(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】アクリロニトリル系カチオン交換体
(51)【国際特許分類】
B01J 39/07 20170101AFI20230801BHJP
B01J 39/20 20060101ALI20230801BHJP
C08F 222/30 20060101ALI20230801BHJP
C08F 226/06 20060101ALI20230801BHJP
C08J 5/20 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
B01J39/07
B01J39/20
C08F222/30
C08F226/06
C08J5/20 CEY
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022003010
(22)【出願日】2022-01-12
【審査請求日】2022-02-21
(32)【優先日】2021-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】505422707
【氏名又は名称】ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アウレリア・レックツィーゲル
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-155785(JP,A)
【文献】特開2005-330394(JP,A)
【文献】特開平01-156303(JP,A)
【文献】特開昭60-055002(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0134099(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第86101585(CN,A)
【文献】独国特許出願公開第102007009073(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 22/30
C08F 122/30
C08F 222/30
C08F 26/06
C08F 126/06
C08F 226/06
B01J 39/00 - 39/26
C02F 1/42
C08J 5/20
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノマーとしてアクリロニトリル80重量%~95重量%及び架橋剤としてトリアリルイソシアヌレート5重量%~20重量%に基づいて生成されるポリマーの加水分解によって製造される、カチオン交換体であって、アクリロニトリル及びトリアリルイソシアヌレートの重量部が、使用されるモノマー及び架橋剤の総量に基づいて合計で少なくとも98重量%になる、カチオン交換体。
【請求項2】
アクリロニトリル91重量%~93重量%及びトリアリルイソシアヌレート7重量%~9重量%が使用され、アクリロニトリル及びトリアリルイソシアヌレートの重量部が、使用されるモノマー及び架橋剤の総量に基づいて合計で少なくとも98重量%になることを特徴とする、請求項1に記載のカチオン交換体。
【請求項3】
アクリロニトリル及びトリアリルイソシアヌレートの重量部が、前記使用されるモノマー及び架橋剤の総量に基づいて、合計
で少なくとも99重量
%になることを特徴とする、請求項1又は2に記載のカチオン交換体。
【請求項4】
アクリロニトリル及びトリアリルイソシアヌレートの重量部が、前記使用されるモノマー及び架橋剤の総量に基づいて、合計で100重量%になることを特徴とする、請求項3に記載のカチオン交換体。
【請求項5】
ゲル状構造を有し、<25m
2/gのBET表面積を有することを特徴とする、請求項1~
4のいずれか一項に記載のカチオン交換体。
【請求項6】
工程a.)において、
モノマーとしてのアクリロニトリル80重量%~95重量%及び架橋剤としてのトリアリルイソシアヌレート5重量%~20重量%を、
アクリロニトリル及びトリアリルイソシアヌレートの重量部が、使用される前記モノマー及び架橋剤の総量に基づいて合計で少なくとも98重量%になるところ、
水性相の存在下で少なくとも1つの開始剤の存在下
、
少なくとも1つの保護コロイドの存在下で、重合させ、
且つ
工程b.)において、工程a.)からのポリマーを、少なくとも1つの塩基又は少なくとも1つの酸の存在下で加水分解してカチオン交換体をもたらすことを特徴とする、請求項1~
5のいずれか一項に記載のカチオン交換体を製造するための方法。
【請求項7】
工程a.)において使用される前記開始剤が
、ジベンゾイルペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、ビス(p-クロロベンゾイル)ペルオキシド、ジシクロヘキシルペルオキシジカーボネート、tert-ブチルペルオクトエート、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン又はtert-アミルペルオキシ-2-エチルヘキサンなどのペルオキシ化合物、及びまた2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)又は2,2’-アゾビス(2-メチルイソブチロニトリル)などのアゾ化合物から選択されることを特徴とする、請求項
6に記載のカチオン交換体を製造するための方法。
【請求項8】
工程a.)において使用される前記保護コロイドが、ゼラチン、デンプン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸及び(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとのコポリマー、セルロース誘導
体から選択されることを特徴とする、請求項
6又は
7に記載のカチオン交換体を製造するための方法。
【請求項9】
前記セルロース誘導体が、カルボキシメチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びナフタレンスルホン酸-ホルムアルデヒド縮合物及び/又はそのNa塩から選択されることを特徴とする、請求項8に記載のカチオン交換体を製造するための方法。
【請求項10】
工程a.)において使用される保護コロイドが、
ナフタレンスルホン酸-ホルムアルデヒド縮合物及び/又はそのNa塩であることを特徴とする、請求項
6~
9のいずれか一項に記載のカチオン交換体を製造するための方法。
【請求項11】
水性相のpHが、塩基の添加によって8~10に調節されることを特徴とする、請求項
6~
10のいずれか一項に記載のカチオン交換体を製造するための方法。
【請求項12】
アクリロニトリル及びトリアリルイソシアヌレートの、前記水性相に対する重量比が0.5~1.0であることを特徴とする、請求項
6~
11のいずれか一項に記載のカチオン交換体を製造するための方法。
【請求項13】
工程b.)において、酸加水分解が硫酸の添加によって行われることを特徴とする、請求項
6~
12のいずれか一項に記載のカチオン交換体を製造するための方法。
【請求項14】
前記酸が、工程b.)において前記ポリマー中のニトリル基のモル量に基づいて0.5:1~5:1のモル比で使用されることを特徴とする、請求項
6~
13のいずれか一項に記載のカチオン交換体を製造するための方法。
【請求項15】
水溶液又は有機溶液の脱カチオン化及び/又は軟化のための、化学工業におけるプロセスストリームの脱カチオン化及び/又は軟化のための及び水溶液からの重金属イオン及び/又は貴金属イオンの除去のための、請求項1~
5のいずれか一項に記載のカチオン交換体の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリロニトリル系カチオン交換体、その製造方法並びに水溶液又は有機溶液の脱カチオン化及び/又は軟化のためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアクリレートから構成される弱酸性カチオン交換体は、何十年もの間知られている。例えば、モノマーとしてアクリロニトリルと架橋剤混合物としてジビニルベンゼン及びジエチレンジグリコールジビニルエーテルとに基づいた弱酸性カチオン交換体は、(特許文献1)から公知である。(特許文献1)のカチオン交換体は、特に均質な網状構造を有する。
【0003】
特にアクリル酸及びメチルアクリレートなどの混合モノマーと、ジビニルベンゼンとトリアリルイソシアヌレートとの架橋剤混合物とを有する弱酸性マクロポーラスカチオン交換体は、(特許文献2)から公知である。これらの弱酸性カチオン交換体は、良い熱安定性及び高い白色度を示すと言われている。
【0004】
(特許文献3)には、メチルアクリレート、アクリロニトリル、ビニルフェノール及びトリアリルイソシアヌレートの混合物から構成される弱酸性マクロポーラスカチオン交換体が記載されている。(特許文献3)のカチオン交換体は、高い交換容量及び特に白い色を有すると言われる。
【0005】
モノマーとしてメチルアクリレート及びアクリロニトリルと架橋剤混合物としてトリアリルイソシアヌレート及びジビニルベンゼンとから構成される同様なイオン交換体は(特許文献4)から公知である。架橋剤混合物の使用は、より均一な架橋をもたらすと言われる。
【0006】
(特許文献5)には、トリアリルシアヌレート及びジビニルベンゼンの架橋剤混合物を使用して製造されるアクリル酸系弱酸性カチオン交換体が記載されている。カチオン交換体は、良い機械的強度を示し、集塊化(clumping)並びに粘着性を示さないと言われる。
【0007】
(特許文献6)には、アクリロニトリルをベースとした弱酸性マクロポーラスカチオン交換体が開示されている。(特許文献6)は、アクリロニトリルの共重合のために架橋剤混合物を使用することを推奨し、これらはまた、とりわけジビニルベンゼン及びトリアリルイソシアヌレートを含有することができる。(特許文献6)に従って製造されるカチオン交換体は、良い交換容量を特徴とすると言われている。
【0008】
先行技術から公知のカチオン交換体はさらに、カチオン交換体によって精製した水は味及び匂いに関して改善され得るという不利な点を有する。
【0009】
驚くべきことに、先行技術の不利な点の克服を可能にすると共に味及び匂いに関して非常に優れている水の製造を可能にするカチオン交換体が今では製造されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】欧州特許出願公開第A1110608号明細書
【文献】中国特許出願公開第A103951780号明細書
【文献】中国特許出願公開第A103964405号明細書
【文献】中国特許出願公開第A109485786号明細書
【文献】中国特許出願公開第A86101585号明細書
【文献】中国特許出願公開第A1082945号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって本発明は、モノマーとしてアクリロニトリル80重量%~95重量%及び架橋剤としてトリアリルイソシアヌレート5重量%~20重量%に基づいて生成されるポリマーの加水分解によって製造される、カチオン交換体を提供し、ここでアクリロニトリル及びトリアリルイソシアヌレートの重量部が、使用されるモノマー及び架橋剤の総量に基づいて合計で少なくとも98重量%になる。
【0012】
ポリマーの製造は、91重量%~93重量%の量のアクリロニトリル及び7重量%~9重量%の量のトリアリルイソシアヌレートを使用する工程を含むことが好ましく、ここでアクリロニトリル及びトリアリルイソシアヌレートの重量部は、使用されるモノマー及び架橋剤の総量に基づいて合計で少なくとも98重量%になる。
【0013】
アクリロニトリル及びトリアリルイソシアヌレートの重量部は、使用されるモノマー及び架橋剤の総量に基づいて好ましくは合計で少なくとも99重量%、非常に特に好ましくは100重量%になることが特に好ましい。
【0014】
ポリマーは、追加のモノマー及び/又は架橋剤から製造されていることがあり得る。本発明に関連して好ましく使用されるモノマーには、分岐又は分岐していないC1~C6-アルキル基を有するアクリル酸エステル、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、クロロスチレン又はビニルピリジンが含まれる。
【0015】
本発明に関連して、モノマーにはまた、架橋剤としても公知の多エチレン性エチレン性不飽和モノマーも含まれる。これらの架橋剤は好ましくは、系列のブタジエン、イソプレン、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、トリビニルナフタレン、ジビニルシクロヘキサン、トリビニルシクロヘキサン、トリアリシアヌレート、トリアリルアミン、1,7-オクタジエン、1,5-ヘキサジエン、シクロペンタジエン、ノルボルナジエン、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリルメタクリレート、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル又はトリメチロールプロパントリビニルエーテルからの化合物である。
【0016】
追加のモノマー及び/又は架橋剤が使用されないことが好ましい。アクリロニトリル及びトリアリルイソシアヌレートに加えて存在し得るモノマー及び/又は架橋剤は、使用されるアクリロニトリル及び/又はトリアリルイソシアヌレートからの不純物に由来することが好ましい。アクリロニトリル及びトリアリルイソシアヌレート以外の付加的なモノマー及び/又は架橋剤を使用して、≦2重量%の重量分率、特に好ましくは≦1重量%の重量分率のポリマーを製造することができる。
【0017】
ポリマーは好ましくはゲル状構造を有する。それらがゲル状構造を有する場合、これはそれらが<25m2/gのBET表面積を有するという意味として理解されなければならない。
【0018】
ポリマーは好ましくは、100μm~2000μmの範囲の直径を有する。
【0019】
同様に本発明は、モノマーとしてアクリロニトリル80重量%~95重量%及び架橋剤としてトリアリルイソシアヌレート5重量%~20重量%に基づいて製造されるポリマーを含み、ここでアクリロニトリル及びトリアリルイソシアヌレートの重量部は、使用されるモノマー及び架橋剤の総量に基づいて合計で少なくとも98重量%になる。
【0020】
アクリロニトリル及びトリアリルイソシアヌレートの重量部は、使用されるモノマー及び架橋剤の総量に基づいて、好ましくは合計で少なくとも99重量%、非常に特に好ましくは100重量%になることが特に好ましい。カチオン交換体は、好ましくは、以下に説明される製造プロセスの工程b.)に従って、ポリマーの加水分解によって製造される。
【0021】
カチオン交換体は好ましくはゲル状構造を有する。カチオン交換体がゲル状構造を有する場合、これは、それが<25m2/gのBET表面積を有するという意味として理解されなければならない。
【0022】
疑いを避けるために明記すると、本発明の範囲は、一般名で又は任意の所望の組合せで好ましい範囲内で称される、全ての以下に列挙される定義及びパラメーターを包含することに留意されたい。
【0023】
同様に本発明は、カチオン交換体を製造するための方法を含み、ここで
工程a.)において、
モノマーとしてアクリロニトリル80重量%~95重量%及び架橋剤としてトリアリルイソシアヌレート5重量%~20重量%が、
水の存在下で少なくとも1つの開始剤の存在下、
任意選択的に少なくとも1つの保護コロイドの存在下で、重合され、
ここで、アクリロニトリル及びトリアリルイソシアヌレートの重量部が、使用されるモノマー及び架橋剤の総量に基づいて合計で少なくとも98重量%になり、
及び
工程b.)において、工程a.)からのポリマーが、少なくとも1つの塩基又は少なくとも1つの酸の存在下で加水分解されてカチオン交換体をもたらす。
【0024】
91重量%~93重量%の量のアクリロニトリル及び7重量%~9重量%の量のトリアリルイソシアヌレートを使用することが好ましく、ここで、アクリロニトリル及びトリアリルイソシアヌレートの重量部が、使用されるモノマー及び架橋剤の総量に基づいて合計で少なくとも98重量%になる。
【0025】
工程a.)からのポリマーは、追加のモノマー及び/又は架橋剤から製造されていることがあり得る。本発明に関連して好ましく使用されるモノマーには、分岐又は分岐していないC1~C6-アルキル基を有するアクリル酸エステル、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、クロロスチレン又はビニルピリジンが含まれる。
【0026】
また、本発明に関連してモノマーには、架橋剤としても公知の多エチレン性エチレン性不飽和モノマーが含まれる。これらの架橋剤は好ましくは、系列のブタジエン、イソプレン、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、トリビニルナフタレン、ジビニルシクロヘキサン、トリビニルシクロヘキサン、トリアリシアヌレート、トリアリルアミン、1,7-オクタジエン、1,5-ヘキサジエン、シクロペンタジエン、ノルボルナジエン、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリルメタクリレート、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル又はトリメチロールプロパントリビニルエーテルからの化合物である。追加のモノマー及び/又は架橋剤が使用されないことが好ましい。
【0027】
アクリロニトリル及びトリアリルイソシアヌレートに加えて存在し得るモノマー及び/又は架橋剤は、使用されるアクリロニトリル及び/又はトリアリルイソシアヌレートからの不純物に由来することが好ましい。アクリロニトリル及びトリアリルイソシアヌレート以外の付加的なモノマー及び/又は架橋剤を使用して、≦2重量%の重量分率、特に好ましくは≦1重量%の重量分率の工程a.)からのポリマーを製造することができる。
【0028】
アクリロニトリル及びトリアリルイソシアヌレート並びに任意選択的に追加の架橋剤及び/又はモノマーが、有機相を形成する。この相は典型的に、撹拌によって水性相と混合され、次いでモノマー液滴を形成する。しかしながら、モノマー液滴の形成はまた、例えば超音波処理によっても達成され得る。モノマー混合物を撹拌して液滴を形成することが好ましい。
【0029】
アクリロニトリル及びトリアリルイソシアヌレートの、水性相に対する重量比は0.5:1~1:1であることが好ましい。
【0030】
有機相は、重合を引き起こすための少なくとも1つの開始剤又は開始剤の混合物を含有する。本発明による方法のために好ましく使用できる開始剤は、ペルオキシ化合物、特に好ましくは、系列のジベンゾイルペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、ビス(p-クロロベンゾイル)ペルオキシド、ジシクロヘキシルペルオキシジカーボネート、tert-ブチルペルオクトエート、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン又はtert-アミルペルオキシ-2-エチルヘキサン、及びまたアゾ化合物、好ましくは2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)又は2,2’-アゾビス(2-メチルイソブチロニトリル)又はそれらの混合物からのペルオキシ化合物である。開始剤としてジベンゾイルペルオキシドを使用することが非常に特に好ましい。
【0031】
開始剤は好ましくは、アクリロニトリルの使用される量に基づいて0.05重量%~2.5重量%、特に好ましくは0.1重量%~1.5重量%の量で使用される。
【0032】
工程a.)において製造されるポリマーは好ましくは、ゲル状構造を有する。それらがゲル状構造を有する場合、これはそれらが、<25m2/gのBET表面積を有するという意味として理解されなければならない。
【0033】
また、工程a.)において製造されるポリマーがマクロポーラス構造を有することも可能である。マクロポーラス構造を製造するために、少なくとも1つのポロゲンを使用することが必要である。適したポロゲンには、形成されるポリマーに対する不良溶剤及び/又は膨張剤である有機溶剤が含まれる。好ましく使用できるポロゲンには、系列のヘキサン、オクタン、イソオクタン、イソドデカン、トルエン、メチルエチルケトン、ジクロロエタン、ジクロロプロパン、ブタノール又はオクタノール及びそれらの異性体からの化合物が含まれる。ポロゲンの混合物を使用することも可能である。工程a.)において有機溶剤を使用しないことが好ましい。工程a.)においてトルエン、特にポロゲンが使用されないことが特に好ましい。工程a.)において有機溶剤が使用されないことが好ましい。
【0034】
マクロポーラス構造を製造するために、ポロゲン/ポロゲン混合物は好ましくは、全てのモノマーの総計に基づいて5重量%~70重量%、特に好ましくは10重量%~50重量%の量で使用される。
【0035】
工程a)から得ることができるポリマーは、好ましくは、球形の形状であり、ビーズポリマーとも称される。
【0036】
工程a.)における水性相は、少なくとも60重量%の水と任意選択的に使用可能な重合防止剤、保護コロイド、緩衝化合物、例えば好ましくはリン酸塩緩衝液並びに使用される塩との混合物であることが好ましい。水の量は、水と任意選択的に使用可能な重合防止剤、保護コロイド、緩衝化合物、例えば好ましくはリン酸塩緩衝液と使用される塩との総量に基づいている。
【0037】
工程a)によるポリマーの製造の好ましい実施形態において水性相は、少なくとも1つの溶解された重合防止剤を含むことができる。本発明に関連して適した重合防止剤は好ましくは、無機物及び有機物の両方を含有する。特に好ましい無機重合防止剤には、系列のヒドロキシルアミン、ヒドラジン、亜硝酸ナトリウム又は亜硝酸カリウム、亜リン酸の塩、特に亜リン酸水素ナトリウム、及び硫黄含有化合物、特に亜ジチオン酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、ロダン化ナトリウム又はロダン化アンモニウムからの窒素化合物が含まれる。特に好ましい有機重合防止剤には、系列のヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、レソルシノール、カテコール、tert-ブチルカテコール、ピロガロール及びフェノールとアルデヒドとの縮合物からのフェノール化合物が含まれる。適した有機重合防止剤には、窒素含有化合物がさらに含まれる。これらには、好ましくは系列のN,N-ジエチルヒドロキシルアミン、N-イソプロピルヒドロキシルアミン及びまたスルホン化又はカルボキシル化N-アルキルヒドロキシルアミン又はN,N-ジアルキルヒドロキシルアミン誘導体、ヒドラジン誘導体、好ましくはN,N-ヒドラジノ二酢酸、ニトロソ化合物、好ましくはN-ニトロソフェニルヒドロキシルアミン、N-ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアンモニウム塩又はN-ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩からのヒドロキシルアミン誘導体が含まれる。重合防止剤が使用される場合、使用される重合防止剤の濃度は、水性相に基づいて5~1000ppm、好ましくは10~500ppm、特に好ましくは10~250ppmである。重合防止剤を使用しないことが好ましい。
【0038】
好ましい実施形態において工程a.)におけるモノマー液滴の重合は、1つ以上の保護コロイドの存在下で水性相中で行われる。適した保護コロイドには、系列のゼラチン、デンプン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸又はアクリル酸若しくはアクリル酸エステルのコポリマーからの天然又は合成水溶性ポリマーが含まれる。本発明によるとゼラチンが好ましい。同様にまた本発明によると、セルロース誘導体、特にセルロースエステル又はセルロースエーテルも好ましく、カルボキシメチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース又はヒドロキシエチルセルロースも非常に特に好ましい。
【0039】
保護コロイドは、個々に又は異なった保護コロイドの混合物として使用することができる。
【0040】
好ましい保護コロイドにはさらに、芳香族スルホン酸とホルムアルデヒドとの縮合物が含まれる。ナフタレンスルホン酸-ホルムアルデヒド縮合物及び/又はそのNa塩(好ましくはCAS No.91078-68-1による)を保護コロイドとして使用することが非常に特に好ましい。このような生成物は、とりわけ名称Baykanol(登録商標)としてLANXESS Deutschland GmbHによって市販されている。さらに保護コロイドとして、Na塩としてナフタレンスルホン酸-ホルムアルデヒド縮合物(好ましくはCAS No.91078-68-1による)及びヒドロキシエチルセルロースがより好ましく使用される。
【0041】
保護コロイドの合計使用量は、水性相に基づいて好ましくは0.05重量%~1重量%、特に好ましくは0.05重量%~0.5重量%である。
【0042】
保護コロイドの使用には、モノマー液滴を封入する効果がある。任意選択的に封入されるモノマー液滴の平均粒度は、10~1000μm、好ましくは100~1000μmである。
【0043】
好ましい実施形態において工程a)における重合はまた、緩衝系の存在下で行なうことができる。好ましくは重合の開始時に水性相を6~14の間、さらにより好ましくは8~10の間のpHに維持する緩衝系を使用することが好ましい。調節は好ましくは、塩基の添加によって行われる。好ましく使用される塩基には、アルカリ金属水酸化物又はアンモニアが含まれる。好ましくは水溶液で水酸化ナトリウムを使用することが特に好ましい。そのときpH範囲は好ましくは、緩衝系を用いて安定化される。これらの条件下で、カルボン酸基を有する保護コロイドは完全に又は部分的に塩として存在している。これは、保護コロイドの作用に好ましい効果を有する。特に適した緩衝系は、リン酸塩又はホウ酸塩の塩を含有する。また本発明に関連して、用語「リン酸塩」及び「ホウ酸塩」は、相当する酸及び塩のオルト形の縮合物も包含する。水性相のリン酸塩/ホウ酸塩の濃度は0.5~500mmol/l、好ましくは2.5~100mmol/lである。
【0044】
さらなる好ましい実施形態において工程a)における重合はまた、塩の存在下で水性相中で行なうこともできる。これは、水中への有機化合物の溶解性を低減する。好ましい塩は、アルカリ金属及びアルカリ土類金属のハロゲン化物、硫酸塩又はリン酸塩である。それらは、水性相の飽和までの濃度範囲で使用することができる。したがって最適な範囲は各々の塩ごとに異なっており、試験されなければならない。
【0045】
塩化ナトリウムは特に好ましい。使用される塩の好ましい濃度範囲は、水性相に基づいて好ましくは10重量%~25重量%である。
【0046】
重合の間の攪拌機速度は、特に重合の開始時に粒度にかなりの影響を与える。基本的にはより小さめの粒子がより高い攪拌機速度で得られる。この攪拌機速度を適合させることによって当業者は、ビーズポリマーの粒度を所望の範囲に誘導することができる。様々な攪拌機の機種を使用することができる。特に適した撹拌機は、軸方向動作ゲート撹拌機である。4L実験室ガラス反応器内で100~400rpm(回転数/分)の攪拌機速度が典型的に使用される。
【0047】
重合温度は、使用される開始剤の分解温度に依存する。それは好ましくは50℃~180℃の間、特に好ましくは55℃~130℃の間である。重合は好ましくは0.5~数時間、特に好ましくは2~20時間、非常に特に好ましくは5~15時間かかる。重合が低い温度、例えば50℃から開始される温度プログラムを使用することが有利であることが判明しており、重合反応率の増加とともに反応温度が上昇される。55℃~75℃に加熱し、この温度範囲で2~8時間撹拌することが特に好ましい。特に好ましくはこの後に、85℃~98℃の範囲に加熱し、さらに1~4時間重合させた。これによって、例えば反応の確実な進行及び高重合反応率の要求条件を非常に効率的に果たすことができる。好ましい実施形態において重合の後に、慣例的な方法によって、好ましくは濾過、傾瀉又は遠心分離、及び任意選択的に洗浄によってポリマーの単離を実施する。
【0048】
本発明の好ましい実施形態において、最初に塩及び保護コロイド又は保護コロイドの混合物を緩衝剤と混合する。次に、アクリロニトリル、トリアリルイソシアヌレートを好ましくは含有する有機相及び開始剤又は開始剤混合物を添加する。次に、バッチを好ましくは15分~1時間の間撹拌する。次に、バッチを好ましくは1~2時間にわたって好ましくは55℃~75℃の温度に加熱する。この温度範囲において反応は好ましくは3~6時間行われる。次に混合物を好ましくは30分~1.5時間にわたって85℃~98℃に加熱する。温度は好ましくは1~3時間の間維持される。次に、工程a.)からのポリマーを洗浄し、当業者に公知の方法によって検査及び精製することができる。
【0049】
工程a)に従って製造されるアクリロニトリル及びトリアリルイソシアヌレートに基づいた架橋ポリマーは、工程b)において塩基又は酸との反応によって加水分解される。
【0050】
工程b.)(加水分解)
好ましく使用される塩基は、アルカリ金属及びアルカリ土類金属水酸化物の水溶液、アルコール溶液又はアルコール水溶液である。水酸化カリウム水溶液及び特に水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ金属水溶液を使用することが好ましい。使用されるアルカリ金属溶液の濃度は、10重量%~60重量%、好ましくは20重量%~35重量%である。
【0051】
アルカリ金属溶液の量は、加水分解されるニトリル基の量に基づいて10~500モル%、好ましくは100~300モル%のアルカリ過剰が達成されるように選択される。
【0052】
確実且つ再現可能な反応管理のために、反応成分、工程a.)からのポリマー、又は塩基のうちの1つを、温度T1でより長めの時間にわたって計量添加の形で添加することが有利である。添加は好ましくは、1~15時間にわたって、特に好ましくは2~10時間にわたって実施することができる。
【0053】
本発明の好ましい実施形態において、温度T1の圧力反応器内で工程a.)からのポリマーの撹拌水性懸濁液中に塩基を計量しながら添加する。塩基の計量添加を定速度で実施することができる。しかしながら、添加中に計量添加速度を増加させることが特に有利であることがわかった。これによって、高生産性で非常に均一な反応及び発熱を達成することができる。
【0054】
温度T1は、好ましくは70℃~120℃、特に好ましくは80℃~105℃である。
【0055】
加水分解の終了のために、反応混合物の温度は好ましくは温度T2に上昇される。T2は好ましくは100℃~180℃であり、特に好ましくは120℃~160℃である。T1からT2への温度上昇は好ましくは、塩基の添加が終了すると実施される。
【0056】
T2は、T1よりも好ましくは20℃~110℃、特に好ましくは30℃~70℃高い。
【0057】
加水分解後に、工程b.)からのカチオン交換体は塩の形態であり、任意選択的に電荷が逆転され得、任意選択的にさらに精製され得る。
【0058】
工程b.)(酸加水分解)
工程a.)からのポリマーは好ましくは、少なくとも1つの酸との反応によって加水分解される。使用される酸は好ましくは無機酸、例えば好ましくは硫酸、塩酸、硝酸又はフッ化水素酸である。硫酸の使用が特に好ましい。酸は好ましくは、ポリマー中のニトリル基のモル量に基づいて0.5:1~5:1、特に好ましくは1:1~3:1のモル比で使用される。ポリマーは好ましくは、使用されるポリマーの質量に基づいて50重量%~300重量%の水と混合される。次に、80℃~130℃の温度T1が好ましくは達成される。酸の添加は好ましくは、温度T1に加熱する間に行われる。次に、混合物は好ましくは120℃~170℃の温度T2に加熱される。加水分解は好ましくは、5バール以下の圧力で行われる。反応時間は好ましくは、2~20時間、特に好ましくは3~16時間の範囲である。
【0059】
工程b.)の本発明の好ましい実施形態において、工程a.)からのポリマーは最初に水と混合される。反応は好ましくはオートクレーブ内で行われる。この後に、温度T1に加熱する。酸の一部、好ましくは酸の総量に基づいて30%~80%が好ましくは計量添加の形で、温度T1への加熱段階の間に好ましくは添加される。酸の添加は好ましくは1~2時間にわたって行われる。次に、酸の残りの部分を、好ましくは1~5時間にわたって添加する。好ましくはこの後に、温度T2に加熱する。混合物は好ましくは、さらに0.5~6時間撹拌される。
【0060】
加水分解後に、工程b.)からのポリマーはH形態であり、任意選択的にさらに精製され得る。工程b.)からのポリマーはカチオン交換体である。
【0061】
工程b)は好ましくは酸加水分解によって実施される。
【0062】
精製は好ましくは強酸を用いて実施される。好ましくは1重量%~50重量%、特に好ましくは1重量%~20重量%の濃度の硫酸が適している。さらなる精製のために、カチオン交換体を高温の水/スチームで処理することができる。微粉成分をその後、分級カラム内で除去することができる。
【0063】
用途
本発明によるカチオン交換体は、好ましくは飲料水処理のために使用される。それらは、例えば家庭用フィルターにおいて飲料水の脱カチオン化及び/又は軟化のために、並びに飲料水の脱炭素及び食品として又は食品の製造において使用される液体の脱炭素のために特に適している。さらに重要な用途は、糖液及び有機生成物の溶液、好ましくはテンサイ糖、蔗糖及びデンプン糖、グリセロール及び/又はゼラチンの脱カチオン化及び/又は軟化、超高純度水の製造における水の脱イオン、(向流プロセスにおける)生水の脱炭素であって、工業用スチーム生成のための水の脱イオンのための高酸性カチオン交換体を有する統合システムにおいて、アルカリ金属イオンを結合するための脱イオンプラントの下流の緩衝フィルターとして、脱イオンプラントからの再生廃水の中和において、カルシウムイオン及び錯体形成剤のない場合にpH>5の溶液から重金属、例えば好ましくは銅、ニッケル又は亜鉛を結合するためのナトリウム形態においての用途である。
【0064】
特に本発明によるカチオン交換体は、以下のために使用することができる。
- 水溶液又は有機溶液の脱カチオン化及び/又は軟化
- 化学工業におけるプロセスストリームの脱カチオン化及び/又は軟化
- 水溶液からの重金属イオン及び/又は貴金属イオンの除去
【0065】
本発明に関連して、重金属又は貴金属は、原子番号22~30、42~50及び74~83を有する周期表の元素である。
【0066】
本発明によるカチオン交換体はさらに、廃水流の精製のために使用することができる。本発明によるカチオン交換体のさらなる用途は、埋立地からの浸出水の精製である。
【0067】
本発明によるカチオン交換体は、好ましくは水の精製のために使用される。これによって、特に、もしあるとしても気にならない匂い、及び高級な味を特徴とする飲料水を得ることができる。さらに、工程b.)からのポリマー中のアンモニア含有量は、製造中に著しく低下し、したがって廃水及び環境の汚染を低下させる。本発明による方法はさらに、工程b.)からのポリマーを高収率で製造することができる。これは、製造費を低減する。本発明による方法はさらに、製造中に反応器内でポリマーの接着性及びエンクラステーション(encrustations)を著しく低下させ、したがって費用節約及び生成される廃棄物の低減をもたらす。
【0068】
方法
DIN 54403による弱酸性基の量の測定
50mlの交換体をタンピング体積計内で振り、その後ガラスカラム内に入れて脱イオン水で洗浄する。次に600mLの水酸化ナトリウム水溶液c(NaOH)1モル/Lを加える。次に、カラムを200mLのDM水で洗浄する。印までDM水で占められた1000mLメスフラスコ内で全てのアウトフローを合わせ、十分に混合する。50mLのこの溶液を混床水で約100mLに希釈し、Metrohm Titrino装置を使用してHClc(HCl)=1モル/Lで滴定する。
【0069】
弱酸性基の量は次式によって計算される。
TK,H形態=20×(0.6-20×ml HCl/1000)eq/L
【0070】
窒素吸着
窒素吸着の測定は、Quantachrome Quadrosorb SI計測器内の液体窒素中で実施される。測定の前に試料(出発重量約100mg)を真空下にて2K/分で目標温度(ビーズポリマー120℃、官能化ビーズポリマー50℃)に加熱し、この温度で12時間脱気した。比表面積の計算は、BET方法(ソフトウェア:QuadrWin)を使用して行われた。
【0071】
溶出液中のアンモニウム
100mLメスシリンダー内で測定される100mLのイオン交換体を、気泡を避けながらフィルターカラム内に移す。1000mLの塩化カルシウム溶液をカラムを通過させ、溶出液を1Lメスシリンダー内で集める。次に、溶出液を十分に混合し、pHを測定する。溶出液中のアンモニウム含有量は、LCK304キュベット手順(キュベット試験-アンモニウム、0.015~2.0mg/L NH4-N)に従って測定される。LCK304キュベットを最初に室温に加熱し、次に、Eppendorfピペットを用いて5mLの溶出液をその中に移す。少なくとも15分の待ち時間後に値を測定して読取ることができる(mg/L単位)。
【実施例】
【0072】
実施例1
1.1架橋ポリマーの調製
水性相
215g NaClを含有する
624ml 水
3.91g リン酸水素二ナトリウムx12H2O
0.160g NaOH(10%)
1.4g ヒドロキシエチルセルロース
143ml 水
3.4g ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物のNa塩(95%/残余は水)(CAS No.91078-68-1)を含有する
94ml 水
【0073】
有機相
735g アクリロニトリル(純度>98%)
65g トリアリルイソシアヌレート(純度>98%)
3.2g ジベンゾイルペルオキシド
【0074】
重合容器内に塩化ナトリウム溶液(624mlの水中の、215gのNaCl)を最初にリン酸水素二ナトリウム(3.91g)と共に入れ、ヒドロキシエチルセルロース(1.4g)を加え、希水酸化ナトリウム水溶液(0.16gNaOH(10%))でpHをpH8.5に調節した。スルホン酸溶液(94mlの水中のナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物のNa塩(95%)(CAS No.91078-68-1))を15分間撹拌し、次いで重合容器に加えた。完全な水性相をさらに30分間撹拌する。
【0075】
有機相を室温で15分間撹拌し、次に水性相に添加し、室温で20分間160rpm(回転数/分)で撹拌した。
【0076】
混合物を撹拌しながら90分にわたって64℃に加熱する。64℃での全反応時間は4時間40分である。混合物をその後、1時間にわたって90℃に加熱し、この温度に2時間保持する。次に、30%亜硫酸水素ナトリウム水溶液で還元して未変換のアクリロニトリルを取り除く。次に、樹脂を100μmの篩上でDM水を用いて洗浄する。
【0077】
収量:1280mlのポリマー、重合反応率:95.4%。
有効粒度(直径)(DIN 54407粒度分布DE vers.04/2015):332μm、
DM水は脱イオン水を表す。
【0078】
1.2カチオン交換体の調製
1.1に従って製造されたポリマー(850mL)を最初にオートクレーブ内に850mLのDM水と共に入れ、50分にわたって120℃に加熱する。加熱と同時に736gの96重量%硫酸(ポリマー中の8.74モルのニトリル基(ポリマー中のアクリロニトリルの量に基づいた計算)に基づいて全体で1.3当量のH2SO465%)を撹拌しながら均一に計量供給する。その直後に396gの硫酸を250分にわたって120℃で添加する。添加が終了すると混合物をさらに90分間120℃で撹拌する。混合物をその後、90分にわたって150℃に加熱し、次に150℃でさらに2時間の間撹拌する。反応混合物を室温に冷却し、次にオートクレーブを減圧する。得られた圧力は5バール以下である。
【0079】
ポリマーを取り出し、DM水を有するガラスフリットカラム内に移し、脱水する。次に、ポリマーをDM水で洗浄する。この後に、15重量%の硫酸で洗浄する。次に、DM水によるさらなる洗浄が行われる。次に、ポリマーをDM水で分級して洗浄及び細粒の除去を行なう。
【0080】
収量:1530mLのカチオン交換体
【0081】
【0082】
0の値は、精製水の味及び匂いの評価の最良の区分である。より高い値はより悪い。
【0083】
2.トリアリルイソシアヌレートとジビニルベンゼンの架橋剤混合物を使用する比較試験(非発明)
2.1架橋ポリマーの調製
水性相
215g NaClを含有した
624ml 水
3.91g リン酸水素二ナトリウムx12H2O
0.160g NaOH(10%)
1.4g ヒドロキシエチルセルロース
143ml 水
3.4g ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物のNa塩(95%/残余は水)(CAS No.91078-68-1)を含有した
94ml 水
【0084】
有機相
731g アクリロニトリル
49g トリアリルイソシアヌレート
20g ジビニルベンゼン、80%(20%エチルビニルベンゼンを含有する)
3.2g ジベンゾイルペルオキシド
【0085】
重合容器内に塩化ナトリウム溶液(624mlの水中の215gのNaCl)を最初にリン酸水素二ナトリウム(3.91g)と共に入れ、ヒドロキシエチルセルロース(1.4g)を加え、希水酸化ナトリウム水溶液(0.16gNaOH(10%))でpHをpH8.5に調節した。スルホン酸溶液(94mlの水中のナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物のNa塩(95%)(CAS No.91078-68-1))を15分間撹拌し、次いで重合容器に加えた。完全な水性相をさらに30分間撹拌する。
【0086】
有機相を室温で15分間撹拌し、次に水性相に添加し、室温で20分間160rpm(回転数/分)で撹拌した。
【0087】
混合物を撹拌しながら90分にわたって64℃に加熱する。64℃での全反応時間は4時間40分である。混合物をその後、1時間にわたって90℃に加熱し、この温度に2時間保持する。次に、バッチを冷却し、350gの30重量%亜硫酸水素ナトリウム溶液と混合する。一切の残りのアクリロニトリル残存モノマーを80℃で撹拌することによって4時間にわたって破壊する。次に、ポリマーを100μmの篩上でDM水を用いて洗浄する。振動台上でポリマーを振動に供して体積を測定する。
【0088】
収量:1225mlのポリマー、重合反応率:92%。
有効粒度(直径)(DIN 54407粒度分布DE vers.04/2015):283μm。
【0089】
2.2カチオン交換体の調製
2.1に従って製造されたポリマー(700mL)を最初にオートクレーブ内に720mLのDM水と共に入れ、50分にわたって120℃に加熱する。加熱と同時に622gの96重量%硫酸(ポリマー中の約7.26モルのニトリル基(ポリマー中のアクリロニトリルの量に基づいた計算)に基づいて全体で1.3当量のH2SO465%)を撹拌しながら均一に計量供給する。その直後に342gの硫酸を250分にわたって120℃で添加する。添加が終了すると混合物をさらに90分間120℃で撹拌する。混合物をその後、90分にわたって150℃に加熱し、次に150℃でさらに2時間の間撹拌する。反応混合物を室温に冷却し、次にオートクレーブを減圧する。得られた圧力は5バール以下である。
【0090】
ポリマーを取り出し、DM水を有するガラスフリットカラム内に移し、脱水する。次に、ポリマーをDM水で洗浄する。この後に、15重量%の硫酸で洗浄する。次いで、DM水によるさらなる洗浄が行われる。次に、ポリマーをDM水で分級して洗浄及び細粒の除去を行なう。
【0091】
収量:1360mlのポリマー
【0092】
【0093】
実施例1及び比較例の結果:
トリアリルイソシアヌレートとジビニルベンゼンとを含む先行技術から公知の架橋剤混合物はこのように、弱められた味及び匂いを有し続けるので水を十分に精製することができないカチオン交換体をモノマーアクリロニトリルと共にもたらす(本発明の実施例1の場合よりも不十分である2の値を有する比較例を参照のこと)。それと対照して、本発明によるカチオン交換体は、改良された味及び匂いを有する精製水をもたらし、さらに、より低いアンモニウム比率を製造中に示す。したがって、廃水はより少ない汚染を受ける。