(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】脱水素化触媒の除去および洗浄
(51)【国際特許分類】
B01J 23/28 20060101AFI20230801BHJP
B01J 38/62 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
B01J23/28 Z
B01J38/62
(21)【出願番号】P 2020570441
(86)(22)【出願日】2019-06-04
(86)【国際出願番号】 IB2019054647
(87)【国際公開番号】W WO2019243929
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2022-04-01
(32)【優先日】2018-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CA
(73)【特許権者】
【識別番号】513269848
【氏名又は名称】ノヴァ ケミカルズ(アンテルナショナル)ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガオ、シャオリャン
(72)【発明者】
【氏名】シマンゼンコフ、ワシリー
(72)【発明者】
【氏名】グーダルズニア、シャーヒン
(72)【発明者】
【氏名】バーンズ、マリー
(72)【発明者】
【氏名】サリバン、デイビッド
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0255986(US,A1)
【文献】特開昭59-092027(JP,A)
【文献】特表2017-532335(JP,A)
【文献】特開2007-216222(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 ー 38/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つまたは複数の容器および関連する配管から触媒を除去する方法であって、前記触媒は、以下からなる群:
i) Mo
0.9-1.1V
0.1-1Nb
0.1-0.2Te
0.01-0.17X
0-2O
dを含む触媒で、式中Xは、Pd、Sb、Ba、Al、W、Ga、Bi、Sn、Cu、Ti、Fe、Co、Ni、Cr、Zr、Pt、Caならびにそれらの酸化物および混合物から選択され、dは、触媒の原子価を満たす数である触媒、および
ii) 式、Mo
aV
bNb
cTe
eO
dの触媒で、式中、
aは、0.75~1.25であり、
bは、0.1~0.5であり、
cは、0~0.5であり、
eは、0~0.35であり、
dは、混合酸化物触媒の原子価状態を満たす数値である、触媒、
から選択され
、アルミナ担体上
に担持され、
前記方法は、前記触媒を触媒1~5gあたり0.5モル
溶液以上のシュウ酸溶液10~100mlと20℃~100℃の温度で1時間以上接触させることを含む、方法。
【請求項2】
リアクターの管を通る前記溶液の周期的ポンピングを含む撹拌を使用
することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記触媒およ
び担体が、前記リアクターに関連する前記配管にファウリングを形成する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記配管が、鋼またはステンレス鋼である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記触媒が、1つまたは複数のリアクターの床である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
Pd、PtおよびAuを含む高価な金属が、濾過、沈殿、および浮上を含む1つまたは複数の適切な手段によって、触媒および担体の前記溶液から分離される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記触媒が、式
Mo
1
V
0.25-0.45
Te
0.10-0.16
Nb
0.13-0.16
X
0-02
O
d
を有し、式中dが、前記触媒の原子価を満たす数である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記触媒が、式
Mo
1
V
0.12-0.49
Nb
0.1-0.17
Te
0.01-0.17
X
0-2
O
d
を有し、式中dが、前記触媒の原子価を満たす数である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記触媒が、式
Mo
1.0
V
0.32-0.49
Nb
0.14-0.17
Te
0.10-0.17
X
0-2
O
d
を有し、式中dが、前記触媒の原子価を満たす数である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記触媒が、式
Mo
1
V
0.25-0.45
Nb
0.13-0.16
Te
0.1-0.16
X
0-2
O
d
を有し、式中dが、前記触媒の原子価を満たす数である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記触媒が、式
Mo
1
V
0.25-0.35
Nb
0.13-0.16
Te
0.1-0.16
X
0-2
O
d
を有し、式中dが、前記触媒の原子価を満たす数である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記触媒が、式
Mo
1.0
V
0.12-0.19
Nb
0.19-0.20
Te
0.06-0.07
を有し、式中dが、前記触媒の原子価を満たす数である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
式i)において、Xが、Moの原子あたり0~1原子までの量で存在し得る、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
式i)において、Xが、Moの原子あたり0.001から1原子の量で存在し得る、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つまたは複数のC2~4パラフィンを対応するアルケンへと脱水素するために使用される混合酸化物触媒を、1つまたは複数のリアクター(Reactor)および連結された配管から除去することに関する。
【背景技術】
【0002】
1つまたは複数のC2~4パラフィンの、対応するアルケンおよび誘導体、例えば酢酸、酢酸ビニル、アクリラートエステルなどのへの酸化的脱水素化に対する関心が高まっている。リアクターおよび相互連結された配管からの、触媒または残留物の除去に関連する技術は、ほとんどない。触媒および残留物の除去は、リアクターおよび配管の物理的処理を伴う傾向があり、有害の可能性がある触媒粉塵の形成をもたらす。
【0003】
2012年7月17日にMagnaldoに交付され、Commissariat a L’Energie Atomic;Compagnie General des Matiers Nuclealresに譲渡されたU.S.Patent 8,221,640は、硝酸とシュウ酸などのポリカルボン酸との混合物を使用して、原子炉の管に堆積した固形物の蓄積を除去する方法を教示している。この参考文献は、そのような堆積物を可溶化するためにシュウ酸を単独で使用することを示唆しておらず、また、オレフィンを調製するための酸化的脱水素化触媒についても言及していない。
【0004】
Lopes-Nieto(US 7,319,179は現在失効)およびSimanzhenkov(US 20170210685)など、多成分金属酸化物触媒の形成を開示している多くの参考文献がある。これらの方法は、通常、成分の溶液を形成し、それらを水熱処理を受け、プレ触媒を乾燥させ、次にそれを酸化させることを含む。例えば、触媒は、水酸化物、硫酸塩、硝酸塩、ハロゲン化物、低級(C1~5)モノまたはジカルボン酸、およびアンモニウム塩または金属酸自体などの可溶性金属化合物の水溶液を混合することによって調製され得る。例えば、触媒は、メタバナジン酸アンモニウム、シュウ酸ニオブ、モリブデン酸アンモニウム、テルル酸などの溶液を混合することによって調製され得る。次に、得られた溶液を、通常は100~150℃の空気中で乾燥させ、N2、He、Ar、Neおよびそれらの混合物からなる群から選択されるような不活性ガスのフロー中で、200~600℃、好ましくは300~500℃でか焼する。か焼工程は、1~20時間、典型的には5~15時間、通常は約10時間かかる場合がある。得られた酸化物は、通常は非水溶性の、もろい固体である。
【0005】
上記の手順、特に乾燥および酸化工程を考慮すると、シュウ酸の使用のみで触媒を溶解できることは驚くべきことである。さらに、アルミナ担体がシュウ酸によって分散されることは予想外であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、1つまたは複数の容器および関連する配管から、触媒の床を除去する方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、1つまたは複数の容器および関連する配管から、触媒の床を除去する方法であって、当該触媒は、以下からなる群:
i) Mo0.9-1.10V0.1-1Nb0.1-0.2Te0.01-0.17X0-2Odを含む触媒で、式中、Xは、Pd、Sb、Ba、Al、W、Ga、Bi、Sn、Cu、Ti、Fe、Co、Ni、Cr、Zr、Pt、Caならびにそれらの酸化物および混合物であり、dは、触媒の原子価を満たす数である、触媒;および
ii) 式、MoaVbNbcTeeOdの触媒で、式中、
aは、0.75~1.25、好ましくは0.90~1.10であり、
bは、0.1~0.5、好ましくは0.25~0.4であり、
cは、0~0.5、好ましくは0.1~0.35であり、
eは、0~0.35、好ましくは0.1~0.3であり、
dは、混合酸化物触媒の原子価状態を満たす数値である、触媒、
から選択され、
任意選択的に、Al2O3またはAl(O)OHまたはこれらの組み合わせの形態のアルミナを典型的に含むアルミナ担体上で、当該触媒を、触媒1gあたりの0.5モル以上、典型的には1M以上、溶解度限界までのシュウ酸の水溶液10~100mLと、処理温度20℃~飽和溶液の沸騰温度まで、好ましくは60℃超、最も好ましくは80℃超で、少なくとも1時間、場合によっては20時間以上、接触させることを含む、方法の提供を目的とする。
【0008】
好ましくは、その処理は、撹拌(例えば、リアクターの管を通る溶液の周期的ポンピング)を使用して実施される。
さらなる実施形態では、触媒が、
Mo0.9-1.1V0.12-0.49Nb0.1-0.17Te0.1-0.17X0-2Od (2)
を含む上記の方法が提供され、
式中、dは、触媒の原子価を満たす数である。
【0009】
さらなる実施形態では、触媒が、
Mo0.9-1.1V0.32-0.49Nb0.14-0.17Te0.10-0.17X0-2Od (3)
を含む上記の実施形態のいずれかが提供され、
式中、dは、触媒の原子価を満たす数である。
【0010】
さらなる実施形態では、触媒が、
Mo0.9-1.1V0.25-0.45Nb0.13-0.16Te0.1-0.16X0-2Od (4)
を含む上記の実施形態のいずれかが提供され、
式中、dは、触媒の原子価を満たす数である。
【0011】
さらなる実施形態では、触媒が、
Mo0.9-1,1V0.25-0.35Nb0.13-0.16Te0.1-0.16X0-2Od (5)
を含む上記の実施形態のいずれかが提供され、
式中、dは、触媒の原子価を満たす数である。
【0012】
さらなる実施形態では、触媒が、
Mo0.9-1.1V0.12-0.19Nb0.19-0.20Te0.06-0.07X0-2Od
を含む上記の実施形態のいずれかが提供され
式中、dは、触媒の原子価を満たす数である。
【0013】
さらなる実施形態では、触媒がリアクターに関連する配管にファウリングを形成する、上記の実施形態のいずれかが提供される。
【0014】
さらなる実施形態では、配管が鋼またはステンレス鋼である、上記の実施形態のいずれかが提供される。
【0015】
さらなる実施形態では、触媒が1つまたは複数のリアクターの床である、上記の実施形態のいずれかが提供される。
【0016】
さらなる実施形態では、触媒がアルミナに担持されている、上記の実施形態のいずれかが提供される。
【0017】
さらなる実施形態では、Pd、PtおよびAuを含む高価な金属が、濾過、沈殿、および浮上を含む1つまたは複数の適切な手段によって、触媒および任意の担体の溶液から分離される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】シュウ酸添加前の触媒サンプルの写真である。
【
図2】可溶化された触媒および分散された担体の写真である。
【
図3】触媒で汚染されたステンレス鋼棒の写真である(
図3の円を参照)。
【
図4】シュウ酸での処理によって触媒を除去した
図3のステンレス鋼棒の拡大写真である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
数値範囲
実施例または別途指示された場合を除き、明細書および特許請求の範囲で使用される成分の量、反応条件などを指すすべての数字または表現は、すべての場合において「約」という用語によって修飾されるものとして理解されるべきである。したがって、反対の指示がない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲に記載の数値パラメータは、本発明が所望する特性に応じて変動し得る近似値である。少なくとも、特許請求の範囲への均等論の適用を制限する試みとしてではなく、各数値パラメータは、少なくとも報告された有効桁数を考慮して、通常の端数処理手法を適用することによって解釈されるべきである。
【0020】
本発明の広い範囲を示す数値範囲およびパラメータは近似値であるにもかかわらず、特定の例に示される数値は、可能な限り正確に報告される。しかしながら、そのような数値は本質的に、それぞれのテスト測定で見出される標準偏差から必然的に生じる一定の誤差を含む。
【0021】
また、本明細書に列挙される任意の数値範囲は、そこに含まれるすべての部分範囲を含むことを意図していることを理解されたい。例えば、「1~10」の範囲は、記載された最小値1および記載された最大値10を含んだ、その間のすべての部分範囲を含むことが意図される。つまり、最小値が1以上で、最大値が10以下である。開示されている数値範囲は連続的であるため、最小値と最大値との間のすべての値が含まれる。特に明記されていない限り、本出願で記載されている様々な数値範囲は、概算である。
【0022】
本明細書に表示されるすべての組成範囲は、合計で100パーセント(体積パーセントまたは重量パーセント)に限定され、実際にそれを超えない。当業者が容易に理解するように、実際に使用される成分の量は、最大100パーセントに合致するという理解の下、複数の成分が組成物中に存在し得る場合、各成分の最大量の合計が100パーセントを超える可能性がある。
【0023】
本明細書で使用される場合、容器とは、金属部品(例えば、壁および/または撹拌器など)および関連する配管を含む容器またはリアクターを意味し、以下に記載される混合酸化物酸化的脱水素化触媒の製造、またはアルカンのオレフィンへの酸化的脱水素化に使用され得、そのような触媒の保持、混合、水熱処理、過酸化物処理、および押し出しに使用される1つまたは複数の金属部品を有する容器を含む。
【0024】
触媒は、組成、
Mo1V0.1-1Nb0.0-1Te0.0-0.2X0-2Odを有する金属酸化物の混合物を含み得、式中、Xは、Pd、Sb Ba、Al、W、Ga、Bi、Sn、Cu、Ti、Fe、Co、Ni、Cr、Zr、Caならびにそれらの酸化物および混合物から選択され、dは、触媒の原子価を満たす数である。
【0025】
さらなる実施形態では、触媒は、式
MoaVbNbcTeeOdの触媒を含み、
式中、
aは、0.75~1.25、好ましくは0.90~1.10であり、
bは、0.1~0.5、好ましくは0.25~0.4であり、
cは、0.1~0.5、好ましくは0.1~0.35であり、
eは、0.1~0.35、好ましくは0.1~0.3であり、
dは、混合酸化物触媒の原子価状態を満たす数値である。
【0026】
触媒は、式
Mo1V0.25-0.45Te0.10-0.16Nb0.13-0.16X0-02Od (i)
を有し得、式中、dは、触媒の原子価を満たす数である。
【0027】
さらなる実施形態では、触媒は、式
Mo1V0.12-0.49Nb0-0.17Te0-0.17X0-2Od (2)
を有し得、式中、dは、触媒の原子価を満たす数である。
【0028】
さらなる実施形態では、触媒は、式
Mo1.0V0.32-0.49Nb0.14-0.17Te0.10-0.17X0-2Od (3)
を有し得、式中、dは、触媒の原子価を満たす数である。
【0029】
さらなる実施形態では、触媒は、式
Mo1V0.25-0.45Nb0.13-0.16Te0.1-0.16X0-2Od (4)
を有し得、式中、dは、触媒の原子価を満たす数である。
【0030】
さらに、触媒は、式
Mo1V0.25-0.35Nb0.13-0.16Te0.1-0.16X0-2Od (5)
を有し得、式中、dは、触媒の原子価を満たす数である。
【0031】
さらなる実施形態では、触媒は、式
Mo1.0V0.12-0.19Nb0.19-0.20Te0.06-0.07X0-2Od (6)
を有し得、式中、dは、触媒の原子価を満たす数である。
【0032】
式i)の触媒では、元素Xは、Moの原子あたり0~2原子、いくつかの実施形態ではMoの原子あたり0~1原子、いくつかの実施形態ではMoの原子あたり0.001~1原子、さらなる実施形態ではMoの原子あたり0.001~0.5原子、さらなる実施形態ではMoの原子あたり0.001~0.01原子の量で存在し得る。
【0033】
触媒を調製する方法は、当業者に知られている。
【0034】
例えば、触媒は、可溶性金属化合物、例えば水酸化物、硫酸塩、硝酸塩、ハロゲン化物、低級(C1~5)モノまたはジカルボン酸の塩、およびアンモニウム塩または金属酸自体などの水溶液を混合することによって調製することができる。例えば、触媒は、メタバナジン酸アンモニウム、シュウ酸ニオビウム、モリブデン酸アンモニウム、テルル酸などの溶液を混合し、いくつかの実施形態では、得られた溶液を不活性雰囲気下で水熱処理にかけ、140℃~190℃温度に、いくつかの実施形態では140℃~180℃に、いくつかの実施形態では145℃~175℃に6時間以上、場合によっては12時間以上、いくつかの実施形態では最大30時間、またはそれ以上加熱することによって調製することができる。
【0035】
リアクター(Parrリアクターまたはオートクレーブ)内の圧力は、1~200 psig(6.89 kPag~1375 kPag)の範囲であり得る。
【0036】
いくつかの実施形態では、加圧型リアクター内の圧力は、30~200psig(206kPag~1375kPag)、いくつかの実施形態では55psig(380kPag)~170psig(1170kPag)で大気圧より高く調整および維持される。
【0037】
さらなる実施形態では、リアクター(オートクレーブ)内の圧力は、最大約10psig(68.9kPag)、好ましくは1~8psig(6.89kPag~55.1kPag)、いくつかの実施形態では5psig(34.4kPag)未満で大気圧より高くてもよい。
【0038】
リアクター内の圧力は、圧力逃がし弁を使用して維持される。より低い圧力では、オフガスを水または高密度流体(例えば水銀)などの流体のカラムに通すことによって、圧力を維持することができる。場合により、リアクター出口の上流にコンデンサーがあってもよい。コンデンサーは、存在する場合、0℃より高く反応温度より低い温度で作動される。ガス状生成物の種類は、上記のようなリアクターから排出される。
【0039】
いくつかの実施形態では、水熱処理用の溶液(触媒前駆体)は、少量のH2O2を、触媒前駆体1グラムあたり0.3~2.5mLの30重量%H2O2水溶液で含み得る。
【0040】
次に、得られた溶液を、通常は100~150℃の空気中で乾燥させ、N2、He、Ar、Neおよびそれらの混合物からなる群から選択されるような不活性ガスのフロー中で、200~600℃、好ましくは300~500℃でか焼する。か焼工程は、1~20時間、典型的には5~15時間、通常は約10時間かかる場合がある。得られた酸化物は、通常は非水溶性の、もろい固体である。
【0041】
いくつかの実施形態では、水熱処理からの生成物は、触媒前駆体1グラムあたり0.3~2.5mLの30重量%H2O2水溶液で処理される。いくつかの実施形態では、水熱処理において、および触媒の乾燥後に二重の過酸化物処理があり得る。次に、乾燥した触媒は、湿式含浸法または噴霧乾燥などの従来の方法を使用して、アルミナ担体上に堆積される。さらなる実施形態では、10~95、好ましくは25~80、望ましくは30~45重量%の触媒は、5~90、好ましくは20~75、望ましくは55~70重量%の、Al2O3、およびAlO(OH)、およびそれらの混合物、好ましくはAl(O)OHの酸性、塩基性または中性のバインダースラリーからなる群から選択されるバインダーと、結合または凝集する。
【0042】
触媒は、直列または並列の1つまたは複数のリアクターに搭載される。リアクターは、固定床または流動床リアクターであり得、場合によっては、FCC型のクラッカーに類似している。いくつかの実施形態では、リアクターは、反応物が触媒床を通って流れられるように、管および管の上下の管板に触媒が搭載された管シェル型リアクターであり得る。
【0043】
触媒は、体積比70:30~95:5のエタンおよび酸素、ならびに任意選択で1つ以上のC3-6アルカンまたはアルケン、ならびに任意選択でCOおよびCO2などのさらなる酸素化種を含む混合供給物の酸化的脱水素化のために、385℃未満の温度、毎時100hr-1以上のガス空間速度、および前記混合物を上記の触媒に通すことを含む0.8~7気圧の圧力で使用することができる。ODH処理は、エチレンに対する選択性が90%以上であるべきである。ODH処理のガス空間速度は、毎時500hr-1以上、望ましくは1500hr-1以上、いくつかの実施形態では3000hr-1以上である。ODH処理の温度は、415℃未満、好ましくは375℃未満、望ましくは360℃未満である。
【0044】
反応条件に応じて、生成物の流れは、エチレン、水、ならびに二酸化炭素、一酸化炭素、炭酸および酢酸のうちの1つまたは複数を含む。生成物の流れ、特に水、炭酸および酢酸は、触媒または担体から1つまたは複数の成分を浸出させる可能性がある。反応の持続時間に応じて、これは、触媒またはその成分の溶解、担体の溶解、ならびに成分または担体およびそれらの塩(炭酸塩および酢酸塩など)のリアクターの壁上、および潜在的に触媒粒子間への堆積をもたらし得る。これにより、リアクターシステム(リアクターおよび関連する配管)の運転効率が低下する。これは、触媒床(特に管およびシェル型のリアクター)および関連する配管の洗浄のための、コストのかかるダウンタイムにつながる可能性がある。作業に時間がかかるだけでなく、作業員が潜在的に危険な粉塵にさらされる可能性がある。
【0045】
触媒、担体(Al2O3、およびAlO(OH))、および関連する副生成物(例えば、塩など)は、それらを、触媒および関連する副生成物1~5gあたり0.5以上の沸騰温度以下のシュウ酸の飽和溶液10~100mlに、20℃~飽和溶液の沸騰温度まで、好ましくは60℃超、望ましくは80℃超で、少なくとも1時間、場合によっては20時間以上溶解または接触させることにより、触媒床および関連する配管から除去できることがわかっている。
【0046】
シュウ酸の溶液中の触媒、担体および関連する触媒および担体副生成物の量は、溶液の分析(FTIR)などのいくつかの従来の手段によって測定することができる。
【0047】
触媒および担体および副生成物の溶液は、最初に濾過して触媒担体などの粒子状物質を除去することができ、次に溶液を乾燥または実質的に乾燥させて触媒の金属成分を回収することができる。溶液にPd、Pt、Auなどの高価な金属が含まれている場合は、濾過、沈殿、浮上などの適切な手段でそれらを分離できる。潜在的に、触媒成分の溶液は、新たな水熱処理を開始するための「スターター」として使用され得る。溶液を金属成分について分析でき、水熱処理に必要な組成に調整でき、触媒を再生できるかもしれない。
【0048】
最も広範な実施形態では、本発明は、1つまたは複数のリアクターおよび関連する配管から、以下からなる群:
i) Mo0.9-1.1V0.1-1Nb0.1-1Te0.01-0.2X0-2Odを含む触媒で、式中、Xは、Pd、Sb、Ba、Al、W、Ga、Bi、Sn、Cu、Ti、Fe、Co、Ni、Cr、Zr、Pt、Caならびにそれらの酸化物および混合物から選択され、dは、触媒の原子価を満たす数である、触媒;および
ii) 式、
MoaVbNbcTeeOd
の触媒で、式中、
aは、0.75~1.25であり、
bは、0.1~0.5であり、
cは、0~0.5であり、
eは、0~0.35であり、
dは、混合酸化物触媒の原子価状態を満たす数値である、触媒、
から選択される触媒を除去する方法であって、
任意選択的に、アルミナ担体上で、当該触媒を触媒1~5gあたりの0.5モル以上のシュウ酸溶液10~100mLに20℃~100℃の温度で1時間以上接触させることを含む、方法である。
【0049】
さらなる実施形態では、その処理が、リアクターの管を通る溶液の周期的ポンピングを含む撹拌を使用して実施される、1つまたは複数の他の実施形態による方法が提供される。
【0050】
さらなる実施形態では、触媒および任意の担体が、リアクターに関連する配管にファウリングを形成する、1つまたは複数の他の実施形態による方法が提供される。
【0051】
さらなる実施形態では、配管が鋼またはステンレス鋼である、1つまたは複数の他の実施形態による方法が提供される。
【0052】
さらなる実施形態では、触媒が1つまたは複数のリアクターの床である、1つまたは複数の他の実施形態による方法が提供される。
【0053】
さらなる実施形態では、触媒がアルミナ(Al(O)OH)に担持されている、1つまたは複数の他の実施形態による方法が提供される。
【0054】
さらなる実施形態では、Pd、PtおよびAuを含む高価な金属が、濾過、沈殿、および浮上を含む1つまたは複数の適切な手段によって触媒および任意の担体の溶液から分離される、1つまたは複数の他の実施形態による方法が提供される。
【0055】
さらなる実施形態では、触媒が、式
Mo1V0.25-0.45Te0.10-0.16Nb0.13-0.16X0-02Od
を有し、式中、dが、触媒の原子価を満たす数である、1つまたは複数の他の実施形態による方法が提供される。
【0056】
さらなる実施形態では、触媒が、式
Mo1V0.12-0.49Nb0.1-0.17Te0.1-0.17X0-2Od
を有し、式中、dが、触媒の原子価を満たす数である、1つまたは複数の他の実施形態による方法が提供される。
【0057】
さらなる実施形態では、触媒が、式
Mo1.0V0.32-0.49Nb0.14-0.17Te0.10-0.17X0-2Od
を有し、式中、dが、触媒の原子価を満たす数である、1つまたは複数の他の実施形態による方法が提供される。
【0058】
さらなる実施形態では、触媒が、式
Mo1V0.25-0.45Nb0.13-0.16Te0.1-0.16X0-2Od
を有し、式中、dが、触媒の原子価を満たす数である、1つまたは複数の他の実施形態による方法が提供される。
【0059】
さらなる実施形態では、触媒が、式
Mo1V0.25-0.35Nb0.13-0.16Te0.1-0.16X0-2Od
を有し、式中、dが、触媒の原子価を満たす数である、1つまたは複数の他の実施形態による方法が提供される。
【0060】
さらなる実施形態では、触媒が、式
Mo1.0V0.12-0.19Nb0.19-0.20Te0.06-0.07
を有し、式中、dが、触媒の原子価を満たす数である、1つまたは複数の他の実施形態による方法が提供される。
【0061】
さらなる実施形態では、式i)において、Xが、Moの原子あたり0~1原子までの量で存在し得る、1つまたは複数の他の実施形態による方法が提供される。
【0062】
さらなる実施形態では、式i)において、Xが、Moの原子あたり0.001~1原子の量で存在し得る、1つまたは複数の他の実施形態による方法が提供される。
【0063】
次に、本発明を以下の例で説明する。
【0064】
例1
10グラムのシュウ酸を100mLの蒸留水に溶解した。この混合物を湯浴中で30分間、80℃に加熱した。この透明で無色の溶液に、アルミナ(Al(O)OH)に担持された、式Mo
1V
0.43Te
0.17Nb
0.16O
dの押出触媒1.0gを充填した(触媒
図1)。混合物を80℃の水浴中で30分間、撹拌せずに放置した。その後、触媒の98%が溶解した。80℃の水浴中で1時間後、触媒は完全に溶解した。押出触媒からのアルミナは、溶解せずに残った(
図2)。
【0065】
例2
30グラムのシュウ酸を300mLの蒸留水に溶解した。この混合物を湯浴中で30分間、80℃に加熱した。この無色の溶液に、式の押出触媒3.0gをアルミナと共に入れた。混合物を80℃の水浴中で、一晩600rpmで撹拌し続けた。その後、触媒およびアルミナ(Al(O)OH)が、完全に溶解した。透明な青色溶液が形成された。
【0066】
例3
触媒残留物で汚染された1/8インチのステンレス鋼316管(
図3)を、80℃の油浴中の、蒸留水300mL中の式Mo
1V
0.43Te
0.17Nb
0.16O
dの触媒3.0 gとシュウ酸混合物30gとの混合物の、表面から約1.5cm下に24時間沈めた。24時間後、ステンレス鋼の腐食またはエッチングの目に見える兆候は、見られなかった(
図4)。
【0067】
上記の例は、Mo1V0.43Te0.17Nb0.16Odを含む混合酸化物触媒がシュウ酸の水溶液に可溶であり、そのような溶液が、ステンレス鋼をエッチングまたは侵食しないことを示す。
【産業上の利用可能性】
【0068】
低級アルカンの酸化的脱水素化用の混合金属酸化物触媒の残留物は、シュウ酸溶液に溶解することによって装置から除去することができる。