(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】撮像装置および撮像方法
(51)【国際特許分類】
H04N 23/743 20230101AFI20230801BHJP
G03B 7/091 20210101ALI20230801BHJP
G03B 17/00 20210101ALI20230801BHJP
H04N 23/60 20230101ALI20230801BHJP
【FI】
H04N23/743
G03B7/091
G03B17/00 Q
H04N23/60
(21)【出願番号】P 2021031376
(22)【出願日】2021-03-01
【審査請求日】2023-02-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】392016432
【氏名又は名称】株式会社シキノハイテック
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒川 直人
【審査官】佐藤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-086424(JP,A)
【文献】特開2000-152039(JP,A)
【文献】特開2009-273034(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 23/743
G03B 7/091
G03B 17/00
H04N 23/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影対象を撮影して撮影画像を取得する撮像部と、
前記撮影画像の画質を各々が別々に調整する複数の調整部と、
前記複数の調整部によってそれぞれ画質調整された複数の画像データを1つにパッキングして出力する出力制御部とを備え
、
前記出力制御部は、前記複数の画像データが並べて配置された1つのパッキング画像データを生成し、生成された前記パッキング画像データを出力する、撮像装置。
【請求項2】
前記複数の調整部は、前記撮像部の設定パラメータをそれぞれ調整することによって前記撮影画像の画質をそれぞれ異なる画質に調整する、請求項
1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記複数の調整部は、前記撮像部の設定パラメータを時分割で順次切り替える、請求項
2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記複数の調整部は、前記撮像部の露光を調整することによって前記撮影画像の明るさをそれぞれ異なる明るさに調整する、請求項1~
3のいずれかに記載の撮像装置。
【請求項5】
前記複数の調整部は、
前記撮影画像の明るさに応じて自動露光時間を設定し、前記撮像部の露光時間が前記自動露光時間となるように調整する第1調整部と、
前記第1調整部によって設定された前記自動露光時間から所定のオフセット時間だけオフセットされたオフセット露光時間を設定し、前記撮像部の露光時間が前記オフセット露光時間となるように調整する第2調整部とを含む、請求項1~
4のいずれかに記載の撮像装置。
【請求項6】
前記第2調整部は、前記所定のオフセット時間を時分割で順次切り替えるブラケット機能を有する、請求項
5に記載の撮像装置。
【請求項7】
撮影対象を撮影して撮影画像を取得するステップと、
前記撮影画像の画質を各々が別々に調整して複数の画像データを取得するステップと、
前記複数の画像データを1つにパッキングして出力するステップとを含
み、
前記複数の画像データを1つにパッキングして出力するステップは、前記複数の画像データが並べて配置された1つのパッキング画像データを生成し、生成された前記パッキング画像データを出力するステップを含む、撮像方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、撮影対象を撮像する撮像装置および撮像方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、特開平5-161048号公報(特許文献1)には、シャッタースピードを制御する手段と、シャッタースピードを変化させて得られた複数の反射レベル信号を用いて適切なシャッタースピードを算出する手段とを備える自動調光装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
たとえば屋外撮影での過逆光あるいは屋内から屋外を撮影する際の逆光が存在する場合、画像全体の露光を調整するだけでは、いわゆる白飛び(明るい部分が真っ白になる現象)が生じる領域と、黒つぶれ(暗い部分が真っ黒になる現象)が生じる領域とが、同一の画像に含まれる場合がある。顔認識システムのような撮影対象に注目した撮影においては、白飛びあるいは黒つぶれによって撮影対象を認識できなくなるため、これらを改善することが望ましい。
【0005】
しかしながら、白飛びおよび黒つぶれの少なくとも一方が画面に発生し得る撮影環境において、白飛びを改善するために画像全体を暗めに調整すると、白飛びは改善されるが、黒つぶれが悪化したり新たな黒つぶれが生じたりすることが懸念される。逆に、黒つぶれを改善するために画像全体を明るめに調整すると、黒つぶれは改善されるが、白飛びが悪化したり新たな白飛びが生じたりすることが懸念される。そのため、単一の画質調整処理で白飛びおよび黒つぶれの双方を改善することは難しく、撮影対象を認識できない領域が生じてしまうことが懸念される。
【0006】
本開示は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、白飛びおよび黒つぶれの少なくとも一方が発生し得る撮影環境で撮影する場合であっても、画像処理の負荷を抑えつつ、撮影対象を認識できない領域が生じることを抑制し易くすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本開示による撮像装置は、撮影対象を撮影して撮影画像を取得する撮像部と、撮影画像の画質を各々が別々に調整する複数の調整部と、複数の調整部によってそれぞれ画質調整された複数の画像データを1つにパッキングして出力する出力制御部とを備える。
【0008】
(2) ある態様においては、出力制御部は、複数の画像データを予め定められた順番に並べた1つの画像データを出力する。
【0009】
(3) ある態様においては、複数の調整部は、撮像部の設定パラメータをそれぞれ調整することによって撮影画像の画質をそれぞれ異なる画質に調整する。
【0010】
(4) ある態様においては、複数の調整部は、撮像部の設定パラメータを時分割で順次切り替える。
【0011】
(5) ある態様においては、複数の調整部は、撮像部の露光を調整することによって撮影画像の明るさをそれぞれ異なる明るさに調整する。
【0012】
(6) ある態様においては、複数の調整部は、撮影画像の明るさに応じて自動露光時間を設定し、撮像部の露光時間が自動露光時間となるように調整する第1調整部と、第1調整部によって設定された自動露光時間から所定のオフセット時間だけオフセットされたオフセット露光時間を設定し、撮像部の露光時間がオフセット露光時間となるように調整する第2調整部とを含む。
【0013】
(7) ある態様においては、第2調整部は、所定のオフセット時間を時分割で順次切り替えるブラケット機能を有する。
【0014】
(8) ある態様においては、撮影対象を撮影して撮影画像を取得するステップと、撮影画像の画質を各々が別々に調整して複数の画像データを取得するステップと、複数の画像データを1つにパッキングして出力するステップとを含む。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、白飛びおよび黒つぶれの少なくとも一方が発生し得る撮影環境で撮影する場合であっても、画像処理の負荷を抑えつつ、撮影対象を認識できない領域が生じることを抑制し易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】撮像装置の構成の一例を模式的に示す図である。
【
図2】コントローラの機能ブロック図(その1)である。
【
図3】コントローラによるパッキングの処理内容の一例を模式的に示す図(その1)である。
【
図4】コントローラの処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図5】コントローラの機能ブロック図(その2)である。
【
図6】コントローラによるパッキングの処理内容の一例を模式的に示す図(その2)である。
【
図7】コントローラの機能ブロック図(その3)である。
【
図8】コントローラによるパッキングの処理内容の一例を模式的に示す図(その3)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0018】
図1は、本実施の形態による撮像装置1の構成の一例を模式的に示す図である。撮像装置1は、撮影対象を撮影し、その画像のデータを外部の画像処理装置100に出力する。
【0019】
撮像装置1は、レンズ10と、撮像部20と、コントローラ30とを備える。撮影対象からの光はレンズ10によって集光される。
【0020】
撮像部20は、撮影対象を撮影して撮影画像を取得する。具体的には、撮像部20は、レンズ10によって集光された撮影対象の光をデジタル信号に変換し、変換されたデジタル信号を撮影画像のデータとして出力する。撮像部20は、たとえば、CMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)センサ技術を使用したイメージセンサ(CIS:CMOS Image Sensor)によって実現することができる。
【0021】
撮像部20は、コントローラ30からの指令に従って、撮影画像の画質を調整するための設定パラメータを調整するように構成される。設定パラメータには、少なくとも撮影画像の明るさを調整するためのパラメータ(露光時間、ホワイトバランス、ガンマ設定など)が含まれる。なお、設定パラメータに、その他のパラメータ(たとえば焦点距離、被写界深度など)が含まれていてもよい。
【0022】
コントローラ30は、図示しないCPU(Central Processing Unit)およびメモリを内蔵する。コントローラ30は、撮像部20の設定パラメータを調整するための指令を撮像部20に出力したり、撮像部20が撮像した撮影画像のデータをメモリに記憶したり、撮影画像を加工あるいは編集して画像処理装置100に出力したりする。
【0023】
図2は、コントローラ30の機能ブロック図である。コントローラ30は、n(nは2以上の整数)個の画質調整モジュールM1~Mnと、出力制御部33とを含む。
【0024】
n個の画質調整モジュールM1~Mnは、撮像部20の設定パラメータを各々が別々に調整することによって、撮像部20による撮影画像の画質を各々が別々に調整するように構成されている。具体的には、画質調整モジュールM1~Mnの各々は、演算部31と、指令値生成部32とを含む。
【0025】
演算部31は、撮像部20による撮影画像に基づいて所定の演算を行なうことによって、撮影画像の画質調整を行なうため設定パラメータを算出する。設定パラメータとしては、上述したように、少なくとも撮影画像の明るさを調整するためのパラメータ(露光時間など)が含まれる。
【0026】
指令値生成部32は、演算部31によって算出された設定パラメータを実現するための指令値を生成し、生成した指令値を撮像部20に出力する。これにより、撮像部20の設定パラメータは、演算部31が算出した設定パラメータに調整される。すなわち、撮像部20は、演算部31が算出した設定パラメータで調整された画質の画像を撮影することになる。
【0027】
各演算部31は、他の演算部31とは異なる演算を行なって撮像部20の設定パラメータを算出することによって、撮影画像の画質をそれぞれ異なる画質に調整する。たとえば、設定パラメータとして露光時間を設定する場合には、各演算部31は、撮像部20が撮影した撮影画像の平均輝度を解析し、その解析結果に応じて他の演算部31とは異なる露光時間を設定するように構成されている。これにより、画質調整モジュールM1~Mnによってそれぞれ画質調整されたn枚の画像G1~Gnは、それぞれ異なる明るさに調整される。
【0028】
出力制御部33は、n個の画質調整モジュールM1~Mnによる画質調整が予め決められた順番で時分割で行なわれるように、n個の画質調整モジュールM1~Mnを制御する。これにより、撮像部20の設定パラメータは、画質調整モジュールM1~Mnによってそれぞれ算出された複数の設定パラメータに、時分割で順次切り替えられる。撮像部20は、画質調整モジュールM1~Mnによってそれぞれ画質調整されたn枚の画像G1~Gnを出力制御部33に順次出力する。
【0029】
出力制御部33は、撮像部20からの画像を順次受け取り、複数の画像を1つにパッキングして画像処理装置100に出力する。
【0030】
図3は、コントローラ30によるパッキングの処理内容の一例を模式的に示す図である。
図3に示される例では、それぞれ異なる露光時間(明るさ)に調整されたn枚の画像G1~Gnが、この順番で順次撮影される。コントローラ30は、撮影された時間軸順に、画像データを画像処理装置100に出力する。具体的には、コントローラ30は、それまでに撮影された複数の画像を撮影時間軸順に上から並べてパッキングした1枚の画像データ(以下「パッキング画像データGP」ともいう)として出力する。より具体的には、
図3に示すように、コントローラ30は、1枚目の画像G1が撮影された時点では画像G1のデータを出力し、2枚目の画像G2が撮影された時点では画像G2のデータを出力する。そして、n枚目の画像Gnが撮影された時点で、それまでに撮影されたn枚の画像データG1~Gnが含まれる1枚のパッキング画像データGPとしての出力が完了する。
【0031】
なお、
図3では複数の画像を撮影された時間軸順に上から並べて1枚のパッキング画像データGPにする例を示したが、本開示による「パッキング」はこのような態様に限定されるものではない。たとえば、複数の画像を露光時間の長い順番で上から並べて1枚の画像データにすることも、本開示による「パッキング」に含まれる。すなわち、複数の画像をパッキング画像データGPの予め決められた複数の領域にそれぞれ配置する態様であれば、本開示による「パッキング」に含まれる。また、たとえば複数の画像を1つのフォルダに格納して出力する態様も、本開示による「パッキング」に含まれる。
【0032】
このように、本実施の形態による撮像装置1は、露光時間(明るさ)がそれぞれ異なる複数の画像を1枚のパッキング画像データGPとして画像処理装置100に出力する。そのため、白飛びおよび黒つぶれの少なくとも一方が発生し得る撮影環境下であっても、画像処理装置100の処理負荷を抑えつつ、画像処理装置100が撮影対象を認識できない領域が生じることを抑制し易くすることができる。
【0033】
具体的には、撮像部20が撮影した複数の画像のいずれかに白飛びおよび黒つぶれの少なくとも一方が発生している場合であっても、その白飛びあるいは黒つぶれが改善された画像が、パッキング画像データGPのいずれかの領域に含まれ易くなる。その結果、画像処理装置100が撮影対象を認識できない領域が生じることを抑制し易くすることができる。
【0034】
さらに、複数の画像が、個々に単独で出力されるのではなく、1枚の画像(パッキング画像データGP)として出力される。その結果、画像処理装置100の処理負荷を抑えることができる。すなわち、仮に複数の画像を個々に単独で出力すると、画像伝送過程で通信エラー等による画像の欠落が生じた場合に、画像処理装置100において、その欠落を検出すること、および、その欠落した画像がどの明るさのグループに属する画像であるのかを判断すること、が難しくなる。これを解消するための手法として、撮像装置1側で各画像に対して明るさのグループを示す何らかの識別マークを付与し、画像処理装置100側でその識別マークを認識することも可能ではある。しかしながら、この手法では、識別マークを認識する処理プロセスが画像処理装置100側で必要となり、画像処理装置100の処理負荷が増加することが懸念される。これに対し、本実施の形態においては、このような画像処理装置100側の識別プロセス自体が不要となるため、画像処理装置100の処理負荷を抑えることができる。
【0035】
以上のように、本実施の形態による撮像装置1は、白飛びおよび黒つぶれの少なくとも一方が発生し得る撮影環境下であっても、画像処理装置100の処理負荷を抑えつつ、画像処理装置100が撮影対象を認識できない領域が生じることを抑制し易くすることができる。
【0036】
図4は、コントローラ30の処理手順の一例を示すフローチャートである。このフローチャートは、予め定められた条件が成立する毎(たとえば所定周期毎)に繰り返し実行される。
【0037】
コントローラ30は、撮像部20が現在の設定パラメータの値で撮影した画像データを撮像部20から取得する(ステップS10)。
【0038】
次いで、コントローラ30は、ステップS10で取得された画像データを解析することによって画像データの平均輝度などを算出する(ステップS20)。
【0039】
次いで、コントローラ30は、ステップS20での解析結果を用いて現在の対象モジュールMkに対して予め規定された演算(フィードバック演算)を行なうことによって、現在の対象モジュールMkの設定値(現在の対象モジュールMkによって調整すべき画質の設定パラメータの値)を生成する(ステップS30)。
【0040】
ここで、現在の対象モジュールMkとは、n個の画質調整モジュールM1~Mnのうち、今回の演算サイクルで画質調整を行なうように割り当てられたモジュールである。「k」は、現在の対象モジュールMkを特定するための番号(以下「現在の対象モジュール番号」ともいう)であって、1からnまでのいずれかの整数である。たとえば現在の対象モジュール番号kが「1」である場合、現在の対象モジュールMkが「画質調整モジュールM1」であることを意味する。なお、対象モジュール番号kの初期値は「1」である。現在の対象モジュール番号k、現在の対象モジュールMk、および現在の各モジュールM1~Mnの設定値の情報は、コントローラ30の内部に搭載されるメモリに記憶されている。
【0041】
次いで、コントローラ30は、現在の対象モジュールMkの設定値をステップS40で生成された設定値に更新するとともに、更新された設定値を撮像部20に出力する(ステップS40)。これにより、現在の対象モジュールMkによって画質調整された画像Gkが撮像部20からコントローラ30に出力される。
【0042】
次いで、コントローラ30は、現在の対象モジュールMkによって画質調整された画像Gkを撮像部20から取得して、メモリに記憶する(ステップS42)。
【0043】
次いで、コントローラ30は、現在の対象モジュール番号kがnであるか否かを判定する(ステップS50)。
【0044】
現在の対象モジュール番号kがnでない場合(ステップS50においてNO)、コントローラ30は、画像Gkのデータを画像処理装置100に出力する(ステップS60)。その後、コントローラ30は、対象モジュール番号kを1インクリメントする(ステップS70)。
【0045】
ステップS70の後、コントローラ30は、処理をリターンに戻す。これにより、現在の対象モジュール番号kがnに達するまで、ステップS10~S60の処理が繰り返し実行され、n個の画質調整モジュールM1~Mnによる画質調整が時分割で順次行なわれる。その結果、それぞれ異なる画質に調整されたn枚の画像G1~Gnがコントローラ30のメモリに一時的に記憶される。
【0046】
そして、現在の対象モジュール番号kがnである場合(ステップS50においてYES)、コントローラ30は、n枚の画像G1~Gnを1枚のパッキング画像データGPにして画像処理装置100に出力する(ステップS80)。その後、コントローラ30は、n枚の画像G1~Gnをメモリから消去し(ステップS85)、対象モジュール番号kを初期値「1」にリセットする(ステップS90)。
【0047】
以上のように、本実施の形態による撮像装置1は、それぞれ異なる明るさに調整された複数の画像を1枚のパッキング画像データGPの予め定められた領域に配置して画像処理装置100に出力する。そのため、外乱光等の影響で白飛びおよび黒つぶれの少なくとも一方が発生し得る撮影環境下であっても、画像処理装置100の処理負荷を抑えつつ、画像処理装置100が撮影対象を認識できない領域が生じることを抑制し易くすることができる。
【0048】
たとえば、画像処理装置100において撮像装置1によって撮影された人物の顔認証を行なう場合において、顔認証の精度を向上させることが可能である。
【0049】
また、監視用途などで車内の人物と車両のナンバープレートとを撮影する場合、あるいは、ATM(Automatic Teller Machine、現金自動預け払い機)を利用する人物とその人物の手元を撮影する場合においても、撮影対象の認識精度を向上させることが可能である。
【0050】
[変形例1]
図5は、本変形例1によるコントローラ30Aの機能ブロック図である。
図5に示すコントローラ30Aは、上述の
図2に示すコントローラ30に対して、n=2として2個の画質調整モジュールM1A,M2Aを備えるように変形したものである。画質調整モジュールM1A,M2Aの各々は、撮像部20による露光時間(明るさ)を調整する機能を有する。コントローラ30Aのその他の基本的な構成は、上述の
図2に示すコントローラ30と同じである。すなわち、コントローラ30Aは、2個の画質調整モジュールM1A,M2Aと、出力制御部33とを含む。なお、
図5においては、出力制御部33の図示が省略されている。
【0051】
2個の画質調整モジュールM1A,M2Aは、撮像部20による露光時間を各々が別々に調整するように構成されている。具体的には、画質調整モジュールM1A,M2Aの各々は、光量検出部35と、露光時間演算部31Aと、露光時間制御部32Aとを含む。
【0052】
光量検出部35は、撮像部20が撮影した撮影画像のデータに基づいて、撮影画像の明るさ(撮像部20が撮影対象から受ける光量)を検出する。
【0053】
露光時間演算部31Aは、光量検出部35によって検出された撮影画像の明るさに応じた露光時間(以下「自動露光時間」ともいう)を、所定の演算を行なうことによって算出する。
【0054】
露光時間制御部32Aは、露光時間演算部31Aによって算出された自動露光時間を実現するための指令値を生成し、生成した指令値を撮像部20に出力する。これにより、撮像部20は、露光時間演算部31Aによって算出された自動露光時間に応じた明るさの画像を撮影することになる。
【0055】
2個の画質調整モジュールM1A,M2Aは、互いに異なる演算で自動露光時間を別々に算出することによって、撮影画像の明るさをそれぞれ異なる明るさに調整する。たとえば、画質調整モジュールM1Aが「暗め」の調整を行ない、画質調整モジュールM2Aが「明るめ」の調整を行なうようにしてもよい。これにより、画質調整モジュールM1A,M2Aによってそれぞれ撮影された2枚の画像G1,G2は、それぞれ異なる明るさに調整される。
【0056】
2個の画質調整モジュールM1A,M2Aによる露光時間(明るさ)の調整は、時分割で交互に行なわれる。
【0057】
図6は、コントローラ30Aによるパッキングの処理内容の一例を模式的に示す図である。
図6に示される例では、それぞれ異なる露光時間(明るさ)に調整された2枚の画像G1,G2が、時分割で交互に撮影される。コントローラ30Aは、2枚の画像G1,G2を含む1枚のパッキング画像データGPを生成し、生成したパッキング画像データGPを画像処理装置100に出力する。
【0058】
なお、
図6には、垂直同期信号VSYNC(Vertical Synchronizing signal)が発信される毎に、対象モジュールMkが切り替えられる例が示されている。たとえば、時刻t1においては、それまでの対象モジュールMkである「画質調整モジュールM1A」による画像調整が行なわれるとともに、撮像部20の設定値が次の対象モジュールMkである「画質調整モジュールM2A」による設定値に切り替えられる。
【0059】
また、
図6には、垂直同期信号VSYNC(Vertical Synchronizing signal)が発信される毎に、直近の2枚の画像G1,G2を含む1枚のパッキング画像データGPを生成して出力する例が示されている。
【0060】
以上のように、撮影画像の明るさをそれぞれ異なる値に調整する2個の画質調整モジュールM1A,M2Aを備え、画質調整モジュールM1A,M2Aによってそれぞれ撮影された2枚の画像G1,G2を1枚のパッキング画像データGPの予め決められた領域に配置して画像処理装置100に出力するようにしてもよい。
【0061】
[変形例2]
図7は、本変形例2によるコントローラ30Bの機能ブロック図である。
図7に示すコントローラ30Bは、上述の
図5に示すコントローラ30Aの画質調整モジュールM1A,M2Aをそれぞれ画質調整モジュールM1B,M2Bに変更したものである。コントローラ30Bのその他の基本的な構成は、上述のコントローラ30あるいはコントローラ30Aと同じである。すなわち、コントローラ30Bは、2個の画質調整モジュールM1B,M2Bと、出力制御部33とを含む。なお、
図7においても、上述の
図5と同様、出力制御部33の図示が省略されている。
【0062】
画質調整モジュールM1Bは、撮像部20による撮影画像の明るさを判定して適切な露光が得られるように、撮像部20の露光時間を自動的に制御する「オートモード」で作動するように構成される。具体的には、画質調整モジュールM1Bは、光量検出部35と、露光時間演算部31Bと、露光時間制御部32Bとを含む。
【0063】
光量検出部35、露光時間演算部31Bおよび露光時間制御部32Bは、それぞれ上述の
図5に示す光量検出部35、露光時間演算部31Aおよび露光時間制御部32Aと基本的に同じ機能を有する。ただし、本変形例2による画質調整モジュールM1Bにおいては、露光時間演算部31Bによって算出された自動露光時間が、もう一方の画質調整モジュールM2Bの露光時間演算部36にも出力されるように構成されている。
【0064】
画質調整モジュールM2Bは、互いに異なる複数のオフセット露光時間での撮影を時分割で自動的に行なう「ブラケットモード」で作動するように構成される。
【0065】
具体的には、画質調整モジュールM2Bは、露光時間演算部36と、露光時間制御部37とを含む。
【0066】
露光時間演算部36には、上述したように、画質調整モジュールM1Bから、オートモードで設定された「自動露光時間」が入力される。露光時間演算部36は、画質調整モジュールM1Bから取得される「自動露光時間」を基準露光時間として、基準露光時間からオフセット時間Δtだけオフセットされたオフセット露光時間を設定する。さらに、露光時間演算部36は、オフセット時間Δtを時分割で順次切り替える。これにより、画質調整モジュールM2Bの作動中においては、各々が基準露光時間からそれぞれ異なるオフセット時間Δtだけオフセットされた複数のオフセット露光時間での撮影が、時分割で自動的に行なわれることになる。
【0067】
図8は、コントローラ30Bによるパッキングの処理内容の一例を模式的に示す図である。
図8に示されるように、コントローラ30Bは、画質調整モジュールM1Bによるオートモードでの撮影と、画質調整モジュールM2Bによるブラケットモードでの撮影とを、時分割で交互に行なう。そして、コントローラ30Bは、2枚の画像G1,G2が予め定められた2つの領域にそれぞれ配置された1枚のパッキング画像データGPを生成し、生成したパッキング画像データGPを画像処理装置100に出力する。
【0068】
オートモードで撮影される画像G1の自動露光時間(
図8に示す「A」、「B」…)は、撮影画像の明るさから自動的に算出される。
【0069】
一方、ブラケットモードで撮影される画像G2の露光時間は、直前のオートモードで算出された自動露光時間を基準値として、基準値からオフセット時間Δtだけオフセットされたオフセット露光時間に設定される。そして、ブラケットモードでは、オフセット時間Δtが時分割で順次切り替えられる。これにより、ブラケットモードで撮影される画像G2の露光時間(明るさ)は、時分割で順次切り替えられることになる。
【0070】
図8には、ブラケットモードでの撮影が、5フレームを1セットとして、2セット(自動露光時間「A」を基準とするブラケット撮影、自動露光時間「B」を基準とするブラケット撮影)行なわれる例が示されている。以下、主に、自動露光時間「A」を基準とするブラケット撮影について説明するが、自動露光時間「B」を基準とするブラケット撮影についても同様の処理が行なわれる。
【0071】
1フレーム目においては、オフセット時間Δtが「0」に設定される。すなわち、1フレーム目の露光時間は、直前のオートモードで撮影された自動露光時間Aと同じ値に設定される。これにより、1フレーム目の画像G2の明るさは、直前のオートモードで撮影された画像G1の明るさと同じとなる。そして、1フレーム目の撮影が終了した時点で、自動露光時間「A」で撮影された画像G1と、露光時間「A」で撮影された画像G2とをパッキングした画像が画像処理装置100に出力される。
【0072】
2フレーム目においては、オフセット時間Δtが「+1」に設定される。すなわち、2フレーム目の露光時間は、1フレーム目の自動露光時間Aよりも少し長い値「A+1」に設定される。これにより、2フレーム目の画像G2の明るさは、1フレーム目のオートモードで撮影された画像G1よりも少し明るくなる。そして、2フレーム目の撮影が終了した時点で、自動露光時間「A」の画像G1と露光時間「A+1」の画像G2とをパッキングした画像が画像処理装置100に出力される。
【0073】
3フレーム目においては、オフセット時間Δtが「-1」に設定される。すなわち、3フレーム目の露光時間は、1フレーム目の自動露光時間Aよりも少し短い値「A-1」に設定される。これにより、3フレーム目の画像G2の明るさは、1フレーム目のオートモードで撮影された画像G1よりも少し暗くなる。そして、3フレーム目の撮影が終了した時点で、自動露光時間「A」の画像G1と露光時間「A-1」の画像G2とをパッキングした画像が画像処理装置100に出力される。
【0074】
4フレーム目においては、オフセット時間Δtが2フレーム目よりもさらに長い「+2」に設定される。すなわち、4フレーム目の露光時間は「A+2」に設定される。これにより、4フレーム目の画像G2の明るさは、1フレーム目のオートモードで撮影された画像G1よりもかなり明るくなる。そして、4フレーム目の撮影が終了した時点で、自動露光時間「A」の画像G1と露光時間「A+2」の画像G2とをパッキングした画像が画像処理装置100に出力される。
【0075】
5フレーム目においては、オフセット時間Δtが3フレーム目よりもさらに短い「-2」に設定される。すなわち、5フレーム目の露光時間は「A-2」に設定される。これにより、5フレーム目の画像G2の明るさは、1フレーム目のオートモードで撮影された画像G1よりもかなり暗くなる。そして、5フレーム目の撮影が終了した時点で、自動露光時間「A」の画像G1と露光時間「A-2」の画像G2とをパッキングした画像が画像処理装置100に出力される。
【0076】
画像処理装置100において、たとえば、1フレーム目の撮影終了時のパッキング画像データGPでは黒つぶれによって顔認証が失敗した場合であっても、2フレーム目あるいは4フレーム目の撮影終了時の、明るめに補正されたパッキング画像データGPを用いることで、顔認証を成功し易くすることができる。また、1フレーム目の撮影終了時のパッキング画像データGPでは白飛びによって顔認証が失敗した場合であっても、3フレーム目あるいは5フレーム目の撮影終了時の、暗めに補正されたパッキング画像データGPを用いることで、顔認証を成功し易くすることができる。
【0077】
以上のように、本変形例2によるコントローラ30Bは、オートモードで作動する画質調整モジュールM1Bと、ブラケットモードで作動する画質調整モジュールM2Bとを備えている。そして、画質調整モジュールM2Bは、画質調整モジュールM1Bで設定された自動露光時間を基準として、ブラケットモードでの撮影を行なう。さらに、コントローラ30Bは、画質調整モジュールM1Bによるオートモードでの撮影と、画質調整モジュールM2Bによるブラケットモードでの撮影とを、時分割で交互に行なう。そして、コントローラ30Bは、2枚の画像G1,G2を1枚にパッキングした画像を画像処理装置100に出力する。
【0078】
このように変形しても、白飛びおよび黒つぶれの少なくとも一方が発生し得る撮影環境下であっても、画像処理装置100の処理負荷を抑えつつ、画像処理装置100が撮影対象を認識できない領域が生じることを抑制し易くすることができる。
【0079】
なお、本変形例2においては、オートモードで撮影される画像G1と、ブラケットモードで撮影される画像G2とをパッキングして出力する例について説明した。しかしながら、2つの画像G1,G2をパッキングすることなく、ブラケットモードで撮影された画像G2のみを出力するようにしてもよい。このようにしても、画像処理装置100が撮影対象を認識できない領域が生じることを抑制し易くすることができる。
【0080】
すなわち、本変形例2においては、オートモードで算出された自動露光時間を基準値として、ブラケットモードでの露光時間が時分割で順次切り替えられる。したがって、ブラケットモードで撮影された画像の1セット分のなかには、同じ撮影対象に対して明るさの異なる複数の画像が含まれる。画像処理装置100は、ブラケットモードで撮影された、明るさの異なる複数の画像のいずれかから、撮影対象を認識することができる。その結果、画像処理装置100が撮影対象を認識できない領域が生じることを抑制し易くすることができる。
【0081】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0082】
1 撮像装置、10 レンズ、20 撮像部、30,30A,30B コントローラ、31 演算部、31A,31B,36 露光時間演算部、32 指令値生成部、32A,32B,37 露光時間制御部、33 出力制御部、35 光量検出部、100 画像処理装置、M1~Mn 画質調整モジュール。