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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-01
(45)【発行日】2023-08-09
(54)【発明の名称】対象物検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01F 23/80 20220101AFI20230802BHJP
   G01N 27/22 20060101ALI20230802BHJP
【FI】
G01F23/80
G01N27/22 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019102298
(22)【出願日】2019-05-31
(65)【公開番号】P2020197403
(43)【公開日】2020-12-10
【審査請求日】2022-01-21
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000181
【氏名又は名称】岩崎通信機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121706
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128705
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147773
【弁理士】
【氏名又は名称】義村 宗洋
(72)【発明者】
【氏名】藤本 敦
(72)【発明者】
【氏名】中島 亜紗美
【審査官】大森 努
(56)【参考文献】
【文献】特開昭50-59059(JP,A)
【文献】特開2012-8129(JP,A)
【文献】特開平11-311561(JP,A)
【文献】特開2015-111060(JP,A)
【文献】特表2001-524682(JP,A)
【文献】特開平7-128114(JP,A)
【文献】特開平8-122128(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0270542(US,A1)
【文献】特開2000-314650(JP,A)
【文献】特開2006-78369(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 23/00,23/14-23/296,23/80
G01N 27/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電容量に基づいて対象物の有無を検出する対象物検出装置であって、
対象物の有無および回路構成の違いに依存する静電容量を有するセンサ素子部と、
回路構成ごとに、前記センサ素子部の静電容量を所定の基準と比較した結果である個別結果を出力する個別判断部と、
最新の個別結果の組および過去の個別結果の組の遷移に基づいて、対象物の有無を判断する有無判断部と
を備え、
前記回路構成の違いに依存する静電容量の変化は、対象物の有無に依存する静電容量の変化よりも小さく、対象物ありの場合にはすべての回路構成の個別結果がありを示し、対象物なしの場合にはすべての回路構成の個別結果がなしを示す温度が存在する
ことを特徴とする対象物検出装置。
【請求項2】
請求項1記載の対象物検出装置であって、
前記センサ素子部は、
静電容量が依存する2種類以上の回路構成を設定でき、
前記有無判断部は、
最新の個別結果の組を直近の個別結果の組と比較し、2つ以上の個別結果が変化している場合は、当該変化にしたがって対象物の有無を判断する
ことを特徴とする対象物検出装置。
【請求項3】
静電容量に基づいて対象物の有無を検出する対象物検出装置であって、
対象物の有無に依存する静電容量を有するセンサ素子部と、
静電容量を比較する複数の基準を設けておき、基準ごとに、前記センサ素子部の静電容量を当該基準と比較した結果である個別結果を出力する個別判断部と、
最新の個別結果の組および過去の個別結果の組の遷移に基づいて、対象物の有無の変化によるものか温度の変化によるものかを判断する有無判断部と
を備え、
前記複数の基準の静電容量の相違は、対象物の有無に依存する静電容量の変化よりも小さく、対象物ありの場合にはすべての基準に対する個別結果がありを示し、対象物なしの場合にはすべての基準に対する個別結果がなしを示す温度が存在する
ことを特徴とする対象物検出装置。
【請求項4】
請求項3記載の対象物検出装置であって、
前記有無判断部は、
最新の個別結果の組を直近の個別結果の組と比較し、2つ以上の個別結果が変化している場合は、当該変化にしたがって対象物の有無を判断する
ことを特徴とする対象物検出装置。
【請求項5】
請求項1または4記載の対象物検出装置であって、
前記有無判断部は、
最新の個別結果の組を含む3つ以上の個別結果の組に基づいて、対象物の有無を判断する
ことを特徴とする対象物検出装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の対象物検出装置であって、
複数のセンサ素子部を具備し、
前記個別判断部は、センサ素子部ごとに個別結果の組を出力し、
前記有無判断部は、直近のセンサ素子部ごとの個別結果の組からセンサ素子部ごとの個別結果の組の遷移の原因を限定し、最新のセンサ素子部ごとの個別結果の組に基づいて、対象物の有無を判断する
ことを特徴とする対象物検出装置。
【請求項7】
請求項6記載の対象物検出装置であって、
前記の複数のセンサ素子部は、前記対象物が収納されている貯蔵容器の上下方向に分散して配置されており、
前記有無判断部は、前記の配置も考慮してセンサ素子部ごとの個別結果の組の遷移の原因を限定する
ことを特徴とする対象物検出装置。
【請求項8】
請求項6または7記載の対象物検出装置であって、
少なくとも3つのセンサ素子部を具備し、
1つのセンサ素子部は対象物が常に無い位置に配置され、他の1つのセンサ素子部は対象物が常に有る位置に配置されている
ことを特徴とする対象物検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量に基づいて対象物の有無を検出する対象物検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
静電容量に基づいて対象物の有無を検出する対象物検出装置としては、特許文献1,2に記載された技術などが従来技術として知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-40021号公報
【文献】特開2018-105720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術は、温度変化によって生じる静電容量の変化による誤判断防止のため、センサ付近の温度を検知し、供給電圧を変化させるなどの対策を行っている。したがって、必ず温度を検知する素子をセンサ付近に配置しなければならないという課題がある。そのため、センサの価格が高くなりやすい。
【0005】
本発明は、センサ付近に配置する温度を検知する素子を不要にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の対象物検出装置は、静電容量に基づいて対象物の有無を検出する。本発明の対象物検出装置は、センサ素子部、個別判断部、有無判断部を備える。第1の対象物検出装置では、センサ素子部は、対象物の有無および回路構成の違いに依存する静電容量を有し、個別判断部は、回路構成ごとに、センサ素子部の静電容量を所定の基準と比較した結果である個別結果を出力する。本発明の第2の対象物検出装置では、センサ素子部は、対象物の有無に依存する静電容量を有し、個別判断部は、静電容量を比較する複数の基準を設けておき、基準ごとに、前記センサ素子部の静電容量を当該基準と比較した結果である個別結果を出力する。有無判断部は、最新の個別結果の組および過去の個別結果の組に基づいて、対象物の有無を判断する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の対象物検出装置によれば、条件の異なる複数の判断結果である個別結果の組を取得し、個別結果の組の遷移に基づいて対象物の有無を判断する。対象物の有無の変化による個別結果の組の遷移と、温度変化による個別結果の組の遷移の特徴の違いに基づいて対象物の有無の変化か温度変化を判断するので、センサ付近に温度を検知する素子を配置する必要が無い。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の対象物検出装置の機能構成例を示す図。
図2】対象物検出装置が複数のセンサ素子部を具備しているときの用途の例を示す図。
図3】従来のセンサ素子部の構成例を示す図。
図4】対象物の有無と静電容量と温度の関係を示す図。
図5】実施例1のセンサ素子部の構成例を示す図。
図6】実施例1の場合の対象物の有無と静電容量と温度の関係を示す図。
図7】個別結果が1つの場合の対象物の有無と温度と個別結果の関係を示す図。
図8】個別結果が2つの場合の対象物の有無と温度と個別結果の組の関係を示す図。
図9】個別結果が3つの場合の対象物の有無と温度と個別結果の組の関係を示す図。
図10】個別結果の組に基づいて判断し得る状態を示す図。
図11】センサ素子部の静電容量に対して複数の基準を設けた例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、同じ機能を有する構成部には同じ番号を付し、重複説明を省略する。
【実施例1】
【0010】
図1に実施例1の対象物検出装置の機能構成例を示す。対象物検出装置100は、静電容量に基づいて対象物の有無を検出する。対象物検出装置100は、センサ素子部110、個別判断部120、有無判断部130、記憶部190を備える。図2は、対象物検出装置が複数のセンサ素子部を具備しているときの用途の例を示す図である。貯蔵容器900には対象物910が収納され、使用されることで対象物910は減っていく。センサ素子部110-1,…,6は、貯蔵容器900の上下方向に分散して配置されている。このようにセンサ素子部110-1,…,6を配置することで、対象物910が貯蔵容器900のどの高さまで存在しているかを確認できる。貯蔵容器900は例えばタンクであり、対象物910は例えば重油やペレットである。例えば、重油やペレットがタンクに収納され、ビニールハウスの暖房のために使用されると減っていく。貯蔵容器900が屋外にある場合は、センサ素子部110-1,…,6付近の温度を制御することは難しく、かつ、温度の範囲も広い。
【0011】
実施例1のセンサ素子部110の説明の前に、従来の静電容量の変化を利用したセンサについて説明する。図3に従来のセンサ素子部の構成例を示す。センサ素子部210は、対象物の有無に依存する静電容量を有する。そして、センサ素子部210は、対象物の有無を判断するために、検出電極111と接地との間の静電容量に依存した情報、データ、または信号を出力する。例えば、センサ素子部210は、検出電極111、発振回路116、検波回路117を具備する。この場合は、発振回路116は、検出電極111と接地との間の静電容量が発振条件を満たすときに発振するように構成されている。検波回路117は、発振回路116からの出力を検波し、その結果である信号を出力する。従来は、この信号とあらかじめ定めたしきい値とを比較することで、対象物の有無を判断している。ここで、静電容量がしきい値Aのときに、検波回路117から出力される信号が上記のあらかじめ定めたしきい値になるとする。図4は、対象物の有無と静電容量と温度の関係を示す図である。横軸は温度、縦軸は静電容量であり、検出電極111と接地との間の静電容量が、しきい値Aより大きいときに対象物があると判断し、しきい値Aより小さいときに対象物がないと判断する。実線は対象物があるときの静電容量と温度の関係を示す線、点線は対象物がないときの静電容量と温度の関係を示す線である。温度TLA~THAの間であれば、対象物があるときには静電容量がしきい値Aより大きくなり、対象物がないときには静電容量がしきい値Aより小さくなるので、対象物の有無を判断できる。しかし、温度TLAより低い温度、温度THAより高い温度では、対象物の有無を正確に判断できない。特に、ペレットのように誘電率が低く屋外に置かれる対象物の場合、温度TLAと温度THAの間隔は狭くなる一方、周辺環境の温度の範囲は広いので、対象物の有無の判断が難しくなりやすい。
【0012】
図5は実施例1のセンサ素子部の構成例を示す図である。図6は、実施例1の場合の対象物の有無と静電容量と温度の関係を示す図である。センサ素子部110は、対象物の有無および回路構成の違いに依存する静電容量を有する。例えば、センサ素子部110は、検出電極111、金属板112,113、スイッチ114,115を具備する。センサ素子部110も、発振回路116と検波回路117を具備すればよいが、静電容量に依存した情報、データまたは信号を出力できれば、他の回路でもよい。出力される情報、データまたは信号とは、静電容量に基づいて決まり、個別判断部120への入力になり得ればよく、数値化された情報やデータでもアナログの信号でも構わない。
【0013】
金属板112はスイッチ114を介して接地されており、金属板113はスイッチ115を介して接地されている。スイッチ114,115のオン・オフは、後述する個別判断部120によって制御される。ここで、回路構成Aを金属板112,113ともに非接地(スイッチ114,115ともにオフ)、回路構成Bを金属板112は非接地、金属板113は接地(スイッチ114はオフ、スイッチ115はオン)、回路構成Cを金属板112,113ともに接地(スイッチ114,115ともにオン)とする。金属板112,113が接地されると、検出電極111と接地との間の静電容量は大きくなる。したがって、対象物があるときも、対象物がないときも、静電容量が大きくなる。よって、図6に示すような静電容量と温度の関係になる。なお、上述の例ではスイッチの切り替えによって複数の回路構成を実現したが、回路構成が異なる複数の回路を具備し、回路を選択することで複数の回路構成を実現してもよい。
【0014】
回路構成Aの場合は、センサ素子部210と同じであり、温度TLA~THAの間であれば対象物の有無を判断できる。回路構成Bの場合は、温度TLB~THBの間であれば、対象物があるときには静電容量がしきい値Aより大きくなり、対象物がないときには静電容量がしきい値Aより小さくなるので、対象物の有無を判断できる。回路構成Cの場合は、温度TLC~THCの間であれば、対象物があるときには静電容量がしきい値Aより大きくなり、対象物がないときには静電容量がしきい値Aより小さくなるので、対象物の有無を判断できる。
【0015】
個別判断部120は、回路構成ごとに、センサ素子部110の静電容量を所定の基準と比較した結果である個別結果を出力する。センサ素子部110から出力される情報、データまたは信号を用いて、センサ素子部110の静電容量が所定の基準を満たすか否かを判断すればよい。所定の基準とは、例えば、しきい値A以上を満たすかという基準である。個別判断部120は複数の個別結果(回路構成ごとの個別結果)を出力するので、それらをまとめて「個別結果の組」と呼ぶことにする。また、個別判断部120は、センサ素子部110の回路構成を制御または選択する機能も有する。
【0016】
図7は個別結果が1つの場合の対象物の有無と温度と個別結果の関係を示す図、図8は個別結果が2つの場合の対象物の有無と温度と個別結果の組の関係を示す図、図9は個別結果が3つの場合の対象物の有無と温度と個別結果の組の関係を示す図である。図7は従来のセンサ素子部210を用いた場合と同じである。図8は回路構成A,Bの2種類を使った場合である。図9は回路構成A,B,Cの3種類を使った場合である。いずれの図も上段は対象物があるとき、下段は対象物がないときの個別結果または個別結果の組を示している。横方向は温度の違いを示しており、列の境界線は温度の境界を意味している。図7~9の下段の右端は、(1),(11),(111)となっている。これは実際には対象物がないにもかかわらず、対象物がある場合と同じ個別結果または個別結果の組であり、この状態、すなわち、温度THA以上では対象物の有無を判定することはできない。同様に、図7~9の上段の左端は、(0),(00),(000)となっている。これは実際には対象物があるにもかかわらず、対象物がない場合と同じ個別結果または個別結果の組であり、この状態、すなわち、個別結果が1つの場合には温度TLA以下、個別結果が2つの場合には温度TLB以下、個別結果が3つの場合には温度TLC以下では対象物の有無を判定することはできない。
【0017】
有無判断部130は、最新の個別結果の組および過去の個別結果の組に基づいて、対象物の有無を判断する。最新の個別結果の組および過去の個別結果の組に基づく判断には、いろいろな判断方法があり得る。以下に、いくつかの判断方法の例を示す。なお、有無判断部130の処理は、コンピュータにプログラムを読み込ませることによって実行させればよい。
【0018】
<2つ以上の個別結果の変化を利用する方法>
個別判断部120が個別結果を出力する時間間隔は温度変化に比べれば十分短いとする。この場合、対象物の有無に変化がなければ、図7~9では同じ段の横方向の隣に移動するだけなので、個別結果または個別結果の組は、変化しないか、1つの個別結果が変化するかである。一方、図8の温度TLA~THB図9の温度TLB~THBの温度範囲で対象物の有無が変化すると、2つ以上の個別結果が変化する。したがって、個別判断部120が個別結果を出力する時間間隔は温度変化に比べれば十分短い状況で、2つ以上の個別結果が変化した場合、対象物の有無に変化があったと判断できる。一方、図7では、温度の変化のときも対象物の有無の変化のときも、必ず1つの個別結果が変化するだけなので、温度の変化か対象物の有無の変化かを識別できない。なお、図2のセンサ素子部110-3のように対象物の有無が変化している過渡状態のときには、センサ素子部110-3の静電容量が、図6の対象物ありを示す実線と対象物なしを示す点線の間になるため、図8の温度TLA~THB図9の温度TLB~THBの温度範囲であっても、1つの個別結果しか変化しないかもしれない。しかし、センサ素子部110の近傍に温度を検知する素子を配置しなくても、2つ以上の個別結果が変化したのであれば、少なくとも対象物の有無に変化があったことは分かる。
【0019】
<時刻情報を利用する方法>
有無判断部130は時刻情報(年、月、日、時、分の情報)も取得できるとする。この場合、センサ素子部110付近の正確な温度は分からないとしても、時刻情報からあり得る温度の範囲は限定できる。例えば、TLA=0度、THA=50度、TLB=-10度、THB=40度、TLC=-20度、THC=30度とする。夏季のように0度以下になることはない季節であれば、TLA以下になることはない。図8においては、個別結果の組に(11)→(01)の遷移があったときは対象物の有無に変化があったことが分かる。また、図9においては、個別結果の組に(111)→(011)の遷移があったときは対象物の有無に変化があったことが分かる。したがって、センサ素子部110の近傍に温度を検知する素子を配置しなくても、対象物の有無に変化があったことは分かる。つまり、図8,9の下段の左から2番目の個別結果の組になったときに、誤検出するリスクを無くすことができる。
【0020】
また、図9において、冬季には夜間に氷点下になることがあるが日中は冬季でも0度以上である地域で、個別結果の組が(011)→(001)に遷移した後に、さらに(001)→(000)に遷移したとする。この場合、(000)に遷移してから所定時間経過後にも(000)の状態が続いていたときは、対象物がない状態に変化したと判断してもよい。所定時間とは例えば6時間、8時間などであり、氷点下になり得る時刻から0度以上になるまでの時間を、センサ素子部110を配置している環境を考慮して定めればよい。また、時刻情報が分かるので、インターネットなどを介して外部から個別結果の組を取得した時刻の気象に関する情報を取得すれば、センサ素子部110付近のあり得る温度の範囲は限定できる。このようは判断方法でも、センサ素子部110の近傍に温度を検知する素子を配置しなくても、対象物の有無に変化があったことは分かる。
【0021】
<類似の環境の温度を利用する方法>
上記の時刻情報ではなく、類似の環境での温度を利用してもよい。例えば、センサ素子部110が室内にあるのであれば、同様の環境の室内に温度センサを配置すればよい。また、センサ素子部110が屋外にあるのであれば、同様の環境の屋外に温度センサを配置すればよい。このように類似の環境に配置された温度センサから温度の情報を取得し、個別結果の組の遷移の原因を限定することで対象物の有無に変化があったかを判断してもよい。例えば、センサ素子部110と同様の環境に設置している温度計が30度を示しているのであれば、センサ素子部110付近の温度は0度以上であると推定できる。このときに個別結果の組が(111)→(011)に遷移した場合、この遷移の原因は対象物の有無の変化であり、現在は有無が変化している状態であることが分かる。よって、このようは判断方法でも、センサ素子部110の近傍に温度を検知する素子を配置しなくても、対象物の有無に変化があったことは分かる。
【0022】
<複数のセンサ素子部の個別結果の組を利用する方法>
図2に示した貯蔵容器900に対象物910を収納した場合には、上側に配置されているセンサ素子部110-1,2の近傍には対象物910はなく、下側に配置されているセンサ素子部110-4,…,6の近傍には対象物910がある。そして、センサ素子部110-3の近傍では、対象物910がある状態からない状態に変化している。このように、複数のセンサ素子部110-1,…,6が、対象物910が収納されている貯蔵容器900の上下方向に分散して配置されている場合は、センサ素子部110-1,…,6の配置を考慮して遷移可能な個別結果の組を限定すればよい。例えば、図9の例の場合であって、センサ素子部110-1の個別結果の組が(011)、センサ素子部110-2の個別結果の組が(001)、センサ素子部110-4の個別結果の組が(111)の場合、温度はおよそ温度THBであって、センサ素子部110-1,2の近傍には対象物はなく、センサ素子部110-4の近傍には対象物はあると判断できる。そして、センサ素子部110-1,2,4がこの状態を維持しているときに、センサ素子部110-3の個別結果の組が(111)→(011)に遷移した場合、温度が温度TLA以上から温度TLA以下に変化したのではなく、センサ素子部110-3の近傍で対象物の有無が変化していると判断できる。
【0023】
上記の例はセンサ素子部110-1,…,6を上下方向に分散して配置した例であるが、上下方向に限定する必要はない。平面状に対象物が分散し、一定方向から有無の状態が変化することが分かっている場合であれば、センサ素子部ごとの個別結果の組の遷移の原因(有無の変化によるものか、温度変化によるものか)を限定し、最新のセンサ素子部ごとの個別結果の組に基づいて、対象物の有無を判断すればよい。
【0024】
<状態が既知のセンサ素子部の個別結果の組を利用する方法>
例えば、図2の例で、センサ素子部110-1は常に対象物910はない位置に配置し、センサ素子部110-6は常に対象物910がある位置に配置する。このように配置すると、センサ素子部110-1,6の個別結果の組から、センサ素子部110-2,…,5が配置されている環境の温度が推定できる。例えば、図9の例の場合であって、センサ素子部110-1の個別結果の組が(000)、センサ素子部110-6の個別結果の組が(011)であれば、温度は、温度TLB~TLAあたりと推定できる。つまり、状態が既知のセンサ素子部110があれば温度を推定できるので、状態を検知するためのセンサ素子部110付近の温度の範囲を限定できる。状態が既知のセンサ素子部110を2つ用意する場合、少なくとも3つのセンサ素子部110が必要になるが、このようは判断方法でも、センサ素子部110の近傍に温度を検知する素子を配置しなくても、対象物の有無に変化があったことは分かる。
【0025】
<3回分以上の個別結果の組を利用する方法>
図10に個別結果の組に基づいて判断し得る状態を示す。この図では、個別結果の組が(00),(000)をL、(01),(001),(011)をM、(11),(111)をHとする。そして、急激な温度変化はないと考えられる間隔(例えば1時間間隔)での3回分の個別結果の組が“HHH”であれば対象物が“あり”の状態、“LLL”であれば対象物が“なし”の状態と判断する。3回分の個別結果の組で判断する理由は、対象物の有無の境界線がセンサ上となる場合に個別結果は“0”、“1”ランダム値となることを考慮して、個別結果の組の安定性を確認することでランダム変動による状態遷移を防ぐためであり、さらに多数回分の個別結果の組で判断してもよい。“H”と“M”が混在する場合は、対象物が“あり”の状態と判断すればよい。例えば、“HHM”のときは、周囲が低温であるか、対象物の有無の状態が変化し始めていることが分かる。“MMH”のときは、周囲が低温であるか、対象物の有無の状態の変化が終わろうとしていることが分かる。“M”と“L”が混在する場合は、対象物が“なし”の状態と判断すればよい。このときは、周囲が高温であるか、対象物の有無の状態の変化の開始や終了を意味している可能性もあるが、対象物が“なし”の状態と判断すればよい。また、“MMM”の場合、“H”と“L”が混在する場合、“H”と“M”と“L”が混在する場合は、変化している状態もしくは測定不可能な状態と判断する。例えば、“HLL”は変化している状態と判断し、次の個別結果の組が“L”であれば、“LLL”となるので、このタイミングで対象物が“なし”の状態と判断する。同様に、“HML”は対象物が“あり”から“なし”に変化している状態と考えられる。次の個別結果の組が“L”であれば、“MLL”となるので、このタイミングで対象物が“なし”の状態と判断する。ここまでは3つの個別結果の組を使用する例を説明したが、4つ以上の場合でも、L,M,Hを定義すれば同様の判断ができる。このように、3つ以上の個別結果の組を考慮すれば、状態の変化も考慮しながら対象物の有無を判断しやすい。
【0026】
実施例1の対象物検出装置によれば、条件(回路構成)の異なる複数の判断結果である個別結果の組を取得し、個別結果の組の遷移に基づいて対象物の有無を判断する。対象物の有無の変化による個別結果の組の遷移と、温度変化による個別結果の組の遷移の特徴の違いに基づいて対象物の有無の変化か温度変化を判断するので、センサ付近に温度を検知する素子を配置する必要が無い。
【実施例2】
【0027】
実施例2の対象物検出装置の機能構成例も図1に示す。対象物検出装置200は、センサ素子部210、個別判断部220、有無判断部130、記憶部190を備える。センサ素子部210は、図3に示した従来のセンサ素子部と同じ構成であり、検出電極111と接地との間の静電容量は対象物の有無に依存する。ただし、センサ素子部210は、発振回路116と検波回路117を具備してもよいが、静電容量に依存した情報、データまたは信号を出力できれば、他の回路でもよい。対象物検出装置200が複数のセンサ素子部を具備しているときは、図2に示すようにセンサ素子部210を配置すればよい。
【0028】
個別判断部220は、静電容量を比較する複数の基準を設けておき、基準ごとに、センサ素子部210の静電容量を当該基準と比較した結果である個別結果を出力する。図11はセンサ素子部の静電容量に対して複数の基準を設けた例である。この例では、3つのしきい値(しきい値A,…,C)を設けている。このようにしきい値を複数設定することで、しきい値ごとの個別結果を得ることができ、図8,9に示した個別結果の組を取得できる。
【0029】
有無判断部130は、実施例1と同じであり、最新の個別結果の組および過去の個別結果の組に基づいて、対象物の有無を判断する。個別判断部220で得られる個別結果は実施例1と同等なので、有無判断部130は実施例1で説明した内容と同じである。例えば、有無判断部130は、最新の個別結果の組を直近の個別結果の組と比較し、2つ以上の個別結果が変化している場合は、当該変化にしたがって対象物の有無を判断すればよい。また、基準(しきい値)は3つ以上設定した方が、2つだけ設定するよりも広い温度範囲でこの判断を利用できる。時刻情報を利用する方法、複数のセンサ素子部の個別結果の組を利用する方法などについても同じである。
【0030】
したがって、実施例2の対象物検出装置によっても、条件(基準)の異なる複数の判断結果である個別結果の組を取得し、個別結果の組の遷移に基づいて対象物の有無を判断する。対象物の有無の変化による個別結果の組の遷移と、温度変化による個別結果の組の遷移の特徴の違いに基づいて対象物の有無の変化か温度変化を判断するので、センサ付近に温度を検知する素子を配置する必要が無い。
【符号の説明】
【0031】
100,200 対象物検出装置 110,210 センサ素子部
111 検出電極 112,113 金属板
114,115 スイッチ 116 発振回路
117 検波回路 120,220 個別判断部
130 有無判断部 190 記憶部
900 貯蔵容器 910 対象物
図1
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図8
図9
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図11