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特許7323576試料の特性評価のためのデバイス及び方法
<図1>
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】試料の特性評価のためのデバイス及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/447 20060101AFI20230801BHJP
   G01N 1/00 20060101ALI20230801BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20230801BHJP
   G01N 27/62 20210101ALI20230801BHJP
【FI】
G01N27/447 331E
G01N1/00 101G
G01N37/00 101
G01N27/447 315K
G01N27/62 G
G01N27/62 X
G01N27/62 F
【請求項の数】 22
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021107723
(22)【出願日】2021-06-29
(62)【分割の表示】P 2018547858の分割
【原出願日】2016-11-29
(65)【公開番号】P2021170013
(43)【公開日】2021-10-28
【審査請求日】2021-07-26
(31)【優先権主張番号】62/260,944
(32)【優先日】2015-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/338,074
(32)【優先日】2016-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518187374
【氏名又は名称】インタバイオ, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ジェンタレン,エリック・ティー
【審査官】大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06974526(US,B2)
【文献】特開2004-069430(JP,A)
【文献】再公表特許第2004/031757(JP,A1)
【文献】米国特許第07655477(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0113068(US,A1)
【文献】特表2005-509872(JP,A)
【文献】特開2000-055879(JP,A)
【文献】特開2000-162184(JP,A)
【文献】Liyu Yang et al.,Capillary Isoelectric Focusing-Electrospray Ionization Mass Spectrometry for Transferrin Glycoforms Analysis,Analytical Biochemistry,1996年06月17日,243巻,140-149
【文献】B. Zhang et al.,Microfabricated Devices for Capillary Electrophoresis -Electrospray Mass Spectrometry,Analytical chemistry,1999年06月16日,71巻 15号,3258-3264
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/447
G01N 1/00
G01N 37/00
G01N 27/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ流体デバイスにおいて分離チャネルを横切るように電界を印加することにより、等電点電気泳動により検体混合物の分離を実行することと、
前記分離チャネルの全体において分離された前記検体混合物の前記分離および移動を連続的に画像化することと、
分離および移動された検体を前記マイクロ流体デバイスにおけるオリフィスから質量分析計へのエレクトロスプレーイオン化を介して排出することと
を含み、
イオンポテンシャルの補充は、前記マイクロ流体デバイスにおいて行われる、方法。
【請求項2】
前記方法は、前記分離チャネルにおいて検出された分離された検体のピークと、分離された前記検体に対する質量分析計のデータとを関連付けることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記分離された検体のピークは、吸光度画像化または蛍光画像化によって検出される、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記オリフィスは、前記分離チャネルの電界と電気的に連通している、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記オリフィスは、前記マイクロ流体デバイスにおける凹部であり、エレクトロスプレーイオン化によって形成されるテイラーコーンは、前記凹部の内部に完全に配置される、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記マイクロ流体デバイスは、第1分離チャネルと第2分離チャネルとを含む、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記方法は、前記電界を印加することにより、前記第2分離チャネルにおいて等電点電気泳動による前記検体混合物の分離を実行する前に、前記第1分離チャネルにおいて前記検体混合物をクロマトグラフィにより富化することをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記方法は、
前記検体混合物の前記分離の前に前記分離チャネルに両性電解質を導入することにより、前記分離チャネル内にpH勾配を生成することと、
前記分離の前に等電点(pI)マーカを前記分離チャネルに導入することと、
前記pIマーカが分離される間に前記分離チャネルを画像化することと
をさらに含む、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記移動は、圧力または電気泳動によって行われる、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記移動は、前記分離チャネルの下流にある合流領域に流体連通している電解質チャネルから前記分離チャネルに電解質を導入することによって行われる、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記マイクロ流体デバイスは、カートリッジであり、前記カートリッジは、前記分離チャネルと、前記オリフィスと、前記電解質を導入するチャネルと、陽極液を導入するチャネルと、イオン化のためのガス搬送チャネルとを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記マイクロ流体デバイスは、電解質を導入するチャネルを横切るように電界を生成する2つの電極を含む、請求項1~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
マイクロ流体デバイスの分離チャネルにおいて検体混合物の分離を実行することと、
前記分離チャネルの全体において分離された前記検体混合物の前記分離および移動を連続的に画像化することと、
分離および移動された検体を前記マイクロ流体デバイスにおけるオリフィスから質量分析計にエレクトロスプレーイオン化を介して排出することであって、イオンポテンシャルの補充は、前記マイクロ流体デバイスにおいて行われる、ことと、
前記分離チャネルにおいて検出された分離された検体のピークと、前記分離された検体に対する質量分析計のデータとを関連付けることと
を含む、方法。
【請求項14】
前記分離は、等電点電気泳動またはクロマトグラフィを用いて実行される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記分離された検体のピークは、吸光度画像化または蛍光画像化によって検出される、請求項13または請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記オリフィスは、前記マイクロ流体デバイスにおける凹部であり、エレクトロスプレーイオン化によって形成されるテイラーコーンは、前記凹部の内部に完全に配置される、請求項1315のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記マイクロ流体デバイスは、第1分離チャネルと第2分離チャネルとを含む、請求項1316のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記方法は、電界を印加することにより、前記第2分離チャネルにおいて等電点電気泳動による前記検体混合物の分離を実行する前に、前記第1分離チャネルにおいて前記検体混合物をクロマトグラフィにより富化することをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記方法は、
前記検体混合物の分離の前に前記第2分離チャネルに両性電解質を導入することにより、前記第2分離チャネル内にpH勾配を生成することと、
前記分離の前に等電点(pI)マーカを前記第2分離チャネルに導入することと、
前記pIマーカが分離される間に前記第2分離チャネルを連続的に画像化することと
をさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
(a)マイクロ流体デバイスの第1流体チャネルを横切るように第1電界を印加することにより、前記第1流体チャネルを連続的に画像化しながら、検体および両性電解質の混合物を等電点電気泳動により分離することと、
(b)前記第1流体チャネルを横切るように第2電界を印加することにより、前記第1流体チャネルを連続的に画像化しながら、分離された前記検体の混合物を移動させることであって、イオンポテンシャルの補充は、前記マイクロ流体デバイスにおいて行われる、ことと、
(c)移動された前記検体の混合物を前記マイクロ流体デバイスにおけるオリフィスから質量分析計にエレクトロスプレーイオン化を介して排出することと、
(d)前記第1流体チャネル内の前記検体の混合物の前記分離および前記移動を連続的に画像化することによって、(a)において検出された分離された検体のピークと、分離された前記検体の混合物に対する質量分析計のデータとを関連付けることと
を含む、方法。
【請求項21】
前記マイクロ流体デバイスは、前記第1流体チャネルに対する光学的アクセスを提供する光学スリットを含み、
前記画像化は、前記第1流体チャネルを通過した光または前記第1流体チャネルから放射された光を検出することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記検体の混合物は、インタクトタンパク質を含む、請求項20または請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、それぞれ「Devices,Methods,and Kits for
Sample Characterization」と題する、2015年11月30日
に出願された米国仮特許出願第62/260,944号、及び2016年5月18日に出
願された米国仮特許出願第62/338,074号の非仮出願であって、これらの利益を
主張するものであり、これらの各々の開示は、その全体が参照として本明細書に組み込ま
れる。
【0002】
本明細書に記載の幾つかの実施形態は、試料の特性評価のためのデバイス及び方法、な
らびにその様々な使用に関する。
【背景技術】
【0003】
より複雑な検体混合物から、検体の固有の性質に基づいて検体成分を分離し、その性質
の状態に富化された画分のセットを提供することは、分析化学の重要な部分である。この
ようにして、複雑な混合物を単純化することにより、下流での分析の複雑さが軽減される
。直交する(例えば、異なる及び/又は無関係な性質に基づいて)、2つ以上の富化ステ
ップを行うことが有利な場合がある。しかし、多くの場合、既知の方法及び/又はデバイ
スを使用して直交型富化ステップを実施するプロセスは煩雑であり、下流の分析機器の感
度以上に検体を希釈し得る。加えて、既知の富化方法及び/又はデバイスを分析機器及び
/又は技術とインタフェースさせようと試みるときに面倒な問題が生じ得る。
【0004】
タンパク質試料調製技術を、質量分析計のような下流の検出システムとインタフェース
する方法が使用されてきた。一般的な方法は、液体クロマトグラフィを用いて試料を調製
し、質量分析(LC-MS)のための画分を収集することである。これは、タンパク質試
料を消化してペプチド断片にする必要があるという欠点を有し、分析すべき多数の試料画
分及び複雑なデータ再構築の後処理につながる。液体クロマトグラフィの特定の形態は質
量分析計、例えばペプチドマップ逆相クロマトグラフィに結合することができるが、これ
ら既知の技術は、インタクトタンパク質というよりもペプチド断片の使用に限定され、そ
れにより有用性が制限される。
【0005】
試料を質量分析計の中に導入する別の方法は、エレクトロスプレーイオン化(ESI)
である。ESIでは、キャピラリ又はマイクロ流体デバイスの遠位端にあるサンプル及び
溶液の小さな液滴がイオン化されて、質量分析計の帯電プレートへの誘引が誘発される。
液滴は次いで、この誘起された電界内で円錐形(「テイラーコーン」)に伸長し、次いで
小滴が放出され、分析のために質量分析計の中に入る。これは典型的には、ESIにとっ
て好都合な容積とサイズを提供するキャピラリ内で行われる。しかしキャピラリは、多段
ステップ処理が可能ではない直線状流路を提供する。
【0006】
他の研究は、マイクロ流体デバイスを用いて追求されてきた。マイクロ流体デバイスは
、様々な既知の技術によって製造され、所定幅の流体チャネルを提供することができ、様
々な流体操作を行うように設計されたチャネルネットワークを構築することができる。こ
れらのデバイスは、キャピラリよりも更なるレベルの制御と複雑さを提供する。ESIに
関連して、既知のデバイスは、これらのデバイスでのESIを向上させるために、外向き
テーパ状先端部及び導電性エッジを含む。しかし、ESIに使用される既知のマイクロ流
体デバイスの外向きテーパによって、脆弱なテイラーコーン構造は空気乱流による潜在的
な外乱にさらされ、限られた範囲の円錐円弧のみをサポートする接触表面形状をもたらし
、ESIを介して質量分析計に導入される容積に対する制御が制限される。加えて、導電
性エッジでの水の電気分解は、気泡の形成につながる場合があり、気泡はコーンの発生を
妨げる。
【0007】
タンパク質質量分析の用途の一つは、バイオ医薬品及びバイオシミラ医薬品の開発及び
製造中の特性評価である。バイオ医薬品及びバイオシミラ医薬品は、例えば組み換えタン
パク質、抗体、生ウイルスワクチン、ヒト血漿由来タンパク質、細胞ベース薬剤、天然由
来タンパク質、抗体薬物複合体、タンパク質薬物複合体、及び他のタンパク質薬物を含む
、薬物群である。
【0008】
規制遵守によって、バイオ医薬品には、小分子薬剤には必要とされない、開発及び製造
中での広範な検査が必要であることが要求される。これは、例えば、バイオ医薬品を生成
するために生体物質を使用すること、生体分子がより複雑であること、製造プロセスがよ
り複雑であることに起因して、バイオ医薬品の製造がより複雑であるからである。規定さ
れるべき特性には、例えば、電荷、有効性、疎水性変化、質量、及びグリコシル化が挙げ
られる。現在、これらの試験は互いに独立して行われ、バイオ医薬品の特性を決定するた
めの、非常に時間の掛かる高価な工程をもたらしている。
【発明の概要】
【0009】
本明細書に記載の幾つかの実施形態は、検体混合物中の検体の分析を可能にするデバイ
ス及び方法に関する。例えば、生体タンパク質の特定の特性評価の多くが規制当局によっ
て要求されている。本明細書に記載の方法及びデバイスは、タンパク質及び/又は他の検
体を特性評価するために好適であり得る。幾つかの実施形態では、本明細書に記載の方法
及びデバイスは、検体混合物を分離して富化された検体画分にするために実施される、1
つ又は複数の富化ステップを含む検体混合物の特性評価に関連することができる。
【0010】
場合によっては、これらの検体は、例えばグリカン、炭水化物、DNA、RNA、イン
タクトタンパク質、消化タンパク質、抗体薬物複合体、タンパク質薬物複合体、ペプチド
、代謝産物、又は他の生物学的に関連する分子であり得る。幾つかの例では、これらの検
体は小分子薬剤であり得る。幾つかの例では、これらの検体は、培養物又は生体内内から
分離された細胞から回収された生物タンパク質医薬品及び/又は溶解物などのタンパク質
混合物中のタンパク質分子であり得る。
【0011】
本明細書中に記載される幾つかの実施形態は、元の検体混合物からの検体分子のサブセ
ットを含有する画分が一度に1画分ずつ溶出される第1の富化ステップを含むことができ
、これらの富化された検体画分は、次に別の富化ステップに供される。最後の富化ステッ
プでは、富化された検体画分は更なる分析のために放出される。
【0012】
幾つかの実施形態では、富化ステップの1つ以上は、固相分離である。幾つかの実施形
態では、富化ステップの1つ以上は、溶液相分離である。
【0013】
幾つかの実施形態では、最終ステップは、放出前に富化された検体画分を濃縮する。
【0014】
幾つかの実施形態では、最終富化ステップからの富化された検体画分の実質的に全てが
連続流れとなって排出される。幾つかの実施形態では、検体混合物の一部(例えば、関心
のある画分)は、質量分析計、又は試料の少なくとも一部を介して分画及び/又は富化す
るように構成された別のデバイスなどの分析機器とインタフェースするように構成された
出口を介して、マイクロ流体デバイスから排出される。検体混合物の別の部分(例えば、
関心のある画分以外の画分を含有する)は、廃棄物チャネルを介して排出することができ
る。
【0015】
幾つかの実施形態では、排出は圧力、電気力、又はイオン化、又はこれらの組み合わせ
を用いて実施される。
【0016】
幾つかの実施形態では、排出はエレクトロスプレーイオン化(ESI)を使用して、例
えば質量分析計の中へ実施される。幾つかの実施形態において、シース液は、電気泳動分
離のための電解質として使用される。幾つかの実施形態では、噴霧ガスが提供されて、検
体画分を細かい噴霧にする。幾つかの実施形態では、誘導結合レーザイオン化、高速原子
衝撃、ソフトレーザ脱着法、大気圧化学イオン化、二次イオン質量分析、スパークイオン
化、熱イオン化などの、他のイオン化法が使用される。
【0017】
幾つかの実施形態では、富化された画分は表面上に堆積され、マトリックス支援レーザ
脱離/イオン化、表面増強レーザ脱離/イオン化、免疫ブロット法等により更に分析され
る。
【0018】
本明細書に記載の幾つかの実施形態は、富化された画分の排出前及び排出中に、電気泳
動分離において検体を視覚化するためのデバイス及び方法に関する。
【0019】
本明細書に記載の幾つかの実施形態は、富化ステップの間に検体を視覚化するためのデ
バイス及び方法に関する。
【0020】
本明細書に記載の幾つかの実施形態は、富化ゾーン間のチャネル内の検体を視覚化する
ためのデバイス及び方法に関する。
【0021】
幾つかの実施形態では、検体の視覚化は、紫外線吸光度、可視光吸光度、蛍光、フーリ
エ変換赤外分光法、フーリエ変換近赤外分光法、ラマン分光法、光学分光法などの光学検
出を介して行うことができる。
【0022】
本明細書に記載の幾つかの実施形態は、1つ以上の富化ゾーン及び富化された検体画分
を排出するためのオリフィスを含有するという点で、検体混合物の分析を可能にするデバ
イスに関する。幾つかの実施形態では、これらのデバイスは、特定波長の光に対して透過
性でない少なくとも1つの層と、その特定の波長に対して透過性である少なくとも1つの
層とを含む。富化ゾーンが光学スリットとして機能するように、光に対して透過でない層
の1つ以上の部分が1つ以上の富化ゾーンを画定することができる。
【0023】
幾つかの実施形態では、検体混合物は、デバイスをオートサンプラに接続する管又はキ
ャピラリを通して、デバイスの中に充填することができる。幾つかの実施形態では、検体
混合物をデバイス上のリザーバの中に直接装填することができる。
【0024】
幾つかの実施形態では、サンプルの少なくとも一部をデバイスから排出することができ
るオリフィスは、皿穴を有し、かつ/又は空気流から遮蔽される。幾つかの実施形態では
、このオリフィスは導電性ではない。本明細書で使用する場合、皿穴とは、窪みの側面又
は面取りの形状に関係なく、基板の一部がオリフィスを含有する窪みを画定することを意
味すると理解されたい。同様に述べると、皿穴は、端ぐり穴、円錐形及び/又は円錐台形
の皿穴、半球状穴等を含むと理解されたい。
【0025】
本明細書に記載の幾つかの実施形態は、不透明材料(例えば、紫外線に対して不透明な
ソーダ石灰ガラス)で作られた基板を含むマイクロ流体デバイスなどの装置に関する。基
板は、マイクロ流体分離チャネルを画定することができる。同様に述べると、マイクロ流
体分離チャネルは、基板内部にエッチングされるか、又は別の方法によって基板内に形成
され得る。マイクロ流体分離チャネルは、基板の厚みに等しい深さを有することができる
。同様に述べると、基板の全体の深さ(例えば、上から下までの全体)をエッチングして
、マイクロ流体分離チャネルとすることができる。このようにして、マイクロ流体分離チ
ャネルは、基板を通る光学スリットを画定することができる。透明層(例えば、上部層)
を基板の上面に配置し、例えば基板の上面を封止することができる。透明層(例えば、底
部層)を基板の底面にも配置し、マイクロ流体分離チャネルの上部及び底部の両方を封止
することができる。幾つかの実施形態では、上部層及び/又は底部層の一部のみが透明で
あってもよい。例えば、上部層及び/又は底部層は、その他の場合には不透明な材料で透
明なウィンドウを画定することができ、ウィンドウは、例えば、マイクロ流体分離チャネ
ルへの光学的な接近を提供することができる。
【0026】
本明細書に記載の幾つかの実施形態は、基板を含むマイクロ流体デバイスなどのデバイ
スに関する。基板は、1つ以上の富化ゾーン又はチャネルを画定することができる。例え
ば、基板は、検体に結合するように構成された媒体を含有する第1の富化ゾーンを画定す
ることができる。このような第1の富化ゾーンは、検体混合物をクロマトグラフィ的に分
離するのに好適であり得る。この装置は更に、第2の富化ゾーンの両端部に電気的に結合
された2つの電極を含むことができる。このような第2の富化ゾーンは、検体混合物を電
気泳動的に分離するのに好適であり得る。第2の富化ゾーンは、第1の富化ゾーンと交差
することができ、それにより第1の富化ゾーンで検体の画分が分離、濃縮、及び/又は富
化された後に、検体は第2の富化ゾーンで更に分離、濃縮、及び/又は富化され得る。デ
バイスはまた、凹状オリフィスを含むことができる。オリフィスは、第2の富化チャネル
の出口とすることができ、基板の、皿穴又は別の方法による凹状表面上、に配置すること
ができる。装置は、検体混合物の一部をESIを介してオリフィスから排出するように構
成することができる。凹部は、ESIに関連するテイラーコーンの形成のための安定した
環境を提供することができ、及び/又は質量分析計の入口ポートを受容するように構成す
ることができる。
【0027】
本明細書に記載の幾つかの実施形態は、検体混合物を、分離チャネルを含有するマイク
ロ流体デバイスの中に導入することを含む方法に関する。分離チャネルを横切って電界を
印加して、検体混合物の分離を遂行することができる。検体混合物は、分離中に、マイク
ロ流体デバイスの透明部分を介して画像化することができる。同様に述べると、ウィンド
ウ及び/又は光学スリットは、分離チャネルへの光学的な接近を提供することができ、分
離が起こっている間に分離チャネル全体又はその一部が画像化され得る。検体混合物の画
分は、分離チャネルと流体連通しているオリフィスから排出することができる。例えば、
ESIを介して画分を排出することができる。幾つかの実施形態では、テイラーコーンが
皿穴表面によって画定される凹部内部に形成されるように、オリフィスをマイクロ流体デ
バイスの皿穴表面に配置することができる。
【0028】
本明細書に記載の幾つかの実施形態は、第1の分離チャネル及び第2の分離チャネルを
含有するマイクロ流体デバイスの中に検体を注入することを含む方法に関する。第1の分
離チャネルは、検体混合物から検体を結合するように構成された媒体を含有することがで
きる。それに応じて、検体混合物がマイクロ流体デバイスの中に注入されると、検体混合
物の少なくとも1つの画分がマトリックスに結合し、かつ/又は第1の分離チャネルを通
って流れることが阻止され得る。例えば、検体をマイクロ流体デバイスの中に注入するこ
とにより、第1の分離チャネル内でクロマトグラフィ分離を行うことができる。検体の少
なくとも1つの画分が媒体から移動するように、溶出液をマイクロ流体デバイスの中に注
入することができる。第1の分離チャネルは、検体が移動している間に画像化することが
できる。第1の分離を画像化することは、全列(例えば、全チャネル)画像化及び/又は
チャネルの一部分の画像化を含むことができる。画分が第1の分離チャネルと第2の分離
チャネルとの交差点に配置されていることを画像化が検出したときに、電界を第2の分離
チャネルに印加して、画分が第2の分離チャネルの中に移動するようにすることができる
。例えば、幾つかの実施形態では、第1の分離チャネルは、第2の分離チャネルと直交す
ることができる。同様に述べると、第1の分離チャネルと第1の分離チャネルは、T分岐
を形成することができる。画像化は、画分の一部(例えば、関心のある部分)が分岐に位
置するときを検出することができる。電界を印加することにより、画分の一部分(かつ場
合により、分岐に位置していない画分の他の部分以外)を、第2の分離段階のために第2
の分離チャネルの中に移動させることができる。画分の少なくとも一部は、マイクロ流体
デバイスから排出され得る。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、一実施形態による、自動的に装填された試料の2次元分離及びESIのためのデバイスの概略図である。
【0030】
図2図2は、一実施形態による、3つの層を有するデバイスの概略分解図である。
【0031】
図3図3は、一実施形態による、マイクロ流体デバイスを通る光路の概略図である。
【0032】
図4図4は、一実施形態による、自動的に装填されたサンプルのIEF及びESIのためのデバイスの概略図である。
【0033】
図5図5は、一実施形態による、マイクロ流体デバイスの概略図である。
【0034】
図6図6は、分析物の特徴付けのための例示的な方法のフローチャートである。
【0035】
図7図7は、一実施形態による、マイクロ流体デバイスの概略図である。
【0036】
図8図8は、一実施形態による、マイクロ流体デバイスの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
前述の一般的な記載及び以下の記載はどちらも、具体例であって例示だけを目的として
おり、本明細書に記載の方法及びデバイスを限定するものではないことを理解すべきであ
る。本出願においては、特に他の記載がない限り、単数形の使用は複数形を含む。また、
「又は」の使用は、他の記載がない限り、「及び/又は」を意味する。同様に、「備える
(comprise、comprises)」、「備えている(comprising)
」、「含む(include、includes)」及び「含んでいる(includi
ng)」は、限定的であることを意図していない。
(デバイス)
図1は、一実施形態による、自動的に装填された試料の2次元分離及びESIのための
デバイスの概略図である。マイクロ流体ネットワーク100は、基板102によって画定
される。基板は、実施される富化ステップと適合する材料から製造される。例えば、材料
の選択に関連して、化学的適合性、pH安定性、温度、光の様々な波長における透明性、
機械的強度等が考慮される。
【0038】
基板102は、ガラス、石英、溶融シリカ、プラスチック、ポリカーボネート、PFT
E、PDMS、シリコン、ポリフッ素化ポリエチレン、ポリメタクリレート、環状オレフ
ィンコポリマー、環状オレフィンポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、及び/又は任
意の他の好適な材料から製造することができる。平面基板及び/又は任意の他の好適な材
料の、異なる層において異なる特性が所望される場合、材料の混合物を利用することがで
きる。平面基板の異なる層において異なる特性が所望される場合、材料の混合物を利用す
ることができる。
【0039】
チャネル106、110、114、116、118、124 122、126、132
、136及び140は、マイクロ流体ネットワーク100を形成し、基板102の中に作
製される。同様に述べると、基板102は、チャネル106、110、114、116、
118、124 122、126、132、136及び/又は140を画定する。
【0040】
チャネルは、例えばフォトリソグラフィーエッチング、モールディング、機械加工、付
加(3D)印刷等の任意のチャネル作製方法によって基板内に作製することができる。
【0041】
検体混合物及び外部試薬は、管/導管112を通して装填することができ、過剰な試薬
/廃棄物は管/導管130を通して除去することができる。
【0042】
管112及び130は、例えば、溶融シリカ、溶融シリカ毛細管、シリコーン管及び/
又はPTFE管を含む、実施されるアッセイに適合する任意の材料から製造することがで
きる。
【0043】
チャネル116及び124は、検体及び/又は検体の一部(例えば、画分)を分離及び
/又は富化するために使用することができる。チャネル116及び/又は124は、クロ
マトグラフィ分離(例えば、逆相、免疫沈降、イオン交換、サイズ排除、リガンド親和性
、染色性、疎水性相互作用クロマトグラフィ、親水性相互作用クロマトグラフィ、pH勾
配イオン交換、親和性、キャピラリ界面動電クロマトグラフィ、ミセル界面動電クロマト
グラフィ、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)、アミノ酸分析HPLC、超高速液体
クロマトグラフィ、ペプチドマッピングHPLC、フィールドフロー分別-マルチアング
ル光散乱)、又は電気泳動分離(例えば、等電点電気泳動、キャピラリゲル電気泳動、キ
ャピラリゾーン電気泳動、等速電気泳動、キャピラリ界面動電クロマトグラフィ、ミセル
界面動電クロマトグラフィ、フローカウンタバランスキャピラリ電気泳動、電界勾配集束
、動的場勾配集束)を実施するために使用することができる。例えば、チャネル116は
、誘導体化又は材料で充填して、第1の富化ステップを実施することができる。
【0044】
チャネル116及び/又は124の中に配置される材料は、例えば、疎水性(逆相)、
免疫親和性(免疫沈降)、親和性(有効性)、サイズ(サイズ排除クロマトグラフィ)、
電荷(イオン交換)、又は他の形態の液体クロマトグラフィに基づいて検体を採取するよ
うに選択することができる。
【0045】
富化材料をチャネル116及び/又は124内部に配置するために、多くの異なる方法
を使用することができる。壁は、例えば、共有結合分子又は吸着分子で直接誘導体化する
ことができ、又はビーズ、ガラス粒子、ゾルゲルなどを誘導体化してこれらのチャネルの
中に充填することができる。
【0046】
試料がチャネル116の中に充填された後、洗浄液、次いで溶出試薬を管112及びチ
ャネル114を通して導入することができる。
【0047】
溶出プロセスは、チャネル116で実施される富化方法に依存する。好適な溶出液を選
択して、結合した検体の画分を溶出させることができる。幾つかの富化オプションは、溶
出ステップ(例えば、サイズ排除クロマトグラフィ、電気泳動分離など)を必要としない
場合がある。
【0048】
溶出液又は貫流(flow-through)は、チャネル118を通ってチャネル124の中に流
れる。
チャネル124は、クロマトグラフィ富化ステップ又は電気泳動富化ステップのいずれ
かを行うために使用することができる。
【0049】
電源を使用してリザーバ108とリザーバ120との間に電界を印加することによって
、電気泳動分離をチャネル124内で行うことができる。同様に述べると、デバイス10
0は、リザーバ108及び/又はリザーバ120と電気的に接触する電極を含むことがで
きる。電源の電気的接地は、質量分析計の電気的接地に接続され、チャネル124から質
量分析計への電界の連続性を提供することができる。
【0050】
IEF、ITP、CGE、CZE等の任意のCE電気泳動法を、チャネル124内で実
施することができる。あるいは、チャネル124内で非電気泳動富化法を実施することが
できる。
【0051】
IEF又はITPの場合、濃縮された精製試料バンドは、例えば合流部126への圧力
手段又は電気的手段によって移動されるであろう。リザーバ108及び134からのシー
ス溶液は、シース及び陰極液として機能することができる。
【0052】
シース/陰極液は、電気泳動分離及び質量分析(例えば、MeOH/NOH/H
)と適合する任意の塩基性溶液であり得る。陽極液は、任意の酸性溶液(例えば、l0m
Mリン酸)であり得る。
【0053】
あるいは、電界を逆転させて陰極液(NaOH)をリザーバ120に充填することがで
き、陽極液をリザーバ108及び134内のシース溶液として使用することができる。
【0054】
合流部126は、富化された検体画分がシース溶液と混合する場所である。チャネル1
24内の検体画分が移動すると、溶液は合流部126を通してオリフィス128に押し出
される。
【0055】
オリフィス128は、基板102の表面127によって画定される凹部内部に配置する
ことができる。例えば、表面127は、皿穴のESI表面とすることができる。例えば、
図1に示すように、ウェル108を介して電気的に接地された富化された検体溶液は、表
面127によって画定された凹部内部に完全に配置されたオリフィス128から発するテ
イラーコーンを形成することができる。オリフィス128及び/又は表面127は、ウェ
ル108に対して電位差を有することができる質量分析計の入口に向けることができる。
噴霧は、円錐構造から質量分析計に向かって分離するときに、基板102を出る前に、チ
ャネル106及び140を通って供給される噴霧ガスにより隣接され得る。噴霧ガスは、
任意の不活性又は非反応性ガス(例えば、アルゴン、窒素等)であり得る。
【0056】
更に、シース液体及び/又は噴霧ガスを使用することにより、最後の「オンデバイス」
工程としてイオン欠乏工程の使用を可能にすることができる。シース液は、ESIの前に
IEF帯電アッセイ濃縮工程の間に失われたイオンポテンシャルを補充することを可能に
し、噴霧は、オフライン分析のために微細な霧でサンプルを提供する。
【0057】
表面127上にテイラーコーンを生成することによって、コーンは安定したポケット又
は凹部内に形成され、撹乱する気流から保護される。加えて、皿穴を取り囲む円錐形状は
、広範囲のテイラーコーン径方向断面に適応して自然に広がる接触面を有し、質量分析計
の中に入る流量がより広範囲となることを可能にする。
【0058】
オリフィス128は、質量分析計の入口ポートに近接させて配置することができる。場
合によっては、表面127は、質量分析計の入口ポートが、表面127によって画定され
る凹部内部に配置され得るように構成することができる。
【0059】
図2は、一実施形態による、3つの層を有するデバイス212の概略分解図である。図
2Aは、一実施形態による、デバイス212の上部層202を示す。図2Bは、一実施形
態による、デバイス212の中間層206を示す。図2Cは、一実施形態による、デバイ
ス212の底部層210を示す。図2Dは、一実施形態による、組み立てたデバイス21
2を示す。3つの層202、206、210の各々は、デバイス212が実施しようとす
るアッセイと適合する任意の材料でできていてもよい。
【0060】
幾つかの実施形態では、層202は、光の特定の波長又は波長範囲に対して透明な材料
から作製される。本明細書で使用する場合、「透明」とは、材料の一方の側の特定の波長
又は波長範囲を有する光の量が、他方の側の検出器によって定量化され得るのに十分な透
過率を有することを意味すると理解されたい。場合によっては、透過率が30%、50%
、80%、95%、又は100%の材料は透明である。幾つかの実施形態では、関心のあ
る波長範囲は、中間紫外線範囲(例えば、200nm~300nm)を含み、例えば、ガ
ラス、石英、溶融シリカ、ならびにポリカーボネート、ポリフッ素化ポリエチレン、ポリ
メタクリレート、環状オレフィンポリマー、環状オレフィンコポリマー及び他の紫外線透
過材料など、の材料を透明材料として使用することができる。幾つかの実施形態では、関
心のある光スペクトルは、可視スペクトル(例えば、200~900nm)を超えて拡張
される。
【0061】
貫通孔204が層202内に作製され、デバイスの外部から下層(例えば、層208)
内のチャネルネットワークへの圧力及び電気的インタフェースを可能にする。
【0062】
図2Bは、チャネルネットワーク208を含有するデバイス212の内部中間層206
を示す。チャネルネットワークは、上部層202に作製された貫通孔とインタフェースす
るように設計されている。チャネルネットワーク208は、入口及び出口管/導管209
と、富化された検体画分を排出するためのオリフィス205と、視認可能な富化ゾーン2
07とを含む。富化ゾーン207は、その深さが層206の全体の厚みであるように作製
される。他の実施形態では、ゾーン207は、層206の全体の厚み未満であり得る。
【0063】
幾つかの実施形態では、層206は、光の特定の波長又は波長範囲に対して不透明及び
/又は透明でない材料から作製される。本明細書で使用する場合、「不透明」とは、一方
の側の光の量が、他方の側の検出器によって定量化されることを可能にするには不十分な
透過率を有し、チャネルネットワーク内のゾーンが層206の全体の厚みと同程度に深い
領域以外において、この光を効果的に阻止する材料を意味すると理解されたい。
【0064】
図2Cは、デバイス212の底部層210を示す。底部層210は、例えば、固体基板
とすることができる。幾つかの実施形態では、底部層210は、層202と同じ透過率を
有する材料から作製することができる。
【0065】
図2Dは、一実施形態による、組み立てられた上部層202、中間層206、及び底部
層210を含むデバイス212を示す。入口管及び出口管209、リザーバ204及びオ
リフィス205は、デバイス210が組み立てられた後でも依然として接近可能である。
幾つかの実施形態では、上部層202全体及び/又は底部層210全体を透明にすること
ができる。他の実施形態では、上部層202の一部及び/又は底部層210の一部は不透
明であり、上部層202及び/又は底部層210の別の部分が透明であり得る。例えば、
上部層210及び/又は底部層210は、デバイス212が組み立てられたときに富化ゾ
ーン207の少なくとも一部と整列する光学ウィンドウを画定することができる。
【0066】
図3は、一実施形態による、マイクロ流体デバイス302を通る光路の概略図である。
図3Aは、マイクロ流体デバイス302の上面図を示す。図3Bは、光源306と検出器
308との間に配置されたマイクロ流体デバイス302を示す。検出器308は、デバイ
ス302を通過する光を測定するように配置される。図3には示されていないが、マイク
ロ流体デバイス302は、図1及び図2で説明したのと同様のチャネル構造を有すること
ができるが、参照しやすいようにチャネル構造は示されていない。幾つかの実施形態では
、マイクロ流体デバイス302の上面の一部は不透明であり、光源306から投影された
光を完全に又は実質的に覆い隠し、検出器308に到達しないようにする。上面の不透明
な部分は、試料の特性の検出が望ましくない部分においてデバイスを通る光の透過を実質
的に防止する。例えば、チャネル304が非透明層の厚み全体を横断するので、幾つかの
実施形態では、マイクロ流体デバイス302は、1つ以上のチャネル領域304にわたっ
て不透明ではない(例えば、一部の光は通過させる)。
【0067】
幾つかの実施形態では、この透明な(1つ又は複数の)チャネル領域304は富化ゾー
ンであってもよく、ここにおいて光学検出を使用して検体を検出し、富化の進行をモニタ
し、及び/又はデバイスから排出させる、富化された(1つ又は複数の)検体画分をモニ
タすることができる。幾つかの実施形態では、透明チャネル304を通過する光の量の変
化を用いて、検体画分がこのチャネル内にある間に吸光度を測定する。従って、幾つかの
実施形態では、(1つ又は複数の)チャネル領域304が光学スリットを画定し、それに
よりマイクロ流体デバイス302の一方の側に配置された光源306が透明な(1つ又は
複数の)チャネル領域304のみを通って検出器308を効果的に照射する。このように
して、迷光(例えば、透明な(1つ又は複数の)チャネル領域及び/又は試料を完全に通
過しない光)を検出器308から効果的に遮断することができ、それによりノイズを低減
させ、検出器308が透明な(1つ又は複数の)チャネル領域304内部のサンプルを観
察する能力を向上させることができる。幾つかの実施形態では、透明な(1つ又は複数の
)チャネル領域304は、2つの富化ゾーンの間にあり、上流の富化ゾーンから溶出した
ときに検体画分を検出するために使用することができる。
【0068】
(方法)
図6は、一実施形態による、検体混合物富化の方法を示す。この方法は、20において
、検体混合物をマイクロ流体デバイスに装填及び/又は導入することを含む。マイクロ流
体デバイスは、図1図3を参照して上述したマイクロ流体デバイスと同様であり得る。
幾つかの実施形態において、検体混合物は、例えば、グリカン、炭水化物、DNA、RN
A、インタクトタンパク質、消化されたタンパク質、ペプチド、代謝産物、ワクチン、ウ
イルス及び小分子であり得る。幾つかの実施形態では、検体混合物は、培養細胞の溶解物
、体細胞由来の治療剤、又は腫瘍もしくは他の組織由来の細胞などのタンパク質の混合物
、バイオ医薬品を含む組み換えタンパク質、血液由来細胞、灌流又は任意の他のソースか
らのタンパク質混合物であり得る検体混合物は、デバイスに直接装填することができ、又
は複数の混合物の連続分析のためにオートサンプラに装填することができる。
【0069】
マイクロ流体デバイスは、第1の分離チャネル及び/又は富化ゾーンを含むことができ
る。幾つかの実施形態では、第1の分離チャネル及び/又は富化ゾーンは、クロマトグラ
フィ分離のために構成することができる。例えば、第1の分離チャネル及び/又は富化ゾ
ーンは、検体混合物からの検体を結合するように構成された媒体を含有することができ、
及び/又はそれ以外の場合にはクロマトグラフィ分離を遂行する。21において、第1の
富化を実施することができ、例えば、クロマトグラフィ分離を第1の分離チャネル及び/
又は富化ゾーンで行うことができる。検体混合物がタンパク質混合物である実施形態など
の幾つかの実施形態では、21における第1の富化はタンパク質混合物を単純化すること
ができる。21における第1の富化は、検体の任意の識別可能な性質に基づくことができ
る。
【0070】
この富化された検体画分は次いで、22において溶出される。例えば、溶出液をマイク
ロ流体デバイスの中に注入して、第1の分離チャネル及び/又は富化ゾーン内部に配置さ
れた媒体から富化された検体画分を移動させることができる。幾つかの実施形態では、富
化された検体画分の富化及び/又はモビライゼーションを画像化することができる。例え
ば、上述のように、第1の分離チャネル及び/又は富化ゾーンは、光学スリットを画定す
ることができる。光をマイクロ流体デバイスに投影することができ、検出器が第1の分離
チャネル及び/又は富化ゾーンを通過する光を検出することができる。試料又はその一部
は、吸光度及び/又は蛍光画像化技術を介して検出することができる。
【0071】
マイクロ流体デバイスは、第2の分離チャネル及び/又は富化ゾーンを含むことができ
る。幾つかの実施形態では、第2の分離チャネル及び/又は富化ゾーンは、電気泳動分離
のために構成することができる。23において、例えば溶出液に対して第2の富化を実施
することができる。例えば、電界及び/又は電位を第2の分離チャネル及び/又は富化ゾ
ーンを横切って印加することができる。
【0072】
幾つかの実施形態では、第2の富化は、23において、検体混合物の画分が第1の分離
チャネル及び/又は富化ゾーンと第2の分離チャネル及び/又は富化ゾーンとの交差点に
配置されたときに開始することができる。例えば、第1の分離チャネル及び/又は富化ゾ
ーンをモニタ(例えば、画像化)することができ、関心のある画分が交差点に到達したと
きに電位及び/又は電界を印加することができる。
【0073】
幾つかの実施形態では、23における第2の富化は、電荷特性(電荷アイソフォーム)
に基づいて富化された画分を提供することができる。そのような富化は、例えば、ゲル等
電点電気泳動、モビライゼーションを用いた等電点電気泳動、全カラムイメージングを用
いた等電点電気泳動、イオン交換クロマトグラフィ、pH勾配交換クロマトグラフィ、等
速電気泳動、キャピラリゾーン電気泳動、キャピラリゲル電気泳動又は他の、例えば電荷
に基づいた富化技術、を含むことができる。
【0074】
21における第1の富化はクロマトグラフィ富化として記載され、23における第2の
富化は電気泳動として記載されたが、任意の好適な富化を任意の好適な順序で実施できる
ことを理解されたい。例えば、21における第1の富化及び23における第2の富化は、
両方ともクロマトグラフィ又は両方とも電気泳動であり得る。別の例として、21におけ
る第1の富化は電気泳動とすることができ、23における第2の富化はクロマトグラフィ
とすることができる。
【0075】
幾つかの実施形態では、1つ以上の富化は、酸化などの疎水性変化に基づいて富化され
た画分を提供することができる。そのような富化は、例えば、逆相クロマトグラフィ、疎
水性相互作用クロマトグラフィ、親水性相互作用クロマトグラフィ、又は例えば疎水性に
基づく他の富化技術を含むことができる。
【0076】
幾つかの実施形態では、1つ以上の富化は、翻訳後修飾、ガラクトシル化、フコシル化
、シアリル化、マンノース誘導体及び他のグリコシル化、ならびに糖化、酸化、還元、リ
ン酸エステル化、スルファン化(sulphanation)、ジスルフィド結合形成、アミド分解、
アシル化、ペギル化、開裂を含むグリコフォーム、抗体-薬物複合体(ADC)、タンパ
ク質-薬物複合体、C末端リジン処理、他の天然及び非天然起因の翻訳後修飾、及びタン
パク質の修飾後に導入された他の化学的及び構造的修飾等、に基づいて富化された画分を
提供することができる。そのような富化は、例えば、結合アッセイ等を含むことができる
【0077】
幾つかの実施形態では、1つ以上の富化は、酸化などの疎水性変化に基づいて富化され
た画分を提供することができる。そのような富化は、例えば、逆相クロマトグラフィ、疎
水性相互作用クロマトグラフィ、親水性相互作用クロマトグラフィ、又は疎水性に基づく
他の富化技術を含むことができる。
【0078】
幾つかの実施形態では、1つ以上の富化は、突然変異、製造中のアミノ酸置換などによ
って引き起こされるような、一次アミノ酸配列に基づいて富化された画分を提供すること
ができる。そのような富化は、例えば、電荷アイソフォーム、疎水性変化、又は一次アミ
ノ酸配列の差異を区別することができる他の富化技術による分離を含むことができる。
【0079】
幾つかの実施形態では、1つ以上の富化は、有効性に基づいて富化された画分を提供す
ることができる。そのような富化は、例えば、バイオアッセイ、酵素阻害アッセイ、酵素
活性化アッセイ、競合アッセイ、蛍光偏光アッセイ、シンチレーション近接アッセイ、又
は有効性に基づく他の富化技術等を含むことができる。
【0080】
幾つかの実施形態において、1以上の富化は、親和性に基づいて富化された画分を提供
することができる。そのような富化は、例えば、溶液相の標的結合、ビーズベースの標的
結合、表面結合標的、免疫沈降、プロテインA結合、プロテインG結合等を含むことがで
きる。
【0081】
幾つかの実施形態では、1つ以上の富化は、質量又はサイズに基づいて富化された画分
を提供することができる。そのような富化は、例えば、ポリアクリルアミドゲル電気泳動
、キャピラリゲル電気泳動、サイズ排除クロマトグラフィ、ゲル浸透クロマトグラフィ、
又は質量ベースの他の富化技術を含むことができる。
【0082】
幾つかの実施形態では、検体混合物は、デバイスから排出される前に3回以上の富化を
経る。
【0083】
24において、富化された検体画分をデバイスから排出すことができる。幾つかの実施
形態では、富化された検体画分は、IEFを介して排出することができる。24において
富化された検体画分を排出することで、排出前に検体画分を濃縮することができる。
【0084】
幾つかの実施形態では、24において、エレクトロスプレーイオン化、大気圧化学イオ
ン化等のイオン化技術を使用して検体画分が排出される。
【0085】
幾つかの実施形態では、24において、動電学的力又は流体力学的力を用いて、検体画
分が排出される。
【0086】
幾つかの実施形態では、富化されたタンパク質画分は、24において、質量分析計に結
合された形態でデバイスから排出される。
【0087】
マイクロ流体デバイスから排出された検体(例えば生物学的又はバイオシミラ)の質量
は、例えば、飛行時間型質量分析、四重極型質量分析、イオントラップ又はオービトラッ
プ質量分析、飛行距離型質量分析、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴、共鳴質量測
定、ナノメカニカル質量分析によって測定することができる。
【0088】
幾つかの実施形態では、視覚化されたIEFチャネル(例えば、第1の分離チャネル及
び/又は富化ゾーン及び/又は第2の分離チャネル及び/又は富化ゾーン)内のpi範囲
をマッピングするためにpiマーカが使用される。幾つかの実施形態では、piマーカ又
は両性電解質を使用して、下流の質量分析データにおけるpiマーカ又は両性電解質の存
在によって、検体のpiを決定することができる。
【0089】
幾つかの実施形態では、モビライゼーション及びESI中にIEFをモニタすることが
できる。このようにして、質量分析データをIEFのピークと相関させることができ、ピ
ーク分解能を維持及び/又は向上させることができる。
【0090】
幾つかの実施形態において、検体混合物及び/又はその一部は、圧力源を使用してマイ
クロ流体デバイス内部で移動させることができる。幾つかの実施形態では、モビライゼー
ションは静水圧で行われる。幾つかの実施形態では、モビライゼーションは化学的固定化
である。幾つかの実施形態では、モビライゼーションは動電学的モビライゼーションであ
る。
【0091】
図7は、一実施形態による、マイクロ流体デバイスの概略図である。マイクロ流体ネッ
トワーク800は、基板802内に配置され、及び/又は基板802によって画定される
。基板は、実施される富化ステップと適合する材料から製造される。例えば、材料の選択
に関連して、化学的適合性、pH安定性、温度、光の様々な波長における透明性、機械的
強度等は、材料を選択する際に重要であり得る。
【0092】
基板802は、ガラス、石英、溶融シリカ、プラスチック、ポリカーボネート、PFT
E、PDMS、シリコン、ポリフッ素化ポリエチレン、ポリメタクリレート、環状オレフ
ィンコポリマー、環状オレフィンポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、及び/又は、
任意の他の好適な材料から製造することができる。平面基板の異なる層において異なる特
性が所望される場合、材料の混合物を利用することができる。
【0093】
チャネル806、808、810、811、817、814、812は、チャネルネッ
トワークを形成し、基板802の中に作製される(例えば、基板により画定される)。
【0094】
チャネルは、フォトリソグラフィーエッチング、モールディング、機械加工、付加(3
D)印刷などの任意のチャネル作製方法によって基板内に作製することができる。
【0095】
検体混合物及び外部試薬は、管804を通して装填することができ、過剰な試薬/廃棄
物は管810及び818を通して除去することができる。
【0096】
管804、810、及び/又は818は、溶融シリカ、溶融シリカ毛細管、シリコーン
管、PTFE管等を含む、実施されるアッセイに適合する任意の材料から製造することが
できる。
【0097】
チャネル806及び814は、分離/富化ゾーンとして指定することができる。チャネ
ル806及び/又は814のいずれかを使用して、クロマトグラフィ分離(逆相、免疫沈
降、イオン交換、サイズ排除、リガンド親和性、染色性、疎水性相互作用、親和性、キャ
ピラリ界面動電クロマトグラフィ、ミセル界面動電クロマトグラフィ及び/又は同種のも
の)、又は電気泳動分離(等電点電気泳動、キャピラリゲル電気泳動、キャピラリゾーン
電気泳動、等速電気泳動、キャピラリ界面動電クロマトグラフィ、ミセル界面動電クロマ
トグラフィ、フローカウンタバランスキャピラリ電気泳動、電界勾配集束、動的場勾配集
束)を実施することができる。例えば、チャネル806は、チャネル806内の暗い円に
よって表される第1の富化ステップを実施するために、誘導体化又は材料で充填すること
ができる。
【0098】
チャネル806の中に配置された材料は、疎水性(逆相)、親和性(有効性)、サイズ
(サイズ排除クロマトグラフィ)、電荷(イオン交換)、免疫親和性(免疫沈降)、タン
パク質-タンパク質相互作用、DNA-タンパク質相互作用、アプタマ-塩基捕捉、小分
子-塩基捕捉、又は他の形態の液体クロマトグラフィ等に基づいて検体を採取するように
選択することができる。
【0099】
富化材料をチャネル806及び/又は814内部に配置するために、多くの異なる方法
を使用することができる。壁は、共有結合で結合した分子又は吸着した分子で直接誘導体
化することができ、又はビーズ、ガラス粒子、ゾルゲル等を誘導体化してこれらのチャネ
ルの中に充填することができ、又はチャネルを、線状ポリアクリルアミド(LPA)、ポ
リビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレンオキシド(PEO)、デキストランなどの
線状ポリマー溶液、ポリアクリルアミドなどの架橋ポリマー溶液、液体クロマトグラフィ
用マトリックス、又は他の材料、などのふるい材料で満たすことができる。
【0100】
実施される特定のアッセイに依存して、化学的反応性を有する溶液を添加することがで
きる。場合によっては、材料の誘導体化は、充填された材料に吸着又は共有結合するであ
ろう分子又は材料に化学的に架橋することができる分子を添加することによって、材料が
チャネル806(又はチャネル814)の中に充填された後に起こり得る。例えば、プロ
テインA、プロテインG、エポキシなどの抗体結合分子で被覆された材料をチャネル80
6の中に配置することができる。その後の抗体溶液によるリンスにより、抗体で被覆され
た材料は残り、免疫親和性捕捉に関与することができる。場合によっては、抗体は標的検
体又は溶解物と混合することができ、それにより材料上に被覆される前に、抗体が自由溶
液中でその標的に結合することができる。
【0101】
富化材料がデバイスに装填された後、試料は管804を介してチャネル806の中に充
填される。その後、洗浄液及び溶出試薬を管804を通してチャネル806に導入するこ
とができる。
【0102】
場合によっては、捕捉された材料に結合させるために、検出試薬が添加される。蛍光団
、発色団(chromophores)又は他の検出分子などの検出部分をポリペプチドの末端におい
て標的タンパク質へ共有結合的に結合することができる、及びリジン、システイン及び他
のアミノ酸部分などのアミノ酸側鎖への結合による、多数の標識試薬が利用可能である。
共有結合した検出部分によって、蛍光励起、発色団アッセイ(chromophoric assay)、又
は他の間接的手段を通じてタンパク質を検出することが可能になる。場合によっては、標
的タンパク質は標識化されないまま残り、220nm、280nm又はタンパク質が光を
吸収する任意の他の波長による自然吸光度、又は自然蛍光を通じて検出することができる
。場合によっては、タンパク質は、SYPRO(登録商標)ruby,Coomassi
e blueなどの、非共有結合的に結合した発蛍光性、発色性、蛍光性又は発色団の標
識を用いて検出される。
【0103】
場合によっては、検出を促進するために、検出試薬が直接チャネル814に加えられる
【0104】
溶出プロセスは、チャネル806で実施される富化方法に依存する。溶出プロセスは、
結合した検体の少なくとも1つの画分を溶出するように選択される。場合によっては、溶
出プロセスは、熱及びドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、又は他の界面活性剤、グリシ
ン、尿素、又は捕捉された検体の放出を誘導する任意の他の方法の組み合わせによって達
成することができる。幾つかの富化オプションでは、直接溶出ステップ(例えば、サイズ
排除クロマトグラフィ)を必要としない場合がある。場合によっては、溶出の後に変性が
続く。
【0105】
次いで、溶出液は、チャネル808を通って、次の分離/富化ゾーンであるチャネル8
14の中に流入する。チャネル814は、クロマトグラフィ富化ステップ又は電気泳動富
化ステップのいずれかを行うために使用することができる。
【0106】
電源を使用してリザーバ812とリザーバ816との間に電界を印加することによって
、電気泳動分離をチャネル814内で行うことができる。チャネル806からの溶出液が
チャネル808と814との交差点を通過するとき、電界を有効にし、検体をチャネル8
14の中に充填することができる。場合によっては、タンパク質検体がSDSのような負
に帯電した界面活性剤で飽和されている標準的なゲル電気泳動モードにおけるように、検
体は負に帯電している。しかし、チャネル814の極性は、例えば、タンパク質検体がセ
チルトリメチルアンモニウムブロマイド(CTAB)などの正に荷電した界面活性剤で飽
和しているシステムに対応するために、容易に逆転することができる。他の場合では、タ
ンパク質検体は、天然ゲル電気泳動におけるように、中性界面活性剤で被覆するか、又は
界面活性剤なしとすることができる。この場合、選択された緩衝系におけるタンパク質標
的の予想される電荷に基づいて極性が選択され、タンパク質検体がチャネル814の中に
移動する。
【0107】
IEF、ITP、CGE、CZE等の任意のCE電気泳動法を、チャネル814内で実
施することができる。あるいは、チャネル内で非電気泳動富化方法を実施することができ
る。
【0108】
チャネル814内の検体は、全カラム画像化、部分カラム画像化、及び/又は単一点検
出によって見ることができる。
【0109】
場合によっては、チャネル806、814又はその両方の富化材料を除去して新しい物
質で補充することができ、それによりデバイスを別の分析対象サンプルに使用することが
できる。
【0110】
場合によっては、図7のようなチャネル設計をデバイス上で複数回繰り返すことができ
るので、2つ以上の検体試料を並行して分析することができる。
【0111】
(例)
実施形態の態様は、以下の実施例に照らして更に理解することができるが、これらは決
して限定するものと解釈すべきではない。
【0112】
(実施例1)-質量分析(MS)の前にチップ上のタンパク質電荷を特性評価する
この例では、図4に示すチャネルネットワークは、標準フォトリソグラフィーエッチン
グ技術を用いて、ソーダ石灰ガラスのプレートから作製され、280nmの光に対する非
常に低い透過率を有する。富化チャネル418の深さは、ガラス層402の厚みと同じで
あり、すなわち富化チャネル418は、このガラス板402の上部から底部まで全体を通
過している。デバイス400は、デバイス400の一方の側に配置された光源によって照
射され、デバイス400の反対側に配置された検出器によって画像化することができる。
基板402は不透明であるが、富化チャネル418が光学スリットを画定するので、基板
402は、富化チャネル418を通過しない光を遮断し、迷光を遮断し、画像化プロセス
の分解能を向上させることができる。
【0113】
ガラス層402は、280nmの光に対して透過性(例えば透明)である2つの溶融シ
リカ板の間に挟まれている。図2におけるように、上部板は、機器及び利用者がチャネル
ネットワークとインタフェースするための貫通孔を含有し、底部板は固体である。3枚の
プレートを520℃で30分間接合する。入口管及び出口管は、切断されたキャピラリ(
100μm ID、polymicro)から製造され、チャネルネットワークに結合さ
れる。
【0114】
このデバイスは、窒素ガス供給源、ヒータ、陽圧ポンプ(例えば、Parker、T5
-1IC-03-1EEP)、2つの白金-イリジウム電極(例えば、Sigma-Al
drich,357383)で終端する電気泳動電源(Gamm High Volta
ge、MC30)、UV光源(例えば、LED、qphotonics、UVTOP28
0)、CCDカメラ(例えば、ThorLabs、340UV-GE)、及び試料をデバ
イスに装填するためのオートサンプラ、を含有する機器に搭載される。電源は、質量分析
計と共通接地を共有する。機器はソフトウェア(例えば、lab View)を介して制
御される。
【0115】
タンパク質試料は、バイアル瓶の中に配置されオートサンプラに装填される前に、両性
電解質pH勾配及びpiマーカとあらかじめ混合される。それらは、オートサンプラから
入口412を介してマイクロ流体デバイス400に装填され、富化チャネル418を通り
、出口434を通りデバイスから出て廃棄物430となる。
【0116】
シース/陰極液(50%MeOH、NOH/HO)が2つの陰極液ウェル404、
436に、陽極液(10mM HPO)が陽極液ウェル426に充填され、加熱窒素
ガス供給源が2つのガスウェル408、440に取り付けられる。
【0117】
全ての試薬が充填された後、陽極液ウェル426及び陰極液ウェル404、436に電
極を接続することで、+600V/cmの電界が陽極液ウェル426から陰極液ウェル4
04、436に印加され、等電点電気泳動が開始される。UV光源が富化チャネル418
の下に整列され、カメラが富化チャネル418の上方に配置されて富化チャネル418を
通過する光を測定し、それによって集束しているタンパク質を吸光度によって検出する。
ガラス板402は、ソーダ石灰ガラスで作られ、カメラからのあらゆる迷光を遮断するよ
うに作用し、富化チャネル418を通過しない光がカメラに到達することを阻止し、測定
感度を高めている。
【0118】
集束しているタンパク質の画像は、IEFの間に連続的及び/又は周期的に捕捉するこ
とができる。集束が完了すると、低圧が入口412から与えられ、pH勾配をオリフィス
424の方向に移動させる。高分解能IEF分離を維持するために、電界をこの時点で維
持することができる。ESIプロセス中に富化チャネル418を画像化し続けていること
を活用して、タンパク質がオリフィス424から排出されている間に、各タンパク質のp
iを決定することができる。
【0119】
富化されたタンパク質画分は、富化チャネル418から合流部420の中に移動すると
、陰極液ウェル404、436からシース/陰極液チャネル406、438を介して合流
部420に流れることができるシース液と混合される。富化されたタンパク質画分をシー
ス液と混合することで、タンパク質画分を質量分析と互換性のある溶液に入れることがで
きるようになり、集束されたタンパク質に電荷を復元させることができる(IEFはタン
パク質を非荷電状態にする)。
【0120】
富化されたタンパク質画分は次いで、ガラス板402の皿穴表面422によって画定さ
れ得るオリフィス424に続く。富化されたタンパク質画分は、シース液ウェルと質量分
析計陰極との間の電界にいったん捕捉されると、テイラーコーンを生成することができる
【0121】
溶液が富化チャネル418からテイラーコーンを押し続けると、流体の小さな液滴がテ
イラーコーンから排出され、質量分析計入口に向かって飛行する。窒素ガス(例えば、1
50℃)は、ガスウェル408、440から流れてガスチャネル410、432を通り窒
素ガスジェットを形成することができ、これがテイラーコーンに隣接し、それによりテイ
ラーコーンから放出される液滴をマイクロ流体デバイスから出る前に細かい霧に変換する
ことができ、それにより質量分析計での検出を補助することができる。入口412からの
圧力を調整することにより、テイラーコーンのサイズを必要に応じて適合させ、質量分析
計における検出を改善することができる。
【0122】
(実施例2)-逆相→IEF→MS
実施例2は実施例1と同様であり得るが、図1を参照して説明する。チャネル116は
、C18で誘導体化されたゾルゲルが充填された第1の富化ゾーンであり得る。タンパク
質を装填した後、一定量の溶出液(IEF両性電解質及び標準を有するMeCN/H
)がチャネル116の中に充填されて、ゾルゲルに捕捉された最も疎水性の低いタンパク
質を溶出することができる。溶出液は、実施例1に記載したように、IEF、UV吸光度
モニタリング及び最後にESIが行われる第2の富化ゾーンであり得るチャネル124に
向けられる。第1の溶出液のESIがいったん完了すると、次に一定量のより高い濃度の
MeCNが使用され、2番目に低い疎水性を有するタンパク質画分が溶出される。
【0123】
(実施例3)-有効性→IEF→MS
実施例3は実施例2に類似であり得るが、生物学的薬物標的誘導体化ビーズをチャネル
116の中に充填し、タンパク質を捕捉するために使用することができる。反応の親和性
は、溶液相標的(競合的)、塩、pH等による溶出を通して特性評価される。
【0124】
(実施例4)-逆相→キャピラリゾーン電気泳動→MS
実施例4は実施例2と同様であり得るが、図5を参照して説明する。タンパク質混合物
は、入口521を通って充填され移動し富化ゾーン510に至ることができ、タンパク質
混合物は、逆相クロマトグラフィのためにC18で誘導体化されたビーズを含有すること
ができる。装填の間、流体はゾーン510を通過し、視認領域511を通って出口522
から出て廃棄物となる。視認領域510は、280nmのUV光に対して不透明なソーダ
石灰ガラスでできている内部層を横断し、上部層及び底部層は280nmの光に対して透
明な溶融シリカからできている。
【0125】
280nmの光源が視認領域511の下方に配置され、CCD検出器が視認領域511
の上方に配置される。
【0126】
20%のMeCN/HO溶液が入口521を通して充填され富化ゾーン510を通る
。この溶液は、混合物中の最も疎水性が低いタンパク質に対して富化された画分を溶出す
る。富化されたタンパク質画分が富化ゾーン510から出口522に移動する際に、視認
領域511において、富化されたタンパク質画分の280nmでの吸光度がモニタされる
。画分が富化ゾーン510と富化ゾーン515との交差点に位置したとき、電源がオンに
されて、リザーバ514の正電極とリザーバ504の接地との間に電界が生成される。こ
の極性は、電源の極性を切り替えることによって容易に逆にすることができる。いったん
電界が存在すると、富化されたタンパク質画分は富化ゾーン515を移動し、キャピラリ
ゾーン電気泳動によってタンパク質が分離される。分離されたタンパク質は、合流部51
6でシース、電解質溶液と混合し、表面518上にテイラーコーンを形成する。
噴霧窒素ガスラインは、ポート508及び528でデバイスに接続され、チャネル51
2及び530を通って移動し、エレクトロスプレーからの材料がオリフィス520を介し
てデバイスから出る際に、その材料に隣接(flank)する。
【0127】
或いはまた、流体力学的圧力を使用して、富化されたタンパク質画分を富化ゾーン51
5の中に充填することができる。
【0128】
(実施例5)-免疫沈降→タンパク質溶解物のキャピラリゲル電気泳動
この例では、図7のレイアウトによって表されるマイクロ流体チャネル層は、環状オレ
フィンコポリマーから作製される。同様に述べると、マイクロ流体デバイス800の基板
802はチャネルネットワークを画定する。多くの用途、例えば、蛍光検出が使用される
用途では、この材料が検体を検出するために必要な波長範囲の光を透過するならば、単一
の材料を用いてマイクロ流体デバイス800を製造することができる。
【0129】
プロテインA被覆ビーズがチャネル806の中に充填される。これらのビーズは、プロ
テインAビーズに結合する関心のある標的に対する抗体の溶液でリンスされる。検体検出
を妨害する抗体シェディングを減少させるために、抗体は次いで、ジメチルピメリミデー
ト(DMP)、ビス(スルホスクシンイミジル)スベレート(BS3)などの市販の架橋
試薬を用いてビーズに対する抗体に共有結合的に架橋される。免疫沈降ビーズが調製され
、チャネル806に充填された後、溶解物検体試料を管804を介して充填することがで
きる。検体が固定化抗体によって捕捉されるのに十分な時間が与えられた後、未結合タン
パク質は洗浄され、管822を介して廃棄物として除去される。
【0130】
次に、タンパク質を抗体ビーズから溶出させて分析することができる。溶出は、ドデシ
ル硫酸ナトリウム(SDS)の溶液を装填し、10分間50Cに加熱することによって達
成される。いったん放出されると、溶出された検体は、チャネル808を通ってチャネル
808と814との交差点に向かって流れる。検体プラグがチャネル808と814の交
差点に到達したとき、リザーバ812の負極とリザーバ816の正極との間で電界をオン
にすると、負に荷電したタンパク質は、発蛍光性タンパク質色素SYPRO(登録商標)
rubyが充填されているチャネル814内のデキストラン線状ポリマー溶液を介して移
動する。
【0131】
蛍光標識された標的タンパク質は、チャネル814内でのCGEの間に、全カラム画像
化を使用して視覚化することができる。同様に述べると、SYPRO(登録商標)rub
y色素が280nmの光で励起され、618nmで放射された光が検出器によって測定さ
れる間、チャネル814の全体を画像化することができる。
【0132】
(実施例6)-質量分析計インタフェースのないマイクロ流体設計の変形
場合によっては、質量分析計インタフェースの有無によって異なるマイクロ流体層の2
つの設計を有することが有利である。いったん検体の特性評価がなされると、確認の特性
評価は質量分析データなしで行うことができる。確認の特性評価を、ほとんど同じ設計の
マイクロ流体で行うことにより、異常が認識されたとき、質量同定のために質量分析計イ
ンタフェースを用いてアッセイをチップに戻すことが簡単になる。これにより、さもなけ
れば、確認データの異常が質量分析データで分析されていることを示すために必要な作業
を省略することができる。
【0133】
一例として、図8は、図4に示すマイクロ流体デバイス400と同様であって、オリフ
ィス424及び皿穴表面422のないマイクロ流体設計を示す。検体は、依然としての入
口904及びチャネル906を介して富化チャネル908へとチップに導入されるが、分
析後、オリフィスでエレクトロスプレーイオン化を実施するのではなく、出口チャネル9
10を通して流れ出る。この設計は通常操作のために実行することができ、その後、質量
同定が必要なときには、図4に示すマイクロ流体デバイス400で同じ富化を行うことが
でき、図8のマイクロ流体デバイス900で見られた検体の変種の同定が確保される。
【0134】
本発明の特定の実施形態の前述の説明は、例示及び説明のために提示されたものである
。それらは、網羅的であることを意図しておらず、又は本発明を開示された厳密な形態に
限定することを意図しておらず、上述の教示を考慮照すれば多くの修正形態及び変形形態
が可能であることは明らかである。様々な実施形態が、特定の特徴及び/又は構成要素の
組み合わせを有するものとして説明してきたが、必要に応じて、任意の実施形態からの任
意の特徴及び/又は構成要素の組み合わせを有する他の実施形態も可能である。実施形態
は、本発明の原理及びその実用的応用を最もよく説明し、それによって当業者が本発明及
び様々な実施形態を、企図される特定の用途に適した様々な変更と共に最もよく活用する
ことを可能にするために、選択され記載されている。本発明の範囲は、添付の特許請求の
範囲及びそれらの等価物によって定義されることが意図される。
【0135】
上述の方法及び/又は概略図が、特定の順序で生じる特定のイベント及び/又はフロー
パターンを示す場合、特定のイベント及び/又はフローパターンの順序を変更することが
できる。加えて、特定のイベントは、可能な場合には並行プロセスで同時に実行すること
もでき、順次実行することもできる。実施形態を詳細に示し説明してきたが、形式及び詳
細において様々な変更を行うことができると理解されよう。
【0136】
本明細書中に引用された全ての特許、特許出願、刊行物及び参考文献は、個々の刊行物
又は特許出願が参照として組み込まれることを具体的かつ個別に指示したことと同程度に
、参照として明示的に組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8