(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】使用準備が整った注射用製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/546 20060101AFI20230801BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20230801BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20230801BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20230801BHJP
A61K 31/545 20060101ALN20230801BHJP
【FI】
A61K31/546
A61K9/10
A61K47/14
A61P31/04
A61P31/04 171
A61K31/545
(21)【出願番号】P 2021552863
(86)(22)【出願日】2020-03-05
(86)【国際出願番号】 US2020021060
(87)【国際公開番号】W WO2020181024
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2021-12-09
(32)【優先日】2019-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515230154
【氏名又は名称】ゾエティス・サービシーズ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100106080
【氏名又は名称】山口 晶子
(72)【発明者】
【氏名】ジョシ,ビジャヤ・バーティ
(72)【発明者】
【氏名】フォスター,トッド・ピー
(72)【発明者】
【氏名】ルオ,ライビン
【審査官】愛清 哲
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第1569000(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第1517090(CN,A)
【文献】特開2018-090581(JP,A)
【文献】特表2006-520778(JP,A)
【文献】J. Exot. Pet Med.,2010年,Vol.19 No.4,pp.317-322
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61P 31/00-31/22
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セフォベシンまたはセフォベシンナトリウムであるセファロスポリンを含む使用準備が整った注射用懸濁組成物であって、前記組成物は、前記組成物の総重量の58w/w%~68w/w%の量のジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコールである生体適合性油及び前記組成物の総重量の
18w/w%~22w/w%の量の安息香酸ベンジルである非水性溶媒を含む、使用準備が整った注射用懸濁組成物。
【請求項2】
前記安息香酸ベンジルは、前記組成物の総重量の
20w/w%の量であり、前記ジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコールは、前記組成物の総重量の61w/w%~64w/w%の量である、請求項1に記載の使用準備が整った組成物。
【請求項3】
前記セファロスポリンはセフォベシンナトリウムである、請求項2に記載の使用準備が整った組成物。
【請求項4】
前記組成物中のセフォベシンナトリウムのセフォベシンは120mg/mL~180mg/mL
の量であり、前記組成物は皮下注射によって投与される、請求項3に記載の使用準備が整った組成物。
【請求項5】
使用準備が整った注射用懸濁組成物であって、セフォベシンナトリウム、ここで、前記
組成物中のセフォベシンナトリウムのセフォベシンは、120mg/mL~180mg/mLの量である;前記組成物の総重量の60w/w%~65w/w%の量のジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコールである生体適合性油;及び前記組成物の総重量の
18w/w%~22w/w%の量の安息香酸ベンジルである非水性溶媒を含む使用準備が整った注射用懸濁組成物。
【請求項6】
前記組成物のセフォベシンの前記濃度は160mg/mLである、請求項5に記載の使用準備が整った組成物。
【請求項7】
前記組成物は皮下注射によって投与される、請求項6に記載の使用準備が整った組成物。
【請求項8】
動物の細菌感染症の治療用である、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用準備が整った組成物。
【請求項9】
前記動物はコンパニオンアニマルである、請求項8に記載の使用準備が整った組成物。
【請求項10】
前記コンパニオンアニマルはイヌ科またはネコ科である、請求項9に記載の使用準備が整った組成物。
【請求項11】
請求項1~7のいずれか一項に記載の使用準備が整った注射用組成物の有効量の
セフォベシンまたはセフォベシンナトリウムであるセファロスポリンを投与することによって、細菌感染症の治療を必要とするヒト以外の動物の細菌感染症を治療する方法。
【請求項12】
前記動物はコンパニオンアニマルである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記コンパニオンアニマルはイヌ科またはネコ科である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
動物の細菌感染症を治療するための医薬を調製するための
使用準備が整った注射用懸濁組成物の使用であって、前記注射用懸濁組成物は、150mg/mL~180mg/mLの量の有効量のセフォベシン、前記組成物の総重量の60w/w%~65w/w%の量のジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコール及び前記組成物の総重量の18w/w%~22w/w%の量の安息香酸ベンジル
を含む、使用。
【請求項15】
セファロスポリン、生体適合性油、及び非水性溶媒を含む使用準備が整った注射用懸濁組成物であって、前記非水性溶媒は組成物の総重量の約20w/w%の量の安息香酸ベンジルであり、前記生体適合性油は組成物の総重量の約61w/w%~約64w/w%の量のジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコールであり、前記セファロスポリンはセフォベシンナトリウムであり、
セフォベシンナトリウムのセフォベシンは約160mg/mLの量である、使用準備が整った注射用懸濁組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セファロスポリンとして知られる一群の薬を含む新規の使用準備が整った獣医用注射用組成物を提供する。好ましいセファロスポリン薬は、第3世代セファロスポリン、セフォベシンナトリウム(コンベニア(登録商標))である。より詳細には、本発明は、改善された特徴、例えば、再懸濁性、注入可能性、及び製品の使いやすさを有する懸濁液である新規の使用準備が整ったセフォベシンナトリウム注射用組成物を提供する。
【背景技術】
【0002】
注射用懸濁液は液体相に分散される固体相からなる不均一な系である。注射用懸濁液は等張性、滅菌、パイロジェンフリーでなければならず、意図した貯蔵寿命の間、適切な物理的、化学的安定性を保持していなければならない。注射用懸濁液は皮下、筋肉内投与経路に限定される。注射用懸濁液の特定の長所として、例えば、通常の水混和性溶媒に不溶性の薬の治療的使用、安定性、デポ剤、及び初回肝臓通過効果の消失が挙げられる。注射用懸濁液の短所として、例えば、製剤化及び製造、注入可能性、用量の均一性、物理的安定性、並びに再懸濁性が困難であることが挙げられる。注入可能性及び再懸濁性は、活性剤の粘度及び粒子特徴に依存する。Higuchiら、Remington’s Pharmaceutical Sciences、17th Edition.1985、p.313によると、良好な懸濁液を作製することの主要な課題は物理的安定性を獲得することであり、懸濁液に関連する3つの主要な問題領域は、(1)ビヒクルに粒子が十分に分散すること、(2)分散した粒子が沈降すること、及び(3)沈殿物中のこれらの粒子を固化して再懸濁を防ぐことであるという記述がある。技術分野では、制御された粒子間相互作用が物理的に安定した懸濁液を製造する方法であると一般的に認識されている。粒子の相互作用は、懸濁液を振盪すると、粒子がいくらか分離して投与のために均一な懸濁液を形成することができるように、粒子の緩やかな凝集にならなければいけない。粒子の吸着は粒子の凝集が生じるように強くなくてはならないが、粒子が絶対に分離しないほど粒子の凝集が強すぎてもいけない。ストークスの式によると、粒子の沈降速度は、粒径及び粒子密度の減少、並びに培養液(希釈剤)の密度及び粘度の増加によって低下する。適切な粒径/粒子密度及び培養液の密度及び粘度によって、粒子はバイアル又は保存容器の底に押し詰められない、すなわち固化しないように、高い沈降容積で沈降することができる。時間が経過すると、懸濁した粒子は徐々に沈降し、固化し、使用前に再分散させるのが困難になることがある。さらに、製品の輸送が粒子及び/又は沈降したケーキの振動性のパッキングを引き起こし、使用前に粒子を再懸濁させることより一層困難にする。薬の再懸濁は、穏やかな振盪又は攪拌(すなわちせん断力)で容易に生じるはずであり、均一な注射用懸濁液になる。この短所の観点から、注射用懸濁液はその安定性、製造及び使用について作製するのが最も困難な剤形の1つである。
【0003】
ある研究では、Jainら、Intl.J.of Pharmaceutics、514、(2016)308-313は、油性賦形剤中のペネタメート(penethamate)の凝集及び懸濁液の固化がかなり変化しやすく、ガラス対プラスチックバイアル、凝集剤の濃度依存的量、油、貯蔵時間、及び輸送中の振動に依存することを示した。初期の研究室における注入可能性及び安定性試験は、オレイン酸エチルがペネタメートの可溶性の結果として最良の溶媒であることが分かった。凝集剤として0.15%のTween80の添加は良好な再懸濁性を示したが、Tween80を有しない製剤化された懸濁液はケーキを分散させるのに強い振盪とボルテックスを必要とした。驚くべきことに、0.5%のTweenの添加は硬いケーキを形成した。0.5%のポリエチレングリコール-12-オレイン酸の添加は固化を防ぎ、0.5%のTween80に加えて親水性ポリマー、PVP K30の添加はこの固化問題を解決しなかったが、0.5%のSpanは解決した。PEG-12-オレイン酸を含む懸濁液に、増加した濃度のリン脂質(リポイドS100)を添加すると、より少ない分散可能な沈降物を導いた。0.15%のTween及びオレイン酸エチル製剤をガラス容器に調製し、臨床現場に輸送した。研究者が驚いたこととして、報告された安定的/再分散可能な製剤は、陸路でたったの約2時間、空路で約1時間で試験現場に輸送された後に、「硬い岩」のようなケーキを形成した。
【0004】
油の種類もペネタメートの固化挙動に影響した。例えば、2種類の中鎖油、ミグリオール840(ジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコール)及びミグリオール812(カプリル酸/トリカプリン酸トリグリセリド)に作製された懸濁液は、振盪後に再懸濁するのが困難であったが、長鎖飽和及び不飽和脂肪酸(66%のリノール酸、21%のオレイン酸、6.4%のパルミチン酸、4.0%のアラキン酸、1.3%のステアリン酸、及び0.8%ベヘン酸)の混合物に調製された懸濁液は容易に分散した。後者の製剤にリン脂質を添加しても振盪時に固化した。本質的に、懸濁製剤の再分散性はほとんど予測できない。Bauerら(GB1527638)は、より少ないニクロサミド結晶化及び粒径の増加を改善された血漿中濃度に提供したと言われる駆虫薬ニクロサミドの油性懸濁液を記載した。記載の油は植物油であり、表面活性剤(乳化剤及び湿潤剤、特にレシチン又は吸収のためのポリオキシエチル化ソルビタンモノラウレート)を有する中鎖及び長鎖飽和油であった。例として、液体パラフィン又はゴマ油及びレシチン又はポリエチル化ソルビタンモノラウレートを有する微粒子化したニクロサミドが挙げられた。ニクロサミド懸濁液は、ニクロサミドを液体パラフィン又はゴマ油の一部と混合し、ガラスビーズを加え、ボールミルで高速で攪拌し、粒子の結晶化及び凝集作用を防ぐ手段として、粒子の少なくとも50%を1μ未満に減少させることによって調製した。しかしながら、ガラスビーズは、組成物を使用する前に除去しなければならなかった。
【0005】
粒径及び粒子の表面積の他に、懸濁製剤は、広く変化し、沈降、固化、再分散性、及び注入可能性は、溶媒の水和性、凝集、凝集剤(複数可)、正味荷電、可溶性並びに活性剤の可溶性及び安定性、溶媒の特徴、油の特徴、及びその他の影響を受けることが示された。使用準備が整った注射用懸濁液における有効成分(セフォベシン、ナトリウム塩)の全体的な安定性、注入可能性、及び再懸濁性を保証するために、生体適合性油中の安息香酸ベンジル、好ましくはジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコールの使用は、高粘度及び低せん断力での粒子の低い沈降をもたらし、高せん断力での再懸濁の後、改善された注入可能性についてより低い粘度を有することが分かった。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、生体適合性油及び低せん断力でのより高い粘度を有する非水性溶媒中のセファロスポリンを含む使用準備が整った注射用懸濁組成物を記載し、それによって懸濁されたセファロスポリンの粒子の沈降及び固化を最小にし、高せん断力でのより低い粘度を有して懸濁性及び注入可能性を最大にする。
【0007】
本発明の一態様において、使用準備が整った注射用組成物はセファロスポリン、生体適合性油、及び非水性溶媒を含み、組成物は懸濁液である。別の態様において、使用準備が整った注射用懸濁組成物はセファロスポリン、生体適合性油、及び非水性溶媒を含み、非水性溶媒は安息香酸ベンジルである。別の態様において、使用準備が整った注射用懸濁組成物はセファロスポリン、生体適合性油、及び非水性溶媒を含み、非水性溶媒は安息香酸ベンジルであり、生体適合性油はジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコールである。別の態様において、使用準備が整った注射用懸濁組成物はセファロスポリン、生体適合性油、及び非水性溶媒を含み、セファロスポリンはセフォベシンであり、非水性溶媒は安息香酸ベンジルであり、生体適合性油はジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコールである。別の態様において、使用準備が整った注射用懸濁組成物はセファロスポリン、生体適合性油、及び非水性溶媒を含み、セファロスポリンはセフォベシンナトリウムであり、非水性溶媒は安息香酸ベンジルであり、生体適合性油はジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコールである。別の態様において、使用準備が整った注射用懸濁組成物はセファロスポリン、生体適合性油、及び非水性溶媒を含み、セファロスポリンはセフォベシンナトリウムであり、非水性溶媒は安息香酸ベンジルであり、生体適合性油はジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコールである。別の態様において、使用準備が整った注射用懸濁組成物は皮下注射によって投与される滅菌組成物である。
【0008】
本発明の別の態様において、使用準備が整った注射用懸濁組成物はセファロスポリン、生体適合性油、及び非水性溶媒を含み、非水性溶媒は組成物の総重量の約12w/w%~約25w/w%の量の安息香酸ベンジルである。別の態様において、使用準備が整った注射用懸濁組成物はセファロスポリン、生体適合性油、及び非水性溶媒を含み、非水性溶媒は組成物の総重量の約12w/w%~約25w/w%の量の安息香酸ベンジルであり、生体適合性油は組成物の総重量の約58w/w%~約68w/w%の量のジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコールである。別の態様において、使用準備が整った注射用懸濁組成物はセファロスポリン、生体適合性油、及び非水性溶媒を含み、非水性溶媒は組成物の総重量の約12w/w%~約25w/w%の量の安息香酸ベンジルであり、生体適合性油は組成物の総重量の約58w/w%~約68w/w%の量のジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコールであり、セファロスポリンは約120mg/mL~約180mg/mLの量のセフォベシンである。別の態様において、使用準備が整った注射用懸濁組成物はセファロスポリン、生体適合性油、及び非水性溶媒を含み、非水性溶媒は組成物の総重量の約12w/w%~約25w/w%の量の安息香酸ベンジルであり、生体適合性油は組成物の総重量の約58w/w%~約68w/w%の量のジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコールであり、セファロスポリンは約120mg/mL~約180mg/mLの量のセフォベシンである。別の態様において、使用準備が整った注射用懸濁組成物はセファロスポリン、生体適合性油、及び非水性溶媒を含み、非水性溶媒は組成物の総重量の約12w/w%~約25w/w%の量の安息香酸ベンジルであり、生体適合性油は組成物の総重量の約58w/w%~約68w/w%の量のジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコールであり、セファロスポリンはセフォベシンナトリウムであり、セフォベシンは約120mg/mL~約180mg/mLの量である。別の態様において、使用準備が整った注射用懸濁組成物はセファロスポリン、生体適合性油、及び非水性溶媒を含み、非水性溶媒は組成物の総重量の約12w/w%~約25w/w%の量の安息香酸ベンジルであり、生体適合性油は組成物の総重量の約58w/w%~約68w/w%の量のジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコールであり、セファロスポリンはセフォベシンナトリウムであり、セフォベシンは約120mg/mL~約180mg/mLの量のセフォベシンである。別の態様において、使用準備が整った注射用懸濁組成物は皮下注射によって投与される滅菌組成物である。
【0009】
本発明の別の態様において、使用準備が整った注射用組成物はセファロスポリン、生体適合性油、及び非水性溶媒を含み、非水性溶媒は組成物の総重量の約18w/w%~約22w/w%の量の安息香酸ベンジルであり、組成物は注射用懸濁液である。別の態様において、使用準備が整った注射用懸濁組成物はセファロスポリン、生体適合性油、及び非水性溶媒を含み、非水性溶媒は組成物の総重量の約18w/w%~約22w/w%の量の安息香酸ベンジルであり、生体適合性油は組成物の総重量の約60w/w%~約65w/w%の量のジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコールである。別の態様において、使用準備が整った注射用懸濁組成物はセファロスポリン、生体適合性油、及び非水性溶媒を含み、非水性溶媒は組成物の総重量の約18w/w%~約22w/w%の量の安息香酸ベンジルであり、生体適合性油は組成物の総重量の約60w/w%~約65w/w%の量のジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコールであり、セファロスポリンは約120mg/mL~約180mg/mLの量のセフォベシンである。別の態様において、使用準備が整った注射用懸濁組成物はセファロスポリン、生体適合性油、及び非水性溶媒を含み、非水性溶媒は組成物の総重量の約18w/w%~約22w/w%の量の安息香酸ベンジルであり、生体適合性油は組成物の総重量の約60w/w%~約65w/w%の量のジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコールであり、セファロスポリンは約120mg/mL~約180mg/mLの量のセフォベシンである。別の態様において、使用準備が整った注射用懸濁組成物はセファロスポリン、生体適合性油、及び非水性溶媒を含み、非水性溶媒は組成物の総重量の約18w/w%~約22w/w%の量の安息香酸ベンジルであり、生体適合性油は組成物の総重量の約60w/w%~約65w/w%の量のジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコールであり、セファロスポリンはセフォベシンナトリウムであり、セフォベシンは約120mg/mL~約180mg/mLの量のセフォベシンである。別の態様において、使用準備が整った注射用懸濁組成物はセファロスポリン、生体適合性油、及び非水性溶媒を含み、非水性溶媒は組成物の総重量の約18w/w%~約22w/w%の量の安息香酸ベンジルであり、生体適合性油は組成物の総重量の約60w/w%~約65w/w%の量のジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコールであり、セファロスポリンはセフォベシンナトリウムであり、セフォベシンは約120mg/mL~約180mg/mLの量のセフォベシンである。別の態様において、使用準備が整った注射用懸濁組成物はセファロスポリン、生体適合性油、及び非水性溶媒を含み、非水性溶媒は組成物の総重量の約18w/w%~約22w/w%の量の安息香酸ベンジルであり、生体適合性油は組成物の総重量の約60w/w%~約65w/w%の量のジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコールであり、セファロスポリンはセフォベシンナトリウムであり、セフォベシンは約160mg/mLの量である。別の態様において、使用準備が整った注射用懸濁組成物はセファロスポリン、生体適合性油、及び非水性溶媒を含み、非水性溶媒は組成物の総重量の約18w/w%~約22w/w%の量の安息香酸ベンジルであり、生体適合性油は組成物の総重量の約60w/w%~約65w/w%の量のジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコールであり、セファロスポリンはセフォベシンナトリウムであり、セフォベシンは約160mg/mLの量である。別の態様において、使用準備が整った注射用懸濁組成物は皮下注射によって投与される滅菌組成物である。
【0010】
本発明の別の態様において、使用準備が整った注射用懸濁組成物はセファロスポリン、生体適合性油、及び非水性溶媒を含み、非水性溶媒は組成物の総重量の約20w/w%の量の安息香酸ベンジルであり、生体適合性油は組成物の総重量の約61w/w%~約64w/w%の量のジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコールであり、セファロスポリンはセフォベシンナトリウムであり、セフォベシンは約160mg/mLの量である。本発明の別の態様において、使用準備が整った注射用懸濁組成物はセファロスポリン、生体適合性油、及び非水性溶媒を含み、非水性溶媒は組成物の総重量の約20w/w%の量の安息香酸ベンジルであり、生体適合性油は組成物の総重量の約61w/w%~約64w/w%の量のジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコールであり、セファロスポリンはセフォベシンナトリウムであり、セフォベシンは約160mg/mLの量である。別の態様において、使用準備が整った注射用懸濁組成物はセファロスポリン、生体適合性油、及び非水性溶媒を含み、非水性溶媒は組成物の総重量の約20w/w%の量の安息香酸ベンジルであり、生体適合性油は組成物の総重量の約62w/w%~約63w/w%の量のジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコールであり、セファロスポリンはセフォベシンナトリウムであり、セフォベシンは約160mg/mLの量である。別の態様において、使用準備が整った注射用懸濁組成物はセファロスポリン、生体適合性油、及び非水性溶媒を含み、非水性溶媒は組成物の総重量の約20w/w%の量の安息香酸ベンジルであり、生体適合性油は組成物の総重量の約62w/w%~約63w/w%の量のジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコールであり、セファロスポリンはセフォベシンナトリウムであり、セフォベシンは約160mg/mLの量である。別の態様において、使用準備が整った注射用懸濁組成物は皮下注射によって投与される滅菌組成物である。
【0011】
本発明の別の態様において、生体適合性油及び非水性溶媒を含む皮下注射による注射用懸濁組成物の有効量のセファロスポリンを投与することによって、細菌感染症の治療を必要とする動物の細菌感染症を治療する方法である。別の態様において、生体適合性油及び非水性溶媒を含む皮下注射による注射用懸濁組成物の有効量のセファロスポリンを投与することによって、細菌感染症の治療を必要とする動物の細菌感染症を治療する方法であり、セファロスポリンはセフォベシンであり、生体適合性油はジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコールであり、非水性溶媒は安息香酸ベンジルである。別の態様において、生体適合性油及び非水性溶媒を含む皮下注射による注射用懸濁組成物の有効量のセファロスポリンを投与することによって、細菌感染症の治療を必要とする動物の細菌感染症を治療する方法であり、セファロスポリンは約150~180mg/mLの量のセフォベシンであり、生体適合性油は組成物の総重量の約58~68w/w%の量のジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコールであり、非水性溶媒は組成物の総重量の約12w/w%~約25w/w%の量の安息香酸ベンジルである。別の態様において、生体適合性油及び非水性溶媒を含む皮下注射による注射用懸濁組成物の有効量のセファロスポリンを投与することによって、細菌感染症の治療を必要とする動物の細菌感染症を治療する方法であり、セファロスポリンは約150mg/mL~約180mg/mLの量のセフォベシンであり、生体適合性油は組成物の総重量の約60w/w%~約65w/w%の量のジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコールであり、非水性溶媒は組成物の総重量の約18w/w%~約22w/w%の量の安息香酸ベンジルである。別の態様において、生体適合性油及び非水性溶媒を含む皮下注射による注射用懸濁組成物の有効量のセファロスポリンを投与することによって、細菌感染症の治療を必要とする動物の細菌感染症を治療する方法であり、セファロスポリンは約160mg/mLの量のセフォベシンであり、生体適合性油は組成物の総重量の約62w/w%~約63w/w%の量のジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコールであり、非水性溶媒は組成物の総重量の約20w/w%の量の安息香酸ベンジルであり、組成物は皮下注射によって投与される滅菌組成物である。別の態様において、動物はコンパニオンアニマルである。別の態様において、好ましい動物はイヌ科又はネコ科である。
【0012】
本発明の別の態様において、動物の細菌感染症を治療するための医薬品を調製するために、有効量のセファロスポリン、生体適合性油、及び非水性溶媒を含む注射用懸濁組成物の使用である。別の態様において、動物の細菌感染症を治療するための医薬品を調製するために、約150mg/mL~約180mg/mLの量のセフォベシン、組成物の総重量の約60w/w%~約65w/w%の量のジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコールである生体適合性油、及び組成物の総重量の約18w/w%~約22w/w%の量の安息香酸ベンジルである非水性溶媒の有効量を含む注射用懸濁組成物の使用である。本発明の別の態様において、動物の細菌感染症を治療するための医薬品を調製するために、有効量のセファロスポリン、生体適合性油、及び非水性溶媒を含む注射用懸濁組成物の使用である。別の態様において、動物の細菌感染症を治療するための医薬品を調製するために、約150mg/mL~約180mg/mLの量のセフォベシン、組成物の総重量の約60w/w%~約65w/w%の量のジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコールである生体適合性油、及び組成物の総重量の約18w/w%~約22w/w%の量の安息香酸ベンジルである非水性溶媒の有効量を含む注射用懸濁組成物の使用である。別の態様において、動物の細菌感染症を治療するための医薬品を調製するために、約160mg/mLの量のセフォベシン、組成物の総重量の約62w/w%~約63w/w%の量のジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコールである生体適合性油、及び組成物の総重量の約20w/w%の量の安息香酸ベンジルである非水性溶媒の有効量を含む注射用懸濁組成物の使用である。別の態様において、動物の細菌感染症を治療するための医薬品を調製するために、約160mg/mLの量のセフォベシン、組成物の総重量の約62w/w%~約63w/w%の量のジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコールである生体適合性油、及び組成物の総重量の約20w/w%の量の安息香酸ベンジルである非水性溶媒の有効量を含む注射用懸濁組成物の使用であり、組成物は皮下注射によって投与される滅菌組成物である。別の態様において、動物はコンパニオンアニマルである。別の態様において、好ましい動物はイヌ科又はネコ科である。
本発明の態様には、下記のものも含まれる。
態様1
セファロスポリンを含む使用準備が整った注射用組成物であって、前記組成物は生体適合性油及び非水性溶媒を含み、前記組成物は懸濁液である、使用準備が整った注射用組成物。
態様2
前記非水性溶媒は、前記組成物の総重量の約18w/w%~約22w/w%の量の安息香酸ベンジルである、態様1に記載の使用準備が整った組成物。
態様3
前記生体適合性油は、前記組成物の総重量の約58w/w%~約68w/w%の量のジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコールである、態様2に記載の使用準備が整った組成物。
態様4
前記セファロスポリンはセフォベシンナトリウムである、態様3に記載の使用準備が整った組成物。
態様5
前記組成物のセフォベシンの前記濃度は約120mg/mL~約180mg/mLであり、前記組成物は皮下注射によって投与される、態様4に記載の使用準備が整った組成物。
態様6
セフォベシンナトリウム、ジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコールである生体適合性油、及び安息香酸ベンジルである非水性溶媒を含む使用準備が整った注射用組成物であって、前記組成物は懸濁液である、使用準備が整った注射用組成物。
態様7
前記ジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコールは、前記組成物の総重量の約58w/w%~約68w/w%の量である、態様6に記載の使用準備が整った組成物。
態様8
前記安息香酸ベンジルは、約18w/w%~約22w/w%の量である、態様7に記載の使用準備が整った組成物。
態様9
前記組成物のセフォベシンの前記濃度は約120mg/mL~約180mg/mLである、態様6に記載の使用準備が整った組成物。
態様10
前記組成物のセフォベシンの前記濃度は約160mg/mLの量であり、前記組成物は皮下注射によって投与される、態様9に記載の使用準備が整った組成物。
態様11
動物の細菌感染症を治療するための態様1~10のいずれかに記載の前記使用準備が整った注射用組成物の使用。
態様12
前記動物はコンパニオンアニマルである、態様11に記載の使用。
態様13
前記コンパニオンアニマルはイヌ科及びネコ科である、態様12に記載の使用。
態様14
態様1~10のいずれかに記載の使用準備が整った注射用組成物の有効量のセファロスポリンを投与することによって、細菌感染症の治療を必要とする動物の細菌感染症を治療する方法。
態様15
前記動物はイヌ科及びネコ科であるコンパニオンアニマルである、態様14に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
詳細な説明
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】
図2は、異なる量の溶媒及び界面活性剤を有する粘度対せん断速度を示す。
【
図3】
図3は、異なる量の溶媒を有する粘度対せん断速度を示す。
【
図4】
図4は、ミグリオール812及びミグリオール840についての注入力を示す。
【0015】
「動物(複数可)」は、本明細書で使用される場合、他に断りの無い限り、哺乳動物の個別の動物を指す。特に、哺乳動物は、分類学的分類の哺乳綱のメンバであるヒト及び非ヒトの脊椎動物を指す。好ましい動物は非ヒト哺乳動物である。非ヒト哺乳動物の非排他的な例としてコンパニオンアニマル及び家畜が挙げられる。コンパニオンアニマルの非排他的な例として、イヌ(イヌ科)、ネコ(ネコ科)、及びウマ(ウマ科)が挙げられる。好ましいコンパニオンアニマルはイヌ科又はネコ科である。家畜の非排他的な例として、ブタ、ウシ、ヒツジ、及びヤギが挙げられる。
【0016】
本明細書で使用する場合、液体成分(すなわち、安息香酸ベンジル及びジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコール(ミグリオール840))についての組成物の成分の割合は、組成物の総重量の割合を指し、パーセントとして示される組成成分の質量分率を定義する「%w/w」又は「w/w%」として示され、式mi/mtotx100、miは組成物に存在する対象の物質の質量であり、mtotは組成物の合計質量である、にしたがって決定される。さらに、本明細書で使用する場合、固体成分(すなわちセフォベシンナトリウム)についての組成物の成分の割合は、合計組成量の割合として固体成分の総重量の割合を指し、パーセントとして示される組成成分の質量分率を定義する「%w/v」又は「w/v%」として示され、式mi/mtotx100、miは組成物に存在する対象の物質の質量であり、mtotは組成物の合計質量である、にしたがって決定される。本発明の組成物の密度は、約1g/mLであり、したがって、w/w%及びw/v%の値はほとんど等しい。
【0017】
本明細書で使用する場合、「約」という用語は、変数の指示された値、及び指示された値の実験誤差の範囲(例えば、平均についての95%の信頼区間の範囲内)、又は指示された値の10%、より大きいものはどれでも、にある変数の全ての値を指す。
【0018】
注射用懸濁液に使用される典型的な賦形剤として、例えば、凝集剤及び/又は懸濁剤、湿潤剤、溶媒、保存剤、抗酸化剤、緩衝及び等張剤が挙げられる。湿潤剤(例えば、グリセリン、アルコール、レシチン、ポリソルベート、ソルビタントリオレート及びプロピレングリコール)は希釈剤の有効成分を懸濁するために一般的に使用される。湿潤剤は、粒子の表面と湿潤剤との間の接触角度を減少させる傾向があり、それによって、最大の湿潤効率を達成するが、過剰な量の湿潤剤は組成物の気泡形成及び/又は固化を引き起こす可能性がある。
【0019】
いくつかの例において、凝集剤を懸濁液に加えて、粒子間の界面力を減少させ、それによって、密に結合していない、容易に再分散することができる緩やかに素早く沈降する粒子凝集物(フロック)の形成を起こす。凝集剤は、塩(例えば、NaCl、KCl、カルシウム塩、クエン酸塩、リン酸塩、及び硫酸塩)、界面活性剤(例えば、ソルビトール無水物(Tween)の混合された部分脂肪酸エステルのポリオキシエチレンエーテル)、親水性オキシエチレン機を有しない化合物(SPANS(例えば、SPAN20))、高分子量ポリエチレングリコール(カーボワックス)及びポリオキシエチレン及びポリオキシプロピレン(プルロニック(登録商標))を含み、親水性コロイド/ポリマー(例えば、ゼラチン、トラガント及びキサンタンガム、セルロース誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロース))は、一般的に懸濁液に添加されてフロックを調製し、再懸濁性を補助する。安息香酸ベンジルの使用は検討されていない、又は医薬用懸濁液を製剤化する場合に粒子間反発を減少させるために一般的に使用され、凝集剤ではない。凝集剤に加えて、分散剤(例えば、ステアリン酸)を使用することができ、分散剤は粒子間の静電荷に影響し、さらに凝集及び固化に影響し得る粒子/粒子相互作用を減少させる。
【0020】
本発明は、生体適合性油(好ましくはジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコール(ミグリオール840))、セファロスポリン、及び非水性溶媒を含む懸濁液製剤を提供する。より詳細には、本発明は、セファロスポリン、セフォベシンナトリウムと共に、一般的に好まれる非水性溶媒として安息香酸ベンジルを含む。得られる懸濁液(複数可)は、改善された注入可能性を有し、安定的で、長期貯蔵及び輸送の後も容易に再懸濁し、エンドユーザにとってより使いやすい。投与前に懸濁液のより少ない振盪が必要とされ、均一な適切な投与のために固化することなく製品をより長く貯蔵する(より長期の貯蔵寿命)ことができるため、改善された再懸濁性は結果として改善された製品になる。生体適合性油に安息香酸ベンジルを含むことは、より高い粘度を保証しながら注入可能性に必要とされる高せん断力での懸濁液の粘度を減少させること、すなわち、固化を防ぐためにより少ない粒子の沈降及び低せん断力での固化が示された。
【0021】
レオロジーにおいて、剪断減粘性は流体の非ニュートン挙動であり、せん断ひずみ下で粘度が減少し、擬塑性挙動と同義であり、チクソトロピー等の時間依存性効果を除外するように通常定義される。剪断減粘性は一般的に低分子量の純粋な液体(生理食塩水)に観察されることはないが、ポリマー溶液及び複雑流体及び懸濁液に見られることが多い。外乱の後の粘度の回復が極めて速い場合、観察される挙動は、せん断が取り除かれると直ぐに粘度が正常に戻るため、典型的な剪断減粘性である。粘度が回復するために測定可能な時間が経過すると、チクソトロピー挙動が観察される。粒子懸濁液は、粒子懸濁液が流れる途中で基本的な制御を行う強力な非ニュートンレオロジーを有し得る。再懸濁性及び注入可能性を保証するために、本発明の懸濁液は、すなわち、1)固化を防ぐために、懸濁液を低せん断での高粘度を有することができ、2)高せん断での懸濁液は注入可能性のために低粘度を有するようにニュートンの学説のようになる必要がある。注射用懸濁液のレオロジー特性は、その投与及び送達においていくつかの手に負えない課題を提供する可能性がある。
【0022】
粘度は特定の系にかかる圧力による流れに対する抵抗を示し、より低い粘度の系と同じ速度で懸濁液を流すように粘度の高い系であるほどより大きい力又は圧力を必要とする。理想的な懸濁液は低せん断での高い粘度を示すはずである。流体系は、せん断応力によるせん断速度を線形又は非線形に増加させることに基づいて、ニュートン又は非ニュートンのいずれかの流動を示す。懸濁液の粘度は有効成分(複数可)の濃度、粒径、サイズ、及び分布によって変化する可能性がある。さらに、実際の製造工程、装置並びにせん断の混合及び/又は均質化への暴露の種類が最終懸濁液製品に重大な影響を有する可能性がある。
【0023】
沈降容積は懸濁液に生じた沈降の量を記述するために使用される定量的用語である。沈降容積は元々の容積である懸濁液のV0に対する最終容積、Vuの比として定義される。その分数が大きいほど懸濁性がよい。沈降容積は時間による懸濁液の特徴の変化を評価するために使用され、異なる懸濁液製剤を比較するためにも使用され、時間に対して比がプロットされる場合、勾配が水平であるほど懸濁液はより凝集する。一般的に、沈降容積はフロック及び/又は粒子のサイズに直接比例し、沈降の速度は希釈剤(培養液)内の解凝集の量及び/又は粒子間相互作用に反比例する。沈降容積は懸濁液が完全に再懸濁されるときの高さと比較した場合の沈降の高さである。一般的に、沈降容積が大きいほど、より良く再懸濁する懸濁液に関連する。沈降のパッケージングが低いほど再懸濁が容易になる(すなわち、振盪によってより少ないエネルギーしか系にかける必要がない)。第二に、沈降速度が速いほど粒子は相互作用して凝集系を形成する。一般的に、凝集懸濁液は非凝集懸濁液よりも良く再懸濁する。形成するフロックは元々の粒子よりも大きくなるため、より速く沈降するだろう。しかし、フロックはそれ自体とその他のフロックと相互作用するため、このような低い沈降容積に沈降しないだろう。そのため、フロックは一般的により早く再懸濁する。本発明の製剤は非凝集懸濁液である。
【0024】
以上のことから、注入可能性及び注射可能性等の流動特性は評価及び制御に必要である。注入可能性は、懸濁液が注射前にバイアルから移動するときに皮下針を容易に通過する能力を説明する。注入可能性は、退出の容易さ、目詰まり及び気泡形成の傾向並びに投与測定値の精度等の特徴を含む。懸濁液中の固体の粘度、密度、粒径及び濃度の増加は懸濁液の注入可能性を阻害する。
【0025】
注射可能性は注射の間の懸濁液の性能を指し、注射に必要とされる圧力又は力等の要因を含む。流動の均一性、吸引品質及び凝集がまったくないことが挙げられる。懸濁液の注入可能性及び注射可能性は懸濁液の粘度及び粒子の特徴に密接に関係する。懸濁液を解放して単純に排出すること、断続的な圧力をプランジャーにかけて非常にゆっくりと懸濁液を排出する場合、懸濁液についての特定の情報を提供することができる。注射可能性について使用される多くの方法は、本質的に定性的である。インストロン等の力監視装置を使用して、排出及び注入圧力を決定することができ、試験結果はX-Yレコーダで記録することができる。注射可能性を評価するための別の装置は、特定の圧力の下、シリンジから針を通って溶液又は懸濁液を肉に円滑に注射するのに必要とする時間を測定する。様々なサイズのガラス及びプラスチック製シリンジを通って試験溶液を注射する場合、様々なゲージの針を使用して所与のシリンジの種類及び直径の回帰式が得られる。これらの式は、所与のシリンジ針システム及び特定の粘度の所与のビヒクルについて、予想される注射時間の計算を可能にする。
【0026】
単一の大きい粒子又は針の内腔をブロックする凝集物のせいで、又は粒子のブリッジング効果のせいで、懸濁液を投与している間にシリンジ針の目詰まり又は閉塞が生じることがある。目詰まりを防ぐために針の内径の3分の1より大きい粒子は避けたほうがよい。針端又はその近くに目詰まりが観察されると、通常、懸濁液からの流動に対する制限によって目詰まりは発生し、ビヒクル、粒子の湿潤、粒径、粒子の形状及び分布、粘度及び懸濁液の流動特徴等の要因の組み合わせを伴うことがある。
【0027】
再懸濁性は、懸濁液がいくらかの時間静置した後に、最小限の振盪で均一に分散する能力を説明する。定量的に、75rpmで約2分間回転させた後に、シリンダの上部の溶液を通過する光線透過率を使用して、系の再分散特性を検出することができる。再懸濁性は、解凝集した粒子によって、静置したときにケーキを形成する懸濁液にとって問題になっている。固化は、粒子が大きくなり、融合して物質の非分散性の塊を形成する過程を説明する。
【0028】
懸濁液の様々な粒径分布は異なる要因から生じ、要因として、飽和の程度及び核形成の速度が工程の最初に最も大きく、最初に大きな粒子が、続いてより小さい粒子が生じる沈殿方法による懸濁液の調製;薬の分解によって生じるpHの変;温度の変化;いくつかの種類の装置及び移動ステップにおける処理の間の変化が挙げられる。粒径の測定値は凝集又は結晶成長を評価することができる点において有用である。粒径の分析に使用されるいくつかの方法があり、アンダーセンピペット又はサブシーブサイザーよりも顕微鏡的決定が好ましい。1μm以下の粒径の決定については、マルバーン粒径分析計を使用して光子相関スペクトロスコピーを使用することができる。
【0029】
懸濁液に使用される構築されたビヒクルは、非ニュートン流動を示し、可塑的、擬塑性、又はいくつかのチクソトロピーを有する剪断減粘性である。例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)及びメチルセルロース(MC)メトセルは注射用懸濁液に最も多く使用され、擬塑性特性を有する。高レベルの特定のグレードのCMCは、擬塑性チクソトロピーとして作用する。CMC系の粘度は温度に依存し、高温での貯蔵は、CMCを不可逆的に劣化させ得、懸濁液の有用性を低下させる。
【0030】
セファロスポリンは、元々アクレモニウム属菌に由来するβ-ラクタム抗生物質のクラスであり、以前は「セファロスポリウム属」として知られた。セファロスポリンはセファマイシンと一緒にセフェムと呼ばれるβ-ラクタム抗生物質のサブグループを構成し、以下の一般式を有する。
【化1】
【0031】
一般的に、R1における変化は、β-ラクタマーゼによる酵素破壊に対する化合物の安定性又は薬物標的についての化合物の親和性に影響することが多い活性の微生物スペクトルに影響する。R2における修飾は、化合物が中枢神経系等の特定の感染部位に到達する能力に影響し得、又は薬の排出半減期を単純に延長させ得る。
【0032】
セファロスポリンは、3つの異なる活動のメカニズムを有し、特定のペニシリン結合タンパク質に対する結合、細胞壁の合成の阻害、及び細菌細胞壁の自己分解(自己破壊)酵素の活性が挙げられる。セファロスポリンは5つの世代に分けられる。しかしながら、同世代の異なるセファロスポリンは時に化学的関係性がなく、異なる活性のスペクトルを有する。多くの医療専門家に教えられる一般論は、セファロスポリンの次の世代で、グラム陽性カバレッジが減少し、グラム陰性カバレッジが増加することである。
【0033】
第1世代セファロスポリンは、緑色連鎖球菌、グループA溶血性連鎖球菌、大腸菌、クレブシエラ及びプロテウス菌に対して活性である。第1世代セファロスポリンの例として、限定されないが、セファレキシンセフラジン、セファドロキシル及びセファゾリンが挙げられ、皮膚及びその他の軟組織、気道、及び尿路の細菌感染症の治療に有用である。一般的に、第2世代セファロスポリンはグラム陰性生物に対してより活性であり、多くの臨床状況でより有用である。例えば、第2世代セファロスポリンはプロテウス及びクレブシエラの株に対して活性である。第2世代セファロスポリンは肺炎及び敗血症の原因であるインフルエンザ菌にも戦う。しかし、一般的に、グラム陽性感染の治療には第1世代セファロスポリンのほうが依然として良い。第2世代セファロスポリンの例として、限定されないが、セフォキシチン、セフォテタン、セフロキシム及びセフプロジルが挙げられる。第2世代セファロスポリンは一般的に副鼻腔炎、中耳炎、及び腹膜炎を含む嫌気性混合感染症の治療に使用される。第3及び第4世代セファロスポリン抗生物質の大きな長所は、グラム陰性細菌に対するカバレッジをかなり拡大することである。例えば、セフトリアキソン、セフタジジム、セフォベシン、セフォタキシム、セフィキシム、セフチブテン及びセフタジジムを含むいくつかの第3世代セファロスポリンがあり、下気道感染症、皮膚及び軟組織感染症、尿管感染症、中耳炎、骨関節感染症等の治療に有用である。セフェピムは米国では第4世代セファロスポリンだけが入手可能であり、米国以外のいくつかの国ではセフピロムが入手可能である。第3世代セファロスポリンセフタジジムのように、セフェピムは緑膿菌に対して活性であり、中度~重度肺炎、重度尿管感染症、及び皮膚及び軟組織感染症の治療に使用することができる。第5世代セファロスポリンのいくつかの例として、セフタロリン及びセフトビプロールが挙げられ、一般的に深刻な感染症のために保存され、それによって、細菌耐性のリスクを最小にする。総括すると、セファロスポリンは、広い細菌カバレッジを有する著しく多様なクラスの抗生物質である。
【0034】
コンベニア(登録商標)(セフォベシンナトリウム)は、グラム陽性及びグラム陰性細菌に対して広いスペクトルの活性を有する第3世代セファロスポリンである。セフォベシンの活性は細菌細胞壁の合成の阻害から生じ、現在では米国及びその他の国において、イヌ及びネコの皮膚創傷及び膿瘍のための抗生物質として市場に出回っている。製品は、第2のバイアルの滅菌注射用水と共に、1つのバイアルの凍結乾燥薬ケーキとして供給される。包装された凍結乾燥薬ケーキ(800mgのセフォベシン)は、注射のために約10mLの滅菌水と共に、すなわち80mg/mLのセフォベシンに再構成される。使用に必要な場合、滅菌水は、皮下針によってバイアルから取り除かれ、薬ケーキを含むバイアルに注入され、薬ケーキは固体が溶解するまで混合することによって再懸濁される。溶液は皮下針でバイアルから引き抜かれ、続いて動物の体重あたり約8mg/kgの用量で皮下注射することによって動物に投与される。臨床研究において、コンベニア(登録商標)の単回注射は、14日の経口抗生物質レジメンと臨床的に等価であることが示された。単回注射の後、治療薬の濃度は、イヌにおいて、ストレプトコッカス・インターメディウス感染症については約7日間、カニス連鎖球菌感染症について約14日間保持される。ネコにおいては、単回注射は、パスツレラ-ムルトシダ感染症に対して約7日間治療用量濃度を提供する。製剤は、これらの細菌株に対して有効性を提供して動物の皮膚創傷及び膿瘍を治療する。
【0035】
セフォベシンは(6R,7R)-7-[[(2Z)-(2-アミノ-4-チアゾリル)(メトキシイミノ)アセチル]アミノ]-8-オキソ-3-[(2S)-テトラヒドロ-2-フラニル]-5-チア-1-アザビシクロ[4.2.0]オクタ-2-エン-2-カルボン酸、一ナトリウム塩(コンベニア)について非専売名であり、以下の化学構造を有する。
【化2】
【0036】
前述のように、本発明の製剤は、セファロスポリン等の活性薬成分、及び特にセフォベシンナトリウム、生体適合性油、及び非水性溶媒から成る。セフォベシンは、w/v%で組成物の約15~18%の範囲である。セフォベシンの分子量は453.49g/molであり、セフォベシンナトリウムの分子量は475.5g/molである。100%の純度のセフォベシンナトリウムを仮定すると、組成物は、約167.8mg/mLのセフォベシンナトリウムを含み、約160mg/mL(すなわち、16w/v%)のセフォベシンを占める。98%の純度のセフォベシンナトリウムを仮定すると、組成物は、約171.36mg/mLのセフォベシンナトリウムを含み、約160mg/mLのセフォベシンを占める。
【0037】
本発明に使用される生体適合性油は、本質的に、トリグリセリドからなり、グリセロールの長中鎖若しくは鎖脂肪酸エステル、又はトリグリセリド及び脂肪酸の混合物であってもよい。中鎖トリグリセリドは6~12個の炭素原子の脂肪族テールを有する2つ又は3つの脂肪酸を有するトリグリセリドである。中鎖トリグリセリドの豊富な資源として、ココナッツオイル及びパーム核油が挙げられる。長鎖トリグリセリドは13~21個の炭素原子の脂肪族テールを有する2つ又は3つの脂肪酸を有するトリグリセリドである。長鎖トリグリセリドの豊富な資源として、ココナッツオイル、パーム核油、ピーナッツ油及びその他の植物油が挙げられる。トリヒドロキシ、ジヒドロキシ、モノヒドロキシ又はポリヒドロキシ化合物もグリセロールに置き換えられてもよい。油は植物、動物又は合成起源であってもよい。植物油として、例えば、キャノーラ、コーン、綿実、オリーブ、ピーナッツ、ゴマ、大豆、ベニバナ、ココナッツ、ヒマワリ、パーム及びパーム核が挙げられる。植物油と中鎖トリグリセリド(C8-C12)とグリセリンの混合物も考慮される。カプリル酸はC8中鎖トリグリセリドであり、カプリン酸はC10中鎖トリグリセリドである。ミグリオール840はこれらの混合物の一つであり、C8及びC10の鎖長を有する飽和植物脂肪酸のプロピレングリコールジエステルである。ミグリオール840はジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコールとして本明細書に定義され、約709.06g/molの分子量を有する。ミグリオール840の密度は、20℃で約9~12mPa.sの粘度を有する約0.91~0.93g/cm3である。ミグリオール840は、約65~80%のカプリル酸及び20~35%のカプリン酸である。ミグリオール812は、飽和ココナッツのエステル並びにパーム核油由来のカプリル酸並びにC8及びC10トリグリセリドのカプリン脂肪酸及びグリセリンの別の混合物である。ミグリオール812の密度は、20℃で約27~33mPa.sの粘度を有する約0.94~0.95g/cm3である。ミグリオール812は約50~65%のカプリル酸(C8)及び30~45%のカプリン酸(C10)であり、カプリル/カプリントリグリセリドとして定義される。ミグリオール812及びミグリオール840の密度はほとんど同じであっても、各油の粘度は大きく変化し、したがって、ミグリオール840が使用準備が整ったセファロスポリン組成物の好ましい生体適合性油である。生体適合性油の量は、組成物の総重量の約58w/w%~約68w/w%の範囲にある。好ましくは、生体適合性油の量は、組成物の総重量の約60w/w%~約65w/w%の範囲にある。生体適合性油のより好ましい量は、組成物の総重量の約61w/w%~約64w/w%である。好ましい量は組成物の総重量の約62w/w%~約63w/w%のミグリオール840である。組成物に添加されるミグリオール840の量は、qs量である。qs量は、「Quantum satis」の略語であり、ラテン語で、十分な量、例えば「十分量」を意味し、液体を最終決定量にするために添加される量である。組成物は重み値で約623mg/mLのジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコールを含む。
【0038】
注射用懸濁液に使用される溶媒は、水性又は非水性溶媒であってもよい。非水性溶媒として、水混和性及び非水混和性溶媒が挙げられる。
【0039】
水混和性溶媒は、水と混合する場合、単一の水性相を形成する溶媒である。非水混和性溶媒は、水と混合する場合、2つの別々の目に見える層を形成する溶媒である。溶媒(複数可)の選択は、可溶性、安定性、及び薬の望ましい放出特徴に依存する。等張性水性溶媒(例えば、水/生理食塩水)は、一般的に共溶媒として非水性水混和性溶媒(例えば、エタノールベンジルアルコール、グリセリン、ジメチルスルホキシド、プロピレングリコール等)と共に使用される。しかしながら、等張性水性溶媒の使用は、注射部位に望ましくない副作用を有する可能性があり、及び/又は筋毒性及び/又は赤血球溶解(溶血)を引き起こす可能性がある。水性溶液は、溶媒が水である溶液である。注射用懸濁液に使用される非水性水-非水混和性溶媒として、限定されないが、植物油(例えば、ゴマ油、ヒマシ油、綿実油、ベニバナ油、ピーナッツ油等)、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、及び安息香酸ベンジルが挙げられる。非水性水非水混和性溶媒は水に可溶性ではないが、これらの溶媒は、互いに、例えば、植物油及び安息香酸ベンジルと水混和性である。
【0040】
本発明の製剤のセファロスポリンの濃度は約10mg/mL~250mg/mLのセフォベシンの間で変化してもよい。好ましくは、濃度は約50mg/mL~約200mg/mLのセフォベシンである。セフォベシンのより好ましい濃度は、約120mg/mL~約180mg/mLである。最も好ましい濃度は約160mg/mLのセフォベシンである。セフォベシンの量は、w/v%で組成物の合計量の約15~18%を占め、より好ましくは約16~17%を占める。組成物を殺菌のために照射する場合、追加の1~3%のセフォベシンを組成物に添加することができ、これは放射源及び放射時間に依存して劣化する可能性のある量である。概して、油組成物が注射するには粘度があり過ぎる場合、濃度の上限が決定される。本発明の組成物は非水性溶媒安息香酸ベンジルも含む。安息香酸ベンジルはセファロスポリン及びその他の薬の多くの注射用製剤の溶媒として使用されている。驚くべきこととして、ミグリオール840と共に安息香酸ベンジルを使用することは、低せん断力での非固化懸濁液をもたらし、高せん断力でのセフォベシンナトリウムの合理的な再懸濁性及び注入可能性をもたらすことが分かった。安息香酸ベンジルの量は、組成物の総重量の約5w/w%~約30w/w%の範囲にある。安息香酸ベンジルのより好ましい量は、組成物の総重量の約12w/w%~約25w/w%である。安息香酸ベンジルの最も好ましい量は、組成物の総重量の約18w/w%~約22w/w%又は約20w/w%である。組成物は重み値で約200mg/mLの安息香酸ベンジルを含む。
【0041】
このような懸濁液に通常含まれるその他の薬学的に許容される賦形剤として、例えば、懸濁剤、保存剤、湿潤剤又は望まれれば凝集剤が挙げられる。ガム(例えば、アカシア、キサンテン、カラゲナン、アルギン酸ナトリウム及びhagacanth)、セルロース(例えば、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、結晶セルロース及びヒドロキシエチルセルロース)、及び粘土(例えば、ベントナイト及びコロイド状マグネシウムアルミニウム)等の懸濁剤を含んでもよい。メチル及びプロピルパラベン、アルコールベンジル、クロロブタノール及びチメロサール等の保存剤を添加してもよい。陰イオン性(例えば、ドクサートナトリウム及びラウリル硫酸ナトリウム)及び非イオン性(ポリソルベート、ポリオキサマー、オクトキシノール-9)界面活性剤等の湿潤剤を使用してもよい。ゼラチン、天然ゴム及びセルロース誘導体(懸濁剤として上記に挙げたもの等)等の増粘剤を添加してもよい。組成pHを制御するために、クエン酸塩及びリン酸塩等の緩衝液並びに塩化ナトリウム及びマンニトール等の浸透圧剤を含んでもよい。本発明の組成物は、注射用懸濁液の調製について技術分野で周知の任意の方法によって調製することができる。このような方法の全ては、適切な固体形態で存在する有効成分及び液体ビヒクル又は希釈剤のその懸濁液を伴う。
【0042】
本発明の懸濁液は、その有効成分として、セフォベシンナトリウムを含み、コンパニオンアニマル及び家畜等の動物の細菌感染症を治癒させるための抗生物質として有用である。セフォベシンナトリウム(コンベニア(登録商標))は、グラム陽性及びグラム陰性細菌に対して広いスペクトルのセファロスポリン抗生物質活性剤であり、β-ラクタマーゼ産生株を含む。イヌについては、コンベニア(登録商標)は、スタフィロコッカス・インターメディウス及びカニス連鎖球菌(グループG)の感受性株によって発生する皮膚感染症(二次表在性膿皮症、膿瘍及び創傷)の治療に必要を示す。ネコについては、コンベニアは、パスツレラ・マルトシダの感受性株によって発生する皮膚感染症(創傷及び膿瘍)の治療に必要を示す。使用されるこの抗生物質の有効量は、治療を受ける動物の種、年齢及び/又は体重に依存して変化するだろう。8mg/kgの皮下用量をイヌ及びネコに投与する。
【0043】
本発明において、セフォベシンナトリウム及び生体適合性油懸濁液に安息香酸ベンジルを添加することは、高せん断での改善された再懸濁性及び注入可能性についてはより低い粘度を提供しながら、低せん断での固化を防ぐのに十分に高い粘度を有する懸濁液を生成する。現在のセフォベシン注射用凍結乾燥製品とは異なり、本発明の使用準備が整った懸濁液に必要とされるものは再懸濁液だけである。使用準備が整った懸濁液は、1つのバイアルから別のバイアルの凍結乾燥ケーキに希釈剤を分けて添加し、その後、注射前に製品を溶解する必要がなく、もっと容易に使用することができる。したがって、適切でない再水和及び針穿刺のリスクも最小になる。
【0044】
前述のように、界面活性剤は、固形物の分散を促し、一般的にフロックの形成による粒子の固化を防ぐために懸濁液製剤に一般的に添加される。しかしながら、本発明の使用準備が整った組成物は、界面活性剤が製剤の剪断減粘性特性を改善しないこと、セフォベシンナトリウムのフロックも改善しないことを示した。実際には、界面活性剤を有する製剤は、貯蔵条件下で懸濁液が固化し得ることを示す低せん断速度での高い粘度を示さなかった(
図1)。さらに、界面活性剤の存在又は非存在が剪断減粘性溶媒を含む製剤の剪断減粘性挙動を変化させることはなかった(
図2)。
【0045】
異なる濃度の安息香酸ベンジルも研究して、粘度に対する濃度の影響を理解した。
図3に示されるように、低せん断での粘度は、安息香酸ベンジルの濃度が増加するにつれて増加し、全ての濃度の安息香酸ベンジルでせん断速度が速くなるにつれ、粘度が連続して減少することを示した。この現象をミグリオール812のような高い粘度の賦形剤と比較するために、20w/w%の安息香酸ベンジルに懸濁されるAPIを含む製剤において粘度特性を研究した。
図3の破線で示されるように、ミグリオール812で作製された製剤は、低せん断で高い粘度を示したが、ミグリオール840で作製された製剤と比べて、末端の粘度がかなりより高い粘度レベルで定常に達した。このことはミグリオール812を有する製剤に必要とされる高い注入力にも反映した(
図4)。そのため、界面活性剤を必要としない安息香酸ベンジルを添加することは、好ましい粘度特性を有する製剤を作製するのに十分である。製剤の再懸濁を評価するために、2つの異なる界面活性剤、SPAN20(S1)及びステアリン酸(S2)と、2つの異なる濃度の安息香酸ベンジル(6w/w%と20w/w%)を組み合わせて4つの異なる製剤を調製した。40℃/75%RHで増加した安定性で4つの製剤を完全に懸濁するのに必要とした再懸濁時間を
図5に示す。観察することができるように、20w/w%の安息香酸ベンジルを有する製剤が12週間の貯蔵後に最高の再懸濁時間を示した。