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特許7323704水性難燃接着剤組成物およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】水性難燃接着剤組成物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 123/08 20060101AFI20230801BHJP
   C08F 214/06 20060101ALI20230801BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20230801BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20230801BHJP
   C09J 183/00 20060101ALI20230801BHJP
   C09J 7/30 20180101ALI20230801BHJP
   C09J 127/06 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
C09J123/08
C08F214/06
C09J133/00
C09J175/04
C09J183/00
C09J7/30
C09J127/06
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022510839
(86)(22)【出願日】2020-07-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-21
(86)【国際出願番号】 KR2020010055
(87)【国際公開番号】W WO2021040253
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2022-02-17
(31)【優先権主張番号】10-2019-0105936
(32)【優先日】2019-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】501014658
【氏名又は名称】ハンワ ソリューションズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】HANWHA SOLUTIONS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヨンラン・シン
(72)【発明者】
【氏名】ジェソン・キム
(72)【発明者】
【氏名】テヨン・ジャン
【審査官】福山 駿
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-120669(JP,A)
【文献】特表2020-517794(JP,A)
【文献】特表2017-531717(JP,A)
【文献】特開2015-193817(JP,A)
【文献】特開2017-043553(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース樹脂;および
水性ポリ塩化ビニルエマルジョン;を含み、
前記ベース樹脂は、ビニルアセテート-エチレン共重合体、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、およびシリコーン系樹脂からなる群より選択され、
前記水性ポリ塩化ビニルエマルジョンでのポリ塩化ビニルは、平均粒子径(D[4,3])が100nm~0.5μmであり、
前記ベース樹脂および水性ポリ塩化ビニルエマルジョンは、固形分基準で90:10~10:90の重量比で含まれる、水性難燃接着剤組成物。
【請求項2】
前記ベース樹脂および水性ポリ塩化ビニルエマルジョンは、固形分基準で90:10~60:40の重量比で含まれる、請求項1に記載の水性難燃接着剤組成物。
【請求項3】
前記ベース樹脂は、水性エマルジョンである、請求項1に記載の水性難燃接着剤組成物。
【請求項4】
前記水性ポリ塩化ビニルエマルジョンでのポリ塩化ビニルは、重量平均分子量が45,000~300,000g/molである、請求項1に記載の水性難燃接着剤組成物。
【請求項5】
可塑剤をさらに含む、請求項1に記載の水性難燃接着剤組成物。
【請求項6】
前記可塑剤は、分子内のC4-10のアルキル基を2個含むシクロヘキサンジカルボキシレート系化合物である、請求項5に記載の水性難燃接着剤組成物。
【請求項7】
前記可塑剤は、ジ(2-エチルヘキシル)シクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレート、ジイソノニルシクロヘキサン-1,2-ジカルボキシレート、ジ(2-エチルヘキシル)シクロヘキサン-1,2-ジカルボキシレート、ジブチルシクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレート、またはこれらの混合物を含む、請求項5に記載の水性難燃接着剤組成物。
【請求項8】
前記可塑剤は、固形分基準で前記ベース樹脂と水性ポリ塩化ビニルエマルジョンとの混合物100重量部に対して10~30重量部含まれる、請求項5に記載の水性難燃接着剤組成物。
【請求項9】
開始剤、低分子量体、エポキシ樹脂、紫外線安定剤、酸化防止剤、調色剤、補強剤、消泡剤、発泡剤、有機塩、増粘剤および難燃剤からなる群より選択される添加剤を追加的に含む、請求項1に記載の水性難燃接着剤組成物。
【請求項10】
前記水性難燃接着剤組成物は、UL94 Vの難燃規定による難燃性評価時、V0またはV1の難燃性を示す、請求項1に記載の水性難燃接着剤組成物
【請求項11】
前記水性難燃接着剤組成物は、ISO8510-2による180°剥離試験時、アルミニウムに対して15~50gf/mmの剥離強度を示す、請求項1に記載の水性難燃接着剤組成物。
【請求項12】
塩化ビニル単量体単独、または塩化ビニル単量体およびこれと共重合可能な共単量体との混合物を、水性媒体中で乳化重合して、ポリ塩化ビニルが水性媒体中に分散した水性ポリ塩化ビニルエマルジョンを製造する段階;および
前記水性ポリ塩化ビニルエマルジョンとベース樹脂とを固形分基準で10:90~90:10の重量比で混合する段階;を含み、
前記ベース樹脂は、ビニルアセテート-エチレン共重合体、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、およびシリコーン系樹脂からなる群より選択され
前記水性ポリ塩化ビニルエマルジョンでのポリ塩化ビニルは、平均粒子径(D[4,3])が100nm~0.5μmである、請求項1に記載の水性難燃接着剤組成物の製造方法。
【請求項13】
前記乳化重合は、シード乳化重合によって行われる、請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
前記水性ポリ塩化ビニルエマルジョンとベース樹脂との混合時、可塑剤をさらに添加する、請求項12に記載の製造方法。
【請求項15】
前記可塑剤は、分子内のC4-10のアルキル基を2個含むシクロヘキサンジカルボキシレート系化合物である、請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
請求項1~11のいずれか1項に記載の水性難燃接着剤組成物を含む物品。
【請求項17】
前記物品は、接着剤、接着フィルム、デコシート、床材、人工皮革または玩具である、請求項16に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、2019年8月28日付の韓国特許出願第10-2019-0105936号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、水性難燃接着剤組成物およびその製造方法に関し、より詳しくは、有機難燃剤の代替によるコスト節減、および無機難燃剤の添加による接着剤の層分離が改善され、優れた接着力および低温安定性を示すことができる水性難燃接着剤組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
現在使用される接着剤は大部分有機溶剤を用いた接着剤である。しかし、韓国内外の環境規制強化および作業清浄化要求の増大と、コスト節減および生産性向上の面での有利さによって水分散型接着剤の必要性が拡大している。
【0004】
既存の有機溶剤型接着剤を水性接着剤に代替する場合、水を連続的な媒体として用いるため、コスト節減はもちろん、混合および取り扱いが簡便で作業性を向上させることができ、作業環境の清浄化および後処理工程の省略が可能という利点がある。
【0005】
水性接着剤として、重合体エマルジョン形態のクロロプレンラテックス系接着剤、塩化ビニルエマルジョン、塩化ビニリデンエマルジョン、塩化ビニルアクリル酸エステル共重合体エマルジョン、または塩化ビニルエチレン酢酸ビニル共重合体エマルジョンなどを用いることが提案されている。しかし、これらの重合体エマルジョンを単独で用いた場合、難燃性が実現されない問題がある。
【0006】
そこで、難燃性実現のために有機または無機難燃剤を用いる方法が提案された。有機難燃剤は、大きく、リン系、窒素系などの非ハロゲン系難燃剤と、臭素系、塩素系などのハロゲン系難燃剤とに分類され、無機難燃剤は、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物系と、アンチモン系とに分類される。
【0007】
有機難燃剤の場合、難燃化効果には優れているが、高価であり、一部の有機難燃剤、特に臭素系難燃剤の場合、燃焼時のダイオキシン発生などの人体有害性の問題がある。また、無機難燃剤の場合、過剰に使用されなければならないため、時間の経過により分離されたり沈殿して作業が不可であったり、追加の混合工程が必要という問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の問題点を解決するためのものであって、環境にやさしく、有機難燃剤の代替によるコスト節減、無機難燃剤の添加による接着剤の層分離を改善し、優れた接着力および低温安定性を示すことができる水性難燃接着剤組成物およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一側面は、ビニルアセテート-エチレン(VAE)共重合体、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂およびシリコーン系樹脂からなる群より選択されるベース樹脂;および水性ポリ塩化ビニルエマルジョン;を固形分基準で90:10~10:90の重量比で含む、水性難燃接着剤組成物を提供する。
【0010】
本発明の他の側面は、塩化ビニル単量体単独;または塩化ビニル単量体およびこれと共重合可能な共単量体との混合物;を水性媒体中で乳化重合して、ポリ塩化ビニルが水性媒体中に分散した水性ポリ塩化ビニルエマルジョンを製造する段階;および前記水性ポリ塩化ビニルエマルジョンを、ビニルアセテート-エチレン共重合体、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、およびシリコーン系樹脂からなる群より選択されるベース樹脂と、固形分基準で10:90~90:10の重量比で混合する段階を含む、前記水性難燃接着剤組成物の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明による水性難燃接着剤組成物は、環境にやさしく、有機難燃剤の代替によるコスト節減、および無機難燃剤の添加による接着剤の層分離が改善され、優れた接着力および低温安定性を示すことができる。これによって、前記接着剤組成物は建築用、各種産業用など多様な分野に適用可能であり、具体的には、建築用/産業用接着剤、接着フィルム、デコシート、床材、人工皮革、または玩具などに有用に適用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書で使われる用語は単に例示的な実施例を説明するために使用されたもので、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は、文脈上、明白に異なって意味しない限り、複数の表現を含む。
【0013】
本明細書において、「含む」、「備える」または「有する」などの用語は、実施された特徴、数字、段階、構成要素またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであって、1つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、構成要素またはこれらを組み合わせたものの存在または付加の可能性を予め排除しないことが理解されなければならない。
【0014】
本発明は多様な変更が加えられて様々な形態を有することができるが、特定の実施例を例示して下記に詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるあらゆる変更、均等物乃至代替物を含むことが理解されなければならない。
【0015】
以下、発明の具体的な実現例により水性難燃接着剤組成物およびその製造方法についてより詳細に説明する。
【0016】
本発明者らは、水性接着剤組成物の製造時、ベース樹脂に水性ポリ塩化ビニル系エマルジョンを混合する場合、難燃剤を用いないか、あるいは使用量を低減させても優れた難燃性を示すことができ、さらに加工助剤として環境にやさしいシクロヘキサンジカルボキシレート系化合物の可塑剤を用いることによって接着力を強化し、低温安全性を改善させることができることを確認して、本発明を完成した。
【0017】
具体的には、発明の一実施形態による水性難燃接着剤組成物は、
ビニルアセテート-エチレン(VAE)共重合体、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂およびシリコーン系樹脂からなる群より選択されるベース樹脂;および
水性ポリ塩化ビニルエマルジョン;を固形分基準で90:10~10:90の重量比で含む。
【0018】
前記水性難燃接着剤組成物において、水性ポリ塩化ビニルエマルジョンは、ポリ塩化ビニルが水に分散した水分散型エマルジョンで、クロリン基を含み自体で優れた難燃性を示すことができるポリ塩化ビニルの分子構造によって、接着剤組成物に含む時、他の水性ベース樹脂より優れた難燃性を示すことができる。
【0019】
本明細書全体において、「ポリ塩化ビニル」とは、塩化ビニル系単量体単独、または塩化ビニル系単量体およびこれと共重合可能な共単量体が共重合された(共)重合体を称する。その他、懸濁剤、緩衝剤、および重合開始剤などを混合して懸濁重合、微細懸濁重合、乳化重合、またはミニエマルジョン重合などの重合方法によって製造できる。
【0020】
上述した塩化ビニル単量体と共重合可能な共単量体は、例えば、エチレンビニルアセテート単量体およびプロピオン酸ビニル単量体を含むビニルエステル系単量体;エチレン、プロピレン、イソブチルビニルエーテル、およびハロゲン化オレフィンを含むオレフィン系単量体;メタクリル酸アルキルエステルを含むメタクリル酸エステル系単量体;無水マレイン酸単量体;アクリロニトリル単量体;スチレン単量体;およびハロゲン化ポリビニリデンなどが挙げられ、これらを1種以上混合して塩化ビニル単量体との共重合体を製造することができる。しかし、本発明が上述した単量体に限定されるものではなく、製造時、要求される水性難燃接着剤組成物の物性や用途などに応じて、本発明の属する技術分野にて一般に塩化ビニル単量体と重合反応により共重合体を形成するのに使用される単量体は特別な制限なく使用可能である。
【0021】
また、前記重合反応時、重合条件の制御によりガラス転移温度、粒子サイズなどのポリ塩化ビニルの物性を調節することができる。
【0022】
さらに、接着基材に応じて要求されるポリ塩化ビニルのガラス転移温度(Tg)が異なるが、一例として、前記ポリ塩化ビニルは、ガラス転移温度が-20℃以上であり、80℃以下であってもよい。より具体的には、20℃以上であり、60℃以下であってもよい。
【0023】
本発明において、前記ポリ塩化ビニルのガラス転移温度は、DSC(Differential Scanning Calorimeter)装置を用いて測定できる。
【0024】
また、前記ポリ塩化ビニルは、水中に分散した粒子状に存在し、100nm~1μm、より具体的には100nm~0.5μmの平均粒子径(D[4,3])を有する。前記平均粒子径が100nm未満であれば、粒子安定性が低下して、ポリ塩化ビニル粒子同士の凝集によってエマルジョン内の分散性が低下することがあり、1μmを超えると、保存安定性が低下し、乾燥後の粒子の凝集力が低下して、接着物性が低下する恐れがある。
【0025】
本発明において、ポリ塩化ビニルの平均粒子径D[4,3]は粒子の体積平均(Volume Weighted Mean)で、レーザ回折法(laser diffraction method)を利用して測定できる。具体的には、測定対象粒子を分散媒中に分散させた後、MasterSizer3000などのようなレーザ回折粒度測定装置に導入して、粒子がレーザビームを通過する時、粒子サイズによる回折パターンの差を測定して粒度分布を算出する。
【0026】
また、前記ポリ塩化ビニルは、重量平均分子量(Mw)が45,000~300,000g/mol、より具体的には50,000~130,000g/molであってもよい。このような範囲の重量平均分子量を有する場合、エマルジョン内の分酸性に優れて機械的安定性を向上させることができる。
【0027】
本発明において、ポリ塩化ビニルの重量平均分子量(Mw)は標準ポリスチレン換算値で、ゲル透過クロマトグラフィーを用いて測定可能である。具体的には、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)装置としてAgilent1200/Malvern TDA302機器を用い、PLgel Mixed-B(Polymer Laboratories、10μm、3×300mm)カラムを用いる。この時、測定温度は45℃であり、THF(Tetrahydrofuran)を溶媒として用い、流速は1mL/minとする。重合体のサンプルはTHFを用いて4mg/mLの濃度に調製した後、常温で8時間溶かして前処理し、200μLの量を機器に注入する。ポリスチレン標準試験片を用いて形成された検定曲線を利用してMw値を誘導する。この時、ポリスチレン標準試験片の重量平均分子量は、1,480g/mol、2,340g/mol、8,450g/mol、19,760g/mol、38,100g/mol、70,950g/mol、139,400g/mol、271,000g/mol、591,000g/mol、および1,730,000g/molを使用する。
【0028】
一方、前記水性難燃接着剤組成物において、ベース樹脂は、ビニルアセテート-エチレン(VAE)共重合体、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ウレタン系樹脂、またはシリコーン系樹脂などであってもよい。これらのベース樹脂は、接着剤組成物に使用される従来の合成ゴムラテックスと比較して臭素系難燃剤を用いないので、環境にやさしい。
【0029】
前記ベース樹脂の中でも、優れた接着特性とともに、水性ポリ塩化ビニルエマルジョンとの混和性に優れたビニルアセテート-エチレン(VAE)共重合体が好ましい。
【0030】
また、前記ベース樹脂は、水性媒質、具体的には、ベース樹脂の粒子が水中に分散した、水性エマルジョンであってもよい。この時、前記ベース樹脂はさらに、100nm~1.5μm、より具体的には500nm~1.2μmの平均粒子径(D[4,3])を有するものが好ましい。前記平均粒子径が100nm未満であれば、粒子安定性が悪化する恐れがあり、1.5μmを超えると、乾燥後の粒子の凝集力が低下して、接着物性が低下する恐れがある。
【0031】
一方、本発明において、前記ベース樹脂の平均粒子径(D[4,3])は、光学顕微鏡観察法、光散乱測定法、レーザ回折法などの通常の粒子サイズ分布測定方法により測定可能であり、具体的には、Malvern社のZetasizerあるいはMaster Sizerを用いて測定できる。より具体的には、前記ポリ塩化ビニルの平均粒子径測定方法と同様の方法および条件で測定できる。
【0032】
また、前記ベース樹脂は、重量平均分子量が100,000g/mol以上であり、700,000g/mol以下であってもよい。重量平均分子量が100,000g/mol未満であれば、凝集力の低下によって耐久性が低下する恐れがあり、700,000g/molを超えると、接着特性が低下したり、粒子のサイズまたは粘度の上昇によって塗布性が低下したりする恐れがある。
【0033】
本発明において、前記ベース樹脂の重量平均分子量(Mw)は、GPC(gel permeation chromatography)によって測定したポリスチレン換算値である。具体的には、Polymer Laboratories社のPLgel MIX-B 300mmの長さのカラムとWaters PL-GPC220機器を用いて測定可能であり、測定温度は160℃であり、テトラヒドロフランまたは1,2,4-トリクロロベンゼンを溶媒として用い、流速は1mL/minとする。ベース樹脂のサンプルを10mg/10mLの濃度に調製した後、200μLの量で機器に注入する。ポリスチレン標準試験片を用いて形成された検定曲線を利用してMw値を誘導し、この時、前記ポリスチレン標準品の分子量は190,000g/molである。
【0034】
一例として、前記ベース樹脂としてビニルアセテート-エチレン(VAE)共重合体を用いる場合、前記ビニルアセテート-エチレン共重合体は、共重合体の総重量を基準として、エチレン10~20重量%およびビニルアセテート30~50重量%を、ポリビニルアルコール40~60重量%でエマルジョン重合させたエマルジョン共重合体であってもよい。
【0035】
他の例として、前記ベース樹脂としてアクリル系樹脂を用いる場合、前記アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸エステル系単量体および架橋性単量体を含む単量体混合物の重合体であってもよい。
【0036】
前記(メタ)アクリル酸エステル系単量体の種類は特に限定されず、例えば、アルキル(メタ)アクリレートを使用することができる。この場合、単量体に含まれるアルキル基が過度に長くなると、硬化物の凝集力が低下し、ガラス転移温度や接着性の調節が困難になる恐れがあるので、炭素数が1~14、好ましくは、炭素数が1~8のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを使用することができる。このような単量体の例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルブチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、またはイソノニル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、本発明では、上記の1種または2種以上の混合を使用することができる。
【0037】
また、前記単量体混合物に含まれる架橋性単量体は、分子構造内に共重合性官能基(ex.炭素-炭素二重結合)および架橋性官能基を同時に含む単量体を意味し、前記単量体は、重合体に多官能性架橋剤と反応可能な架橋性官能基を付与することができる。
【0038】
前記架橋性単量体の例としては、ヒドロキシ基含有単量体、カルボキシル基含有単量体または窒素含有単量体などが挙げられ、このうち1種または2種以上の混合を使用することができる。本発明では、特に前記架橋性単量体として、カルボキシル基含有単量体を用いることが好ましいが、これに制限されるわけではない。
【0039】
前記ヒドロキシ基含有単量体の例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチレングリコール(メタ)アクリレートまたは2-ヒドロキシプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられ;カルボキシル基含有単量体の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシ酢酸、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル酸、4-(メタ)アクリロイルオキシブチル酸、アクリル酸二重体、イタコン酸またはマレイン酸などが挙げられ;窒素含有単量体の例としては、2-イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、3-イソシアナトプロピル(メタ)アクリレート、4-イソシアナトブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N-ビニルピロリドンまたはN-ビニルカプロラクタムなどが挙げられるが、これらに制限されるわけではない。
【0040】
前記単量体混合物は、単量体混合物の総重量に対して、(メタ)アクリル酸エステル系単量体80~99.9重量%および架橋性単量体0.1~20重量%、好ましくは、(メタ)アクリル酸エステル系単量体90~99.9重量%および架橋性単量体0.1~10重量%を含むことができる。
【0041】
前記それぞれの成分を含むベース樹脂を製造する方法は特に限定されず、例えば、溶液重合、光重合、バルク重合、懸濁(suspension)重合または乳化(emulsion)重合のような一般的な重合法により製造することができる。本発明では、特に懸濁重合または乳化重合法を用いて水分散型ベース樹脂を製造することが好ましく、より好ましくは、乳化重合法により製造することが好ましい。
【0042】
前記ベース樹脂は、水性ポリ塩化ビニルエマルジョンと、固形分基準で90:10~10:90の重量比(ベース樹脂:水性ポリ塩化ビニルエマルジョン)で含まれる。前記混合重量比の範囲を外れて、ベース樹脂の含有量が10重量部未満であり、水性ポリ塩化ビニルエマルジョンの含有量が90重量部を超えると、接着性低下の恐れがあり、ベース樹脂の含有量が90重量部を超え、水性ポリ塩化ビニルエマルジョンの含有量が10重量部未満であれば、難燃性低下の恐れがある。
【0043】
ベース樹脂と水性ポリ塩化ビニルエマルジョンの含有量比の制御による接着性および難燃性改善効果の優秀さを考慮する時、より具体的には、固形分基準でベース樹脂と水性ポリ塩化ビニルエマルジョンは、60:40~90:10、あるいは70:30~85:15の重量比で含まれる。
【0044】
また、発明の一実施形態による水性難燃接着剤組成物は、可塑剤をさらに含むことができる。
【0045】
前記可塑剤は、具体的には、C4-10のアルキル基を2個含むシクロヘキサンジカルボキシレート系化合物であってもよい。
【0046】
前記シクロヘキサンジカルボキシレート系化合物において、2個のアルキル基は、互いに同一または異なっていてもよい。より具体的には、2個のアルキル基は、互いに同一であり、C4-10のアルキル基であってもよく、より具体的には、2個のアルキル基は、n-ブチルなどのようなC4-8の直鎖状アルキルであるか;またはエチルヘキシル、イソノニルなどのようなC6-10の分枝鎖状のアルキルであってもよい。
【0047】
前記シクロヘキサンジカルボキシレート系化合物は、接着剤組成物に含まれる場合、Tgを低下させることができ、増粘効果を付与することができる。また、耐寒性に優れた特徴により接着剤組成物の接着性および低温安定性を改善させることができる。
【0048】
より具体的な例としては、ジ(2-エチルヘキシル)シクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレート(Di(2-ethylhexyl)cyclohexane-1,4-dicarboxylate;DEHCH)、ジイソノニルシクロヘキサン-1,2-ジカルボキシレート(Diisononyl cyclohexane-1,2-dicarboxylate;DINCH)、ジ(2-エチルヘキシル)シクロヘキサン-1,2-ジカルボキシレート(Di(2-ethylhexyl)cyclohexane-1,2-dicarboxylate;DOCH)、またはジブチルシクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレート(Dibutyl cyclohexane-1,4-dicarboxylate;DBCH)などが挙げられ、これらのいずれか1つまたは2以上の混合物が使用できる。
【0049】
この中でも、前記DEHCHは、下記の化学式1で表される化合物であって、接着力および低温安定性の改善効果に優れているだけでなく、常温および低温粘度が低くて優れたコーティング特性を実現することができる。また、既存のフタレート系可塑剤に比べて揮発性有機化合物の発生を最小化することができる。
【0050】
【化1】
【0051】
前記可塑剤は、固形分基準で前記ベース樹脂と水性ポリ塩化ビニルエマルジョンの混合物100重量部に対して10~30重量部含まれる。可塑剤の含有量が10重量部未満であれば、可塑剤の含有による接着性および低温安定性の改善効果がわずかであり、30重量部を超える場合、接着剤の剪断強度が低下することがある。含有量の制御による改善効果の優秀さを考慮する時、前記可塑剤は、前記ベース樹脂と水性ポリ塩化ビニルエマルジョンとの混合物100重量部に対して20~30重量部含まれることがより好ましい。
【0052】
また、発明の実施形態による水性難燃接着剤組成物は、添加剤、例えば、架橋剤、開始剤、低分子量体、エポキシ樹脂、紫外線安定剤、酸化防止剤、調色剤、補強剤、消泡剤、可塑剤、発泡剤、有機塩、増粘剤および難燃剤からなる群より選択された1つ以上を追加的に含むことができる。前記添加剤は、塩化ビニル系樹脂組成物で向上させようとする物性に応じて好適に選択可能である。
【0053】
このような水性難燃接着剤組成物は、塩化ビニル単量体単独、または塩化ビニル単量体およびこれと共重合可能な共単量体との混合物を水性媒体中で乳化重合またはシード乳化重合して、ポリ塩化ビニルが水性媒体中に分散した水性ポリ塩化ビニルエマルジョンを製造する段階(段階1);および前記水性ポリ塩化ビニルエマルジョンをベース樹脂と固形分基準で10:90~90:10の重量比で混合する段階(段階2);を含む製造方法によって製造できる。
【0054】
以下、各段階別に説明すれば、まず、前記水性難燃接着剤組成物製造のための段階1は、水性ポリ塩化ビニルエマルジョンを製造する段階である。
【0055】
具体的には、前記水性ポリ塩化ビニルエマルジョンは、塩化ビニル単量体単独、または塩化ビニル単量体およびこれと共重合可能な共単量体との混合物を水性媒体中で乳化剤、および重合開始剤を添加し、乳化重合またはシード乳化重合することによって行われる。
【0056】
この時、塩化ビニル単量体およびこれと共重合可能な共単量体の種類は先に説明した通りである。
【0057】
また、前記乳化剤としては、陰イオン系乳化剤または非イオン系乳化剤などを単独または2種以上混合して使用することができる。前記陰イオン系乳化剤としては、カルボン酸、アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、α-オレフィンスルホン酸またはアルキルリン酸などを使用することができる。前記非イオン系乳化剤としては、ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、シリコーン系乳化剤などを使用することができる。
【0058】
前記乳化剤は、重合反応前に水性媒体中に一括投入するか、重合反応中に水性媒体に連続投入することができる。あるいは、重合反応が完了した後、ラテックスに添加してもよいし、必要に応じて前記方法を組み合わせて使用することができる。
【0059】
また、前記乳化重合またはシード乳化重合時、必要に応じて補助分散剤をさらに使用することができる。
【0060】
前記補助分散剤は、乳化剤と共に、重合およびラテックスの安定性を維持するために使用するもので、具体的には、ラウリルアルコール、ミリスチックアルコール、ステアリルアルコールなどの高級アルコール類、またはラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸などの高級脂肪酸などを使用することができる。
【0061】
また、前記乳化重合またはシード乳化重合に使用する重合開始剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウムまたは過酸化水素などのような水溶性重合開始剤を用いることができ、必要に応じて、亜硫酸ナトリウム、ナトリウム、アスコルビン酸(ascorbic acid)などの還元剤と共に使用することができる。
【0062】
また、前記水性媒体としては、蒸留水、脱イオン水などの水を使用することができる。
このような成分を混合し、重合反応を行うことによって、ポリ塩化ビニルの微細粒子が水性媒体、具体的には、水中に分散した水性ポリ塩化ビニルエマルジョン(または塩化ビニル樹脂ラテックス)を製造することができる。
【0063】
重合が完了した後には、重合されない未反応単量体除去のための工程を選択的にさらに行うことができ、また、実現しようとするポリ塩化ビニルの物性に応じて前記重合条件を適切に変更することができる。
【0064】
また、重合方法によって異なるが、前記水性ポリ塩化ビニルエマルジョンにおいて、ポリ塩化ビニルを含む固形分の含有量が約30~約60重量%であってもよい。
【0065】
次に、段階2は、前記段階1で製造した水性ポリ塩化ビニルエマルジョンをベース樹脂と混合する段階である。
この時、前記ベース樹脂の種類および混合比は先に説明した通りであり、前記混合は通常の方法により行われる。
【0066】
また、前記水性ポリ塩化ビニルエマルジョンとベース樹脂との混合時、可塑剤がさらに添加されてもよいし、この時、可塑剤の種類および含有量は先に説明した通りである。
【0067】
上記の製造方法により製造された水性難燃接着剤組成物は、通常の難燃剤の使用なくても優れた難燃性を示すことができる。具体的には、前記接着剤組成物は、UL94 Vの難燃規定による難燃性評価時、V0またはV1の難燃性を示す。これによって、従来の有機難燃剤の代替によるコスト節減、無機難燃剤の添加による接着剤の層分離を改善することができる。
【0068】
また、前記水性難燃接着剤組成物は、優れた接着力および低温安定性を示すことができる。具体的には、前記接着剤組成物は、ISO8510-2による180°剥離試験時、アルミニウムに対して15gf/mm以上、あるいは15~50gf/mmの剥離強度を示す。さらに、前記接着剤組成物は、-4℃および-15℃で1日間保管後にも、凝集による塊の発生がない。
【0069】
これによって、前記水性難燃接着剤組成物は、環境にやさしく、優れた難燃性と接着力および低温安定性が要求される建築用、産業用などの多様な分野に有用であり得る。
【0070】
このため、本発明の他の側面によれば、前記水性難燃接着剤組成物を含む物品が提供される。前記物品は、具体的には、建築用/産業用接着剤、接着フィルム、デコシート、床材、人工皮革、または玩具などであってもよい。
【0071】
以下、下記の実施例により本発明をさらに詳細に説明する。ただし、下記の実施例は本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明の範囲がこれらにのみ限定されるものではない。
【0072】
<水性PVCエマルジョンの製造>
製造例
高圧反応器に、脱イオン水76kgおよび塩化ビニル単量体39.55kgおよび酢酸ビニル単量体16.95kgを混合投入した後、高圧反応器の温度65℃下に乳化重合して、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体で水に分散した、水性ポリ塩化ビニルエマルジョンを製造した。
製造した水性ポリ塩化ビニルエマルジョンでのポリ塩化ビニルは、Tgが60℃であり、平均粒子径(D[4,3])が180nmであり、重量平均分子量が75,000g/molであり、エマルジョン中の固形分含有量が43重量%である。
【0073】
<水性難燃接着剤組成物の製造>
実施例1
ベース樹脂として水性VAEエマルジョン(VINNAPASTM EP706、Wacker Chemie AG社製、平均粒子径(D[4,3])1μm、Tg5℃)と、前記製造例で製造した水性PVCエマルジョンとを固形分基準で70:30の重量比で混合して、水性難燃接着剤組成物を製造した。
【0074】
実施例2
ベース樹脂として水性VAEエマルジョン(VINNAPASTM EP706、Wacker Chemie AG社製)と、前記製造例で製造した水性PVCエマルジョンとを固形分基準で70:30の重量比で混合し、固形分基準で結果の混合物100重量部に対して、可塑剤として1,4-DEHCHを20重量部追加混合して、水性難燃接着剤組成物を製造した。
【0075】
実施例3
ベース樹脂として水性VAEエマルジョン(VINNAPASTM EP706、Wacker Chemie AG社製)と、前記製造例で製造した水性PVCエマルジョンとを固形分基準で90:10の重量比で混合して、水性難燃接着剤組成物を製造した。
【0076】
実施例4
ベース樹脂として水性VAEエマルジョン(VINNAPASTM EP706、Wacker Chemie AG社製)と、前記製造例で製造した水性PVCエマルジョンとを固形分基準で60:40の重量比で混合して、水性難燃接着剤組成物を製造した。
【0077】
実施例5
ベース樹脂として水性アクリル系樹脂エマルジョン(WJP-8100FTM、ウジンChem社製、平均粒子径(D[4,3])170nm、Tg5℃および重量平均分子量120,000g/mol)と、前記製造例で製造した水性PVCエマルジョンとを固形分基準で70:30の重量比で混合して、水性難燃接着剤組成物を製造した。
【0078】
比較例1
水性PVCエマルジョンの混合なしに、前記実施例1で用いた水性VAEエマルジョン(VINNAPASTM EP706、Wacker Chemie AG社製)を接着剤組成物として用いた。
【0079】
比較例2
水性PVCエマルジョンを用いないことを除けば、前記実施例2と同様の方法で行って、接着剤組成物を製造した。
【0080】
実験例
前記実施例および比較例で製造した接着剤組成物に対して、下記の方法で難燃性、接着力および低温安定性を評価した。その結果を表2に示した。
(1)難燃性:UL94 V(Vertical Burning Test)難燃規定により125×13×1mm Bar試験片で難燃度を測定し、下記表1に記載された基準により評価した。
<難燃性評価基準>
【0081】
【表1】
【0082】
(2)接着力(剥離強度):180°剥離試験方法(ISO8510-2)で測定した。
(3)低温安定性:前記実施例および比較例で製造した接着剤組成物をそれぞれ-4℃および-15℃のオーブンにて1日間保管した後、組成物の状態および粘度を確認した。
<評価基準>
優秀:組成物の状態および粘度とも正常
普通:組成物の粘度変化(使用可能水準)
悪化:組成物内の凝集による塊発生(使用不可水準)
【0083】
【表2】
【0084】
実験結果、ベース樹脂に対して水性PVCエマルジョンを混合した実施例1~5の接着剤組成物は、同一のベース樹脂を含むが、水性PVCエマルジョンを投入しない比較例1および2の接着剤組成物と比較して、同等水準以上の難燃性および剥離強度を示しながらも、同時に大きく改善された難燃性を示した。
【0085】
また、実施例1の組成物に可塑剤がさらに添加された実施例2の場合、実施例1および比較例2に比べて剥離強度が大きく増加した。この結果から、可塑剤の含有で接着力を改善させることができることを確認できる。
【0086】
一方、実施例1に比べて水性PVCエマルジョンの含有量が減少した実施例3の接着剤組成物は、実施例1に比べれば難燃性の改善効果が多少低下したが、水性PVCエマルジョンを含まない比較例1、可塑剤を含む比較例2に比べれば改善された難燃性を示した。なお、剥離強度の面でも比較例1および2に比べて大きく改善された効果を示し、低温安定性において比較例1に比べて改善された効果を示した。
【0087】
また、実施例1に比べて水性PVCエマルジョンの含有量が増加した実施例4の場合、比較例1および2に比べて大きく改善された難燃性および低温安定性を示しているのに対し、ベース樹脂の含有量減少によって剥離強度は多少減少した。
【0088】
さらに、ベース樹脂の種類を異ならせた実施例5の接着剤組成物は、顕著に改善された低温安定性を示し、金属に対する剥離強度も改善された効果を示した。