(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】帯状材供給装置
(51)【国際特許分類】
B21D 43/02 20060101AFI20230801BHJP
B21D 1/05 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
B21D43/02 H
B21D1/05 T
(21)【出願番号】P 2022090730
(22)【出願日】2022-06-03
(62)【分割の表示】P 2018188783の分割
【原出願日】2018-10-04
【審査請求日】2022-06-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000128876
【氏名又は名称】株式会社アマダプレスシステム
(74)【代理人】
【識別番号】100096699
【氏名又は名称】鹿嶋 英實
(72)【発明者】
【氏名】春山 直輝
(72)【発明者】
【氏名】伊東 繁
【審査官】豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-216442(JP,A)
【文献】特開平6-126356(JP,A)
【文献】特開昭62-156021(JP,A)
【文献】特開2016-049538(JP,A)
【文献】特開2004-168445(JP,A)
【文献】特開平09-108735(JP,A)
【文献】特開平07-241620(JP,A)
【文献】実開平05-084409(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 43/02
B21D 1/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状材をコイル材からレベラーフィーダへと繰り出すアンコイラを備えた帯状材供給装置において、
前記アンコイラと前記レベラーフィーダとの間に設けられた帯状材端部挿入部を備え、
前記帯状材端部挿入部は、
各々の先端が前記コイル材の表面を指向するとともに、各先端を天地方向に搖動可能な第一アーム及び第二アームを有し、
前記第一アームと前記第二アームの先端間で前記帯状材の端部を挟み込みながら圧を加えて整形し、整形後の帯状材の端部を
、前記アンコイラによる前記帯状材の繰り出し位置に応じて前記第二アームの上部又は下部に、その長手方向に沿って滑動させながら前記レベラーフィーダへと繰り出すことが可能なことを特徴とする帯状材供給装置。
【請求項2】
前記第一アームの先端に取り付けられ、前記帯状材の端部を押圧して整形する押圧手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の帯状材供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状の板材をプレスや切断などの加工工程に供給する帯状材供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図14は、帯状材供給装置100の模式的な構成図である。この図に示すように、加工工程に対して鋼やアルミニウム等よりなる帯状の板材(以下、帯状材101)を供給する帯状材供給装置100は、帯状材101をコイル状に巻回したコイル材102を回転させながらコイル材102の外周から帯状材101を繰り出すアンコイラ103と、このアンコイラ103から繰り出された帯状材101の巻グセを取り除く巻グセ除去部104と、巻グセ除去後の帯状材101を後流の加工工程に必要な量ずつ間欠的に送出する送出部105とを備える(たとえば、特許文献1)。
なお、巻グセ除去部104と送出部105は一体としてレベラーフィーダ106などと呼ばれることもある。
【0003】
ここで、アンコイラ103は、上述のとおり、コイル材102を回転させながらその外周から帯状材101を繰り出すものであるが、この繰り出しの仕方として、同図(a)に示す「下出し」と呼ばれる繰り出しと、同図(b)に示す「上出し」と呼ばれる繰り出しの二つがあり、このいずれかが後流の加工工程の都合によって使い分けられる。
下出しとは、コイル材102の端部を“下側”から引き出してレベラーフィーダ106に繰り出すことをいい、上出しとは、コイル材102の端部を“上側”から引き出してレベラーフィーダ106に繰り出すことをいう。下側や上側の“上下”は重力に対する方向(天地の向き)をいい、詳しくは“上”は反重力方向(天)、“下”は重力方向(地)のことをいう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の帯状材供給装置100にあっては以下の課題があった。
【0006】
(課題1)
工場等における帯状材供給装置100の設置面積が大きくなる。
すなわち、アンコイラ103からの帯状材101の繰り出しは、コイル材102の自重などによってきめ細かな操作が困難であることから、レベラーフィーダ106における一定の送出量の維持に支障をきたすことがある。たとえば、加工工程に対して所定長の帯状材101を送出しようとしたところ、所定長に満たない送出量になってしまうことがある。この場合の送出量の不足分はアンコイラ103におけるコイル材102の自重などによって生じたものである。
そこで、従来では、アンコイラ103とレベラーフィーダ106の間に、帯状材101のたるみを持たせることによって、一定の送出量を確保できるようにしている。
【0007】
図15は、従来のたるみの概念図である。この図において、アンコイラ103から上出しで繰り出された帯状材101は、アンコイラ103とレベラーフィーダ106の間で重力方向に若干垂れ下がっており、この垂れ下がり部分がたるみ107になっている。このたるみ107の存在により、レベラーフィーダ106の送出動作、つまり帯状材101の間欠的な送出を支障なく行うことができる。
【0008】
しかしながら、従来にあっては、アンコイラ103とレベラーフィーダ106の間にたるみ107を持たせているため、このたるみ107の分だけアンコイラ103とレベラーフィーダ106の間に所要のスペース108を確保しなければならず、このスペース108の分だけ工場等における帯状材供給装置100の設置面積が大きくなるという課題があった。
なお、下出しの場合は、このような設置面積の課題は生じない。下出しの場合は、コイル材102の下側(地側)にたるみ109を持たせることができるからである。
【0009】
(課題2)
帯状材101のレベラーフィーダ106への端部挿入が面倒。
従来、帯状材101のレベラーフィーダ106への端部挿入は人為的に行っていたが、この挿入作業が面倒だった。すなわち、帯状材101の端部も巻グセが付いているため、この巻グセを人手で修正し、おおむね平らな状態に直してからレベラーフィーダ106に挿入していたが、この一連の作業(修正と挿入の作業)が手間がかかって面倒であった。
【0010】
そこで本発明は、帯状材供給装置の設置面積削減を図った帯状材供給装置の提供を一の目的とし、帯状材のレベラーフィーダへの端部挿入作業の面倒解消を図った帯状材供給装置の提供を二の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一の発明に係る本願の帯状材供給装置は、帯状材をコイル材からレベラーフィーダへと繰り出すアンコイラを備えた帯状材供給装置において、前記アンコイラと前記レベラーフィーダとの間に設けられた帯状材端部挿入部を備え、前記帯状材端部挿入部は、各々の先端が前記コイル材の表面を指向するとともに、その先端を天地方向に搖動可能な第一アーム及び第二アームを有し、前記第一アームと前記第二アームの先端間で前記帯状材の端部を挟み込みながら圧を加えて整形し、整形後の帯状材の端部を、前記アンコイラによる前記帯状材の繰り出し位置に応じて前記第二アームの上部又は下部に、その長手方向に沿って滑動させながら前記レベラーフィーダへと繰り出すことが可能なことを特徴とする。
さらにこの態様において、前記第一アームの先端に取り付けられ、前記帯状材の端部を押圧して整形する押圧手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の帯状材供給装置によれば、状材供給装置の設置面積削減を図ることができ、または、帯状材のレベラーフィーダへの端部挿入作業の面倒解消を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図3】帯状材端部挿入部4の搖動アーム22の抜粋図である。
【
図4】帯状材端部挿入部4の案内アーム23の抜粋図であり、(a)は、案内アーム23の搖動説明図、(b)は、案内アーム23の伸縮説明図である。
【
図12】上出しの場合における帯状材端部のレベラーフィーダへの挿入作業工程図である。
【
図13】下出しの場合における帯状材端部のレベラーフィーダへの挿入作業工程図である。
【
図14】帯状材供給装置100の模式的な構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
まず、帯状材供給装置1の全体的な構成を説明する。
図1は、帯状材供給装置1の正面図、
図2は、帯状材供給装置1の上面図である。
これらの図において、帯状材供給装置1は、工場等の床面Fに設置されたアンコイラ2及びレベラーフィーダ3並びにアンコイラ2とレベラーフィーダ3の間に設けられた帯状材端部挿入部4を備えている。帯状材端部挿入部4は冒頭で説明した従来技術に存在しない部位である。以下、床面Fにおける設置順を図面に向かって左から右にアンコイラ2、帯状材端部挿入部4及びレベラーフィーダ3とするが、これに限定されない。各部が順次に配置されていればよく、たとえば、図面に向かって右から左に並んでいてもよい。
【0015】
アンコイラ2は、鋼やアルミニウム等よりなる帯状の板材(帯状材)をコイル状に巻回したコイル材5を軸支する軸部材6を備えている。この軸部材6は、架台7に取り付けられた駆動手段8によって正逆自在かつ任意の速度で回転駆動されるようになっており、この駆動により、コイル材5の外周から帯状材を、帯状材端部挿入部4を通ってレベラーフィーダ3の方向に任意の速度で繰り出せるようになっている。なお、コイル材5を正転(時計回り方向に回転)させたときの帯状材の繰り出しは「上出し」になり、この逆にコイル材5を逆転(反時計回り方向に回転)させたときの帯状材の繰り出しは「下出し」になる。上出しと下出しについては冒頭で説明した
図14を参照されたい。
【0016】
また、アンコイラ2は、天側の上押さえ部9と地側の下押さえ部10を備えており、上押さえ部9と下押さえ部10はそれぞれ略くの字状、湾曲状、略コの字状、略Vの字状または略逆ハの字状に屈曲して屈曲内側同士を向い合せにした一対のアーム11、12と、各アーム11、12の先端に回転自在に取り付けられた押圧ローラ13、14と、各アーム11、12の基端に一体的に取り付けられた回転軸15、16と、各アーム11、12の屈曲内側に所定間隔で並べられた回転ローラ群17、18とを備える。なお、上押さえ部9と下押さえ部10のうち、詳細は後述するが、特に下押さえ部10は本例特有の構成を有している。
【0017】
上押さえ部9と下押さえ部10のアーム11、12は、架台19に取り付けられ、それぞれの回転軸15、16を正逆方向に回転駆動する駆動手段20、21により、回転軸15、16を中心にして正逆自在に搖動できるようになっており、この搖動によって、上押さえ部9の押圧ローラ13でコイル材5の外周上面(天側の外周面)を下方向(地方向)に押圧し、または、下押さえ部10の押圧ローラ14でコイル材5の外周下面(地側の外周面)を上方向(天方向)に押圧できるようになっている。
【0018】
帯状材端部挿入部4は、搖動アーム22と案内アーム23を備えている。搖動アーム22は基端に一体的に取り付けられた軸心24と、先端に回転自在に取り付けられた断面略円形の長尺状の抑え棒25とを備え、軸心24は架台26に取り付けられた駆動手段27により、正逆自在に回転駆動され、この回転駆動により、搖動アーム22を正転方向(時計回り方向)または逆転方向(反時計回り方向)に搖動できるようになっている。また、案内アーム23は、架台26に取り付けられた駆動手段28により、その基端側が、搖動アーム22の軸心24の周りに正逆自在に搖動駆動されるようになっており、さらに、案内アーム23の内部に実装された伸縮機構29により、案内アーム23の全長を伸長し、または縮小できるようになっている。
【0019】
レベラーフィーダ3は、アンコイラ2から繰り出された帯状材の巻グセを取り除く巻グセ除去部30と、巻グセ除去後の帯状材を後流の加工工程に必要な量ずつ間欠的に送出する送出部31とを備える。巻グセ除去部30は複数の加圧ローラからなる上側のローラ群30aと、複数の加圧ローラからなる下側のローラ群30bとを備え、これら上下のローラ群30a、30bによる圧を加えながらの挟み込み動作によって帯状材の巻グセを取り除き、ほぼ平らの状態に修正してから送出部31に送り出し、送出部31は上下一対の搬送ローラ31a、31bの回転運動により、巻グセ除去後の帯状材を後流の加工工程に必要な量ずつ間欠的に送出する。
【0020】
帯状材端部挿入部4の搖動アーム22を詳しく説明する。
図3は、帯状材端部挿入部4の搖動アーム22の抜粋図である。この図において、搖動アーム22は架台26に取り付けられた駆動手段27によって駆動され、その駆動により、コイル材5を指向する搖動アーム22の先端(抑え棒25が取り付けられた先端)が上下(天地)方向に搖動するようになっている。図中の一点鎖線32は搖動アーム22の先端の搖動軌跡である。
【0021】
帯状材端部挿入部4の案内アーム23を詳しく説明する。
図4は、帯状材端部挿入部4の案内アーム23の抜粋図であり、(a)は、案内アーム23の搖動説明図、(b)は、案内アーム23の伸縮説明図である。
【0022】
案内アーム23の搖動について説明する。案内アーム23は架台26に取り付けられた駆動手段28によって駆動され、その駆動により、コイル材5を指向する案内アーム23の先端が上下(天地)方向に搖動するようになっている。図中の一点鎖線33は案内アーム23の先端の搖動軌跡である。
【0023】
案内アーム23の伸縮について説明する。先に説明したとおり、案内アーム23の内部に伸縮機構29が実装されている。この伸縮機構29は、同じく案内アーム23の内部に実装された駆動手段34によって案内アーム23の長手方向に伸縮自在に駆動されるようになっている。(a)の状態は伸縮機構29を縮退させたときのものであり、(b)の状態は伸縮機構29を伸長させたときのものである。
【0024】
なお、伸縮機構29の最大伸長量はコイル材5の外周に接触できる程度の量であり、たとえば、コイル材5の巻回径が最小の場合であっても、そのコイル材5の外周に支障なく接触できる程度の量である。
【0025】
図5は、案内アーム23の要部構造図である。この図において、案内アーム23に実装された伸縮機構29は、案内アーム23の上面(天側の面)と面一にされた上プレート35と、案内アーム23の下面(地側の面)と面一にされた下プレート36と、これらの上プレート35及び下プレート36を一体的に保持する保持部材37と、この保持部材37(つまり上プレート35及び下プレート36)を案内アーム23の長手方向に駆動する駆動手段34とを備えている。
【0026】
なお、この図では、駆動手段34の駆動力をシャフト38で保持部材37に伝えることによって保持部材37(つまり上プレート35及び下プレート36)を案内アーム23の長手方向に駆動するようにしているが、これは実施態様の一例に過ぎない。他の態様であってもかまわない。
【0027】
また、本例ではいくつかの駆動手段(駆動手段8、駆動手段20、駆動手段21、駆動手段27、駆動手段28及び駆動手段34)を備えているが、これらの駆動方法についても特に限定しない。たとえば、油圧力や空気圧を利用したもの、あるいは水圧や磁力、電力を利用したものであってもよく、または他の物理力を利用したものであってもよい。
【0028】
次に、本例の作用を説明する。
(冒頭の課題1に対応する本例の作用説明)
図6は、本例における上出しの説明図である。この図において、アンコイラ2から繰り出された帯状材39は、帯状材端部挿入部4を通り、レベラーフィーダ3で巻グセ除去後、加工工程へと間欠的に送り出されているが、このときのアンコイラ2における帯状材39は、
(A)コイル材5の下側(地側)から帯状材端部挿入部4やレベラーフィーダ3の配置と反対側(この図では左側)に引き出され、
(B)同反対側において所要のたるみ40を持たせてから向きを変え、
(C)コイル材5の上側(天側)を通って帯状材端部挿入部4やレベラーフィーダ3の配置方向(この図では右側)に繰り出されている。
【0029】
アンコイラ2に設けられている地側の下押さえ部10は、これら(A)~(C)の作用を支援するためのものである。
【0030】
すなわち、上出しを行う場合は、まず、下押さえ部10を上にあげて下押さえ部10の押圧ローラ14でコイル材5の外周下面(地側の外周面)を上方向(天方向)に押圧する。なお、このとき、上押さえ部9は解放状態(コイル材5の非押圧状態)にある。
次いで、コイル材5の端部を徐々に引き出しながら下押さえ部10の回転ローラ群18でコイル材5の端部を案内し、帯状材端部挿入部4やレベラーフィーダ3の配置と反対側(この図では左側)に所要のたるみ40を持たせた後、帯状材39の端部の向きを変え、コイル材5の上側(天側)を通って帯状材端部挿入部4やレベラーフィーダ3の配置方向(この図では右側)へと帯状材39の繰り出しを行う。
【0031】
図中のU1とU2は、上出し時のたるみ40の量をコントロールするための制御位置であり、U1はたるみ40の最小制御位置、U2はたるみ40の最大制御位置を示している。たるみ40の量は、後で詳述する制御部によってリアルタイムにコントロールされる。つまり、帯状材39がU1に位置するとアンコイラ2の駆動手段8によってコイル材5が正転駆動され、この駆動によってたるみ40が作られるように帯状材39の繰り出しが行われる一方、帯状材39がU2に位置するとアンコイラ2の駆動手段8の駆動が停止され、これにより、帯状材39の繰り出しがストップする。したがって、上出しにおけるたるみ40の量は、二つの制御位置(U1、U2)の間でコントロールされる。
【0032】
これらの二つの制御位置(U1、U2)の検出方法については特に限定しない。たとえば、光学的な手法、画像的な手法、磁気的な手法、機械的な手法などいずれの手法であってもよい。
【0033】
図7は、本例における下出しの説明図である。この図において、アンコイラ2から繰り出された帯状材41は、上出しと同様に、帯状材端部挿入部4を通り、レベラーフィーダ3で巻グセ除去後、加工工程へと間欠的に送り出されているが、上記の上出し(
図6)との相違は、アンコイラ2における帯状材41がコイル材5の上側(天側)から帯状材端部挿入部4やレベラーフィーダ3の配置と反対側(この図では左側)に引き出され、コイル材5の下側(地側)において所要のたるみ42を持たせてから帯状材端部挿入部4やレベラーフィーダ3の配置方向(この図では右側)に繰り出されている点にあり、この下出しは、冒頭で説明した従来のもの(
図15の破線で示した「繰り出し(下出し)」を参照)と同じである。
【0034】
この下出しにおいて、アンコイラ2に設けられている天側の上押さえ部9はコイル材5を押圧する状態にあり、地側の下押さえ部10はコイル材5を押圧しない解放状態にあるが、必要であれば、地側の下押さえ部10の押圧ローラ14と回転ローラ群18でたるみ42を案内するように補助してもよい。
【0035】
図中のD1とD2は、下出し時のたるみ42の量をコントロールするための制御位置であり、D1はたるみ42の最小制御位置、D2はたるみ42の最大制御位置を示している。たるみ42の量は、後で詳述する制御部によってリアルタイムにコントロールされる。つまり、帯状材41がD1に位置するとアンコイラ2の駆動手段8によってコイル材5が逆転駆動され、この駆動によってたるみ42が作られるように帯状材41の繰り出しが行われる一方、帯状材41がD2に位置するとアンコイラ2の駆動手段8の駆動が停止され、これにより、帯状材41の繰り出しがストップする。したがって、下出しにおけるたるみ42の量は、二つの制御位置(D1、D2)の間でコントロールされる。
【0036】
これらの二つの制御位置(D1、D2)の検出方法についても特に限定しない。たとえば、光学的な手法、画像的な手法、磁気的な手法、機械的な手法などいずれの手法であってもよい。
【0037】
図8は、制御部の概念構成図である。この図において、制御部43は後述(
図9)の処理シーケンスをソフトウェア的に実行する演算処理装置(コンピュータ44)と、操作部45とを備え、さらに操作部45は上出しボタン46と下出しボタン47とを備える。操作部45の二つのボタン(上出しボタン46と下出しボタン47)は一方がオンになると他方がオフになる択一的選択ボタンである。
コンピュータ44は、操作部45の上出しボタン46がオンになっている間は上出し用の二つの制御位置(U1、U2)に従ってアンコイラ2の駆動手段8の起動と停止を制御し、操作部45の下出しボタン47がオンになっている間は下出し用の二つの制御位置(D1、D2)に従ってアンコイラ2の駆動手段8の起動と停止を制御する。
【0038】
図9は、処理シーケンスの概略的な流れ図である。この図において、制御部43は、操作部45の二つのボタン(上出しボタン46と下出しボタン47)のいずれがオンになっているかに基づいて帯状材の繰り出し方向を判断する(ステップS1)。
【0039】
判断結果が「下出し」の場合、制御部43はD1の検知を判定し(ステップS2)、D1の検知を判定するとアンコイラ2の駆動手段8を逆転駆動(ステップS3)した後、D2の検知を判定し(ステップS4)、D2の検知を判定するとアンコイラ2の駆動手段8を停止(ステップS5)するという処理を、ステップS1の判断結果が「下出し」の間、繰り返し実行する。
【0040】
判断結果が「上出し」の場合、制御部43はU1の検知を判定し(ステップS6)、U1の検知を判定するとアンコイラ2の駆動手段8を正転駆動(ステップS7)した後、U2の検知を判定し(ステップS8)、U2の検知を判定するとアンコイラ2の駆動手段8を停止(ステップS9)するという処理を、ステップS1の判断結果が「上出し」の間、繰り返し実行する。
【0041】
なお、以上の説明では、上記の処理シーケンスをソフトウェア的に実行するとしているが、これに限定されない。ハードロジックで実行してもよいし、あるいは機械的な仕掛けで実行してもよい。
【0042】
図10は、本例における一の効果の説明図である。先にも説明したとおり、本例における上出しにおいては、アンコイラ2の左側(レベラーフィーダ3の配置と反対側)に所要のたるみ40を持たせたので、アンコイラ2とレベラーフィーダ3(及び帯状材端部挿入部4)との間のスペースを少なくすることができ、工場等における帯状材供給装置1の設置面積削減を図ることができる。これは、従来(
図15参照)においては、アンコイラ103とレベラーフィーダ106との間に帯状材101のたるみ107を持たせていたため、このたるみ107の分だけアンコイラ103とレベラーフィーダ106との間のスペースが大きくなっていたのに対して、本例では、アンコイラ2とレベラーフィーダ3(及び帯状材端部挿入部4)の間ではなくアンコイラ2の左側(レベラーフィーダ3の配置と反対側)にたるみ40を持たせるようにしたからであり、これによって、アンコイラ2とレベラーフィーダ3(及び帯状材端部挿入部4)の間のスペースが不要になったためである。
【0043】
(好ましい改善例)
図11は、本例の好ましい改善例を示す図である。この図において、(a)に示すように、下押さえ部10の押圧ローラ14の回転中心P1は、コイル材5の回転中心P2を天地方向に通る線48よりもレベラーフィーダ3の設置方向にわずかにずれている。このずれ量をオフセットということにする。
【0044】
説明の便宜上、オフセットを0にしてみる。(b)はオフセット0のときの場合である。この場合、押圧ローラ14の押圧位置は、コイル材5の回転中心P2を天地方向に通る線48の上であり、コイル材5から引き出される帯状材の端部は図中の白抜き矢印49で示すように、巻グセにより若干上向きの状態で引き出される。
【0045】
これに対して、オフセットを0を超える値にしておけば、(c)に示すように、コイル材5から引き出される帯状材の端部は図中の白抜き矢印50で示すように、巻グセがあったとしても水平又はやや下向きの状態で引き出されることになる。
【0046】
このようにオフセットさせることにより、帯状材のたるみ40を無理のない自然な形状にすることができ、これによって帯状材を繰り出す際の抵抗を少なくして、コイル材5の巻きほぐれを防ぐことができる。
【0047】
さらに、下押さえ部10は略くの字状、湾曲状、略コの字状、略Vの字状または略逆ハの字状に屈曲して屈曲内側を天に向けたアーム12を備えるとともに、このアーム12の屈曲に沿って並べられた回転ローラ群18を備えるので、帯状材がこの回転ローラ群18に案内される際の抵抗も減らすことができ、一層、コイル材5の巻きほぐれを防ぐことができる。
【0048】
あるいは、白抜き矢印49で示す上向きの引き出しはたるみ40の形成に支障をきたす原因にもなり得る。上向きの大きさによっては制御位置(U1、U2)の誤検出を招くことがあるからである。オフセットによって白抜き矢印50で示すように、水平又はやや下向きの状態で引き出されるようにすれば、たるみ40の形成に支障をきたすことはない。水平又は下向きの引き出しによって制御位置(U1、U2)の誤検出を招かないようになるからである。
【0049】
なお、オフセットの大きさは、コイル材5の素材や板厚、巻グセの大きさ等を考慮して設定すればよいが、上理由より、少なくとも上向きの状態で引き出されることがない適宜の値(0を超える値)であればよい。
【0050】
(冒頭の課題2に対応する本例の作用説明)
図12は、上出しの場合における帯状材端部のレベラーフィーダへの挿入作業工程図である。工程は(a)~(h)の順番である。
(a)案内アーム23の先端を若干上方向に搖動させた後、案内アーム23の伸縮機構29を伸長させて伸縮機構29の先端をコイル材5の表面に突き当てる。なお、この突き当てはコイル材5の表面への“接触”を意味するが、これに限定されない。工程(b)に支障の出ない程度の微小な距離を保ってコイル材5の表面に接近する態様であってもよい。
(b)コイル材5から帯状材を繰り出して伸縮機構29の上面に当接させる。
(c)帯状材の端部を伸縮機構29の上面から案内アーム23の上面まで滑動させる。
(d)伸縮機構29を案内アーム23の内部に縮退させる。
(e)搖動アーム22を下方に搖動させ、抑え棒25を帯状材の上面に当接させる。
(f)搖動アーム22をさらに下方に搖動させ、抑え棒25によって帯状材の端部を下方向に押圧する(つまり、搖動アーム22と案内アーム23の先端間で帯状材の端部を挟み込みながら帯状材の端部に圧を加える)。この押圧によって、帯状材の端部が巻グセと反対方向(下方向)に押し曲げられる結果、端部の巻グセ解消または巻グセ緩和が図られる。
(g)搖動アーム22を上方に搖動させて邪魔にならないように退避する。
(h)巻グセが抑制または緩和された帯状材端部を案内アーム23の上を滑動させてレベラーフィーダ3へと繰り出す。
【0051】
図13は、下出しの場合における帯状材端部のレベラーフィーダへの挿入作業工程図である。この工程も(a)~(h)の順番である。
(a)案内アーム23の先端を若干下方向に搖動させた後、案内アーム23の伸縮機構29を伸長させて伸縮機構29の先端をコイル材5の表面に突き当てる。なお、この突き当てはコイル材5の表面への“接触”を意味するが、これに限定されない。工程(b)に支障の出ない程度の微小な距離を保ってコイル材5の表面に接近する態様であってもよい。
(b)コイル材5から帯状材を繰り出して伸縮機構29の下面に当接させる。
(c)帯状材の端部を伸縮機構29の下面から案内アーム23の下面まで滑動させる。
(d)伸縮機構29を案内アーム23の内部に縮退させる。
(e)搖動アーム22を上方に搖動させ、抑え棒25を帯状材の下面に当接させる。
(f)搖動アーム22をさらに上方に搖動させ、抑え棒25によって帯状材の端部を上方向に押圧する(つまり、搖動アーム22と案内アーム23の先端間で帯状材の端部を挟み込みながら帯状材の端部に圧を加える)。この押圧によって、帯状材端部が巻グセと反対方向(上方向)に押し曲げられる結果、端部の巻グセ解消または巻グセ緩和が図られる。
(g)搖動アーム22を下方に搖動させて邪魔にならないように退避する。
(h)巻グセが抑制または緩和された帯状材端部を案内アーム23の下を滑動させてレベラーフィーダ3へと繰り出す。
【0052】
したがって、上出し及び下出しのいずれにおいても、これらの工程(a)~(h)により、帯状材端部の巻グセ修正と、巻グセ修正後の帯状材端部のレベラーフィーダへの挿入作業とを機械化して人手による作業を極限でき、手間の軽減を図ることができる。
【0053】
以上のように構成された本例の帯状材供給装置1によれば、以下のような様々な効果が得られる。
(イ)本例における上出しにおいては、アンコイラ2の左側(レベラーフィーダ3の配置と反対側)に所要のたるみ40を持たせたので、アンコイラ2とレベラーフィーダ3(及び帯状材端部挿入部4)との間のスペースを少なくすることができ、工場等における帯状材供給装置1の設置面積削減を図ることができる。
(ロ)下押さえ部10の押圧ローラ14の回転中心P1と、コイル材5の回転中心P2を天地方向に通る線48との間にオフセットを持たせたので、帯状材のたるみ40を無理のない自然な形状にすることができ、これによって帯状材を繰り出す際の抵抗を少なくして、コイル材5の巻きほぐれを防ぐことができる。
(ハ)さらに、下押さえ部10は略くの字状、湾曲状、略コの字状、略Vの字状または略逆ハの字状に屈曲して屈曲内側を天に向けたアーム12を備えるとともに、このアーム12の屈曲に沿って並べられた回転ローラ群18を備えるので、帯状材がこの回転ローラ群18に案内される際の抵抗も減らすことができ、一層、コイル材5の巻きほぐれを防ぐことができる。
(ニ)加えて、たるみ40の帯状材の重さを押圧ローラ14だけでなく回転ローラ群18でも受ける形となるので、その分しっかりと押圧ローラ14及び回転ローラ群18でコイル材5を押さえつけることができ、より一層、コイル材5の巻きほぐれを防止できる。
(ホ)あるいは、下押さえ部10の押圧ローラ14の回転中心P1と、コイル材5の回転中心P2を天地方向に通る線48との間にオフセットを持たせたので、上出しの際の制御位置(U1、U2)の誤検出を回避でき、たるみ40の形成に支障をきたすことがない。
(ヘ)上出し及び下出しのいずれにおいても、帯状材端部の巻グセ修正と、巻グセ修正後の帯状材端部のレベラーフィーダへの挿入作業とを機械化して人手による作業を極限でき、手間の軽減を図ることができる。
【符号の説明】
【0054】
P1 押圧ローラの回転中心
P2 コイル材の回転中心
1 帯状材供給装置
2 アンコイラ
3 レベラーフィーダ
4 帯状材端部挿入部
5 コイル材
10 下押さえ部(生成手段)
12 アーム
14 押圧ローラ
16 回転軸
18 回転ローラ群
22 搖動アーム(第一アーム)
23 案内アーム(第二アーム)
25 抑え棒(押圧手段)
39 帯状材
40 たるみ
48 P2を天地方向に通る線