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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】マグネシウム合金材およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 23/02 20060101AFI20230801BHJP
   C22F 1/06 20060101ALI20230801BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20230801BHJP
【FI】
C22C23/02
C22F1/06
C22F1/00 691B
C22F1/00 691C
C22F1/00 681
C22F1/00 682
C22F1/00 683
C22F1/00 694Z
C22F1/00 694A
C22F1/00 684C
C22F1/00 623
C22F1/00 611
C22F1/00 612
C22F1/00 640A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021529823
(86)(22)【出願日】2019-11-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-09
(86)【国際出願番号】 KR2019016489
(87)【国際公開番号】W WO2020122472
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-05-26
(31)【優先権主張番号】10-2018-0161659
(32)【優先日】2018-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515351884
【氏名又は名称】ユニスト(ウルサン ナショナル インスティテュート オブ サイエンス アンド テクノロジー)
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】スン・ソ・パク
(72)【発明者】
【氏名】ソ-ミン・ベク
【審査官】櫛引 明佳
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106868367(CN,A)
【文献】特開平08-053722(JP,A)
【文献】特表2007-538146(JP,A)
【文献】特開平06-200348(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 23/00-23/06
C22F 1/00-1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネシウム合金材の全体100重量%に対して、Al:0.03ないし16.0重量%、Mn:0.015ないし1.0重量%、Sc:0.02ないし0.5重量%、ランタノイド希土類元素(RE):0.03ないし2.0重量%、および残部Mgおよび不可避不純物からなり、
上記の希土類元素(RE)は、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、またはこれらの組み合わせを含むマグネシウム合金材。
【請求項2】
請求項1において、
上記の希土類元素(RE)は、0.1ないし1.0重量%で含むマグネシウム合金材。
【請求項3】
請求項1において、
上記のマグネシウム合金材の全体100重量%に対して、Zn:5.0重量%未満をさらに含むマグネシウム合金材。
【請求項4】
請求項3において、
上記のマグネシウム合金材の全体100重量%に対して、Zn:0.1ないし4.5重量%をさらに含むものである、マグネシウム合金材。
【請求項5】
請求項4において、
上記のマグネシウム合金材の全体100重量%に対して、Ca:2.0重量%以下をさらに含むものである、マグネシウム合金材。
【請求項6】
請求項1において、
上記のマグネシウム合金材の全体100重量%に対して、Y:0.5重量%以下をさらに含むものである、マグネシウム合金材。
【請求項7】
全体100重量%に対して、Al:0.03ないし16.0重量%、Mn:0.015ないし1.0重量%、Sc:0.02ないし0.5重量%、ランタノイド希土類元素(RE):0.03ないし2.0重量%、残部Mgおよび不可避不純物からなる溶湯を準備する段階;および
上記の溶湯を鋳造して鋳造材を製造する段階;を含むが、
上記の希土類元素(RE)は、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、またはこれらの組み合わせを含むマグネシウム合金材の製造方法。
【請求項8】
請求項7において、
上記の溶湯は上記の希土類元素(RE)を0.1ないし1.0重量%で含むマグネシウム合金材の製造方法。
【請求項9】
請求項7において、
上記の溶湯の全体100重量%に対して、Zn:5.0重量%未満をさらに含むマグネシウム合金材の製造方法。
【請求項10】
請求項において、
上記の溶湯の全体100重量%に対して、Ca:2.0重量%以下をさらに含むマグネシウム合金材の製造方法。
【請求項11】
請求項7において、
上記の溶湯の全体100重量%に対して、Y:0.5重量%以下をさらに含むマグネシウム合金材の製造方法。
【請求項12】
請求項7において、
上記の溶湯を鋳造して鋳造材を製造する段階の後、
上記の鋳造材に対して、圧延、押出、引抜、鍛造、またはこれらの組み合わせをさらに含むマグネシウム合金材の製造方法。
【請求項13】
請求項7において、
上記の溶湯を鋳造して鋳造材を製造する段階;は、
600℃ないし800℃の温度範囲で実施するものである、マグネシウム合金材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一具現例はマグネシウム合金材およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マグネシウム合金は、実用構造用金属材料のうち、最も低い比重、優れた比強度および比剛性を有しており、最近軽量化が必要とされている自動車および電子製品における需要が増加している。また、医療用生体分解型インプラントへの可能性が示され、現在、外科骨折用インプラントおよび血管・消火器ステント用マグネシウム素材の研究開発が活発に行われている。
【0003】
従来のマグネシウム合金に関する研究は、マグネシウムの優れた鋳造性をもとに自動車エンジンやギア部品などに適用するための鋳造用マグネシウム合金に重点を置いていたが、最近になって軽量化が求められるところにさらに多様に適用できる押出材または、板材形態の加工用マグネシウム合金に関する研究がより活発に行われている。
【0004】
しかし、マグネシウム合金として開発されているマグネシウム-アルミニウム系、マグネシウム-亜鉛系、マグネシウム-スズ系など、多くのマグネシウム合金は、高温で容易に発火する特性を持っているだけではなく、競争金属であるアルミニウム合金に比べて非常に高い腐食速度を示している。これは構造用および医療用素材としてのマグネシウム合金の商用化の障害となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
マグネシウム合金材およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一具現例では、マグネシウム合金材の全体100重量%に対して、Al:0.03ないし16.0重量%、Mn:0.015ないし1.0重量%、Sc:0.02ないし0.5重量%、ランタノイド希土類元素(RE):0.03ないし2.0重量%、および残部Mgおよび不可避不純物を含み、上記の希土類元素(RE)は、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、またはこれらの組み合わせを含むマグネシウム合金材を提供する。
【0007】
上記の希土類元素(RE)は、0.1ないし1.0重量%で含むことができる。
【0008】
上記のマグネシウム合金材の全体100重量%に対して、Zn:5.0重量%未満をさらに含むことができる。
【0009】
上記のマグネシウム合金材の全体100重量%に対して、Zn:0.1ないし4.5重量%をさらに含むことができる。
【0010】
上記のマグネシウム合金材の全体100重量%に対して、Ca:2.0重量%以下をさらに含むことができる。より具体的に0.5ないし2.0重量%を含むことができる。
【0011】
上記のマグネシウム合金材の全体100重量%に対して、Y:0.5重量%以下をさらに含むことができる。より具体的に0超過および0.3重量%以下を含むことができる。
【0012】
本発明の他の一具現例では、全体100重量%に対して、Al:0.03ないし16.0重量%、Mn:0.015ないし1.0重量%、Sc:0.02ないし0.5重量%、ランタノイド希土類元素(RE):0.03ないし2.0重量%、残部Mgおよび不可避不純物を含む溶湯を準備する段階;および上記の溶湯を鋳造して鋳造材を製造する段階;を含むが、上記の希土類元素(RE)は、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、またはこれらの組み合わせを含むマグネシウム合金材の製造方法を提供する。
【0013】
上記の溶湯は、上記の希土類元素(RE)を0.1ないし1.0重量%で含むことができる。
【0014】
上記の溶湯の全体100重量%に対して、Zn:5.0重量%未満をさらに含むことができる。
【0015】
上記の溶湯の全体100重量%に対して、Ca:2.0重量%以下をさらに含むことができる。より具体的に0.5ないし2.0重量%を含むことができる。
【0016】
上記の溶湯の全体100重量%に対して、Y:0.5重量%以下をさらに含むことができる。
【0017】
上記の溶湯を鋳造して鋳造材を製造する段階の後、上記の鋳造材を圧延、押出、引抜、鍛造、またはこれらの組み合わせをさらに含むことができる。
【0018】
上記の溶湯を鋳造して鋳造材を製造する段階;は、600℃ないし800℃の温度範囲で実施できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一具現例によると、耐食性が優れたマグネシウム合金材を提供することができる。このようなマグネシウム合金は、優れた耐腐食性が求められる産業などに実際的適用が可能な鋳造材、圧延材、押出材、引抜材、鍛造材などとして多様に活用できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、Mg-3Al-0.3Mn-0.1Sc-1Zn合金圧延材の内部に形成された二次相粒子を示す走査型電子顕微鏡の写真である。
図2図2は、Mg-3Al-0.3Mn-0.1Sc-1Zn-0.3Gd合金圧延材の内部に形成された二次相粒子を示す走査型電子顕微鏡の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の利点および特徴、そしてそれらを達成する方法は、添付した図面と共に詳細に後述する実施例を参照すると、明確になる。しかし、本発明は、以下で開示される実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で具現でき、単に本実施例は本発明の開示が完全になるようにし、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者に、発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであり、本発明は請求項の範疇によって定義されるのみである。明細書全体にわたる同一の参照符号は、同一構成要素を示す。
【0022】
したがって、いくつかの実施例において、よく知られている技術は、本発明があいまいに解釈されることを避けるために具体的に説明されない。別の定義がなければ、本明細書で使用されるすべての用語(技術および科学的用語を含む)は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者に共通して理解できる意味で使用されることができる。明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」というのは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。また、単数形は、文章において特に言及しない限り複数形も含む。
【0023】
本発明の一具現例であるマグネシウム合金材は、全体100重量%に対して、Al:0.03ないし16.0重量%、Mn:0.015ないし1.0重量%、Sc:0.02ないし0.5重量%、希土類元素(RE):0.03ないし2.0重量%、残部Mgおよび不可避不純物を含むマグネシウム合金材を提供することができる。
【0024】
具体的に、上記の希土類元素(RE)は、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0025】
上記のマグネシウム合金材の成分および組成を限定した理由は、下記の通りである。
【0026】
まず、アルミニウムは固溶強化および析出強化を通じて、合金の強度増加に寄与し、腐食時に酸化皮膜の安定性を向上させ、耐腐食性を向上させる役割を果たす。そのため、アルミニウムの含量が少なすぎると、強度増加効果および耐腐食性向上効果が期待できなくなる可能性がある。一方、アルミニウムの含量が多すぎると、アルミニウムが含まれた脆性粒子の分率が過度で合金の延性が脆弱化する問題が生じる可能性がある。
【0027】
マンガンは、固溶強化などで合金の強度増加に寄与する。それだけではなく、合金内の不純物を吸収する化合物粒子を形成し、マグネシウム合金の耐腐食性を向上させる役割を果たす。
【0028】
そのため、マンガンの含量が少なすぎると強度増加および耐腐食性向上効果が薄くなる可能性がある。スカンジウムを含むマグネシウム合金材においても、マンガンの上記の耐食性向上効果がある可能性がある。但し、スカンジウムを含むマグネシウム合金材でマンガンを添加しすぎると、むしろマンガンを含む粒子の分率が過度でマイクロガルバニックの腐食がかえって促進され、耐食性が低下する可能性がある。そのため、マンガンの上限値を本発明の一具現例のように限定することができる。
【0029】
したがって、上記マグネシウム合金材の全体100重量%に対して、0.015ないし1.0重量%のMnを含むことができる。具体的に、0.015ないし0.6重量%であり得る。
【0030】
さらに具体的に、マンガンの含量が1.0重量%を超過すると、前述のように腐食速度が上昇し、希土類元素の添加による耐食性向上効果があまり期待できない可能性がある。
【0031】
スカンジウムは、二次相粒子の電気化学的特性変化に関与し、マグネシウム合金材の耐食性を向上させる役割を果たす。
【0032】
そのため、スカンジウムの含量が少なすぎると、スカンジウムが含まれた二次相粒子の分率が少なく、耐腐食性向上に対するスカンジウムの添加効果が期待できない可能性がある。一方、スカンジウムの含量が多すぎると、スカンジウムが含まれた粒子の分率が過度でマイクロガルバニックの腐食が促進される問題および合金材の価格上昇問題が生じる可能性がある。
【0033】
希土類元素は、二次相粒子の電気化学的特性変化に関与し、耐食性を向上させられる。具体的に本発明の一具現例における上記の希土類元素(RE)は、ランタノイド希土類元素として、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、またはこれらの組み合わせを含むことができる。希土類元素の中でも上記の元素を添加すると、優れた耐食性向上効果が期待できる。
【0034】
より具体的に本発明の一具現例では、スカンジウムとスカンジウムを除いた上記のランタノイド希土類元素を前述の含量範囲に制御し、共に添加することでさらに耐食性向上効果が期待できる。
【0035】
具体的に希土類元素の含量が少なすぎる場合は、耐食性向上効果があまり期待できない可能性があり、含量が多すぎる場合は、合金の製造費用が過度に増加する可能性がある。
【0036】
そのため、希土類元素の重量範囲は0.03ないし2.0重量%であり得る。具体的には、0.1ないし2.0重量%であり得る。より具体的には、0.1ないし0.9重量%であり得る。
【0037】
亜鉛は、アルミニウムと同様に固溶強化および析出強化を通じて、合金の強度増加に寄与する役割を果たす。
【0038】
そのため、亜鉛の含量が少なすぎると、強度増加効果が期待できず、構造用素材としての使用は困難と思われる。一方、亜鉛の含量が多すぎると、亜鉛が含まれた粒子の分率が過度で、マイクロガルバニックの腐食を促進される可能性がある。よって、亜鉛の上限値を本発明の一具現例のように限定することができる。
【0039】
したがって、上記マグネシウム合金材の全体100重量%に対して、Znは5重量%未満で含むことができる。より具体的には、4.5重量%以下であり得る。さらにより具体的には、0.1ないし4.5重量%であり得る。
【0040】
カルシウムは、合金の耐発火温度を上昇させる役割を果たす。
【0041】
そのため、カルシウムの含量が少なすぎると合金の耐発火温度が低く、発火抑制のための高価な保護ガスが必要となる可能性があり、それによって合金の製造費用が上昇する可能性がある。一方、カルシウムの含量が多すぎると、カルシウムが含まれた粒子の分率が過度で合金の塑性加工時に粒子周囲における応力集中により、クラックが発生する可能性がある。また、カルシウムが含まれた粒子の分率は過度でマイクロガルバニックの腐食が促進される可能性がある。よって、カルシウムの上限値を本発明の一具現例のように限定することができる。
【0042】
したがって、上記のマグネシウム合金材全体100重量%に対して、Caは2.0重量%以下で含むことができる。より具体的には、0.5ないし2.0重量%範囲であり得る。
【0043】
前述のように、成分の組成範囲を限定することによって、耐食性が優れたマグネシウム合金材を提供することができる。
【0044】
イットリウムは、カルシウムと同様にマグネシウム合金の耐発火温度を上昇させる役割を果たす。
【0045】
そのため、イットリウムの含量が少なすぎると、発火温度が低く耐発火性向上効果があまり期待できない可能性がある。一方、イットリウムの含量が多すぎると、イットリウムが含まれた粒子の分率が過度でマイクロガルバニックの腐食が促進される問題および合金材の価格上昇問題をもたらす可能性がある。
【0046】
本発明の他の一具現例であるマグネシウム合金材の製造方法は、マグネシウム合金材全体100重量%に対して、Al:0.03ないし16.0重量%、Mn:0.015ないし1.0重量%、Sc:0.02ないし0.5重量%、希土類元素(RE):0.03ないし2.0重量%、残部Mgおよび不可避不純物を含む溶湯を準備する段階;および上記溶湯を鋳造して鋳造材を製造する段階;を含むものであるマグネシウム合金材の製造方法を提供することができる。
【0047】
この時、上記の希土類元素(RE)は、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0048】
上記の溶湯は、全体100重量%に対して、Zn:5.0重量%未満をさらに含むことができる。具体的に、Zn:0.1ないし4.5重量%をさらに含むことができる。
【0049】
上記の溶湯は、全体100重量%に対して、Ca:2.0重量%以下をさらに含むことができる。具体的に、Ca:0.5ないし2.0重量%をさらに含むことができる。
【0050】
上記の溶湯は、全体100重量%に対して、Y:0.5重量%以下をさらに含むことができる。具体的に、Y:0.3重量%以下をさらに含むことができる。
【0051】
上記の溶湯の成分および組成を限定した理由は、前述のマグネシウム合金材の成分および組成を限定した理由と同じであるため省略する。
【0052】
上記の溶湯を鋳造して鋳造材を製造する段階;は、600℃ないし800℃の温度範囲で実施することができる。
【0053】
より具体的に、砂型鋳物、重力鋳造、加圧鋳造、低圧鋳造、ロストワックス鋳造、薄板鋳造、ストリップキャスティング、単ロール鋳造、連続鋳造、電磁鋳造、電磁連続鋳造、ダイカスト、精密鋳造、凍結鋳造、噴霧鋳造、遠心鋳物、半凝固鋳造、急冷鋳造、側方押出鋳造、シングルベルト鋳造、ツインベルト鋳造、シェルモールド鋳造、無鋳型鋳造、3Dプリンティング、またはこれらの組み合わせで鋳造材を製造できる。但し、これに限られるものではない。
【0054】
上記の溶湯を鋳造して鋳造材を製造する段階の後、上記の鋳造材に対する圧延、押出、引抜、鍛造、またはこれらの組み合わせで構成された加工工程がさらに含められる。
【0055】
これは、上記で製造した鋳造材は、後で加工工程をさらに実施することができることを意味する。これで、上記の鋳造材は圧延材、押出材、引抜材、鍛造材、または製品の形状で提供できる。この時、圧延、押出、引抜、鍛造、またはこれらの組み合わせを含む加工工程を具体的に制限するものではなく、鋳造材を利用して、必要な場合、適切な熱処理を行った後、加工する方法であればすべて可能である。
【0056】
以下の実施例を通じて詳細を説明する。但し、下記の実施例は本発明を例示するだけであり、本発明の概要は下記の実施例によって限られるものではない。
【0057】
[実施例]
本願の実施例と比較例は、下記の表1ないし表6に開示された成分および組成を含むマグネシウム鋳造材および表7に開示された成分および組成を含むマグネシウム圧延材を用意した。
【0058】
より具体的に、下記の表1ないし表6に開示された成分および組成を含み、残部はMgと不可避不純物を含むマグネシウム溶湯を鋳造して鋳造材を製造した。
【0059】
また、下記の表7に開示された成分および組成を含み、残部はMgと不可避不純物を含むマグネシウム鋳造材を利用して、圧延材を製造した。
【0060】
したがって、実施例と比較例の合金成分および組成による腐食速度を測定し、下記の表1ないし表7に示した。
【0061】
<鋳造材の製造方法>
純Mg(99.9%)、純Al(99.9%)、純Mn(99.9%)、純Sc(99.9%)、純RE(99.9%)、純Zn(99.9%)、純Ca(99.9%)、純Y(99.9%)を使用した。これらを下記の表1ないし表7の組成を持つようにし、Mg合金を高周波誘導溶解炉を利用して、黒鉛るつぼ(graphite crucible)内で溶解した。
【0062】
この時、溶湯の酸化を防止するため、SFとCO混合ガスを溶湯の上部に塗布して大気と接触することを遮断した。溶解後、溶湯を750℃で10分間維持したあと、合金成分によって650~750℃の範囲内となる溶湯温度で200℃に予熱したスチールモールドに上記溶湯を注ぎ、高さ80mm、幅40mm、厚さ12mmの鋳造材を製造した。
【0063】
<圧延材の製造方法>
製造した鋳造材に対して、420℃で1時間均質化熱処理を施し、その後、厚さ8.5mmに表面加工した。圧延の過程で試片の温度は、各圧延パスにおいて350℃に維持され、圧延ロールの温度が200℃に設定された等速圧延機を利用して、パスあたり20%の圧下率で、最終試片の厚さが1mmに到達するまで、圧延工程を行った。製造された圧延材に対して、345℃で1時間アーニーリング処理を行った。
【0064】
<腐食速度の測定方法>
実施例と比較例の海水による腐食特性を下記の表に評価した。
【0065】
実施例と比較例によって鋳造されたマグネシウム合金材の表面をP1200研磨材段階まで研磨したあと、海水のNaCl濃度と同じ3.5重量%NaCl溶液に上記のマグネシウム合金材を浸漬した。この時、浸漬試験は25℃(常温)で行った。
【0066】
より具体的に、上記のマグネシウム合金材を常温の3.5重量%NaCl溶液で72時間浸漬し、200g/L濃度のクロム酸(CrO)溶液を利用して、浸漬時に生成された表面酸化層を除去した。その結果、浸漬前後の重量の変化を測定し、下記の数式1を通じて、マグネシウム合金材の腐食速度(単位:mmpy)を測定した。
【0067】
[数式1]
腐食速度mm/year(mmpy) = 8760(h/year) x 10(mm/cm) x重量減少量(g)/ (試片の密度(g/cm) x 浸漬時間(h) x 露出面積(cm))
【0068】
【表1A】
【0069】
【表1B】
【0070】
【表2】
【0071】
【表3】
【0072】
【表4】
【0073】
【表5】
【0074】
【表6】
【0075】
上記の表から分かるように、アルミニウム、マンガン、およびスカンジウムの組成範囲は実施例と同一であるが、希土類元素を添加しない場合、希土類元素を添加する場合と比べて腐食速度の速いことが確認できる。
【0076】
但し、希土類元素を添加する場合であっても、0.03重量%未満のREが含まれる比較例の場合は、腐食速度向上に大きな効果はないことが確認できる。
【0077】
それだけではなく、マンガンとスカンジウムを含まない場合も、腐食速度が実施例に比べて速いことが確認できる。
【0078】
上記のそれぞれのCe、Pr、Nd、Gd、La、Sm、Ho、Er、Yb、またはこれらの組み合わせの希土類元素の種類によって、耐食性がどれほど向上するかを評価することができた。
【0079】
上記の表では、Znをさらに含む合金材に関する結果も確認できる。機械的特性改善のためのZnを含む合金でもScおよびRE元素の使用によって、耐食性が向上することを確認した。
【0080】
上記の表では、Caをさらに含む合金材に関する結果も確認できる。耐発火特性向上のためのCaを含む合金でもScおよびRE元素の使用によって、向上された耐食性が維持され、むしろ耐食性が小幅向上されることを確認した。しかし、カルシウムの含量が過度な場合、カルシウムを含む粒子の分率が過度で、塑性加工時にクラックが発生するため、Ca添加量を2.0重量%以下に制限した。
【0081】
上記の表では、Yをさらに含む合金材に関する結果も確認できる。耐発火特性向上のためのYを含む合金でもScおよびRE元素の使用によって、向上された耐食性が維持され、むしろ耐食性が小幅向上されることを確認した。しかし、イットリウムの含量が過度な場合、イットリウムを含む粒子の分率が過度で、微小ガルバニックの腐食が促進され、合金の価格上昇問題をもたらす可能性があり、Y添加量を0.3重量%以下に制限した。
【0082】
下記の表7は、実施例および比較例の成分で製造されたマグネシウム合金の圧延材の評価結果である。
【0083】
【表7】
【0084】
本発明の一実施例によるAl、Mn、およびScを含むと同時に、希土類の一つであるCeを含む試片の場合、非常に優れた腐食速度を示すことを確認した。
【0085】
また、SEM写真を通じて、本発明の合金の特性を確認した。
【0086】
図1は、Mg-3Al-0.3Mn-0.1Sc-1Zn合金圧延材の内部に形成された二次相粒子を示す走査型電子顕微鏡の写真である。このような微細組織分析を通じて、上記の圧延材の内部に不純物Feを含むAl-Mn-Fe系粒子およびAl-Mn-Sc粒子が形成されていることを確認できる。
【0087】
図2は、Mg-3Al-0.3Mn-0.1Sc-1Zn-0.3Gd合金圧延材の内部に形成された二次相粒子を示す走査型電子顕微鏡の写真である。このような微細組織分析を通じて、Mg-3Al-0.3Mn-0.1Sc-1Zn合金にGdのような希土類元素が添加されると、不純物Feを含む粒子が中心に位置し、Al-Mn-RE粒子が外部に位置するコアシェル(core-shell)形態の二重粒子が形成されることが確認できる。一般的にFeを含む粒子は電気化学的電位が高く、マグネシウム合金における微小ガルバニックの腐食を活性化すると知られているが、上記のように二重粒子のコアに存在する粒子では、腐食環境で水素還元反応が発生できないため、この粒子は微小ガルバニック腐食の活性化ができなくなり、これによって、合金の耐食性が向上することができる。
【0088】
以上、添付した図面を参照して本発明の実施例を説明したが、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施できることが理解できると思われる。
【0089】
そのため、以上で記述した実施例はあらゆる面における例示的なものであり、限定的ではないと理解しなければならない。本発明の範囲は、上記の詳細説明よりは後述の特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味および範囲、そしてその均等概念から導出される、あらゆる変更または変更された形態は、本発明の範囲に含まれると解釈されなければならない。
図1
図2