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特許7323653フルオロシリコーン添加剤を含有するシリコーン感圧接着剤組成物並びにその調製方法及びその使用
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  • 特許-フルオロシリコーン添加剤を含有するシリコーン感圧接着剤組成物並びにその調製方法及びその使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】フルオロシリコーン添加剤を含有するシリコーン感圧接着剤組成物並びにその調製方法及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C09J 183/07 20060101AFI20230801BHJP
   C09J 183/05 20060101ALI20230801BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20230801BHJP
【FI】
C09J183/07
C09J183/05
C09J7/38
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021577523
(86)(22)【出願日】2019-07-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-24
(86)【国際出願番号】 CN2019094506
(87)【国際公開番号】W WO2021000280
(87)【国際公開日】2021-01-07
【審査請求日】2022-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】チャン、チンクィ
(72)【発明者】
【氏名】リウ、チーホア
(72)【発明者】
【氏名】ホアン、フーミン
(72)【発明者】
【氏名】ルー、ルイホア
(72)【発明者】
【氏名】チュー、チョンロン
(72)【発明者】
【氏名】チュー、チアイン
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/009175(WO,A1)
【文献】特開2012-041505(JP,A)
【文献】特開2011-012092(JP,A)
【文献】国際公開第2016/006252(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/098334(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00 - 201/10
B32B 1/00 - 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーン感圧接着剤組成物であって、
出発物質(A)~(G)の組み合わせた重量に基づいて、10重量%~60重量%の(A)脂肪族不飽和基で末端されたポリジアルキルシロキサンと、
出発物質(A)~(G)の組み合わせた重量に基づいて、0.1重量%~5重量%の(B)ポリアルキルハイドロジェンシロキサンと、
出発物質(A)~(G)の組み合わせた重量に基づいて、0.01重量%~5重量%の(C)ヒドロシリル化反応触媒と、
出発物質(A)~(G)の組み合わせた重量に基づいて、5重量%~75重量%の
(D-1)ポリオルガノシリケート樹脂、
(D-2)分岐状ポリオルガノシロキサンポリマー、及び
(D-3)(D-1)と(D-2)の両方の組み合わせからなる群から選択される(D)シロキサンと、
但し、出発物質(A)及び(D)が、≧2/1の(D)/(A)比を提供するのに十分な量で存在し、
出発物質(A)~(G)の組み合わせた重量に基づいて、≧0.65重量%~<3重量%の(E)ポリ(ジアルキル/アルキル、フルオロアルキル)シロキサンと、
出発物質(A)~(G)の組み合わせた重量に基づいて、0.1重量%~5重量%の(F)アンカー添加剤と、
出発物質(A)~(G)の組み合わせた重量に基づいて、0重量%~5重量%の(G)ヒドロシリル化反応抑制剤と、
前記組成物中の、全ての出発物質を組み合わせた重量に基づいて、0重量%~60重量%の(H)溶剤と、を含む、組成物。
【請求項2】
出発物質(A)脂肪族不飽和基で末端された前記ポリジアルキルシロキサンが、単位式(A-1):(R SiO1/2(R SiO2/2を有し、式中、各Rが、独立して選択された1~30個の炭素原子のアルキル基であり、各Rが、独立して選択された2~30個の炭素原子の一価脂肪族不飽和炭化水素基であり、下付き文字aが、4~10,000の値を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
出発物質(B)の前記ポリアルキルハイドロジェンシロキサンが、単位式(B-1):(R SiO1/2(R HSiO1/2(R SiO2/2(R HSiO2/2を有し、式中、各Rが、独立して選択された1~30個の炭素原子のアルキル基であり、下付き文字rが、0、1又は2であり、下付き文字sが、0、1、又は2であり、但し数量(r+s)=2であり、下付き文字t≧0、下付き文字u>0であり、但し、数量(s+u)>2であり、数量(r+s+t+u)が、4~500である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
出発物質(C)前記ヒドロシリル化反応触媒が、白金-オルガノシロキサン錯体を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
出発物質(D-1)前記ポリオルガノシリケート樹脂が、出発物質(A)~(G)を組み合わせた重量に基づいて、4重量%~74重量%で存在し、出発物質(D-1)が、単位式(D-1-1):(R SiO1/2(R2RSiO1/2(SiO4/2を含み、式中、各Rが、独立して選択された1~30個の炭素原子のアルキル基であり、各Rが、独立して選択された2~30個の炭素原子の一価脂肪族不飽和炭化水素基であり、下付き文字m、n及びoが、m>0、n≧0、o>1の値を有し、但し、数量(m+n+o)が、前記ポリオルガノシリケート樹脂に1,000g/mol~30,000g/molの数平均分子量で提供するのに十分な値を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
出発物質(D-2)前記分岐状ポリオルガノシロキサンポリマーが、出発物質(A)~(G)を組み合わせた重量に基づいて、1重量%~10重量%で存在し、出発物質(D-2)が、単位式(D-2-1):(R SiO1/2(R SiO1/2(R SiO2/2(SiO4/2を含み、式中、各Rが、独立して選択された1~30個の炭素原子のアルキル基であり、各Rが、独立して選択された2~30個の炭素原子の一価脂肪族不飽和炭化水素基であり、下付き文字b、c、d、及びeが、以下の値b≧0、c≧0、数量(b+c)≧4を有し、dが0~995であり、e≧1である、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
出発物質(E)前記ポリ(ジアルキル/アルキル、フルオロアルキル)シロキサンが、単位式(E-1):(R SiO1/2(RSiO2/2(R SiO2/2を有し、式中、各Rが、独立して選択された1~30個の炭素原子のアルキル基であり、各Rが、独立して選択された1~30個の炭素原子を有するアルキル基であり、下付き文字f>0、下付き文字g>0であり、但し、数量(f+g)が100~10,000である、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
出発物質()前記アンカー添加剤が、(F-1)ビニルトリアセトキシシラン、(F-2)グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、(F-3)(F-1)と(F-2)との組み合わせ、並びに(F-4)(F-3)と、ヒドロキシル基、メトキシ基で末端されたポリジメチルシロキサン、又はヒドロキシ基及びメトキシ基の両方で末端されたポリジメチルシロキサンとの組み合わせ、からなる群から選択される、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
出発物質(G)前記ヒドロシリル化反応抑制剤が存在し、1-エチニル-1-シクロヘキサノール、メチルブチノール、及びマレイン酸ジアリルからなる群から選択される、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
出発物質(H)前記溶剤が存在し、トルエン、キシレン、ヘプタン、酢酸エチル、及びこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物を硬化させることにより調製されたシリコーン感圧接着剤。
【請求項12】
1)請求項11に記載のシリコーン感圧接着剤と、
2)表面を有する基材と、を含む保護フィルムであって、前記シリコーン感圧接着剤が、前記基材の前記表面上にコーティングされている、保護フィルム。
【請求項13】
保護フィルムの調製方法であって、
任意選択的に、1)基材の表面を処理することと、
2)請求項1~10のいずれか一項に記載のシリコーン感圧接着剤組成物を、前記基材の前記表面上にコーティングすることと、
任意選択的に3)存在する場合、溶剤の一部又は全てを除去することと、
4)前記感圧接着剤組成物を硬化させることと、を含む、方法。
【請求項14】
ディスプレイガラス用の指紋防止コーティング上での、請求項12に記載の保護フィルム又は請求項13に記載の方法により調製された保護フィルムの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
なし
【0002】
シリコーン感圧接着剤(silicone pressure sensitive adhesive)組成物を基材上で硬化させて保護フィルムを形成することができる。保護フィルムは、表面に指紋防止コーティングを有するディスプレイガラス(AFガラス)を保護するための電子機器用途において有用である。
【背景技術】
【0003】
ディスプレイデバイスにより、ユーザは情報に容易にアクセスすることができる。しかしディスプレイデバイスには、ディプレイを損傷させ得る、又はディスプレイを見づらくし得る指紋及びその他の物質が蓄積するという欠点がある。これらの問題に対処するため、AFガラスの使用が提案されてきた。
【0004】
従来のシリコーン感圧接着剤は、AFガラスへの接着力が十分ではない場合がある。シリコーン感圧接着剤組成物中に接着を促進する添加剤を含めた場合、結果として得られるシリコーン感圧接着剤はその後、特定の基材上では、高すぎるためにディスプレイデバイスを作製するための効果的な加工が不可能となる、接着力を有し得る。
【発明の概要】
【0005】
シリコーン感圧接着剤(Si-PSA)組成物及びその調製方法が開示される。Si-PSA組成物は硬化性であり、ディスプレイデバイス用の保護フィルムでの使用に好適なSi-PSAを形成する。基材の表面にSi-PSAを含む保護フィルムを、AFガラス上で使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】保護フィルム100の部分断面図を示す。 参照番号 100 保護フィルム 101 ポリマー基材 101b ポリマー基材101の表面 102 第2のSi-PSA 102a 第2のSi-PSA102の表面 102b Si-PSA102の反対側の表面 103 指紋防止ハードコーティング 103a 指紋防止ハードコーティング103の表面 103b 指紋防止ハードコーティング103の反対側の表面 104 基材 104a 基材104の表面 104b 基材104の反対側の表面 105 Si-PSA 105a Si-PSA105の表面 105b Si-PSA105の反対側の表面 106 指紋防止コーティング 106a 指紋防止コーティング106の表面 106b 指紋防止コーティング106の反対側の表面 107 ディスプレイカバーガラス 107a ディスプレイカバーガラス107の表面
【発明を実施するための形態】
【0007】
Si-PSA組成物は、(A)脂肪族不飽和基で末端されたポリジアルキルシロキサンと、(B)ポリアルキルハイドロジェンシロキサンと、(C)ヒドロシリル化反応触媒と、(D)(D-1)ポリオルガノシリケート樹脂、(D-2)分岐状ポリオルガノシロキサンポリマー、及び(D-3)(D-1)と(D-2)の両方の組み合わせからなる群から選択されるシロキサンと、(E)ポリ(ジアルキル/アルキル、フルオロアルキル)シロキサンと、(F)アンカー添加剤と、任意選択的に、(G)ヒドロシリル化反応抑制剤と、任意選択的に、(H)溶剤と、を含む。
【0008】
出発物質(A)ポリジアルキルシロキサン
Si-PSA組成物中の出発物質(A)は、脂肪族不飽和基で末端されたポリジアルキルシロキサンである。ポリジアルキルシロキサンは、単位式(A-1):(R SiO1/2(R SiO2/2を有することができ、式中、各Rは、独立して選択された、脂肪族不飽和を含まない1~30個の炭素原子のアルキル基であり、各Rは、独立して選択された2~30個の炭素原子の一価脂肪族不飽和炭化水素基であり、下付き文字aは4~10,000の値を有し、あるいは下付き文字aの平均値は600~10,000であり得る。
【0009】
各Rは、独立して選択された1~30個の炭素原子を有するアルキル基である。あるいは、各Rは1~12個の炭素原子、あるいは1~6個の炭素原子を有し得る。「アルキル」は、環状、分岐状又は非分岐状の飽和一価炭化水素基を意味する。Rのための好適なアルキル基は、直鎖状及び分岐状アルキル基、例えば、メチル、エチル、プロピル(例えば、イソ-プロピル及び/又はn-プロピル)、ブチル(例えば、イソブチル、n-ブチル、tert-ブチル、及び/又はsec-ブチル)、ペンチル(例えば、イソペンチル、ネオペンチル、及び/又はtert-ペンチル)、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、及びデシル、並びに炭素原子6個以上の分岐状アルキル基、又はシクロペンチル及びシクロヘキシルなどの環状アルキル基によって例示される。あるいは、各Rは、直鎖状アルキル及び分岐状アルキルからなる群から独立して選択されてもよい。あるいは、各Rは直鎖状アルキルであってもよい。あるいは、各Rはメチルであってもよい。
【0010】
単位式(A-1)において、各Rは、独立して選択される炭素原子2~30個の一価脂肪族不飽和炭化水素基である。あるいは、各Rは、2~12個の炭素原子、あるいは2~6個の炭素原子を有し得る。好適な一価脂肪族不飽和炭化水素基としては、アルケニル基及びアルキニル基が挙げられる。「アルケニル」は、1つ以上の炭素-炭素二重結合を有する環状、分岐状又は非分岐状の一価炭化水素基を意味する。好適なアルケニル基は、ビニル;アリル;プロペニル(例えば、イソプロペニル、及び/又はn-プロペニル)、並びにブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、及びヘプテニル(4~7個の炭素原子の分岐状異性体及び直鎖状異性体を含む);及びシクロヘキセニルによって例示される。「アルキニル」は、1つ以上の炭素-炭素三重結合を有する環状、分岐状又は非分岐状の一価炭化水素基を意味する。好適なアルキニル基は、エチニル、プロピニル、及びブチニル(炭素原子2~4個の分岐状異性体及び直鎖状異性体を含む)によって例示される。あるいは、各Rは、ビニル、アリル、又はヘキセニルなどの直鎖状アルケニルであってもよい。
【0011】
出発物質(A)は、
A-2)ビス-ジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、
A-3)ビス-ジメチルヘキセニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、
A-4)A-2)、A-3)、及びA-4)のうちの2つ以上の組み合わせなどのポリジアルキルシロキサンを含んでもよい。対応するアルキルハロシランの加水分解及び縮合又は環状ポリジアルキルシロキサンの平衡などの、Si-PSA組成物での使用に好適なポリジアルキルシロキサンの調製方法は、当該技術分野において既知である。
【0012】
Si-PSA組成物中のポリジアルキルシロキサンの量は、出発物質(A)~(G)を組み合わせた重量に基づいて(例えば、Si-PSA組成物中の溶剤を除く全ての出発物質を組み合わせた重量に基づいて)10%~60%である。あるいは、Si-PSA組成物中のポリジアルキルシロキサンの量は、同じ基準で、20%~35%、あるいは25%~30%であってもよい。
【0013】
出発物質(B)ポリアルキルハイドロジェンシロキサン
Si-PSA組成物中の出発物質(B)は、架橋剤として作用し得るポリアルキルハイドロジェンシロキサンである。ポリアルキルハイドロジェンシロキサンは、単位式(B-1):(R SiO1/2(R HSiO1/2(R SiO2/2(RHSiO2/2を有することができ、式中、Rは、上記のとおりであり、下付き文字rは、0、1又は2であり、下付き文字sは、0、1又は2であり、但し、数量(r+s)=2であり、下付き文字t≧0、下付き文字u>0であり、但し、数量(s+u)>2、及び数量(r+s+t+u)は、4~500である。
【0014】
好適なポリアルキルハイドロジェンシロキサンは、
(B-2)ビス-ジメチルハイドロジェンシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、
(B-3)ビス-ジメチルハイドロジェンシロキシ末端ポリ(ジメチル/メチルハイドロジェン)シロキサン、
(B-4)ビス-ジメチルハイドロジェンシロキシ末端ポリメチルハイドロジェンシロキサン、
(B-5)ビス-トリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチル/メチルハイドロジェン)シロキサン、
(B-6)ビス-トリメチルシロキシ末端ポリメチルハイドロジェンシロキサン、及び
(B-7)(B-2)、(B-3)、(B-4)、(B-5)、及び(B-6)のうちの2つ以上の組み合わせによって例示される。アルキルヒドリドハロシランの加水分解及び縮合などのポリアルキルハイドロジェンシロキサンの調製方法は、当該技術分野において周知である。
【0015】
Si-PSA組成物中のポリアルキルハイドロジェンシロキサンの量は、出発物質(A)~(G)を組み合わせた重量に基づいて(例えば、Si-PSA組成物中の溶剤を除く全ての出発物質を組み合わせた重量に基づいて)0.1%~5%である。あるいは、Si-PSA組成物中のポリアルキルハイドロジェンシロキサンの量は、同じ基準で、0.5%~2.5%、あるいは1%~2%であってもよい。
【0016】
出発物質(C)ヒドロシリル化反応触媒
ヒドロシリル化反応触媒は、当該技術分野において既知であり、市販されている。ヒドロシリル化反応触媒としては、白金族金属触媒が挙げられる。このようなヒドロシリル化反応触媒は、(C-1)白金、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、オスミウム、及びイリジウムから選択される金属であり得る。あるいは、ヒドロシリル化反応触媒は、(C-2)このような金属の化合物、例えば、クロリドトリス(トリフェニルホスファン)ロジウム(I)(Wilkinsonの触媒)、[1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]ジクロロジロジウム又は[1,2-ビス(ジエチルホスピノ(diethylphospino))エタン]ジクロロジロジウムなどのロジウムジホスフィンキレート、塩化白金酸(Speierの触媒)、塩化白金酸六水和物、二塩化白金であってもよい。あるいは、ヒドロシリル化反応触媒は、(C-3)白金族金属化合物と低分子量オルガノポリシロキサンとの錯体、又は(C-4)マトリックス若しくはコアシェル型構造中にマイクロカプセル化された白金族金属化合物であってもよい。白金と低分子量オルガノポリシロキサンとの錯体としては、1,3-ジエテニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンの白金錯体(Karstedtの触媒)が挙げられる。あるいは、ヒドロシリル化触媒は、(C-5)樹脂マトリックス中にマイクロカプセル化された錯体を含んでもよい。例示的なヒドロシリル化反応触媒は、米国特許第3,159,601号、同3,220,972号、同3,296,291号、同3,419,593号、同3,516,946号、同3,814,730号、同3,989,668号、同4,784,879号、同5,036,117号、及び同5,175,325号、並びに欧州特許第0347895(B)号に記載されている。マイクロカプセル化されたヒドロシリル化反応触媒及びその調製方法は、米国特許第4,766,176号及び同5,017,654号に例示されているとおり、当該技術分野において既知である。ヒドロシリル化反応触媒は市販されており、例えば、SYS-OFF(商標)4000 Catalyst及びSYL-OFF(商標)2700が、Dow Silicones Corporation(Midland,Michigan,USA)から入手可能である。
【0017】
本明細書で使用されるヒドロシリル化反応触媒の量は、出発物質(B)及び(A)の選択、並びにこれらそれぞれの、ケイ素結合水素原子(SiH)及び脂肪族不飽和基の含有量、並びに選択された触媒中の白金族金属の含有量をはじめとする様々な要因によって異なる。しかし、ヒドロシリル化反応触媒の量は、SiHと脂肪族不飽和基とのヒドロシリル化反応を触媒するのに十分である、あるいは、触媒の量は、ケイ素結合水素原子及び脂肪族不飽和炭化水素基を含有する出発物質を組み合わせた重量に基づいて、1ppm~6,000ppmの白金族金属を与えるのに十分であり、あるいは、同じ基準の下で1ppm~1,000ppm、あるいは1ppm~100ppmの白金族金属を与えるのに十分である。あるいは、触媒の量は、出発物質(A)~(G)を組み合わせた重量に基づいて(例えば、Si-PSA組成物中の溶剤を除く全ての出発物質を組み合わせた重量に基づいて)0.01%~5%であってもよい。あるいは、ヒドロシリル化反応触媒が白金-オルガノシロキサン錯体を含む場合、触媒の量は、出発物質(A)~(G)を合計重量に基づいて(例えば、Si-PSA組成物中の溶剤を除く全ての出発物質を合計重量に基づいて)1%~5%、あるいは2%~4%であってもよい。
【0018】
本明細書に記載のSi-PSA組成物は、出発物質(D)(D-1)ポリオルガノシリケート樹脂、(D-2)分岐状ポリオルガノシロキサンポリマー、及び(D-3)(D-1)と(D-2)の両方の組み合わせからなる群から選択されるシロキサンを更に含む。
【0019】
出発物質(D1)ポリオルガノシリケート樹脂
本明細書に記載のSi-PSA組成物中の出発物質(D-1)は、ポリオルガノシリケート樹脂である。ポリオルガノシリケート樹脂は、式R SiO1/2の単官能単位(「M」単位)及び式SiO4/2の四官能性シリケート単位(「Q」単位)」を含み、式中、Rは、これらのそれぞれが上記で説明されているR及びRからなる群から選択される。あるいは、ポリオルガノシリケート樹脂において、各RはRであってもよく、あるいは各Rは、アルキルであってもよく、あるいはメチルであってもよい。あるいは、各Rは、直鎖状アルキル及び直鎖状アルケニル、あるいはメチル及びビニルから選択されてもよい。あるいは、R基の少なくとも1/3、あるいは少なくとも2/3がメチル基である。あるいは、M単位は(MeSiO1/2)及び(MeViSiO1/2)により例示され得る。ポリオルガノシリケート樹脂は、ベンゼン、トルエン、キシレン、及びヘプタンなどの液体炭化水素によって例示される下記のものなどの溶剤に、又は低粘度の直鎖状及び環状ポリジオルガノシロキサンなどの液体有機ケイ素化合物に可溶性である。
【0020】
調製された場合、ポリオルガノシリケート樹脂は、上記のM単位及びQ単位を含み、ポリオルガノシロキサンはケイ素結合ヒドロキシル基を有する単位を更に含み、式Si(OSiR (式中、Rは上記のとおりである)のネオペンタマーを含んでもよく、例えば、ネオペンタマーはテトラキス(トリメチルシロキシ)シランであってもよい。29SiNMRスペクトル法を用いて、M単位及びQ単位のヒドロキシル含有量及びモル比を測定することができ、この比は、M単位及びQ単位をネオペンタマーから外した{M(樹脂)}/{Q(樹脂)}として表される。M:Q比は、ポリオルガノシリケート樹脂における樹脂性部分のトリオルガノシロキシ基(M単位)の総数の、樹脂性部分中のシリケート基(Q単位)の総数に対するモル比を表す。M:Q比は、0.5:1~1.5:1であってもよい。
【0021】
ポリオルガノシリケート樹脂のMnは、存在するRによって表される炭化水素基の種類などの様々な要因によって異なる。ポリオルガノシリケート樹脂のMnは、ネオペンタマーを表すピークが測定値から除外されるとき、GPCを使用して測定される数平均分子量を指す。ポリオルガノシリケート樹脂のMnは、3,000g/mol超、あるいは>3,000g/mol~8,000g/molであり得る。あるいは、ポリオルガノシリケート樹脂のMnは、3,500g/mol~8,000g/molであってもよい。
【0022】
米国特許第8,580,073号(第3欄5行目~第4欄31行目)、及び米国特許出願公開第2016/0376482号(段落[0023]~[0026])は、MQ樹脂を開示するために本明細書の一部を構成するものとして援用され、このMQ樹脂は本明細書に記載の感圧接着剤組成物での使用に好適なポリオルガノシリケート樹脂である。ポリオルガノシリケート樹脂は、対応するシランの共加水分解、又はシリカヒドロゾルキャッピング法などの任意の好適な方法によって調製することができる。ポリオルガノシリケート樹脂は、Daudtらの米国特許第2,676,182号、Rivers-Farrellらの米国特許第4,611,042号、及びButlerらの米国特許第4,774,310号に開示されているものなどのシリカヒドロゲルキャッピングプロセスによって調製され得る。上記のDaudtらの方法は、酸性条件下でシリカヒドロゾルと、トリメチルクロロシランなどの加水分解性トリオルガノシラン、ヘキサメチルジシロキサンなどのシロキサン又はこれらの混合物とを反応させることと、M単位及びQ単位を有するコポリマーを回収することと、を伴う。得られるコポリマーは概して、2~5重量%のヒドロキシル基を含有する。
【0023】
ポリオルガノシリケート樹脂を調製するために使用される中間体は、4つの加水分解性置換基を有するトリオルガノシラン及びシラン又はアルカリ金属シリケートであってもよい。トリオルガノシランは、式R SiX(式中、Rは上記のとおりであり、Xは、ハロゲン、アルコキシ、アシルオキシ、ヒドロキシル、オキシモ、又はケトキシモなどの加水分解性置換基、あるいはハロゲン、アルコキシ、又はヒドロキシルなどの加水分解性置換基を表す)を有し得る。4つの加水分解性置換基を有するシランは、式SiX (式中、各Xは、ハロゲン、アルコキシ、又はヒドロキシルである)を有することができる。好適なアルカリ金属シリケートとしては、ナトリウムシリケートが挙げられる。
【0024】
上記のように調製されたポリオルガノシリケート樹脂は、典型的には、ケイ素結合ヒドロキシル基、すなわち、式HOSi3/2及び/又はHOR SiO1/2を含有する。ポリオルガノシリケート樹脂は、FTIR分光法によって測定される、最大2%のケイ素結合ヒドロキシル基を含んでもよい。特定の用途では、ケイ素結合ヒドロキシル基の量は、0.7%未満、あるいは0.3%未満、あるいは1%未満、あるいは0.3%~0.8%であることが望ましい場合がある。ポリオルガノシリケート樹脂の調製中に形成されるケイ素結合ヒドロキシル基は、シリコーン樹脂を、適切な末端基を含有するシラン、ジシロキサン又はジシラザンと反応させることによってトリ炭化水素シロキサン基又は異なる加水分解性基に変換することができる。加水分解性基を含有するシランは、ポリオルガノシリケート樹脂のケイ素結合ヒドロキシル基と反応させるのに必要な量のモル過剰量で添加することができる。
【0025】
あるいは、ポリオルガノシリケート樹脂は、2%以下、あるいは0.7%以下、あるいは0.3%以下、あるいは0.3%~0.8%の、式XSiO3/2及び/又はXR SiO1/2(式中、Rは上記のとおりであり、Xは、Xについて上述した加水分解性置換基を表す)で表される単位を更に含んでもよい。
【0026】
あるいは、ポリオルガノシリケート樹脂は、末端脂肪族不飽和基を有してもよい。末端脂肪族不飽和基を有するポリオルガノシリケート樹脂は、最終生成物中に3~30モル%の不飽和有機基を提供するのに十分な量の、不飽和有機基含有末端保護剤及び脂肪族不飽和を含まない末端保護剤と、Daudtらの生成物を反応させることによって調製することができる。末端封鎖剤の例としては、シラザン、シロキサン及びシランが挙げられるが、これらに限定されない。好適な末端封鎖剤は、当該技術分野において公知であり、米国特許第4,584,355号、同第4,591,622号、及び同第4,585,836号に例示されている。単一の末端保護剤又はこのような剤の混合物を使用して、このような樹脂を調製することができる。
【0027】
あるいは、ポリオルガノシリケート樹脂は、単位式(D-1-1):(R SiO1/2(R SiO1/2(SiO4/2(式中、R及びRは上記のとおりであり、下付き文字m、n及びoは、m≧0、n≧0、o>1、及び(m+n)>4となる平均値を有する)を含んでもよい。あるいは、ポリオルガノシリケート樹脂は、単位式(D-1-2):(R SiO1/2(SiO4/2(式中、Rは上記のとおりであり、下付き文字oは上記のとおりであり、下付き文字z>4である)を含んでもよい。
【0028】
ポリオルガノシリケート樹脂の正確な量は、Si-PSA組成物中の他の出発物質の種類及び量、Si-PSA組成物中の他の出発物質の脂肪族不飽和基及びケイ素結合水素原子の濃度、並びに抑制剤の有無、をはじめとする様々な要因に依存する。しかしながら、出発物質(A)及び(D)は、≧2/1、あるいは≧2/1~3.5/1、あるいは≧2/1~3/1、あるいは≧2/1~2.5/1、あるいは2.3/1の、出発物質(D)の量の出発物質(A)の量に対する重量比(樹脂/ポリマー)、又は(D)/(A)比)を提供するのに十分な量で存在し得る。あるいは、ポリオルガノシリケート樹脂は、Si-PSA組成物中の出発物質(A)~(G)を合計重量に基づいて(例えば、Si-PSA組成物中の溶剤を除く全ての出発物質を組み合わせた重量に基づいて)、4%~74%、あるいは50%~70%、あるいは55%~65%の量で存在し得る。
【0029】
出発物質(D2)分岐状ポリオルガノシロキサンポリマー
本明細書に記載のSi-PSA組成物は、ポリオルガノシリケート樹脂に加えて、又はその代わりに、出発物質(D2)、分岐状ポリオルガノシロキサンを更に含んでもよい。分岐状ポリオルガノシロキサンは、単位式(D-2-1)のQ分岐状ポリオルガノシロキサン:(R SiO1/2(R SiO1/2(R SiO2/2(SiO4/2を含むことができ、式中、R及びRは上記のとおりであり、下付き文字b、c、d、及びeは、以下の値b≧0、c≧0、数量(b+c)≧4、dは、0~995であり、e≧1である。あるいは、下付き文字は、2≧b≧0、4≧c≧0、150≧d≧0、e=1であるような平均値を有してもよく、数量(b+c)=4であり、数量(b+c+d+e)は、分回転粘度測定(#52スピンドルを備えたBrookfield DV-IIIコーンプレート型粘度計で、25℃において0.1RPM~50RPMで)によって測定された>170mPa・sの粘度を、分岐状ポリオルガノシロキサンに付与するのに十分な値を有する。あるいは、粘度は、>170mPa・s~1000mPa・s、あるいは>170mPa・s~500mPa・s、あるいは180mPa・s~450mPa・s、あるいは190mPa・s~420mPa・sであってもよい。出発物質(D-2)に好適な分枝状シロキサンは、米国特許第6,806,339号及び米国特許出願公開第2007/0289495号に開示されているものによって例示される。
【0030】
あるいは、出発物質(D2)は、式(D-2-2):
[RSi-(O-SiR -O]-Si-[O-(R SiO)SiR (式(D-2-2)中、各Rは、炭素原子が1~6個のアルキル基であり、式(D-2-2)中の各Rは、炭素原子が2~6個のアルケニル基であり、下付き文字v、w、x、及びyは、200≧v≧1、2≧w≧0、200≧x≧1、4≧y≧0となる値を有し、かつ数量(w+y)=4である)を含んでもよい。あるいは、式(D-2-2)において、各Rは、メチルであり、各Rは、ビニル、アリル、及びヘキセニルからなる群から独立して選択される。Si-PSA組成物に好適な分枝状ポリオルガノシロキサンは、ポリオルガノシリケート樹脂と、環状ポリジオルガノシロキサン又は直鎖状ポリジオルガノシロキサンとを含む混合物を、酸又はホスファゼン塩基などの触媒の存在下で加熱し、その後触媒を中和するなどの既知の方法により調製してもよい。
【0031】
出発物質(D2)の量は、Si-PSA組成物中の他の出発物質の種類及び量、Si-PSA組成物中の出発物質の脂肪族不飽和基及びケイ素結合水素原子の濃度、並びに抑制剤の有無、をはじめとする様々な要因に依存する。しかしながら、分岐状ポリオルガノシロキサンの量は、Si-PSA組成物中の出発物質(A)~(G)を組み合わせた重量に基づいて(例えば、Si-PSA組成物中の溶剤を除く全ての出発物質を組み合わせた重量に基づいて)、0%~10%、あるいは1%~10%、あるいは2%~5%、あるいは3%~4%であってもよい。
【0032】
出発物質(E)フルオロシリコーン
Si-PSA組成物は、出発物質(E)、ポリ(ジアルキル/アルキル、フルオロアルキル)シロキサンを更に含む。ポリ(ジアルキル/アルキル、フルオロアルキル)シロキサンは、15mol%~29mol%のフルオロアルキル基、あるいは少なくとも16mol%、あるいは少なくとも17mol%、あるいは少なくとも18mol%、あるいは少なくとも19mol%のフルオロアルキル基を有し得る。あるいは、ポリ(ジアルキル/アルキル、フルオロアルキル)シロキサンは、最大28mol%のフルオロアルキル基、あるいは最大27mol%のフルオロアルキル基を含有し得る。ポリ(ジアルキル/アルキル、フルオロアルキル)シロキサンは、脂肪族不飽和炭化水素基など、本明細書に記載の条件下でヒドロシリル化反応を受けることができる有機基を含まない。
【0033】
フルオロアルキル基は、式C(2n+1)-Rを有することができ、式中、下付き文字nは、1~20であり、Rは、Rは、2~30個の炭素原子、あるいは2~10個の炭素原子、あるいは2~6個の炭素原子のアルキレン基である。アルキレン基の例としては、エチレン、プロピレン、ブチレン、ヘキシレン、及びヘプチレンが挙げられ、あるいは、エチレン、プロピレン、又はブチレンが挙げられる。
【0034】
ポリ(ジアルキル/アルキル、フルオロアルキル)シロキサンは、単位式(E-1):(R SiO1/2(RSiO2/2(R SiO2/2を有することができ、式中、各Rは、独立して選択された1~30個の炭素原子のアルキル基であり、各Rは、独立して選択された1~30個の炭素原子を有する一価のフッ素化アルキル基であり、下付き文字f>0、下付き文字g>0であり、但し、数量(f+g)は100~10,000である。
【0035】
本明細書に記載のSi-PSA組成物での使用に好適なポリ(ジアルキル/アルキル、フルオロアルキル)シロキサンの例としては、
(E-2)ビス-トリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチル/メチル、3,3,3-トリフルオロプロピル)シロキサン、
(E-3)ビス-トリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチル/メチル、ペルフルオロブチルエチル)シロキサン、
(E-4)ビス-トリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチル/メチル、ペルフルオロヘキシルエチル)シロキサン、
(E-5)(E-2)~(E-4)のうちの2つ以上の組み合わせが挙げられる。Si-PSA組成物で使用するための好適なポリ(ジアルキル/アルキル、フルオロアルキル)シロキサンは、Dow Silicones Corporationから市販されており、米国特許出願公開第2017/019903号に開示されたポリ(ジアルキル/アルキル、フルオロアルキル)シロキサンであり、この米国特許公開は、放出制御剤として使用するためのフッ素原子含有有機基を有する様々なオルガノポリシロキサンを開示しているが、これらは、剥離コーティングにおける使用のために以前に開示されており、シリコーン感圧接着剤のためではない。理論に束縛されるものではないが、本明細書に記載のSi-PSA組成物にある特定のポリ(ジアルキル/アルキル、フルオロアルキル)シロキサンを添加することは、本明細書の実施例に示されるように、AFガラス上での接着性の対応する低減を伴わずに、ステンレス鋼上の接着性を低下させることが特に驚くべきことである。
【0036】
Si-PSA組成物中のポリ(ジアルキル/アルキル、フルオロアルキル)シロキサンの量は、組成物中の他の出発物質の種類及び量、及びポリ(ジアルキル/アルキル、フルオロアルキル)シロキサンのフッ素含有量を含む様々な要因に依存するが、Si-PSA組成物中のポリ(ジアルキル/アルキル、フルオロアルキル)シロキサンの量は、Si-PSA組成物中の出発物質(A)~(G)を組み合わせた重量に基づいて(例えば、Si-PSA組成物中の溶剤を除く全ての出発物質を組み合わせた重量に基づいて)0.01%~<3%、あるいは0.5%~2%、あるいは0.9%~1.6%である。
【0037】
出発物質(F)アンカー添加剤
出発物質(F)は、任意選択的にSi-PSA組成物に含まれ得るアンカー添加剤である。理論に束縛されるものではないが、アンカー添加剤は、本明細書に記載のSi-PSA組成物を硬化させることにより調製されたSi-PSAによる基材への結合を促進すると考えられる。しかし、アンカー添加剤の存在は、所望の剥離接着力に悪影響を及ぼすことはなく、これにより、デバイスを損傷させることなく、又はあまり残留物を残すことなく、Si-PSAを電子デバイスから除去することが可能になる。
【0038】
好適なアンカー添加剤としては、シランカップリング剤(メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリメトキシシリル)プロパン、及びビス(トリメトキシシリルヘキサンなど);並びに上記シランカップリング剤の混合物又は反応混合物が挙げられる。あるいは、アンカー添加剤は、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、又は3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランであってもよい。
【0039】
あるいは、アンカー添加剤は、ビニルアルコキシシランとエポキシ官能性アルコキシシランとの反応生成物;ビニルアルコキシシランとエポキシ官能性アルコキシシランとの反応生成物;並びに1分子当たり少なくとも1個の脂肪族不飽和炭化水素基及び少なくとも1つの加水分解性基を有するポリオルガノシロキサンとエポキシ官能性アルコキシシランとの組み合わせ(例えば、物理的なブレンド及び/又は反応生成物)(例えば、ヒドロキシ末端ビニル官能性ポリジメチルシロキサンとグリシドキシプロピルトリメトキシシランとの組み合わせ)により例示される。好適なアンカー添加剤及びそれらの調製方法は、例えば、米国特許出願公開第2003/0088042号、同2004/0254274号、同2005/0038188号、同2012/0328863号の段落[0091]、及び米国特許出願公開第2017/0233612号の段落[0041]、並びに欧州特許第0556023号に開示されている。
【0040】
アンカー添加剤は市販されている。例えば、SYS-OFF(商標)297及びSYL-OFF(商標)397が、Dow Silicones Corporation(Midland,Michigan,USA)から入手可能である。他の例示的なアンカー添加剤としては、(F-1)ビニルトリアセトキシシラン、(F-2)グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、(F-3)(F-1)と(F-2)との組み合わせ、並びに(F-4)(F-3)と、ヒドロキシル基、メトキシ基で末端されたポリジメチルシロキサン、又はヒドロキシ基及びメトキシ基の両方で末端されたポリジメチルシロキサンとの組み合わせ、が挙げられる。(F-3)及び(F-4)の組み合わせは、物理的なブレンド及び/又は反応生成物であってもよい。
【0041】
アンカー添加剤の量は、Si-PSA組成物が適用される基材の種類、及びSi-PSA組成物の適用前にプライマー又は他の表面処理を使用するかどうか、をはじめとする様々な要因によって異なる。しかし、アンカー添加剤の量は、Si-PSA組成物中の出発物質(A)~(F)を組み合わせた重量に基づいて(例えば、Si-PSA組成物中の溶剤を除く全ての出発物質を組み合わせた重量に基づいて)、0%~5%、あるいは1%~5%、あるいは1%~3%、あるいは1.9%~2.1%であってもよい。
【0042】
出発物質(G)ヒドロシリル化反応抑制剤
出発物質(G)はヒドロシリル化反応抑制剤(抑制剤)であり、任意選択的に、Si-PSA組成物中のケイ素結合水素原子と他の出発物質の脂肪族不飽和炭化水素基との反応速度を、同じ出発物質であるが抑制剤を省略した場合の反応速度と比較して変更するために使用することができる。抑制剤は、アセチレン系アルコール、例えばメチルブチノール、エチニルシクロヘキサノール、ジメチルヘキシノール、及び3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、1-ブチン-3-オール、1-プロピン-3-オール、2-メチル-3-ブチン-2-オール、3-メチル-1-ブチン-3-オール、3-メチル-1-ペンチン-3-オール、3-フェニル-1-ブチン-3-オール、4-エチル-1-オクチン-3-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、及び1-エチニル-1-シクロヘキサノール、並びにこれらの組み合わせ;シクロアルケニルシロキサン、例えば1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラヘキセニルシクロテトラシロキサンによって例示されるメチルビニルシクロシロキサン、並びにこれらの組み合わせ;エン-イン化合物、例えば3-メチル-3-ペンテン-1-イン、3,5-ジメチル-3-ヘキセン-1-イン、及びこれらの組み合わせ;トリアゾール、例えばベンゾトリアゾール;ホスフィン;メルカプタン;ヒドラジン;アミン、例えばテトラメチルエチレンジアミン、3-ジメチルアミノ-1-プロピン、n-メチルプロパルギルアミン、プロパルギルアミン、及び1-エチニルシクロヘキシルアミン;フマル酸ジアルキル、例えばフマル酸ジエチルなど、フマル酸ジアルケニル、例えば(フマル酸ジアリルなど、フマル酸ジアルコキシアルキル、マレイン酸エステル、例えばマレイン酸ジアリル及びマレイン酸ジエチルなど;ニトリル;エーテル;一酸化炭素;アルケン、例えばシクロオクタジエン、ジビニルテトラメチルジシロキサン;アルコール、例えばベンジルアルコール;並びにこれらの組み合わせによって例示される。
【0043】
あるいは、抑制剤は、シリル化アセチレン系化合物であってもよい。理論に束縛されるものではないが、シリル化アセチレン系化合物を添加すると、シリル化アセチレン系化合物を含有していない、又は上記したものなどの有機アセチレン系アルコール抑制剤を含有する出発物質のヒドロシリル化による反応生成物と比較して、ヒドロシリル化反応から調製される反応生成物の黄変が低減すると考えられる。
【0044】
シリル化アセチレン系化合物は、(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)トリメチルシラン、((1,1-ジメチル-2-プロピニル)オキシ)トリメチルシラン、ビス(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)ジメチルシラン、ビス(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)シランメチルビニルシラン、ビス((1,1-ジメチル-2-プロピニル)オキシ)ジメチルシラン、メチル(トリス(1,1-ジメチル-2-プロピニルオキシ))シラン、メチル(トリス(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ))シラン、(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)ジメチルフェニルシラン、(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)ジメチルヘキセニルシラン、(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)トリエチルシラン、ビス(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)メチルトリフルオロプロピルシラン、(3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オキシ)トリメチルシラン、(3-フェニル-1-ブチン-3-オキシ)ジフェニルメチルシラン、(3-フェニル-1-ブチン-3-オキシ)ジメチルフェニルシラン、(3-フェニル-1-ブチン-3-オキシ)ジメチルビニルシラン、(3-フェニル-1-ブチン-3-オキシ)ジメチルヘキセニルシラン、(シクロヘキシル-1-エチン-1-オキシ)ジメチルヘキセニルシラン、(シクロヘキシル-1-エチン-1-オキシ)ジメチルビニルシラン、(シクロヘキシル-1-エチン-1-オキシ)ジフェニルメチルシラン、(シクロヘキシル-1-エチン-1-オキシ)トリメチルシラン、及びこれらの組み合わせによって例示される。あるいは、シリル化アセチレン系化合物は、メチル(トリス(1,1-ジメチル-2-プロピニルオキシ))シラン、((1,1-ジメチル-2-プロピニル)オキシ)トリメチルシラン、又はこれらの組み合わせによって例示される。本明細書における抑制剤として有用なシリル化アセチレン系化合物は、当該技術分野において既知の方法により調製され得る。例えば、米国特許第6,677,740号では、酸受容体の存在下でクロロシランと反応させることにより上記のアセチレン系アルコールをシリル化することが開示されている。
【0045】
本明細書で添加される抑制剤の量は、所望の反応速度、使用される特定の抑制剤、並びに出発物質(A)及び(B)の選択及び量、をはじめとする様々な要因に応じて異なる。しかし、存在する場合、抑制剤の量は、Si-PSA組成物中の出発物質(A)~(G)を組み合わせた重量に基づいて(例えば、Si-PSA組成物中の溶剤を除く全ての出発物質を組み合わせた重量に基づいて)、>0%~1%、あるいは>0%~5%、あるいは0.001%~1%、あるいは0.01%~0.5%、あるいは0.002%~0.25%であってもよい。
【0046】
出発物質(H)溶剤
Si-PSA組成物は、出発物質(H)である溶剤を更に含んでもよい。溶剤は、炭化水素、ケトン、酢酸エステル、エーテル、及び/又は平均重合度が3~10の環状シロキサンなどの有機溶剤であってもよい。溶剤に好適な炭化水素は、(H-1)ベンゼン、ベンゼン、トルエン、若しくはキシレンなどの芳香族炭化水素、(H-2)ヘキサン、ヘプタン、オクタン、若しくはイソパラフィンなどの脂肪族炭化水素、又は(H-3)これらの組み合わせ、であり得る。あるいは、溶剤は、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールn-ブチルエーテルなどのグリコールエーテルであってもよい。好適なケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトン、又はメチルイソブチルケトンが挙げられる。好適な酢酸エステルとしては、酢酸エチル又は酢酸イソブチルが挙げられる。好適なエーテルとしては、ジイソプロピルエーテル又は1,4-ジオキサンが挙げられる。重合度が3~10、あるいは3~6である好適な環状シロキサンとしては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、及び/又はデカメチルシクロペンタシロキサンが挙げられる。あるいは、溶剤は、トルエン、キシレン、ヘプタン、酢酸エチル、及びこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択されてもよい。
【0047】
溶剤の量は、選択される溶剤の種類、並びにSi-PSA組成物のために選択される他出発物質の量及び種類、をはじめとする様々な因子によって異なる。しかし、溶剤の量は、Si-PSA組成物中の全ての出発物質を組み合わせた重量に基づいて、0%~90%、あるいは0%~60%、あるいは20%~50%、あるいは0~50%、あるいは20%~60%の範囲であってもよい。溶剤は、例えば混合及び送達を助けるために、Si-PSA組成物の調製中に添加することができる。溶剤の全て又は一部を、他の出発物質のうち1のつと共に添加してもよい。例えば、ポリオルガノシリケート樹脂、分岐状ポリオルガノシロキサンポリマー、及び/又は触媒を、Si-PSA組成物中の他の出発物質と組み合わせる前に溶剤に溶解させてもよい。溶剤の全て又は一部を、任意選択的に、Si-PSA組成物の調製後に除去してもよい。
【0048】
Si-PSA組成物の製造方法
Si-PSA組成物は、周囲温度又は高温における混合といった任意の都合のよい手法で上記の全出発物質を組み合わせることを含む方法により、調製することができる。ヒドロシリル化反応抑制剤は、ヒドロシリル化反応触媒の前、例えばSi-PSA組成物を高温で調製する際、及び/又はSi-PSA組成物を一部型組成物として調製する際に、添加してもよい。
【0049】
本方法は、溶剤中に1つ以上の出発物質(例えば、ヒドロシリル化反応触媒、ポリオルガノシリケート樹脂、及び/又は分岐状ポリオルガノシロキサンポリマー)を送達することを更に含んでもよく、これら出発物質はSi-PSA組成物中の1つ以上の他の出発物質と組み合わせる際に溶剤中に溶解させてもよい。当業者であれば、結果として得られるSi-PSA組成物が無溶剤である(すなわち、感圧接着剤組成物は溶剤を含まない、又は出発物質の送達に由来する微量の残留溶剤を含み得るが、溶剤、例えばトルエン又は非官能性ポリジオルガノシロキサンなどの有機溶剤)ことが望ましい場合、出発物質のうち2つ以上を混合した後で溶剤を除去してもよいことを理解するであろう。この実施形態では、Si-PSA組成物中には溶剤を意図的に添加していない。
【0050】
あるいは、Si-PSA組成物は、例えばSi-PSA組成物を使用前に長期間、例えばSi-PSA組成物を基材上にコーティングする前に最大6時間保管する場合、複数部型組成物として調製してもよい。複数部型組成物において、ヒドロシリル化反応触媒は、ケイ素結合水素原子を有する任意の出発物質、例えばポリオルガノハイドロジェンシロキサンとは別個の部分に保存され、それらの部分はSi-PSA組成物の使用直前に組み合わされる。
【0051】
例えば、複数部型組成物は、混合といった任意の都合のよい手段により、脂肪族不飽和基で末端されたポリジアルキルシロキサン、ポリアルキルハイドロジェンシロキサン、及び任意選択的に、1つ以上のその他の追加の上記出発物質のうちの少なくともいくつかを含む出発物質を組み合わせて基部を形成することにより調製してもよい。硬化剤は、混合といった任意の都合のよい手段により、脂肪族不飽和基で末端されたポリジアルキルシロキサン、ヒドロシリル化反応触媒、及び任意選択的に、1つ以上のその他の追加の上記出発物質のうちの少なくともいくつかを含む出発物質を組み合わせることにより調製してもよい。出発物質は、周囲温度で組み合わせても高温で組み合わせてもよい。ヒドロシリル化反応抑制剤は、基部、硬化剤部、又は別個の追加部のうちの1つ以上に含まれてもよい。アンカー添加剤は基部に添加してもよく、又は別個の追加部として添加してもよい。ポリオルガノシリケート樹脂、分岐状ポリオルガノシロキサンポリマー、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるシロキサンは、基部、硬化剤部、又は別個の追加部に添加してもよい。分岐状ポリオルガノシロキサン及び/又はポリオルガノシリケート樹脂を、基部に添加してもよい。溶剤を基部に添加してもよい。あるいは、ポリオルガノシリケート樹脂及び/又は分岐状ポリオルガノシロキサンを含む出発物質、及び溶剤の一部又は全てを、別個の追加部に添加してもよい。二部型組成物を用いるとき、基部の量の、硬化剤部に対する重量比は、1:1~10:1の範囲とすることができる。Si-PSA組成物は、ヒドロシリル化反応を介して硬化し、Si-PSAを形成する。
【0052】
上記の方法は、1つ以上の追加の工程を更に含んでもよい。上記のように調製したSi-PSA組成物を使用して、基材上に接着剤物品、例えば、Si-PSA(上記のSi-PSA組成物を硬化させることにより調製する)を形成してもよい。したがって、本方法は、Si-PSA組成物を基材に適用することを更に含んでもよい。
【0053】
Si-PSA組成物を基材に適用することは、任意の都合のよい手法により実施することができる。例えば、Si-PSA組成物は、グラビアコーター、コンマコーター、オフセットコーター、オフセットグラビアコーター、ローラーコーター、リバースローラーコーター、エアナイフコーター、又はカーテンコーターにより基材上に適用され得る。
【0054】
基材は、感圧接着剤組成物を硬化させて基材上に感圧接着剤を形成するために使用する硬化条件(後述)に耐えることができる任意の材料であることができる。例えば、120℃以上、あるいは150℃以上の温度での熱処理に耐えることができる、任意の基材が好適である。このような基材に好適な材料の例としては、ポリイミド(PI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、液晶ポリアリレート、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルスルフィド(PES)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリエチレン(PE)、又はポリプロピレン(PP)などのポリマーフィルムが挙げられる。あるいは、基材はガラスであってもよい。基材の厚さは重要ではないが、厚さは、5μm~300μm、あるいは50μm~250μm、あるいは50μmであってもよい。あるいは、基材は、PET、TPU、PC、及びガラスからなる群から選択されてもよい。あるいは、基材は、PETなどのポリマー基材であってもよい。
【0055】
Si-PSAの基材への結合を向上させるために、接着剤物品の形成方法は、Si-PSA組成物を適用する前に基材を処理すること、を任意選択的に更に含んでもよい。基材の処理は、Si-PSA組成物を基材に適用する前に、プライマーを適用すること、又は基材をコロナ放電処理、エッチング、若しくはプラズマ処理に供することなどの任意の都合のよい手法により実施してもよい。
【0056】
フィルム又はテープなどの接着剤物品は、上記のSi-PSA組成物を上記の基材上に適用することにより調製され得る。Si-PSA組成物が溶剤を含有する場合、本方法は、硬化前及び/又は硬化中に溶剤の全て又は一部を除去することを更に含んでもよい。溶剤の除去は、Si-PSA組成物を完全には硬化させずに溶剤を気化させる温度で加熱すること、例えば70℃~120℃、あるいは50℃~100℃、あるいは70℃~80℃の温度で、溶剤の全て又は一部を除去するのに十分な時間(例えば30秒間~1時間、あるいは1分間~5分間)加熱すること、などの任意の都合のよい手法で実施してもよい。
【0057】
Si-PSA組成物の硬化は、Si-PSA組成物を硬化させるのに十分な時間(例えば、30秒間~1時間、あるいは1分間~5分間)、80℃~200℃、あるいは90℃~180℃、あるいは100℃~160℃、あるいは110℃~150℃の温度で加熱することにより実施してもよい。硬化速度を速める必要がある場合、又はプロセスオーブンの温度を下げる必要がある場合は、触媒濃度を上げることができる。これにより、基材上に感圧接着剤が形成される。硬化は、基材をオーブン内に入れることによって行うことができる。基材に適用するSi-PSA組成物の量は具体的な用途によって異なるが、硬化後、感圧接着剤の厚さが5μm~100μmとなり得るのに十分な量であり得る。保護フィルムの場合、厚さは5μm~50μm、あるいは10μm~40μm、あるいは15μm~40μmとなり得る。
【0058】
本明細書に記載の方法は、例えば、接着剤物品の使用前にSi-PSAを保護するために、基材の反対側のSi-PSAに除去可能な剥離ライナーを適用すること、を任意選択的に更に含んでもよい。剥離ライナーは、Si-PSA組成物の硬化前、硬化中、又は硬化後に、あるいは硬化後に、適用することができる。接着剤物品は、ディスプレイデバイスに使用するための保護フィルムであってもよい。
【0059】
保護フィルムにおける使用
図1は、指紋防止コーティング(106)の反対側の表面(106b)がディスプレイカバーガラス(107)の表面(107a)に接触するようにしてディスプレイカバーガラス(107)の表面(107a)を覆う指紋防止コーティング(106)の表面(106a)を覆う、保護フィルム(100)の部分断面図を示す。保護フィルム(100)は、表面(105a)及び反対側の表面(105b)を有するSi-PSA(105)を含む。Si-PSA(105)の反対側の表面(105b)は、以下の参考例Cによる測定で剥離接着力が>30g/inである状態でAFコーティングの表面(106a)に接着している。Si-PSAは、15μm~40μmの厚さを有してもよい。Si-PSA(105)は、表面(104a)及び反対側の表面(104b)を有する基材(104)上に担持されている。Si-PSA(105)の表面(105a)は、基材(104)の反対側の表面(104b)に接触している。基材(104)は、PET、TPU、PC、及びガラスからなる群から選択されてもよく、50μm~250μmの厚さを有していてもよい。
【0060】
保護フィルム(100)は、表面(103a)、及び指紋防止ハードコーティング(103)の反対側の表面(103b)が基材(104)の表面(104a)に接触するようにして基材(104)を覆う反対側の表面(103b)を有する指紋防止ハードコーティング(103)、を更に含んでもよい。
【0061】
保護フィルム(100)は、表面(102a)及び反対側の表面(102b)を有する第2のSi-PSA(102)、並びに表面(101b)を有するポリマー基材(101)を更に含んでもよい。第2のSi-PSA(102)は、第2のSi-PSA(102)の表面(102a)がポリマー基材(101)の表面(101b)に接触するように、ポリマー基材(101)上にコーティングされる。第2のSi-PSA(102)の反対側の表面(102b)は、指紋防止ハードコーティング(103)の表面(103a)に接触している。第2のSi-PSA(102)は10μmの厚さを有していてもよく、ポリマー基材(101)は50μmの厚さを有していてもよい。第2の基材(101)はPETであってもよい。
【0062】
上記のSi-PSA組成物及び方法を、保護フィルム(100)の作製に使用してもよい。Si-PSA組成物を基材(104)の反対側の表面(104b)に適用し、硬化させてSi-PSA(105)を形成してもよい。あるいは、本明細書に記載のSi-PSA組成物をポリマー基材(101)の表面(101b)に適用し、硬化させて第2のSi-PSA(102)を形成してもよい。理論に束縛されるものではないが、上記のSi-PSA組成物を硬化させることにより調製したSi-PSAは、以下の参考例Cに記載された方法による測定で、指紋防止コーティング(106)の表面(106a)上で>30g/inの接着力、及びステンレス鋼上で<800g/inの接着力を有し得ると考えられる。
【実施例
【0063】
これらの実施例は、当業者に本発明を例示することを目的とするものであり、請求項に記載の本発明の範囲を制限するものとして解釈すべきではない。表1の材料を、これらの実施例で使用した。
【表1】
【0064】
DOWSIL(商標)、SILASTIC(商標)、及びSYL-OFF(商標)製品は、Dow Silicones Corporation(Midland,Michigan,USA)から市販されている。
【0065】
参考例A Si-PSA組成物の調製
出発物質を以下の表2に示す量(重量部)で組み合わせることにより、Si-PSA組成物のサンプルを調製した。まず、混合物及び樹脂1をブレンドした。次いで、架橋剤、アンカー添加剤、フルオロシリコーン、溶剤、及び触媒をそれらと混合した。全出発物質を室温で混合した。
【0066】
参考例B Si-PSAテープの調製
参考例Aで上記したように調製した各Si-PSA組成物を、PETフィルム上に厚さ100μmで適用し、150℃のオーブン内で2分間加熱した。加熱後、Si-PSAは30μm~35μmの厚さを有していた。
【0067】
得られたテープサンプルを、Si-PSAが基材と接触するようにして基材に適用した。基材はAFガラス(指紋防止コーティングを有するガラス)及びSUS(ステンレス鋼)であり、Si-PSAを基材と接触させた後、試験前にサンプルをRTで30分間保持した。
【0068】
参考例C 接着力試験
上記のように調製した各テープサンプルを、テープを基材から剥離させ、PETフィルムからAFガラス及びSUS上に移動したSi-PSAがいくらか存在するかを確認することにより、AFガラス及びSUS基材への接着力について試験した。この試験には、接着力/剥離試験機AR-1500を使用した。各PETシートの幅は1インチであった。剥離速度及び剥離角度は、それぞれ0.3m/分及び180°であった。単位はグラム/インチであった。結果を以下の表2に示す。
【表2】
表3は、表2に示されるサンプルにおいて、溶剤を除く各出発物質の重量%を示す。

【表3】
【0069】
発明が解決しようとする課題
従来のシリコーン感圧接着剤は、ガラス上の指紋防止コーティングへの高い接着性及びステンレス鋼に対する低い接着性などの、AFガラスで使用される保護フィルムに所望される特性の組み合わせを欠いている。
【0070】
電子デバイス作製者は、AFガラス用の新しい保護フィルムを探し求めている。剥離接着力は、AFガラス上で>30g/in及びSUS上で700g/inであるべきである。異なる基材への選択的接着力は、Si-PSA産業にとって課題である。従来のSi-PSAは、これらの剥離接着力基準のうちの1つを満たすことができるが、両方ではない。
【0071】
産業上の利用可能性
上記の実施例は、AFガラスに対して>30g/インチ及びSUS対して<700g/inを有するSi-PSAを形成するように硬化するSi-PSA組成物が調製されることを示した。例えば、実施例W1、W2、及びW3は、それぞれ44g/in、33.7g/in、及び35.6g/inのAFガラス上での剥離接着力を有していた。理論に束縛されるものではないが、本明細書に記載のSi-PSA組成物は、>30g/in~45g/inのAFガラスに対する剥離接着力を有するSi-PSAを形成するように硬化し得ると考えられる。上記の実施例は、<700g/inのSUSに対する剥離接着力を有するSi-PSAを形成するように硬化するSi-PSA組成物が調製されることを更に示した。例えば、実施例W1、W2、及びW3は、それぞれ570、644、及び457のSUSに対する剥離接着力を有していた。理論に束縛されるものではないが、本明細書に記載のSi-PSA組成物は、450g/in~<700g/in、あるいは450g/in~650g/inのSUSガラスに対する剥離接着力を有するSi-PSAを形成するように硬化し得ると考えられる。
【0072】
驚くべきことに、本発明者らは、ヒドロシリル化反応硬化性組成物にポリ(ジアルキル/アルキル、フルオロアルキル)シロキサンを添加することにより、AFガラスに対する剥離接着力を著しく低下させることなく、SUSに対する剥離接着力を<700g/インチまで低下させることができることを見出した。ポリ(ジアルキル/アルキル、フルオロアルキル)シロキサンは、1つの基材への接着力を選択的に改変したが、別の基材にも特に予想外ではなかった。実施例1(W1)は、ポリ(ジアルキル/アルキル、フルオロアルキル)シロキサンを含有しない(C1の)感圧接着剤組成物にポリ(ジアルキル/アルキル、フルオロアルキル)シロキサンを添加すると、AFガラスに対する剥離接着力の著しい減少なしに、ステンレス鋼に対する接着力を970g/inから570g/inまで低下させることを示した。比較例2並びに実施例2及び3もまた、異なる量のポリ(ジアルキル/アルキル、フルオロアルキル)シロキサンを感圧接着剤組成物(C2)に添加した場合、指紋防止コーティングされたガラスに重大な悪影響を及ぼすことなく、ガラスステンレス鋼に対する接着力が889g/インチから<700g/インチまで低下を示した。比較例3(C3)は、ポリ(ジアルキル/アルキル、フルオロアルキル)シロキサンの含有量が高すぎる場合、Si-PSAは、いくつかの用途に対してAFガラスへの不十分な接着力を有することを示した。比較例4及び5(それぞれC4及びC5)は、異なるフルオロシリコーン(すなわち、上記の組成物で試験された脂肪族不飽和基を有するフルオロシリコーン)と同じ利益を示さなかった。比較例6(C6)は、AFガラス及びSUSへの選択的接着力の利点は、従来の放出調整剤、すなわち、ビス-トリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチル/メチルフェニル)シロキサンを使用しては達成されないことを示した。比較例7(C7)は、樹脂/ポリマー比が低いと、すなわち、1.9/1であると、AFガラスへの接着力は、いくつかの用途では低すぎることを示した。比較例8(C8)ポリ(ジアルキル/アルキル、フルオロアルキル)シロキサンの含有量が低すぎると、SUSへの接着力は、いくつかの用途に十分には低下されないことを示した。
【0073】
本明細書に記載のSi-PSA組成物を硬化することにより調製されたSi-PSAは、携帯電話、モバイルテレビ受信機、ワイヤレスデバイス、スマートフォン、携帯情報端末、ワイヤレス電子メール受信機、ハンドヘルド又はポータブルコンピュータ、ネットブック、ノートブック、スマートブック、タブレット、全地球測位システムの受信機/ナビゲータ、カメラ、デジタルメディアプレーヤー、カムコーダー、ゲーム機、及び電子書籍リーダーなどの様々なディスプレイデバイスの製造における用途を見出すことができる。基材の表面にSi-PSAを含む保護フィルムを、上記のディスプレイデバイス用のAFガラス上で使用することができる。本明細書に記載のSi-PSA組成物から調製されたSi-PSAのAFガラスとSUS特性に対する選択的接着力は、上記のディスプレイデバイスに使用することができる2.5D AFガラス及び3D Afガラスでの使用に好適な保護フィルムを作製する。
【0074】
用語の定義及び用法
全ての量、比率、及び百分率は、特に指示しない限り、重量に基づく。発明の概要及び要約書は、参照により本明細書に組み込まれる。「含むこと(comprising)」又は「含む(comprise)」という用語は、本明細書において、それらの最も広い意味で、「含むこと(including)」、「含む(include)」、「から本質的になる(consist(ing) essentially of)」、及び「からなる(consist(ing) of)」)という見解を意味し、包含するように使用されている。実例を列記する「例えば(for example)」「例えば(e.g.,)」、「例えば(such as)」及び「が挙げられる(including)」の使用は、列記されている例のみに限定しない。したがって、「例えば(for example)」又は「例えば(such as)」は、「例えば、それらに限定されないが(for example,but not limited to)」又は「例えば、それらに限定されないが(such as,but not limited to)」を意味し、他の類似した、又は同等の例を包含する。本明細書で使用される略語は、表3の定義を有する。
【表4】
【0075】
本発明は、例示的な様式で説明されており、使用されている用語は限定目的よりも、むしろ説明のための言葉としての性質が意図されているものと理解されるべきである。本明細書で具体的な特徴又は態様の記述が依拠している任意のマーカッシュ群に関して、異なる、特殊な及び/又は不測の結果が、全ての他のマーカッシュ群の要素から独立して、それぞれのマーカッシュ群の各要素から得られる場合がある。マーカッシュ群の各要素は、個々に、及び、又は組み合わされて依拠とされ得、添付の特許請求の範囲内で、特定の実施形態に適切な根拠を提供し得る。
【0076】
更に、本発明を説明する際に依拠される任意の範囲及び部分範囲は、独立して及び包括的に、添付の特許請求の範囲内に入り、本明細書にその中の全部及び/又は一部の値が明記されていなくても、そのような値を包含する全範囲を説明及び想到するものと理解される。当業者であれば、列挙された範囲及び部分的範囲が、本発明の様々な実施形態を十分に説明し、可能にし、そのような範囲及び部分的範囲は、更に関連性がある2等分、3等分、4等分、5等分などに描かれ得ることを容易に認識する。単なる一例として、範囲「1~30」は、下から3分の1、すなわち、1~10、中間の3分の1、すなわち、11~20、及び上から3分の1、すなわち、21~30と更に詳述でき、これらは、個別的かつ集合的に添付の特許請求の範囲内であり、添付の特許請求の範囲内の特定の実施形態が個別的及び/又は集合的に依拠することがあり、適切な根拠を提供し得る。更に、範囲を定義する、又は修飾する言葉、例えば「少なくとも」、「超」「未満」「以下」などに関して、そのような言葉は、部分範囲及び/又は上限若しくは下限を含むと理解されるべきである。

図1