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
非限定的な例を使い、添え付けの図面を参照して下に提供される実施形態の詳細な記述を読むことによって、本願発明は、よりよく理解でき、他の優位点も明らかになる。
【0015】
【
図1A】
図1Aは、本願発明の転がり軸受機構の分解図である。
【
図3A】
図3Aは、
図1Bの組立られた軸受機構のロッドに対するローラの位置を示す図である。
【
図3B】
図3Bは、
図1Bの組立られた軸受機構の外側リングに対するローラの位置を示す図である。
【
図4A】
図4Aは、異なる条数を有するねじ山を備えたローラを示す図である。
【
図4B】
図4Bは、異なる条数を有するねじ山を備えたロッドを示す図である。
【
図4C】
図4Cは、異なる条数を有するねじ山を備えた外側リングを示す図である。
【
図7】
図7は、
図1Aの転がり軸受機構を組み入れた第一のデバイスを示す図である。
【
図8】
図8は、
図1Aの転がり軸受機構を組み入れた第二のデバイスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本願発明の転がり軸受機構が
図1A及び1B、2Aから2C、3A及び3B、4Aから4C、5A及び5B、6、7、及び8に示される。
【0017】
図1Aは、本願発明の転がり軸受機構を構成する主要素を図示するための特定の転がり軸受機構の例を示す。
本願発明及び本実施形態のいずれも、この特定の設定に限定されるものではないことは明らかである。
【0018】
図1Aに示されるとおり、転がり軸受機構100は、ロッド110、ロッドの周りに同軸に取り囲んで配置される外側リング130、及びロッドと外側リングとの間に挟まれ、その長軸がリングの長軸と平行である複数のローラ120を含んでもよい。
ロッド110は、中空ではなくてもよく、中空であってもよいが、中空であるとき、それは「内側リング」とも呼ばれ得る。ロッド110は、例えば
図8に示される装置のように、外側リング130から軸方向にいずれの方向にも延び得る。
【0019】
図2A、2B、及び2Cに詳細に示されるとおり、ロッド110及びローラ120には、外側のねじ山が備えられ、外側リング130には内側のねじ山が備えられ、ねじ山はそれぞれの軸について複数の回転にわたって延び、
図1Bに示されるような組み立てられた軸受においてローラのねじ山が、
図3A及び3Bにそれぞれ示されるようにロッドのねじ山、及び外側リングのねじ山と噛合うように構成される。
【0020】
本願発明の原理によれば、
図1B、2A、2B、及び2Cに示されるとおり、ロッド、ローラ、及び外側リングは、組み立てられた軸受の第一の軸セグメントS1に位置するように設計された第一のねじ山、それぞれ112a、122a、及び132a、を備え、及び組み立てられた軸受の第二の軸セグメントS2に位置するように設計された第二のねじ山、それぞれ112b、122b、及び132b、を備え、第二のねじ山、112b、122b、及び132b、は、第一のねじ山、112a、122a、及び132aの方向と逆の方向又は「ねじれ方向」を向く。
【0021】
ロッド110の第一のねじ山112aは、第一の方向又は「ねじれ方向」、例えば右手ねじ、を有し、ロッド110の第二のねじ山112bは、第一のねじれ方向と逆である第二のねじれ方向、この例において左手ねじ、を有し、ローラ120の第一のねじ山122a及び外側リング130の第一のねじ山132aは、第二のねじれ方向、すなわちこの例において左手ねじ、を有し、ローラ120の第二のねじ山122b及び外側リング130の第二のねじ山132bは、第一のねじれ方向、すなわちこの例において右手ねじ、を有し、それにより、逆のねじれ方向を有するねじ山セグメントを含む構造が形成され、それはローラ、ロッド、外側リングそれぞれ個々に「シェブロン(山型、くの字型)」パターンを有する、といえる。
【0022】
図2A、2B、及び2Cに示されるとおり、軸セグメントS1のねじ山はロッドに沿った、ローラに沿った、及び外側リングに沿った第一の軸方向長さL1にわたって形成され、軸セグメントS2のねじ山はロッドに沿った、ローラに沿った、及び外側リングに沿った第二の軸方向長さL2にわたって形成され、第一の軸方向長さL1は、第二の軸方向長さL2と等しくてもよく、又は異なっていてもよい。
【0023】
組み立てられた軸受において、
図3A及び3Bに示されるとおり、ローラ120の第一のねじ山122aは、ロッド110の第一のねじ山112aと、及び外側リング130の第一のねじ山132aと噛合い、ローラ120の第二のねじ山122bは、ロッド110の第二のねじ山112bと、及び外側リング130の第二のねじ山132bと噛合い、ローラの左手ねじ122aが、ロッドの右手ねじ112aと、及び外側リングの左手ねじ132aと噛合い、ローラの右手ねじ122bが、ロッドの左手ねじ112bと、及び外側リングの右手ねじ132bと噛合う。
【0024】
加えて、ローラ、ロッド、及び外側リングの第一のねじ山は、互いに等しい、又は互いに実質的に等しいねじれ角を有し、ローラ、ロッド、及び外側リングの第二のねじ山は、互いに等しい、又は互いに実質的に等しいねじれ角を有し、ローラの、及び外側リングの右手ねじ、及びロッドの左手ねじは互いに等しい、又は互いに実質的に等しいねじれ角を有し、ローラの、及び外側リングの左手ねじ、及びロッドの右手ねじは互いに等しい、又は互いに実質的に等しいねじれ角を有する。
転がり軸受機構の、互いに噛合うねじ山と等しい、又は実質的に等しいねじれ角を備えたこの構成の直接の結果として、ロッドが外側リングに対して回転させられるとき、ローラは、ロッド及び外側リングに対して軸方向に静止し、したがって、この転がり軸受機構は差動ローラスクリュー型であり、ピッチはゼロという結果となる。
【0025】
製造中の不良、及び/又はコンポーネントの変形の結果、例えば、ローラの元の直径などの精度には一定の許容誤差が常に存在する。
したがって、実際には2つのねじ山のねじれ角を完全に等しくすることはできず、ゼロピッチの差動ローラスクリューなどの類似した装置においてもローラが1つの方向にスリップしていく傾向につながり、その傾向を歯のセットなどの保持機構によって修正する必要がある。
しかし、本願発明の転がり軸受機構においては、ロッド、ローラ、及び外側リングが逆向きのねじ山を有し、例えば、機構の第一のセグメントS1のねじ山の精度不足によるスリップが所与の向きに起こる傾向がある場合でも、そのスリップは、自動的且つ即時に、逆向きのスリップによる補償的な動作、及び/又は第二のセグメントS2のねじ山に起因する当接又はスラスト動作によって抑止され、またその逆も真である。
【0026】
逆向きのねじ山のこの補償的な動作のおかげで、本願発明のねじ式転がり軸受機構は、同期用の歯のセット、又はいかなる同等の同期システムも必要としない。
一見、この補償機構によればローラに軸方向の張力が働いてしまい、いずれ変形及び/又は破損の結果となり得る、と考えてしまうかもしれない。
実際は、システムは一方向の負荷の下で使用され、ローラは実質的に常時圧縮状態であり、スリップが誘発する残留張力は、それを変えるものではないから、上述のような軸方向の張力現象は回避される。
【0027】
右手ねじ、及び左手ねじの両方の全てのねじ山は実質的に同じねじれ角を有する、及び/又は同じ軸方向長さにわたって形成される。
【0028】
代わりに、第一のセグメントS1にあるロッド、ローラ、及び外側リングのねじ山が第一のねじれ角を有し得て、及び/又は第一のセグメントS1がねじ山が形成される第一の軸方向長さL1を有し得て、及び、第二のセグメントS2にあるロッド、ローラ、及び外側リングのねじ山が第二のねじれ角を有し得て、及び/又は第二のセグメントS2がねじ山が形成される第二の軸方向長さL2を有し得て、ここで、第二のねじれ角及び第二の軸方向長さがそれぞれ第一のねじれ角及び第一の軸方向長さとは異なる。
この構成は、例えば転がり軸受機構に適用される力の結果のスリップの差を補償するためであると考えられ得る。
【0029】
ロッド及び外側リングのねじ山のプロフィールが凸面であるとき、ローラのねじ山のプロフィールは凹面であってもよく、又はロッド及び外側リングのねじ山のプロフィールが凹面であるとき、ローラのねじ山のプロフィールは凸面であってもよく、又は全てのねじ山が台形プロフィールを有してもよい。
【0030】
転がり軸受機構のねじ山に曲線接触を有する幾何学的形状を適用することも可能であり、ねじ山同士が噛合う接触領域は、接触点で画定される代わりに、接触線で画定され、それによって負荷容量及び/又は工具寿命を増大させることが可能となる。
【0031】
ねじ山、特にローラのねじ山は、一条ねじに限定されるものではなく、例えば二条ねじ、又は四条ねじなどの複数条のねじでもよく、それらは、条数が2及び4である、とそれぞれ表現される。
ローラとロッドとの間、及びローラと外側リングとの間の接触点の数、又は接触の総面積は、ねじの条数に比例して増加し、平行して転がり軸受機構の容量も増加する。
【0032】
セグメントS1及びS2の条数を、例えば螺旋のピッチ(helix pitch)及び/又は長さを不変に維持したまま、それぞれ独立して変えることが可能である。
したがって、
図4A、4B、及び4Cは、それぞれのセグメントS2の条数がセグメントS1の条数の2倍であるねじを備えたローラ、ロッド、及び外側リングを示す。
セグメントS1又はS2のいずれにおいても、適切に噛合うためには、ローラのねじ山は、螺旋ピッチ、歯の頂部のプロフィール(crest profile)及び高さ、及びロッドのねじ山と噛合うローラのねじ山を示すローラ機構の軸の断面
図5A及び斜視
図5Bに示されるようなセグメントS1とS2で条数が異なるねじ山の条数を考慮したうえで、ロッドのねじ山及び外側リングのねじ山と対応している必要がある。
【0033】
螺旋ピッチ、ねじ山が形成される軸方向長さ、ねじ山のプロフィール及び/又は条数を変えることにより、ローラとロッドとの間、及びローラと外側リングとの間の接触点の数、又は接触の総面積は、転がり軸受機構のセグメントS1及びS2それぞれ独立して調節可能であり、したがって転がり軸受機構の容量を軸負荷機構の2つの方向の間で変化させることができる。
【0034】
本願発明の転がり軸受機構の動作の優位点(高速回転時も含めたサイズ、重さ、高い負荷容量、耐久性、又は安定性)とは別に、機構の構造により、例えばねじれ角、ローラの数、ねじ山の条数及びプロフィール、又はねじ山が形成される軸方向長さなどを調節することにより、様々な応用に容易に適合させることが可能となる。
【0035】
歯車又は歯のセットなどの噛み合わせの存在のため単にスクリューで止めることができないねじ山を有するローラに基づく機構と異なり、及び溝を有するローラに基づくから部品が互いに噛合うためには部品を変形させて調節することが必要となる機構と異なり、本願の新規の機構は、その組立も、ロッド、外側リング、及びローラを単に配置してスクリューで止めるだけでよいため、非常に有利である。
【0036】
機構の望ましい構成は、
図1B及び2Cに示されるとおり、それぞれが一体的に作成されたローラ120、一体的に作成されたロッド110、及び第一の軸方向セグメントS1及び第二の軸方向セグメントS2にそれぞれ対応する2つの部品130’及び130’’から成る外側リング130を含むことである。
【0037】
一体的なローラ及び/又は一体的なロッドを使う代わりに、各ローラを2つの部品から作成し、及びロッドを2つの部品から作成し、その後組み立てることが可能である。
外側リングの2つの部品130’及び130’’は、互いに相対的な回転方向の動きができないようにキー132によって拘束され、一体的に作成された、又は複数の部品から作成された、軸方向に予備負荷をかける役割をし得るシム134によって分離されてもよい。
【0038】
ロッドには取り外し溝116が提供されてもよく、また、各ローラには取り外し溝126が提供されてもよく、これらの各溝は、第一のねじ山を第二のねじ山から分離する実質的に円筒形の部分から構成され、製造に使われるグラインダ、ミル、又はカッタなどの工具の取り外しを容易にする。
この方法によれば、ロッドの、及びローラの第一のねじ山が、ロッドの、及びローラのそれぞれの第二のねじ山から軸方向に離され、実質的に円筒形の部分が第一ねじ山からそれぞれの第二のねじ山まで延び、転がり軸受の第一の軸セグメントS1が転がり軸受の第二の軸セグメントS2から軸方向に離される。
【0039】
ロッド110、ローラ120、及び外側リング130は、旋転(whirling)、高精度研削、高硬度研削、及び研磨などの加工技術を使って製造され得て、ロッド及びローラは、圧延で製造され得て、外側リングはタッピングで製造され得る。
【0040】
上にリストされ、詳細に説明された要素に加えて、
図1Aに示される転がり軸受は、ローラを保持する装置を有し、その装置に含まれるのは、ロッドと外側リングとの間に取り付けられ、対応するローラの端部が延びたジャーナル124a及び124bを受ける円筒形のリセス152a及び152bを備えた環状ガイド150a及び150b、環状ガイドを保持するために外側リングに配置される対応する溝に取り付けられるリテイナーリング160a及び160b、及び汚染を防止し潤滑剤を保持するためのシーリングガスケット170a及び170bである。
ローラのジャーナルを受けるための環状ガイドのリセス152a及び152bは、この例において、スルーホールとして示されるが、例えば、潤滑剤を軸受内に保つために、転がり軸受のシーリングを向上するためにスルーホールではないリセスであってもよい。
【0041】
2つの環状ガイド150a及び150bがこの例で示され、それぞれは一体型で作られ、それらは軸受100の2つの反対側に位置するが、少なくとも2つの部品から作られ、転がり軸受の中央部、例えば取り外し溝126、に位置する1つのみのガイドを使うことも可能である。
【0042】
1つのみの環状ガイドが使われる場合、一体型ローラの場合はリセスはスルーホールであり、2つ以上の部品によるローラの場合、リセスはスルーホールではなく、後者の場合、それぞれのローラの部品同士が回転方向及び軸方向に相対的に動かないようなシステムが使用され得る。
【0043】
代わりに、ローラのガイドを有さずに本願発明の転がり軸受機構を実行することも可能である。
【0044】
上に、ジャーナル124a及び124bを備えた中空ではないローラ120を有する機構が説明されたが、例えば軽量化のため、
図6に断面が示されるローラのように環状断面を有する中空のローラ120’を使用することも可能であることは明らかであり、その場合、例えばリセス152a及び152bをローラと軸係合するように設計されたジャーナルで置き換えることにより、環状ガイドをローラの形状に適合させる必要がある。
【0045】
その高い負荷容量のため、本願発明の転がり軸受機構は、ボールスクリュー又はローラスクリューなどの高負荷容量のスクリューとの組み合わせで使用されると特に有効である。
【0046】
したがって、機械的駆動装置は本願発明の転がり軸受機構及びドライブスクリューを含み得て、それらの両方は転がり軸受機構及びドライブスクリューに共通のシャフト又はシャンクに取り付けられ、転がり軸受機構は、ドライブスクリューの動きを制限する軸転がり軸受としての当接又はスラスト軸受を形成するように構成され、共通のシャフト又はシャンクは転がり軸受機構によって回転がガイドされる。
【0047】
例えば、
図7は、ドライブスクリューによって駆動される直線運動を生む機械的駆動装置700を示し、本願発明の転がり軸受機構100も取り付けられる共通のシャフト又はシャンクを構成する別のロッド720に取り付けられたドライブスクリュー710を含み、中空のロッド110は別のロッド720にかぶせられ、締付け要素740によって締付けられる。
スクリュー710はローラスクリューでもよく、ロッド720は、全体に又は部分的にねじ山が設けられているロッドでもよく、ドライブスクリューの重要な部品である。
【0048】
代わりに、スクリュー710はボールスクリューでもよく、ロッド720は、全体に又は部分的にねじ山が設けられているロッドでもよく、又はスプラインもしくはフルートシャフトでもよい。
【0049】
そのような駆動装置において、本願発明の転がり軸受機構は大容量軸受として使用され得る。
【0050】
図7に示される例の代替例が
図8に示され、装置700よりも高い完成度レベルの装置800が示される。
装置700と同様に、装置800は、共有する軸に沿って一直線上に取り付けられたドライブスクリュー710及び本願発明の転がり軸受100を含むが、転がり軸受のロッド110は長軸方向に転がり軸受から外へ延び、共有のシャフト又はシャンクとして機能し、スクリュー710は、ドライブスクリュー710の重要な部品であり得る該ロッド110に直接取り付けられる。
【0051】
転がり軸受機構100のローラ120及び外側リング130を受けるセグメントの外で、ロッド110は部分的に又は全体的にねじ山が設けられてもよく、又はスプライン又はフルートシャフトの形態のセグメントを有してもよい。