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特許7323740電解コンデンサ用リード端子及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-01
(45)【発行日】2023-08-09
(54)【発明の名称】電解コンデンサ用リード端子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/008 20060101AFI20230802BHJP
   H01G 9/00 20060101ALI20230802BHJP
   H01G 13/00 20130101ALI20230802BHJP
【FI】
H01G9/008
H01G9/00 290D
H01G13/00 303Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022569950
(86)(22)【出願日】2021-12-10
(86)【国際出願番号】 JP2021045560
(87)【国際公開番号】W WO2022131160
(87)【国際公開日】2022-06-23
【審査請求日】2022-12-06
(31)【優先権主張番号】P 2020219983
(32)【優先日】2020-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】392017004
【氏名又は名称】湖北工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佃 浩二
(72)【発明者】
【氏名】西宮 秀栄
(72)【発明者】
【氏名】雀部 朗宏
【審査官】鈴木 駿平
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-021318(JP,A)
【文献】特許第5461570(JP,B2)
【文献】特開2008-311615(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/00
H01G 9/008
H01G 11/00-11/86
H01G 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅製又はアルミニウム製の線材(100)から成る電極端子(2)と、前記電極端子(2)に溶接部(4)を介して接続される銅製のリード線(3)とを備える電解コンデンサ用のリード端子(1)であって、
前記溶接部(4)は、前記線材(100)のリード線側の端部と前記リード線(3)の線材側の端部とが溶融して凝固した合金塊から成るリード端子。
【請求項2】
前記電極端子(2)は、銅製である請求項1に記載のリード端子
【請求項3】
前記合金塊は、固溶体である請求項1又は請求項2に記載のリード端子。
【請求項4】
前記合金塊は、金属間化合物である請求項1又は請求項2に記載のリード端子。
【請求項5】
銅製又はアルミニウム製の線材(100)から成る電極端子(2)と、前記電極端子(2)に溶接部(4)を介して接続される銅製のリード線(3)とを備える電解コンデンサ用のリード端子(1)の製造方法であって、
前記線材(100)と前記リード線(3)とを直線状に整列させると共に前記線材(100)のリード線側の端面(101)と前記リード線(3)の線材側の端部とを突き合せた状態で前記線材(100)と前記リード線(3)とを保持する第1工程と、
レーザー照射機(400)で前記線材(100)の前記リード線側の端部にレーザービームを照射しながら前記線材(100)と前記リード線(3)の一方を他方に向かって軸方向に押し込む第2工程と、
前記線材(100)の前記リード線側の前記端部と前記リード線(3)の前記線材側の前記端部とが溶融して凝固した合金塊から成る溶接部(4)を形成する第3工程と、を含むリード端子の製造方法。
【請求項6】
前記第2工程では、前記線材(100)の外周面(102)における前記端面(101)に近接した位置に前記レーザービームを照射する請求項に記載のリード端子の製造方法。
【請求項7】
前記第2工程では、前記レーザー照射機(400)を前記線材(100)に対して所定の範囲内で相対的に移動させながら前記レーザービームを前記線材(100)に照射する請求項に記載のリード端子の製造方法。
【請求項8】
前記レーザー照射機(400)に対して前記線材(100)を軸線周りに相対的に回転させながら前記レーザービームを前記線材(100)に照射する請求項に記載のリード端子の製造方法。
【請求項9】
前記レーザービームの照射位置を前記線材(100)の軸方向に所定の距離だけ往復移動させる請求項又は請求項に記載のリード端子の製造方法。
【請求項10】
前記レーザービームの照射位置を前記線材(100)の軸線方向を長軸方向とする楕円状の軌道に沿って移動させる請求項又は請求項に記載のリード端子の製造方法。
【請求項11】
前記レーザー照射機(400)は、ブルーレーザー又はグリーンレーザーと、ファイバーレーザーと、を含む請求項乃至請求項10の何れか一項に記載のリード端子の製造方法。
【請求項12】
前記第2工程では、前記ブルーレーザー又は前記グリーンレーザーのレーザービームと、前記ファイバーレーザーのレーザービームと、の照射を同時に開始する一方で、前記ブルーレーザー又は前記グリーンレーザーの前記レーザービームを、前記ファイバーレーザーの前記レーザービームよりも所定時間だけ長く照射する請求項11に記載のリード端子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解コンデンサ用のリード端子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電解コンデンサ用のリード端子は、コンデンサ素子を形成する電極箔に接続される電極端子と、一端が電気回路に接続されると共に他端が溶接部を介して電極端子に接続されるリード線とを備えている。
【0003】
従来、電極端子はアルミニウム製の線材により形成され、リード線は鉄線を銅で被覆したCP線により形成されたものが主流であったが、近年、熱伝導性ないし導電性を向上させることを目的として、銅製のリード線を用いたリード端子が増えている。
【0004】
この種のリード端子では、アルミニウム製の線材とCP線とを溶接する技術と同じ技術でアルミニウム製の線材と銅製のリード線とを溶接しようとすると、接合強度等の点で問題が生じることがある。
【0005】
斯かる問題点を解決するために、特許文献1には、アーク溶接を用いつつ、アルミニウム製の線材と銅製のリード線との接合強度を向上させる技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許5461570号公報
【発明の概要】
【0007】
(発明が解決しようとする課題)
最近では、リード端子の更なる性能向上を目的として、電極端子も銅製の線材で形成したリード端子が増えてきている。
【0008】
この場合、特許文献1のようなアーク溶接を用いた方法によって銅製の線材と銅製のリード線とを溶接しようとすると、銅製の線材と銅製のリード線とが十分に溶融せず、これらの間に境界面が生じた状態になるため、溶接部の強度が不十分になるという問題点がある。
【0009】
また、特許文献1ではアーク溶接の手法を工夫することによりアルミニウム製の線材と銅製のリード線との接合強度を向上させているが、従来のアーク溶接では両者の接合強度を向上させることは依然として困難であり、同様の問題が生じることがあった。
【0010】
本発明の目的は、上記問題点を解決する電解コンデンサ用リード端子及びその製造方法を提供することにある。
【0011】
(課題を解決するための手段)
上記目的を達成するために、本発明は、銅製又はアルミニウム製の線材(100)から成る電極端子(2)と、前記電極端子(2)に溶接部(4)を介して接続される銅製のリード線(3)とを備える電解コンデンサ用のリード端子(1)であって、前記溶接部(4)は、前記線材(100)のリード線側の端部と前記リード線(3)の線材側の端部とが溶融して凝固した合金塊から成ることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、銅製又はアルミニウム製の線材(100)から成る電極端子(2)と、前記電極端子(2)に溶接部(4)を介して接続される銅製のリード線(3)とを備える電解コンデンサ用のリード端子(1)の製造方法であって、前記線材(100)と前記リード線(3)とを直線状に整列させると共に前記線材(100)のリード線側の端面(101)と前記リード線(3)の線材側の端部とを突き合せた状態で前記線材(100)と前記リード線(3)とを保持する第1工程と、
レーザー照射機(400)で前記線材(100)の前記リード線側の端部にレーザービームを照射しながら前記線材(100)と前記リード線(3)の一方を他方に向かって軸方向に押し込む第2工程と、
前記線材(100)の前記リード線側の前記端部と前記リード線(3)の前記線材側の前記端部とが溶融して凝固した合金塊から成る溶接部(4)を形成する第3工程と、を含むことを特徴とする。
【0013】
(発明の効果)
本発明によれば、電極端子を形成する銅製又はアルミニウム製の線材と銅製のリード線との溶接部の強度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る電解コンデンサ用リード端子の一例を示す斜視図である。
図2図1のリード端子の製造方法の一例を説明するために用いられる図である。
図3図1のリード端子の溶接部の断面のSEM画像である。
図4】アーク溶接により形成された比較例としての溶接部の断面のSEM画像である。
図5】本発明の第4実施形態に係る電解コンデンサ用リード端子の製造方法を説明するために用いられる図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施形態に係る電解コンデンサ用リード端子及びその製造方法について説明する。
なお、本発明は以下の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で以下の各実施形態に種々の改変を施すことができる。
【0016】
最初に本実施形態のリード端子の構成について説明する。
図1に示すように、リード端子1は、銅製の電極端子2と、銅製のリード線3とを備えている。
電極端子2は、線材としての銅線の軸方向における一部を径方向にプレス加工することにより形成され、一端側に棒状部21を有するとともに他端側に圧延部22を有している。
棒状部21は、プレス加工されずに残存している部分(即ち、銅線の軸方向における他部)である。
圧延部22は、銅線の上記一部を平板状にプレス加工すると共に、その外周を厚み方向に沿って切断することにより形成される。
リード線3は、その外周が錫メッキ層5(図3参照)で被覆された銅線である。リード線3は、棒状部21よりも小径である。
棒状部21の一端には溶接部4を介してリード線3が接続されている。棒状部21の軸線とリード線3の軸線は互いに同軸である。
【0017】
次に、図2を参照しつつリード端子1の製造方法について説明する。
まず、電極端子2の素材である長尺の銅線(直径2mm)を所定の長さに切断して線材100を形成する。
また、リード線3の素材である長尺の銅線(直径0.8mm)(厳密には、錫メッキ層で被覆された銅線)を所定の長さに切断してリード線3を形成する。
次に、線材100を治具200に保持させ、リード線3を治具300に保持させて、線材100とリード線3とを両者の軸線が同軸となるように直線状に整列させると共に、線材100の一方の端面101とリード線3の端部とを突き合せた状態(接触させた状態)にする(第1工程)。
次に、線材100の軸線と直交する方向から、線材100の外周面102における端面101に近接した位置Pに、レーザー照射機400(出力1kW、ビーム径150μm)によりレーザービームを照射する。本実施形態では、端面101からレーザービームの照射位置までの距離Lは0.1mmとされている。照射機400は、ブルーレーザーとファイバーレーザー(赤外線レーザー)とを組み合わせたハイブリッドのレーザー照射機である(即ち、照射機400は、ブルーレーザーとファイバーレーザーとを含む。)。照射機400は、線材100の位置Pにブルーレーザーのレーザービーム及びファイバーレーザーのレーザービームを同時に照射開始する。ブルーレーザーは、ファイバーレーザーよりも出力が低く、ファイバーレーザーの約10倍のスポット径でレーザービームを照射可能である。このため、ブルーレーザーのレーザービームを照射することにより、位置P及びその近傍の線材100が溶融し、溶融部分の熱がリード線3に伝わる。その結果、線材100の端部(リード線3側の端部)及びリード線3の端部(線材100側の端部)が溶融していく。即ち、ブルーレーザーにより溶融池が拡大されると共に溶融池の状態が安定化する。なお、ここでいう「安定化」とは、溶融池の状態が「ファイバーレーザーのレーザービームを好適に照射し得るような状態になること」を意味する。一方、ファイバーレーザーは、ブルーレーザーよりも高い出力且つ小さいスポット径でレーザービームを照射可能である。このため、ファイバーレーザーのレーザービームを照射することにより、線材100の端部及びリード線3の端部が更に深く溶け込んでいく。即ち、照射機400は、出力及びスポット径が異なる2種類のレーザービームを同時に照射する。
照射機400は、ブルーレーザーのレーザービームをファイバーレーザーのレーザービームよりも所定時間Tだけ長く照射するように構成されている。別言すれば、ブルーレーザーは、ファイバーレーザーのレーザービームの照射が終了した後も、所定時間Tだけレーザービームの照射を継続するように構成されている(理由は後述)。ブルーレーザーのレーザービームの照射が終了した時点では、線材100の端部及びリード線3の端部が全体に亘って溶融している。
ここで、治具300には、図示しない押し込み機構が設けられている。押し込み機構は、所定の方向に外力を付与可能に構成されている。本実施形態では、押し込み機構は、照射機400によるブルーレーザーのレーザービームの照射が開始された時点で、リード線3を線材100に向かって軸方向に押し込む外力をリード線3に付与する。これにより、線材100の端部とリード線3の端部とがそれぞれ溶融した状態でリード線3が線材100に向かって押し込まれる。
以上が第2工程である。
その後、線材100の端部とリード線3の端部とが溶融して凝固した合金塊から成る溶接部4(図1参照)を形成する(第3工程)。別言すれば、溶融部分が凝固することにより、線材100とリード線3との間に円錐状(厳密には、線材100からリード線3に向かって縮径する略円錐台状)の溶接部4が形成されて、線材100とリード線3とが接続される。ここで、ブルーレーザーのレーザービームをファイバーレーザーのレーザービームよりも所定時間Tだけ長く照射する理由について説明する。両方のレーザービームの照射を同時に終了すると、溶融部分が急速に冷えていくことにより溶接部の形状がいびつになる(即ち、レーザービームが直接的に照射された部分とそうでない部分(典型的には、照射部分の裏側の部分)とが温度差に起因して異なる形状に凝固する)可能性がある。そこで、本実施形態では、比較的に低い出力且つ大きいスポット径を有するブルーレーザーのレーザービームを所定時間Tだけファイバーレーザーのレーザービームよりも長く照射することにより、溶融部分が徐々に冷えていくようにしている。この構成によれば、レーザービームが直接的に照射された部分とそうでない部分との温度差が大きくなることを抑制でき、その結果、溶接部4を軸線に関して回転対称な形状とすることができる。
続いて、線材100の他端側をプレス加工して、図1に示される圧延部22を形成する。これにより、リード端子1が製造される。
なお、ファイバーレーザーは、エネルギー密度が極めて高く、深い溶け込みが得られることを特徴としている。このため、ファイバーレーザー単体で線材100とリード線3とを溶接する場合、ファイバーレーザーの出力が過大となることに起因して、レーザービームの照射位置のみ局所的に大きく溶融してしまい、所望の個所を溶融し難いという問題があった。加えて、周囲にスパッタが飛散してしまうという問題があった。そこで、本実施形態では、ファイバーレーザーに加えてブルーレーザーを用いるハイブリッド式を採用している。ブルーレーザーは、入熱が安定しており(特に、銅への入熱)、溶融むらが起き難いことを特徴としている。このため、ブルーレーザーにより溶融池を拡大し且つ安定化することができるため、ファイバーレーザー単体で溶接する場合と比較してファイバーレーザーの出力を抑制でき、その結果、局所的な溶融が起こり難くなるとともに、スパッタの発生を抑制できる。
また、押し込み機構は、レーザービームの照射が開始されてから所定の時間が経過した時点(即ち、線材100及びリード線3の端部がそれぞれある程度溶融した時点)でリード線3に外力を付与してもよい。また、押し込み機構は、治具300ではなく、治具200に設けられてもよい。即ち、押し込み機構は、線材100をリード線3に向かって軸方向に押し込む外力を線材100に付与するように構成されてもよい。
【0018】
本実施形態では、線材100とリード線3とをレーザービームで溶接するため、アーク溶接で溶接する場合と比べて、線材100とリード線3の溶融量が多くなる(別言すれば、アーク溶接では溶融することができない部分まで溶融できる)。
図3は、リード端子1をその軸線を含む平面で切断したときの溶接部4及びその近傍の断面のSEM(Scanning Electron Microscopy)画像である。図3に示すように、溶接部4は、全体に亘って、線材100の素材である銅と、リード線3の素材である銅及び錫と、が溶融して凝固した合金塊と成り、溶接部4の内部には境界面が形成されない。即ち、溶接部4は、線材100の端部とリード線3の端部とが溶融して凝固した合金塊から成る。ここで、「溶接部4が合金塊から成る」とは、溶接部4がその全体に亘って合金であることを意味する。これは、高いエネルギー密度を有するレーザービームにより線材100の端部及びリード線3の端部がその全体に亘って溶融することにより、全体が均一に混ざり合った状態で凝固したためであると考えられる。
【0019】
一方、図4は、線材100とリード線3とをアーク溶接で溶接することにより製造された比較例としてのリード端子をその軸線を含む平面で切断したときの溶接部104及びその近傍の断面のSEM画像である。図4に示すように、線材100の素材である銅は殆ど溶融していない。溶接部104は、リード線3の素材である銅及び錫が部分的に溶融して凝固した部分104aと、リード線3が溶融せずに残存している部分104bと、を含んでいる。その結果、溶接部104と線材100との間に境界面Bが形成されている。従って、当該リード端子の線材100又はリード線3に軸方向と直交する方向に外力を加えると、リード端子は境界面Bを起点として容易に破断してしまう。これは、銅の融点が比較的に高いことに起因していると考えられる。即ち、アーク溶接の出力はレーザー溶接ほど高くはないため、アーク溶接では径が比較的に大きい銅製の線材100は溶融し難く、比較的に小径のリード線3の表面を部分的に溶融できる程度である。このため、溶接部104には線材100の素材である銅は殆ど含まれておらず、溶接部104と線材100との間には境界面Bが形成されると考えられる。以上より、本実施形態の構成によれば、線材100とリード線3とをアーク溶接で溶接した場合と比べて、溶接部4の強度が向上する。その結果、耐振性に優れたリード端子1を実現できる。
【0020】
また、線材100の外周面102における端面101に近接した位置Pにレーザービームを照射することにより、溶接部4が線材100の端面101の中心に対して偏った位置に形成されるのを抑制することができる。
【0021】
溶接部4の合金塊の構造をEPMA(Electron Probe Micro Analyzer)により分析したところ、合金塊は固溶体(厳密には、置換型固溶体)であることが確認された。固溶体とは、元の金属の結晶構造を維持したまま別の金属がランダムに混ざり合った合金である。置換型固溶体とは、元の金属の原子が別の金属の原子にランダムに置換された固溶体である。
なお、溶接部4の合金塊は、元の金属とは全く異なる結晶構造をもつ金属間化合物であってもよい。
【0022】
本実施形態では、レーザーの照射機400を線材100に対して固定した状態で、線材100の軸線と直交する方向にレーザービームを照射しているが、線材100の軸線に対して90°以外の角度で交差する方向にレーザービームを照射するようにしてもよい。
【0023】
また、本実施形態では、距離LをL=0.1mmとしたときに好ましい結果が得られたが、距離Lは0.1mmに限定されるものではない。
【0024】
また、本実施形態では、電極端子2の素材である線材100と、リード線3と、を溶接してから線材100をプレス加工して電極端子2を形成するようにしているが、これに代えて、先に線材100をプレス加工して電極端子2を形成してから、その棒状部21の一端にリード線3を溶接するようにしてもよい。これは、後述する他の実施形態についても同様である。なお、上述したように、棒状部21は、線材100のうちプレス加工されずに残存している部分である。このため、本明細書では、プレス加工がレーザー溶接の前に行われている場合であっても、レーザービームが照射される部材を「棒状部21」ではなく「線材100」と称する場合がある。
【0025】
また、本実施形態では、ブルーレーザーとファイバーレーザーとを組み合わせたレーザー照射機を用いているが、ブルーレーザーの代わりに他のレーザー(例えば、グリーンレーザー)を用いてもよい。この場合、グレーンレーザーはファイバーレーザーと同時にレーザービームの照射を開始する一方で、ファイバーレーザーよりも所定時間だけ長くレーザービームを照射するように構成され得る。これは、後述する他の実施形態についても同様である。
【0026】
次に、本発明の第2実施形態に係るリード端子1の製造方法について説明する。本実施形態では、レーザーの照射機400に対して、線材100をその軸線周りに相対的に回転させながらレーザービームを線材100に照射する。
【0027】
この場合、溶接部4が軸線に関して回転対称の綺麗な円錐状(円錐台状)の形状になりやすくなるため、外観が向上する。
また、線材100の外周面102におけるレーザービームの照射位置を固定すると、一点にエネルギーが集中するため、レーザービームの出力によっては外周面102に窪みが生じる可能性があるが、本実施形態では、線材100の外周面102におけるレーザービームの被照射部位が周方向に移動するため、外周面102に窪みが生じにくくなる。
【0028】
次に、本発明の第3実施形態に係るリード端子1の製造方法について説明する。本実施形態では、レーザービームの照射位置が線材100の軸方向に所定の距離だけ往復移動するようにファイバーレーザーの照射機400を線材100に対して相対的に移動させる。
【0029】
このようにすることで、線材100の外周面におけるレーザービームの被照射部位が軸方向に移動するため、線材100の外周面102に窪みが生じにくくなる。
なお、本実施形態のレーザービームの照射方法を第2実施形態のレーザービームの照射方法と組み合わせるようにしてもよい。
【0030】
次に、本発明の第4実施形態に係るリード端子1の製造方法について説明する。本実施形態では、図5に示すように、レーザービームの照射位置が線材100の軸方向を長軸方向とし、所定の範囲内の長軸及び短軸を有する楕円状の軌道R(厳密には、平面視における形状が楕円状の軌道R)に沿って移動するようにファイバーレーザーの照射機400を線材100に対して相対的に移動させる。なお、軌道Rに円状形状が含まれることは言うまでもない。
【0031】
この場合、第3実施形態のように、レーザービームの照射位置が線材100の軸線方向に往復する場合と比べて、線材100の外周面におけるレーザービームの被照射部位の範囲が広がるため、線材100の外周面102に窪みがより生じにくくなる。
なお、本実施形態のレーザービームの照射方法を第2実施形態のレーザービームの照射方法と組み合わせるようにしてもよい。
【0032】
なお、レーザービームの照射位置を線材100上において移動させる態様は上記の各実施形態に限定されるものではない。
また、上記の各実施形態では、銅製の線材100(電極端子2を含む)と銅製のリード線3とを溶接する場合について説明したが、本発明は、アルミニウム製の線材(電極端子を含む)と銅製のリード線とを溶接する場合についても適用することができる。この場合、溶接部4は、線材の素材であるアルミニウムと、リード線の素材である銅及び錫と、が溶融して凝固した合金塊から成る。
【符号の説明】
【0033】
1:リード端子、2:電極端子、3:リード線、4:溶接部、21:棒状部、22:圧延部、100:線材、101:端面、102:外周面、400:レーザー照射機
図1
図2
図3
図4
図5