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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】反射型の電磁波吸収体
(51)【国際特許分類】
   H05K 9/00 20060101AFI20230801BHJP
   B32B 7/025 20190101ALI20230801BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20230801BHJP
   H01Q 17/00 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
H05K9/00 M
H05K9/00 W
B32B7/025
B32B9/00 A
H01Q17/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022514217
(86)(22)【出願日】2021-12-15
(86)【国際出願番号】 JP2021046304
(87)【国際公開番号】W WO2022131298
(87)【国際公開日】2022-06-23
【審査請求日】2022-03-02
【審判番号】
【審判請求日】2022-11-08
(31)【優先権主張番号】P 2020209095
(32)【優先日】2020-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100223424
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 雄二
(72)【発明者】
【氏名】西山 碩芳
(72)【発明者】
【氏名】正田 亮
【合議体】
【審判長】中野 裕二
【審判官】山澤 宏
【審判官】野崎 大進
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-161584(JP,A)
【文献】特開2013-236064(JP,A)
【文献】国際公開第2018/088492(WO,A1)
【文献】特開2020-145278(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
B32B27/00
H01G 4/00
H01G 4/06
H01G 4/20
H01G 4/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ0.1~2.0μmの電磁波透過層と、無機材料を含む抵抗層と、誘電体層と、反射層とをこの順序で備える積層構造を有し、
前記電磁波透過層は、ポリチオフェン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリアニリン誘導体及びポリピロール誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一種の導電性有機材料を含有し、
前記誘電体層は、少なくとも一種の誘電性化合物と、粘着性を有する樹脂成分とを含有する樹脂組成物で構成されており、
前記樹脂組成物は、周波数3.7GHz及び周波数90GHzの少なくとも一方における比誘電率が10.0よりも高く且つJIS Z0237:2009に記載の方法に準拠して測定されるステンレス304鋼板に対する粘着力が1.0N/25mm以上10N/25mm以下である、反射型の電磁波吸収体。
【請求項2】
厚さ0.1~2.0μmの電磁波透過層と、無機材料を含む抵抗層と、誘電体層と、反射層とをこの順序で備える積層構造を有し、
前記電磁波透過層は、ポリエチレンジオキシチオフェンを含む導電性ポリマーを含有し、
前記誘電体層は、少なくとも一種の誘電性化合物と、粘着性を有する樹脂成分とを含有する樹脂組成物で構成されており、
前記樹脂組成物は、周波数3.7GHz及び周波数90GHzの少なくとも一方における比誘電率が10.0よりも高く且つJIS Z0237:2009に記載の方法に準拠して測定されるステンレス304鋼板に対する粘着力が1.0N/25mm以上10N/25mm以下である、反射型の電磁波吸収体。
【請求項3】
前記誘電体層は、周波数90GHzにおける比誘電率が10.0よりも高い樹脂組成物で構成されており、
前記誘電体層の厚さが20~80μmである、請求項1又は2に記載の電磁波吸収体。
【請求項4】
前記誘電性化合物の比誘電率が前記樹脂成分の比誘電率よりも高い、請求項1~のいずれか一項に記載の電磁波吸収体。
【請求項5】
前記誘電性化合物が金属化合物である、請求項1~のいずれか一項に記載の電磁波吸収体。
【請求項6】
前記金属化合物が酸化チタン及びチタン酸バリウムの少なくとも一方である、請求項に記載の電磁波吸収体。
【請求項7】
前記樹脂成分の周波数90GHzにおける比誘電率が2.5~9.5である、請求項1~のいずれか一項に記載の電磁波吸収体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、反射型の電磁波吸収体が備える誘電体層の製造方法、誘電体層の形成に用いられる樹脂組成物、及び誘電体層を含む積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、急速な情報量の増加や移動体の高速化、自動運転、IoT(Internet of Things)の実用化に向け、各々に対応できる通信、レーダー、セキュリティ用のスキャナ等の需要が益々高まっている。これに伴い5G、ミリ波、テラヘルツ波を活用した次世代の電磁波を用いた高速無線通信方式に関する技術が急速に進んでいる。
【0003】
電磁波を利用した製品は、他の電子機器から発生する電磁波と干渉し、誤作動を引き起こすことがある。これを防止するための手段としてλ/4型と称される反射型の電磁波吸収体が知られている。特許文献1には、極細導電繊維を含んだ抵抗膜と電波反射体との間に誘電体層を備えた電波吸収体が開示されている。特許文献2には、誘電体層又は磁性体層である第一層と、この第一層の少なくとも片側に設けられた導電層とを備え、第一層の比誘電率が1~10である電磁波吸収体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-311330号公報
【文献】国際公開第2018/230026号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
反射型の電磁波吸収体が備える誘電体層は入射する電磁波と反射した電磁波を干渉させるための層である。誘電体層の厚さは以下の式に基づいて設定される。
d=λ/(4(ε1/2
式中、λは低減すべき電磁波の波長(単位:m)を示し、εrは誘電体層を構成する材料の比誘電率、dは誘電体層の厚さ(単位:m)を示す。入射する電磁波の位相と反射した電磁波の位相がπずれることで反射減衰が得られる。従来、十分な反射減衰量を達成するためには、誘電体層を厚くせざるを得なかった。このため、誘電体層の作製効率や省スペース化の点において、未だ改善の余地があった。
【0006】
本開示は、反射型の電磁波吸収体に用いられる誘電体層であって、優れた反射減衰量を実現できる誘電体層を効率的に製造する方法を提供する。また、本開示は、かかる誘電体層の形成に用いられる樹脂組成物、及び誘電体層を含む積層体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一側面は、反射型の電磁波吸収体が備える誘電体層の製造方法に関する。この製造方法は、少なくとも一種の誘電性化合物と、樹脂成分とを含有し、周波数3.7GHz又は90GHzにおける比誘電率が10.0よりも高い樹脂組成物を調製する工程と、この樹脂組成物からなる厚さ20~7000μmの誘電体層を形成する工程とを含む。
【0008】
特許文献2に記載の発明では50~100GHzの帯域幅で2GHz以上の帯域幅において良好な電磁波吸収性能を発揮させるため、第一層の比誘電率を1~10の範囲に設定していると認められる(特許文献2の段落[0016]参照)。これに対し、本開示においては、誘電体層の比誘電率を10.0よりも高い値に設定している。これは以下の技術思想に基づくものである。すなわち、例えば、実用が想定される76GHz車載用ミリ波レーダーを考えると、占有周波数帯域幅の許容値が500MHz(日本)~1GHz(諸外国)範囲に限られている。この1GHz程度の周波数帯域で十分な吸収性能(例えば、-20dB)を満たせばよい場合もある。つまり、吸収周波数帯域を広げる必要がない場合には、誘電体層の比誘電率を大きくし、誘電体層を薄くすることによって、誘電体層の作製効率や省スペース化を優先させた方が有用である。一般に、誘電体層の比誘電率は、周波数が高くなるほど低くなる傾向を示す。周波数3.7GHz又は90GHzにおける比誘電率が10.0よりも高ければ、本開示に係る誘電体層は、5G(28GHz)用や、ミリ波レーダー(76GHz)用の電磁波吸収体として、先に述べた課題に対し十分に効果を発揮できる。
【0009】
本開示の一側面は、反射型の電磁波吸収体が備える誘電体層の形成に用いられる樹脂組成物に関する。この樹脂組成物は、少なくとも一種の誘電性化合物と、樹脂成分とを含有し、周波数3.7GHz又は90GHzにおける比誘電率が10.0よりも高い。誘電性化合物の態様は、例えば、粉状であり、その比誘電率は樹脂成分の比誘電率よりも高いことが好ましい。誘電性化合物の具体例として、酸化チタン及びチタン酸バリウムなどの金属化合物が挙げられる。樹脂成分の周波数3.7GHz又は90GHzにおける比誘電率は、例えば、2.5~9.5であることが好ましい。
【0010】
樹脂組成物はそれ自体が粘着性を有することが好ましい。粘着性を有する樹脂組成物で誘電体層を構成することで、誘電体層を効率的に対象部材に貼り付けることができる。樹脂組成物のステンレス304鋼板に対する粘着力は1.0N/25mm以上であることが好ましい。
【0011】
本開示の一側面は、誘電体層を含む積層体に関する。この積層体は、上記樹脂組成物からなる誘電体層と、誘電体層の少なくとも一方の面上に設けられた粘着層とを備える。かかる構成によれば、粘着層を介して対象部材に誘電体層を効率的に貼り付けることができる。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、反射型の電磁波吸収体に用いられる誘電体層であって、優れた反射減衰量を実現できる誘電体層を効率的に製造する方法が提供される。また、本開示によれば、かかる誘電体層の形成に用いられる樹脂組成物及び誘電体層を含む積層体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は本開示に係る積層体の第一実施形態を模式的に示す断面図である。
図2図2は本開示に係る積層体の第二実施形態を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本開示の複数の実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0015】
<第一実施形態>
図1は第一実施形態に係る反射型の電磁波吸収体を模式的に示す断面図である。この図に示す電磁波吸収体10はフィルム状又はシート状であり、電磁波透過層1と誘電体層3と反射層4とをこの順序で備える積層構造を有する。なお、フィルム状の電磁波吸収体は、例えば、全体の厚さが24~250μmである。他方、シート状の電磁波吸収体は、例えば、全体の厚さが0.25~7.1mmである。
【0016】
(電磁波透過層)
電磁波透過層1は外側から入射してきた電磁波を誘電体層3へと至らしめるための層である。すなわち、電磁波透過層1は、電磁波吸収体10が使用される環境や層構成に応じたインピーダンスマッチングをするための層であり、これにより反射減衰量が大きい電磁波吸収体10が得られる。電磁波吸収体10が空気(インピーダンス:377Ω/□)中で使用される場合、誘電体層3の比誘電率に応じて電磁波透過層1のシート抵抗を設定すればよく、例えば、3.7GHzにおける誘電体層3の比誘電率が10より大きい場合、電磁波透過層1のシート抵抗は200~800Ω/□の範囲に設定すればよく、350~400Ω/□の範囲に設定してもよい。90GHzにおける誘電体層3の比誘電率が10より大きい場合、電磁波透過層1のシート抵抗は200~800Ω/□の範囲に設定すればよく、350~400Ω/□の範囲に設定してもよい。
【0017】
電磁波透過層1は、導電性を有する無機材料や有機材料を含有する。導電性を有する無機材料としては、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化亜鉛アルミニウム(AZO)、カーボンナノチューブ、グラフェン、Ag、Al、Au、Pt、Pd、Cu、Co、Cr、In、Ag-Cu、Cu-Au及びNiナノ粒子からなる群から選択される1つ以上を含むナノ粒子、又は及びナノワイヤーが挙げられ、導電性を有する有機材料としては、ポリチオフェン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリアニリン誘導体、ポリピロール誘導体、が挙げられる。特に柔軟性、成膜性、安定性、377Ω/□のシート抵抗の観点から、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)を含む導電性ポリマーが好ましい。電磁波透過層1は、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)とポリスチレンスルホン酸(PPS)との混合物(PEDOT/PSS)を含むものであってもよい。
【0018】
電磁波透過層1のシート抵抗値は、導電性材料の抵抗率ρ(Ω・m)、導電性材料の厚さt(m)とすると、導電性材料のシート抵抗値σ=ρ/tで与えられる。したがって、導電性を有する無機材料や有機材料の選定、膜厚の調節によって適宜設定することができる。電磁波透過層1が無機材料で構成される場合、電磁波透過層1の厚さ(膜厚)は、0.1nm~100nmの範囲内とすることが好ましく、1nm~50nmの範囲内とすることがより好ましい。膜厚が0.1nm以上であると、均一な膜を形成しやすく、電磁波透過層1としての機能をより十分に果たすことができる傾向がある。一方、膜厚が100nm以下であると、十分なフレキシビリティを保持することができ、製膜後に折り曲げ、引張などの外的要因により、薄膜に亀裂を生じることをより確実に防ぐことができ且つ基材への熱による損傷や収縮を抑える傾向がある。電磁波透過層1が有機材料で構成される場合、電磁波透過層1の厚さ(膜厚)は、0.1~2.0μmの範囲内とすることが好ましく、0.1~0.4μmの範囲内とすることがより好ましい。膜厚が0.1μm以上であると、均一な膜を形成しやすく、電磁波透過層1としての機能をより十分に果たすことができる傾向がある。一方、膜厚が2.0μm以下であると、十分なフレキシビリティを保持させることができ、成膜後に折り曲げ、引っ張りなどの外的要因により、薄膜に亀裂を生じることをより確実に防ぐことができる傾向がある。
【0019】
製膜方法として、ドライコーティング方法とウェットコーティング方法が挙げられる。
【0020】
ドライコーティング方法は、主に抵抗加熱や誘導加熱、イオンビーム(EB)を用いた真空蒸着方式や、スパッタリング方式、等が挙げられる。抵抗加熱方式は、材料をセラミック製のるつぼに入れ、るつぼを取り巻くヒーターに電圧を印加させることで電流を流し、真空中でるつぼを加熱することで開口部から無機材料を蒸発させ、基材に付着させることで製膜する。材料と基材間距離、ヒーターに印加する電圧、電流を制御することで製膜速度を調整し、バッチ製膜であればシャッターの開閉時間やロール製膜であればライン速度などで製膜時間を制御することで、膜厚を制御する。イオンビームは、真空中でフィラメントに電流を流すことで電子を放出させ、電磁レンズで放出した電子を材料に直接当てることで、無機材料を加熱、蒸発させ、基材に付着させることで製膜する。蒸発させるために、大きな熱量が必要な無機材料や大きな製膜レートが必要な場合に用いられる。材料と基材間距離、電流でフィラメントから発生させる電子量と電磁レンズで材料の照射位置や範囲(しぼり)を制御し、製膜速度を調整し、前記同様シャッターの開閉時間やライン速度で製膜時間を制御し、膜厚を制御する。スパッタリング方式は、無機材料からなるターゲット上に、主にArなどの希ガスを導入し、電圧を印加することでArをプラズマ化させ、プラズマ化したArを電圧で加速させターゲットに衝突させることで、材料を物理的に弾き飛ばし(スパッタリング)、基材に付着させることで製膜する。眞空蒸着方式では製膜できない無機材料もスパッタリング方式であれば製膜可能な場合がある。ターゲットと基材間距離や、ターゲットに印加する電力、Arガス圧、を制御し、製膜速度を調整し、前記同様シャッターの開閉時間やライン速度で製膜時間を制御し、膜厚を制御する。主に無機材料を製膜する際に用いられる。
【0021】
ウェットコーティング方法は、主に材料を基材に塗布する方法で、常温常圧下で固体の材料は、適宜溶媒に溶解、又は分散によりインキ化し、塗工した後、乾燥により溶媒を除去し製膜する。塗布方法はダイコート、マイクログラビアコート、ロッドグラビアコート、グラビアコート、等が挙げられる。共通してインキの固形分とダイコートであればダイヘッド開口部のギャップ、基材、コーターヘッド間のギャップ、マイクログラビアコートとロッドグラビアコート、グラビアコートであれば、版の線数、深さ、版回転比、を制御し基材にインキを塗工、乾燥し膜厚を制御する。主に有機材料と一部の無機分散材料を製膜する際に用いられる。
【0022】
電磁波透過層1のシート抵抗値は例えばロレスターGP MCP-T610(商品名、株式会社三菱化学アナリテック製)を用いて測定することができる。
【0023】
(誘電体層)
誘電体層3は、入射する電磁波と反射した電磁波を干渉させるための層である。誘電体層3は、以下の式で表される条件を満たすように厚さ等が設定されている。
d=λ/(4(ε1/2
式中、λは抑制すべき電磁波の波長(単位:m)を示し、εrは誘電体層3を構成する材料の比誘電率、dは誘電体層3の厚さ(単位:m)を示す。入射する電磁波の位相と反射した電磁波の位相がπずれることで反射減衰が得られる。
【0024】
誘電体層3は、周波数3.7GHzにおける比誘電率が10.0よりも高い樹脂組成物で構成されている。誘電体層3の比誘電率が10.0よりも高いことで、上述のとおり、特定の周波数帯域において優れた吸収性能(好ましくは-15dB、より好ましくは-20dB)を実現し得る。これに加え、誘電体層3を薄くすることができるため、誘電体層3の生産性向上及び省スペース化の両方を高水準に達成できる。誘電体層3の周波数3.7GHzにおける比誘電率は、好ましくは10.0より高く30.0以下であり、より好ましくは10.0より高く20.0以下である。誘電体層3の周波数3.7GHzにおける比誘電率が30.0以下であることで、十分な強度を有する誘電体層3を形成できる傾向にある。例えば、誘電体層3の比誘電率を高めるために、過剰量の誘電性化合物を誘電体層3に配合すると、誘電体層3が脆くなる傾向にある。誘電体層3の厚さは、周波数帯と比誘電率により適宜設定すればよい。例えば、ミリ波レーダーなどの60GHz、76GHz又は90GHz帯での使用を想定した場合、誘電体層3の厚さは、好ましくは100~400μmであり、より好ましくは250~400μmである。5G通信用などの3.7GHz、4.5GHz又は28GHz帯での使用を想定した場合、誘電体層3の厚さは、好ましくは450~7000μmであり、より好ましくは650~6500μmである。また、近年、次世代通信規格や計測・分析技術、医療などの分野などで注目されているテラヘルツ波、例えば300GHzや350GHz帯での使用を想定した場合、誘電体層3の厚さは、好ましくは20~80μmであり、より好ましくは50~80μmである。
【0025】
誘電体層3を構成する樹脂組成物は、少なくとも一種の誘電性化合物と、樹脂成分とを含有する。樹脂組成物における誘電性化合物の選択及びその含有量に応じて、誘電体層3の比誘電率を調整することができる。樹脂組成物100体積部に対し、誘電性化合物の含有量は、好ましくは10~300体積部であり、より好ましくは25~100体積部である。樹脂組成物100質量部に対し、誘電性化合物の含有量は、好ましくは10~900質量部であり、より好ましくは25~100質量部である。樹脂組成物における誘電性化合物の含有量が下限値以上であることで、誘電体層3の比誘電率を十分に大きくできる傾向にあり、他方、上限値以下であることで、ウェットコーティング法又は押出し成形によって誘電体層3を効率的に製造する傾向にある。
【0026】
誘電性化合物として、チタン酸バリウム、酸化チタン及び酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化バナジウム、フォルステライト(MgSiO)、ニオブ酸マグネシウム酸バリウム(Ba(Mg1/3Nb2/3)O)、チタン酸ネオジム酸バリウム(BaNd9.3Ti1854)、窒化ガリウム、窒化アルミニウムなどの金属化合物が挙げられる。誘電性化合物の態様は粉末(例えば、ナノ粒子)であることが好ましい。誘電性化合物の比誘電率は樹脂成分の比誘電率よりも高いことが好ましい。誘電性化合物の周波数3.7GHz又は90GHzにおける比誘電率は、好ましくは10よりも高く5000以下であり、より好ましくは100~5000であり、更に好ましくは1000~5000である。
【0027】
樹脂成分として、例えば、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、グリプタル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリビニルホルマール、フェノール樹脂、ユリア樹脂及びポリクロロプレン樹脂が挙げられる。樹脂成分の周波数3.7GHz又は90GHzにおける比誘電率は、好ましくは2.5~9.5であり、より好ましくは3.5~9.5であり、更に好ましくは5.0~9.5である。
【0028】
樹脂組成物は粘着性を有することが好ましい。これにより、反射層4の表面4Fに対して誘電体層3を効率的に貼り付けることができる。かかる材料として、例えば、シリコーン粘着剤、アクリル粘着剤及びウレタン粘着剤が挙げられる。これらの材料を上記樹脂成分として使用してもよいし、これらの材料で構成される粘着層を誘電体層3の少なくとも一方の面上に形成してもよい。樹脂組成物自体又は粘着層のステンレス304鋼板に対する粘着力は、好ましくは1.0N/25mm以上であり、3.0~10.0N/25mm又は10.0~15.0N/25mmであってもよい。
【0029】
誘電体層3の複素誘電率は、下記式で表される。式中、iは虚数単位であり、ε’は複素誘電率の実部であり、ε”は複素誘電率の虚部である。
複素誘電率ε=ε’-iε”
複素誘電率の実部は比誘電率(真空の誘電率εに対する比)である。複素誘電率の虚部ε”の値は、誘電正接tanδ(=ε”/ε’)の値から導き出される。比誘電率及び誘電正接は誘電率測定装置を使用して求めることができる。
【0030】
誘電体層3の3.7GHz又は90GHzにおける複素誘電率の実部は、10よりも大きいことが好ましく、10.5~30であることがより好ましく、12~20であることが更に好ましい。この値が10よりも大きいことで、特定の周波数帯域において優れた吸収性能を達成できる傾向にある。他方、この値が30以下であることで、十分な強度を有する誘電体層3を形成できる傾向にある。誘電体層3の3.7GHz又は90GHzにおける複素誘電率の虚部は、好ましくは5以下であり、より好ましくは0~3.5であり、更に好ましくは0~3である。
【0031】
(反射層)
反射層4は誘電体層3から入射してきた電磁波を反射させ、誘電体層3へと至らしめるための層である。反射層4の厚さは、例えば、4~250μmであり、4~12μm又は50~100μmであってもよい。
【0032】
反射層4は、導電性を有する材料で構成され、シート抵抗値が100Ω/□以下であると電磁波を反射できるため好ましい。かかる材料は無機材料であっても有機材料であってもよい。導電性を有する無機材料として、例えば、酸化ンジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化亜鉛アルミニウム(AZO)、カーボンナノチューブ、グラフェン、Ag、Al、Au、Pt、Pd、Cu、Co、Cr、In、Ag-Cu、Cu-Au及びNiナノ粒子からなる群から選択される1つ以上を含むナノ粒子、又は及びナノワイヤーが挙げられる。導電性を有する有機材料として、例えば、ポリチオフェン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリアニリン誘導体、ポリピロール誘導体が挙げられる。導電性を有する無機材料又は有機材料を、シート抵抗が100Ω/□以下となる厚さで基材上に製膜してもよい。柔軟性、成膜性、安定性、シート抵抗値及び低コストの観点から、PETフィルムと、その表面に蒸着されたアルミニウム層とを備える積層フィルム(Al蒸着PETフィルム)を反射層として用いることが好ましい。
【0033】
<電磁波吸収体の製造方法>
電磁波吸収体10は、例えば、以下の工程を経て製造される。まず、ロール状の誘電体層を作製し、次いで、ロールtoロール方式によって誘電体層を含むロール状の積層体を作製する。この積層体を所定のサイズに切断することで電磁波吸収体10が得られる。ロール状の誘電体層は、(A)上記樹脂組成物を調製する工程と、(B)この樹脂組成物からなる誘電体層をロールtoロール方式によって形成する工程とを経て製造される。適用対象の周波数帯が高い場合(例えば、60GHz以上)、誘電体層の厚さが十分に薄いため、ロールtoロール方式によって電磁波吸収体10を製造できる。これに対し、適用対象の周波数帯が低い場合(例えば、28GHz未満)、誘電体層を厚く形成する必要があるため、ロールtoロール方式での製造が困難となる傾向にある。この場合、例えば、押出し成形によって誘電体層を形成することができる。つまり、適用対象の周波数帯(換言すれば、誘電体層の厚さ)に応じて作製方法を適宜選択すればよい。
【0034】
誘電体層及び積層体の製造方法は特に限定されず、ドライラミネート法、溶融押出しラミネート法、等の従来公知の方法を用いて製造することができる。具体的には誘電体層はコンマコーティングやダイコーティング、押出製膜やカレンダー製膜によって作製することができる。例えば、コンマコーティングではコンマロールとコーティングロール間に適度なギャップを取り、その間を基材が走行して隙間から塗液が一定量フィルムに塗工され、乾燥することで膜形成を行うことができる。基材には離型処理させたPET等を用いることで、積層体を作製する際に容易に誘電体層単体を得ることができる。また、電磁波透過層や反射層に直接塗工可能であれば、積層体を作製する際の貼り合せ工程を省略することができる。ギャップの調整により任意の膜厚の誘電体層を得ることができる。ダイコーティングではバックアップロール上を搬送される基材にコーティングギャップと呼ばれる隙間を空けてダイスロットから塗布液を塗布、乾燥させることにより誘電体層を作製することができる。供給液流量、コーティングギャップ、基材搬送速度等の調整により任意の膜厚の誘電体層を得ることができる。基材は先ほどと同様に離型処理PETや電磁波透過層や反射層を用いることができる。押出製膜では、誘電体層を形成するための樹脂組成物を樹脂組成物の融点Tm以上の温度~Tm+100℃程度の温度に加熱された溶融押出機に供給して、誘電体層を形成するための樹脂組成物を溶融し、例えばTダイ等のダイヘッドよりシート状に押出し、押出されたシート状物を回転している冷却ドラム等で急冷固化し、巻取ることにより誘電体層を製膜することができる。樹脂を吐出する「リップ」の開き具合で誘電体層の厚さを制御することができる。製膜装置に搬送用の基材の取り付けが必要な場合や、樹脂の熱溶着を使用して積層体が作製できる場合、電磁波透過層や反射層と熱溶着を利用して積層を行うことができる。カレンダー製膜も同様にミキシングロールを用いて樹脂を溶融させ、2本以上のカレンダーロール間に樹脂組成物を入れて回転させ、圧延、冷却し、巻き取ることにより誘電体層を作製できる。誘電体層の厚さはカレンダーロール間のクリアランスの調整により制御することができる。基材の取り付けができる場合はさきほどと同様である。上記製膜方法により作製された誘電体層が粘着性を有する場合、電磁波透過層や反射層とラミネーターを用いて貼り合せることで積層体を作製することができる。樹脂組成物自体に粘着性がない、もしくは粘着力が小さい場合には別途、ドライラミネート等を用いて粘着層を作製し、ラミネートを行い貼り合せを行う、樹脂組成物自体に粘着層を塗工、乾燥させ、積層体とする際に使用する電磁波透過層や反射層と貼り合せることで粘着層を付与することができる。また、電磁波透過層や反射層に粘着剤を塗工、乾燥し、誘電体層とドライラミネートすることで積層体を作製することもできる。
【0035】
<第二実施形態>
図2は第二実施形態に係る反射型の電磁波吸収体を模式的に示す断面図である。この図に示す反射型の電磁波吸収体20はフィルム状又はシート状であり、電磁波透過層1と抵抗層5と誘電体層3と反射層4とをこの順序で備える積層構造を有する。電磁波吸収体20は、電磁波透過層1と誘電体層3との間に、抵抗層5を備えることの他は、第一実施形態に係る電磁波吸収体10と同様の構成である。以下、抵抗層5について説明する。
【0036】
(抵抗層)
抵抗層5は電磁波透過層1から入射してきた電磁波を誘電体層3へと至らしめるための層である。すなわち、抵抗層5は、電磁波吸収体20が使用される環境や、電磁波透過層1の特性に応じてインピーダンスマッチングをするための層である。例えば、電磁波吸収体20が空気(インピーダンス:377Ω/□)中で使用され、且つ誘電体層3の複素誘電率の実部(比誘電率)が2.9であり、厚さが50μmの場合、抵抗層5のシート抵抗値を270~500Ω/□の範囲に設定すると高い反射減衰を得ることができる。
【0037】
抵抗層5は導電性を有する材料で構成される。かかる材料は無機材料であっても有機材料であってもよい。導電性を有する無機材料としては、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化亜鉛アルミニウム(AZO)、カーボンナノチューブ、グラフェン、Ag、Al、Au、Pt、Pd、Cu、Co、Cr、In、Ag-Cu、Cu-Au及びNiナノ粒子からなる群から選択される1つ以上を含むナノ粒子、又は及びナノワイヤーが挙げられる。導電性を有する有機材料として、例えば、ポリチオフェン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリアニリン誘導体、ポリピロール誘導体が挙げられる。柔軟性、ウェットコーティングの製膜適性、製膜後の大気中におけるシート抵抗の安定性及びシート抵抗値の観点から、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)を含む導電性ポリマーで抵抗層5を構成することが好ましい。例えば、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)とポリスチレンスルホン酸(PPS)との混合物(PEDOT/PSS)で抵抗層5を構成してもよい。
【0038】
抵抗層5のシート抵抗値は、例えば、導電性を有する材料の選定、抵抗層5の厚さの調節によって適宜設定することができる。抵抗層5の厚さは0.1~2.0μmの範囲内とすることが好ましく、0.1~0.4μmの範囲内とすることがより好ましい。厚さが0.1μm以上であると、均一な膜を形成しやすく、抵抗層5としての機能をより十分に果たすことができる傾向がある。一方、厚さが2.0μm以下であると、十分なフレキシビリティを保持させることができ、成膜後に折り曲げ、引っ張りなどの外的要因により、薄膜に亀裂を生じることをより確実に抑制できる傾向がある。シート抵抗値は、例えば、ロレスターGP MCP-T610(商品名、株式会社三菱化学アナリテック製)を用いて測定することができる。
【0039】
上記実施形態に係る電磁波吸収体10,20によれば、誘電体層3の周波数3.7GHz又は90GHzにおける比誘電率が10.0よりも高いため、誘電体層3を十分に薄くすることができる。これにより、誘電体層3の生産性向上及び省スペース化の両方を高水準に達成できる。また、電磁波吸収体10,20によれば、15dB以上(より好ましくは20dB以上)の大きな反射減衰を達成し得る。
【0040】
以上、本開示の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては、フィルム状又はシート状の電磁波吸収体10,20を例示したが、電磁波吸収体の形状はこれに限定されるものではない。例えば、図1,2に示す反射層4は層状でなくてもよい。
【実施例
【0041】
以下、本開示について、実施例及び比較例に基づいて説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0042】
以下の材料を使用して実施例及び比較例に係る誘電体層を作製した。
(1)樹脂成分
・アクリル樹脂:OC-3405(サイデン化学社製、3.7GHzにおける比誘電率:4.2)
・シリコーン樹脂:MHM-SI500(日榮加工社製、3.7GHzにおける比誘電率:3.2)
・ウレタン樹脂:C60A10WN(BASFジャパン社製、3.7GHzにおける比誘電率:4.5)
(2)誘電性化合物
・チタン酸バリウム粉末:BT-01(堺化学工業社製)
・酸化チタン粉末:CR-60(石原産業社製)
【0043】
(実施例1~3及び比較例1,2)
表1に示す組成の樹脂組成物をそれぞれ調製した。実施例及び比較例に係る樹脂組成物について、以下の項目について評価を行った。
【0044】
(1)比誘電率の測定
JIS C2138:2007に記載の方法に準拠し、空洞共振器法誘電率測定装置を用いて、周波数1MHzから1GHzの範囲で樹脂組成物の比誘電率を温度25℃、相対湿度50%の条件下で測定した。各水準にて5つの試料を準備し、測定を5回行った。周波数1MHz、500MHz及び1GHzの3つの比誘電率の測定値を片対数グラフにプロットして近似直線を引いた。なお、周波数を横軸(ログスケール)とし、比誘電率の値を縦軸をとした。この近似直線から3.7GHz及び90GHzにおける比誘電率を算出した。5回の測定から算出された比誘電率の値を表1に記載した。
【0045】
(2)樹脂組成物の粘着力の評価
JIS Z0237:2009に記載の方法に準拠し、樹脂組成物の粘着力を評価した。実施例及び比較例に係る樹脂組成物を厚さ0.2mmのフィルムに加工した後、これを切断して幅25mmの試料を得た。他方、一方の面が鏡面仕上げされたステンレス304鋼板を準備した。この面上に試料を配置した後、2kgのローラーを2往復させて圧着した。30分静置させた後、引張試験機を用いて試料をステンレス304鋼板に対して180°の角度で剥離して剥離強度を測定した。剥離速度は300mm/分とした。結果を表1に示した。
【0046】
(3)積層体の粘着力の評価
アクリル樹脂(OC-3405)は粘着性を有するものの、表1の実施例2,3の結果に示されたとおり、誘電性化合物の体積分率増加に伴って樹脂組成物の粘着力が低くなった。そのため、実施例2,3に係る樹脂組成物で作製したフィルムの片面に誘電性化合物未添加のアクリル樹脂(OC-3405)をワイヤーバー#5にて積層した試料を別途作製した。このアクリル樹脂からなる粘着層の粘着力を上記と同様にして評価した。結果を表1に示した。
【0047】
(4)誘電体層の厚さについての評価
表1に示す厚さの誘電体層をダイ塗工によって形成した。表1に示す厚さは、90GHz移動通信を想定したものである。なお、1回の塗工で形成可能な誘電体層の厚さは200μm程度であるため、実施例1~3では2回の塗工で済むのに対し、比較例1,2では3回の塗工が必要である。
【0048】
(5)巻メートル数の評価
最大巻径700mmの装置にて、巻径内径3インチ、肉厚4mm(外径84.2mm)のコアに巻取を行うことを想定した場合の巻メートル数を表1に示す。実施例1~3では一つのロールに1450mを超える誘電体を巻くことができるのに対し、比較例1,2では一つのロールに1000m以下の誘電体を巻けるにとどまる。
【0049】
【表1】
【0050】
(実施例4及び比較例3)
表2に示す組成の樹脂組成物をそれぞれ調製した。これらの樹脂組成物について、実施例1と同様にして上記(1)~(3)及び(5)の評価を行った。なお、樹脂成分として使用したウレタン樹脂は粘着性を有しないため、樹脂組成物で作製したフィルムの片面に誘電性化合物未添加のアクリル樹脂(OC-3405)をワイヤーバー#5にて積層した試料を別途作製した。このアクリル樹脂からなる粘着層の粘着力を上記と同様にして評価した。また、(4)の評価は以下のとおり実施した。
(4)誘電体層の厚さについての評価
表2に示す厚さの誘電体層をカレンダー製膜によって形成した。表2に示す厚さは、3.7GHz通信を想定したものである。なお、1回のカレンダー製膜で形成可能な誘電体層の厚さは800μm程度である。
【0051】
【表2】
【0052】
(実施例5及び比較例4)
表3に示す組成の樹脂組成物をそれぞれ調製した。これらの樹脂組成物について、実施例4と同様にして上記(1)~(3)及び(5)の評価を行った。(4)の評価は以下のとおり実施した。
(4)誘電体層の厚さについての評価
表3に示す厚さの誘電体層をカレンダー製膜によって形成した。表3に示す厚さは、28GHz通信を想定したものである。ただし、28GHzにおける誘電体層の比誘電率のデータがないため、3.7GHzにおける比誘電率をもとに誘電体層の厚さを設定した。
【0053】
【表3】
【0054】
(実施例6及び比較例5)
表4に示す組成の樹脂組成物をそれぞれ調製した。これらの樹脂組成物について、実施例4と同様にして上記(1)~(3)及び(5)の評価を行った。(4)の評価は以下のとおり実施した。
(4)誘電体層の厚さについての評価
表4に示す厚さの誘電体層をカレンダー製膜によって形成した。表4に示す厚さは、60GHz通信を想定したものである。ただし、60GHzにおける誘電体層の比誘電率のデータがないため、90GHzにおける比誘電率をもとに誘電体層の厚さを設定した。
【0055】
【表4】
【0056】
(実施例7及び比較例6)
表5に示す組成の樹脂組成物をそれぞれ調製した。これらの樹脂組成物について、実施例4と同様にして上記(1)~(3)及び(5)の評価を行った。(4)の評価は以下のとおり実施した。
(4)誘電体層の厚さについての評価
表5に示す厚さの誘電体層をカレンダー製膜によって形成した。表5に示す厚さは、350GHz通信を想定したものである。ただし、350GHzにおける誘電体層の比誘電率のデータがないため、90GHzでの比誘電率をもとに誘電体層の厚さを設定した。
【0057】
【表5】
【符号の説明】
【0058】
1…電磁波透過層、3…誘電体層、4…反射層、4F…表面、5…抵抗層、10,20…反射型の電磁波吸収体。
図1
図2