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特許7323806フロントアクスルビーム及びその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-01
(45)【発行日】2023-08-09
(54)【発明の名称】フロントアクスルビーム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60G 9/04 20060101AFI20230802BHJP
【FI】
B60G9/04
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020003401
(22)【出願日】2020-01-14
(65)【公開番号】P2021109573
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001553
【氏名又は名称】アセンド弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】木村 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】皆谷 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】松井 友吾
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-35209(JP,A)
【文献】国際公開第2018/186372(WO,A1)
【文献】実開昭59-156802(JP,U)
【文献】特開2009-106955(JP,A)
【文献】国際公開第2018/163987(WO,A1)
【文献】米国特許第6196563(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されるフロントアクスルビームであって、
当該フロントアクスルビームは、
相互に車幅方向に間隔をあけて配置される2つのキングピン取付け部と、
相互に前記キングピン取付け部同士の間で車幅方向に間隔をあけて配置される2つのバネ取付け座部と、
前記バネ取付け座部同士をつなぐビーム部と、
相互に車幅方向に間隔をあけて配置され、各々が対応する前記キングピン取付け部と各々が対応する前記バネ取付け座部とをつなぐ2つのアーム部と、を備え、
前記アーム部それぞれはI字形の横断面を有し、
前記ビーム部はH字形の横断面を有し、
前記バネ取付け座部それぞれは、軸回りに捩じられたO字形の横断面を有する軸部を含む、フロントアクスルビーム。
【請求項2】
請求項1に記載のフロントアクスルビームであって、
前記バネ取付け座部それぞれは、前記軸部と前記アーム部とをつなぐ第1バネ取付け座部を含み、
前記第1バネ取付け座部それぞれはI字形の横断面を有する、フロントアクスルビーム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のフロントアクスルビームであって、
前記バネ取付け座部それぞれは、前記軸部と前記ビーム部とをつなぐ第2バネ取付け座部を含み、
前記第2バネ取付け座部それぞれはH字形の横断面を有する、フロントアクスルビーム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のフロントアクスルビームの製造方法であって、
当該製造方法は、
2つのキングピン取付け相当部、2つのバネ取付け座相当部、I字形の横断面を有するビーム相当部、及び各々がI字形の横断面を有する2つのアーム相当部を備え、前記バネ取付け座部として、O字形の横断面を有する軸相当部を含む、バリ付きの鍛造材を得る型鍛造工程と、
前記鍛造材から前記バリを除去するバリ抜き工程と、
前記キングピン取付け相当部、及び前記アーム相当部に対して、前記ビーム相当部を前記軸相当部の範囲で軸回りに捩じる捩じり工程と、を含む、フロントアクスルビームの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロントアクスルビーム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フロントアクスルビーム(以下、単に「フロントアクスル」ともいう。)は、トラックやバス等の車両に搭載される。フロントアクスルは長尺な部品であり、左右の前輪と車体(シャシー)と接続する重要保安部品である。例えば特開2003-285771号公報(特許文献1)に記載されるように、フロントアクスルは、通常、2つのキングピン取付け部、2つのバネ取付け座部、ビーム部、及び2つのアーム部を備える。キングピン取付け部は、フロントアクスルの両端部にそれぞれ配置される。バネ取付け座部は、キングピン取付け部同士の間に配置される。ビーム部は、バネ取付け座部同士をつなぐ。アーム部は、キングピン取付け部とバネ取付け座部とをつなぐ。
【0003】
フロントアクスルが車両に搭載されるとき、キングピン取付け部にキングピンが取り付けられ、キングピンに車両の前輪が取り付けられる。バネ取付け座部にはバネが取り付けられ、バネの上に車体が取り付けられる。車両に搭載されたフロントアクスルは、キングピン取付け部で支えられつつ、車重をバネ取付け座部で受ける。
【0004】
乗り心地の観点から、フロントアクスルには車高方向の曲げ剛性が高いことが要求される。つまり、バネ取付け座部を固定した状態で、キングピン取付け部に車高方向下向きの荷重が加えられたときに、バネ取付け座部とキングピン取付け部との間の車高方向の変位が小さいことが要求される。
【0005】
また、車両走行中に前輪に急ブレーキが加えられた場合、車体の慣性力がバネ取付け座部に作用する。この慣性力は車長方向前向きの荷重である。この場合、車両が車線を逸脱しないことが必要である。このため、急ブレーキ時の走行安定性の観点から、フロントアクスルには車長方向の曲げ剛性が高いことも要求される。つまり、バネ取付け座部を固定した状態で、キングピン取付け部に車長方向の荷重が加えられたときに、バネ取付け座部とキングピン取付け部との間の車長方向の変位が小さいことも要求される。
【0006】
フロントアクスルの曲げ剛性を高める手法として、単純には、ビーム部及びアーム部を太くすることが考えられる。しかしながら、この場合、フロントアクスルの重量が大幅に増加する。また、フロントアクスルの周辺には様々な部品が配置されている。ビーム部及びアーム部を太くしてその断面積を大きくした場合、フロントアクスルの設置スペースが拡大する。このため、車両全体が不必要に大きくならざるを得ない。
【0007】
一般に、車両には燃費性能が求められる。このため、フロントアクスルの重量の増加は可能な限り抑える必要がある。また、上記の通り、フロントアクスルは重要保安部品である。このため、フロントアクスルには高い信頼性が要求される。この点、型鍛造によって製造される鍛造品は、疲労強度及び破壊靭性に優れる。したがって、多くのフロントアクスルは鍛造品である。
【0008】
鍛造品であるフロントアクスル(以下、「鍛造フロントアクスル」ともいう。)において、従来、ビーム部、バネ取付け座部及びアーム部の各横断面はI字形である。型鍛造時に、鍛造品となる鍛造材を一対の鍛造型から取り出すためである。I字形の横断面を有する、ビーム部、バネ取付け座部及びアーム部は、いずれも、車高方向に沿うウェブ部と、車長方向に沿う2つのフランジ部と、から構成される。フランジ部は、ウェブ部の両側端にそれぞれつながる。I字形の横断面は、ウェブ部及び2つのフランジ部の全体の横断面によって形作られる。
【0009】
このような鍛造フロントアクスルにおいて、車高方向の曲げ剛性を確保しつつ、車長方向の曲げ剛性を高める手法として、フランジ部の幅(横断面における車長方向の長さ)を大きくすることが考えられる。しかしながら、フランジ部の幅の拡大は、型鍛造による製造上の制約から限界がある。また、フランジ部と周辺部品との干渉を避けるために、フランジ部の幅を無限に拡大することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2003-285771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の1つの目的は、車高方向の曲げ剛性を確保しつつ、車長方向の曲げ剛性を高めることができるフロントアクスルビームを提供することである。また、本発明の他の目的は、そのようなフロントアクスルビームを鍛造品として製造できる製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の実施形態によるフロントアクスルビームは、車両に搭載されるフロントアクスルビームである。当該フロントアクスルビームは、2つのキングピン取付け部と、2つのバネ取付け座部と、ビーム部と、2つのアーム部と、を備える。キングピン取付け部は、相互に車幅方向に間隔をあけて配置される。バネ取付け座部は、相互にキングピン取付け部同士の間で車幅方向に間隔をあけて配置される。ビーム部は、バネ取付け座部同士をつなぐ。アーム部は、相互に車幅方向に間隔をあけて配置される。アーム部は、各々が対応するキングピン取付け部と各々が対応するバネ取付け座部とをつなぐ。ここで、アーム部それぞれはI字形の横断面を有する。ビーム部はH字形の横断面を有する。バネ取付け座部それぞれは軸部を含む。軸部は、軸回りに捩じられたO字形の横断面を有する。
【0013】
本発明の実施形態による製造方法は、上記した本実施形態のフロントアクスルビームの製造方法である。当該製造方法は、型鍛造工程と、バリ抜き工程と、捩じり工程と、を含む。型鍛造工程では、バリ付きの鍛造材を得る。バリ付きの鍛造材は、2つのキングピン取付け相当部、2つのバネ取付け座相当部、I字形の横断面を有するビーム相当部、及び各々がI字形の横断面を有する2つのアーム相当部を備える。バリ付きの鍛造材は、バネ取付け座部として、O字形の横断面を有する軸相当部を含む。バリ抜き工程では、上記の鍛造材からバリを除去する。捩じり工程では、キングピン取付け相当部、及びアーム相当部に対して、ビーム相当部を軸相当部の範囲で軸回りに捩じる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の実施形態によるフロントアクスルビームによれば、車高方向の曲げ剛性を確保しつつ、車長方向の曲げ剛性を高めることができる。また、本実施形態による製造方法によれば、そのようなフロントアクスルビームを鍛造品として製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、第1実施形態のフロントアクスルの斜視図である。
図2図2は、機械加工後の第1実施形態のフロントアクスルの斜視図である。
図3図3は、第1実施形態のフロントアクスルを前方から見たときの正面図である。
図4図4は、第1実施形態のフロントアクスルを上方から見たときの平面図である。
図5図5は、図3の線V-Vにおける断面図である。
図6図6は、図3の線VI-VIにおける断面図である。
図7図7は、図3の線VII-VIIにおける断面図である。
図8図8は、図3の線VIII-VIIIにおける断面図である。
図9図9は、第2実施形態のフロントアクスルを前方から見たときの正面図である。
図10図10は、第2実施形態のフロントアクスルを上方から見たときの平面図である。
図11図11は、図9の線XI-XIにおける断面図である。
図12図12は、第3実施形態のフロントアクスルを前方から見たときの正面図である。
図13図13は、第3実施形態のフロントアクスルを上方から見たときの平面図である。
図14図14は、第4実施形態のフロントアクスルの製造方法を示すフロー図である。
図15図15は、型鍛造工程によって得られるバリ付きの鍛造材の模式図である。
図16図16は、バリ抜き工程後の鍛造材の模式図である。
図17図17は、捩じり工程前の状況を示す模式図である。
図18図18は、捩じり工程後の状況を示す模式図である。
図19図19は、調査で作成したフロントアクスルの解析モデルの車幅方向の半分を示す正面図である。
図20図20は、調査1で作成したフロントアクスルの解析モデルの状況を示す図である。
図21図21は、調査1の結果をまとめた図である。
図22図22は、調査2で作成したフロントアクスルの解析モデルの状況を示す図である。
図23図23は、調査2の結果をまとめた図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明では、本発明の実施形態について例を挙げて説明するが、本発明は以下で説明する例に限定されない。以下の説明において特定の数値や特定の材料を例示する場合があるが、本発明はそれらの例示に限定されない。
【0017】
本実施形態のフロントアクスルビームは、車両に搭載されるフロントアクスルビームである。当該フロントアクスルビームは、2つのキングピン取付け部と、2つのバネ取付け座部と、ビーム部と、2つのアーム部と、を備える。キングピン取付け部は、相互に車幅方向に間隔をあけて配置される。バネ取付け座部は、相互にキングピン取付け部同士の間で車幅方向に間隔をあけて配置される。ビーム部は、バネ取付け座部同士をつなぐ。アーム部は、相互に車幅方向に間隔をあけて配置される。アーム部は、各々が対応するキングピン取付け部と各々が対応するバネ取付け座部とをつなぐ。ここで、アーム部それぞれはI字形の横断面を有する。ビーム部はH字形の横断面を有する。バネ取付け座部それぞれは軸部を含む。軸部は、軸回りに捩じられたO字形の横断面を有する。(第1の構成)。
【0018】
本明細書において、フロントアクスル及びそれを構成する部位の方向について言及するときは、特に記載がない限り、フロントアクスルを車両に搭載した状態、すなわちフロントアクスルを使用時の向きに配置した状態における方向を意味する。例えば、車高方向は車両の上下方向を意味する。車幅方向は車両の左右方向を意味する。車長方向は車両の前後方向を意味する。本明細書において、フロントアクスルを構成する部位の横断面とは、該当の部位の長手方向(概ね車幅方向)に垂直な断面を意味する。
【0019】
I字形及びH字形とは、いずれも、ウェブ部及び2つのフランジ部の全体の横断面によって形作られる横断面形状を意味する。I字形の横断面の場合、ウェブ部は車高方向(上下方向)に沿う。この場合のフランジ部は、ウェブ部の上側端及び下側端にそれぞれつながり、車長方向(前後方向)に沿う。一方、H字形の横断面の場合、ウェブ部は車長方向(前後方向)に沿う。この場合のフランジ部は、ウェブ部の前側端及び後側端にそれぞれつながり、車高方向(上下方向)に沿う。いずれの場合も、横断面において、フランジ部の厚み中心線がウェブ部の厚み中心線と交差する。ここで、I字形の横断面の場合、フランジ部の厚み中心線が、横断面の図心を通る鉛直軸と交差する。H字形の横断面の場合、フランジ部の厚み中心線が、横断面の図心を通る水平軸と交差する。
【0020】
第1の構成のフロントアクスルビームでは、アーム部の横断面はI字形であり、ビーム部の横断面はH字形である。I字形の横断面を有するアーム部は、従来のアーム部と同様に、車高方向に沿うウェブ部と、車長方向に沿う2つのフランジ部と、から構成される。これに対して、H字形の横断面を有するビーム部は、従来のビーム部と異なり、車長方向に沿うウェブ部と、車高方向に沿う2つのフランジ部と、から構成される。材料力学の観点から、I字形の横断面では、縦方向の剛性が高く、横方向の剛性は比較的低い。一方、H字形の横断面では、横方向の剛性が高く、縦方向の剛性は比較的低い。
【0021】
フロントアクスルにおいて、縦方向の剛性は車高方向の曲げ剛性に対応し、横方向の剛性は車長方向の曲げ剛性に対応する。このため、車高方向の曲げ剛性を確保するためには、縦方向の剛性が高いI字形の横断面が適する。一方、車長方向の曲げ剛性を確保するためには、横方向の剛性が高いH字形の横断面が適する。
【0022】
第1の構成のフロントアクスルの場合、アーム部の横断面はI字形であり、ビーム部の横断面はH字形である。このため、各アーム部では、縦方向の剛性、すなわち車高方向の曲げ剛性が高い。さらに、ビーム部では、横方向の剛性、すなわち車長方向の曲げ剛性が高い。要するに、第1の構成のフロントアクスルでは、車高方向の曲げ剛性の確保に寄与するI字形の横断面の部分(アーム部)と、車長方向の曲げ剛性の確保に寄与するH字形の横断面の部分(ビーム部)とが共存する。したがって、第1の構成のフロントアクスルによれば、車高方向の曲げ剛性を確保しつつ、車長方向の曲げ剛性を高めることができる。
【0023】
典型的な例では、第1の構成のフロントアクスルにおいて、バネ取付け座部それぞれは、軸部とアーム部とをつなぐ第1バネ取付け座部を含み、第1バネ取付け座部それぞれはI字形の横断面を有する(第2の構成)。他の典型的な例では、第1の構成のフロントアクスルにおいて、バネ取付け座部それぞれは、軸部とビーム部とをつなぐ第2バネ取付け座部を含み、第2バネ取付け座部それぞれはH字形の横断面を有する(第3の構成)。第2の構成と第3の構成を組み合わせることも可能である。また、第3の構成のフロントアクスルにおいて、第2バネ取付け座部の横断面は矩形であっても構わない。もっもと、第1の構成及び第2の構成にかかわらず、軸部がアーム部及びビーム部に直接つながっていてもよい。この場合、バネ取付け座部は軸部のみで構成される。
【0024】
バネ取付け座部を構成する軸部の車幅方向の長さは、好ましくは、バネ取付け座部の車幅方向の長さの80%以下である。この場合、軸部による重量増加を抑えつつ、車長方向の曲げ剛性を向上することができる。軸部の車幅方向の長さの上限は、より好ましくは、バネ取付け座部の車幅方向の長さの50%である。一方、軸部の車幅方向の長さの下限は、特に限定されないが、製造上の観点から、好ましくは、バネ取付け座部の車幅方向の長さの20%である。軸部は捩じられた部分であるため、軸部の車幅方向の長さがあまりに小さければ、軸部に捩じりを与えることが困難になるからである。なお、本明細書において、軸部の車幅方向は、軸部の軸方向(長手方向)を意味する。
【0025】
本実施形態の製造方法は、上記した本実施形態のフロントアクスルビームの製造方法である。当該製造方法は、型鍛造工程と、バリ抜き工程と、捩じり工程と、を含む。型鍛造工程では、バリ付きの鍛造材を得る。バリ付きの鍛造材は、2つのキングピン取付け相当部、2つのバネ取付け座相当部、I字形の横断面を有するビーム相当部、及び各々がI字形の横断面を有する2つのアーム相当部を備える。バリ付きの鍛造材は、バネ取付け座部として、O字形の横断面を有する軸相当部を含む。バリ抜き工程では、上記の鍛造材からバリを除去する。捩じり工程では、キングピン取付け相当部、及びアーム相当部に対して、ビーム相当部を軸相当部の範囲で軸回りに捩じる(第4の構成)。
【0026】
第4の構成の製造方法によれば、第1~第3の構成のフロントアクスルを鍛造品として製造できる。
【0027】
典型的な例では、キングピン取付け相当部、及びアーム相当部に対するビーム相当部の捩じれ角度は90°である。ただし、捩じれ角度は厳密な90°のみならず、90°からの多少のずれ(例:90°±45°、好ましくは90°±10°、より好ましくは90°±5°)を含む。
【0028】
以下に、図面を参照しながら、本実施形態のフロントアクスルビーム及びその製造方法の具体例を説明する。
【0029】
[第1実施形態]
第1実施形態では、本実施形態のフロントアクスルビームの一例を説明する。図1図8は、第1実施形態のフロントアクスルビーム1の模式図である。これらの図のうち、図1は機械加工前のフロントアクスル1の斜視図を示す。図2は機械加工後のフロントアクスル1の斜視図を示す。図3は、フロントアクスル1を前方から見たときの正面図を示す。図4は、フロントアクスル1を上方から見たときの平面図を示す。図3及び図4には、機械加工前のフロントアクスル1の形状が示される。図5は、図3の線V-Vにおける断面図を示す。この図5には、アーム部5の横断面が示される。図6は、図3の線VI-VIにおける断面図を示す。この図6には、ビーム部4の横断面が示される。図7は、図3の線VII-VIIにおける断面図を示す。この図7には、バネ取付け座部3を構成する軸部32の横断面が示される。図8は、図3の線VIII-VIIIにおける断面図を示す。この図8には、バネ取付け座部3を構成する第1バネ取付け座部31の横断面が示される。これらの図及び以下で説明する図には、車幅方向WD、車長方向LD、及び車高方向HDを示す場合がある。なお、フロントアクスル1の構造の理解を容易にするために、図3には、車両の左右の前輪70を示している。
【0030】
図1図4を参照して、フロントアクスル1は、車幅方向WDの中央を中心に概ね対称の形状を有し、且つ、全体としては概ね弓形の形状を有する。フロントアクスル1は、2つのキングピン取付け部2と、2つのバネ取付け座部3と、ビーム部4と、2つのアーム部5と、を含む。
【0031】
キングピン取付け部2は、フロントアクスル1の両端部にそれぞれ配置される。つまり、キングピン取付け部2は、相互に車幅方向WDに間隔をあけて配置される。キングピン取付け部2には、機械加工によって、キングピンが取り付けられる貫通孔2cが形成される(図2参照)。キングピン取付け部2には、キングピンを介して前輪70が接続される(図3参照)。
【0032】
バネ取付け座部3は、キングピン取付け部2同士の間に配置される。バネ取付け座部3は、相互に車幅方向WDに間隔をあけて配置される。バネ取付け座部3は、フロントアクスル1の車幅方向WDの中央を中心に対称な位置に配置される。バネ取付け座部3は、キングピン取付け部2よりも低い位置(車高方向下方の位置)に配置される。バネ取付け座部3には、機械加工によって、バネ取付け面3cが形成される(図2参照)。バネ取付け面3cにバネ(図示省略)が取り付けられ、バネの上に車体が取り付けられる。ここで、バネは、複数のボルトによりバネ取付け面3cに固定される。このため、バネ取付け面3cには、機械加工によって、複数のボルト穴3dが形成される(図2参照)。
【0033】
ビーム部4は、バネ取付け座部3同士をつなぐ。アーム部5は、相互に車幅方向WDに間隔をあけて配置される。アーム部5は、キングピン取付け部2とバネ取付け座部3とをつなぐ。アーム部5は、バネ取付け座部3に向けて斜め下方に延びるドロップ部を含む。
【0034】
図5を参照して、アーム部5はI字形の横断面を有する。つまり、アーム部5の横断面はI字形である。具体的には、アーム部5は、車高方向HDに沿うウェブ部5aと、車長方向LDに沿う2つのフランジ部5bと、から構成される。フランジ部5bの厚みは、ウェブ部5aから遠ざかるにつれて小さくなっている。型鍛造によって成形されたためである。アーム部5のI字形の横断面は、ウェブ部5a及び2つのフランジ部5bの全体の横断面によって形作られる。
【0035】
図6を参照して、ビーム部4は、H字形の横断面を有する。つまり、ビーム部4の横断面はH字形である。具体的には、ビーム部4は、車長方向LDに沿うウェブ部4aと、車高方向HDに沿う2つのフランジ部4bと、から構成される。フランジ部4bの厚みは、ウェブ部4aから遠ざかるにつれて小さくなっている。型鍛造によって成形されたためである。ビーム部4のH字形の横断面は、ウェブ部4a及び2つのフランジ部4bの全体の横断面によって形作られる。
【0036】
図1図4を参照して、バネ取付け座部3は、第1バネ取付け座部31と、軸部32と、を含む。軸部32は、バネ取付け座部3の車幅方向WDの中央を含み、ビーム部4寄りに設けられる。本実施形態では、軸部32はビーム部4につながる。第1バネ取付け座部31は、軸部32とアーム部5とをつなぐ。
【0037】
図8を参照して、第1バネ取付け座部31はI字形の横断面を有する。つまり、第1バネ取付け座部31の横断面は、アーム部5の横断面と同様に、I字形である。具体的には、第1バネ取付け座部31は、車高方向HDに沿うウェブ部31aと、車長方向LDに沿う2つのフランジ部31bと、から構成される。第1バネ取付け座部31のウェブ部31aは、アーム部5のウェブ部5aと連続する。第1バネ取付け座部31のフランジ部31bは、アーム部5のフランジ部5bと連続する。フランジ部31bの厚みは、ウェブ部31aから遠ざかるにつれて小さくなっている。型鍛造によって成形されたためである。第1バネ取付け座部31のI字形の横断面は、ウェブ部31a及び2つのフランジ部31bの全体の横断面によって形作られる。
【0038】
図7を参照して、軸部32はO字形の横断面を有する。つまり、軸部32の横断面はO字形である。別の観点では、軸部32の横断面は円形である。ここで言う円形とは、真円形のみならず、多少変形した円形(例:楕円形)も含む。軸部32の横断面形状は、ビーム部4及び第1バネ取付け座部31のうちの大きい方の横断面の輪郭と外接するO字形(例:外接円)である。軸部32は軸回りに捩じられている。
【0039】
図3を参照して、軸部32の車幅方向WDの長さLbは、バネ取付け座部3の車幅方向WDの長さLの80%以下である。ここで言うバネ取付け座部3の車幅方向WDの長さLとは、バネ取付け座部3の全長を意味する。
【0040】
このように本実施形態のフロントアクスル1の場合、アーム部5の横断面はI字形であり、ビーム部4の横断面はH字形である。このため、アーム部5では、車高方向HDの曲げ剛性(横断面における縦方向の剛性)が高い。さらに、ビーム部4では、横方向の剛性、すなわち車長方向LDの曲げ剛性(横断面における横方向の剛性)が高い。要するに、本実施形態のフロントアクスル1では、車高方向HDの曲げ剛性の確保に寄与するI字形の横断面の部分(アーム部5)と、車長方向LDの曲げ剛性の確保に寄与するH字形の横断面の部分(ビーム部4)とが共存する。したがって、本実施形態のフロントアクスル1によれば、車高方向HDの曲げ剛性を確保しつつ、車長方向LDの曲げ剛性を高めることができる。
【0041】
また、軸部32の車幅方向WDの長さLbは、バネ取付け座部3の車幅方向WDの長さLの80%以下である。このため、軸部32による重量増加を抑えつつ、車長方向LDの曲げ剛性を向上することができる。
【0042】
[第2実施形態]
第2実施形態では、本実施形態のフロントアクスルビームの他の一例を説明する。図9図11は、第2実施形態のフロントアクスルビーム1の模式図である。これらの図のうち、図9はフロントアクスル1を前方から見たときの正面図を示す。図10は、フロントアクスル1を上方から見たときの平面図を示す。図9及び図10には、機械加工前のフロントアクスル1の形状が示される。図11は、図9の線XI-XIにおける断面図を示す。この図11には、バネ取付け座部3を構成する第2バネ取付け座部33の横断面が示される。なお、フロントアクスル1の構造の理解を容易にするために、図9には、車両の左右の前輪70を示している。第2実施形態のフロントアクスル1は、第1実施形態のフロントアクスル1を変形したものである。以下、第1実施形態のフロントアクスル1と重複する構成についての説明は適宜省略する。後述する実施形態でも同様とする。
【0043】
図9及び図10を参照して、バネ取付け座部3は、第1バネ取付け座部31と、軸部32と、第2バネ取付け座部33と、を含む。第2バネ取付け座部33は、軸部32とビーム部4との間に設けられる。つまり、第2バネ取付け座部33は、軸部32とビーム部4とをつなぐ。
【0044】
図11を参照して、第2バネ取付け座部33はH字形の横断面を有する。つまり、第2バネ取付け座部33の横断面は、ビーム部4の横断面と同様に、H字形である。具体的には、第2バネ取付け座部33は、車長方向LDに沿うウェブ部33aと、車高方向HDに沿う2つのフランジ部33bと、から構成される。第2バネ取付け座部33のウェブ部33aは、ビーム部4のウェブ部4aと連続する。第2バネ取付け座部33のフランジ部33bは、ビーム部4のフランジ部4bと連続する。フランジ部33bの厚みは、ウェブ部33aから遠ざかるにつれて小さくなっている。型鍛造によって成形されたためである。第2バネ取付け座部33のH字形の横断面は、ウェブ部33a及び2つのフランジ部33bの全体の横断面によって形作られる。
【0045】
本実施形態の場合、軸部32の横断面形状は、第1バネ取付け座部31及び第2バネ取付け座部33のうちの大きい方の横断面の輪郭と外接するO字形(例:外接円)である。
【0046】
[第3実施形態]
第3実施形態では、本実施形態のフロントアクスルビームの他の一例を説明する。図12及び図13は、第3実施形態のフロントアクスルビーム1の模式図である。これらの図のうち、図12はフロントアクスル1を前方から見たときの正面図を示す。図13は、フロントアクスル1を上方から見たときの平面図を示す。図12及び図13には、機械加工前のフロントアクスル1の形状が示される。なお、フロントアクスル1の構造の理解を容易にするために、図12には、車両の左右の前輪70を示している。第3実施形態のフロントアクスル1は、第1実施形態のフロントアクスル1を変形したものである。
【0047】
図12及び図13を参照して、バネ取付け座部3は軸部32のみで構成される。このため、軸部32は、アーム部5とビーム部4とをつなぐ。本実施形態の場合、軸部32の横断面形状は、アーム部5及びビーム部4のうちの大きい方の横断面の輪郭と外接するO字形(例:外接円)である。
【0048】
[第4実施形態]
第4実施形態では、本実施形態のフロントアクスルビームの製造方法の一例を説明する。図14は、第4実施形態のフロントアクスルビームの製造方法を示すフロー図である。図14を参照して、本実施形態の製造方法は、型鍛造工程(#5)と、バリ抜き工程(#10)と、捩じり工程(#15)と、を含む。これらの工程は一連に行われる。いずれの工程も熱間加工である。
【0049】
図15は、型鍛造工程によって得られるバリ102付きの鍛造材101の模式図である。図16は、バリ抜き工程後の鍛造材111の模式図である。図17は、捩じり工程前の状況を示す模式図である。図18は、捩じり工程後の状況を示す模式図である。これらの図は、フロントアクスル1を前方から見たときの正面図を示す。これらの図には、第1実施形態のフロントアクスル1を製造する場合の例が示される。
【0050】
図15を参照して、型鍛造工程(#5)では、バリ102を有する鍛造材101を得る。型鍛造工程は、一対の鍛造型(図示省略)によって行われる。鍛造方向は、図15の紙面に垂直な方向である。つまり、一対の鍛造型のうちの一方の鍛造型が図15の紙面の奥に配置され、他方の鍛造型が図15の紙面の手前に配置される。
【0051】
バリ102付きの鍛造材101は、2つのキングピン取付け相当部112、2つのバネ取付け座相当部113、ビーム相当部114、及び2つのアーム相当部115を含む。ビーム相当部114は、バネ取付け座相当部113同士をつなぐ。アーム相当部115は、キングピン取付け相当部112とバネ取付け座相当部113とをつなぐ。
【0052】
キングピン取付け相当部112は、フロントアクスル1のキングピン取付け部2となる部分である。キングピン取付け相当部112は、キングピン取付け部2と同一の形状を有する。
【0053】
アーム相当部115は、フロントアクスル1のアーム部5となる部分である。アーム相当部115の横断面はI字形である。アーム相当部115は、アーム部5と同一の形状を有する。
【0054】
ビーム相当部114は、フロントアクスル1のビーム部4となる部分である。ビーム相当部114の横断面は、アーム相当部115と同様に、I字形である。つまり、ビーム相当部114の横断面形状は、ビーム部4の横断面形状(H字形)とは異なる。ただし、ビーム相当部114の横断面形状は、90°回転すれば、ビーム部4の横断面形状と同じである。
【0055】
バリ102付きの鍛造材101は、バネ取付け座相当部113として、第1バネ取付け座相当部131、及び軸相当部132を含む。第1バネ取付け座相当部131は、フロントアクスル1の第1バネ取付け座部31となる部分である。第1バネ取付け座相当部131の横断面は、アーム相当部115及びビーム相当部114と同様に、I字形である。第1バネ取付け座相当部131は、第1バネ取付け座部31と同一の形状を有する。
【0056】
軸相当部132は、フロントアクスル1の軸部32となる部分である。軸相当部132の横断面はO字形である。軸相当部132は、軸部32と同一の形状を有する。軸相当部132はビーム相当部114につながる。第1バネ取付け座相当部131は、軸相当部132とアーム相当部115とをつなぐ。
【0057】
なお、型鍛造工程の被加工材となる鋼材は、通常、型鍛造に適した形状を有する。そのような鋼材は、出発材料であるビレットを予備成形工程で予備成形することによって形成できる。すなわち、鋼材は、予備成形品であってもよい。予備成形工程に限定はなく、公知の予備成形工程を適用してもよい。例えば、予備成形工程は、ビレットを絞る工程や、曲げ打ち工程を含んでもよいし、機械加工工程を含んでもよい。予備成形工程には熱間加工を用いることもできる。
【0058】
次に、バリ抜き工程(#10)では、バリ102付きの鍛造材101からバリ102を除去する。バリ抜き工程では、鍛造材101を一対の金型(図示省略)によって保持して、刃物型(図示省略)によって、バリ102を除去する。これにより、図16に示すように、バリ無しの鍛造材111が得られる。
【0059】
次に、捩じり工程(#15)では、キングピン取付け相当部112、アーム相当部115、及び第1バネ取付け座相当部131に対して、ビーム相当部114を軸相当部132の範囲で軸回りに90°捩じる。具体的には、図17を参照して、捩じり工程は、一対の第1捩じり型61、一対の第2捩じり型62、及び一対の第3捩じり型63によって行われる。バリ無しの鍛造材111の長手方向(車幅方向)に沿って、一対の第2捩じり型62、一対の第1捩じり型61、及び一対の第3捩じり型63がこの順に配置される。一対の第1捩じり型61のうちの一方の第1捩じり型61が図17の紙面の奥に配置され、他方の第1捩じり型が図17の紙面の手前に配置される。一対の第2捩じり型62、及び一対の第3捩じり型63も、一対の第1捩じり型61と同様に配置される。
【0060】
第1捩じり型61は、バリ無しの鍛造材111のビーム相当部114を保持する。第2捩じり型62は、バリ無しの鍛造材111の一方のキングピン取付け相当部112、一方のアーム相当部115、及び一方の第1バネ取付け座相当部131を保持する。第3捩じり型63は、バリ無しの鍛造材111の他方のキングピン取付け相当部112、他方のアーム相当部115、及び他方の第1バネ取付け座相当部131を保持する。バリ無しの鍛造材111の軸相当部132は、第1捩じり型61によって緩く保持される。バリ無しの鍛造材111の軸相当部132は、第2捩じり型62又は第3捩じり型63によって、緩く保持されてもよい。
【0061】
一対の捩じり型61、62、及び63それぞれによる保持後、第1捩じり型61が軸相当部132の軸を中心に45°回転する。第1捩じり型61の回転とともに、第2捩じり型62及び第3捩じり型63が軸相当部132の軸を中心に第1捩じり型61の回転方向とは逆向きに45°回転する。これにより、軸相当部132が軸回りに90°捩じられる。つまり、キングピン取付け相当部112、アーム相当部115、及び第1バネ取付け座相当部131に対して、ビーム相当部114が軸相当部132の範囲で軸回りに90°捩じられる。このようにして、図18に示すように、本実施形態のフロントアクスル1が得られる。したがって、本実施形態の製造方法によれば、本実施形態のフロントアクスル1を鍛造品として製造できる。
【0062】
本実施形態のフロントアクスル1は、車両に搭載される。その際、機械加工によって、キングピン取付け部2に貫通孔2cが形成される。さらに、機械加工によって、バネ取付け座部3にバネ取付け面3c及びボルト穴3dが形成される。その際、軸部32の上部がバネ取付け面3cと同じ高さまで切削される。
【0063】
第2実施形態のフロントアクスル1を製造する場合は、バネ取付け座相当部113として、さらに第2バネ取付け座相当部を設ければよい。第2バネ取付け座相当部は、フロントアクスル1の第2バネ取付け座部33となる部分である。第2バネ取付け座相当部の横断面は、アーム相当部115、第1バネ取付け座相当部131及びビーム相当部114と同様に、I字形である。つまり、第2バネ取付け座相当部の横断面形状は、第2バネ取付け座部33の横断面形状(H字形)とは異なる。ただし、第2バネ取付け座相当部の横断面形状は、90°回転すれば、第2バネ取付け座部33の横断面形状と同じである。この場合、捩じり工程において、ビーム相当部114と一緒に第2バネ取付け座相当部が第1捩じり型61によって保持される。
【実施例
【0064】
FEM解析により、フロントアクスルの車長方向の曲げ剛性及びその車高方向の曲げ剛性を調査した。車高方向の曲げ剛性を評価するために、バネ取付け座部を固定した状態で、キングピン取付け部に車高方向上向きの荷重を加えた。その際、バネ取付け座部とキングピン取付け部との間の車高方向(上下方向)の変位を計測した。車長方向の曲げ剛性を評価するために、バネ取付け座部を固定した状態で、キングピン取付け部に車長方向前向きの荷重を加えた。その際、バネ取付け座部とキングピン取付け部との間の車長方向(前後方向)の変位を計測した。各剛性は、(荷重)/(変位量)[単位:N/mm]で表さる。つまり、変位量が小さいほど剛性が高い。このため、変位量を剛性として評価した。また、重量も評価した。
【0065】
調査にあたり、ビーム部の横断面形状を種々変更した解析モデルを作成した。図19は、調査で作成したフロントアクスル1の解析モデルの車幅方向の半分を示す正面図である。
【0066】
[調査1]
図19を参照して、調査1では、バネ取付け座部3において、O字形の横断面を有する軸部32の長さLbを一定とし、H字形の横断面を有する第2バネ取付け座部33の長さLc、及びI字形の横断面を有する第1バネ取付け座部31の長さLaを種々変更した。また、比較例として、従来のフロントアクスルを想定して、ビーム部4及びバネ取付け座部3の全域をI字形の横断面とした。
【0067】
図20は、調査1で作成したフロントアクスルの解析モデルの状況を示す図である。図20には、バネ取付け座部3の車幅方向WDの長さLを100%としたときの、各横断面形状(I字形、O字形及びH字形)の長さの割合が示される。試験番号A1~A5のいずれにおいても、O字形の横断面の長さ割合を33.3%とした。試験番号A1、A2、A3及びA5では、それぞれ、I字形の横断面の長さ割合を8.3%、16.7%、33.3%、50.0%及び58.3%とした。なお、試験番号A1~A5は上記の第2実施形態のフロントアクスルに対応する。
【0068】
図21は、調査1の結果をまとめた図である。図21には、比較例の結果を100%としたときの、各結果(車高方向の曲げ剛性(上下曲げ剛性)及び車長方向の曲げ剛性(前後曲げ剛性))の割合が示される。図21より下記のことが示される。
【0069】
I字形の横断面を有する第1バネ取付け座部31の長さが大きいほど、車長方向の曲げ剛性(前後曲げ剛性)が高まる。換言すれば、O字形の横断面を有する軸部32がビーム部4に近づくほど、車長方向の曲げ剛性が高まる。これに対し、第1バネ取付け座部31の長さが大きいほど、車高方向の曲げ剛性(上下曲げ剛性)は低くなる。換言すれば、O字形の横断面を有する軸部32がアーム部5に近づくほど、車高方向の曲げ剛性が高まる。また、ビーム部の横断面がI字形である比較例と比較して、剛性は高まり、特に車長方向の曲げ剛性が顕著に高まる。
【0070】
[調査2]
上記の図19を参照して、調査2では、バネ取付け座部3において、O字形の横断面を有する軸部32の長さLb、H字形の横断面を有する第2バネ取付け座部33の長さLc、及びI字形の横断面を有する第1バネ取付け座部31の長さLaを種々変更した。
【0071】
図22は、調査2で作成したフロントアクスルの解析モデルの状況を示す図である。図22には、上記の図20と同様の指標が示される。試験番号B1~B3では、O字形の横断面の長さ割合を16.7%とした。これらの試験番号B1、B2及びB3では、それぞれ、I字形の横断面の長さ割合を16.7%、41.7%及び66.7%とした。試験番号B4~B6では、O字形の横断面の長さ割合を50.0%とした。これらの試験番号B4、B5及びB6では、それぞれ、I字形の横断面の長さ割合を16.7%、25.0%及び33.3%とした。試験番号B7~B9では、O字形の横断面の長さ割合を66.7%とした。これらの試験番号B7、B8及びB9では、それぞれ、I字形の横断面の長さ割合を6.7%、16.7%及び26.7%とした。
【0072】
図23は、調査2の結果をまとめた図である。図23には、調査1の比較例の結果を100%としたときの、各結果(車高方向の曲げ剛性(上下曲げ剛性)、車長方向の曲げ剛性(前後曲げ剛性)及び重量)の割合が示される。図23より下記のことが示される。
【0073】
O字形の横断面を有する軸部32の長さが同じである場合、上記した調査1と同様の傾向が認められる。また、O字形の横断面を有する軸部32の長さが大きいほど、剛性は高まり、特に車高方向の曲げ剛性が顕著に高まる。重量は、軸部32の長さの増加に伴って大きくなる。ただし、ビーム部の横断面がI字形である比較例と比較して、重量はやや増加する程度であり、車長方向の曲げ剛性及び車高方向の曲げ剛性は高まる。
【0074】
その他、本発明は上記の実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、フロントアクスルビームに有効に利用できる。
【符号の説明】
【0076】
1:フロントアクスルビーム
2:キングピン取付け部
3:バネ取付け座部
4:ビーム部
5:アーム部
31:第1バネ取付け座部
32:軸部
33:第2バネ取付け座部
101:バリ付きの鍛造材
111:バリ無しの鍛造材
112:キングピン取付け相当部
113:バネ取付け座相当部
114:ビーム相当部
115:アーム相当部
131:第1バネ取付け座相当部
132:軸相当部
61:第1捩じり型
62:第2捩じり型
63:第3捩じり型
WD:車幅方向
LD:車長方向
HD:車高方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23