(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-01
(45)【発行日】2023-08-09
(54)【発明の名称】仮止めピン
(51)【国際特許分類】
A61B 17/86 20060101AFI20230802BHJP
【FI】
A61B17/86
(21)【出願番号】P 2019022128
(22)【出願日】2019-02-08
【審査請求日】2022-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】510162148
【氏名又は名称】日本メディカルネクスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100143085
【氏名又は名称】藤飯 章弘
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 賢
【審査官】宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0036042(US,A1)
【文献】特表2002-516699(JP,A)
【文献】特開2014-000418(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/58
A61B 17/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波固定システムを用いた生体吸収ピンを挿入するための挿入孔が形成された骨接合用プレートを骨に仮止めする仮止めピンであって、
前記挿入孔の内面に当接する当接面を有する台座部と、
前記台座部から突出し、骨に予め形成され
た生体吸収ピン挿入用の骨孔の内面に摺接して挿入可能な円柱状の挿入部と、
前記台座部から前記挿入部とは反対側に突出し、手指で把持可能な把持部とを備
え、
前記把持部は、表面凹凸を有する棒状体であり、
前記表面凹凸は、前記棒状体の表面外方に向けて膨出する複数の環状の膨出部により形成されており、
前記各膨出部は、前記棒状体の軸方向に沿って、所定間隔をあけて設けられており、
前記複数の膨出部のうち、前記把持部の突出方向先端側に配置される膨出部は、その最大径が、他の膨出部の最大径よりも大きいことを特徴とする仮止めピン。
【請求項2】
前記複数の膨出部のうち、前記把持部の突出方向先端側に配置される膨出部は、その最大径が、前記挿入部の最大径よりも大きいことを特徴とする請求項
1に記載の仮止めピン。
【請求項3】
前記台座部と前記把持部との境界から前記把持部の突出方向先端までの長さは、前記境界から前記挿入部の突出方向先端までの長さよりも大きいことを特徴とする請求項1
又は2に記載の仮止めピン。
【請求項4】
前記台座部の当接面は、前記挿入部の突出方向に沿って前記挿入部との接続境界に向かうに従い縮径する
湾曲面形状を備えていることを特徴とする請求項1から
3のいずれかに記載の仮止めピン。
【請求項5】
前記台座部は、前記当接面を有する台座本体部と、該台座本体部と前記把持部との間に介在し、骨接合プレートの表面に当接する円盤状の拡径部とを備えており、前記拡径部の周囲には、前記把持部の突出方向と平行な平面部が少なくとも1以上形成されていることを特徴とする請求項1から
4のいずれかに記載の仮止めピン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮止めピンに関する。特に、骨接合用プレートに形成される超音波固定システムを用いた生体吸収ピン挿入用の挿入孔に挿入して、該骨接合用プレートを骨に仮止めする仮止めピンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
骨折部の治療では、骨折部の整復と、整復後の状態での骨折部の固定とが必要であり、骨折部の整復と固定とを行うことのできる器具として、様々な骨接合用プレートが開発されている。例えば、特許文献1には、骨折した骨に複数のスクリューにより固定される骨接合用プレートが開示されている。
【0003】
また、近年、骨接合用プレートとしては、生体吸収性のプレートが知られており、当該生体吸収性プレートを用いる場合、プレート固定用の留め具も、生体吸収性を有するピン(吸収性留め具)を用いる必要がある。このような生体吸収性を有するピンとしては、超音波固定システムを用いた生体吸収ピン(ソニックウェルドピン)が知られている。この超音波固定システムを用いた生体吸収ピンは、骨に形成された骨孔に骨接合用プレートに形成される挿入孔を位置合わせした状態で、骨接合用プレートの上方から生体吸収ピンを挿入し、超音波装置により生体吸収ピンを骨孔内で溶融させた後、硬化させてプレートを固定する。
【0004】
このような超音波固定システムを用いた生体吸収ピンを用いる場合、骨に骨孔を形成するだけで良く、タップを形成する必要が無いため、骨接合用プレートの設置を迅速に行うことができるというメリットがあり、また、ドライバー等によってスクリューを挿入する操作が不要になるため、これに伴う骨への損傷やスクリューの折損が発生しないというメリットがある。
【0005】
ここで、骨接合用プレートの骨上での位置決めを正確に行うためには、一般的に、仮止めピンを用いたプレートの仮止めが行われる。仮止めピンとしては、例えば、特許文献2に開示されているようなものが知られている。この特許文献2に開示されている仮止めピンは、
図8に示すように、円柱状の摘まみ部101と、当該摘まみ部101の一方端から延びるネジ付き部分102とを備えている、ネジ付き部分102は、尖鋭となるようにテーパ103が付されて構成されている。このような仮止めピン100は、固定用のスクリューをスクリュー挿入用の挿入孔に挿入する前段階において、スクリュー挿入用の挿入孔とは別に骨接合用プレートに形成された仮止めピン用の貫通孔を介して、ネジ付き部分102を骨に進入(螺入)させることにより骨接合用プレートを骨上に仮固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表2018-512968号公報
【文献】特表2000-501627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献2に開示されているような仮止めピンは、骨接合用プレートをスクリューや生体吸収ピンを介して骨上に本固定する際には、取り外されるものであるため、生体吸収性の骨接合用プレートに対しても使用することはできる。しかしながら、この従来の仮止めピンを使用するには、生体吸収ピンを挿入するための固定用孔以外に仮固定ピン用の貫通孔を形成しなくてはならないという問題がある。
【0008】
また、従来の仮止めピンを用いて骨接合プレートの仮止めを行う場合、ネジ付き部分を骨内に螺入する操作が必要となるため、骨接合プレートの仮止めを迅速に行うことが難しいという問題があった。また、この螺入操作に伴って、骨に対して治療とは直接関係のない穴(仮止めピンにより形成される穴)を形成してしまうという問題、更に、仮止めピン自体の折損が発生するリスクがあるという問題がある。ここで、上述のように、超音波固定システムを用いた生体吸収ピンを用いて骨接合用プレートを骨上に固定する手法の場合、骨に損傷を与えないというメリットや、スクリューの折損が発生しないというメリットを有するものであるが、上述のような仮止めピンを用いた仮固定を行うことは、上記メリットに相反することになる。
【0009】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであって、仮固定ピン用の貫通孔を骨接合用プレートに形成することなく、当該骨接合用プレートの骨上への仮止め作業を迅速に行うことができる仮止めピンの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記目的は、超音波固定システムを用いた生体吸収ピンを挿入するための挿入孔が形成された骨接合用プレートを骨に仮止めする仮止めピンであって、前記挿入孔の内面に当接する当接面を有する台座部と、前記台座部から突出し、骨に予め形成された骨孔の内面に摺接して挿入可能な円柱状の挿入部と、前記台座部から前記挿入部とは反対側に突出し、手指で把持可能な把持部とを備える仮止めピンにより達成される。
【0011】
また、この仮止めピンにおいて、前記把持部は、表面凹凸を有する棒状体であることが好ましい。
【0012】
また、前記表面凹凸は、前記棒状体の表面外方に向けて膨出する複数の環状の膨出部により形成されており、前記各膨出部は、前記棒状体の軸方向に沿って、所定間隔をあけて設けられていることが好ましい。
【0013】
また、前記複数の膨出部のうち、前記把持部の突出方向先端側に配置される膨出部は、その最大径が、他の膨出部の最大径よりも大きいことが好ましい。
【0014】
また、前記複数の膨出部のうち、前記把持部の突出方向先端側に配置される膨出部は、その最大径が、前記挿入部の最大径よりも大きいことが好ましい。
【0015】
また、前記台座部と前記把持部との境界から前記把持部の突出方向先端までの長さは、前記境界から前記挿入部の突出方向先端までの長さよりも大きいことが好ましい。
【0016】
また、前記台座部の当接面は、前記挿入部の突出方向に沿って前記挿入部との接続境界に向かうに従い縮径する椀状表面形状を備えていることが好ましい。
【0017】
また、前記台座部は、前記当接面を有する台座本体部と、該台座本体部と前記把持部との間に介在し、骨接合プレートの表面に当接する円盤状の拡径部とを備えており、前記拡径部の周囲には、前記把持部の突出方向と平行な平面部が少なくとも1以上形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、仮固定ピン用の貫通孔を骨接合用プレートに形成することなく、当該骨接合用プレートの骨上への仮止め作業を迅速に行うことができる仮止めピンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図2】
図1における矢視A方向から見た右側側面図である。
【
図3】
図1における矢視B方向から見た左側側面図である。
【
図4】
図1におけるC-C断面を示す断面図である。
【
図5】本発明に係る仮止めピンが使用される骨接合用プレートに関する平面図である。
【
図6】骨接合プレートに形成される挿入孔を説明するための骨接合プレートに関する断面図である。
【
図7】骨接合プレートに形成される挿入孔に挿入されて使用される超音波固定システムを用いた生体吸収ピンに関する説明図である。
【
図8】従来の仮止めピンを説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態に係る仮止めピン1について、添付図面を参照して説明する。なお、各図は、構成の理解を容易ならしめるために部分的に拡大・縮小している。
図1は、本発明に係る仮止めピン1の平面図であり、
図2は、
図1の矢視A方向から見た右側側面図、
図3は、
図1の矢視B方向から見た左側側面図である。また、
図4は、
図1のC-C断面に関する断面図である。この仮止めピン1は、骨折部の整復と固定とを行うために使用される骨接合用プレート50を骨上に設置する際に、その位置決めを正確に行うために当該骨接合用プレート50を骨上に仮固定するためのピンである。
【0021】
この仮止めピン1が使用される骨接合用プレート50としては、例えば、
図5(a)~(d)に示すように、様々な形態のものを使用することができる。また、本発明により仮止めされる骨接合用プレート50は、頭蓋骨、脊柱、例えば上腕骨、大腿骨、脛骨、腓骨などの任意の長骨等、又は、固定が望まれる骨格系上の任意の他の箇所に設置することができるものである。なお、骨接合用プレート50は、任意の好適な生体適合性材料又はそれらの材料の組合わせを用いて形成される。例えば、コバルトクロムモリブデン(CoCrMo)、ステンレス鋼、チタン、チタン合金、マグネシウム、ガラス金属、セラミック材料などの金属材料、並びに、プラスチック、繊維強化プラスチックを含む高分子材料、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)を含む高分子材料、及び生体吸収性材料又は形状記憶材料等から形成される。
【0022】
骨接合用プレート50には、該プレートを骨上に固定するための留め具が挿入される挿入孔51が形成されている。この挿入孔51は、通常、複数個形成されている。骨接合用プレート50に形成される挿入孔51は、
図6の断面図に示すように、椀状表面形状を有する座ぐり面部分52を備える形態として構成されている。なお、この座ぐり面部分52は、挿入孔51の内面に対応する。骨接合用プレート50を固定するための留め具としては、超音波固定システムを用いた生体吸収ピン55が用いられる。この超音波固定システムを用いた生体吸収ピン55は、
図7に示すように、骨孔に挿入される円柱状の軸部56と、当該軸部56の一方端に配置される頭部57とを備えるものであり、例えば、体内吸収性材料であるポリ乳酸(PDLLA)から形成される。なお、頭部57は、骨接合用プレート50が有する挿入孔51の座ぐり面部分52に当接する湾曲面58を備えて構成される。この生体吸収ピン55は、骨接合用プレート50に形成される挿入孔51を介して、円柱状の軸部56を骨に形成される骨孔内に挿入して固定される。より具体的には、超音波固定器から発生する振動エネルギーによってピンの分子振動を惹起させ、溶融温度まで温度を上昇させて軟化させつつ骨孔内に押し込み、その後、ピンが骨孔内で硬化することによりプレートが固定される。体内では、乳酸として分解・吸収された後、二酸化炭素と水に代謝される。
【0023】
本発明に係る仮止めピン1は、上述の超音波固定システムを用いた生体吸収ピン55による骨接合用プレート50の設置に際して使用される仮止めピンであり、
図1~
図4に示すように、台座部2と、挿入部3と、把持部4とを備えている。この仮止めピン1は、例えば、ステンレス鋼、チタン、チタン合金、セラミック材料などの金属材料から形成することが好ましい。
【0024】
台座部2は、台座本体部21と、拡径部22とを備えている。台座本体部21は、骨接合用プレート50に形成される挿入孔51の内面に当接する当接面23を備えている。この当接面23は、挿入孔51における座ぐり面部分52と密接する形態として形成されている。具体的には、挿入孔51における座ぐり面部分52と同一の湾曲面を有する椀状表面形状、すなわち、台座部2の当接面23は、挿入部3の突出方向に沿って挿入部3との接続境界に向かうに従い縮径する椀状表面形状として形成されることが好ましい。
【0025】
また、台座部2が備える拡径部22は、台座本体部21と把持部4との間に介在し、骨接合用プレート50の表面に当接する部分であり、円盤状に形成されている。この拡径部22の周囲には、把持部4の突出方向と平行な平面部24が少なくとも1以上形成されていることが好ましい、本実施形態においては、平面部24を2つ有するように構成されている。また、各平面部24は互いに平行な面として形成されている。
【0026】
挿入部3は、台座部2が有する台座本体部21から突出し、骨に予め形成された生体吸収ピン挿入用の骨孔に挿入される部分であり、生体吸収ピン挿入用の骨孔の内面に摺接して挿入可能な直径を有する円柱状の棒状体として形成されている。このように骨孔の内面に摺接して挿入可能な直径を有する円柱状の棒状体として挿入部3を構成することにより、挿入部3の表面と骨孔の内面との摩擦抵抗だけで必要な固定性を得ることが可能となる。なお、挿入部3の長さL1は、生体吸収ピン挿入用の骨孔の深さ寸法と同一寸法に、或いは、僅かに短くなるように構成される。
【0027】
把持部4は、使用者が手指等で把持する部分であり、台座部2から突出して形成されている。把持部4の突出方向は、台座部2から突出する挿入部3の突出方向とは反対側の方向であり、当該把持部4は、台座部2が有する拡径部22に接続するように構成されている。
【0028】
把持部4は、
図1に示すように、表面凹凸を有する棒状体として構成することが好ましい。この表面凹凸は、棒状体として構成される把持部4の表面外方に向けて膨出する複数の環状の膨出部41により形成されており、各膨出部41は、棒状体の軸方向に沿って、所定間隔をあけて設けられている。なお、各膨出部41の間には、表面凹凸の凹部に相当する溝部42が形成される。
【0029】
また、複数の膨出部41のうち、把持部4の突出方向先端側に配置される膨出部41aは、その最大径が、他の膨出部41の最大径よりも大きくなるように構成することが好ましい。
【0030】
また、複数の膨出部41のうち、把持部4の突出方向先端側に配置される膨出部41aは、その最大径が、挿入部3の最大径よりも大きくなるように構成することが好ましい。
【0031】
また、台座部2と把持部4との境界から把持部4の突出方向先端までの長さL2は、この境界から挿入部3の突出方向先端までの長さL3よりも大きくなるように構成することが好ましい。ここで、台座部2と把持部4との境界から把持部4の突出方向先端までの長さL2は、例えば、使用者が手指で把持できる長さであって、他の生体吸収ピン挿入用の骨孔を形成する作業の邪魔にならない長さに設定することが好ましく、例えば、5mm以上10mm以下の範囲となるように設定することが好ましい。
【0032】
本発明に係る仮止めピン1の使用方法の一例について以下説明する。まず、術者(使用者)は、骨折部の整復と固定とを行うのに適した骨上に骨接合用プレート50を載置し、骨接合用プレート50に形成されている複数の挿入孔51から仮止めピン1を挿入するのに最も好ましい挿入孔51を選択し、当該選択された挿入孔51を介して、超音波固定システムを用いた生体吸収ピン55(ソニックウェルドピン)を挿入するための骨孔をドリルによって形成する。この形成された骨孔に、仮止めピン1を挿入し、骨上に骨接合用プレート50を仮止めする。仮止めピン1の挿入に際しては、把持部4を手指で把持し、挿入孔51における座ぐり面部分52と台座部2が有する当接面23とが密接するまで、挿入部3の先端側から仮止めピン1を挿入孔51を介して骨孔に挿入する。挿入部3は、骨孔の内面と摺接する直径を有するものであることから、挿入部3は骨孔内にぐらつくことなくしっかりと固定される。なお、仮止めピン1を挿入孔51及び骨孔に挿入する場合、把持部4を手指で把持する代わりに、例えば、溝部42に係合する係合部を先端部に有する把持セッシを用いて、把持部4を該セッシで摘まんで挿入してもよい。
【0033】
仮止めピン1による骨接合用プレート50の仮止めが完了した後、術者(使用者)は、仮止めピン1が挿入されていない骨接合用プレート50の一の挿入孔51を介して所定深さの骨孔をドリルで形成し、この骨孔に超音波固定システムを用いた生体吸収ピン55を挿入して固定する。生体吸収ピン55の挿入及び固定については、超音波固定器から発生する振動エネルギーによって生体吸収ピン55の分子振動を惹起させ、溶融温度まで温度を上昇させて軟化させつつ骨孔内に押し込むことにより行う。この生体吸収ピン55の挿入固定が完了した後、仮止めピン1を骨接合用プレート50及び骨孔から抜き出し、その後、仮止めピン1が抜き出された挿入孔51を含めた残りの挿入孔51全てに対して、同様にして生体吸収ピン55の挿入・固定を行い、骨接合用プレート50の骨上への設置が完了する。
【0034】
本発明に係る仮止めピン1は、上述のように、骨に予め形成された生体吸収ピン挿入用の骨孔の内面に摺接して挿入可能な円柱状の挿入部3を備えるように構成しているため、骨に対して治療とは直接関係のない穴を形成する必要が無く、骨に与えるダメージを極力小さいものとすることができる。また、仮止めピン1における円柱状の挿入部3は、ねじ山の無い構造としているため、設置に際して骨孔の内径を拡げてしまうことを防止することができ、生体吸収ピンの容量不足に起因した骨固定の強度不足を効果的に抑制することができる。なお、骨孔の内径が拡がってしまうと、骨孔の内容積が増加してしまい、生体吸収ピンの容量が足らなくなり、骨固定の強度が不十分になる危険性が生じる。
【0035】
また、本発明に係る仮止めピン1は、骨内に螺入するものでは無く、骨孔に押し込むという動作によって骨接合用プレート50の仮固定を行うものであるため、骨接合用プレート50の骨上への仮止め作業を迅速に行うことができ、また、螺入するものではないことから、仮止めピン1の挿入時において挿入部3が折損してしまうことを効果的に防止することが可能となる。
【0036】
また、上記実施形態においては、仮止めピン1が有する把持部4には、その表面に滑り止め機能を発揮する表面凹凸が形成されているため、術者(使用者)は把持部4をしっかりとつかむことができ、指先での向きの転換等の操作を容易に行うことが可能となる。つまり、使用者が仮止めピン1を設置する際のハンドリングを良好なものとすることが可能となる。
【0037】
また、上記実施形態においては、把持部4の表面凹凸を、表面外方に向けて膨出する複数の環状の膨出部41を、棒状体として構成される把持部4の軸方向に沿って所定間隔をあけて設けることにより構成している。このような構成により、術者(使用者)の手指に対する滑り止め効果を極めて良好なものとすることができる。また、環状の膨出部41同士の間に形成される溝部42を利用して、落下防止用の糸を結びつけることが可能となり、使用者の利便性をより高いものとすることができる。
【0038】
また、上記実施形態においては、把持部4における表面凹凸を構成する複数の膨出部41のうち、把持部4の突出方向先端側に配置される膨出部41aの最大径が、他の膨出部41の最大径よりも大きくなるように構成されている。このような構成により、術者(使用者)は、把持部4をより一層把持しやすくなると共に、骨接合用プレート50の仮固定が完了した際に仮止めピン1を抜き出す作業を容易に行うことが可能となる。また、把持部4の突出方向先端側に配置される膨出部41aの最大径を、他の膨出部41の最大径よりも大きく構成することにより、骨接合用プレート50に対する仮止めピン1の挿入向きを使用者に明確に認識させることが可能となるため、使用者が、骨接合用プレート50に誤った向きで仮止めピン1を挿入してしまうことを効果的に防止することができる。
【0039】
また、上記実施形態においては、複数の膨出部41のうち、把持部4の突出方向先端側に配置される膨出部41aの最大径が、挿入部3の最大径よりも大きくなるように構成されている。挿入部3は、骨に形成される骨孔の内面に摺接して挿入可能な直径を有する円柱状として形成されているため、仮に、術者(使用者)が誤って、挿入部3を把持して、把持部4の突出方向先端側を骨孔に挿入しようとしても、物理的に骨孔に仮止めピン1を挿入することができなくなる為、使用者が、骨接合用プレート50に誤った向きで仮止めピン1を挿入してしまうことを確実に防止することができる。
【0040】
また、上記実施形態においては、台座部2と把持部4との境界から把持部4の突出方向先端までの長さL2が、当該境界から挿入部3の突出方向先端までの長さL3よりも大きくなるように構成されている。このような構成により、骨接合用プレート50に対する仮止めピン1の挿入向きを術者(使用者)に明確に認識させることが可能となり、使用者が、骨接合用プレート50に誤った向きで仮止めピン1を挿入してしまうことを効果的に防止することができる。また、このような構成を採用することにより、金属製の骨固定用スクリュー(インプラント)と混同され、誤って骨内に埋め込まれてしまうことを防止することが可能となる。
【0041】
また、上記実施形態においては、台座部2が有する台座本体部21は、骨接合用プレート50に形成される挿入孔51の内面に当接する当接面23を備えており、該当接面23は、挿入孔51における座ぐり面部分52と密接する形態として形成されている。このような構成を備えることにより、骨接合用プレート50に形成される挿入孔51に台座部2(台座本体部22)がぴったりとはまり込むことになり、仮止めピン1によって骨接合用プレート50をしっかりと押さえ込むことが可能となる。
【0042】
また、上記実施形態においては、台座部2は、円盤状の拡径部22を備え、当該拡径部22の周囲(周面)には、把持部4の突出方向と平行な平面部24が少なくとも1以上形成されている。このような平面部24を備えることにより、仮止めピン1が転がってしまうことを効果的に防止することが可能となり、術者(使用者)の利便性をより高いものとすることができる。
【0043】
以上、本発明の一実施形態に係る仮止めピン1について説明したが、仮止めピン1の具体的構成は、上記実施形態に限定されない。上記実施形態においては、把持部4が備える表面凹凸を、把持部4の表面外方に向けて膨出する複数の環状の膨出部41により構成しているが、例えば、把持部4の表面から隆起する複数のドーム状の突起体により構成してもよい。このような突起体により表面凹凸を形成した場合でも、滑り止め機能を発揮することになり、術者(使用者)が手指で把持部4を摘まむ際に、仮止めピン1が滑って落下することを効果的に防止することができる。
【0044】
また、上記実施形態においては、把持部4が表面凹凸を形成するように構成しているが、このような表面凹凸を形成することを省略して把持部4を形成してもよい。
【0045】
また、上記実施形態においては、台座部2が、拡径部22を備えるように構成しているが、この拡径部22を省略し、台座本体部21に把持部4が接続するようにして仮止めピン1を構成することもできる。
【0046】
また、上記実施形態においては、台座部2が備える拡径部22の周囲(周面)に、把持部4の突出方向と平行になる平面部24を二つ備えるように構成されているが、かかる平面部24を省略して拡径部22を構成してもよい。
【0047】
また、上記実施形態においては、把持部4の表面凹凸を形成する複数の膨出部41のうち、把持部4の突出方向先端側に配置される膨出部41aに関し、その最大径が、他の膨出部41の最大径よりも大きくなるように構成しているが、表面凹凸を形成する複数の膨出部41の最大径が、いずれも略同一となるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 仮止めピン
2 台座部
21 台座本体部
22 拡径部
23 当接面
24 平面部
3 挿入部
4 把持部
41 膨出部
42 溝部
50 骨接合用プレート
51 挿入孔
52 座ぐり面部分
55 生体吸収ピン
56 軸部
57 頭部