(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-01
(45)【発行日】2023-08-09
(54)【発明の名称】振動板およびこれを用いたスピーカーユニット、ヘッドホン、並びにイヤホン
(51)【国際特許分類】
H04R 7/14 20060101AFI20230802BHJP
H04R 7/20 20060101ALI20230802BHJP
H04R 9/04 20060101ALI20230802BHJP
H04R 9/02 20060101ALI20230802BHJP
H04R 1/10 20060101ALI20230802BHJP
【FI】
H04R7/14 A
H04R7/20
H04R9/04 102
H04R9/02 101C
H04R1/10 101Z
H04R9/02 102B
(21)【出願番号】P 2018191159
(22)【出願日】2018-10-09
【審査請求日】2021-09-29
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】720009479
【氏名又は名称】オンキヨー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】藤谷 武士
【審査官】堀 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-512353(JP,A)
【文献】特開2007-235552(JP,A)
【文献】特開2006-229613(JP,A)
【文献】実開昭59-119683(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 7/00- 7/26
H04R 9/00- 9/04
H04R 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
径方向の断面が凸状となる円環状のエッジ部が、シート状部材またはフィルム状部材が成形されて構成される振動板であって、
前記エッジ部は、凸状面が凹ませられることで形成される凹状リブを回転対称に複数備え、
複数の前記凹状リブは、
中心点を通過する第1径方向線に対して45°の角度で交叉する第1規定線に沿う第1リブと、
前記第1リブと交わらずに配置され、かつ、第2径方向線に対して45°未満の所定の角度で交叉する第2規定線に沿う第2リブと、を少なくとも含み、
前記第1リブと前記第2リブとは、平行ではなく、
複数の前記凹状リブは、前記第2リブが前記中心点から所定の角度で回転対称により複写されて隣り合うように配置される一または複数の前記第2リブをさらに含み、
前記エッジ部における少なくとも2つの前記第1リブの間に、隣り合う複数の前記第2リブから構成される第2リブ群が配置され、
前記複数の第2リブにおいて、隣り合う2つの前記第2リブは、平行ではない
、
振動板。
【請求項2】
径方向の断面が凸状となる円環状のエッジ部が、シート状部材またはフィルム状部材が成形されて構成される振動板であって、
前記エッジ部は、凸状面が凹ませられることで形成される凹状リブを回転対称に複数備え、
複数の前記凹状リブは、
中心点を通過する第1径方向線に対して45°の角度で交叉する第1規定線に沿う第1リブと、
前記第1リブと交わらずに配置され、かつ、第2径方向線に対して45°未満の所定の角度で交叉する第2規定線に沿う第2リブと、を少なくとも含み、
前記第1リブと前記第2リブとは、平行ではなく、
複数の前記凹状リブは、前記第1リブが前記中心点から所定の角度で回転対称により複写されて隣り合うように配置される一または複数の前記第1リブをさらに含み、
前記エッジ部における少なくとも2つの前記第2リブの間に、隣り合う複数の前記第1リブから構成される第1リブ群が配置され、
前記複数の第1リブにおいて、隣り合う2つの前記第1リブは、平行ではない
、
振動板。
【請求項3】
前記シート状部材または前記フィルム状部材とは異なる部材で構成された径方向の断面が凸状となるドーム部は、前記エッジ部の中央側に連結されている、
請求項1
または2に記載の振動板。
【請求項4】
径方向の断面が凸状となるドーム部は、前記シート状部材または前記フィルム状部材が成形されて前記エッジ部の中央側に前記エッジ部と一体に構成される、
請求項1
または2に記載の振動板。
【請求項5】
前記ドーム部の外周部に規定されるボイスコイル取付部に連結されるボイスコイルをさらに備える、
請求項
3または
4に記載の振動板。
【請求項6】
請求項
5に記載の前記振動板と、
前記振動板の前記エッジ部の外周端部が固定されるフレームと、
前記フレームに固定されて前記ボイスコイルのコイルが接続される端子と、
前記ボイスコイルの前記コイルが配置される磁気空隙を有し、前記フレームに固定される磁気回路と、
前記フレームの窓部の開孔を覆うように取り付けられる制動部材と、を備える、
スピーカーユニット。
【請求項7】
請求項
6に記載のスピーカーユニットを備えるヘッドホンまたはイヤホン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザーの耳に装着されて音声再生するヘッドホン並びにイヤホンに用いられる動電型のスピーカーユニットの振動板に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドホン並びにイヤホンに用いられる小型の動電型のスピーカーユニットにおいては、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEI(ポリエーテルイミド)、等の樹脂を材料とするフィルム状部材を成形して、ドーム部と、このドーム部の外周囲に延設されるエッジ部と、を一体に構成した振動板が用いられる場合がある。この動電型スピーカーでは、一体に構成された振動板の中央のドーム部とエッジ部との結合部に背面側から音声信号電流が供給されるボイスコイルが取り付けられる。振動板のエッジ部の外周端側は、小型軽量な磁気回路と連結するフレームに固定され、ボイスコイルのコイルは、磁気回路の磁気空隙に配置される。
【0003】
振動板の形状は、動電型のスピーカーユニットが再生する音声の品質並びに音圧周波数特性に影響を与える。特に、ドーム部とエッジ部とが一体成形された振動板では、凸状(ロール状)のエッジ部にリブ(突起または溝)を複数設けて、上下に振動して変形するエッジ部の振動特性を調整しようとするものが多くある。例えば、従来には、内周縁と、外周縁との間にあって、内周縁から非接触で、曲線に沿って等間隔に複数本のリブを形成したスピーカー振動板がある(特許文献1)。
【0004】
また、従来には、ロール形状のエッジを有する音響再生用振動板において、エッジ内周からの接線とエッジ内周・外周との交点A,B、およびエッジ内周と外周の距離の2等分円周上で交点A,Bから等しく離れた点Cとの計3点を通る円弧状の溝又は突起を、エッジ全局面にわたって互いに重ならないように複数本設けたことを特徴とするものがある(特許文献2)。
【0005】
また、従来には、タンジェンシャルエッジが形成された音響変換器の振動板において、上記タンジェンシャルエッジ間の振動板上に円周方向のリブが設けられていることを特徴とする音響変換器の振動板がある(特許文献3)。
【0006】
特許文献1の
図1または
図2のような斜め方向の複数のリブを有するエッジ部、または特許文献3のようなエッジを、タンジェンシャルエッジと呼ぶ場合がある。特許文献1の
図2または
図4に示されるこれらのリブの断面は、基材を直線的に角を設けるように折り曲げるようになっていて、振動板のエッジ部はリブにおいて鋭角に折り曲げられている。また、特許文献2でも述べられているとおり、振動板が上下に振動する際に、エッジ部の上方向および下方向への動き易さが異なる、つまり、エッジ部の変位対称性が異なって振動板の直線性が悪くなると、振動板のローリングまたは異音の発生といった不具合が生じやすくなる。エッジ部の変位対称性が異なれば、動電型のスピーカーユニットから放射される音波の偶数次歪みが増加する恐れが高くなり、再生音質が劣化するという問題がある。
【0007】
【文献】実開昭57-200996号公報
【文献】実開昭62-139191号公報
【文献】特開平9-224297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の従来技術が有する問題を解決するためになされたものであり、その目的は、ヘッドホン並びにイヤホンに用いられる動電型のスピーカーユニットの振動板に関し、振動板の変位対称性を改善して、振動板のローリングまたは異音の発生といった不具合が生じるのを防ぎ、再生音質に優れるスピーカーユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の振動板は、径方向の断面が凸状となる円環状のエッジ部を、シート状部材またはフィルム状部材を成形して構成する振動板であって、エッジ部が、凸状面を凹ませて形成する凹状リブを回転対称に複数備え、複数の凹状リブは、中心点を通過する第1径方向線に対して45°の角度で交叉する第1規定線に沿う第1リブと、第1リブと交わらずに隣り合う位置に配置され、かつ、第2径方向線に対して45°未満の所定の角度で交叉する第2規定線に沿う第2リブと、を少なくとも含む。
【0010】
好ましくは、本発明の振動板は、複数の凹状リブは、第2リブを中心点から所定の角度で回転対称により複写して隣り合うように配置する一または複数の第2リブをさらに含み、エッジ部における少なくとも2つの第1リブの間に、隣り合う複数の第2リブから構成される第2リブ群が配置される。
【0011】
また、好ましくは、本発明の振動板は、複数の凹状リブは、第1リブを中心点から所定の角度で回転対称により複写して隣り合うように配置する一または複数の第1リブをさらに含み、エッジ部における少なくとも2つの第2リブの間に、隣り合う複数の第1リブから構成される第1リブ群が配置される。
【0012】
また、好ましくは、本発明の振動板は、シート状部材またはフィルム状部材とは異なる部材で構成された径方向の断面が凸状となるドーム部が、エッジ部の中央側に連結されている。
【0013】
また、好ましくは、本発明の振動板は、径方向の断面が凸状となるドーム部を、シート状部材またはフィルム状部材を成形してエッジ部の中央側にエッジ部と一体に構成する。
【0014】
また、好ましくは、本発明の振動板は、ドーム部の外周部に規定されるボイスコイル取付部に連結されるボイスコイルをさらに備える。
【0015】
また、本発明のスピーカーユニットは、上記の振動板と、振動板のエッジ部の外周端部が固定されるフレームと、フレームに固定されてボイスコイルのコイルが接続される端子と、ボイスコイルのコイルが配置される磁気空隙を有してフレームに固定される磁気回路と、フレームの窓部の開孔を覆うように取り付けられる制動部材と、を備える。
【0016】
また、本発明のヘッドホンまたはイヤホンは、上記のスピーカーユニットを備える。
【0017】
以下、本発明の作用について説明する。
【0018】
本発明の振動板は、ヘッドホンまたはイヤホンに用いる動電型のスピーカーユニットを構成する振動板であって、シート状部材またはフィルム状部材を成形して、径方向の断面が凸状となるエッジ部を構成する。本発明の振動板は、エッジ部の中央側に、別の材料または同一の材料で形成されるドーム部と、ドーム部の外周部に規定されるボイスコイル取付部に連結されるボイスコイルをさらに備えるようにしてもよい。本発明のスピーカーユニットは、この振動板と、振動板のエッジ部の外周端部が固定されるフレームと、フレームに固定されてボイスコイルのコイルが接続される端子と、ボイスコイルのコイルが配置される磁気空隙を有してフレームに固定される磁気回路と、フレームの窓部の開孔を覆うように取り付けられる制動部材と、を備え、ヘッドホンまたはイヤホンを構成することができる。
【0019】
ここで、振動板のエッジ部は、凸状面を凹ませて形成する凹状リブを、中心点を通過するそれぞれの径方向線に対して傾いた方向に延びるように、複数設けて回転対称に配置する。複数の凹状リブは、中心点を通過する第1径方向線に対して45°の角度で交叉する第1規定線に沿う第1リブと、第1リブと交わらずに隣り合う位置に配置され、かつ、第2径方向線に対して45°未満の所定の角度で交叉する第2規定線に沿う第2リブと、を少なくとも含む。第1規定線は、中心点を中心とする同心円の接線でもあるので、その第1規定線に沿う第1リブはタンジェンシャルリブを形成することになる。また、第2リブは、タンジェンシャルリブである第1リブに対して傾斜する傾斜リブを形成することになる。
【0020】
したがって、従来のタンジェンシャルリブを設ける場合に比較して、さらに傾斜リブを備えるので、振動板のエッジ部の変位対称性を改善して、ほぼ対称にすることができる。また、径方向線に対して傾斜角の異なる第1リブ(タンジェンシャルリブ)と第2リブ(傾斜リブ)とが隣り合うように並ぶので、高音域での共振分散の効果をもたらすことができる。その結果、振動板のローリングまたは異音の発生を抑制し、偶数次歪みを抑制して、再生音質を優れたものにすることができる。
【0021】
好ましくは、本発明の振動板は、複数の凹状リブが、第2リブを中心点から所定の角度で回転対称により複写して隣り合うように配置する一または複数の第2リブをさらに含み、エッジ部における少なくとも2つの第1リブの間に、隣り合う複数の第2リブから構成される第2リブ群が配置されるのがよい。また、複数の凹状リブが、第1リブを中心点から所定の角度で回転対称により複写して隣り合うように配置する一または複数の第1リブをさらに含み、エッジ部における少なくとも2つの第2リブの間に、隣り合う複数の第1リブから構成される第1リブ群が配置されるようにしてもよい。エッジ部の変位対称性をさらに改善することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明のヘッドホン並びにイヤホンに用いられる動電型のスピーカーユニットの振動板は、ドーム部とエッジ部とが一体成形された振動板の変位対称性を改善して、振動板のローリングまたは異音の発生といった不具合が生じるのを防ぎ、再生音質に優れるヘッドホン並びにスピーカーユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態に係るヘッドホン並びにイヤホンに用いられる動電型のスピーカーユニットの外観図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る振動板の形状を説明する平面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る振動板の形状を示す図および変位対称性を示すグラフである。
【
図4】比較例の振動板の形状を示す図および変位対称性を示すグラフである。
【
図5】他の比較例の振動板の形状を示す図および変位対称性を示すグラフである。
【
図6】本実施例または比較例の振動板を用いた動電型のスピーカーユニットの音圧周波数特性を示すグラフである。
【
図7】本発明の他の実施形態に係る振動板の形状を示す図および変位対称性を示すグラフである。
【
図8】本発明の他の実施形態に係る振動板の形状を示す図および変位対称性を示すグラフである。
【
図9】本発明の他の実施形態に係る振動板の形状を示す図および変位対称性を示すグラフである。
【
図10】本発明の他の実施形態に係る振動板の形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の好ましい実施形態による振動板およびこれを用いたスピーカーユニット、ヘッドホン、並びにイヤホンについて説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【実施例1】
【0025】
図1は、本発明の好ましい実施形態によるヘッドホン並びにイヤホンに用いられる動電型のスピーカーユニット1について説明する図である。具体的には、
図1は、スピーカーユニット1の外観を示す前面側からの斜視図である。また、
図2は、このスピーカーユニット1の振動板10の形状を説明する一部を拡大した平面図である。なお、スピーカーユニット1の形態は、本実施例の場合に限定されない。また、本発明の説明に不要なスピーカーユニット1の構成については、図示及び説明を省略する。
【0026】
本実施例のスピーカーユニット1は、ユーザーの耳に近接させて配置するヘッドホンに用いられる呼び口径が40mmの動電型スピーカーである。本実施例のスピーカーユニット1は、例えば、呼び口径が35~50mmの場合にはヘッドホンに適し、呼び口径が5~10mmの場合のように小口径である場合にはイヤホンに適する。なお、スピーカーユニット1は、ヘッドホンのバッフル又はイヤホンのハウジングに取り付けられて、ヘッドホンまたはイヤホンを構成する。ただし、このスピーカーユニット1を用いるヘッドホン又はイヤホンの具体的な形態については、図示及び説明を省略する。
【0027】
スピーカーユニット1は、樹脂材料で形成されるフレーム2と、フレーム2に固定される(図示しない)磁気回路3と、フィルム状のPET(ポリエチレンテレフタレート)部材を成形した振動板10と、振動板10に連結してそのコイルが(図示しない)磁気回路3の(図示しない)磁気空隙に配置される(図示しない)ボイスコイルと、ボイスコイルのコイルの両端が接続される(図示しない)端子と、フレーム2に取り付けられて振動板10から放射された音波が通過する(図示しない)制動部材と、を備える。なお、磁気回路3とボイスコイル、並びに、制動部材フレーム2の後述する開孔を覆う制動部材は、
図1では振動板10の背面側に位置して隠れることになるので、外観視されていない。
【0028】
振動板10は、球面の一部のようなドーム部11と、このドーム部11の外周囲に延設されるエッジ部12と、を一体に構成した振動板である。ドーム部11の外周部であってエッジ部12との結合部に、背面側から音声信号電流が供給されるボイスコイルが取り付けられる。振動板10のエッジ部12の外周端側は、フレーム2の振動板固定部21に固定され、小型軽量な磁気回路3は、フレーム2の(図示しない)磁気回路固定部22に固定される。磁気回路固定部22の内側には、磁気回路3の磁気空隙と連通してボイスコイルが通過する開孔が設けられる。振動板10と連結するボイスコイルのコイルは、磁気回路3の磁気空隙に配置される。
【0029】
したがって、スピーカーユニット1では、強い直流磁界が発生する磁気回路3の磁気空隙中に配置されるボイスコイルに音声信号電流が供給されると、図示するZ軸方向に駆動力が発生し、ボイスコイルならびに振動板10から構成されるスピーカー振動系がZ軸方向に振動する。つまり、スピーカー振動系は、振動板10のエッジ12のみによって振動可能に支持されており、その結果、振動板10の前後に存在する空気に圧力変化を生じ、音声信号電流を音波(音声)に変換する。
【0030】
フレーム2は、振動板10のエッジ部12の外周部を固定する略円環形状の振動板固定部21と、磁気回路3を固定する略円環形状の磁気回路固定部22と、振動板固定部21と磁気回路固定部22とを連結して複数の(図示しない)開孔を規定する(図示しない)連結部23と、端子を固定する(図示しない)端子固定部と、を有する。フレーム2は、前面側に振動板10のドーム部11およびエッジ部12が露出するように取り付けて、振動板10の前面側から放射される音波が再生されるように構成されている。
【0031】
さらに、フレーム2は、振動板10の前面側から放射される音波とは逆相の関係になる振動板10の背面側から放射される音波に関して、連結部23に規定されている複数の(図示しない)開孔を通じてエッジ部12からの音波が背面側に再生されるように構成されている。連結部23には、開孔を覆うように通気性を有する(図示しない)制動部材を取り付けることができる。スピーカーユニット1は、ヘッドホン又はイヤホンに適するように、開孔および制動部材によってフレーム2の内部空間によるコンプライアンス(音響容量)を調整でき、コンプライアンスが調整されることによって周波数特性、特に低音域の周波数特性を調整することができる。
【0032】
フレーム2は、ポリフェニレンエーテル系樹脂と、ポリスチレン系樹脂と、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体からなる群から選択される少なくとも1つのポリオレフィン系樹脂と、を含有する樹脂材料から形成されている。ポリフェニレンエーテル系樹脂とポリスチレン系樹脂の重量比は、90/10~70/30の範囲であるのが好ましく、また、ポリフェニレンエーテル系樹脂とポリスチレン系樹脂との合計100重量部に対して、ポリオレフィン系樹脂を、5~20重量部含有するようにするのが好ましい。ポリフェニレンエーテル系樹脂と、ポリスチレン系樹脂と、はアロイ化されていてもよい。
【0033】
本実施例のフレーム2は、上記樹脂材料を採用することにより、高い内部損失と優れた機械的特性をバランスよく有し、軽量で、かつ、優れた耐熱性およびS/N比を有することができる。より詳細には、ポリフェニレンエーテル系樹脂と、ポリスチレン系樹脂と、ポリオレフィン系樹脂とが特定の比率で含有されることにより、格段に高い内部損失と優れた機械的特性をバランスよく有し、かつ、これらの樹脂が本来有する優れた耐熱性、耐湿性、成形性、寸法安定性、軽量性を損なわずに振動特性に優れるフレーム2を得ることができる。
【0034】
振動板10は、厚みが20μmのフィルム状のPET(ポリエチレンテレフタレート)部材を成形している。振動板10のエッジ部12は、径方向の断面が凸状となるロールエッジである。
図1または
図2に示すように、エッジ部12には、凸状面を凹ませて形成する凹状リブ13が複数設けられている。これらの複数の凹状リブ13は、タンジェンシャルリブである第1リブ14と、傾斜リブである第2リブ15と、を含み、これらが回転対称にエッジ部12に配置されている。本実施例の振動板10のエッジ部12には、凹状リブ13としての4本の第1リブ14および36本の第2リブ15が配置されている。
【0035】
それぞれの凹状の第1リブ14は、中心点Oを通過する第1径方向線R1に対して角度θ=45°で交叉する第1規定線T1に沿うように、エッジ部12の凸状面を凹ませて形成する。第1径方向線R1は、第1リブ14のほぼ中央付近を通過する仮想線である。例えば、
図2に示すように、X軸と交叉する第1リブ14は、X軸と一致する第1径方向線R1において、中心点Oから所定の距離だけ離れたエッジ部12の凸状面を角度θ=45°の角度で交叉する第1規定線T1に沿って凹ませた溝として、形成される。
【0036】
また、第1リブ14を規定する第1規定線T1は、中心点Oを中心とする同心円の接線でもある。つまり、第1規定線T1は、図示する角度θ=45°の径方向線R0に対して角度θ=90°の角度で交叉するような同心円の接線である。したがって、第1規定線T1に沿う第1リブ14は、エッジ部12のタンジェンシャルリブを形成することになる。
【0037】
また、
図2に示すように、Y軸と交叉する第1リブ14は、図示するY軸と一致する第1径方向線において、中心点Oから所定の距離だけ離れたエッジ部12の凸状面を角度θ=45°の角度で交叉する第1規定線に沿って凹ませた溝として、形成される。Y軸と交叉する第1リブ14は、X軸と交叉する第1リブ14を中心点Oを中心に90°回転させて複写した凹状リブである。振動板10では、同様にして、X軸またはY軸と交叉するさらに2つの第1リブ14が回転対称で複写するように配置され、その結果、合計4本の第1リブ14が中心点Oから90°の角度で回転対称に配置される。
【0038】
また、凹状の第2リブ15は、中心点Oを通過する第2径方向線に対して角度φ=15°で交叉する第2規定線に沿うように、エッジ部12の凸状面を凹ませて形成する。第2径方向線は、第2リブ15のほぼ中央付近を通過する仮想線である。例えば、
図2に示すように、X軸と交叉する第1リブ14と交わらずに隣り合う位置に配置される第2リブ15aは、中心点Oを通過してX軸からの角度δ=20°の方向の第2径方向線Raにおいて、中心点Oから所定の距離だけ離れたエッジ部12の凸状面を角度φ=15°の角度で交叉する第2規定線Taに沿って凹ませた溝として、形成される。
【0039】
したがって、第2リブ15aを規定する第2規定線Taは、中心点Oを中心とする同心円の接線にはならず、隣り合う第1リブ14を規定する第1規定線T1とは、傾斜して交叉する関係になる。したがって、第2規定線Taに沿う第2リブ15aは、エッジ部12のタンジェンシャルリブではなく、第1リブ14とは交わらない傾斜リブを形成することになる。
【0040】
次に、
図2に示すように、他の第2リブ15bは、傾斜リブである第2リブ15aと隣り合う位置に配置される。具体的には、第2リブ15bは、第2リブ15aを、中心点Oから角度λ=7.5°の間隔で離して回転対称で複写するように配置される。同様に、他の第2リブ15c~15iは、それぞれ角度λ=7.5°の間隔で離して回転対称で複写するように配置される。その結果、第2リブ15a~15iは、9本の第2リブによるリブ群を形成する。このリブ群(第2リブ15a~15i)は、先述のX軸と交叉する位置に配意された第1リブ14と、Y軸と交叉する位置に配意された第1リブ14と、の間に配置されることになる。
【0041】
本実施例の振動板10では、4組の9本の第2リブ15によるリブ群が、中心点Oから90°の角度で回転対称に複写するように配置される。したがって、エッジ部12を一周すると、1本のタンジェンシャルリブである第1リブ14と、9本の傾斜リブである第2リブ15によるリブ群とが、4組順番に出現するように配置されていることになる。
【0042】
その結果、本実施例の振動板10のエッジ部12では、上述の通り、凹状リブ13としての4本の第1リブ14および36本の第2リブ15が、面積当たりの凹状リブ13の有無の密度が低い部分と高い部分を含むように配置されていることになる。このようにすることで、エッジ部12の剛性・強度が一様でなくなり、共振周波数が分散する。エッジ部12の凹状リブ13は、振動板10の変位対称性を改善して、振動板10のローリングまたは異音の発生といった不具合が生じるのを防ぎ、再生音質を改善する。本実施例の場合には、それだけでなく、音圧周波数特性におけるピーク・ディップを抑制して、再生音質を優れるものにできる。
【0043】
なお、第1リブ14並びに第2リブ15の長さおよび深さは、エッジ部12の形状に応じて適宜定めることができる。つまり、凹状リブ13のエッジ部12の凸状面から深さは、エッジ部12の中央の位置とエッジ部12の内周側端部または外周側端部に近い位置とでは異なるように変化する。凹状リブ13は、凸状のエッジ部12の両端部を除く部分に長くて深い溝状の部分として設けられる。凹状リブ13の内側の端は、ドーム部11の外周部であってエッジ部12との結合部に至らず、また、凹状リブ13の外側の端は、フレーム2の振動板固定部21と固定される平面部にまでは至らない。
【0044】
図3、
図4および
図5は、本実施例の振動板10、並びに、比較例の振動板100および100aの形状を示す図と、Z軸方向の変位対称性をそれぞれ示すグラフである。具体的には、
図3(a)、
図4(a)、および
図5(a)は振動板の形状を示す平面図であり、
図3(b)、
図4(b)、および
図5(b)の変位対称性を示すグラフは、振動板のボイスコイルが取り付けられる位置に加える駆動力を基準化した値(%)を横軸にとって、駆動力に対する振動板のZ軸方向の変位量(Displacement [mm])の絶対値を縦軸にとって、上方向(Up:実線、前面方向)と下方向(Down:点線、背面方向)とを重ね書きしたグラフである。エッジ部12のZ軸方向の変位対称性に優れる理想的な振動板の場合には、上方向の特性曲線と下方向との特性曲線が離れることなく近づいて、ほぼ一致するようになる。
【0045】
図4に示す比較例1の振動板100のエッジ部12には、凹状リブとしての48本のタンジェンシャルリブ130が回転対称に配置されている。また、
図5に示す比較例2の振動板100aのエッジ部12には、凹状リブとしての12本のタンジェンシャルリブ130aが回転対称に配置されている。つまり、比較例の振動板100または100aのエッジ部12に設けられる凹状リブ130または130aは、タンジェンシャルリブとは交わらない傾斜リブを含まない点で本実施例の振動板10に対して相違し、他の設定は共通するものである。
【0046】
図3、
図4および
図5のグラフを参照すると、本実施例の振動板10は、比較例の振動板100または100aと比較して、上方向の特性曲線と下方向との特性曲線とがかなり近づいて、エッジ部12のZ軸方向の変位対称性が優れている。したがって、振動板10を用いる動電型のスピーカーユニット1は、ボイスコイルおよび振動板10が構成するスピーカー振動系がローリングするなどして異音を発生することを、比較例の振動板100または100aと比較して抑制することができる。振動板10のZ軸方向の変位対称性が優れていれば、振動板10が上方向と下方向とで変位の絶対値が等しい場合に排出する空気量が等しくなる方向に近づくので、偶数次歪みの発生を抑制して再生音質を優れたものにすることができる。
【0047】
図6は、本実施例の振動板10または比較例の振動板100を用いた動電型のスピーカーユニットの音圧周波数特性示すグラフである。横軸が入力音声信号の周波数(1kHz~100kHz)であり、縦軸が再生される音圧レベルである。本実施例の振動板10の場合には、比較例の振動板100の場合に約3k~30kHzに出現するピーク・ディップが抑えられている。したがって、この本実施例の振動板10を用いる動電型のスピーカー1ユニットは、これを備えるヘッドホンまたはイヤホンの再生音質を優れるものにできる。
【0048】
本実施例の振動板10を用いる動電型のスピーカーユニット1を備える(図示しない)ヘッドホンの場合には、比較例の(図示しない)ヘッドホンとの比較試聴の結果、比較例のヘッドホンに比べて再生音質の方が優れることが確認できる。本実施例の場合には、動電型のスピーカーユニット1の振動板10のローリングに起因する異音などの不要な音波の発生を抑えることができるからである。もちろん、この振動板10を用いる動電型のスピーカーユニット1は、ユーザーの耳にハウジングを直接支持させる(図示しない)イヤホンに用いてもよい。
【0049】
図7、
図8および
図9は、他の実施例2~4の振動板10a、10bおよび10cの形状を示す図と、Z軸方向の変位対称性をそれぞれ示すグラフである。先の実施例と同様に、具体的には、
図7(a)、
図8(a)、および
図9(a)は振動板の形状を示す平面図であり、
図7(b)、
図8(b)、および
図9(b)は変位対称性を示すグラフである。実施例2~4の振動板10a、10bおよび10cは、第1リブ14並びに第2リブ15の本数と間隔が本実施例の振動板10に対して相違し、他の設定は共通するものである。
【0050】
図7に示す実施例2の振動板10aのエッジ部12には、凹状リブ13として、タンジェンシャルリブである4本の第1リブ14と、傾斜リブである32本の第2リブ15と、を含み、これらが回転対称にエッジ部12に配置されている。凹状の第2リブ15は、中心点Oを通過する第2径方向線に対して角度φ=15°で交叉する第2規定線に沿うように、エッジ部12の凸状面を凹ませて形成されている。したがって、エッジ部12を一周すると、1本のタンジェンシャルリブである第1リブ14と、8本の傾斜リブである第2リブ15によるリブ群とが、4組順番に出現するように配置されている。
【0051】
図8に示す実施例3の振動板10bのエッジ部12には、凹状リブ13として、タンジェンシャルリブである4本の第1リブ14と、傾斜リブである24本の第2リブ15と、を含み、これらが回転対称にエッジ部12に配置されている。凹状の第2リブ15は、中心点Oを通過する第2径方向線に対して角度φ=15°で交叉する第2規定線に沿うように、エッジ部12の凸状面を凹ませて形成されている。したがって、エッジ部12を一周すると、1本のタンジェンシャルリブである第1リブ14と、6本の傾斜リブである第2リブ15によるリブ群とが、4組順番に出現するように配置されている。
【0052】
図9に示す実施例4の振動板10cのエッジ部12には、凹状リブ13として、タンジェンシャルリブである6本の第1リブ14と、傾斜リブである30本の第2リブ15と、を含み、これらが回転対称にエッジ部12に配置されている。凹状の第2リブ15は、中心点Oを通過する第2径方向線に対して角度φ=15°で交叉する第2規定線に沿うように、エッジ部12の凸状面を凹ませて形成されている。したがって、エッジ部12を一周すると、1本のタンジェンシャルリブである第1リブ14と、5本の傾斜リブである第2リブ15によるリブ群とが、6組順番に出現するように配置されている。
【0053】
図7、
図8および
図9のグラフを参照すると、本実施例の振動板10a、10bおよび10cは、先の実施例の振動板10と同様に、比較例の振動板100または100aと比較して、上方向の特性曲線と下方向との特性曲線とがかなり近づいて、エッジ部12のZ軸方向の変位対称性が優れている。したがって、振動板10a、10bおよび10cを用いる動電型のスピーカーユニット1は、ボイスコイルおよび振動板10が構成するスピーカー振動系がローリングするなどして異音を発生することを、比較例の振動板100または100aと比較して抑制することができる。振動板10a、10bおよび10cのZ軸方向の変位対称性が優れていれば、振動板10a、10bおよび10cが上方向と下方向とで変位の絶対値が等しい場合に排出する空気量が等しくなる方向に近づくので、偶数次歪みの発生を抑制して再生音質を優れたものにすることができる。
【0054】
図10は、他の実施例5~7の振動板10d、10eおよび10fの形状を示す平面図である。先の実施例と同様に、具体的には、
図10(a)が振動板10dの形状を示し、
図10(b)が振動板10eの形状を示し、
図10(c)が振動板10fの形状を示す。実施例5~7の振動板10d、10eおよび10fは、第1リブ14並びに第2リブ15の本数と間隔が先の実施例の振動板10~10cに対して相違し、他の設定は共通するものである。特に、実施例5~7の振動板10d、10eおよび10fでは、複数の第1リブ14が隣り合うように配置されて、第1リブ14によるリブ群が形成されている。また、この第1リブ14によるリブ群は、少なくとも2つの第2リブ15の間に配置されている。
【0055】
図10(a)に示す実施例5の振動板10dのエッジ部12には、凹状リブ13として、タンジェンシャルリブである8本の第1リブ14と、傾斜リブである32本の第2リブ15と、を含み、これらが回転対称にエッジ部12に配置されている。第1リブ14は、2本の凹状のタンジェンシャルリブが隣り合うように配置されている。凹状の第2リブ15は、中心点Oを通過する第2径方向線に対して角度φ=15°で交叉する第2規定線に沿うように、エッジ部12の凸状面を凹ませて形成されている。したがって、エッジ部12を一周すると、2本のタンジェンシャルリブである第1リブ14と、8本の傾斜リブである第2リブ15によるリブ群とが、4組順番に出現するように配置されている。
【0056】
図10(b)に示す実施例6の振動板10eのエッジ部12には、凹状リブ13として、タンジェンシャルリブである12本の第1リブ14と、傾斜リブである28本の第2リブ15と、を含み、これらが回転対称にエッジ部12に配置されている。第1リブ14は、3本の凹状のタンジェンシャルリブが隣り合うように配置されている。凹状の第2リブ15は、中心点Oを通過する第2径方向線に対して角度φ=15°で交叉する第2規定線に沿うように、エッジ部12の凸状面を凹ませて形成されている。したがって、エッジ部12を一周すると、3本のタンジェンシャルリブである第1リブ14と、7本の傾斜リブである第2リブ15によるリブ群とが、4組順番に出現するように配置されている。
【0057】
図10(c)に示す実施例7の振動板10fのエッジ部12には、凹状リブ13として、タンジェンシャルリブである12本の第1リブ14と、傾斜リブである24本の第2リブ15と、を含み、これらが回転対称にエッジ部12に配置されている。第1リブ14は、2本の凹状のタンジェンシャルリブが隣り合うように配置されている。凹状の第2リブ15は、中心点Oを通過する第2径方向線に対して角度φ=15°で交叉する第2規定線に沿うように、エッジ部12の凸状面を凹ませて形成されている。したがって、エッジ部12を一周すると、2本のタンジェンシャルリブである第1リブ14と、4本の傾斜リブである第2リブ15によるリブ群とが、6組順番に出現するように配置されている。
【0058】
本実施例の振動板10d、10eおよび10fは、先の実施例の振動板10~10cと同様に、比較例の振動板100または100aと比較して、上方向の特性曲線と下方向との特性曲線とがかなり近づいて、エッジ部12のZ軸方向の変位対称性が優れるようになる。したがって、振動板10d、10eおよび10fを用いる動電型のスピーカーユニット1は、ボイスコイルおよび振動板10が構成するスピーカー振動系がローリングするなどして異音を発生することを、比較例の振動板100または100aと比較して抑制することができる。
【0059】
上記の実施例のように、エッジ部12における凹状リブ13として、タンジェンシャルリブである第1リブ14並びに傾斜リブである第2リブ15の配置は、少なくとも両者が交わることなく隣り合うように配置されていればよい。タンジェンシャルリブである第1リブ14が、中心点を通過する第1径方向線に対して45°の角度で交叉する第1規定線に沿うので、第2リブ15はその第2径方向線に対して45°未満の所定の角度で交叉する第2規定線に沿うようにすればよい。また、第1リブ14並びに第2リブ15がそれぞれ隣り合うように形成されているリブ群が、エッジ部12を一周すると交互に出現するように配置されていればよい。
【0060】
なお、振動板10を構成する樹脂材料は、上記実施例のPETのフィルム状部材に限定されない。振動板10を形成する材料は、例えば、他のPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PEI(ポリエーテルイミド)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PC(ポリカーボネート)、PI(ポリイミド)、PAR(ポリアリレート)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、等の軽量な樹脂材料のフィルム、もしくは、シートを熱プレスして形成したものであってもよく、また、エラストマーのシートをプレス成形したものであってもよい。また、振動板10を形成する材料は、セルロース等の天然繊維や合成繊維から構成された不織布、または、紙材であってもよい。振動板10は、複数の材料を積層させたものであってもよい。例えば、PEEK、PEI、PEN等の樹脂フィルムを積層させる際に、中間層としてエラストマーのシート、あるいは、接着剤層を間に挟んでもよい。
【0061】
振動板10は、ドーム部11の外周部に規定されるボイスコイル取付部にボイスコイル3を連結して、動電型のスピーカーユニット1を構成するスピーカー振動系の組み立て部品として取り扱うことができる。なお、ボイスコイル3の直径寸法と、振動板10を構成する樹脂材料の厚み寸法とに応じて、ドーム部11並びにエッジ部12の形状寸法は、凹状リブ13の稜線部を面取りする曲面の寸法を含めて変更可能である。また、本実施例の振動板10のドーム部11は、上記実施例のように球面の一部のような形状であればよいが、ドーム部11にも補強を図る凹状または凸状の溝であるリブを設けてもよい。
【0062】
また、振動板10は、ドーム部11が、エッジ部12とは異なる部材で構成されて、エッジ部12の中央側に連結されていてもよい。つまり、径方向の断面が凸状となるエッジ部12を構成するシート状部材またはフィルム状部材とは異なる部材で構成されたドーム部11を、エッジ部12の中央側に連結してもよい。
【0063】
本実施例のフレーム2は、上記のようなポリフェニレンエーテル系樹脂と、ポリスチレン系樹脂と、ポリオレフィン系樹脂とを特定の比率で含有する樹脂材料を採用することにより、高い内部損失と優れた機械的特性をバランスよく有し、軽量で、かつ、優れた耐熱性およびS/N比を有することができるようにしているが、比率の異なる他の樹脂材料または金属材料でフレーム2を構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の振動板は、図示するような動電型のスピーカーユニットに限らず、さらにダンパーを備えてスピーカー振動系を構成するスピーカーユニットであってもよい。また、動電型のスピーカーユニットに限らず、圧電型のスピーカーユニットにも適用が可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 スピーカーユニット
2 フレーム
21 振動板固定部
22 磁気回路固定部
23 連結部
3 磁気回路
10 振動板
11 ドーム部
12 エッジ部
13 凹状リブ
14 第1リブ
15 第2リブ